以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態である露光装置の斜視図である。
図2は、露光装置のブロック図である。
露光装置10は、フォトレジストなどの感光材料を表面に形成した基板Wに直接パターンを形成するマスクレス露光装置であって、基台14の上に搭載された露光部13には、放電ランプ22を含む光源装置20と、DMD(Digital Micro−mirror Device)32を含む露光ヘッド30が備えられている。
基板Wは、ステージ12の上に搭載されており、ステージ12は、ステージ駆動機構15によって移動可能である。ここでは、走査方向X、副走査方向Yに沿って移動可能であり、ステージ12上ではX−Y座標が規定されている。
放電ランプ22から放射される光は、照明光学系(図示せず)によってDMD32に導かれる。DMD32は、数μm〜数十μmの微小矩形状マイクロミラーをマトリクス状に2次元配列させた光変調素子アレイ(ここでは、1024×1280)であり、DMD駆動回路24によって駆動される。
図示しないワークステーションから送信されてくるCAD/CAMデータなどのベクタデータは、ラスタ変換回路26において2次元ドットパターンのラスタデータに変換される。そして、露光データ生成回路28では、必要に応じて、マスクパターンとなる調光フィルタデータとラスタデータとを合成した露光データが生成される。
DMD32では、DMD駆動回路24から送られてくる露光データに基づいて、各マイクロミラーがそれぞれ選択的にON/OFF制御される。ON状態のマイクロミラーにおいて反射した光は、投影光学系(図示せず)を経て、パターン像の光として基板Wに照射される。
基板Wがステージ駆動機構15によって走査方向Xに移動することにより、DMD32による投影エリア(露光エリア)が基板Wに対して相対移動する、露光エリアをX−Y方向に沿って相対移動させながら、露光動作を所定の露光ピッチで行うことにより、パターンが基板Wの全体に形成される。基板Wの位置、すなわち露光エリアの位置は、位置検出センサ17によって検出される。
露光装置10は、ステージ12上に投影される光の光量を測定する測光装置34を備え、測光駆動部35によって位置制御される。露光動作が行なわれていないとき、測光駆動部35は、測光装置34を光路上に配置し、測定が終了すると測光装置34を退避位置へ移動させる。ただし、測光装置34をステージ12に取り付け、基板Wの移動に合わせて光量測定することも可能である。
コントローラ50は、露光データ生成タイミング、DMD駆動等、露光動作全体を制御する。メモリ52から調光に関するデータが読み出されると、露光データ生成回路28に調光フィルタデータが送られる。露光動作の制御プログラムは、コントローラ50内のROM(図示せず)に格納されている。
コントローラ50は、調光処理(照度/光量調整処理)機能を備えており、DMD32に対するミラー制御および放電ランプ22に対する出力制御を組み合わせることにより、調光処理を実行する。放電ランプ22のライフサイクル、すなわち点灯始動(初期点灯)させてからランプ寿命に基づく点灯終了までの期間全体に渡る間、コントローラ50は、測定された光量に基づき、ミラー制御、ランプ出力制御を実行し、基板Wに投影/照射する光の光量を調整する。
図3は、光源装置の平面図である。
図4は、光源装置の概略的断面図である。
光源装置20の放電ランプ22は、中央部に位置する球状放電管22Aと、その両端部に一体的に繋がる一対の封止部22Bから構成されるショートアーク型水銀ランプであり、一対の電極23A、23Bが放電管22A内に対向配置されている。反射鏡21の中心軸(図示なし)が水平方向である場合、放電ランプ22は、水平方向に沿って配置されている。
放電管22A内には、希ガスおよびハロゲンとともに、0.2mg/mm
3以上の水銀が含まれている。ランプ点灯時、電極対23A、23Bには交流電圧が印加され、陰極、陽極が電極対23A、23Bとの間で交互に入れ替わる。
反射鏡21は、凹型の反射部21Aと筒状首部21Bとが一体的に形成された椀型ミラーであり、反射部21Aの反射面21Sは、焦点をもつ回転放物面に形成されている。放電ランプ22は、後述するように、反射鏡21に対し、オフセットした同軸的配置になっており、首部21Bと接続する口金25との放電ランプ22との間に配置される保持部材MSによって固定されている。なお、放電ランプ22を接着剤などで固定することも可能である。
図5は、放電管内の電極配置を示した図である。
図6は、ランプ中心軸と反射鏡中心軸との位置関係を示した図である。
図5、6を用いて、放電ランプの配置について説明する。
電極対23A、23Bは、電極支持棒27A、27Bによって支持されており、電極対23A、23Bは、電極支持棒27A、27Bにそれぞれ溶融して一体化されている。電極対23A、23Bの電極先端部29A、29Bは、電極支持棒27A、27Bに沿って形成されており、電極先端部29A、29Bの間でアーク放電が発生する。
電極対23A、23Bおよび電極支持棒27A、27Bの位置は、その電極軸がランプ中心軸E、すなわち筒状である封止部22Bの中心軸と一致するように、調整されている。したがって、電極先端部29A、29Bの位置もランプ中心軸Eに沿っている。
上述したように、陰極と陽極が電極23A、23Bとの間で交互に入れ替わるため、アーク放電の輝点も、電極先端部29A、29Bとの間で交互に入れ替わる。したがって、ランプ始動時、アーク放電はランプ中心軸Eを中心に発生する。
ところが、放電ランプ22が水平方向に沿って配置されているため、ランプ点灯中、放電管22A内においては、ガスの熱対流が生じる。電極先端部29A、29B付近では、希ガスと共に封入されているハロゲンなどによるハロゲンサイクルに従い、鉛直下方側から鉛直上方に向けてガスの上昇流が生じる。その結果、放電管22Aの鉛直上方側と下方側との間で温度差が生じる。
この温度差によってガス対流がより一層激しくなり、電極先端部29A、29Bが変形して鉛直上方側に移動する。温度差は電極先端部29A、29Bの変形量に影響し、温度差が大きいほど電極先端部29A、29Bの変形量が大きくなる。
本実施形態では、放電ランプ22のランプ中心軸Eは、反射鏡21の中心軸Tと一致しておらず、鉛直下方に所定距離dだけ離れてオフセットに平行配置されている。所定距離dは、電極支持棒27A、27Bの径Dに対して5〜45%の長さに定められる。特に、10〜35%、さらには20〜25%の範囲に定めることが望ましく、例えば、22%に定められる。ただし、電極支持棒27A、27Bの径Dは、0.3〜0.6mmの範囲に定められる。
ランプ中心軸Eに関する放電ランプ22の位置に関しては、反射鏡21の焦点FPから鉛直下方に沿って距離dだけ移動した位置にアーク輝点がランプ存在するように、放電ランプ22の位置が定められている。ここでは、電極先端部29Bのアーク輝点発生ポイント(頂点)から反射鏡中心軸Tに垂直な方向に沿って距離dの位置に焦点FPが位置する。
このように放電ランプ22を反射鏡21に対して完全な同軸配置ではなく、オフセットさせた配置にすることにより、ランプ寿命を延ばすことが可能となる。以下、
図7を用いて説明する。
図7は、ランプ点灯時間経過に伴うランプ電力を示したグラフである。
定照度制御を行う間、電極先端部29A、29Bの変形によってアーク輝点が変動し、照度が低下するのを補償するため、ランプ電力を増加させていく、その増加率は略一定とみなせる。
放電ランプ22は、ランプ中心軸Eを反射鏡21の中心軸Tに対してオフセット配置されているため、ランプ初期始動のとき、従来のようにランプ中心軸Eと反射鏡中心軸Tとを一致させたときと比べ、電力値の大きい初期限度電力W1で点灯される。ただし、初期限度電力W1は、チラツキの発生が抑制される最小電力値を表す。
図7には、放電ランプ22を反射鏡21と完全に同軸配置させたときの初期限度電力W0も示している。
放電ランプ22を長時間点灯し続けると、時間経過に従って電極先端部29A、29Bが鉛直上方向に向けて変形し、アーク輝点の位置が鉛直上方向に向けて移動し、ランプ寿命前到達前の途中の段階で、反射鏡21の中心軸T上にアーク輝点が辿り着く。そして、ランプ寿命近くになると、アーク輝点は中心軸Tよりさらに鉛直上方まで移動する。
従来ランプのように、時間経過とともにアーク輝点が焦点位置から離れていくのではなく、アーク輝点が途中まで焦点位置に近づき、その後離れていく。放電管の消耗などによってランプ電力は必然的に増加するが、アーク輝点の鉛直方向上方への移動による照度アップが、全体的な照度低下を抑える。これによって、供給するランプ電力の増加率が低くなる。
図7では、従来の放電ランプのランプ電力の変化をラインk0、本実施形態による電力変化をラインk1で示している。
したがって、初期限度電力が比較的大きくてもランプ電力の増加割合が抑えられるため、結果的にランプ寿命が延びる。ただし、上述したように、ランプ中心軸Eの反射鏡中心軸Tからのオフセット距離dは、電極支持棒27A、27Bの径Dの5〜45%の範囲に定められる。また、電極先端部の大きさ、すなわち電極支持棒27A、27Bの径Dは、0.3〜0.6mmに定められる。
オフセット距離dが大き過ぎると、初期限度電力が必要以上に大きくなり、放電管の消耗、電極先端部の変形が非常に早まって早期の照度低下をもたらす。また、アーク輝点が反射鏡中心軸Tまで移動したときに放電管上部近くでアーク放電が発生し、熱による放電管変形の恐れがある。
一方、オフセット距離dが小さすぎると、初期限度電力が従来ランプと相違せず、ランプ寿命が延びない。また、電極支持棒27A、27Bの径Dが小さすぎると電極変形が生じやすく、径Dが大きすぎるとアーク輝点の位置が変動しやすくなるため、上記範囲に定められる。
このように本実施形態によれば、水平方向に沿って配置される放電ランプ22と、反射面が回転放物面である反射鏡21とを備えた光源装置20において、放電ランプ22が反射鏡21の中心部に配置される一方で、ランプ中心軸Eが反射鏡中心軸Tから鉛直方向に沿って距離dだけ離れて平行配置される。
次に、
図8、9を用いて、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、反射鏡に開口部が形成されている。それ以外の構成については、第1の実施形態と同じである。
図8は、第2の実施形態における光源装置の正面図である。
図9は、第2の実施形態における光源装置の概略的断面図である。
光源装置20は、反射鏡121を備えており、その中心軸に沿って放電ランプ22がオフセット配置されている。反射鏡121の鉛直下方側には矩形状開口部121Aが形成されている。なお、開口部121Aの形状については他の形状にすることも可能である。
ランプ点灯中、放電管鉛直上方側の温度はアーク放電の熱の影響が支配的である。一方、下方側の温度も主にアーク放電の熱に影響されるが、加えて反射鏡の輻射熱の影響を受ける。放電ランプ22が鉛直下方側にオフセット配置されるため、放電管鉛直下方側の温度は、輻射熱を高効率で反射する反射鏡と放電管鉛直下部との距離間隔が短くなることから、反射鏡に大きく影響されて温度が上昇する。
第2の実施形態では、反射鏡121の鉛直下側部分に開口部121Aが形成されているため、放電管下部の温度は、反射鏡が接近しなくなるため、輻射熱の影響が抑えられる。その結果、放電管下部側と放電管上部側との温度差が拡大する。これは、放電管内でのガス対流を激しくし、電極先端部の変形量、すなわちアーク輝点の移動量を大きくする。
これによって、放電ランプ22のオフセット距離間隔をできる限り長く設定することが可能となり、ランプ初期始動時の初期限度電力を上げることが可能となる。
次に、
図10を用いて、第3の実施形態である露光装置について説明する。第3の実施形態では、開口部を四方に設けた4つの光源装置が隣接配置される。それ以外の構成については、第1の実施形態と同じである。
図10は、第3の実施形態である1つの光源装置の概略的断面図である。
光源装置20は、上述した光源装置を4つ用意し、方形状に組み立てたアッセンブリ構造であり、
図10に示す光源装置20の水平方向に沿った右側(あるいは左側)、鉛直下方側、斜下側に図示しない3つの光源装置が隣り合うように配置されている。
そして、光源装置20の反射鏡221は、上下左右の四方向に略等間隔で同形状の開口部が形成されている。
図10では、1つの開口部のみ図示している。この構成により、隣接する光源装置の反射鏡外表面側からの熱が抑えられることになり、放電管鉛直下方側の温度上昇を抑えることができる。すなわち、発光管上部、下部における温度差が広がり、アーク輝点移動量を大きくすることができる。
次に、
図11を用いて、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態では、初期始動時におけるランプ電力を調整する。
図11は、ランプ点灯始動時のランプ点灯制御のフローチャートを示した図である。
ステップS101では、光量が測定されるとともに、目標となる光量が設定される。目標光量は、チラツキが発生しない範囲で最小限の光量を表し、あらかじめオペレータなどによって設定される。そして、目標光量に応じた電力値(初期限度電力値)によって放電ランプが駆動される。
測定光量が目標光量と同じもしくはそれ以上であることが確認されると、さらにランプ出力を上げるため、初期限度電力値よりも所定値だけ大きな電力値W2によって放電ランプが駆動される(S102、S103)。この電力値W2は、放電ランプの反射鏡中心軸からのオフセット距離dなどに基づいて定められる。
なお、多灯式光源装置の場合、ランプの個体差によって初期限度電力値が異なる。そのため、その中で最大値となる初期限度電力値よりも大きな電力値が供給される。
このように第4の実施形態によれば、水平方向に沿って配置される放電ランプ22と、反射面が回転放物面である反射鏡21とを備え、放電ランプ22が反射鏡21の中心部に配置される一方、ランプ中心軸Eが反射鏡中心軸Tから鉛直方向に沿って距離dだけ離れて平行配置される光源装置において、初期限度電力よりも大きな電力値によってランプが点灯始動される。
放電ランプが反射鏡に対してオフセット配置されているため、ランプを長期間点灯させて定照度点灯制御させたときの電力増加率は低い。したがって、初期始動時のランプ電力を大きく設定しても、ランプ寿命に至る期間が長くなる。一方、ランプ初期電力が高いため、チラツキ発生を確実に抑えながら安定した点灯状態へ迅速に移行する。
このように、従来設定されていた最少限度電力値を上回る値を設定することで、ランプ初期始動時のチラツキ発生を確実に防ぐ一方、ランプ寿命を延ばすことができる。特に、多灯式光源装置の場合、ランプ個体差に関わらずチラツキ発生を確実に防止することができる。
次に、
図12〜15を用いて、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態では、DMDによる投影光の光量調整とランプ出力制御による照明光光量調整とを組み合わせた調光処理が、定期的に行われる。
図12は、コントローラによって実行される調光処理を示したフローチャートである。
調光処理を行うタイミングとしては、新しい放電ランプを取り付けたとき、感度の異なる感光材料の基板を処理するときなど様々であり、ロットごと(製品単位)、一定枚数基板処理するごと、一定期間ごとに調光処理を行うことも可能である。ここでは、一定期間ごとに調光処理が実行される。
ユーザの入力操作等によって調光処理が開始されると、放電ランプ22が点灯した状態で測光装置34が光路上に移動し、光量測定を行なう(S201)。このとき、DMD32において描画に使用可能なミラー(以下、有効ミラーという)全てをON状態にして、光量を測定する。
したがって、測光装置34では、有効ミラー全てON状態の光による光量が、その投影エリア(露光エリア)を対象として計測される。なお、有効ミラーとは、DMDの全ミラーのうち、描画に使用しないことがあらかじめ定められたミラー(DMD周縁部のミラー等)を除いたミラーを表す。
光量の測定後、測定された光量があらかじめ定められた光量(以下、目標光量という)以上であるか否かが判断される(S202)。測定光量が目標光量以上であると判断されると、DMD32の有効ミラー全体の中で実際に描画のため使用するミラーの割合(以下、使用率という)が算出される(S204)。
使用率100%の場合、描画エリアを構成する有効ミラー全体がON状態であり、OFF状態に設定するミラー数が増えるほど(使用ミラーの数が下がるほど)、使用率が下がる。ここでの調光処理は、基板Wに投影する光の光量を目標光量に合わせることであり、測定された光量を基準にして減光の程度、すなわち使用率を定める。
ここで、ミラーの使用率をR、有効ミラー全数ON状態で測定される光量をL1、目標光量をL0とすると、使用率Rは、光量比(R=L0/L1)によって求められる。そして、使用率Rが定められると、描画時に不使用とする、すなわちパターンに関係なくOFF状態にするミラーが特定、設定される(S204)。このとき、基板Wに投影される光の光量を、局所的ではなく全体的に減少させるため、DMDの有効ミラー全体から見て、略均一、かつ規則的にならないように抽出する。
具体的には、不使用ミラーがミラー領域全体の中で2次元的に略一様分布となるように不使用ミラーが決定される。すなわち、DMD32の有効ミラーエリア内で略均等な距離間隔で不使用ミラーが配列し、局所的な集中なく均質に不使用ミラーが散らばった状態で配置されるように、不使用ミラーの配列が決定される。
さらに、略一様分布の配列に加え、光の干渉によるモアレを防ぐため、不使用ミラーが規則的、周期的ではなく、ランダムに配列している。このような略均等な距離間隔を保ち、かつ不規則的な不使用ミラーを選定するため、ここでは擬似乱数が使用される。例えば、一様乱数を用いた改良型レーマー法に基づいて乱数を発生させることが可能である。
このような擬似乱数では、有効ミラーの数をN、不使用ミラーの数をn(=N(1−R))とすると、有効ミラーM1、M2、・・・、MNの中から擬似乱数を使って不使用ミラーを選択、抽出すればよい。これをn回繰り返すことにより、不使用ミラーが決定される。このとき、パターンデータに関係なく有効ミラー全体から不使用ミラーを決定する。
ただし、すでに抽出された所定数のミラーが再度選択された場合には、不使用ミラーの抽出が再度行なわれる。また、不使用ミラーとして抽出されたミラーの中で互いに隣接するミラーが所定の数だけ存在する場合、その選択を無効にして再度不使用ミラーを抽出する。なお、不使用ミラーを無効とする隣接ミラーの数は、使用率に応じて調節する。
このように不使用ミラーの配列を表すデータ(ここでは、調光フィルタデータという)が使用率Rに基づいて算出、作成され、調光フィルタデータはメモリ52に保存される(S206)。
図13A、13Bは、調光フィルタデータを示した図である。
図13Aでは、有効ミラーすべてを使用したときの調光フィルタデータを示している。黒い部分がミラーON状態を表しており、使用率100%のためにエリア内は黒一色である。
一方、
図13Bには、使用率R=80%、すなわち不使用ミラーの割合が20%である調光フィルタデータが図示されている。
図13Bから明らかなように、不使用ミラーは、ミラー領域に対して略一様な分布で略均等な距離間隔で散在しており、その一方でミラー領域全体から見ると規則的な配列にはなっていない。
このように使用率に応じた調光フィルタデータによって、投影光の光量がその投影エリア全体において均一に調整される。この調光フィルタデータと、描画用のパターンデータとを重ね合わせることにより、投影エリアの光量減少を伴ったパターン形成をすることができる。なお、調光フィルタデータは、パターンデータには依存しない。
一方、ステップS103において測定された光量が目標光量より少ない場合、DMD32を使った光量調整を行なうことができない。すなわち、測定される光量は有効ミラーすべてをON状態でも目標光量に到達しないため、不使用ミラー選定によって目標光量に一致させることができない。
これは、放電ランプ22の使用経過に伴う出力低下であり、比較的長い点灯時間経過後に生じる。このような状態になった場合、放電ランプ22の出力がアップするように、ランプへの入力電力が調整される(S203)。
具体的には、放電ランプ22からの照明光の光量が目標光量よりも所定量多い基準光量となるように、ランプ入力電力が調整される。例えば、測定光量が目標光量の120%の光量に到達するまでランプ入力電力を上げる。そして、再び調光フィルタデータが作成される。放電ランプ22の出力が一度調整されると、測定光量が目標光量より再び下回るまで、そのまま入力電力は一定に維持される。
図14は、放電ランプの使用時間経過に伴う投影光の光量、入力電力、DMDの使用率を示したグラフである。
図14に示すように、放電ランプ22の使用開始時の入力電力(初期電力)は、目標光量より高い基準光量を得る電力W1に設定されている。この入力電力を一定に維持しながら、DMD32を利用した光量調整(減光)によって、投影光の光量を目標光量L0に調整する。
放電ランプ22の点灯中、放電ランプ22の出力は細かく変動することがあり、それに合わせてミラー使用率も増減する。しかしながら、点灯時間が長くなると、放電ランプ22の出力は徐々に低下していく。それに伴い、ミラー使用率も徐々に上昇していく。
そして、測定光量が目標光量L0を下回ったとき、ランプ入力電力を増加させ、再び基準光量になるまで入力電力をVDだけ増加させる。新たに設定された入力電力を維持しながら、ミラー使用率を算出して光量調整を行う。
その結果、
図14に示すように、ランプ入力電力一定の期間、ミラー使用率が増減しながら100%に向けて上昇して最終的にほぼ100%になるまでに達し、これが繰り返される。なお、ミラー使用率をすべて100%としたときの光量を、
図14では2点鎖線L1で示している。
このように、DMDを利用した調光処理を所定時間間隔で行いながら、DMD調光処理時間間隔よりも長いスパンで、ランプ入力電力を段階的に増加させ、最終的には上限となる最大電力までアップする。放電ランプ22の使用開始から寿命による使用終了まで、基板Wの投影エリアに対する光量、照度は、常に描画に適切な目標光量L0で維持される。
ところで、パターンの必要とされる解像度を考慮すると、DMD32を使った減光には限度があり、使用率Rに下限値を設ける必要がある。使用率Rの下限値は、DMD32のチルト角度、画素数、画素サイズ、投影光学系の倍率、解像度、感光体の感度などによって定められる。ここでは、要求される解像度に差が生じない調整範囲を定めており、その使用率Rの下限値RZは、65%に定められている。
したがって、放電ランプ22の出力を増加させるとき、使用率Rが下限値RZ=65%より小さくならないようにする必要がある。本実施形態では、出力増加のときに参照される基準光量が下限値RZに対応しており、ランプ出力が増加する度に使用率Rは下限値RZまで下がる。その結果、ランプ出力増加の間では、使用率Rが下限値RZ=65%〜100%までの光量調整範囲が利用される。
さらに本実施形態では、第1の実施形態と同様、放電ランプ22がオフセット配置されている。したがって、初期始動時の電力W1は、放電ランプがオフセット配置されていない場合の初期始動電力W0よりも大きいが、アーク輝点の鉛直上方へ向けた移動により、照度低下が抑えられる。その結果、DMD使用率の上昇率が抑えることになり、それに応じて、次の電力値に切り替わるまでの電力一定期間が長くなる。
さらに、アーク輝点が時間経過とともに反射軸に近づくため、目標光量よりも高い基準光量に達するまでの電力増加量△Vが、従来と比べて小さくなる。このように電力一定期間の拡大および電力増加の抑制により、ランプ寿命期間が大きく延びる。
図14では、放電ランプがオフセット配置されていない場合の光量変化、電力変化、DMD使用率の変化を二点鎖線で示している。
なお、一回の電力増加幅をより抑えるため、DMD使用率をさらに下げて定電力期間を短くするようにしてもよい。
図15は、ステップ&リピート方式による描画処理を示したフローチャートである。
基板Wが移動する間、投影エリア(露光エリア)の相対位置が検出され、生成されたパターンデータに応じたパターンを投影すべき基板上のエリアに露光エリアが到達すると、基板Wが停止する(S301〜S303)。そして、ベクタデータからラスタデータが生成される(S304)。
そして、メモリ52から調光フィルタデータが読み出されると、ラスタデータと調光フィルタデータの重ね合わせ(論理積)により、露光データが生成される(S305、S306)。露光データがDMD駆動回路24へ送られることにより、パターン光が投影される(S307)。描画が終了するまで、このような露光動作が繰り返し行なわれる(S308、S309)。
このように本実施形態によれば、光量調整を行なう場合、DMD32の有効ミラーをON状態にして投影光の光量を測定し、測定された光量と目標光量との比である使用率Rを定める。そして、使用率Rに基づいて、不使用ミラーの配列を示す調光フィルタデータを生成する。このとき、不使用ミラーが略一様な分布で、かつ不規則に並ぶようにする。
DMD32を利用した光量調整を行なっている間、放電ランプ22の出力が徐々に低下し、測定光量が目標光量に達しない状況になると、測定光量が目標光量より所定量多い基準光量に達するまで放電ランプ22の出力をアップする。
露光対象エリア全体に対する光量調整をDMD32によって行い、DMD32では光量調整できない(光量アップできない)状況になって始めてランプ出力を増加させるため、ランプの寿命に悪影響を与えることなく、ランプのライフサイクル全般に渡って良好な光量調整を行なうことができる。さらに、ランプ点灯中の放電の揺らぎや、放射スペクトル分布における輝線とブロードバンド全体に渡るスペクトルの非連動的な変動に起因するランプ出力の短期スパンの変動について、ランプ出力を頻繁に変更することなく調整することができる。
特に、不使用ミラーの配列が、露光対象エリア全体に対して2次元的に略一様分布かつ規則性のない配列となっているため、2次元ドット照射によっても、モアレなどの光学的現象が生じることなく、露光対象エリア全体に渡って均一な光量減少を実現することができる。
本実施形態では、測定光量が目標光量に達しない状況になると放電ランプ22の出力増加を実行するが、あらかじめそのような状況になるタイミングを経験的に取得し、所定時間ごとに放電ランプ22の出力増加を実行してもよい。ランプの出力増加については、測定光量が目標光量に達したか否かを測定装置で確認しているが、あらかじめ定めた一定値だけ入力電力を増加させるようにしてもよい。
DMD32を使った光量調整における使用ミラーの割合、すなわち使用率については、露光条件でいずれかの要件を満たす範囲で設定することも可能である。使用率の範囲は、DMDのサイズ、画素ピッチ、分解能、DMDチルト角度、フォトレジストなど感光体の多重露光限度回数などに従う。例えば、20%〜100%の範囲で設定可能である。
使用ミラーの使用率は、連続的に設定する代わりに、要求される光量精度に応じて、段階的(例えば5%)に設定することも可能である。また、調光フィルタデータを使用率に応じて予め作成してメモリに記憶させ、測定された光量と目標光量との比から、対応する調光フィルタデータを選択するように構成してもよい。
次に、
図16を用いて、第6の実施形態について説明する。第6の実施形態では、ランプ点灯始動開始から一定期間、第5の実施形態のようにDMDをマスクとして機能させ、電力を増加させる。そして一定期間経過後、第1の実施形態と同様に定照度点灯制御を行う。
図16は、第6の実施形態におけるDMD使用率およびランプ電力の変化を示した図である。
図16に示すように、ランプ始動開始から一定期間(電力増強期間)、ランプ電力を増加させるため、チラツキが発生しない初期限度電力よりも大きい電力が供給されるように、DMDの使用率D1が定められている。使用率D1は、従来のように放電ランプを同軸配置させた場合の使用率D2よりも小さく、投影光は大きく減光される。電力増強期間では、DMDの使用率D1は変わらず、一定である。
一方、複数の放電ランプを備える、すなわちランプ部は複数設置された多灯式光源装置が使用される場合、最も大きな初期限度電力値よりも大きな電力が供給されるように、使用率D1が定められる。
定照度制御を行うため、ランプ電力はランプ始動開始直後大きな値に設定されるが、時間経過とともにアーク輝点が反射鏡中心軸に近づいていくため、電力上昇率が従来の放電ランプと比べて抑えられる。
図16では、本実施形態における電力変化を実践ラインK4、従来の放電ランプにおける電力変化を破線ラインK3で示している。
このように、DMDを使用して投影光量を減少させ、これに伴って定照度点灯制御による電力増加が図られることとなり、一定照度を維持しながら電力増強を図ることができる。
電力を増強させた一定期間経過後、DMD使用率は100%に設定される。これにより、電力はDMD使用率変更と同時に減少するが、一定期間における電力増加幅が小さいため、電力減少幅も従来と比べて小さくなる。これにより、急激な電力減少に伴う定照度点灯制御の不安定、チラツキ発生を防ぐことができる。一定期間経過後は、第1、第2の実施形態と同様な定照度点灯制御が行われる。
このように第6の実施形態によれば、水平方向に沿って配置される放電ランプ22と、反射面が回転放物面である反射鏡21とを備え、放電ランプ22が反射鏡21の中心部に配置される一方、ランプ中心軸Eが反射鏡中心軸Tから鉛直方向に沿って距離dだけ離れて平行配置される光源装置を設けた露光装置において、ランプ始動開始からあらかじめ定められた電力増強期間において、DMDの使用率D1を定めてDMDをマスク/フィルタとして機能させる。そして、一定照度となるように電力を増加させる。
なお、ランプ始動開始直後の電力値については、第5の実施形態と同様に検出される使用率100%での投影光の光量と目標光量に基づいて定めればよい。
ステップ&リピートの代わりに連続的スキャン方式を適用しても良い。また、多重露光方式の代わりに、単一のショット露光を行なう方式であってもよい。さらに、DMD以外の光変調素子アレイを用いてもよく、放電ランプ以外の光源を適用することも可能である。また、マスク、レクチルを用いた露光装置において、DMDなど光変調素子アレイを専用フィルタデバイスとして別途装備する構成にしてもよい。
本発明に関しては、添付されたクレームによって定義される本発明の意図および範囲から離れることなく、様々な変更、置換、代替が可能である。さらに、本発明では、明細書に記載された特定の実施形態のプロセス、装置、製造、構成物、手段、方法およびステップに限定されることを意図していない。当業者であれば、本発明の開示から、ここに記載された実施形態がもたらす機能と同様の機能を実質的に果たし、又は同等の作用、効果を実質的にもたらす装置、手段、方法が導かれることを認識するであろう。したがって、添付した請求の範囲は、そのような装置、手段、方法の範囲に含まれることが意図されている。
本願は、日本出願(特願2013−081666号、特願2013−081663号、特願2013−081670号、2013年4月9日出願)を基礎出願として優先権主張する出願であり、基礎出願の明細書、図面およびクレームを含む開示内容は、参照することによって本願全体に組み入れられている。