(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷は近年、紙シート上にデータおよび画像を記録するための非常に重要な手段となっている。低コストであり、多色画像を容易に作り出すこと、および比較的高速であることが、この技術の利点の一部である。しかし、インクジェット印刷は、短い乾燥時間、高い印刷濃度および鮮明度、並びに色同士のにじみの低減といった要求を満たすために、基材に対して多大な要求を突きつける。さらに、基材は高い明度を有するべきである。例えば普通紙は、インクジェット印刷に使用される水性アニオン性色素または顔料の吸収性が乏しく、相当な時間インクが紙の表面上にとどまり、これはインクの拡散を起こさせ印刷鮮明度が低くなる。高い印刷濃度および鮮明度をもたらしながら短い乾燥時間を実現する1つの方法は、特別なシリカコート紙を使用することである。しかしそのような紙は製造にコストがかかる。
【0003】
米国特許第6,207,258号明細書(特許文献1)は、2価金属塩を含有する水性サイジング媒体で基材表面を処理することにより、顔料インクジェット印刷の品質を改善できることを開示することによって、この問題に対する部分的な解決策を提供する。塩化カルシウムおよび塩化マグネシウムは好ましい2価金属塩である。サイジング媒体は、非コート紙の処理に使用される他の従来の紙添加剤も含有してもよい。従来の紙添加剤としては、紙の白色度を大幅に改善しそれによってインクジェット印刷と背景との間のコントラストを大幅に改善することが良く知られている、光学増白剤(OBA)が挙げられる。
米国特許第6,207,258号明細書(特許文献1)は、本発明による光学増白剤の使用例は提示していない。
【0004】
国際公開第2007/044228号(特許文献2)は、アルケニル無水コハク酸サイズ剤および/またはアルキルケテンダイマーサイズ剤を含み、金属塩を組み込む組成物を特許請求している。本発明による光学増白剤の使用には触れていない。
【0005】
国際公開第2008/048265号(特許文献3)は、リグノセルロース繊維から形成される基材を含む印刷用記録シートを特許請求しており、その少なくとも1つの面は水溶性2価金属塩で処理されている。この記録シートは、向上した画像の乾燥時間を示す。
光学増白剤は、塩化カルシウムおよび1つまたは複数のデンプンを含む、好ましい表面処理の任意選択の成分のリストに含まれている。本発明による光学増白剤の使用についての例は示されていない。
【0006】
国際公開第2007/053681号(特許文献4)は、インクジェット基材に塗布されると、印刷濃度、色同士のにじみ、印刷鮮明度、および/または画像の乾燥時間を改善する、サイジング組成物を記載している。このサイジング組成物は、少なくとも1つの顔料(好ましくは沈降炭酸カルシウムまたは重質炭酸カルシウムのいずれか)、少なくとも1つのバインダー(その一例はデンプンおよびポリビニルアルコールを含む多成分系である)、少なくとも1つの窒素含有有機種(好ましくはジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)のポリマーまたはコポリマー)、および少なくとも1つの無機塩を含む。サイジング組成物は、少なくとも1つの光学増白剤を含有してもよく、その例としては、クラリアントのLeucophor BCWおよびLeucophor FTSである。
【0007】
顔料インクジェット印刷用に意図した基材において塩化カルシウムなどの2価金属塩を使用する利点は、適合性の水溶性光学増白剤が入手できるようになって初めて完全に実現できる。しかし、水溶性光学増白剤は高カルシウム濃度において沈殿する傾向があることが良く知られている。(例えば、Tracing Technique in Geohydrology、50頁、Werner KassおよびHorst Behrens著、Taylor & Francisより発行、1998年(非特許文献1)を参照のこと)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
したがって本発明は、基材、好ましくは紙を光学増白させるサイジング組成物を提供し、この組成物は特に顔料インクジェット印刷に適しており、
(a)少なくとも1つのバインダー
(b)塩化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、ギ酸カルシウム、ギ酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、チオ硫酸カルシウム、チオ硫酸マグネシウム、および前記化合物の混合物からなる群から選択される、少なくとも1つの2価金属塩と;
(c)水、および
(d)少なくとも1つの式(1)の光学増白剤を含む。
【0013】
【化1】
(式中、
MおよびXは、互いに同一でも異なっていても良く、互いに独立に、水素、アルカリ金属カチオン、アンモニウム、C
1〜C
4直鎖若しくは分岐鎖アルキル基で一置換、二置換、若しくは三置換されたアンモニウム、C
1〜C
4直鎖若しくは分岐鎖ヒドロキシアルキル基で一置換、二置換、若しくは三置換されたアンモニウム、または前記化合物の混合物からなる群から選択され、
nは0〜6である。)
【0014】
好ましい式(1)の化合物としては、
MおよびXは、互いに同一でも異なっていても良く、互いに独立に、アルカリ金属カチオン、および、C
1〜C
4直鎖若しくは分岐鎖ヒドロキシアルキル基で三置換されたアンモニウム、または前記化合物の混合物からなる群から選択され、
nは0〜6である、化合物である。
【0015】
より好ましい式(1)の化合物としては、
MおよびXは、互いに同一でも異なっていても良く、互いに独立に、Li、Na、K、および、C
1〜C
3直鎖若しくは分岐鎖ヒドロキシアルキル基で三置換されたアンモニウム、または前記化合物の混合物からなる群から選択され、
nは0〜6である、化合物である。
【0016】
特に好ましい式(1)の化合物としては、
MおよびXは、互いに同一でも異なっていても良く、互いに独立に、Na、K、および、トリエタノールアミン、または前記化合物の混合物からなる群から選択され、
nは0〜6である、化合物である。
【0017】
サイジング組成物中の光学増白剤の濃度は、0.2〜30g/lの間、好ましくは1〜15g/lの間、最も好ましくは2〜12g/lの間であってもよい。
【0018】
バインダーは、典型的には、酵素により修飾されたデンプン、および化学的に修飾されたデンプンであり、例えば、酸化デンプン、ヒドロキシエチル化デンプン、またはアセチル化デンプンである。デンプンは、実施する特定の実施形態によって、天然デンプン、アニオン性デンプン、カチオン性デンプン、または両性デンプンとすることもできる。デンプン源は任意のものであってもよいが、好ましくはデンプン源の例としては、トウモロコシ、コムギ、ジャガイモ、コメ、タピオカ、およびサゴが含まれる。ポリビニルアルコールのような一つ以上の二次バインダーを使用してもよい。
【0019】
サイジング組成物中のバインダーの濃度は、1〜30重量%の間、好ましくは2〜20重量%の間、最も好ましくは5〜15重量%の間であってもよい。
【0020】
好ましい2価金属塩は、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、チオ硫酸カルシウム、またはチオ硫酸マグネシウム、または前記化合物の混合物からなる群から選択される。
【0021】
より好ましい2価金属塩は、塩化カルシウムまたは塩化マグネシウムまたは前記化合物の混合物からなる群から選択される。
【0022】
サイジング組成物中の2価金属塩の濃度は、1〜100g/lの間、好ましくは2〜75g/lの間、最も好ましくは5〜50g/lの間であってもよい。
【0023】
2価金属塩がカルシウム塩およびマグネシウム塩の混合物である場合、カルシウム塩の量は0.1〜99.9%の範囲であってもよい。
【0024】
サイジング組成物のpH値は、典型的には5〜13、好ましくは6〜11の範囲である。
【0025】
1つまたは複数の複数のバインダー、1つまたは複数の2価金属塩、1つまたは複数の光学増白剤および水に加えて、サイジング組成物は光学増白剤の調製中に形成される副生成物並びに他の従来の紙添加剤を含有してもよい。そのような添加剤の例は、キャリアー、消泡剤、ワックスエマルション、染料、無機塩、可溶化補助剤、防腐剤、錯化剤、表面サイズ剤、架橋剤、顔料、特殊樹脂などである。
【0026】
本発明の付加的な形態において、サイジング組成物における光学増白剤の機能を高めるために、光学増白剤をポリビニルアルコールと前混合すればよい。ポリビニルアルコールは60〜99%を含む任意の加水分解度を有していてもよい。光学増白剤/ポリビニルアルコールの混合物は、任意の量の光学増白剤とポリビニルアルコールを含むことができる。光学増白剤/ポリビニルアルコールの混合物の製造の例としては、国際公開第2008/017623号中に見つけることができる。
【0027】
光学増白剤/ポリビニルアルコールの混合物は水性混合物であるとよい。
【0028】
光学増白剤/ポリビニルアルコールの混合物は、少なくとも一つの光学増白剤が10〜50重量%含む任意の量の光学増白剤を含有するとよい。さらに、光学増白剤/ポリビニルアルコールの混合物は、ポリビニルアルコールが0.1〜10重量%含む任意の量の光学増白剤を含有するとよい。
【0029】
サイジング組成物は、当技術分野で既知の任意の表面処理法によって、紙基材の表面に塗工してもよい。塗工方法の例としては、サイズプレス塗工、カレンダーサイズ塗工、タブサイジング、 コーティング塗工、およびスプレー塗工が挙げられる(例えばHandbook for Pulp & Paper Technologists、283〜286頁、G. A. Smook著、第2版、Angus Wilde Publications、1992年、および米国特許第2007/0277950号を参照のこと)。好ましい塗工の方法は、パドルサイズプレスまたはロッドメータサイズプレスなどのサイズプレスである。あらかじめ作られた紙のシートを、サイジング組成物に浸した2本ロールニップに通す。紙は組成物の一部を吸収し、残りはニップで除去される。
【0030】
紙基材は、合成による、または、木材起源もしくは非木材起源を含む任意の繊維性植物から調達することができるセルロース繊維のウェブを含有する。好ましくは、セルロース繊維は硬材および/または軟材から調達される。繊維は、未使用繊維若しくは再生繊維、または未使用繊維および再生繊維の任意の組み合わせであってもよい。
【0031】
紙基材中に含有されるセルロース繊維は、例えばHandbook for Pulp & Paper Technologists、G. A. Smook著、第2版、Angus Wilde Publications、1992年のそれぞれ13章および15章に記載のように、物理的および/または化学的方法によって改変されていてもよい。セルロース繊維の化学的改変の一例は、例えば欧州特許第884,312号明細書、欧州特許第899,373号明細書、国際公開第02/055646号、国際公開第2006/061399号、国際公開第2007/017336号、米国特許第2006−0185808号明細書および米国特許第2007−0193707号明細書に記載のように、光学増白剤を添加することである。
【0032】
サイジング組成物は、光学増白剤(または光学増白剤/ポリビニルアルコールの混合物)および2価金属塩を、20℃〜90℃の間の温度で、あらかじめ作られたバインダーの水溶液に加えることにより調製される。好ましくは、光学増白剤(または光学増白剤/ポリビニルアルコールの混合物)の前に、そして、50℃〜70℃の間の温度で2価金属塩を加える。
【0033】
本発明のサイジング組成物を含む紙基材は、少なくとも80、少なくとも90および少なくとも95の任意のISO輝度(brightness)を有するとよい。
【0034】
本発明の紙基材は、少なくとも130、少なくとも146、少なくとも150および少なくとも156の任意のCIE白色度を有するとよい。同程度のレベルの光学増白剤を含む従来のサイジング組成物に比べて、サイジング組成物によりシートの白色度を増強させることができる。
【0035】
光学増白剤を比較可能な量を含んだ従来のサイジング組成物と比較して、本発明のサイジング組成物は、それが適用されたシートの緑色化傾向を増加させる。緑色化はシートの飽和(saturation)と関連があり、光学増白剤の量が増加したときでさえ、シートの白色度が増加することはない。測定された緑色化傾向はa*−b*ダイアグラムで示され、a*およびb*はCIEラボシステムの色座標である。したがって、本発明のサイジング組成物であれば、ユーザーに対して、飽和に達することなしに2価金属イオンの存在下で紙の光学増白剤濃度を十分に上昇させることができ、それと同時に、紙のCIE白色度およびISO輝度を維持または増強させることができる。
【0036】
本発明の紙基材がインクジェット印刷に適した改善された特性を示す一方で、また、基材は多目的にそしてレーザージェット印刷に使用してもよい。これらの適用例は、ペーパーロール基材と共にカットサイズの紙基材を求めるものも含むとよい。
【0037】
本発明の紙基材は画像を含んでもよい。画像は染料、顔料およびトナーを含む任意の材料により基材上に形成されるとよい。
【0038】
基材上に画像が形成されるとき、プリント濃度は少なくとも1.0、少なくとも1.2、少なくとも1.4、少なくとも1.6の光学プリント濃度である任意の光学プリント濃度であればよい。光学プリント濃度の測定方法は欧州特許第1775141号明細書中に記載されている。
【0039】
M=Naおよびn=6である式(1)の化合物の調製は、国際公開第02/060883号および国際公開第02/077106号において以前に記載されている。M≠Xおよびn<6である式(1)の化合物の調製については、例は示されていない。
【0040】
式(1)の化合物は、シアヌル酸ハロゲン化物を
a)遊離酸、または部分的若しくは完全な塩の形態である、式(2)
【0041】
【化2】
のアミン、
(b)遊離酸、または部分的若しくは完全な塩の形態である、式(3)
【0042】
【化3】
のジアミン、および
c)式(4)
【0043】
【化4】
のジイソプロパノールアミン
と段階的に反応させることにより調製される。シアヌル酸ハロゲン化物としては、フッ化物、塩化物、または臭化物を使用することができる。塩化シアヌルが好ましい。
【0044】
シアヌル酸ハロゲン化物を水中に懸濁させて各反応を水性媒体中で行うか、またはシアヌル酸ハロゲン化物をアセトンなどの溶媒中に溶解させて各反応を水性/有機媒体中で行ってもよい。各アミンは希釈しないで導入しても、または水溶液若しくは懸濁液の形態で導入してもよい。アミンは任意の順番で反応させることができるが、芳香族アミンを最初に反応させるのが好ましい。各アミンは化学量論量で、または過剰量で反応させてよい。典型的には、芳香族アミンは化学量論量でまたはわずかに過剰量で反応させる。一般にジイソプロパノールアミンは化学量論量よりも5〜30%過剰に使用される。
【0045】
シアヌル酸ハロゲン化物の第1のハロゲンの置換については、0〜20℃の範囲の温度で、酸性から中性のpH条件下、好ましくは2〜7のpH範囲で行うのが好ましい。シアヌル酸ハロゲン化物の第2のハロゲンの置換については、20〜60℃の範囲の温度で、弱酸性から弱アルカリ性条件下、好ましくは4〜8の範囲のpHで行うのが好ましい。シアヌル酸ハロゲン化物の第3のハロゲンの置換については、60〜102℃の範囲の温度で、弱酸性からアルカリ性条件下、好ましくは7〜10の範囲のpHで行うのが好ましい。
【0046】
各反応のpHは一般に適切な塩基を加えることにより制御され、塩基の選択は所望の生成物の組成によって決定される。好ましい塩基は、例えばアルカリ金属(例えばリチウム、ナトリウム、またはカリウム)の水酸化物、炭酸塩、若しくは重炭酸塩、または脂肪族3級アミン(例えばトリエタノールアミン若しくはトリイソプロパノールアミン)である。2種以上の異なる塩基の組み合わせを使用する場合、塩基は任意の順番で、または同時に加えてもよい。
【0047】
酸を用いて反応のpHを調整する必要がある場合、使用することができる酸の例としては、塩酸、硫酸、ギ酸、および酢酸が挙げられる。
【0048】
1つまたは複数の一般式(1)の化合物を含有する水溶液は、膜ろ過によってまたは一連の沈殿に続いて適切な塩基を用いて溶解させることによって、任意選択により脱塩してもよい。
【0049】
好ましい膜ろ過法は、例えばポリスルホン、フッ化ポリビニリデン、酢酸セルロース、または薄膜を用いた限外ろ過法である。
【実施例】
【0050】
以下の例は、本発明をさらに詳細に実証することになろう。別段示されない限り、「部」は「重量部」を意味し、「%」は「重量%」を意味する。
【0051】
例1
段階1:31.4部のアニリン−2,5−ジスルホン酸一ナトリウム塩を150部の水に加え、およそ25℃およびおよそ8〜9のpH値であるおよそ30%の水酸化ナトリウム溶液を用いて溶解させる。得られる溶液をおよそ30分かけて、30部の水、70部の氷、および0.1部の消泡剤に分散させた18.8部の塩化シアヌルに加える。氷/水浴を用いて、必要であれば氷を反応混合物に加えることにより、温度を5℃未満に保つ。およそ20%の炭酸ナトリウム溶液を用いて、pHをおよそ4〜5に維持する。添加の最後に、およそ20%の炭酸ナトリウム溶液を用いてpHをおよそ6に上昇させ、反応が完了するまで(3〜4時間)およそ0〜5℃で撹拌を続ける。
段階2:8.8部の重炭酸ナトリウムを反応混合物に加える。およそ45〜50℃およびおよそ8〜9のpH値であるおよそ30%の水酸化ナトリウム溶液を用いて、窒素下で18.5部の4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸を80部の水に溶解させることによって得られる水溶液を、反応混合物中に滴下する。得られる混合物を反応
が完了するまで(3〜4時間)およそ45〜50℃で加熱する。
段階3:次いで17.7部のジイソプロパノールアミンを加え、温度をおよそ85〜90℃に徐々に上昇させ、およそ30%の水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを8〜9に保ちながら、反応が完了するまで(2〜3時間)この温度で維持する。次いで温度を50℃に低下させ、反応混合物をろ過し室温に冷却する。溶液を調整してM=X=Naおよびn=6である式(1)の化合物の水溶液(0.125mol/kg、17.8%)をもたらす力価にする。
【0052】
例2
段階3でおよそ30%の水酸化ナトリウム溶液の代わりにおよそ30%の水酸化カリウム溶液を使用したこと以外は例1と同じ手順により、M=Na、X=Kおよび4.5≦n≦5.5である式(1)の化合物の水溶液(0.125mol/kg、およそ18.0%)を得る。
【0053】
例3
段階2で8.8部の重炭酸ナトリウムの代わりに10部の重炭酸カリウムを使用したこと、および段階2および3でおよそ30%の水酸化ナトリウム溶液の代わりにおよそ30%の水酸化カリウム溶液を使用したこと以外は例1と同じ手順により、M=Na、X=Kおよび2.5≦n≦4.5である式(1)の化合物の水溶液(0.125mol/kg、およそ18.3%)を得る。
【0054】
例4
段階1、2および3でおよそ30%の水酸化ナトリウム溶液の代わりにおよそ30%の水酸化カリウム溶液を使用したこと、段階1でおよそ20%の炭酸ナトリウム溶液の代わりにおよそ20%の炭酸カリウムを使用したこと、および段階2で8.8部の重炭酸ナトリウムの代わりに10部の重炭酸カリウムを使用したこと以外は例1と同じ手順により、M=Na、X=Kおよび0≦n≦2.5である式(1)の化合物の水溶液(0.125mol/kg、およそ18.8%)を得る。
【0055】
例5
段階3でおよそ30%の水酸化ナトリウム溶液の代わりにおよそ10%の水酸化リチウム溶液を使用したこと以外は例1と同じ手順により、M=Na、X=Liおよび4.5≦n≦5.9である式(1)の化合物の水溶液(0.125mol/kg、およそ17.7%)を得る。
【0056】
例6
段階2で8.8部の重炭酸ナトリウムの代わりに3.7部の炭酸リチウムを使用したこと、段階2および3でおよそ30%の水酸化ナトリウム溶液の代わりにおよそ10%の水酸化リチウム溶液を使用したこと以外は例1と同じ手順により、M=Na、X=Liおよび2.5≦n≦4.5である式(1)の化合物の水溶液(0.125mol/kg、およそ17.3%)を得る。
【0057】
例7
例1で得られた式(1)の化合物の濃縮溶液の濃縮塩酸溶液による沈殿によりM=Hである式(1)の化合物を単離し、その後濾過する。その後、プレスケークを7当量のトリエタノールアミンの水性溶液に溶解し、M=Na、X=トリエタノールアンモニウムおよび1≦n≦3である式(1)の化合物の水溶液(0.125mol/kg、およそ24.2%)を得る。
【0058】
例8
− 例4により調整されたM=Na、X=Kおよび0≦n≦2.5である式(1)の化合物を含有する水溶液と、
− 85%の加水分解度および3.4〜4.0mPa.sのブルックフィールド粘度を有するポリビニルアルコールと、
− 水と
を、90〜95℃まで加熱しながら、室温まで冷却した後に安定のままである透明溶液が得られるまで、互いに撹拌することにより、光学増白剤溶液8を生成させる。
【0059】
例4により調整されたM=Na、X=Kおよび0≦n≦2.5である式(1)の化合物を0.125mol/kgの濃度で含み、85%の加水分解度および3.4〜4.0mPa.sのブルックフィールド粘度を有するポリビニルアルコールを2.5%含む、最終的な水溶液8を得るために、各成分の部を選択する。溶液8のpHは8〜9の範囲である。
【0060】
塗工例1〜8
例1〜8に従って調製される水溶液を、0〜50g/lの濃度の範囲(0〜およそ12.5g/lの光学増白剤)で、塩化カルシウム(35g/l)およびアニオン性デンプン(50g/l)(Penford Starch 260)の60℃の撹拌水溶液に加えることにより、サイジング組成物を調製する。サイジング溶液を冷却し、次いで実験用サイズプレスの回転するローラー間に注ぎ、市販の75g/m
2AKD(アルキルケテンダイマー)のサイズ処理された、漂白済みの紙基材シートに塗布する。処理済みの紙を平台乾燥機中で70℃にて5分間乾燥させる。
【0061】
乾燥させた紙をコンディショニングし、次いで較正済みのAuto Elrepho分光光度計でCIE白色度を測定する。結果を表1に示す。
【0062】
比較例1
米国特許第2005/0124755号A1明細書の8ページの表中に開示されているヘキサスルホ−化合物の水溶液を、0〜50g/lの濃度の範囲(0〜およそ12.5g/lの光学増白剤)で、塩化カルシウム(35g/l)およびアニオン性デンプン(50g/l)(Penford Starch 260)の60℃の撹拌水溶液に加えることにより、サイジング組成物を調製する。サイジング溶液を冷却し、次いで実験用サイズプレスの回転するローラー間に注ぎ、市販の75g/m
2AKD(アルキルケテンダイマー)のサイズ処理された、漂白済みの紙基材シートに塗布する。処理済みの紙を平台乾燥機中で70℃にて5分間乾燥させる。乾燥させた紙をコンディショニングし、次いで較正済みのAuto Elrepho分光光度計でCIE白色度を測定する。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表1の結果は、本発明の組成物による卓越した白色度効果を明確に示している。
【0065】
印刷性評価を、ドロウダウンロッドを使用して黒色顔料を紙に適用して、その後乾燥して、行った。
【0066】
光学濃度はIharaのOptical Densitometer R710を使用して測定した。その結果を表2に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
表2の結果によれば、本発明の組成物はインク印刷濃度において不利な効果を示さない。