(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ろ過水集水ブロックの周縁部には、ろ過水を外部に流出させるろ過水管が設けられており、前記ろ過水集水ブロックの内部には、一端が前記第1水槽に連通し他端が前記ろ過水管に連通するろ過水流出通路が形成されている請求項1記載の自己洗浄槽保有型膜ろ過装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来例では、洗浄水槽から膜モジュールへ水を逆流させ、膜モジュールの逆流洗浄を行うために、洗浄水槽の内側に、逆洗計量槽が設けられていた。このため、膜ろ過装置本体の重量が大きくなり、運搬や設置作業に問題が生じたり、また、製造コストの増加にも繋がっていた。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて考え出されたものであり、その目的は、ろ過水を貯留する洗浄水槽(第1水槽に相当)を備え、ろ過水を膜モジュール側に逆流させて膜モジュール内を逆流洗浄することができると共に、装置本体の重量を削減でき、製造コストの低減を図ることができる自己洗浄槽保有型膜ろ過装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明のうちの請求項1記載の発明は、装置中央部にろ過水を貯留する第1水槽を設け、この第1水槽の外側には複数の膜モジュールが、装置の中心部を中心とした円周上に立設されており、前記第1水槽に貯留されているろ過水の水面に圧力を作用させ、ろ過水を膜モジュール側に逆流させて膜モジュール内を逆流洗浄する自己洗浄槽保有型膜ろ過装置であって、前記第1水槽内の中央部に
設けられた逆流洗浄用管
と、前記第1水槽の上部開口と前記膜モジュールの上部開口とを覆うろ過水集水ブロックと、前記ろ過水集水ブロック内部に形成され、一端が前記膜モジュールに連通し他端が前記逆流洗浄用管に連通するろ過水集水通路とを備え、ろ過処理時には、前記膜モジュールによってろ過されたろ過水が
前記ろ過水集水通路を経て前記逆流洗浄用管を通って前記第1水槽内に流入し、逆流洗浄時には、前記第1水槽内に貯留されているろ過水が前記逆流洗浄用管を
経て前記ろ過水集水通路を通って膜モジュール側に逆流するように構成されていることを特徴とする。
【0007】
上記の如く、逆洗計量槽に代えて逆流洗浄用管を用いる構成により、装置本体の重量を削減できると共に、製造コストの低減を図ることができる。
【0009】
上記の如く、ろ過水集水ブロック内部にろ過水集水通路を形成することにより、膜モジュールと逆流洗浄用管との間を連結する配管が不要となり、装置本体の重量を削減できる。また、配管の接続作業がなく設置作業が容易になる。更に、ろ過水集水通路が外部に露出する構成でないことにより、外部露出に起因した管の破損等の問題も生じることがない。
更に、ろ過水集水ブロックが第1水槽の上部開口
と前記膜モジュールの上部開口とを覆う上蓋を兼用する構成により、装置本体の重量を削減できると共に、製造コストの低減も図ることができる。
【0010】
また、請求項
2記載の発明は、請求項
1記載の自己洗浄槽保有型膜ろ過装置であって、前記ろ過水集水ブロックの周縁部には、ろ過水を外部に流出させるろ過水管が設けられており、前記ろ過水集水ブロックの内部には、一端が前記第1水槽に連通し他端が前記ろ過水管に連通するろ過水流出通路が形成されていることを特徴とする。
【0011】
上記の如く、ろ過水集水ブロックの内部にろ過水流出通路を形成することにより、ろ過水流出管を使用する構成に比べて、装置本体の重量を削減できる。また、ろ過水流出管を使用する構成の場合は、ろ過水集水ブロックの上方にろ過水流出管が突出した構造であった(特許文献1、2参照)。一方、本発明においては、ろ過水流出管を使用しないため、その分、装置本体の高さを抑制することができ、また、上部に突出部分が無いため、運搬が容易となる。
【0012】
また、請求項
3記載の発明は、請求項1
または2に記載の自己洗浄槽保有型膜ろ過装置であって、前記第1水槽を収納すると共に、内壁と前記第1水槽の外壁との間に集水空間が形成されている第2水槽と、前記集水空間に連通する洗浄排水管と、を備え、逆流洗浄時には、膜モジュール内を洗浄した後の洗浄排水を前記集水空間に導き、前記洗浄排水管から外部に排出することを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、コンパクトな構成で且つ効率よく膜モジュール内を洗浄した後の洗浄排水を集水し、外部に排出することが可能となる。
【0014】
また、請求項
4記載の発明は、請求項1
または2に記載の自己洗浄槽保有型膜ろ過装置であって、洗浄排水管と、前記第1水槽内に設けられ、前記洗浄排水管に連通する洗浄排水案内管と、を備え、逆流洗浄時には、膜モジュール内を洗浄した後の洗浄排水を、前記洗浄排水案内管を経て前記洗浄排水管に導き、前記洗浄排水管から外部に排出することを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、1槽構造の自己洗浄槽保有型膜ろ過装置が実現でき、大幅に重量を削減でき、製造コストの低減を図ることができる。尚、洗浄排水案内管を第1水槽内に設ける構成のため、洗浄排水案内管を第1水槽外に設ける構成に比べて、洗浄排水案内管が外部に露出することに起因した破損等の問題が生じない。
【0016】
また、請求項
5記載の発明は、請求項1
または2に記載の自己洗浄槽保有型膜ろ過装置であって、洗浄排水管と、前記第1水槽外に設けられ、前記洗浄排水管に連通する洗浄排水案内管と、を備え、逆流洗浄時には、膜モジュール内を洗浄した後の洗浄排水を、前記洗浄排水案内管を経て前記洗浄排水管に導き、前記洗浄排水管から外部に排出することを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、1槽構造の自己洗浄槽保有型膜ろ過装置が実現でき、大幅に重量を削減でき、製造コストの低減を図ることができる。尚、洗浄排水案内管を第1水槽外に設ける構成のため、洗浄排水案内管を第1水槽内に設ける構成に比べて、洗浄排水案内管の接合作業が容易となる。即ち、第1水槽内においては洗浄排水案内管の接合作業空間に制約があり、そのため、第1水槽内に多数の洗浄排水案内管を設けるような場合、洗浄排水案内管の接合作業が困難となる恐れがある。これに対して、洗浄排水案内管を第1水槽外に設ける構成の場合は、洗浄排水案内管の接合作業空間に制約がなく、洗浄排水案内管の接合作業が容易となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、逆洗計量槽に代えて逆流洗浄用管を用いる構成により、装置本体の重量を削減でき、製造コストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施の形態に基づいて詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は本発明に係る自己洗浄槽保有型膜ろ過装置の全体構成の概念図、
図2は膜モジュールの取付状態を示す斜視図、
図3はろ過水集水ブロックの平面図、
図4は
図3のA−A線矢視断面図、
図5は
図3のB−B線矢視断面図、
図6は
図3のC−C線矢視断面図、
図7は原水流入配管と原水供給ブロックとの接続付近の拡大図、
図8は原水供給ブロックの平面図、
図9はろ過水をサンプリングするための構成を簡略化して示す図である。尚、
図1は本発明に係る自己洗浄槽保有型膜ろ過装置の概念構成を示すものであり、該膜ろ過装置を構成する各構成部品や配管系統等の具体的な構成は
図2〜
図9に示されている。以下の説明においては、基本的に
図1を参照し、適宜
図2〜
図9をも参照しつつ膜ろ過装置の構成を説明する。
【0022】
膜ろ過装置1は、装置中央部に返送・排水槽2(第2水槽に相当)及び洗浄水槽3(第1水槽に相当)を配置し、装置下部に円盤状の原水供給ブロック5を配置し、装置上部に円盤状の膜ろ過水集水ブロック6を配置して構成されている。返送・排水槽2及び洗浄水槽3は、共にステンレス鋼板で作製されている。洗浄水槽3は返送・排水槽2内に収納されると共に、洗浄水槽3と返送・排水槽2とは同心状に配置されている。そして、返送・排水槽2の内壁と洗浄水槽3の外壁との間には、集水空間60が形成されている。また、原水供給ブロック5の周縁部と膜ろ過水集水ブロック6の周縁部との間には、複数個(本実施の形態では4個)の膜モジュール7が介在されている。これら膜モジュール7は、
図2及び
図3に示すように、膜ろ過装置1の中心部を中心とした円周上に立設されている。従って、各膜モジュール7と膜ろ過装置1の中心部との距離は、等しい。ここで、本発明で使用する膜モジュール7は、旭化成ケミカルズ(株)のケーシング収納型加圧型MF膜モジュールを選定しているが、メーカー、型式、膜種を限定するものではなく、他の加圧型MF膜モジュールも使用することができ、また、加圧型MF膜モジュールの他に加圧型UF膜モジュールも使用できる。更に、本発明における膜モジュールは、加圧型MF膜モジュールや加圧型UF膜モジュールに限定されるものではなく、広く浄水用装置に利用される膜モジュールを使用することができる。尚、
図1においては図面の簡略化を図るため、1つの膜モジュール7のみが描かれている。また、
図2においては左右各2個の膜モジュール7のうち、手前側の膜モジュール7のみが描かれている。
【0023】
洗浄水槽3内には、樹脂製の逆流洗浄用管33が設けられている。尚、逆流洗浄用管33の材料は特に限定されず、例えば塩化ビニル製の逆流洗浄用管33を使用するようにしてもよい。逆流洗浄用管33は、ろ過処理時にはろ過水を洗浄水槽3内に導く流路として機能し、逆流洗浄時には洗浄水槽3内に貯留されているろ過水を洗浄用として膜モジュール7側に逆流させる流路として機能する。逆流洗浄用管33は洗浄水槽3内の中央部に配置されており、その下端部は洗浄水槽3の底面近傍まで延びている。このように逆流洗浄用管33の下端部が洗浄水槽3の底面近傍まで延びていることにより、逆流洗浄時において洗浄水槽3内に貯留されているろ過水を略全て、逆流洗浄用管33から逆流させることが可能となり、膜モジュール7の逆流洗浄に十分な水量を、逆流洗浄用管33を通じて逆流させることができる。
【0024】
また、逆流洗浄用管33の上部には薬液注入弁200が設けられており、後述する薬液洗浄時には薬液が薬液注入弁200から注入されるようになっている。また、膜モジュールの膜破断検出のために用いられるろ過水のサンプリングにおいて、サンプリング点としては、各膜モジュールから流入するろ過水が均一に混合した直後にサンプリングできる点であることが好ましく、また、洗浄水槽上部では洗浄直後などエア混入の影響が懸念されるので、できるだけ槽下部から抜き出すようにするのが好ましい。このような理由により、本実施の形態では、ろ過水のサンプリング点としては洗浄水槽3下部より抜き出すようになっている。具体的には、
図9に示すように、洗浄水槽3下部に配管L250を設け、この配管L250により洗浄水槽3下部よりサンプリング水を抜き出すようになっている。洗浄水槽3下部から抜き出されたサンプリング水は濁度計251によって濁度が測定され、この測定値が所定値(膜破断発生と判断し得る基準値)以上か否かを判断して膜破断の発生を検出するようになっている。尚、ろ過水のサンプリングにおいては、実質的にろ過水が抜き出せればよいので、サンプリング点は洗浄水槽3下部に限定されるものではなく、他のいずれかの位置から抜き出すように構成されていてもよい。
【0025】
原水供給ブロック5は中央孔8を備えている。この中央孔8には、
図4及び
図5に示すように、洗浄排水管9が挿通している。洗浄排水管9の上端は返送・排水槽2の底部と連通している。また、原水供給ブロック5の内側には、原水チャンバー30が設けられている。この原水チャンバー30は
図4に示すように循環水配管L2と連通しており、後述するように循環水が原水チャンバー30を介して原水供給ブロック5に流入可能となっている。
【0026】
原水供給ブロック5には、原水チャンバー30から放射線状に延び各膜モジュール7に至る原水供給流路11(
図6、
図7及び
図8参照)が形成されている。また、原水供給ブロック5には、
図7及び
図8に示すように、一端が原水チャンバー30と連通し他端が原水導入口70と連通する原水導入流路71が形成されている。更に、原水導入口70は原水流入配管L10と接続している。このような構成により、原水は、原水ストレーナ40→原水流入配管L10→原水導入流路71→原水チャンバー30→原水供給流路11→膜モジュール7の下部に供給されるようになっている。
【0027】
ろ過水集水ブロック6の内部には、
図4に示すように、一端が膜モジュール7の上部に連通し他端が逆流洗浄用管33に連通するろ過水集水通路13が膜モジュール7毎に形成されている。これらろ過水集水通路13は、逆流洗浄用管33を中心として膜モジュール7に向けて放射線状に形成されている。従って、ろ過水は各膜モジュール7から逆流洗浄用管33に偏ることなく均一に流入し、洗浄水槽3に集水されることになる。
更に、ろ過水集水ブロック6は中央孔12(
図2参照)を備えている。この中央孔12には逆流洗浄用管33の上部が嵌り込み、このような状態でろ過水集水ブロック6は返送・排水槽2及び洗浄水槽3の各上方開口を塞ぐようにして配置されている。このように、ろ過水集水ブロック6は、ろ過水を洗浄水槽3に集水する機能の他に、返送・排水槽2及び洗浄水槽3の各上方開口を塞ぐ上蓋としての機能を有することにより、別途上蓋を設ける必要がなく製造コストの低減を図ることができる。
【0028】
また、ろ過水集水ブロック6は、洗浄水槽3内のろ過水の状態を点検するための点検孔35,36(
図2参照)を備えている。点検孔35は
図4に示すようにろ過水集水ブロック6内部のろ過水集水流路13へのろ過水の流入口を兼ね、点検孔36は
図4に示すように液位計A1の差込口を兼ねている。なお、後述するように、液位計A1は洗浄水槽3内の液面レベルを計測し、逆流洗浄時に洗浄水槽3の液面下降速度を計測する際に使用される。液位計A1は支持板80(
図5参照)によってろ過水集水ブロック6に固定支持されると共に、この支持板80によって点検孔35,36は閉止された状態となっている。尚、逆流洗浄用管33は、ろ過水集水ブロック6に固定されている。
【0029】
また、ろ過水集水ブロック6の周縁部には、
図4に示すようにろ過水を外部に流出させるろ過水管41が設けられており、このろ過水管41に関連して、ろ過水集水ブロック6の内部にはろ過水流出通路37が形成されている。即ち、ろ過水集水ブロック6の内部には、一端が洗浄水槽3の点検孔35に連通し、他端がろ過水管41の上部開口端であるろ過水流出口37aに連通するろ過水流出通路37が形成されている。このような構成により、洗浄水槽3内のろ過水は、過水流出通路37を経てろ過水管41を通って流出可能となっている。
【0030】
また、
図1に示すように、返送・排水槽2の下方には、コンプレッサ16から供給される圧縮空気を一旦貯留する空気槽15が設けられている。空気槽15は配管L1を介してろ過水集水ブロック6の圧縮空気流入口38a(
図3及び
図5参照)に接続されている。ろ過水集水ブロック6の内部には、一端が圧縮空気流入口38aに連通し、他端が洗浄水槽3の点検孔35に連通する圧縮空気供給通路38が形成されている。このような構成により、コンプレッサ16から供給する圧縮空気により、洗浄水槽3に貯留されているろ過水の水面に圧力を作用させることが可能となっている。
【0031】
また、各膜モジュール7と返送・排水槽2との間には連通管14が設けられている。この連通管14は、ろ過時には循環水を膜モジュール7から集水空間60に導く働きをし、逆流洗浄時には、膜モジュール7内を洗浄した後の洗浄排水を集水空間60に導く働きをする。
【0032】
また、返送・排水槽2と原水供給ブロック5とは、
図4に示すように洗浄排水管9、循環水配管L2及び外装管30を介して連通されている。この循環水配管L2には循環ポンプP1が設けられている。循環ポンプP1の駆動により、循環水は、返送・排水槽2(より詳しくは集水空間60)→洗浄排水管9→循環水配管L2→原水チャンバー30→原水供給ブロック5(より詳しくは原水供給流路11)→膜モジュール7→連通管14→返送・排水槽2(より詳しくは集水空間60)の経路を経て循環されるようになっている。
【0033】
また、
図1に示すように、膜モジュール7の上部には膜モジュール点検口20及び膜破断検出器21が備えられている。
【0034】
また、ろ過水集水流路13には緊急遮断弁ASVが設けられている。後述するように、膜モジュール7の膜破断が膜破断検出器21によって検出されたときは、緊急遮断弁ASVは「閉」状態となり、膜モジュール点検口20から膜を修繕することができるようになっている。
【0035】
尚、
図1において、V1は原水流入弁、V2はろ過水流出弁、V3は循環水弁、V4はエア供給弁、V5は洗浄排水弁、V7はエアスクラビング弁、V20は膜モジュール供給元弁である。
【0036】
また、
図6において、L40は原水排水管であり、この原水排水管L40は洗浄排水管9へ原水を排出するための配管であって、薬液洗浄工程において洗浄排水管9から排出される薬液排出水を原水で希釈するため等に用いられる。また、
図6において、V40は原水捨水弁であり、この原水捨水弁V40は原水排水管L40に設けられ洗浄排水管9への排水・遮断を行う開閉弁である。
【0037】
また、本発明に係る膜ろ過装置1は、
図1に示すように制御装置80を備えている。制御装置80は、膜ろ過装置1に備えられた各種の計測器等からの計測信号を受け、各弁の開閉制御や開度調整等を行い、また、各種のポンプやコンプレッサの駆動/停止を制御する。また、制御装置80は、膜ろ過装置1の運転動作に関連する種々の工程(例えば、ろ過工程、物理洗浄工程、膜破断検出工程、薬液洗浄工程等)の処理を制御する。
【0038】
上記構成の膜ろ過装置では、原水供給ブロック5に供給された原水は各膜モジュール7に対して均一に分配供給され、また、各膜モジュール7からのろ過水はろ過水集水ブロック6を通って中心部に配置された逆流洗浄用管33から洗浄水槽3に均一に集水され、更に、循環水は各膜モジュール7から各連通管14を介して中心部に配置された返送・排水槽2に均一に集水されることになる。このことは、各膜モジュール7に対して均一な原水の供給、膜ろ過水および循環水の流出、逆洗水の供給を行うことができることを意味する。尚、本発明に係る膜ろ過装置では原水ストレーナ40を設け、膜モジュール7でろ過する前段処理として原水ストレーナ40によって原水を予めろ過しておくことが好ましい。
【0039】
図10はろ過処理時におけるろ過水及び循環水の流れを示す図、
図11は逆流洗浄時における逆流洗浄水(ろ過水)及び膜モジュール7を洗浄した後の洗浄排水の流れを示す図である。これらの図面を参照して、膜ろ過装置1の運転動作について説明する。
【0040】
A.ろ過工程
図10を参照して、ろ過工程の運転動作について説明する。ろ過工程においては、原水流入弁V1及びろ過水流出弁V2を「開」状態とする。これにより、原水は、原水ストレーナ40→原水流入配管L10→原水導入流路71→原水チャンバー30→原水供給流路11→膜モジュール7の下部に供給される。そして、原水は膜モジュール7を通過する際に膜ろ過処理される。膜モジュール7によって膜ろ過処理されたろ過水は、膜モジュール7の上部→ろ過水集水流路13→逆流洗浄用管33→洗浄水槽3に流入する。そして、洗浄水槽3に貯留されたろ過水は、ろ過水流出通路37→ろ過水管41を通って外部に流出される。
【0041】
また、ろ過処理時においては、循環ポンプP1を「運転」状態とし、洗浄排水弁V5を「閉」状態、循環水弁V3を「開」状態とする。これにより、返送・排水槽2を通過した循環水は、返送・排水槽2(より詳しくは集水空間60)→洗浄排水管9→循環水配管L2→原水チャンバー30→原水供給ブロック5(より詳しくは原水供給流路11)→膜モジュール7→連通管14→返送・排水槽2(より詳しくは集水空間60)の循環経路を巡る。そして、循環水が膜モジュール7の膜表面を通過することにより、クロスフローによるファウリング防止が行われる。このようなろ過工程が所定時間行われた後、逆流洗浄工程に移る。
【0042】
B.逆流洗浄工程
図11を参照して、逆流洗浄工程の運転動作について説明する。逆流洗浄工程はろ過継続時間30〜90分毎に1回当たり1〜2分間行われる。
逆流洗浄工程においては、原水流入弁V1、ろ過水流出弁V2及び循環水弁V3を「閉」状態とし、循環ポンプP1を「停止」することにより、循環水の流れを停止する。また、エア供給弁V4及び洗浄排水弁V5を「開」状態とする。また、
図1に示すように、エア供給弁V4を「開」状態とすることにより、空気槽15から供給される圧縮空気は、配管L1→ろ過水集水ブロック6(より詳しくは圧縮空気流入口38a→圧縮空気供給通路38)を経て、洗浄水槽3に貯留されているろ過水の液面に圧力を作用させる。これにより、洗浄水槽3に貯留されているろ過水は、逆流洗浄用管33の下部開口から逆流して、ろ過水集水ブロック6のろ過水集水流路13を通って膜モジュール7に供給され、膜モジュール7内が逆流洗浄されることになる。
【0043】
逆流洗浄時には、膜モジュール内を洗浄した後の洗浄排水は、連通管14を通り返送・排水槽2に導かれ、洗浄排水弁V5を介して洗浄排水管9から系外に排出される。この逆流洗浄処理と同時にエアスクラビング処理が実行される。即ち、
図1に示すように、エアスクラビング弁V7の「開」状態により、空気槽15内の圧縮空気が膜モジュール7の下部から流入し、膜モジュール7内の中空糸膜を振動させて膜面付着物を剥離・除去する。そして、所定時間経過後に、エアスクラビング弁V7を「閉」状態とし、エアスクラビング処理が終了する。このようにして、逆流洗浄処理及びエアスクラビング処理が終了した後は、フラッシング処理が実行される。
【0044】
フラッシング処理においては、原水流入弁V1を「開」状態とする。これにより、膜モジュール7に供給された原水はろ過膜を透過することなく膜表面を通過し、物理洗浄行程時の残留物を、返送・排水槽2を経由し、洗浄排水管9から系外に排出する。そして、フラッシング処理時間経過後は、洗浄排水弁V5を「閉」状態とする。
こうして、物理洗浄工程が行われた後は原則的にはろ過工程に戻り、ろ過工程と物理洗浄工程とが繰り返し行われる。また、適宜、ろ過工程が終了した後に、膜破断の検出を目的に、圧力保持試験(膜破断検出工程)を行うこともできる。
【0045】
尚、原水の水温の変化による水の粘性特性から、膜モジュール7内の膜透過特性が変化する(具体的には水温が高ければ膜透過性は高くなり、水温が低ければ膜透過性も低くなる。)ことから、膜モジュール7の逆流洗浄に際しては以下のような制御を行っている。即ち、洗浄水槽3の液面下降速度を計測して洗浄流量を演算し、原水の水温に応じて膜透過性が変化する膜モジュール7に対して最適な洗浄流量により洗浄を行うように制御している。具体的には、液位計A1による計測結果に応じてエア供給弁V4の開度調整を行うことにより、膜モジュール7に対して最適な洗浄流量により洗浄を行うように制御している。
【0046】
C.膜破断検出工程
全ての膜モジュール7について膜破断検出工程が行われる。以下、具体的に説明する。
図1に示すように、各膜モジュール7の鉛直上には各々膜破断検出器21が設置されており、この膜破断検出器21によって膜モジュールに膜破断が生じていないかの検出が行われる。膜破断検出工程はろ過工程が終了した後に引き続き行われる。即ち、原水流入弁V1およびろ過水流出弁V2を「閉」としろ過工程を停止し、循環水弁V3も「閉」とし、循環ポンプP1を「停止」させる。次に、返送・排水槽エア抜弁(図示せず)を一旦「開」とし装置内が大気圧となったのを確認し、洗浄排水弁V5および返送・排水槽エア抜弁を「閉」とする。次に、膜破断検出器21に装備された電磁弁を「開」とし、エアスクラビング弁V7を徐々に「開」とする。この時、膜モジュール原水供給側の圧力は100kPaで調整する。圧縮空気による加圧を行うと膜モジュール7内の水が膜破断検出器21から流出するが、膜破断が有る場合は連続気泡が発生し、膜破断検出器21のフロートセンサーが水面の低下と共に下がり、異常が検出される。異常が検出された場合は、異常検出した膜モジュール7に対応する緊急遮断弁ASVが「閉」とされ、次工程から使用が禁止される(尚、他の膜モジュール7で運転は継続される)。一定時間(約1分間)の膜破断検査を行った後、引き続き物理洗浄工程に移行する。このようにして膜破断検出工程が行われるので、従来のように運転を停止して、膜モジュールを取り外してから、膜破断の検査を行う必要がなく、運転を安定に継続できる。
尚、上記のように膜破断の検出を各膜モジュール個別に行う方法の他に、全ての膜モジュールからのろ過水をサンプリングし、サンプリングした全てのろ過水について濁度を測定して膜破断を検出するようにしてもよい。
【0047】
D.薬液洗浄工程
有機系の汚染によりろ過能力が低下した場合、次亜塩素酸ナトリウムによる簡易薬液洗浄を行う。具体的には、
図1に示すように、洗浄用薬液貯留槽100内の次亜塩素酸ナトリウムは、注入ポンプ101の駆動によって薬液配管L20を通って薬液注入弁200から洗浄水槽3内のろ過水に注入されるようになっている。注入された次亜塩素酸ナトリウムはろ過水と共に逆流洗浄用管33の下部開口から逆流して、ろ過水集水ブロック6のろ過水集水流路13を通って膜モジュール7に供給され、これにより薬液洗浄が行われる。
【0048】
(実施の形態2)
図12は実施の形態2に係る膜ろ過装置の要部断面図、
図13は
図12のE−E線矢視断面図である。実施の形態2に係る膜ろ過装置1Aは、洗浄水槽3のみを備えた1槽構造であることを特徴とするものである。以下、具体的な構造を説明する。膜ろ過装置1Aにおいては、各膜モジュール7に対応して洗浄水槽3内に洗浄排水案内管90が設けられている。洗浄水槽3には、その底部中央に集水室91が形成されている。洗浄排水案内管90の一端は連通管14に接続され、他端は集水室91に接続されている。集水室91は洗浄排水管9に接続されている。
【0049】
このような構成の膜ろ過装置1Aは、実施の形態1の膜ろ過装置1と基本的に同様な運転動作を行う。洗浄排水案内管90は、実施の形態1の膜ろ過装置1における返送・排水槽2と同様の役割を果たすものである。ろ過処理時及び逆流洗浄時の動作を要約すれば、以下の通りである。即ち、ろ過処理時には、洗浄排水弁V5を「閉」状態とし且つ循環水弁V3を「開」状態とすることにより、集水室91に集水される循環水は、循環水用管L2を経て膜モジュール7の下部に導き膜モジュール7の膜表面を通り洗浄排水案内管90を経て集水室91に戻る経路を循環する。また、逆流洗浄時には、洗浄排水弁V5を「開」状態とし且つ循環水弁V3を「閉」状態とすることにより、膜モジュール7内を洗浄した後の洗浄排水は、洗浄排水案内管90を経て集水室91に導き、洗浄排水管9から外部に排出される。
上記構成の膜ろ過装置1Aによれば、1槽構造であるため、大幅な重量削減が得られ、製造コストの低減が図れる。
また、後述する実施の形態3と異なり、洗浄排水案内管90を洗浄水槽3内に収納した構造となるため、美感的にも構成的(配管が邪魔にならない)にも良好で、加えて膜ろ過装置全体の構成もコンパクトにできる。
尚、上記の例では、集水室91を設けたけれども、洗浄排水案内管90を直接洗浄排水管9に接続するようにしてもよい。
【0050】
(実施の形態3)
図14は実施の形態3に係る膜ろ過装置の要部断面図、
図15は
図14のF−F線矢視断面図である。実施の形態3に係る膜ろ過装置1Bは、実施の形態2に係る膜ろ過装置1Aと同様に洗浄水槽3のみを備えた1槽構造であることを特徴とするものである。実施の形態3が実施の形態2と相違する点は、実施の形態2では洗浄水槽3内に洗浄排水案内管90が設けられていたけれども、実施の形態3では洗浄水槽3の外側に洗浄排水案内管90が設けられていることである。即ち、洗浄排水案内管90は洗浄水槽3の外側を経由して洗浄排水管9に接続されている。従って、実施の形態2の集水室91を形成する必要はない。しかし、洗浄排水管9の外周には、洗浄排水案内管90を接続するスペースに限度があるので、洗浄排水案内管90の数が増えてくる(膜モジュール7の数が増える)と、洗浄排水案内管90と洗浄排水管9の接続部分を一部拡げたり、洗浄排水管9の径を拡げる必要が生じ、このような変形を行う場合には、集水室91に似た構造を有することになる。
【0051】
このような構成の膜ろ過装置1Bは、実施の形態1の膜ろ過装置1と基本的に同様な運転動作を行う。洗浄排水案内管90は、実施の形態1の膜ろ過装置1における返送・排水槽2と同様の役割を果たすものである。ろ過処理時及び逆流洗浄時の動作を要約すれば、以下の通りである。即ち、ろ過処理時には、洗浄排水弁V5を「閉」状態とし且つ循環水弁V3を「開」状態とすることにより、洗浄排水案内管90から洗浄排水管9に導かれる循環水を、循環水用管L2を経て膜モジュール7の下部に導き、膜モジュール7の膜表面を通り洗浄排水案内管90に戻る経路を循環する。また、逆流洗浄時には、洗浄排水弁V5を「開」状態とし且つ循環水弁V3を「閉」状態とすることにより、膜モジュール7内を洗浄した後の洗浄排水は、洗浄排水案内管90を経て洗浄排水管9に導かれ、洗浄排水管9から外部に排出される。
【0052】
本実施の形態3は、実施の形態2と同様に1槽構造の自己洗浄槽保有型膜ろ過装置が実現でき、大幅な重量削減が得られ、製造コストの低減が図れる。尚、洗浄排水案内管90を洗浄水槽3の外側に設ける構成のため、洗浄排水案内管90を洗浄水槽3の内側に設ける構成に比べて、洗浄排水案内管の接合作業が容易となる。即ち、洗浄水槽3内においては洗浄排水案内管90の接合作業空間に制約があり、そのため、洗浄水槽3内に多数の洗浄排水案内管90を設けるような場合、洗浄排水案内管90の接合作業が困難となる恐れがある。これに対して、洗浄排水案内管90を洗浄水槽3の外側に設ける構成の場合は、洗浄排水案内管90の接合作業空間に制約がなく、洗浄排水案内管90の接合作業が容易となる。
【0053】
(その他の事項)
(1)上記実施の形態では、物理洗浄時の圧力供給はコンプレッサで行なっていたが、空気圧シリンダ、油圧シリンダ、加圧給水ポンプ等を用いてもよい。