(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
蒸気の供給を制御して温度を制御する制御部と、菓子その他可食物の搬入搬出扉と蒸気の供給口とを備えた収容室とを有し、収容室内に載置した菓子その他可食物に蒸気を供給しながら加熱して加工する蒸し機であって、
前記収容室は、
収容室内の菓子その他可食物の載置エリアより下方に、低温の外気が収容室内に逆流しないように逆止弁を備えた排気口と、
収容室内の菓子その他可食物の載置エリアより上方に、収容室内の高温の蒸気が流出しないように逆止弁を備えた給気口と、を備え、
収容室内を100℃未満に加熱する場合、制御部により100℃以上の蒸気の供給と遮断の断続的な切換により温度制御が行われ、
蒸気の供給時には排気口より排気が行われ、蒸気の遮断時には給気口から外気を導入することで所定の圧力を保つことを特徴とする蒸し機。
前記排気口に接続される排気管と前記給気口に接続される給気管とをさらに備え、排気管と給気管とを隣接させる、若しくは給気管又は排気管の一方が他方を貫通する二重管構造とすることにより排気管内の排気により給気管内の給気を加熱することを特徴とする請求項1に記載の蒸し機。
蒸気の供給を制御して温度を制御する制御部と、菓子その他可食物の搬入搬出扉と蒸気の供給口を備えた収容室とを有し、収容室内に載置した菓子その他可食物に蒸気を供給しながら加熱して加工する蒸し機による加熱処理方法であって、
収容室内に100℃以上の蒸気を供給して収容室内に載置された菓子その他可食物を収容室内が設定温度に到達するまで加熱する段階と、
設定温度に到達後、所定の時間収容室内が設定温度を維持するように制御する段階と、を有し、
前記設定温度を維持するように制御する段階は、
100℃以上の蒸気を供給する段階と、
蒸気の供給を遮断する段階と、を含み、
制御部は所定の時間内で蒸気を供給する段階と蒸気の供給を遮断する段階とを選択的に実行することを繰り返し、
上記100℃以上の蒸気を供給する段階には収容室内の菓子その他可食物の載置エリアより下方に設けられ、低温の外気が収容室内に逆流しないように逆止弁を備えた排気口より排気が行われ、
上記蒸気の供給を遮断する段階には収容室内の菓子その他可食物の載置エリアより上方に設けられ、収容室内の高温の蒸気が流出しないように逆止弁を備えた給気口から外気が導入されることにより収容室内の圧力が保たれることを特徴とする加熱処理方法。
【背景技術】
【0002】
饅頭や蒸しパンなど蒸気を利用して調理する加工食品は、小規模であれば蒸し器とせいろを使用して手軽に作ることができ、広く普及している。また一度に大量の加熱処理を行う業務用の蒸し機も様々なものが開発され、古くから活用されている。
こうした業務用の蒸し機としては、トンネル内に蒸気を充満させ、その中を被加工物である菓子その他可食物を連続搬送するトンネル式蒸し機と、多段のラックに載置した菓子その他可食物を収容室に設置し、収容室に蒸気を供給して加熱処理を行うバッチ式などの密閉式の蒸し機とがある。
【0003】
トンネル式蒸し機は装置も大型化しやすく、処理能力も高いことから大量生産に適している。一方密閉式の蒸し機は設置面積もトンネル式蒸し機に比べて小さく、又加熱する品種の切り替えも容易であるなど扱いやすいため活用範囲が広い。
密閉式の蒸し機は多段のラックを収容するため、一般的に収容室は縦型であり、その処理能力を上げるためには縦に長くなることから、収容室内の温度分布のばらつきが問題となりやすい。
【0004】
特許文献1には、底付近に設けられた排気口と、底付近に配設されるスパージ管へ蒸気を供給する蒸気供給部と、外気を強制供給又は内部の蒸気を循環する送風機とを備え、対向する側壁の内部に中空部を設けるとともに、内側壁面に無数の蒸気流入口及び流出口を穿設して蒸気が庫内を循環するようにして内部の温度を均一化する蒸し庫が開示されている。
【0005】
100℃以上の蒸気で加熱し続ける加熱処理方法の場合は、庫内即ち収容室内の蒸気を循環させることで温度分布のばらつきの低減が期待できるが、多くの蒸し菓子では始めから高温で加熱処理を行うと、表面のみが蒸成が進行してしまい、内部への熱が伝わりにくくなってしまうために蒸し状態にむらができたり表面状態がきれいな仕上がりになりにくかったりなどの問題が起こりやすい。そこで内部まで均一に熱が入りやすいように、100℃未満の温度でゆっくり加熱することが、製品品質に大きく影響する。
【0006】
密閉式の蒸し機の場合、通常100℃以上の蒸気で加熱処理を行うため、100℃未満の温度で温度制御を行う場合、蒸気の供給と遮断の繰り返しによって収容室内に入る熱量を制御して所定の温度になるように調整を行う必要がある。このため100℃未満の温度制御はばらつきが起きやすいという課題がある。
【0007】
蒸気による加熱の場合、蒸気が被加熱物の表面で凝縮する凝縮伝熱により、高い熱伝達率での伝熱が行われる。加熱開始時に蒸気が空気で満たされた収容室内に供給されると、蒸気と空気との混合気体となるが、同じ圧力下では蒸気はその分圧分しか伝熱に寄与できない。即ち収容室内が蒸気で充満された状態に比べ、伝熱の効率が低下する。そこで蒸気より重い空気を、供給する蒸気で置換する必要があり、排気口を収容室の下部に配置することが行われる。
【0008】
伝熱に使用された蒸気は凝縮により水となって体積が収縮するため、蒸気の供給を遮断した状態では収容室内の圧力が低下する。特に100℃未満の温度に制御する場合、繰り返し蒸気の遮断が行われるので、圧力低下も繰り返し発生しやすい。こうした凝縮による収容室内の圧力低下は非常に短時間で発生し、それに伴い排気口からの大気の逆流が発生する。このため収容室下方では温度の低い空気の逆流により温度の低下が発生しやすいという課題も認められている。こうした部分的な温度の低下は、多段のラックの下段の方に載置した菓子その他可食物の加熱不足をひきおこすことにもなり、場合によっては多段のラックの下段の方を使用しないように制限が必要となることも起こり得る。
【0009】
このように従来技術では、特に100℃未満の温度に制御する場合の凝縮に伴う圧力低下に対して十分な対策が取られておらず、また温度制御の難しい100℃未満の温度域において収容室内の温度分布を均一化するための対応も十分に行われていなかった。
様々な加工食品が開発され、蒸し機による加熱処理レシピも多様化する中、100℃未満の加熱処理が安定して行え、しかも簡単な構造で収容室内の温度分布のばらつきを抑え、処理能力の低下を招かない蒸し機の提供が望まれる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明に係る蒸し機を実施するための形態の具体例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態による蒸し機の構造を概略的に示す図である。
図1を参照すると本発明の実施形態による蒸し機1は、菓子その他可食物70を収容する収容室10、蒸気を発生させるボイラー30、蒸気の圧力を下げる減圧弁40、更に低圧の蒸気を発生させる超低圧2次蒸気発生装置50、及び発生した蒸気の供給と遮断を制御して収容室10内の温度を制御する制御部20とを有する。
【0018】
本発明による蒸し機は、100℃以上の蒸気の供給と遮断を制御して収容室内の温度を制御し、収容室内に搬入された多段のラックに載置した複数の菓子その他可食物を、所定の温度と時間で蒸気により加熱して蒸し上げる装置である。
図1は、正面の搬入搬出扉を省略し、収容室10内に複数の菓子その他可食物70を載置した多段のラック60が搬入された状態を正面から見て模式的に示す。ラック60は菓子その他可食物70の載置エリア19内に、複数段に菓子その他可食物70を載置し、一度に多数の菓子その他可食物70を蒸すことを可能にする。
【0019】
また、蒸し機1は、収容室の温度を蒸気の遮断の頻度が高くなる100℃未満に保持する際、蒸気を供給する過程では、蒸気の供給を利用して収容室内の低温の空気又は空気と蒸気の混合気体を収容室外に排気する一方、蒸気の供給を遮断する過程では、蒸気の凝縮に伴う体積低下によって引き起こされる圧力低下に対して、流入する外気を利用して収容室内に自然対流を生じさせ、収容室内の局所的な温度低下を防止するとともに温度の均一化を図ることを可能にする装置である。
【0020】
このため収容室10の下方の底面近傍には、収容室10内の低温の空気又は空気と蒸気の混合気体を収容室10外に排気する排気口11を備える。また収容室10の上方の天板近傍に圧力低下の際に外気を導入する給気口13を備える。
【0021】
初めに複数の菓子その他可食物70を載置した多段のラック60が搬入された時点では、収容室10内は空気で満たされている。加熱が始まり、蒸気が供給されると、比重の関係で、空気より軽い蒸気は収容室10上方に向かいやすく、空気は収容室10下方に集まりやすい。しかし両者は気体同士なので容易に混合し、多くは混合気体として存在する。
【0022】
蒸気による加熱では、蒸気が保有する熱量が、被加熱物の表面に接触して凝縮することにより被加熱物に伝達される。空気と蒸気の混合気体においても、混合気体中の蒸気が被加熱物の加熱に寄与する。混合気体中の蒸気の比率、即ち蒸気の分圧が低いと加熱に寄与する熱量が少なく、加熱効率が悪い。このため極力空気を排除して蒸気の分圧を上げることが加熱効率の向上につながる。そこで蒸し機1の稼働温度において空気が蒸気より重いこと、また空気にしても混合気体にしても温度の低い状態は温度の高い状態より密度が高く下方に滞留しやすいことなどから、収容室10の下方、特に収容室10内の菓子その他可食物70の載置エリア19より下方に、排気口11を備える。
【0023】
蒸気の供給により収容室10内が所定の保持温度に達すると、制御部20は収容室10内に設けた温度センサの出力に基づき、蒸気の供給と遮断を断続的に切換えて所定の保持温度を維持するように制御する。このとき蒸気を供給している間は、蒸気の供給に伴い排気口11から低温の空気又は混合気体が排気される。しかし、蒸気の供給を遮断している間は排気口11からの排気は行われなくなる。一方この間も蒸気による凝縮が継続して行われるため、凝縮伝熱に寄与した蒸気は水になりその分、体積が低下して、収容室10内の圧力が低下する。圧力が低下すると蒸気温度も低下してしまうので、圧力を維持するために外気の導入が必要となる。従来技術のように収容室10の下方に排気口11を開口させたままの状態だと、収容室10内の圧力低下に伴い排気口11から外気が逆流することになる。温度も低く蒸気より重い逆流した外気はそのまま収容室10の下方に滞留しやすく、収容室10内下方の温度低下をもたらす。
【0024】
蒸し機1は、こうした従来技術の課題を解決するため、排気口11には逆止弁12を設ける。排気口11の逆止弁12は、排気に対しては弁が開いた状態を維持し、逆流が起ころうとするときに弁を閉じて逆流を防止する。蒸し機1では、収容室10内の圧力低下に対しては別に設けた給気口13から外気を導入する。給気口13は収容室10内の菓子その他可食物70の載置エリア19より上方に備えられる。
【0025】
縦型の収容室10では、収容室10内の雰囲気を循環させる手段を設けないと、上方の温度が高く、下方の温度が低くなる温度分布が生じやすい。特に蒸気の供給が止まる蒸気の遮断状態ではこのような傾向が生じやすくなる。蒸し機1では、蒸気の遮断状態での圧力低下に伴い上方に設けられた給気口13から導入される外気が、収容室10内に比べて温度が低く、また蒸気より重い空気であることから、収容室10内に導入されると収容室10の下方に向かう下降流を形成する。下降流は周囲の温度の高い蒸気を巻き込みながら下降するため、低温の気体が滞留しやすい収容室10の下方に新たな熱量をもたらす。この結果収容室10内の温度分布が改善され、より均一な状態となる。
【0026】
このように蒸し機1では、特別な循環手段を設けることなく、したがって特別な費用をかけることなく、導入される空気の温度差、比重差を利用して収容室10内の温度均一化を図ることができる。
実施形態では最上段の菓子その他可食物70と給気口13との間には屋根型の蒸気反射板18が設けられ、圧力低下に伴い導入される低温の空気が、直接最上段の菓子その他可食物70に降り注ぐことはない。これにより局所的に温度が低下して蒸し上がりにむらが出ることを防止する。
【0027】
給気口13も開口させたままにしておくと、収容室10内の圧力が低下するときに外気を導入する働きをする一方、蒸気が供給される状態では、逆に加熱のために供給した蒸気が給気口13から流出してしまうことになる。そこで蒸し機1の給気口13には逆止弁12が設けられる。給気口13の逆止弁12は、給気に対しては弁が開いた状態を維持し、収容室10から蒸気が流出しようとするときに弁を閉じて流出を防止する。
【0028】
蒸し機1のボイラー30は、収容室10内を所望の温度に加熱する蒸気を生成できればよく、特に限定はないが実施形態では蒸気量100〜250kg/h、圧力0.3MPaの1次蒸気が供給できるものを使用する。
減圧弁40は1次蒸気のままでは蒸し機に使用するには温度が高すぎるため、1次蒸気の圧力を減圧して、収容室10の加熱に使用しやすい温度の蒸気を生成させる。実施形態では0.01MPa〜0.03MPaの蒸気を生成するように構成される。
超低圧2次蒸気発生装置50は、減圧弁40で生成した蒸気をさらに減圧した湿り蒸気を生成する。この湿り蒸気は蒸成する菓子その他可食物70のボリュームや色つやなどに影響を与えるものである。実施形態では0.003MPa〜0.01MPaの蒸気を生成するように構成される。
【0029】
制御部20は減圧弁40で生成された蒸気と超低圧2次蒸気発生装置50とを蒸成する菓子その他可食物70の種類や加熱条件に応じて切り換えて収容室10に供給し、仕上がり品質の良い製品を蒸成する。
制御部20にはタッチパネルを兼ねた表示板が備えられ、菓子その他可食物70に応じて加熱プログラムが選択可能に表示され、またそれぞれのプログラムも調整モードを選択することで、減圧弁40からの蒸気と超低圧2次蒸気発生装置50からの湿り蒸気を切り替えるタイミングなどを細かく調整できるように表示する。
【0030】
図2は、本発明の実施形態による蒸し機の構造を概略的に示す平面図である。
図2では収容室10は説明のために天板を取り除いて、収容室10内が見えるように示す図である。
図2を参照すると、
図1では省略した搬入搬出扉16が正面側(
図2では下方)に示される。搬入搬出扉16は丁番により収容室10を囲む側壁に固定され、搬入搬出扉16を閉めた状態では丁番を取り付けた側壁と対向する側壁に設けられた回動可能なレバーにより、収容室10内が陽圧になった場合でも開かないようにロックされる。
【0031】
回動可能なレバーが設けられた側壁には、逆止弁12を備えた排気口11と逆止弁12を備えた給気口13がそれぞれ設けられる。
図2では排気口11は搬入搬出扉16から離れた奥側の下方に設けられ、給気口13は収容室10の奥行き方向の中間部に設けられるように示すが、場所や設置数はこれに限らない。排気口11や給気口13はそれぞれ対向する側壁に設けてもよいし、背面の側壁に設けてもよい。さらに、給気口13は収容室10の天板を貫通するように設けてもよい。また排気口11や給気口13はそれぞれ側壁に沿って複数設けてもよい。
【0032】
また
図2では排気口11はL字状の形状を有し、給気口13はT字状の形状を有し、特に給気口13では圧力低下によって導入された外気が奥側と搬入搬出扉16側の2方向に振り分けて流入されるように示したが、これらの形状や長さもこの図の形態とは限らず、排気口11や給気口13は単純に直線的なI字状でも、他の形状でもよい。
【0033】
給気口13の下方には蒸気反射板18が設けられる。
図1を併せて参照すると、蒸気反射板18は正面側から見て山形の形状を有し、アルミニウムやステンレスの板を曲げ加工して形成される。
図1に示すように、ラック60には菓子その他可食物70が複数段に設置されるが、蒸気反射板18はそれぞれの段の菓子その他可食物70を上下から挟み込むように複数が設置される。このような構成とすることにより、それぞれの段の菓子その他可食物70は、上下の蒸気反射板18と収容室10の左右の側壁で囲まれた個別の空間に設置された形となる。
【0034】
ボイラー30で形成され減圧弁40や超低圧2次蒸気発生装置50で減圧された蒸気は、配管を通して蒸し機1の背面側に誘導され、ここで正面側から見て左右2本の蒸気パイプ17に分配される。蒸気パイプ17は収容室10内の左右の隔壁に沿って延長され、延長方向には所定の間隔で蒸気を供給する蒸気供給口が開口する。
図1に示すように、蒸気パイプ17は、菓子その他可食物70が載置される段ごとに左右に配置される。
菓子その他可食物の載置エリア19は収容室10内の温度の安定性の良い空間域で設定されるが、蒸気パイプ17は、菓子その他可食物の載置エリア19をカバーするように配置する。
【0035】
蒸気パイプ17の蒸気供給口はすぐ下方に位置する下側の蒸気反射板18の上面に向かって蒸気を供給するように開口される。蒸気反射板18の上面に向かって供給された蒸気は蒸気反射板18の上面で反射され、菓子その他可食物70を載置する金網状の載置板を通過して菓子その他可食物70に供給される。
このように菓子その他可食物70が載置される段ごとに個別の空間が割り当てられ、その空間ごとに蒸気供給口が設けられるため、蒸成条件を細かく調整しやすく製品の品質バラツキの低減に有効な構造となっている。
【0036】
実施形態では収容室10の左右の隔壁に沿って延長される左右の蒸気パイプ17は収容室10の側壁に固定され、菓子その他可食物70の上下を挟み込む蒸気反射板18は専用のラック60に設置されるが、蒸気反射板18は収容室10の側壁に取り付けられてもよく、この場合、菓子その他可食物70を載置する金網状の載置板を蒸気パイプ17の配置ピッチに合わせて複数設置したラック60を用いて菓子その他可食物70の搬入搬出を行う。金網状の載置板を蒸気パイプ17の配置ピッチを併せることにより、ラック60を搬入した状態で載置板に載置した菓子その他可食物70は上下に隣接する2つの蒸気反射板18の間に位置するように搬入される。
【0037】
また複数の蒸気反射板18の内、最上段の菓子その他可食物70と給気口13との間に設置される最上段の蒸気反射板18のみを収容室10に設置し、それ以外の蒸気反射板18は専用のラック60に設置されるようにしてもよい。さらには最上段の蒸気反射板18と給気口13との間に専用の遮蔽板を設け、蒸気反射板の有無にかかわらず給気口13から供給される外気が直接上段の菓子その他可食物70に向けて供給されることの無いようにしてもよい。
【0038】
図3は、本発明の他の実施形態による蒸し機の構造を概略的に示す図である。
図3を参照すると蒸し機2は、制御部20、ボイラー30など蒸気を発生させて温度を制御する要素は
図1の蒸し機1と変わらない。蒸し機2が蒸し機1と相違するのは、蒸し機2が排気口11に接続される排気管14と給気口13に接続される給気管15とをさらに備えることである。
蒸し機2は、排気管14と給気管15とを隣接させる、若しくは排気管14又は給気管15の一方が他方を貫通する二重管構造とすることにより、排気管14内の排気により給気管15内の給気を加熱する。
【0039】
蒸し機1は、蒸気の供給を遮断した状態では流入する外気を利用して収容室10内に自然対流を生じさせ、収容室10内温度の均一化を図るが、例えば冬季や寒冷地に設置する場合など、導入される外気の温度が低すぎると、外気が流入する部分やそれに伴う下降流の通過する部分で局所的に温度が下がりすぎ、菓子その他可食物70の蒸し上がり状態に影響を及ぼすことも起こり得る。
【0040】
蒸し機2では排気口11から排気される空気又は混合気体の熱を利用して、給気口13から供給される空気の温度を高める。これにより例えば10℃以下の寒冷な外気の時でも20℃前後の適切な温度にした上で収容室10内に流入させることができる。季節により寒暖差が激しい条件下に設置される場合は排気口11または給気口13の少なくとも一方に排気又は給気の流路を切り替える切換え弁をさらに設け、例えば温度が上昇する季節には排気口11から直接排気するか給気口13から直接給気するようにし、温度が低下する季節にはそれぞれ排気管14を介して排気し、給気管15を介して給気するようにしてもよい。このような切換は手動でもよいし、制御部20の設定により外気温をモニターして外気温に応じて自動的に切り替わるように切換え弁を制御してもよい。
【0041】
図4は、本発明の実施形態による加熱処理方法を説明するためのフローチャートである。
図4を参照すると、段階S100にて蒸し機1のオペレータは、収容室10内に菓子その他可食物70を載置する。実施形態のように収容室10内に蒸気パイプ17が複数段に設けられている場合は、蒸気パイプ17のピッチに合わせて設置された載置板を備える専用のラック60を利用することにより、菓子その他可食物70は均一な蒸し条件となるように載置することができる。
【0042】
段階S110にて、蒸し機1の制御部20はボイラー30で生成し減圧弁40で減圧した100℃以上の蒸気を供給して、収容室10内が所定の設定温度になるように加熱を開始する。
制御部20は収容室10内に設置した温度センサからの出力を監視し、収容室10内が設定温度に到達したかどうかを判断する(段階S120)。収容室10内が設定温度に到達すると次の収容室10内を設定温度に維持する段階(段階S130)に移行し、設定温度に到達していなければ蒸気の供給による加熱を継続する。
【0043】
図5は、本発明の実施形態による加熱処理における設定温度維持の制御方法を説明するためのフローチャートであり、
図4の収容室10内を設定温度に維持する段階の詳細を示す図である。
図5を参照すると、段階S131にて制御部20は、供給していた蒸気を遮断する。前の段階、即ち
図4の段階S120にて収容室10内は設定温度に到達しているため、それ以上に温度が上昇しないように蒸気の供給を遮断する。
【0044】
次に制御部20は収容室10内に設置した温度センサからの出力を監視し、収容室10内が設定温度を下回ったかどうかを判断する(段階S132)。収容室10内の温度が設定温度を維持していると判断する場合は蒸気の遮断を維持する。この間収容室10内は蒸気を遮断する前まで供給されていた蒸気が充満した状態にあり、凝縮による熱伝達が継続的に行われる。凝縮された蒸気は水になることで体積が急激に減少し、これに伴って生ずる収容室10内の圧力低下により外気が導入されることになる。
【0045】
外気は収容室10の菓子その他可食物の載置エリア19よりも上方に設置された給気口13から導入され、温度も低く蒸気よりも比重が大きいため収容室10内に下降流による自然対流を生じさせる。この間、収容室10の菓子その他可食物の載置エリア19よりも下方に設置された排気口11からは逆止弁12の効果により外気が流入することがない。このため蒸気の供給がなく対流が生じにくい間でも温度分布のばらつきを低減することができる。
【0046】
一方、段階S132にて収容室10内の温度が設定温度を下回ったと判断すると制御部20は段階S133にて100℃以上の蒸気を供給して加熱する。
100℃以上の蒸気の供給は段階S134にて収容室10内の温度が設定温度以上になったと判断されるまで継続される。100℃以上の蒸気が供給される間、排気口11からは収容室10内でも比較的温度が低い空気、又は空気と蒸気の混合気体が排気される。このとき、給気口13の逆止弁12は蒸気の流出を防止するように閉じられているので、温度の高い蒸気が給気口13から流出することはない。
【0047】
制御部20はこのような蒸気の遮断と供給のサイクルを、段階S135で設定時間が終了したと判断されるまで繰り返す。
特に供給する蒸気が100℃以上であるのに対し、収容室10内を100℃未満に維持しようとすると頻繁に蒸気の供給を遮断することが生じ得るが、このような場合でも逆止弁12を備えた排気口11及び給気口13を適切な位置に設けることにより収容室10内の温度分布のばらつきを低減する蒸し機1の提供が可能となる。
【0048】
再び
図4を参照して、収容室10内を設定温度に維持する段階S130の終了後、蒸気の供給を止め取り出し温度まで降温させ(段階S140)、最終的に段階S150にて加熱処理が終了した菓子その他可食物70を取り出す。
【0049】
以上、密閉式の蒸し機の中でも、ラックに載置した菓子その他可食物を収容室内に搬入し、まとめて加熱して加工するバッチ式の蒸し機を代表として説明したが、100℃以上の蒸気の供給と遮断により温度制御を行い、菓子その他可食物の搬入搬出時以外は扉を閉めて密閉した収容室内で加熱処理を行う蒸し機についても、逆止弁を備えた給気口を菓子その他可食物の載置エリアの上方に設け、逆止弁を備えた排気口を菓子その他可食物の載置エリアの下方に設けることにより、上記で説明したのと同様の効果を得ることができる。
【0050】
例えば、1段分の菓子その他可食物を載置した載置板を収容室下方の搬入扉から順次間欠的に収容室内に搬入し、収容室内では加熱処理の進行に合わせて順次上方に移動し、最上段まで移動した時点で加熱処理が終了して搬出扉から順次搬出される垂直型の連続蒸し機についても、搬入搬出時以外は搬入搬出扉を閉めて加熱するので、蒸気の供給を遮断する温度制御時に凝縮伝熱による圧力低下が発生することに変わりはない。この際、下方の排気口は逆止弁により閉じられ、上方の吸気口から外気が導入されるので、導入した外気による下降流により温度分布の均一化が促進されるのである。
【0051】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更することが可能である。
【解決手段】蒸し機1は、収容室10内の菓子その他可食物の載置エリア19より下方に、低温の外気が収容室内に逆流しないように逆止弁12を備えた排気口11と、収容室内の菓子その他可食物の載置エリアより上方に、収容室内の高温の蒸気が流出しないように逆止弁を備えた給気口13とを備え、収容室内を100℃未満に加熱する場合、制御部により100℃以上の蒸気の供給と遮断の断続的な切換により温度制御が行われ、蒸気の供給時には排気口より排気が行われ、蒸気の遮断時には給気口から外気を導入することで所定の圧力を保つ。