【実施例1】
【0018】
図1(A)、
図1(B)及び
図1(C)乃至
図20(A)、
図20(B)及び
図20(C)に、本発明の原子力プラントにおける構造物撤去方法及びそれに用いられる使用済燃料貯蔵プール保護シートの実施例1を示す。
【0019】
該図に示す本実施例は、原子炉建屋20内に収納されている使用済燃料を貯蔵する使用済燃料貯蔵プール(SFP)1上又はこのSFP1の周辺に散乱している構造物(撤去対象構造物8a(例えば、破損した天井クレーン)、8b(例えば、破損した燃料取替機))を、原子炉建屋20外からクレーン(揚重機)5Aを用いて撤去する際に、SFP1上にクレーン5Aを用いて使用済燃料貯蔵プール保護シート2を設置し、その後、瓦礫撤去シート(構造物撤去用シート)11で撤去対象構造物8a、8bを包み込んだ後、撤去対象構造物8a、8bを包み込んだ瓦礫撤去用シート11を、クレーン5Aを用いて撤去回収することを特徴とする。
【0020】
具体的には、撤去対象構造物8a、8bの撤去は、クレーン5Aの先端に保護シート吊上げ治具3(先端に保護シート吊上げ治具フック4が取り付けられている)を設置し、この保護シート吊上げ治具3で使用済燃料貯蔵プール保護シート2を把持する第1の工程と、使用済燃料貯蔵プール保護シート2を把持している保護シート吊上げ治具3を、原子炉建屋20の外壁に形成されている狭隘開口部6より原子炉建屋20内へクレーン5Aにて挿入することで使用済燃料貯蔵プール保護シート2をSFP1上の所定の位置まで挿入する第2の工程と、第2の工程の後、保護シート吊上げ治具3での把持状態が解除され使用済燃料貯蔵プール保護シート2が切り離され、使用済燃料貯蔵プール保護シート2がSFP1上に設置される第3の工程と、第3の工程で使用済燃料貯蔵プール保護シート2が切り離されてクレーン5Aが保護シート吊上げ治具3だけの吊り状態の際に、保護シート吊上げ治具3を原子炉建屋20内に挿入する経路と逆の経路でクレーン5Aを用いて引き抜き操作を行う第4の工程と、クレーン5Aの先端に専用ハンドル9を設置し、撤去対象構造物8a、8bの撤去の前に、専用ハンドル9を用いて撤去対象構造物8a、8bの撤去の支障となる瓦礫(屋根瓦礫10)を撤去回収する第5の工程と、クレーン5Bの先端に設置された吊り天秤13に吊られた瓦礫撤去用シート11をクレーン5Bで撤去対象構造物8a、8bの周辺に移動し、所定の位置に移動したら吊り天秤13と瓦礫撤去用シート11を切り離す第6の工程と、第6の工程の後、瓦礫撤去用シート11をシート引き伸ばし治具12で撤去対象構造物8a、8bの下面に広げる第7の工程と、2つの吊り天秤A(16)及び吊り天秤B(17)を撤去対象構造物8a、8bの周辺に配置すると共に、瓦礫撤去用シート11の一方を吊り天秤A(16)に接続し、同様に瓦礫撤去用シート11のもう一方を吊り天秤B(17)に接続する第8の工程と、吊り天秤A(16)及び吊り天秤B(17)にクレーン5Aに接続されたスリング18に接続し、クレーン5Aを巻上げることで撤去対象構造物8a、8bは瓦礫撤去用シート11で包み込まれ、その後、クレーン5を巻上げて撤去対象構造物8a、8bを吊上げ撤去回収する第9の工程と、第9の工程で撤去対象構造物8a、8bが撤去回収された後、クレーン5Aを用いて使用済燃料貯蔵プール保護シート2を撤去する第10の工程が行なわれるものである。
【0021】
更に、図面を用いて詳述する。
【0022】
図1(A)、
図1(B)及び
図1(C)に、SFP1周辺の原子炉建屋20の概略配置及び使用済燃料貯蔵プール保護シート2の吊り上げ準備概念を示す。
【0023】
該図に示す如く、クレーン(揚重機)5Aのアーム5aの上方先端から降ろされたワイヤロープ5bの先端には保護シート吊上げ治具3が取り付けられ、保護シート吊上げ治具3の先端に取り付けられている保護シート吊上げ治具フック4により、使用済燃料貯蔵プール保護シート2が把持されている。本実施例では、
図1(B)に示す如く、使用済燃料貯蔵プール保護シート2がロール状に巻かれた状態であり、この際には、保護シート吊上げ治具3の先端に取り付けられている保護シート吊上げ治具フック4が閉じられており、屋外配置のクレーン5Aでの遠隔操作により、吊上げ準備が行なわれる。なお、21は原子炉格納容器、22はドライヤセパレータプールである。
【0024】
図2(A)、
図2(B)及び
図2(C)に、本実施例の原子力プラントにおける構造物撤去方法を実施する際の使用済燃料貯蔵プール保護シート2を、原子炉建屋20の狭隘開口部6より原子炉建屋20内へ挿入する状態を示す。
【0025】
該図に示す如く、クレーン5Aで吊上げ準備した使用済燃料貯蔵プール保護シート2は、原子炉建屋20の外壁の狭隘開口部6(アクセス有効箇所)から保護シート吊上げ治具3を挿入することにより、原子炉建屋20内へ遠隔操作にて挿入される。使用済燃料貯蔵プール保護シート2をSFP1の所定の位置まで挿入後、保護シート吊上げ治具3の先端に取り付けられている保護シート吊上げ治具フック4の開操作(
図1(B)の保護シート吊上げ治具フック4が開いた状態)により、使用済燃料貯蔵プール保護シート2が保護シート吊上げ治具3から切り離され、使用済燃料貯蔵プール保護シート2がSFP1上に設置される。なお、後述するが使用済燃料貯蔵プール保護シート2には、流体注入ホース7が接続された構造となっている。
【0026】
図3(A)、
図3(B)及び
図3(C)に、本実施例の原子力プラントにおける構造物撤去方法を実施する際の使用済燃料貯蔵プール保護シート2を切り離した後に、保護シート吊上げ治具3をクレーン5Aを用いて引き抜いている状態を示す。
【0027】
該図に示す如く、使用済燃料貯蔵プール保護シート2が保護シート吊上げ治具3から切り離されと、クレーン5Aは保護シート吊上げ治具3だけの吊り状態となるので、この状態の時に、使用済燃料貯蔵プール保護シート2の挿入経路と逆の経路で、クレーン5Aにより保護シート吊上げ治具3の原子炉建屋20内からの引き抜き操作を行う。
【0028】
図4(A)、
図4(B)及び
図4(C)に、本実施例の原子力プラントにおける構造物撤去方法を実施する際の保護シート吊上げ治具3をクレーン5Aを用いて完全に引き抜いた状態を示す。また、
図5(A)、
図5(B)、
図5(C)及び
図5(D)に、本実施例の原子力プラントにおける構造物撤去方法に用いられる使用済燃料貯蔵プール保護シート2を示す。
【0029】
使用済燃料貯蔵プール保護シート2の目的は、撤去対象構造物8a、8bの撤去作業時に誤って落下した瓦礫を使用済燃料貯蔵プール保護シート2で受け止め、SFP1内への落下を防止することである。
【0030】
本実施例での使用済燃料貯蔵プール保護シート2は、原子炉建屋20の狭隘開口部6からの挿入の際にはロール状に巻かれ、狭隘開口部6から挿入された後は、SFP1の全面を覆うようにシート面が広がっていることを特徴とする。
【0031】
具体的には、本実施例の使用済燃料貯蔵プール保護シート2は、
図5(A)、
図5(B)、
図5(C)及び
図5(D)に示す如く、シート中央付近(
図5(A)、
図5(C)参照)或いはシート端部(
図5(D)参照)に流体が複数個所から注入可能な流路1、流路2、流路3を備え、使用済燃料貯蔵プール保護シート2をロール状に巻かれた状態からSFP1の全面を覆うように広げる際は、シート中央付近或いはシート端部より流路1、流路2、流路3へ流体を注入(注入1、注入2、注入3)するものである。
【0032】
即ち、本実施例の使用済燃料貯蔵プール保護シート2は、シート中央付近或いはシート端部より流体等を複数個所から注入可能な構造を備えており、各注入先の流路は保護シート面と一体構造となっている。この使用済燃料貯蔵プール保護シート2を広げる際は、流体等を流路1、流路2、流路3へ注入することで、シート面を広げることが可能となる。
【0033】
また、使用済燃料貯蔵プール保護シート2の端部複数個所には、固定用フック23又はワイヤーを備えており、例えば多関節ロボットを用いて原子炉建屋20の強度部材(図示せず)等と接続することにより、重量物が使用済燃料貯蔵プール保護シート2上に落下した場合でも、重量物を使用済燃料貯蔵プール保護シート2上で保持し、使用済燃料貯蔵プール保護シート2自体がSFP1へ落下することも防止できる。
【0034】
また、本実施例の使用済燃料貯蔵プール保護シート2のシート中央付近或いはシート端部に補強部材24を備えており、この補強部材24により、シート補強及びシート中央部流路の折れ曲がりを防止でき、ロール状から平面シート状への展開を容易にしている。また、使用済燃料貯蔵プール保護シート2は、SFP1の全面を覆うことが可能な面積を有し、これをロール状に巻くことで、狭隘開口部6からの挿入を可能としている。
【0035】
更に、本実施例では、使用済燃料貯蔵プール保護シート2の面の各流路近傍に沿って形状記憶部材25を備えることで、流体等の注入解除操作でロール形状に形状復帰可能な特徴を持つ。
【0036】
図6(A)、
図6(B)及び
図6(C)に、本実施例の原子力プラントにおける構造物撤去方法に用いられる撤去対象構造物8a、8bを撤去する前に、撤去対象構造物8a、8bの撤去の支障となる屋根瓦礫10を撤去回収する状態を示す。
【0037】
該図に示す瓦礫撤去は、撤去対象構造物8a、8bの撤去作業に支障が出る瓦礫の撤去を行うものである。撤去方法としては、クレーン5A及びクレーン5Aの先端に専用ハンドル9(例えば、撤去重機、多関節ロボット等)を取り付けた設備で瓦礫を撤去、回収する。主な瓦礫としては、原子炉建屋20の屋根部材である鉄骨(屋根瓦礫10)などが対象となる。屋根瓦礫10の撤去は、複数台の監視カメラをクレーン5Aの先端等へ設置し、カメラ映像を確認しながら屋根瓦礫10を把持し、原子炉建屋20の上空へ吊上げ撤去、回収を行う。
【0038】
図7(A)、
図7(B)及び
図7(C)に、本実施例の原子力プラントにおける構造物撤去方法に用いられるクレーン5Aの先端に設置された吊り天秤13に吊られた瓦礫撤去用シート(構造物撤去用シート)11をクレーン5Aで撤去対象構造物8a、8bの周辺に移動する状態を示す。
図8(A)、
図8(B)及び
図8(C)に、瓦礫撤去用シート11が所定の位置に移動したら吊り天秤13と瓦礫撤去用シート11を切り離す状態を示す。
図9(A)、
図9(B)及び
図9(C)に、シート引き伸ばし治具12を撤去対象構造物8a、8bの下面に挿入する状態を示す。
図10(A)、
図10(B)及び
図10(C)に、瓦礫撤去用シート11の引き伸ばし状態を示す。
図11(A)、
図11(B)及び
図11(C)に、瓦礫撤去用シート11の搬入状態を示す。
図12(A)、
図12(B)及び
図12(C)に、瓦礫撤去用シート11の引き伸ばし状態を示す。
図13(A)、
図13(B)及び
図13(C)に、吊り天秤A(16)及び吊り天秤B(17)の搬入状態を示す。
図14(A)、
図14(B)及び
図14(C)に、吊り天秤A(16)とシートフック(図示せず)の取り付け状態を示す。
図15(A)、
図15(B)及び
図15(C)に、吊り天秤B(17)とシートフック(図示せず)の取り付け状態を示す。
図16(A)、
図16(B)及び
図16(C)に、吊り天秤A(16)及び吊り天秤B(17)にスリング18を取り付ける状態を示す。
図17(A)、
図17(B)及び
図17(C)に、スリング18に接続された瓦礫撤去用シート11で撤去対象構造物8a、8bを包み込んだ状態を示す。
図18(A)、
図18(B)及び
図18(C)に、
図17(A)、
図17(B)及び
図17(C)の状態から撤去対象構造物8a、8を包み込んだ瓦礫撤去用シート11をクレーン5Aで吊上げた状態を示す。
図19(A)、
図19(B)及び
図19(C)に、瓦礫撤去用シート11を撤去した後に、SFP1の上部から使用済燃料貯蔵プール保護シート2を撤去するためにクレーン5A先端への使用済燃料貯蔵プール保護シート2のフック掛けの状態を示す。
図20(A)、
図20(B)及び
図20(C)に、クレーン先端へ使用済燃料貯蔵プール保護シート2をフック掛けした後に使用済燃料貯蔵プール保護シート2をクレーン5Aで吊上げ、撤去する状態を示す。
【0039】
該図に示す如く、本実施例での撤去対象構造物8a、8bの撤去概要は、撤去対象構造物8a、8bを吊上げるための瓦礫撤去用シート(破損構造物撤去用シート)11を、クレーン5Aに取付けた吊り天秤13で撤去対象構造物8a、8bの周辺へ移動させて配置し(
図7(A)、
図7(B)、
図7(C)参照)、多関節ロボット14で吊り天秤13と瓦礫撤去用シート11を切り離す(
図8(A)、
図8(B)、
図8(C)参照)。その後、瓦礫撤去用シート11をシート引き伸ばし治具12で撤去対象構造物8a、8bの下面に広げる(
図9(A)、
図9(B)、
図9(C)及び
図10(A)、
図10(B)、
図10(C)参照)。撤去対象構造物8a、8bの大きさが大きい場合は、同様に
図7(A)、
図7(B)、
図7(C)〜
図10(A)、
図10(B)、
図10(C)の手順を繰り返し、撤去対象構造物8a、8bの下面全体に瓦礫撤去用シート11を配置する(
図11(A)、
図11(B)、
図11(C)及び
図12(A)、
図12(B)、
図12(C)参照)。
【0040】
次に、吊り天秤A(16)、吊り天秤B(17)を撤去対象構造物8a、8bの周辺に配置し、多関節ロボット14を使用し瓦礫撤去用シート11の一方を吊り天秤A(16)に接続し、同様に瓦礫撤去用シート11のもう一方を吊り天秤B(17)に接続する(
図13(A)、
図13(B)、
図13(C)、
図14(A)、
図14(B)、
図14(C)及び
図15(A)、
図15(B)、
図15(C)参照)。
【0041】
次に、クレーン5Bに接続された多関節ロボット14で、吊り天秤A(16)及び吊り天秤B(17)にクレーン5Aに接続されたスリング18a、18bを接続し(
図16(A)、
図16(B)、
図16(C)参照)、クレーン5Aを巻き上げることで、撤去対象構造物8a、8bは瓦礫撤去用シート11で覆われ、更に、クレーン5Aを巻上げて瓦礫撤去用シート11で覆われた撤去対象構造物8a、8bの吊上げ撤去が可能となる(
図17(A)、
図17(B)、
図17(C)及び
図18(A)、
図18(B)、
図18(C)参照)。
【0042】
最後に、撤去対象構造物8a、8bが撤去回収された後、クレーン5Bの先端のワイヤロープ5b´に取り付けられている多関節ロボット14及びスリング18を介して、クレーン5Aの先端のワイヤロープ5bに使用済燃料貯蔵プール保護シート2を移動し、その後、クレーン5Aを用いて使用済燃料貯蔵プール保護シートをSFP1(SFP1内にはコンクリート等の小片瓦礫26が残っている)から撤去するものである(
図19(A)、
図19(B)、
図19(C)及び
図20(A)、
図20(B)、
図20(C)参照)。
【0043】
このような本実施例とすることにより、高放射線量で作業者が瓦礫に接近できない環境下で、かつ、瓦礫への装置類のアクセス経路が狭隘な条件でも安全で、かつ、確実に瓦礫を撤去することができる。更に、作業者の被ばく低減、撤去対象構造物に付着している放射性物質の飛散防止も図れる。
【0044】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。