(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6457643
(24)【登録日】2018年12月28日
    
      
        (45)【発行日】2019年1月23日
      
    (54)【発明の名称】支持ピン及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
   H01L  21/683       20060101AFI20190110BHJP        
【FI】
   H01L21/68 N
【請求項の数】4
【全頁数】7
      (21)【出願番号】特願2017-530550(P2017-530550)
(86)(22)【出願日】2015年7月29日
    
      (86)【国際出願番号】JP2015071549
    
      (87)【国際公開番号】WO2017017821
(87)【国際公開日】20170202
    【審査請求日】2018年1月24日
      
        
          (73)【特許権者】
【識別番号】512225287
【氏名又は名称】堺ディスプレイプロダクト株式会社
          (74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
        
      
      
        (72)【発明者】
          【氏名】加藤  久幸
              
            
        
      
    
      【審査官】
        内田  正和
      
    (56)【参考文献】
      
        【文献】
          特開2012-87336(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2014-225585(JP,A)      
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L    21/683      
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  基板を支持するヘッドと、該ヘッドを支持する支持筒とを備え、前記ヘッド及び支持筒夫々に前記ヘッド及び支持筒を連結する連結部材を挿入する貫通孔が設けられており、前記基板に膜を形成する成膜装置の反応室に配置される支持ピンにおいて、
  前記ヘッドは、
  前記基板が載置される載置部と、
  該載置部から突出しており、前記支持筒の端部に挿入される挿入部と
  を備え、
  前記挿入部は、前記支持筒の径方向における寸法が前記支持筒の内径よりも大きい大寸部分を有し、
  前記大寸部分が挿入される溝が前記支持筒の前記端部に設けられていること
  を特徴とする支持ピン。
【請求項2】
  前記挿入部は、前記径方向の寸法が前記支持筒の内径に対応した小寸部分を有し、
  前記大寸部分は前記小寸部分から径方向外向きに突出していること
  を特徴とする請求項1に記載の支持ピン。
【請求項3】
  前記挿入部は、前記径方向の寸法が前記支持筒の内径に対応した小寸部分を有し、
  前記大寸部分は前記載置部から前記支持筒の軸方向に突出し、
  前記小寸部分は前記大寸部分の突出端部から前記軸方向に突出していること
  を特徴とする請求項1に記載の支持ピン。
【請求項4】
  請求項1から3のいずれか一つに記載の支持ピンと、
  該支持ピンを収納する反応室と
  を備えることを特徴とする成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、基板を支持する支持ピン及び該支持ピンに支持された基板に膜を形成する成膜装置に関する。
 
【背景技術】
【0002】
  従来、基板に膜を形成する成膜装置、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。成膜装置は、反応室と、該反応室に配してあり、基板を支持するサセプタとを備える。サセプタは昇降可能に構成されており、上下に貫通した複数の貫通孔を有する。各貫通孔には、反応室の底部に設けた支持ピンが挿入される。
【0003】
  成膜は以下のようにして実行される。サセプタが下降し、支持ピンの上部がサセプタよりも上側に位置する。搬送装置は基板を反応室に搬送し、支持ピンは搬送された基板を支持する。サセプタが上昇し、サセプタが基板を支持する。反応室内にガスが供給され、基板に膜が形成される。
 
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−237026号公報
 
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
  支持ピンは、上下に延びた支持筒と、該支持筒の上端部に挿入されたヘッドとを備える。ヘッド及び支持筒に貫通孔が設けられている。貫通孔に連結部材が挿入され、ヘッド及び支持筒が連結される。搬送装置によって基板の反応室への搬出入が繰り返され、ヘッドには基板が繰り返し載置される。貫通孔によってヘッドの強度は低下しており、基板が繰り返し載置されることでヘッドが破損するおそれがある。
【0006】
  本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、破損を抑制する支持ピン及び該支持ピンを備える成膜装置を提供することを目的とする。
 
【課題を解決するための手段】
【0007】
  本発明に係る支持ピンは、基板を支持するヘッドと、該ヘッドを支持する支持筒とを備え、前記ヘッド及び支持筒夫々に前記ヘッド及び支持筒を連結する連結部材を挿入する貫通孔が設けられており、前記基板に膜を形成する成膜装置の反応室に配置される支持ピンにおいて、前記ヘッドは、前記基板が載置される載置部と、該載置部から突出しており、前記支持筒の端部に挿入される挿入部とを備え、前記挿入部は、前記支持筒の径方向における寸法が前記支持筒の内径よりも大きい大寸部分を有し、前記大寸部分が挿入される溝が前記支持筒の前記端部に設けられていることを特徴とする。
【0008】
  本発明に係る支持ピンは、前記挿入部は、前記径方向の寸法が前記支持筒の内径に対応した小寸部分を有し、前記大寸部分は前記小寸部分から径方向外向きに突出していることを特徴とする。
【0009】
  本発明に係る支持ピンは、前記挿入部は、前記径方向の寸法が前記支持筒の内径に対応した小寸部分を有し、前記大寸部分は前記載置部から前記支持筒の軸方向に突出し、前記小寸部分は前記大寸部分の突出端部から前記軸方向に突出していることを特徴とする。
【0010】
  本発明に係る成膜装置は、上述したいずれかの支持ピンと、該支持ピンを収納する反応室とを備えることを特徴とする。
【0011】
  本発明においては、挿入部に大寸部分を形成し、ヘッドの強度を向上させる。
【0012】
  本発明においては、大寸部分のみならず、小寸部分をも形成し、ヘッドの強度を更に向上させる。
【0013】
  本発明においては、大寸部分及び小寸部分によって段が形成され、小寸部分が支持筒に挿入され、ヘッドの揺動が抑制される。
 
【発明の効果】
【0014】
  本発明に係る支持ピン及び成膜装置は、挿入部に大寸部分を形成し、ヘッドの強度を向上させるので、ヘッドの破損を抑制することができる。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態1に係る成膜装置の構成を略示する側面断面図である。
 
【
図2】サセプタ及び支持ピンを略示する側面断面図である。
 
【
図3】支持ピンの構成を略示する拡大分解斜視図である。
 
【
図4】実施の形態2に係る成膜装置のヘッドの構成を略示する拡大分解斜視図である。
 
【
図5】
図4のV―V線を切断線とした略示断面図である。
 
【
図6】実施の形態3に係る成膜装置の挿入部の略示断面図である。
 
【
図7】実施の形態4に係る成膜装置の支持ピンを略示する部分拡大分解斜視図である。
 
【
図8】支持ピンを略示する部分拡大縦断面図である。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0016】
  (実施の形態1)
  以下本発明を実施の形態1に係る成膜装置を示す図面に基づいて説明する。
図1は成膜装置の構成を略示する側面断面図、
図2はサセプタ及び支持ピンを略示する側面断面図である。
 
【0017】
  成膜装置は反応室1を備える。反応室1には供給管3を介して、成膜のためのガスを供給するガス供給部2が接続されている。反応室1の側面に基板10を搬出入するための搬出入口4が設けられている。反応室1には排気管6を介して、真空ポンプ5が接続されている。
 
【0018】
  反応室1の上側にガスを分散するディフューザ7が設けられている。ディフューザ7は供給管3に接続されており、上部電極としても機能する。反応室1の底面に基板10を支持する複数の支持ピン9が立設している。反応室1の下側には、基板10を支持し、前後左右に延びた平板状のサセプタ8が設けられている。サセプタ8には、上下に貫通した複数のピン用孔8aが設けられている。ピン用孔8aは支持ピン9に対応した形状をなす。ピン用孔8aには支持ピン9が挿入されている。サセプタ8は上下動可能に構成されている。サセプタ8は下部電極としても機能する。ディフューザ7及びサセプタ8は電圧を印加する電圧印加装置(図示略)に接続されている。
 
【0019】
  成膜は以下のようにして実行される。
図2の矢印にて示すように、サセプタ8が下降し、支持ピン9の上部がサセプタ8よりも上側に位置する。搬送装置(図示略)によって、搬出入口4から反応室1に基板10が搬入される。支持ピン9は搬送された基板10を支持する。そしてサセプタ8が上昇し、基板10を支持する。ガス供給部2から反応室1内にガスが供給され、電圧印加装置によってディフューザ7及びサセプタ8に電圧が印加され、基板10に膜が形成される。膜形成後、真空ポンプ5によって反応室1内のガスが排気される。
 
【0020】
  図3は、支持ピン9の構成を略示する拡大分解斜視図である。支持ピン9は、反応室1に立設した支持筒20と、該支持筒20の上端部にて支持されたヘッド30とを備える。支持筒20の上端面には二つの溝21、21が形成されている。溝21は上端側が開口したコ字状に形成されており、軸方向に延びている。溝21は径方向に貫通している。二つの溝21、21は径方向に対向している。
 
【0021】
  支持筒20の上端部周面に径方向に貫通した二つの長孔22、22が形成されている。長孔22は軸方向に延びている。軸回りにおいて、長孔22は溝21に対して略90度偏倚した位置に配されており、二つの長孔22、22は径方向に対向している。二つの溝21、21及び二つの長孔22、22は、90度の位相を空けて軸回りに交互に配されている。
 
【0022】
  ヘッド30は、基板10が一面に載置される円盤状の載置部31と、該載置部31の他面から突出した板状の挿入部32とを備える。載置部31の直径は支持筒20の外径以上である。前記載置部31の径方向における挿入部32の寸法(以下、載置部31の径方向における寸法を横寸法という)は載置部31の直径以下であり、また支持筒20の外径と略同じである。即ち、挿入部32の横寸法は支持筒20の内径よりも大きい。挿入部32は大寸部分を構成する。なお挿入部32の横寸法を載置部31の直径よりも大きくしてもよい。
 
【0023】
  載置部31の軸方向における挿入部32の寸法は、支持筒20の軸方向における溝21の寸法(深さ)と略同じである。挿入部32には、長孔22に対応する貫通孔33が設けられている。
 
【0024】
  貫通孔33及び長孔22を対応させて挿入部32が溝21に挿入されている。棒状の連結部材40、例えばアルミニウム部材が長孔22、22及び貫通孔33それぞれに挿入され、支持筒20及び挿入部32を貫通している。長孔22、22から突出した連結部材40の端部はかしめられており、かしめによってヘッド30及び支持筒20が連結されている。なお支持筒20の軸方向における貫通孔33の位置は寸法公差の範囲内で、ヘッド30毎に異なる場合があるが、支持筒20の貫通した孔を長孔22にすることによって、貫通孔33の寸法公差がヘッド30及び支持筒20の組み立てに影響することを防止している。
 
【0025】
  挿入部32の横寸法は、支持筒20の内径よりも大きいので、載置部31の径方向に平行な面を切断面とした貫通孔33付近における挿入部32の断面積は、挿入部32の横寸法が支持筒20の内径以下に設定されている場合に比べて大きい。そのためヘッド30の強度が向上し、ヘッド30の破損を抑制することができる。なお載置部31と挿入部32との間に補強のためのリブを設けてもよい。
 
【0026】
  (実施の形態2)
  以下本発明を実施の形態2に係る成膜装置を示す図面に基づいて説明する。
図4は、ヘッド30の構成を略示する拡大分解斜視図、
図5は、
図4のV―V線を切断線とした略示断面図である。挿入部34は、載置部31の他面から突出しており、支持筒20の内径と略同じ直径を有する円柱状の小寸部分34aと、該小寸部分34aの外周面から径方向に突出した直方体状の二つの大寸部分34b、34bとを備える。二つの大寸部分34b、34bは互いに反対向きに突出している。二つの大寸部分34b、34bの間の横寸法は支持筒20の外径と略同じである。小寸部分34aには軸方向に貫通した貫通孔33が設けられている。
 
【0027】
  貫通孔33は、軸回りにおいて、大寸部分34bから90度偏倚した位置に配されており、また長孔22に対応した位置に配されている。貫通孔33及び長孔22を対応させて、大寸部分34b、34bは溝21、21に挿入され、小寸部分34aは支持筒20の内周に挿入されている。連結部材40は長孔22及び貫通孔33それぞれに挿入されている。
 
【0028】
  挿入部34は、大寸部分34bのみならず、小寸部分34aをも備えるので、貫通孔33付近における挿入部34の断面積が更に大きくなり、ヘッド30の強度を更に向上させることができる。なお載置部31と小寸部分34aとの間に補強のためのリブを設けてもよい。
 
【0029】
  実施の形態2に係る成膜装置の構成の内、実施の形態1と同様な構成については、同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
 
【0030】
  (実施の形態3)
  以下本発明を実施の形態3に係る成膜装置を示す図面に基づいて説明する。
図6は、挿入部34の略示断面図である。支持筒20の内周が平面視矩形に形成されている場合、
図6に示すように、小寸部分34cも平面視矩形に形成する。なお
図5の支持ピンよりも断面積を大きくする場合、
図6の矩形が
図5の小寸部分34aの円形に外接するように、支持ピン9を設計すればよい。
 
【0031】
  実施の形態3に係る成膜装置の構成の内、実施の形態1又は2と同様な構成については、同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
 
【0032】
  (実施の形態4)
  以下本発明を実施の形態4に係る成膜装置を示す図面に基づいて説明する。
図7は、支持ピン9を略示する部分拡大分解斜視図、
図8は、支持ピン9を略示する部分拡大縦断面図である。なお
図7及び
図8において、連結部材40の記載は省略している。
 
【0033】
  挿入部35は、載置部31の他面から突出した板状の大寸部分35aと、該大寸部分35aの突出端部から突出した円柱状の小寸部分35bとを備える。大寸部分35aの横寸法は支持筒20の外径と略同じであり、小寸部分35bの直径は支持筒20の内径と略同じである。大寸部分35a及び小寸部分35bによって、段差が形成されている。
 
【0034】
  大寸部分35aには、長孔22、22に対応する貫通孔33が設けられている。貫通孔33を長孔22に対応させて、小寸部分35bが支持筒20の内周に挿入され、大寸部分35aが溝21に挿入されている。連結部材40は長孔22、22及び貫通孔33それぞれに挿入されている。
 
【0035】
  大寸部分35a及び小寸部分35bによって段が形成され、小寸部分35bが支持筒20に挿入されているので、径方向におけるヘッド30の揺動が抑制される。
 
【0036】
  実施の形態4に係る成膜装置の構成の内、実施の形態1〜3と同様な構成については、同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
 
【0037】
  今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、請求の範囲内での全ての変更及び請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
 
 
【符号の説明】
【0038】
  1  反応室
  9  支持ピン
  10  基板
  20  支持筒
  21  溝
  30  ヘッド
  31  載置部
  32、34、35  挿入部
  33  貫通孔
  34a、34c、35b  小寸部分
  34b、35a  大寸部分
  40  連結部材