(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
法面上で当該法面に沿って縦横四方もしくは斜め四方に配設される4つの法枠部材を、これら法枠部材それぞれの長さ方向中心軸線が集合する集合部を含む集合領域で、これら4つの法枠部材の長さ方向端面同士を接合して、互いに連結するための法枠部材連結用金物であって、
同一外形寸法の四角形状に形成され、4つの上記法枠部材個々に、その長さ方向中心軸線に沿って該法枠部材の長さ方向端面から外方へ向けて突出させて設けるための4つの連結ブロックと、
4つの該連結ブロックを、上記集合部周りに順次連結するための4つの連結ピースとを備え、
4つの上記連結ブロックは、4つの上記法枠部材の長さ方向中心軸線位置それぞれで、該連結ブロックの、隣接する縁辺同士が対面する4つの対面位置が、上記集合部周りに循環配置されて、当該集合部周りに隣り合わせで循環配列され、かつ4つの該連結ブロックの少なくとも上面または下面には、これら連結ブロック同士を面一に位置合わせして連結基準面が形成され、
4つの上記連結ピースはそれぞれ、4つの上記連結ブロック個々に対し、上記連結基準面に重ね合わせて、かつ重ね合わせられた該連結ブロックから、上記集合部周りに隣り合う他の該連結ブロックへ向けて突出させて設けられ、
上記連結ピースは、これが設けられた上記連結ブロックと隣り合う他の該連結ブロックに対し、上記連結基準面を経過して該連結ピースと他の該連結ブロックとを締結するボルトにより、これら連結ブロック同士を上記集合部周りに応力伝達可能に接合し、
前記連結ピースは、前記連結ブロックに着脱自在にボルト接合して設けられ、
前記ボルト接合するためのボルト穴が長穴状であることを特徴とする法枠部材連結用金物。
4つの前記連結ブロックは、4つの前記法枠部材の長さ方向中心軸線位置それぞれに代えて、4つの該法枠部材の長さ方向中心軸線位置それぞれを挟んで、該連結ブロックの、隣接する縁辺同士が対面する4つの対面位置が、前記集合部周りに循環配置されて、当該集合部周りに隣り合わせで循環配列され、かつ4つの該連結ブロックの少なくとも上面または下面には、これら連結ブロック同士を面一に位置合わせして連結基準面が形成されることを特徴とする請求項1に記載の法枠部材連結用金物。
前記連結ブロックには、前記集合部に面して切り欠き部が形成され、上記集合部及びその周辺には、4つの上記連結ブロックの上記切り欠き部で取り囲んで、貫通部分が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の法枠部材連結用金物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1では、プレキャストコンクリートの法枠部材が接合される連結管は、法枠部材に作用する荷重によって、変形してしまうおそれがある。連結管が変形してしまうと、法枠部材相互での応力伝達を確保することができない。従って、連結管は、4つの法枠部材各々に作用する荷重に対し変形が生じない、厚い板厚で設計しなければならない。
【0010】
連結管の板厚を厚く設計すると、交差部における剛性が増大してしまうので、今度は、法枠部材の断面性能を大きくする必要が生じ、結局、連結管による法枠部材の連結構造は、合理的とは言えなかった。
【0011】
アンカーを併用する場合、連結管の内方に突出した鉄筋の端部上にアンカープレートを載置し、アンカープレートを介して、アンカーに作用する荷重を鉄筋に受け持たせるようにしている。アンカー荷重を受け持たせる分、法枠部材の鉄筋の径を、法枠部材として必要な鉄筋の径よりも太くしなければならない。
【0012】
鉄筋端部上へのアンカープレートの載置については、アンカープレートを全鉄筋の端部に対し、均等に設置することが難しく、従って、一部の法枠部材にアンカー荷重が片寄って作用するなど、アンカーと法枠部材との一体性を確保することが困難であった。
【0013】
アンカープレートを鉄筋端部に掛け渡すように載置する関係上、アンカー荷重によって当該アンカープレート自体が変形してしまうことを防止する必要があり、アンカープレートの板厚を厚くしなければならなかった。
【0014】
法枠部材の性能は、当該法枠部材の断面やコンクリートの強度、鉄筋の本数、配筋間隔等で決定される。このため、連結管として、配筋本数や配筋ピッチに応じ、多種類の仕様のものを作成し、用意しなければならなかった。言い換えれば、連結管は、性能の異なる多種類の法枠部材に対し、共通に用いることはできなかった。
【0015】
連結管には4つの法枠部材が接合され、これにより法枠部材が連結管を介して相互に連結される。すべての法枠部材の鉄筋すべてを連結管に締結する必要があり、作業性が良くなかった。
【0016】
また、例えば、2つもしくは3つの法枠部材が接合されることで設置位置が決められた連結管に対し、残りの法枠部材を一体的に接合するには、連結管を動かすことができないために、法枠部材を動かして連結管に接合しなければならない。残りの法枠部材と連結管とを一体化するには、法枠部材を連結管に締結する横向きのナットの締結力によって、当該法枠部材を引き寄せるようにスライドさせて動かし、連結管に密着させて強固に接合する必要がある。
【0017】
しかしながら、プレキャストコンクリートの法枠部材は重量物であり、ナットの締結力でスライドさせて接合することは殆ど不可能であり、このため、すべての法枠部材を連結管に一体化して、法枠部材相互を交点箇所で一体的に連結することは困難であった。
【0018】
特許文献2では、接合用空間部に充填材を充填するようにしているが、長さ方向端面が互いに相対向する縦梁用法枠の補強鉄筋同士及び横梁用法枠の補強鉄筋同士を連結金具、具体的にはターンバックルで連結しているに過ぎず、縦梁用と横梁用の法枠の補強鉄筋同士は連結されないため、すべての法枠相互で応力を伝達し負担することができず、効率の良くない連結構造であった。
【0019】
補強鉄筋は、充填材中に埋設されるものの、補強鉄筋には、アンカーに作用する荷重がアンカープレートを介して作用する。このため、アンカー荷重を受け持たせる分、特許文献1と同様に、法枠の補強鉄筋の径を、法枠として必要とされる鉄筋の径よりも太くしなければならない。
【0020】
縦梁用法枠の補強鉄筋と横梁用法枠の補強鉄筋の配筋深さは、これら補強鉄筋が交差して配筋される関係上、異なる。そのため、アンカープレートを全補強鉄筋に対し、均等に配置することが難しく、従って、一部の法枠にアンカー荷重が片寄って作用するなど、特許文献1と同様に、アンカーと法枠との一体性を確保することが困難であった。
【0021】
縦梁用法枠と横梁用法枠との補強鉄筋は交差状態で配筋されるため、補強鉄筋の配筋位置が異なる2種類の法枠を作成し、用意しなければならなかった。
【0022】
法枠同士を連結金具、具体的にはターンバックルで横向きに連結するようにしているため、法枠の連結作業では、法枠相互をターンバックルの操作でスライド式に引き寄せるように動かす必要がある。しかしながら、プレキャストコンクリート製の法枠は重量物であり、ターンバックルの操作でスライド移動させることは困難であって、作業性が良くなかった。
【0023】
しかも、引張側・圧縮側双方の補強鉄筋すべてについて、各ターンバックルを同時に回して接続する必要があるため、作業がきわめて煩瑣であり、施工の実現性も乏しかった。さらに、ターンバックルを介して補強鉄筋同士を連結するため、施工誤差に対応させることができなかった。
【0024】
特許文献3では、連接部材を単に重ねて連結しているだけなので、いずれかの連接部材に作用する応力を、他のすべての連接部材へ確実に伝達できるものではなく、効率の良くない連結構造であった。従ってまた、連接部材の貫通孔に一連にアンカーを挿通しても、すべての連接部材にアンカー荷重が伝達されるとは限らず、アンカーと連接部材との一体性を確保することが困難であった。
【0025】
連接部材は、重ねて設置する連結構成であるため、4つの連接部材すべて、異なる寸法で作成し用意しなければならなかった。重ね合わせのために、各連接部材に異なる高さの段差を設けているが、段差寸法の製造誤差や設置時の施工誤差のために、法面に適切に設置し得ないおそれがあった。
【0026】
アンカーは、貫通孔に挿通されるため、これら貫通孔に位置ずれがあると、アンカーを設けることができなかった。
【0027】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、堅牢な連結構造を構成することが可能であり、すべての法枠部材相互での応力伝達を適切に確保することが可能、アンカー併用の場合であっても、アンカー荷重をそれ自体で受け持ってかつ均等に各法枠部材に伝達してアンカーと法枠部材との一体性を確実に確保することが可能、法枠部材同士の連結を融通性をもって、かつ精度良く、作業性良好に施工することが可能、並びに性能の異なる多種類の法枠部材に対しても共通に用いることが可能な法枠部材連結用金物及び法枠部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明にかかる法枠部材連結用金物は、法面上で当該法面に沿って縦横四方もしくは斜め四方に配設される4つの法枠部材を、これら法枠部材それぞれの長さ方向中心軸線が集合する集合部を含む集合領域で、これら4つの法枠部材の長さ方向端面同士を接合して、互いに連結するための法枠部材連結用金物であって、同一外形寸法の四角形状に形成され、4つの上記法枠部材個々に、その長さ方向中心軸線に沿って該法枠部材の長さ方向端面から外方へ向けて突出させて設けるための4つの連結ブロックと、4つの該連結ブロックを、上記集合部周りに順次連結するための4つの連結ピースとを備え、4つの上記連結ブロックは、4つの上記法枠部材の長さ方向中心軸線位置それぞれで、該連結ブロックの、隣接する縁辺同士が対面する4つの対面位置が、上記集合部周りに循環配置されて、当該集合部周りに隣り合わせで循環配列され、かつ4つの該連結ブロックの少なくとも上面または下面には、これら連結ブロック同士を面一に位置合わせして連結基準面が形成され、4つの上記連結ピースはそれぞれ、4つの上記連結ブロック個々に対し、上記連結基準面に重ね合わせて、かつ重ね合わせられた該連結ブロックから、上記集合部周りに隣り合う他の該連結ブロックへ向けて突出させて設けられ、上記連結ピースは、これが設けられた上記連結ブロックと隣り合う他の該連結ブロックに対し、上記連結基準面を経過して該連結ピースと他の該連結ブロックとを締結するボルトにより、これら連結ブロック同士を上記集合部周りに応力伝達可能に
接合し、前記連結ピースは、前記連結ブロックに着脱自在にボルト接合して設けられ、前記ボルト接合するためのボルト穴が長穴状であることを特徴とする。
【0029】
4つの前記連結ブロックは、4つの前記法枠部材の長さ方向中心軸線位置それぞれに代えて、4つの該法枠部材の長さ方向中心軸線位置それぞれを挟んで、該連結ブロックの、隣接する縁辺同士が対面する4つの対面位置が、前記集合部周りに循環配置されて、当該集合部周りに隣り合わせで循環配列され、かつ4つの該連結ブロックの少なくとも上面または下面には、これら連結ブロック同士を面一に位置合わせして連結基準面が形成されることを特徴とする。
【0033】
前記連結ブロックには、前記集合部に面して切り欠き部が形成され、上記集合部及びその周辺には、4つの上記連結ブロックの上記切り欠き部で取り囲んで、貫通部分が形成されることを特徴とする。
【0034】
4つの前記連結ブロックの、面一に位置合わせされた上面には、これら上面相互間にわたり、アンカーを定着させるための定着部材が設置されることを特徴とする。
【0035】
前記連結ブロックには、これを前記法枠部材の長さ方向端面に取り付けるための取付用プレートが設けられることを特徴とする。
【0036】
本発明にかかる法枠部材は、上記法枠部材連結用金物の前記連結ブロックが、法枠部材の一対の長さ方向端面の少なくともいずれか一方に設けられていることを特徴とする。
【0037】
本発明にかかる法枠部材は、上記法枠部材連結用金物が、法枠部材の一対の長さ方向端面の少なくともいずれか一方に設けられていることを特徴とする。
【0038】
上記法枠部材連結用金物が、法枠部材の一対の長さ方向端面それぞれに設けられ、これら法枠部材連結用金物は、該法枠部材の
長さ方向中央位置における当該法枠部材の断面の中心に関し平面視で点対称に設けられることを特徴とする。
【0039】
上記法枠部材連結用金物が、法枠部材の一対の長さ方向端面それぞれに設けられ、これら法枠部材連結用金物は、該法枠部材の
長さ方向中央位置における当該法枠部材の断面に関し平面視で線対称に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0040】
本発明にかかる法枠部材連結用金物及び法枠部材にあっては、堅牢な連結構造を構成することができ、すべての法枠部材相互での応力伝達を適切に確保することができ、アンカー併用の場合であっても、アンカー荷重をそれ自体で受け持ってかつ均等に各法枠部材に伝達してアンカーと法枠部材との一体性を確実に確保することができ、法枠部材同士の連結を融通性をもって、かつ精度良く、作業性良好に施工することができ、さらに、性能の異なる多種類の法枠部材に対しても共通に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に、本発明にかかる法枠部材連結用金物及び法枠部材の好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る法枠部材連結用金物を4つ用いて、4つの法枠部材を連結した様子を示す平面図、
図2は、法枠部材連結用金物の概略斜視図、
図3は、
図2に示した法枠部材連結用金物を組み立てた状態を説明する説明図、
図4は、隣り合わせで配置される法枠部材連結用金物の寸法関係を説明する説明図、
図5は、法枠部材連結用金物を法枠部材に取り付けた様子を説明する説明図、
図6は、
図5に示した法枠部材の断面図、
図7は、法枠部材連結用金物の法枠部材に対する他の取付方法を示す法枠部材の断面図、
図8は、
図2に示した法枠部材連結用金物を用いて4つの法枠部材を連結する第1〜第3工程を説明する説明図、
図9は、
図8に引き続き、4つの法枠部材を連結する第4〜第5工程を説明する説明図、
図10は、
図9に対応する変形例を示す説明図、
図11は、複数箇所における連結状態を示す平面図、
図12は、
図11に示した連結状態に対応する法枠部材を示す平面図、
図13は、複数箇所における連結状態の他の例を示す平面図、
図14は、
図13に示した連結状態に対応する法枠部材を示す平面図、
図15は、アンカーを併用した場合を示す集合領域周辺の説明図、
図16は、アンカーを併用した場合の他の例を示す集合領域周辺の説明図、
図17は、連結ブロックについての変形例を説明する説明図、
図18は、連結ブロックの配置構成の変形例を説明する説明図、
図19は、連結ブロックの連結の仕方の変形例を説明する説明図、
図20は、連結ピースの設置位置の各種例を説明する説明図、
図21は、連結ボルトが挿通されるボルト穴の変形例を示す法枠部材の平面図、
図22は、
図21に示したボルト穴の変形例による連結状態を説明する説明図、
図23は、連結ブロックの厚さ方向に位置ずれが生じた場合を説明する集合領域の側断面図、
図24は、連結ブロックの厚さ方向に傾斜が生じた場合を説明する集合領域の側断面図である。
【0043】
以下、法面上で法面に沿って設置された法枠部材1の長さ方向、幅方向及び厚さ方向をそれぞれ、法枠部材連結用金物2の長さ方向、幅方向及び厚さ方向として、説明する。また、一部説明を除き、法枠部材1の横断面寸法(幅寸法及び厚さ寸法)が、同一である場合を例示して説明する。
【0044】
上述したように、法面を補強して当該法面の崩壊等を防止する法面補強構造は、法面上で、法面に沿って、同一長さ寸法の細長い棒状の法枠部材1を、縦横四方あるいは斜め四方に格子形態に組んで構築される。法枠部材1は通常、鉄筋コンクリートや鋼材、樹脂材、間伐材などで形成される。本実施形態では、プレキャストコンクリート製の法枠部材1を例示して説明する。
【0045】
本実施形態では
図1に示すように、法面補強構造の格子形態は、格子の交点箇所に、4つの法枠部材1の長さ方向端面1aを集合させ、集合したこれら4つの法枠部材1の長さ方向端面1aを、各法枠部材1に設けられる4つの法枠部材連結用金物2(以下、連結用金物という)で連結することによって形成される。
【0046】
本実施形態では詳細には、4つの連結用金物2は、法面上で格子をなすように配設される4つの法枠部材1を、これら法枠部材1それぞれの長さ方向中心軸線Xが集合する集合部Yを含む集合領域Zで、これら4つの法枠部材1の長さ方向端面1a同士を接合して、互いに連結するようになっている。法枠部材1の長さ方向中心軸線Xとは、法枠部材1の横断面の中心を長さ方向に通る線を言う。
【0047】
長さ方向中心軸線Xが集合する集合部Yとは、4つの法枠部材1の長さ方向中心軸線Xが完全に一点(格子の交点)で交差するように、4つの法枠部材1が配設される場合に限らず、法枠部材1や連結用金物2の製造公差や設置施工における公差に起因して、長さ方向中心軸線Xが、一点に集まらずに僅かながら相互に位置ずれして格子の交点付近に集合する態様で、4つの法枠部材1が配設される場合を含む意味である。
【0048】
集合領域Zとは、集合部Yをその中に含んで、4つの法枠部材1の長さ方向端面1aによっておおよそ包囲される領域を言う。
【0049】
連結用金物2は主に、4つの法枠部材1にそれぞれ設けるための4つの連結ブロック3と、4つの連結ブロック3を、隣り合うもの同士連結するための連結ピース4とから構成される。連結ブロック3は、集合領域Zに面して当該集合領域Zを取り囲む、各法枠部材1の長さ方向端面1aに設けられる。連結ブロック3は
図1に示しているように、端的には、集合部Y周りに時計回りもしくは反時計回りに、集合領域Zを埋めるように配置される。
【0050】
詳細に説明すると、4つの連結ブロック3は、
図1〜
図5に示すように、鋼製などの金属製で、後述する切り欠き部5を考慮に入れなければ、同一外形寸法の平面四角形状の直方体状に形成される。
図3(A)は、連結用金物2の上面図、
図3(B)は正面図、
図3(C)は底面図、
図3(D)は側面図、
図3(E)は側断面図である。
【0051】
連結ブロック3は、4つの法枠部材1個々に、その長さ方向中心軸線Xに沿って当該法枠部材1の長さ方向端面1aから外方へ向けて突出させて設けられる。集合領域Zを埋めるように配置される4つの連結ブロック3は、上述したように集合部Y周りに時計回りもしくは反時計回りに循環形態で並べられる。
【0052】
集合部Y周りに隣り合う連結ブロック3の隣接する縁辺同士は、4つの法枠部材1の長さ方向中心軸線X位置4箇所でそれぞれ対面し、これら4つの対面位置Pが集合部Y周りに循環配置されて、これにより、4つの連結ブロック3は、集合部Y周りに隣り合わせで循環配列される。すなわち、本実施形態では、四角形状の各連結ブロック3における一つの縁辺は、法枠部材1の長さ方向中心軸線X位置に位置付けられて、法枠部材1から突設される。
【0053】
図示例については、4つの法枠部材1の幅寸法、言い換えれば長さ方向端面1aの幅寸法が同一なので、集合領域Zの平面形態は正方形状であり、法枠部材1の長さ方向中心軸線Xは、この集合領域Zの正方形状を、同じ大きさの4つの正方形状に分断するものであって、従って、4つの各連結ブロック3は、切り欠き部5を考慮に入れなければ、同一外形寸法の4つの平面正方形状とされる。
【0054】
本実施形態では、4つの連結ブロック3はそれぞれ同一の厚さであって、法枠部材1の厚さ方向において、これら連結ブロック3同士が面一に位置合わせされ、これにより、4つの連結ブロック3には、それら連結ブロック3の厚さ方向における上面及び下面に、集合領域Z内で一連な連結基準面6が形成される。連結基準面6を形成する連結ブロック3の上面及び下面は、平坦面で形成される。
【0055】
本実施形態では、連結ブロック3は、法枠部材1の曲げ変形における中立位置である、法枠部材1の厚さ方向中央に位置付けて設けられる。また、本実施形態にあっては、連結ブロック3には、法枠部材1の長さ方向端面1aに面する縁辺を含む長さ方向基端面3aに、当該長さ方向端面1aに取り付けるための取付用プレート7が設けられる。
【0056】
従って、連結ブロック3は、法枠部材1へ取り付ける前の部品状態では、取付用プレート7から突設されており、取付用プレート7を介して法枠部材1の長さ方向端面1aに取り付けられて、当該長さ方向端面1aから突設される。各連結ブロック3の取付用プレート7は、隣接する連結ブロック3の取付用プレート7と競り合うことのない外形寸法で形成される。
【0057】
連結ブロック3は、取付用プレート7を用いることなく、その一部を法枠部材1に直接埋め込むなどして、法枠部材1に設けるようにしてもよい。4つの連結ブロック3は、それぞれ同一の厚さでも、異なる厚さであっても良い。
【0058】
連結ピース4は、鋼製などの金属製で板状または厚さのある直方体状に形成され、連結ブロック3を集合部Y周りに順次連結するために採用される。連結ピース4は、隣り合う連結ブロック3が対面する4つの対面位置Pに合わせて、4つ用いられる。4つの連結ピース4はそれぞれ、対面位置Pを跨ぐ方向に沿うその長さ方向一端部が4つの連結ブロック3個々に対し、連結基準面6に重ね合わせて設けられる。
【0059】
連結基準面6は、連結ブロック3の少なくとも上面または下面に形成され、従って、連結ピース4の一端部は、連結ブロック3の上面または下面に重ね合わされる。連結基準面6を連結ブロック3の上面及び下面に形成した場合には、連結ブロック6の上面に重ね合わせても、下面に重ね合わせてもよい。連結ピース4は、対面位置Pの縁辺とは反対側の縁辺側に寄せて設けられる。後述する寸法関係から、連結ブロック3に対し連結ピース4の大きさを大きく形成するためには、当該反対側の縁辺に位置合わせして設けることが好ましい。
【0060】
各連結ピース4は、重ね合わされた各連結ブロック3から、集合部Y周りに隣り合う他の連結ブロック3へ向けて、その長さ方向他端部が突出されて設けられる。連結ピース4の他端部は、他の連結ブロック3の上面または下面の連結基準面6に重ね合わされる。連結ピース4の一端部は、連結ブロック3に対し、溶接接合などによって一体的に接合しても、あるいは取付ボルト8とナットによる締結などによって着脱自在に一体的に接合してもよい。
【0061】
図示例にあっては、連結ピース4及び連結ブロック3に一連に貫通形成されたボルト挿通孔に挿通される取付ボルト8に、ナットを締結するボルト接合によって、連結ピース4の一端部は、連結ブロック3に着脱自在に設けられている。これにより、一つの連結ブロック3と一つの連結ピース4とが、一組のセットとして構成される。
【0062】
連結ピース4は、これを重ね合わせて一体的に設けた連結ブロック3と隣り合う他の連結ブロック3に対し、連結基準面6を経過して連結ピース4と他の連結ブロック3とを締結する連結ボルト9により、これら連結ブロック3同士を集合部Y周りに応力伝達可能に連結する。
【0063】
具体的には、連結ピース4の他端部とこれが重ね合わされる連結対象の他の連結ブロック3とには、一連に連なるようにそれぞれボルト穴10,11が形成され、これらボルト穴10,11に挿通される連結ボルト9にナットを締結するボルト接合により、隣り合う連結ブロック3同士が連結ピース4によって応力伝達可能に連結される。
【0064】
図示例では、3つの連結ピース4が、連結ブロック3下面の連結基準面6に設けられて、3組の連結ブロック3同士を3箇所で連結し、1つの連結ピース4が、連結ブロック3上面の連結基準面6に設けられて、1組の連結ブロック3同士を1箇所で連結し、これにより、4つの連結ブロック3を集合部Y周りに循環する配列で連結している。
【0065】
連結ブロック3の下面で連結することは、連結箇所の健全性を維持し易く好ましい。連結ブロック3の上面で連結することは、連結作業を円滑に行う上で好ましい。
【0066】
本実施形態では、最後の4つ目の連結ブロック3を設置する段階で、ほぼ集合領域Zが塞がれてしまい、連結ブロック3の下面からボルト接合を行うことが難しい関係で、4つ目の連結ピース4による連結作業が連結ブロック3上面の連結基準面6において行われる。
【0067】
連結ブロック3と連結ピース4との寸法関係については、
図4に示すように、少なくとも連結ブロック3の全幅寸法から連結ピース4の幅寸法を差し引いた幅寸法(連結ピース4から迫り出す部分の幅寸法)W1が、連結ピース4の幅寸法W2よりも大きい(W1>W2)ことが施工的な観点から好ましい。
【0068】
このように構成される連結用金物2は、
図5に示すように、法枠部材1の長さ方向端面1aに取り付けて設けられる。
図5(A)は、連結ピース4の連結ブロック3への着脱を含めて、法枠部材1を示す部分上面図、
図5(B)は、連結ピース4を下面の連結基準面6に取り付けた場合の法枠部材1の正面図、
図5(C)は、連結ピース4を上面の連結基準面6に取り付けた場合の法枠部材1の正面図である。
【0069】
法枠部材1への連結用金物2、具体的には連結ブロック3の取り付けは、
図6に示すように、プレキャストコンクリート製法枠部材1の長さ方向端面1a部分に埋設したナット体12に取付用プレート7をボルト接合したり、
図7に示すように、予め、取付用プレート7にロッドアンカー13を溶接接合しておき、長さ方向端面1a部分に位置させた状態で法枠部材1を製作して、法枠部材1と一体的になるようにして設けられる。
【0070】
法枠部材1としては、少なくとも連結用金物2の連結ブロック3が設けられていればよく、連結ピース4は着脱式の場合、後付けされてもよい。あるいは、法枠部材1としては、溶接接合等であれ、ボルト接合等であれ、連結ピース4を連結ブロック3に予め一体的に接合した状態の連結用金物2が設けられていてもよい。
【0071】
本実施形態では、各連結ブロック3には、集合部Yに面して切り欠き部5が形成される。そして、集合部Y及びその周辺には、4つの連結ブロック3の切り欠き部5で取り囲んで、連結ブロック3の厚さ方向、すなわち法面に向かって、貫通部分14が形成される。この貫通部分14は、連結ブロック3下面の連結基準面6に対する連結ピース4の取付作業や法面へのアンカーの設置に利用される。
【0072】
次に、本実施形態に係る法枠部材連結用金物2及び法枠部材1の作用について、
図8及び
図9を用いて説明する。
図8(A)は、法枠部材1を連結する第1工程を示す図であって、連結用金物2を取り付けた4つの法枠部材1のうち、1つ目の法枠部材1を法面上に設置する。
【0073】
図8(B)は、法枠部材1を連結する第2工程を示す図であって、1つ目の法枠部材1に対し、隣り合う連結用金物2が集合部Y周りに時計回りに配列されるように、2つ目の法枠部材1を搬入する。
【0074】
図8(C)は、法枠部材1を連結する第3工程を示す図であって、1つ目の法枠部材1の連結ブロック3下面の連結基準面6に取り付けられた連結ピース4の他端部を、2つ目の法枠部材1の連結ブロック3の連結基準面6に重ね合わせて、連結ブロック3の下側から連結ボルト9でボルト接合し、1つ目と2つ目の法枠部材1を連結する。さらに、2つ目の法枠部材1に対し、隣り合う連結用金物2が集合部Y周りに時計回りに配列されるように、3つ目の法枠部材1を搬入する。
【0075】
図9(D)は、法枠部材1を連結する第4工程を示す図であって、2つ目の法枠部材1の連結ブロック3下面の連結基準面6に取り付けられた連結ピース4の他端部を、3つ目の法枠部材1の連結ブロック3の連結基準面6に重ね合わせて、連結ブロック3の下側から連結ボルト9でボルト接合し、2つ目と3つ目の法枠部材1を連結する。
【0076】
さらに、3つ目の法枠部材1に対し、隣り合う連結用金物2が集合部Y周りに時計回りに配列されるように、4つ目の法枠部材1を搬入する。4つ目の法枠部材1は、集合領域Zにスライド式に差し込んでも、法面上方から集合領域Zに落とし込むようにしてもよい。
【0077】
図9(E)は、法枠部材1を連結する第5工程を示す図であって、3つ目の法枠部材1の連結ブロック3下面の連結基準面6に取り付けられた連結ピース4の他端部を、4つ目の法枠部材1の連結ブロック3の連結基準面6に重ね合わせて、連結ブロック3の下側から連結ボルト9でボルト接合し、3つ目と4つ目の法枠部材1を連結する。
【0078】
さらに、4つ目の法枠部材1の連結ブロック3上面の連結基準面6に取り付けられた連結ピース4の他端部を、1つ目の法枠部材1の連結ブロック3の連結基準面6に重ね合わせて、連結ブロック3の下側から連結ボルト9でボルト接合し、4つ目と1つ目の法枠部材1を連結する。
【0079】
以上により、4つの連結ブロック3は、集合部Y周りに循環する配列で相互に接合され、これによって、
図1にも示したように、4つの法枠部材1が、それらの長さ方向中心軸線Xが集合する集合部Yを含む集合領域Z、すなわち格子状の交差部分(交点部分)で互いに連結される。
【0080】
図10には、
図9に示した施工段階での変形例が示されている。すなわち、
図9では、連結ピース4が連結ブロック3に対し着脱式であって、連結ブロック3の上面及び下面のいずれの連結基準面6にも連結ピース4を取り付けることができる場合であったが、
図10は、連結ピース4を連結ブロック3に溶接接合等で一体的に設けた場合である。
【0081】
4つの連結ピース4はすべて、連結ブロック3下面の連結基準面6に設けられる。法枠部材1を連結する上記第1工程から第3工程までにおいて、1つ目の法枠部材1の連結ブロック3下面の連結基準面6に取り付けられた連結ピース4の他端部を、2つ目の法枠部材1の連結ブロック3の連結基準面6に重ね合わせて、連結ブロック3の下側から連結ボルト9でボルト接合し、1つ目と2つ目の法枠部材1を連結する。
【0082】
さらに、2つ目の法枠部材1に対し、隣り合う連結用金物2が集合部Y周りに時計回りに配列されるように、3つ目の法枠部材1を搬入する。
【0083】
その後、
図10(A)は、法枠部材1を連結する第4工程を示す図であって、2つ目の法枠部材1の連結ブロック3下面の連結基準面6に取り付けられた連結ピース4の他端部を、3つ目の法枠部材1の連結ブロック3の連結基準面6に重ね合わせて、連結ブロック3の下側から連結ボルト9でボルト接合し、2つ目と3つ目の法枠部材1を連結する。
【0084】
さらに、3つ目の法枠部材1に対し、隣り合う連結用金物2が集合部Y周りに時計回りに配列されるように、4つ目の法枠部材1を搬入する。4つ目の法枠部材1は、集合領域Zにスライド式に差し込む。
【0085】
図10(B)は、法枠部材1を連結する第5工程を示す図であって、3つ目の法枠部材1の連結ブロック3下面の連結基準面6に取り付けられた連結ピース4の他端部を、4つ目の法枠部材1の連結ブロック3の連結基準面6に重ね合わせて、連結ブロック3の下側から連結ボルト9でボルト接合し、3つ目と4つ目の法枠部材1を連結する。
【0086】
さらに、4つ目の法枠部材1の連結ブロック3下面の連結基準面6に取り付けられた連結ピース4の他端部を、1つ目の法枠部材1の連結ブロック3の連結基準面6に重ね合わせて、連結ブロック3の下側から連結ボルト9でボルト接合し、4つ目と1つ目の法枠部材1を連結する。
【0087】
以上により、連結ピース4が連結ブロック3に予め設けられている場合であっても、4つの連結ブロック3は、集合部Y周りに循環する配列で相互に接合され、これによって、4つの法枠部材1が、それらの長さ方向中心軸線Xが集合する集合部Yを含む集合領域Z、すなわち格子状の交差部分(交点部分)で互いに連結される。
【0088】
図11には、複数の連結箇所が示され、
図12には、
図11の連結態様に用いられる法枠部材1が示されている。多数の法枠部材1が4つずつ、複数の連結箇所で連結されることにより、格子状形態の法面補強構造が構築される。各法枠部材1には、その長さ方向両端部の一対の長さ方向端面1aそれぞれに、連結用金物2が設けられ、当該連結用金物2を介して、他の法枠部材1が3つずつ、その長さ方向両端部に連結される。
【0089】
図11に示されている連結態様では、法枠部材1(i) に着目すると、当該法枠部材1の長さ方向両端部で、法枠部材1(ii)〜(iv)が集合部Y周りに時計回りに循環配列されている。この場合に用いられる法枠部材1は
図12に示すように、その一対の長さ方向端面1aそれぞれに設けられる連結用金物2が、法枠部材1の
長さ方向中央位置(図中、Q参照)
における当該法枠部材1の断面の中心に関し平面視で点対称に設けられている。
【0090】
図13には、他の連結態様で連結した複数の連結箇所が示され、
図14には、
図13の連結態様に用いられる法枠部材1が示されている。
【0091】
図13に示されている連結態様では、法枠部材1(i) に着目すると、当該法枠部材1(i) の長さ方向一端部(図中、上方端部)では、法枠部材1(ii)〜(iv)が集合部Y周りに反時計回りに循環配列される一方、当該法枠部材1(i) の長さ方向他端部(図中、下方端部)では、法枠部材1(ii)〜(iv)は集合部Y周りに時計回りに循環配列されている。
【0092】
また、法枠部材1(i) に隣接する他の法枠部材1(i')に着目すると、当該法枠部材1(i')の長さ方向一端部(図中、上方端部)では、法枠部材1(ii)〜(iv)が集合部Y周りに時計回りに循環配列される一方、当該法枠部材1(i')の長さ方向他端部(図中、下方端部)では、法枠部材1(ii)〜(iv)は集合部Y周りに反時計回りに循環配列されている。
【0093】
この場合に用いられる法枠部材1は
図14に示すように、その一対の長さ方向端面1aそれぞれに設けられる連結用金物2が、法枠部材1の
長さ方向中央位置(図中、Q参照)
における当該法枠部材1の断面に関し平面視で線対称に設けられている。要するに、法枠部材1の長さ方向両端部への連結用金物2の取り付けは、長さ方向端面1aに対し、当該法枠部材1の長さ方向中心軸線Xの片側に寄せて設けてもよいし、あるいは、長さ方向中心軸線Xを挟んで両側に設けてもよい。
【0094】
本実施形態の連結用金物2を備えた法枠部材1は、縦横四方もしくは斜め四方に配設されて集合部Yで互いに連結されるものであり、法面補強構造の外周枠に対するこれら法枠部材1の接合・設置は、従来周知の手法によればよい。従って、法枠部材1には、その長さ方向で一対の長さ方向端面1aの少なくともいずれか一方に連結用金物2が設けられていればよい。
【0095】
以上説明した本実施形態に係る法枠部材連結用金物2は、法面上で当該法面に沿って縦横四方もしくは斜め四方に配設される4つの法枠部材1を、これら法枠部材1それぞれの長さ方向中心軸線Xが集合する集合部Yを含む集合領域Zで、これら4つの法枠部材1の長さ方向端面1a同士を接合して、互いに連結するための法枠部材連結用金物2であって、同一外形寸法の四角形状に形成され、4つの法枠部材1個々に、その長さ方向中心軸線Xに沿って法枠部材1の長さ方向端面1aから外方へ向けて突出させて設けるための4つの連結ブロック3と、4つの連結ブロック3を、集合部Y周りに順次連結するための4つの連結ピース4とを備え、4つの連結ブロック3は、4つの法枠部材1の長さ方向中心軸線X位置それぞれで、連結ブロック3の、隣接する縁辺同士が対面する4つの対面位置Pが、集合部Y周りに循環配置されて、当該集合部Y周りに隣り合わせで循環配列され、かつ4つの連結ブロック3の少なくとも上面または下面には、これら連結ブロック3同士を面一に位置合わせして連結基準面6が形成され、4つの連結ピース4はそれぞれ、4つの連結ブロック3個々に対し、連結基準面6に重ね合わせて、かつ重ね合わせられた連結ブロック3から、集合部Y周りに隣り合う他の連結ブロック3へ向けて突出させて設けられ、連結ピース4は、これが設けられた連結ブロック3と隣り合う他の連結ブロック3に対し、連結基準面6を経過して連結ピース4と他の連結ブロック3とを締結する連結ボルト9により、これら連結ブロック3同士を集合部Y周りに応力伝達可能に連結するので、そしてまた、法枠部材1は当該連結用金物2を備えていて、法枠部材1に設けるための連結ブロック3同士を連結ピース4で接合して連結構造を構成するので、特許文献1の変形しやすい連結管とは異なり、安定した応力伝達能力を発揮する合理的な連結構造を構成することができる。
【0096】
また、特許文献2や特許文献3の連結構造とは異なり、各法枠部材1に設けられる連結用金物2同士が接合されるので、すべての法枠部材1相互で応力を伝達し負担することができて、効率の良い連結構造を構成できる。
【0097】
法枠部材1の性能は上述したように、例えば鉄筋の本数や配筋間隔で決定される。これに対し、本実施形態に係る連結用金物2は、法枠部材1の構造とは独立して、連結ブロック3と連結ピース4によって構成されるので、法枠部材1の配筋状態等、法枠部材1の構成如何にかかわらず、法枠部材1同士を連結することができ、特許文献1〜3で用いている部材構成とは異なって、性能の異なる多種類の法枠部材1に対し、共用化することができる。
【0098】
特許文献1や特許文献2のように、鉄筋を取り扱って連結する構造ではなく、ブロックやピース形態の連結ブロック3及び連結ピース4を取り扱って連結する構造なので、施工作業性に優れる。
【0099】
本実施形態では、連結ピース4は、これが設けられた連結ブロック3と隣り合う他の連結ブロック3に対し、連結基準面6を経過して連結ピース4と他の連結ブロック3とを締結する連結ボルト9により、これら連結ブロック3同士を集合部Y周りに応力伝達可能に連結するので、すなわち連結ブロック3の厚さ方向に取り付けを行うので、特許文献1や特許文献2のように法枠部材1をスライドして引き寄せるなどして連結する構成ではないことから、法枠部材1の連結に融通が利き、従って施工精度や高い作業性を確保することができて、4つの連結用金物2相互を集合領域Zで堅牢に一体化して、法枠部材1同士を容易かつ確実に一体的に連結することができる。
【0100】
従って、本実施形態に係る法枠部材連結用金物2及び法枠部材1にあっては、堅牢な連結構造を構成することができ、すべての法枠部材1相互での応力伝達を適切に確保することができ、法枠部材1同士の連結を融通性をもって、かつ精度良く、作業性良好に施工することができ、さらに性能の異なる多種類の法枠部材1に対しても共通に用いることができる。
【0101】
図15及び
図16には、アンカー15を集合領域Zに打ち込んで、併用する場合が示されている。なお、図示例にあっては、アンカー15としてロックボルト(地山補強材)を用いた例を示しているが、これに限らず、グラウンドアンカーなどを用いても構わない。
【0102】
図15(A)は、集合領域Z周辺を示す平面図、
図15(B)は、側断面図である。4つの連結ブロック3の、面一に位置合わせされた上面、すなわち連結基準面6には、4つの連結ブロック3の上面相互間にわたり、アンカー15を定着させるための定着部材16が設置される。
【0103】
アンカー15は、切り欠き部5で形成された貫通部分14を利用して、法面に打ち込まれる。あるいは、アンカー15は先行して設けておいてもよい。このように、切り欠き部5による貫通部分14は、連結ピース4を連結ブロック3下面の連結基準面6に手を差し入れて取り付けるための作業に利用されるだけでなく、アンカー15を設置するためのスペースとしても利用可能となっている。
【0104】
図16(A)は、他の施工例における集合領域Z周辺を示す平面図、
図16(B)は、その側断面図である。
図15は、集合領域Zを法面上方へ開放した状態で、アンカー15の頭部を覆って、キャップ17を設ける場合であり、
図16は、集合領域Zにコンクリートやモルタル等の充填材18を充填して、アンカー15の頭部を埋設する場合である。
【0105】
いずれにあっても、ブロック形態の4つの連結ブロック3上に定着部材16を安定的に設置できて、当該定着部材16を介して、アンカー15に作用する荷重を、4つの法枠部材1に均等に伝達することができ、特許文献1〜特許文献3の構成とは異なり、アンカー15と法枠部材1との一体性を向上することができるとともに、定着部材16の変形も抑制することができ、また、特許文献3と異なり、貫通部分14により融通性良好にアンカー15を設けることができる。
【0106】
要するに、本実施形態に係る法枠部材連結用金物2及び法枠部材1では、アンカー15併用の場合であっても、アンカー荷重をそれ自体で受け持ってかつ均等に各法枠部材1に伝達してアンカー15と法枠部材1との一体性を確実に確保することができる。また、
図16の構成から理解できるように、貫通部分14は、連結ブロック3下方の法面側へ充填材18を充填する場合にも利用することができる。
【0107】
図17には、連結ブロック3についての変形例が各種示されている。
図17(A)は、切り欠き部5を設けない場合であり、4つの連結ブロック3の隣接する縁辺同士が対面位置Pで隙間なくぴったりと合わせられている。この場合も、3つの連結ブロック3同士の連結ピース4による連結は、連結ブロック3下側の連結基準面6で行い、最後の連結は、連結ブロック3上側の連結基準面6で行えばよい。
【0108】
図17(B)及び(C)は、法枠部材1の半幅以上の幅寸法の連結ブロック3で連結する場合を示している。
図17(B)は、集合領域Z周辺を示す平面図、
図17(C)は、連結ブロック3を法枠部材1の長さ方向端面1aに取り付けた様子を示す平面図である。連結ブロック3は、法枠部材1にその側方へ迫り出すようにして取り付けられる。このような連結ブロック3同士であっても、
図8及び
図9に示した手順に従って接合することができる。
【0109】
図17(D)は、例えば縦方向に配設される法枠部材1の幅寸法と、横方向に配設される法枠部材1の幅寸法とが大小異なる場合である。このような場合は、
図17(B)及び(C)に示した場合の応用として、幅寸法が大きな方の法枠部材1を基準として、少なくともその半幅以上の幅寸法の連結ブロック3を用いて連結するようにすればよい。以上の例では、連結ブロック3はどれも正方形状であったが、連結ブロック3は、正方形状に限らず、四角形であればよい。
【0110】
図17(E)は、
図17(D)と同様に、幅寸法の異なる法枠部材1を連結する場合であって、連結ブロック3の対面位置Pに配置される2つの縁辺のうち、大きな幅寸法の法枠部材1が向かい合う方向に対面する縁辺は、連結ブロック3の幅寸法を大きくし、小さな幅寸法の法枠部材1が向かい合う方向に対面する縁辺は、連結ブロック3の幅寸法を小さくするようにして、連結ブロック3の平面外形を長方形状に形成するようにしてもよい。
【0111】
例えば、連結ブロック3のこれら縁辺それぞれを、幅寸法が大小それぞれ法枠部材1の半幅に合わせれば、図示したように、集合領域Zに連結ブロック3をすっぽりと納めて設けることができる。
【0112】
図18には、連結ブロック3の配置構成の変形例が示されている。上記実施形態では、4つの連結ブロック3の、隣接する縁辺同士が対面する4つの対面位置Pが、4つの法枠部材1の長さ方向中心軸線X位置であったが、これに代えて、当該変形例では、4つの法枠部材1の長さ方向中心軸線X位置それぞれを挟んで設定される。
【0113】
図18(A)にはその一例が示されていて、要するに、縁辺同士が密接されずに、隙間を隔てて対面される。具体的には、連結ブロック3の幅寸法が、上記実施形態で説明した連結ブロック3の幅寸法よりも、小さく設定される。その他の構成及び作用効果は上記実施形態と同様であって、連結ピース4は上記実施形態と同様に、隣り合う連結ブロック3同士を接合する。
【0114】
このように構成すると、施工誤差を吸収しやすい、充填材18を集合領域Zに充填しやすいなど、施工の融通性を向上することができる。
【0115】
図18(B)は、
図17(B)及び(C)に対応する図である。
図18(C)は、
図18(B)の応用であって、例えば縦方向に配設される法枠部材1の幅寸法と、横方向に配設される法枠部材1の幅寸法とが大小異なる場合に、小さな幅寸法の法枠部材1の幅方向では隙間を空けず、大きな幅寸法の法枠部材1の幅方向には隙間を空けるようにして、連結ブロック3同士を連結するようにしてもよい。
【0116】
図18(D)は、
図18(C)と同様な応用であって、幅寸法の小さな法枠部材1の幅寸法の半幅で正方形状に形成した連結ブロック3を、幅寸法の大きな法枠部材1との連結に用いるようにしていて、大きな幅寸法の法枠部材1の幅方向に隙間が空けられている。
【0117】
図19には、連結ブロック3の連結の仕方の変形例が示されている。
図19(A)は、連結ブロック3を連結した状態の平面図、
図19(B)は、そのための連結方法の説明図である。
【0118】
連結ピース4は基本的に、連結ブロック3下面の連結基準面6で、隣り合う連結ブロック3同士を接合するが、すべての連結ピース4を連結ブロック3下面の連結基準面6に重ね合わせて設けると、連結ピース4と連結対象の連結ブロック3に一連に連なるように形成されるボルト穴10,11の位置、そして連結ボルト9や連結ピース4が、接合しようとしている連結ピース4と干渉してしまって、接合が行えない場合がある。特に、連結ピース4を連結ブロック3に溶接接合等で一体化した場合に、接合ができない場合がある。
【0119】
連結ピース4を着脱式とすれば、仮に、連結ブロック3下面の連結基準面6に連結ピース4が取り付けられている場合でも、その連結ピース4を取り外して上面の連結基準面に付け替えることで、干渉を回避してすべての連結ブロック3同士を接合することができる。
【0120】
このように、連結ピース4を連結ブロック3に着脱自在に取り付けることで、連結ブロック3下面の連結基準面6での接合を基本としながら、当該下面の連結基準面6での接合ができない場合など、必要に応じて、上面の連結基準面6を利用して連結ピース4による連結ブロック3の接合を高い融通性で行うことができる。
【0121】
図20には、連結ピース4の設置位置の各種例が示されている。
図20はいずれも、連結ピース4を連結ブロック3に溶接接合等で一体的に接合した場合であって、法面側から見上げた図である。連結ピース4は基本的に、互いに干渉しない配置で、集合部Y周りに循環配列される。
【0122】
図20(A)では、連結ピース4は、連結ブロック3の長さを超える長さで形成され、隣り合う連結対象である連結ブロック3に対し、対面位置Pで対面する縁辺近傍で連結ボルト9により接合される。
図20(B)でも、連結ピース4は、連結ブロック3の長さを超える長さで形成され、隣り合う連結対象である連結ブロック3に対し、対面位置Pで対面する縁辺とは反対側の縁辺近傍で連結ボルト9により接合される。
【0123】
図20(C)では、連結ピース4は、対面位置Pで対面する縁辺を跨ぐ程度の短い長さで形成され、隣り合う連結対象である連結ブロック3に対し、対面位置Pで対面する縁辺近傍で連結ボルト9により接合される。連結ピース4の設置位置は、これらの例に限らず、その機能を果たす限りにおいて、その他の態様であってもよいことはもちろんである。
【0124】
図21及び
図22には、連結ボルト9が挿通されるボルト穴10,11の変形例が示されている。
図21は、連結用金物2を示す法枠部材1の平面図、
図22(A)は、施工誤差が発生していない場合の連結状態を示す平面図、
図22(B)は、施工誤差が生じている場合の連結状態を示す平面図である。
【0125】
ボルト穴10,11は、連結ピース4と連結対象の連結ブロック3とに一連に形成される。この変形例では、ボルト穴10,11のうち、連結ピース4に設けられるボルト穴10は、法枠部材1の長さ方向に長穴状に形成される。また、連結ブロック3に設けられるボルト穴11は、法枠部材1の幅方向に長穴状に形成される。ボルト穴10,11をこのように形成することにより、集合部Y周りに循環配列されて4つの法枠部材1を連結する連結用金物2の施工における融通性を向上することができる。
【0126】
具体的には、上述のようにボルト穴10,11を長穴状とすることにより、連結ブロック3及び連結ピース4からなる連結用金物2に、縦横四方もしくは斜め四方から接合される法枠部材1に対して、位置合わせにおける施工誤差の吸収機能を持たせることができる。
【0127】
図22(A)では、施工誤差が発生していないので、長穴状のボルト穴10,11の中央に連結ボルト9が位置しているのに対し、施工誤差が生じている
図22(B)では、連結ボルト9が長穴状のボルト穴10,11内部に片寄って位置していて、位置ずれを吸収していることが理解される。施工誤差で隙間が生じる連結ブロック3の連結構成は、結果的に、
図18で説明した例と同様なものとなる。
【0128】
図23は、連結ブロック3の厚さ方向に位置ずれが生じた場合についての説明図である。この場合には、連結ピース4と連結対象の連結ブロック3における連結基準面6との隙間に座金19を設ければよい。
【0129】
図24は、連結ブロック3の厚さ方向に傾斜が生じた場合についての説明図である。この場合にも、連結ピース4と連結対象の連結ブロック3における連結基準面6との隙間にテーパ座金20を設ければよい。この場合には、長穴状のボルト穴10,11を有効に機能させることができる。