(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、肌側に長手方向に沿って凹溝が形成され、かつ前記透液性表面シートが前記凹溝に沿って配置された吸収性物品において、
前記凹溝は、尿排泄部位に対応する幅方向中央部であって長手方向の中間部に1条のみ形成された尿流入用の凹溝であり、
前記透液性表面シートは、多数の開孔が形成された樹脂フィルムからなるとともに、少なくとも前記凹溝を含む幅方向範囲において、吸収性物品の長手方向に延びる折り目に沿って複数に折り畳まれた蛇腹部が形成され、該蛇腹部の山折り部と谷折り部とを結ぶ側面部に多数の開孔が形成されていることにより、前記凹溝内において単位面積当たりに存在する前記開孔の総面積の増大化が図られ、
前記凹溝内で、前記透液性表面シートが凹溝底部に対してホットメルト接着剤による接着又は多数のピン状又はドット状のエンボスによって接合され、前記蛇腹部の波状を維持したまま前記透液性表面シートが凹溝に沿って配置されることにより、前記蛇腹部が前記凹溝の底面及び両側面に沿って配置されていることを特徴とする吸収性物品。
前記単位面積当たりに存在する前記開孔の総面積は、前記透液性表面シートを平面に配置したときの単位面積当たりに存在する前記開孔の総面積に対して、1.2倍〜5倍である請求項1記載の吸収性物品。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0022】
〔失禁パッド1の基本構成〕
本発明に係る失禁パッド1は、
図1〜
図3に示されるように、ポリエチレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、尿などを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2、3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、前記吸収体4の形状保持および拡散性向上のために、前記吸収体を囲繞するクレープ紙や不織布等からなる被包シート5と、前記吸収体4の略側縁部を起立基端とし、かつ少なくとも尿排出部位Hを含むように長手方向に所定の区間内において肌側に突出して設けられた左右一対の立体ギャザーBS、BSを形成するサイド不織布7、7とから主に構成され、かつ前記吸収体4の周囲においては、その長手方向端縁部では前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合されている。なお、必要に応じて、前記透液性表面シート3と吸収体4との間に、親水性のセカンドシートを配置することができる。
【0023】
以下、さらに前記失禁パッド1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他に防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には、防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが好適に用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。
【0024】
次いで、前記透液性表面シート3は、多数の開孔15、15…が形成された樹脂フィルムで構成されている。この素材シートとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂が好適に使用されるが、ポリエステルや、ナイロンなどのポリアミド系樹脂、EVAなども使用することができる。この透液性表面シート3については、後段で詳しく説明する。
【0025】
前記吸収体4は、たとえば綿状パルプ等の吸収性繊維と高吸水性ポリマー8とにより構成され、図示例では平面形状がパッド長手方向に長い縦長の略小判形とされている。前記高吸水性ポリマー8は例えば粒状粉とされ、吸収体4を構成するパルプ中に分散混入されている。
【0026】
前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。本失禁パッド1では、吸収体4を被包シート5で囲繞するため、結果的に透液性表面シート3と吸収体4との間に被包シート5が介在することになり、吸収性に優れる前記被包シート5によって尿を速やかに拡散させるとともに、これら尿等の逆戻りを防止するようになる。前記パルプの目付は、100g/m
2〜600g/m
2、好ましくは200g/m
2〜500g/m
2とするのがよい。
【0027】
前記高吸水性ポリマー8としては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性ポリマーは製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸収倍率(吸水力)と吸収速度の調整が可能である。
【0028】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、尿に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0029】
前記被包シート5は、ティシュー等の紙材あるいは不織布等の透液性のシートを用いることができる。特に、資材の破壊(破れ)が生じにくい不織布を用いるのが好ましい。このような不織布としては、薄さと強度のバランスに優れたスパンボンド法やSMS法により加工された不織布、熱可塑性エラストマー樹脂などからなる弾性繊維をスパンボンド法、メルトブロー法など紡糸工程に直結してウェブを形成する方法により加工された不織布、ラテックス、ウレタン、オレフィン系の繊維など伸縮性を有する素材を主成分とする不織布が好適である。なお、被包シート5は、少なくとも吸収体4の肌当接面側(表面側)の面が撥水性でなければシートの親水度は特に問わない。
【0030】
本失禁パッド1の表面側両側部にはそれぞれ長手方向に沿って、かつ失禁パッド1の全長に亘ってサイド不織布7,7が設けられ、このサイド不織布7,7の外側部分が側方に延在されるとともに、前記不透液性裏面シート2が側方に延在され、これら側方に延在されたサイド不織布7部分と不透液性裏面シート2部分とをホットメルト接着剤等により接合して側部フラップが形成されている。
【0031】
前記サイド不織布7としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、尿等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングしたSSMSやSMS、SMMSなどの撥水処理不織布を用いるのが望ましく、尿の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるのが望ましい。かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができる。
【0032】
前記サイド不織布7、7は、適宜に折り畳まれて、前記吸収体4の略側縁近傍位置を起立基端として肌側に起立する左右一対の内側立体ギャザー10、10と、相対的に前記内側立体ギャザー10より外側に位置するとともに、前記吸収体4よりも側方に延出する不透液性裏面シート2及びサイド不織布7によって形成された肌側に起立する左右一対の外側立体ギャザー11、11とからなる2重ギャザー構造の立体ギャザーBSを構成している。なお、前記立体ギャザーBSは、内側立体ギャザー10または外側立体ギャザー11のいずれかのみからなる1重ギャザー構造であっても良いし、サイド不織布7を配設するだけで肌側に起立した立体ギャザー状に形成されなくてもよい。
【0033】
前記内側立体ギャザー10および外側立体ギャザー11の構造についてさらに詳しく説明すると、前記サイド不織布7は、
図2に示されるように、幅方向両側端をそれぞれパッド裏面側に折り返して幅方向内側及び幅方向外側にそれぞれ二重シート部分7a、7bを形成するとともに、前記幅方向内側の二重シート部分7a内部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された1本または複数本の、図示例では1本の糸状弾性伸縮部材12が配設されるとともに、前記幅方向外側の二重シート部分7b内部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された1本または複数本の、図示例では2本の糸状弾性伸縮部材13、13が配設され、前記幅方向内側の二重シート部分7aの基端部が吸収体4の側部に配設される透液性表面シート3の上面にホットメルト接着剤等により接着されるとともに、幅方向外側の二重シート部分7bの基端部が前記吸収体4よりも側方に延出する不透液性裏面シート2の側端部にホットメルト接着剤等により接着されることにより、前記幅方向内側の二重シート部分7aによって肌側に起立する内側立体ギャザー10が形成されるとともに、前記幅方向外側の二重シート部分7bによって肌側に起立する外側立体ギャザー11が形成されている。なお、前記サイド不織布7は、パッド長手方向の両端部では、
図3に示されるように、前記糸状弾性伸縮部材12、13が配設されないとともに、前記幅方向内側の二重シート部分7aがホットメルト接着剤等によって吸収体4側に接合されている。
【0034】
〔凹溝22について〕
本失禁パッド1では、肌側に長手方向に沿って尿流入用の凹溝22が形成されている。前記凹溝22は、透液性表面シート3の表面に排出された尿を受け止めて、尿を一時貯留するとともに、前後方向への尿の拡散を誘導し、且つ吸収体4への尿の吸収速度を速め、横漏れを防止するためのものである。
【0035】
前記凹溝22は、透液性表面シート3の表面側から透液性表面シート3から吸収体4にかけての構成部材を一体的に圧搾することにより形成したものでもよいが、予め前記吸収体4の凹溝22の形成予定部分に吸収体凹部20を形成しておき、この吸収体凹部20に沿って透液性表面シート3を配設することにより形成するか、前記吸収体凹部20に沿って透液性表面シート3の表面側(肌面側)から吸収体4より上層の構成部材を圧搾するエンボス部21を設けることにより形成したものの方が、脚圧による凹溝22の変形が防止できるなどの理由から望ましい。
【0036】
本失禁パッド1では、前記吸収体4には、
図2に示されるように、前記凹溝22の形成予定部分に、予め、肌側(透液性表面シート3側)の面に、尿排出部位Hを含む長手方向に沿って、圧搾によることなく凹溝状又はスリット状の、図示例では凹溝状の吸収体凹部20が形成されている。
図2に示される吸収体凹部20は、吸収体4の肌当接面側(透液性表面シート3側)の面において、周囲より非肌当接面側(不透液性裏面シート2側)に凹ませた、底面を有する非貫通型の凹溝部分である。この吸収体凹部20は、圧搾によることなく、例えば
図4に示されるように、(A)積繊、又は(B)吸収体凹部20の底部の厚みで形成された下層吸収体4aと、前記吸収体凹部20に対応する部分が開口した上層吸収体4bとの積層構造などによって形成されている。
【0037】
前記吸収体凹部20は、
図1に示されるように、吸収体4に対して、尿排出部位Hに対応するパッド幅方向の中央部であって長手方向の中間部に、1条のみ形成するのが好ましいが、失禁パッド1の幅方向に離間して複数条で形成したり、パッド長手方向に離間する不連続線状に形成するなど、種々の形態で形成することができる(
図16〜
図18参照)。なお、複数の吸収体凹部20を設ける場合は、それぞれの吸収体凹部20に対してエンボス部21を設けるのが好ましい。
【0038】
前記吸収体凹部20の平面寸法は、パッド長手方向の長さが100〜180mm、溝幅(底面の溝幅)が5〜30mmとするのがよい。前記吸収体凹部20の深さは、吸収体4の厚みの50%以上、具体的には5〜8mm程度とするのがよい。
【0039】
前記吸収体4は、吸収体凹部20の底面の密度と、その周辺(吸収体凹部20以外の部分)の密度とがほぼ同一となるように設定するのが好ましい。つまり、吸収体凹部20を圧搾によることなく凹溝状に形成することにより、吸収体の密度をほぼ同一にするのが好ましい。
【0040】
前記吸収体凹部20の底部(不透液性裏面シート2側の部分、非肌側の部分)に介在する吸収体4部分は、パルプの目付が0g/m
2〜210g/m
2、好ましくは70g/m
2〜190g/m
2とするのがよい。この吸収体部分にも吸水性ポリマー8が所定の目付で分散混入されている。
【0041】
図4(B)に示されるように、前記吸収体4が上層吸収体4bと下層吸収体4aとの積層体からなる場合、前記上層吸収体4b及び下層吸収体4aを構成するパルプや高吸水性ポリマー8の目付や比率は、同じでもよいし、異なっていてもよい。また、前記上層吸収体4b及び下層吸収体4aは、上層吸収体4bと下層吸収体4aとを積層した状態で一体的に被包シート5で囲繞してもよいし、上層吸収体4bと下層吸収体4aとをそれぞれ別々の被包シート5で囲繞した後、積層させてもよい。更に、上層吸収体4bと下層吸収体4aとの間に、ティシュー等の紙材或いは不織布等の透液性のシート材を配置してもよい。
【0042】
前記凹溝22を設けることにより、一気に排出された尿がこの凹溝22に流入して一時貯留されるとともに、この凹溝22に沿って前後に拡散しながら、凹溝22の内周面を透過して吸収体4に吸収されるようになる。このように、前記凹溝22を通じて前後に拡散した尿が吸収体4の広い範囲に吸収されるので、尿の素早い吸収が可能となり、横漏れが防止できるようになる。
【0043】
〔透液性表面シート3について〕
前記透液性表面シート3は、
図1に示されるように、樹脂フィルム(プラスチックシート)に多数の開孔15、15…を形成したものが用いられる。透液性表面シート3に排出された尿は、前記開孔15…を通じて吸収体4に浸透可能となっている。
【0044】
前記開孔15の径は、0.05〜3.0mm、好ましくは0.1〜2.0mm、より好ましくは0.5〜1.5mmとし、その開孔数は100〜500個/cm
2、好ましくは200〜400個/cm
2程度とするのが望ましい。なお、前記開孔数は、透液性表面シート3を蛇腹状に折り畳まない平坦な状態での単位面積当たりの数である。前記開孔15を形成するには、合成樹脂シートを軟化温度付近に軟化させて、多数の開孔を有する支持体の上面に位置させた状態で、支持体の下方から吸引したり、支持体の上面から空気圧を加圧したりする方法や、合成樹脂シート素材に多数のスリットを刻入した後にシート素材を延伸して開孔させる方法、また後段で詳述するようにローレットロールと平滑な表面を有する予熱ロールとの間を通過させることにより細かい凹部を形成した後、延伸ギアロールによって大きく延伸させることにより前記凹部を破いて開孔させる方法など、適宜の方法によって形成することができる。
【0045】
前記開孔15が形成される範囲は、透液性表面シート3の全面に亘って設けてもよいし、少なくとも前記凹溝22を含む幅方向中央部のみに設けてもよい。なお、前記開孔15が形成される範囲は、後段で説明する蛇腹部17が形成される範囲とほぼ一致するか、これより狭い範囲とされている。
【0046】
また、前記透液性表面シート3は、少なくとも前記凹溝22を含む幅方向範囲において、パッド長手方向に延び、パッド幅方向に離間する多数の折り目16、16…に沿って、交互に山折り、谷折りを繰り返して複数に折り畳まれた蛇腹部17が形成されている。
【0047】
前記蛇腹部17は、
図5に示されるように、肌側に突出する山折り部16aと、非肌側に突出する谷折り部16bとが交互に繰り返し形成された構造を有する。前記山折り部16a及び谷折り部16bは、透液性表面シート3のパッド長手方向に沿って直線的に延び、パッド幅方向に離間して複数並設されている。前記山折り部16a及び谷折り部16bは、パッド長手方向のほぼ全長に亘る範囲に設けられている。
【0048】
前記蛇腹部17の断面形状は、
図5に示されるように、略波状に形成されている。図示例では、断面略台形状の波状に形成されているが、V字状やU字状、コの字状などの波状に形成することも可能である。
【0049】
前記蛇腹部17の高さ(谷折り部16bの底部から山折り部16aの頂部までの高さ)は、0.5mm〜5mm、好ましくは1mm〜3mmとするのがよい。また、前記蛇腹部17のピッチ(隣り合う山折り部16a、16aの中心間距離又は隣り合う谷折り部16b、16bの中心間距離)は、0.3mm〜3mm、好ましくは0.5mm〜2mmとするのがよい。前記蛇腹部17の高さやピッチは、一定である必要はなく、透液性表面シート3の部位によって適宜変えることが可能である。例えばパッド幅方向の中央部で両側部よりピッチを小さくすることにより、凹溝22内において単位面積当たりに存在する開孔15の総面積の増大化を図ってもよい。
【0050】
前記蛇腹部17が形成される範囲は、
図1に示されるように、少なくとも凹溝22を含む幅方向中央部のみとしてもよいし、
図6に示されるように、透液性表面シート3の全面でもよい。少なくとも凹溝22を含む範囲に蛇腹部17を形成することにより、凹溝22内において単位面積当たりに存在する開孔15の総面積を増大化でき、この開孔15を通じた通液量の増大化が図れる。また、透液性表面シート3の全面に亘って蛇腹部17を形成した場合には、より広い範囲において透液性表面シート3の肌面との接触面積が低減でき、肌への貼り付き感や肌ざわり感が改善できるようになる。
【0051】
図1に示される例では、前記開孔15及び蛇腹部17が形成される範囲は、前記凹溝22が形成された範囲と、その両側の所定範囲までの幅方向中央部のみとされ、これより外側の幅方向両側部には、前記開孔15及び蛇腹部17が形成されないようにしている。
【0052】
図5に示されるように、前記開孔15、15…は、前記蛇腹部17の山折り部16aの頂部と谷折り部16bの底部とを結ぶ側面部に形成され、山折り部16aの頂部や谷折り部16bの底部には形成されていない。これにより、尿が谷折り部16bの両側面に形成された開孔15、15…を通じて吸収体4に透過可能であるとともに、山折り部16aの頂部や谷折り部16bの底部に開孔を形成しないことにより、吸収体4に吸収された尿の逆戻りが防止でき、表面のさらっと感が向上する。
【0053】
前記蛇腹部17の側面部に多数の開孔15…を形成することにより、前記凹溝22内において単位面積当たりに存在する開孔15の総面積の増大化が図られている。前記単位面積当たりに存在する開孔15の総面積とは、前記蛇腹部17において、透液性表面シート3を蛇腹状に複数に折り畳んだ状態で、平坦な平面状の単位面積の中に存在する開孔15、15…について、蛇腹部17の波状に沿った(透液性表面シート3の表面に沿った)面積を総和したものである。
【0054】
換言すると、前記凹溝22内において単位面積当たりに存在する開孔15の総面積ΣAは、前記透液性表面シート3を平面に配置したとき(蛇腹状に折り畳んだ状態を幅方向に引き伸ばして平坦に配置したとき)、同じ単位面積の中に存在する開孔15の総面積ΣBより大きくなっている。つまり、透液性表面シート3を蛇腹状に折り畳むことによって、平面に配置したときより、同じ単位面積当たりに存在する開孔15の数(面積)を増加させている。
【0055】
前記凹溝22内において単位面積当たりに存在する開孔15…の総面積ΣAは、前記透液性表面シート3を平面に配置したときの単位面積当たりに存在する開孔15…の総面積ΣBに対して、1.2倍〜5倍(ΣA=1.2ΣB〜5ΣB)、好ましくは1.5倍〜3倍(ΣA=1.5ΣB〜3ΣB)とするのがよい。ΣAがΣBの1.2倍より小さいと通液量の増大の効果がそれほど大きく見込めないとともに、5倍より大きいと、折り目16、16の間隔が狭過ぎて逆に尿が浸透しにくくなる。
【0056】
以上の構成によって、本失禁パッド1では、前記凹溝22内において、前記開孔15…を通じた尿の通液量の増大を図ることができ、一度にドッと出る尿にも対応できるようになる。このため、凹溝22から尿が溢れ出て漏れるのが防止できるようになる。
【0057】
また、前記蛇腹部17が透液性表面シート3を失禁パッド1の長手方向に延びる折り目16に沿って複数に折り畳むことにより形成されているため、前記凹溝22内の尿は、蛇腹部17の折り目16(谷折り部16b、16b…)に沿った溝長手方向に流れやすくなり、流れる過程で前記開孔15…を通じて吸収体4に素早く吸収されるようになる。
【0058】
前記凹溝22を形成するに際しては、
図2に示されるように、凹溝22内においても蛇腹部17の波状を維持したまま透液性表面シート3を凹溝22に沿って配置することにより、前記蛇腹部17が凹溝22の底面及び両側面に沿って配置されるようにするのが好ましい。これにより、凹溝22内の全周面に蛇腹部17が形成されるようになり、蛇腹部17に形成された多数の開孔15…を通じて尿の通液性が効果的に増大できる。
【0059】
前記蛇腹部17の波状を維持したまま透液性表面シート3を凹溝22に沿って配置するには、
図7に示されるように、吸収体4の肌側面に透液性表面シート3を積層した後、透液性表面シート3の肌面側から、エンボス凸部24により、吸収体凹部20に対して透液性表面シート3が凹溝22の底面で潰れない程度に変形させた状態で、吸収体凹部20の底部と透液性表面シート3とをホットメルト接着剤などの接合手段によって接合する方法を用いることができる。また、
図8に示されるように、ピン状エンボス又はドット状エンボス25により多数のピン状又はドット状のエンボスを施す方法によりなすこともできる。
【0060】
一方、
図9に示されるように、前記凹溝22は、吸収体4に透液性表面シート3を積層した状態で、透液性表面シート3の表面側から吸収体凹部20にエンボスを施すことにより、前記凹溝22の底面で前記蛇腹部17が潰れて形成されないようにすることも可能である。これにより、凹溝22がより確実に形成され、尿の一時貯留場所としての機能が効果的に発揮されるようになる。なお、この場合には、凹溝22の底面からの尿の通液量が低下するものの、凹溝22の両側面に蛇腹部17が形成されているため、この両側面からの通液量が確保される。
【0061】
図1に示されるように、前記蛇腹部17の蛇腹形状を保持するため、蛇腹部の隣り合う折り目16、16同士を結ぶ形状保持部18を形成するのが好ましい。前記形状保持部18は、失禁パッド1の製造工程で外力を受けた場合又は失禁パッド1の装着中に外力を受けた場合などにおいて、複数に折り畳んだ蛇腹部17の波状が解除されないように蛇腹形状を保持するために設けられるものである。前記形状保持部18は、蛇腹部17の隣り合う山折り部16a、16a…の頂部同士又は隣り合う谷折り部16b、16b…の底部同士と連続している。前記形状保持部18は、外力に対する蛇腹部17の波状を維持しやすくするため、蛇腹部17の隣り合う山折り部16a、16a…の頂部と連続していることが好ましい。
【0062】
前記形状保持部18は、
図1に示されるように、略パッド幅方向に沿うとともに、パッド長手方向の一方側に傾斜する一方側形状保持部18aがパッド長手方向に間隔をあけて複数形成され、かつ略パッド幅方向に沿うとともに、パッド長手方向の他方側に傾斜する他方側形状保持部18bがパッド長手方向に間隔をあけて複数形成され、前記一方側形状保持部18aと他方側形状保持部18bとが交差することにより、網目状に形成するのが好ましい。
【0063】
前記一方側形状保持部18aのパッド幅方向線に対する傾斜角は、0°より大きく90°より小さい範囲で設定されている。また、他方側形状保持部18bのパッド幅方向線に対する傾斜角は、0°より大きく90°より小さい範囲で設定されている。
【0064】
図1に示される例では、前記一方側形状保持部18a及び他方側形状保持部18bによって囲まれた各網目の形状は略菱形であるが、三角形、四角形、五角形等の多角形としてもよい。また、前記形状保持部18は、図示例では直線で構成しているが、曲線とすることにより、各網目の形状を円形、楕円形等としてもよい。更に、前記形状保持部18は、傾斜方向の異なる形状保持部同士を交差させるのではなく、略パッド幅方向に沿うとともにパッド長手方向に間隔をあけて複数形成された、直線、曲線、波線等で構成してもよい。
【0065】
次に、前記透液性表面シート3の製造方法について説明する。前記蛇腹部17を有する透液性表面シート3を製造するには、特開2013-212153号公報に開示された方法を利用することができる。同公報に開示された方法は、以下の通りである。
【0066】
同公報に開示された方法は、合成樹脂フィルムシートに凹部を形成する工程(1B)と、合成樹脂フィルムシートをギア延伸する工程(2B)とを含む。
【0067】
(工程1B)
図10に示されるように、ロール30から供給された合成樹脂フィルムシート31は、凹部形成ロール32を通過し、合成樹脂フィルムシート31に凹部33が形成される(
図12参照)。凹部形成ロール32は、ローレットロール34と平滑な表面を有する予熱ロール35とからなる。
【0068】
図11(A)及び(B)は、ローレットロール34の一例を示す図である。
図11(A)は、ローレットロール34の全体を示す図であり、
図11(B)はローレットロール34の外周表面の凹凸を有する部分34aを拡大した図である。
図11(C)は、平滑な表面を有する予熱ロール35の一例を示す図である。ローレットロール34の表面34aには、格子状の凸部34bが設けられている。これにより、ローレットロール34の表面には菱形の凹部34cが形成される。
【0069】
平滑な表面を有する予熱ロール35は、70℃〜100℃の温度に保持されており、供給された合成樹脂フィルムシート31を加熱する。これにより、合成樹脂フィルムシート31は柔らかくなり、形成しやすくなる。
【0070】
合成樹脂フィルムシート31がローレットロール34及び予熱ロール35の間を通過するとき、合成樹脂フィルムシート31のうち、格子状の凸部34bと接する部分は、厚さ方向に強い圧力を受ける。これにより、
図12に示されるように、合成樹脂フィルムシート31に細かい凹部33が形成される。前記凹部33は、合成樹脂フィルムシート31の全体に亘って設けられるのが好ましい。
【0071】
(工程2B)
図10に示されるように、延伸ギアロール36に、凹部を形成した合成樹脂フィルムシート31を通過させることによって、合成樹脂フィルムシート31のうち、透液性表面シート3の蛇腹部17に対応する領域が折り曲げられ、前記蛇腹部17が形成された合成樹脂フィルムシート31が作成される。合成樹脂フィルムシート31において、蛇腹部17は、機械方向(MD)に延設され、幅方向に並設されている。合成樹脂フィルムシート31において、機械方向に延びている蛇腹部17は複数箇所で途切れている。すなわち、合成樹脂フィルムシート31において、蛇腹部17は非連続に形成されており、非連続部分では、合成樹脂フィルムシート31が折り曲げられていない。この非連続部分が、透液性表面シート3の形状保持部18に対応する。
【0072】
延伸ギアロール36は、上段ロール37と下段ロール38とを含む。
図13(A)は、延伸ギアロール36の上段ロール37を説明するための図であり、
図13(B)は、上段ロール37の外周面上に配置されたギア歯37aを説明するための図であり、
図13(C)は、
図13(B)のB−B線矢視図である。ギア歯37aは、上段ロール37の円周方向に非連続的に延びている。すなわち、上段ロール37の円周方向に延びているギア歯37aは、途中で複数箇所途切れている。このギア歯37aが途切れている箇所37bにより、透液性表面シート3の形状保持部18に対応する非連続部分が形成される。ギア歯37aが途切れている箇所37bは、ギア歯37aが延びる方向に対して斜めの方向の直線上に並ぶように配置されている。
【0073】
図14(A)は、延伸ギアロール36の下段ロール38を説明するための図であり、
図14(B)は、下段ロール38の外周面上に配置されたギア歯38aを説明するための図であり、
図14(C)は、
図14(B)のC−C線矢視図である。ギア歯38aは、下段ロール38の円周方向に延びている。下段ロール38は、上段ロール37のように途中で複数箇所途切れていない。ギア歯38aの幅は、例えば上段ロール37のギア歯37aの幅と等しく、隣接するギア歯38aの中心間の距離は、例えば上段ロール37のギア歯37aの中心間の距離と等しい。
【0074】
合成樹脂フィルムシート31が延伸ギアロール36を通過するとき、合成樹脂フィルムシート31の凹部33には、透液性表面シート3の開孔15に対応する開孔部が形成される。
【0075】
図15を参照して、延伸ギアロール36に合成樹脂フィルムシート31を通過させたとき、合成樹脂フィルムシート31に開孔部が形成される原理を説明する。合成樹脂フィルムシート31は、上段ロール37のギア歯37aと下段ロール38のギア歯38aとが噛み合っている部分39で大きく延伸される。上述の凹部形成工程で凹部33(
図12参照)が形成された部分は、合成樹脂フィルムシート31が薄くなっており、さらにローレットロール34の格子状の凸部34bにより傷が付与されている部分であるので、強度が弱く、合成樹脂フィルムシート31の凹部33は、延伸を受けると破れる。このため、合成樹脂フィルムシート31の延伸を受けた部分39では、合成樹脂フィルムシート31の凹部33が破れて、合成樹脂フィルムシート31の破れた部分が広がり開孔部が形成される。
【0076】
合成樹脂フィルムシート31は、上段ロール37のギア歯37aと下段ロール38のギア歯38aとが噛み合っていない部分40、41ではあまり延伸されない。このため、合成樹脂フィルムシート31における上段ロール37のギア歯37aと下段ロール38のギア歯38aとが噛み合っていない部分40、41では、合成樹脂フィルムシート31が延伸ギアロール36を通過しても、上述の凹部形成工程で形成された凹部33は、破れず開孔部にならない。
【0077】
合成樹脂フィルムシート31の凹部33が形成されていない領域では、上段ロール37のギア歯37aと下段ロール38のギア歯38aとが噛み合っている部分39で合成樹脂フィルムシート31が大きく延伸されても合成樹脂フィルムシート31は破れないため、開孔部は形成されない。
【0078】
〔他の形態例〕
前記凹溝22は、種々の形態で配置することができる。前記凹溝22は、
図1に示されるように、尿排出部位Hに対応するパッド幅方向の中央部であって長手方向の中間部に、1条のみ形成するのが好ましいが、
図16(A)、(B)に示されるように、パッド幅方向に離間して複数条形成してもよいし、同
図16(C)に示されるように、パッド長手方向に離間して不連続線状に形成してもよい。複数条形成した場合には、多くの尿が一気にドッと出たときでも尿の拡散効果をより確実に高めることができるようになる。また、不連続線状に形成した場合には、凹溝22が幅方向両側から脚圧などの外力を受けたときの潰れがより確実に防止できる。パッド幅方向に離間して複数条形成する場合、同
図16(A)に示す偶数条でもよいし、同
図16(B)に示す奇数条でもよい。
【0079】
また、前記凹溝22の平面形状は、
図1に示されるように、パッド長手方向に沿って等幅で形成してもよいし、
図17に示されるように、異なる溝幅で形成してもよい。
図17(A)では、凹溝22のパッド長手方向の前側端部に、溝幅を拡大した拡幅部22aを設けている。前記拡幅部22aを設けることにより、尿の一時貯留空間が拡大でき、特に切迫性失禁などのように大量の尿が一度にドッと出た場合でも確実に凹溝22で尿を受け止めることが可能となる。前記拡幅部22aは、同
図17(B)に示すようにパッド後側の端部に設けてもよいし、同
図17(C)に示すように前後端部にそれぞれ設けてもよい。
【0080】
前記凹溝22は、
図18に示されるように、1又は複数の枝分かれ部22b、22cを設けてもよい。前記枝分かれ部22b、22cを設けることにより、凹溝22に一時貯留された尿が凹溝22に沿って吸収体4の広い範囲に拡散するようになり、吸収体4のより広い範囲で尿を吸収できるようになる。
図18(A)〜(C)に示される例では、前記枝分かれ部22bとして、パッド長手方向の前側、後側又は前側及び後側のそれぞれに、凹溝22の両側縁から外側に延びるとともに、パッド長手方向の端部側に傾斜する複数、図示例では左右それぞれ3本ずつ設けられている。また、
図18(D)〜(F)に示される例では、前記枝分かれ部22cとして、パッド長手方向の前端、後端又は前端及び後端のそれぞれに、凹溝22が放射状に複数に、図示例では5本に枝分かれしたものが設けられている。
【0081】
なお、予め吸収体4の凹溝22の形成予定部分に前記吸収体凹部20を設ける場合、上記凹溝22の形状に沿って吸収体凹部20を設けるようにするのが好ましい。
【0082】
また、
図19に示されるように、前記吸収体凹部20としてパッド長手方向に沿って1又は複数の長手方向溝20aを設けるとともに、この長手方向溝20aの一方側又は両側に1又は複数の枝分かれ部20bを設け、且つ前記長手方向溝20aのみで透液性表面シート3を吸収体凹部20に沿って配置し、前記吸収体凹部20の枝分かれ部20bでは透液性表面シート3を吸収体凹部20に沿って配置せずに、枝分かれ部20bの吸収体と透液性表面シート3との間に空間部を設けた状態で配置してもよい。これにより、前記吸収体凹部20の枝分かれ部20bに沿って透液性表面シート3の下層側で尿が拡散しやすくなるため、吸収体4のより広い範囲で尿を吸収保持でき、漏れが防止できる。前記枝分かれ部20bは、長手方向溝20aから幅方向両側に向けて、パッド長手方向に間隔をあけて、幅方向の中間位置まで延びるように設けられている。パッド長手方向に隣り合う枝分かれ部20b、20bの間隔は、各部で均等としてもよいが、
図19に示されるように、尿排出部位H及びその近傍の方がこれより前後の領域より狭くなるように配置するのが好ましい。
【0083】
また、
図20に示されるように、前記凹溝22は、パッド長手方向に沿って延びる直線部22dと、前記直線部22dの両側に延びる円弧状の曲線部22eとからなり、端部を有さないループ状に形成することもできる。これにより、凹溝22の端部から漏れが生じるのが防止でき、尿が凹溝内に滞留しやすく、吸収体4に吸収されやすくなる。
【0084】
上記形態例では、前記吸収体凹部20は、
図2に示されるように、有底の凹溝状に形成していたが、
図21に示されるように、表面側から裏面側にかけて貫通したスリット状に形成してもよい。前記吸収体凹部20をスリット状とした場合、前記エンボス部21は、
図21に示されるように、吸収体凹部20の底面に配置される吸収体凹部20を貫通した不透液性裏面シート2に対して施すようにする。前記吸収体凹部20をスリット状に形成し凹溝22の底部に吸収体4が介在しない場合であっても、凹溝22の底面に介在する透液性表面シート3を通じても尿が吸収体4に吸収保持されるとともに、この凹溝底面の透液性表面シート3に吸収された尿が凹溝22に沿って拡散するため、吸収性能の低下は極僅かに抑えられる。