(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6457951
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】アモルファス微細構造、部分的アモルファス微細構造又は微結晶微細構造を備えた平鋼製品を製造するための方法及びこのような特性を備えた平鋼製品
(51)【国際特許分類】
B22D 11/06 20060101AFI20190110BHJP
B22D 11/00 20060101ALI20190110BHJP
B22D 11/124 20060101ALI20190110BHJP
C22C 45/02 20060101ALI20190110BHJP
C21D 9/46 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
B22D11/06 360C
B22D11/00 A
B22D11/124 A
C22C45/02 Z
C21D9/46 Z
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-554158(P2015-554158)
(86)(22)【出願日】2014年1月24日
(65)【公表番号】特表2016-507383(P2016-507383A)
(43)【公表日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】EP2014051416
(87)【国際公開番号】WO2014114756
(87)【国際公開日】20140731
【審査請求日】2017年1月18日
(31)【優先権主張番号】13152793.9
(32)【優先日】2013年1月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514309479
【氏名又は名称】ティッセンクルップ スチール ヨーロッパ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】THYSSENKRUPP STEEL EUROPE AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ドルナー,ドロテー
(72)【発明者】
【氏名】ヘックリング,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン,ハーラルト
(72)【発明者】
【氏名】シールメル,マティーアス
(72)【発明者】
【氏名】ダアーメン,マルクス
【審査官】
酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−507023(JP,A)
【文献】
特開2008−024985(JP,A)
【文献】
特表2007−536086(JP,A)
【文献】
特開2003−253408(JP,A)
【文献】
特開2007−231415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00,11/06,21/00,
C22C 45/02,
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アモルファス微細構造、部分的アモルファス微細構造又は微結晶微細構造を備えた平鋼製品を製造するための方法であって、当該微結晶微細構造が、10乃至10000nmの範囲内の粒径を有しており、
溶鋼が鋳造装置(2)で鋳片(B)に鋳造され、
前記溶鋼が、ガラス転移温度TG未満に少なくとも200K/sの冷却速度で冷却され、
鋳造領域(5)を出た前記鋳片(B)が、追加の冷却装置を用いて前記冷却速度でさらに冷却され、
前記鋳片が鋳造ギャップを出る鋳片の速さが0.3乃至1.7m/sであり、
前記鋳片(B)の厚さが、0.8乃至4.5mmであり、
前記溶鋼が、鉄及び製造に関係する理由で不可避の不純物とともに、重量%で、
ケイ素(Si):1.2乃至7.0%、
ホウ素(B): 0.4乃至4.0%、
を含み、重量%で、
炭素(C): 0.5乃至4.0%、
リン(P): 1.5乃至8.0%、
といった、炭素及びリンから成る群に属する少なくとも1のさらなる元素を含んでおり、さらに任意に、重量%で、
銅(Cu): 最大5.0%、
クロム(Cr): 最大10.0%、
アルミニウム(Al):最大10.0%、
窒素(N): 最大0.5%、
ニオブ(Nb): 最大2.0%、
マンガン(Mn):最大3.0%、
チタン(Ti): 最大2.0%、
バナジウム(V):最大2.0%、
といった、銅、クロム、アルミニウム、窒素、ニオブ、マンガン、チタン及びバナジウムから成る群のうちの1又はそれ以上の元素を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
溶鋼が鋳造装置(2)で鋳片(B)に鋳造され、
前記鋳造装置(2)の前記鋳造領域(5)が、鋳造方向(G)に移動する壁によってその長手方向の面の少なくとも1つに形成され、鋳造工程の際に冷却され、
前記溶鋼(S)が、移動する冷却壁との接触によって冷却されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、
前記鋳造領域(5)を出る前記鋳片(B)が、その温度が各鋼の前記ガラス転移温度TG未満となるまで、継続的に冷却されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法において、
前記鋳片(B)が、500℃乃至1000℃の熱間圧延開始温度で熱間圧延され、熱延鋼板を形成することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法において、
アモルファスな又は部分的にアモルファスな鋳片(B)が、前記ガラス転移温度TGと結晶化温度TX間の範囲にある熱間圧延開始温度で熱間圧延されて熱延鋼板を形成することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法において、
前記鋳造装置(2)の前記鋳造領域(5)を出て任意に追加的に冷却される前記鋳片(B)が、アモルファス微細構造、部分的アモルファス微細構造を有しており、
そのような特性を備えた前記鋳片(B)が、少なくとも各鋼の前記結晶化温度TXに対応する焼鈍温度Tannealで焼鈍されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法において、
前記焼鈍温度Tannealが、500℃乃至1000℃の範囲内にあることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法において、
ケイ素(Si)、ホウ素(B)、炭素(C)及びリン(P)から成る群のうちの前記少なくとも2つの元素とともに、
前記溶鋼(S)が、銅(Cu)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、窒素(N)、ニオブ(Nb)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)及びバナジウム(V)から成る群のうちの少なくとも1の元素を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法において、
前記溶鋼(S)が、鉄及び製造に関係する理由で不可避の不純物とともに、重量%で、
ケイ素(Si):1.2乃至7.0%、
ホウ素(B): 0.4乃至4.0%、
炭素(C): 0.5乃至4.0%、
リン(P): 1.5乃至8.0%、
を含んでおり、さらに任意に、重量%で、
銅(Cu): 最大5.0%、
クロム(Cr): 最大10.0%、
アルミニウム(Al):最大10.0%、
窒素(N): 最大0.5%、
ニオブ(Nb): 最大2.0%、
マンガン(Mn):最大3.0%、
チタン(Ti): 最大2.0%、
バナジウム(V):最大2.0%
といった、銅、クロム、アルミニウム、窒素、ニオブ、マンガン、チタン及びバナジウムから成る群のうちの1又はそれ以上の元素を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法において、
ケイ素、ホウ素、炭素及びリンから成る元素のうちの少なくとも1について、それぞれ、重量%で、
ケイ素(Si):2.0乃至6.0%、
ホウ素(B): 0.4乃至3.0%、
炭素(C): 0.5乃至3.0%
又は
リン(P): 2.0乃至6.0%、
が適用されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法において、
前記溶鋼が、それぞれ、重量%で、少なくとも0.1%の銅(Cu)、少なくとも0.5%のクロム(Cr)、少なくとも1.0%のアルミニウム(Al)及び少なくとも0.005%の窒素(N)を任意に含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
厚さが0.8乃至4.5mmで、鉄及び不可避の不純物とともに、重量%で、
ケイ素(Si):1.2乃至7.0%、
ホウ素(B): 0.4乃至4.0%、
を含み、重量%で、
炭素(C): 0.5乃至4.0%
リン(P): 1.5乃至8.0%、
といった、炭素及びリンの群に属する少なくとも1のさらなる元素を含む鋼から成る平鋼製品において、
さらに任意に、重量%で、
銅(Cu): 最大5.0%、
クロム(Cr): 最大10.0%、
アルミニウム(Al):最大10.0%、
窒素(N): 最大0.5%、
ニオブ(Nb): 最大2.0%、
マンガン(Mn):最大3.0%、
チタン(Ti): 最大2.0%、
バナジウム(V):最大2.0%
といった、銅、クロム、アルミニウム、窒素、ニオブ、マンガン、チタン及びバナジウムから成る群のうちの1又はそれ以上の元素を含んでおり、
アモルファス微細構造、部分的アモルファス微細構造又は10乃至10000nmの範囲内の粒径を備えた微結晶微細構造を有しており、
前記平鋼製品のビッカーズ硬さHV0.5が、760乃至900であることを特徴とする平鋼製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アモルファス微細構造、部分的アモルファス微細構造又は微結晶微細構造を備えた平鋼製品を製造するための方法に関し、当該微結晶微細構造が、10乃至10000nmの範囲内の粒径を有しており、また、アモルファス微細構造、部分的アモルファス微細構造又はこのようなタイプの微結晶微細構造を備えた平鋼製品に関する。
【0002】
本発明の第1の変形例によれば、溶鋼が鋳造装置で鋳片に鋳造され、ある加速速度で冷却される。
【0003】
本発明の別の変形例によれば、アモルファス微細構造、部分的アモルファス微細構造又は微結晶微細構造を備えた平鋼製品を製造するために、鉄及び製造に関係する理由で不可避の不純物とともに、「ケイ素、ホウ素、炭素及びリン」の群に属する少なくとも2のさらなる元素を含む溶鋼が、鋳造装置で鋳片に鋳造され、この鋳造装置の鋳造領域が、鋳造方向に移動する壁によってその長手方向の面の少なくとも1つに形成され、鋳造工程の際に冷却される。鋳片が形成される鋳造装置の領域は、ここでは「鋳造領域」と称される。
【背景技術】
【0004】
WO2008/049069A2は、上述のタイプの平鋼製品をストリップキャスト法で製造し得ることを開示している。ストリップキャスト法では、溶鋼が鋳造装置で鋳造されるが、鋳造装置では、鋳片が形成される鋳造領域又は凝固領域が、鋳造工程の際に絶えず移動する壁によって少なくとも1の長手方向の面で画定される。
【0005】
このようなニアネットシェイプの一例として、平鋼製品を製造するための連続鋳造法又は鋳造装置が、「2段ロール鋳造装置」として、また技術的には「双ロール鋳造機械」として知られている。2段ロール鋳造装置のケースでは、互いに軸方向に平行に並んだ2つの鋳造ローラ又は鋳造ロールが、鋳造工程の間に互いに逆方向に回転し、互いに再接近する領域では、鋳造領域を規定する鋳造ギャップを画定する。鋳造工程の際に、鋳造ロールは強く冷却され、鋳造ロールに作用する溶融材料が凝固してそれぞれのシェルを形成する。鋳造ロールの回転方向は、ここでは、溶融材料及び鋳造ロール上に形成されるシェルが鋳造ギャップの中に移送されるように選択され、シェルが溶融材料から鋳造ロールに形成される。鋳造ギャップの中に進入するシェルは、十分なストリップ形成力の影響下で、鋳片に圧縮される。
【0006】
ストリップキャスト法に関する別の鋳造装置は、「ベルトキャスト」技術の原理に基づいている。ベルトキャスト法を対象とする鋳造装置のケースでは、溶鋼が、供給システムによって循環するキャスティングベルトの上に注がれる。ベルトの進行方向は、ここでは、溶融材料が供給システムから遠ざかるよう移送されるように選択される。下側の第1のキャスティングベルトの上には、第1のキャスティングベルトとは逆方向に循環する第2のキャスティングベルトが配置される。
【0007】
1又は2のキャスティングベルトが設けられているかどうかに関わりなく、上記の方法のケースでは、少なくとも1のキャスティングベルトが、鋳片が形成される型を画定する。各キャスティングベルトは、このケースでは、強く冷却され、キャスティングベルトに接触する溶融材料が、供給システムから離れたキャスティングベルトの反転点で凝固し、キャスティングベルトから取り出し可能な鋳片を形成する。
【0008】
各鋳造装置を出る鋳片は、取り出され、冷却され、さらなる処理に回される。このようなさらなる処理は、熱処理及び熱間圧延を含み得る。このようなストリップキャスト法の特に有利な点は、ストリップキャストに続く作業工程を、連続した途切れのない手順で実施し得ることである。
【0009】
上述のWO2008/049069A2には、アモルファス微細構造、部分的アモルファス微細構造又は微結晶微細構造を備えた鋼帯を製造するにの適した鋼が、鉄及び「ホウ素(B)、炭素(C)、ケイ素(Si)、リン(P)及びガリウム(Ga)」から成る群のうちの1又はそれ以上の元素に基づく合金であり、これらの元素とともに、Cr、Mo、W、Ta、V、Nb、Mn、Cu、Al及びCo及び希土類の含有が追加的に存在することが記載されている。このような組成の合金を使用して、ストリップキャスト法により、結晶粒の90%以上が5Å乃至1μmのサイズで、鋳片の鋼の融点が800℃乃至1500℃の範囲内にあり、鋼の臨界冷却速度が10
5K/s未満であり、鋳片がα−Fe及び/又はγ−Fe相を含む、微細結晶粒、ナノ結晶又は実質的にナノ結晶微細構造を備えた鋳片を製造し得る。
【0010】
WO2008/049069A2に記載された思想は、アモルファス微細構造、部分的アモルファス微細構造又は微結晶微細構造を備えた鋳片を製造するための目的にかなった工程の議論に限定されている。
【0011】
上記の従来技術とともに、米国特許6,416,879B1は、78乃至90%のFe、2乃至4.5%のSi、5乃至16%のB、0.02乃至4%のC及び0.2乃至12%のPの原子濃度を含むことを意図し、磁気特性を最適化した、10乃至100μmの厚さのFe基アモルファスの薄片を開示している。薄片を製造するために、対応する組成の溶鋼が、実験室的条件下で、速く回転する冷却ローラの上に注がれ、そこで凝固し、その後でローラから除去される。この方法では、約25m/sの範囲内の鋳造速度が達成される。また、このような薄片の製造は、2段ローラ鋳造機械で達成することを目的とすることが記載されている。しかしながら、さらなる説明は、なされていない。また、この従来技術は、得られる薄片のシートがより厚いこと及び他の特性が望ましい場合に、工業的規模で既知の手順を如何にして実現するかについては明らかにしていない。
【0012】
上述の従来技術と同様な従来技術が、米国特許4,219,355によって開示されている。この文献の目的は、磁気特性を最適化した30乃至100μmの厚さの同じく薄い膜状の薄片を製造することである。この目的のために、このケースでは、非常に適切に構成された溶融材料が回転ローラの上に注がれ、その上で、アモルファス微細構造を製造するために、溶融材料が10
5乃至10
6℃/s速度で冷却された。しかしながら、この文献もまた、非常に厚く様々な要件を備えた製品が製造される場合、工業的規模で、如何にして実現するか意図することを開示するにとどまる。
【0013】
最後に、独国102009048165A1は、15重量%を超えるクロム含有量を備えた鋼をストリップキャストするための方法を開示しており、溶鋼が、溶融炉、鋳造用取鍋及び鋳造用取鍋から流れ出る液状の鋼帯を受容且つ冷却するコンベヤベルトを備えた水平方向のストリップキャスト設備で鋳造される。この方法で製造される鋼帯の厚さは、8乃至25mmである。このような設備のケースでどのくらいの冷却速度を達成し得るかということについて、及び、例えば上記の平鋼製品のうちの1つを製造するのに適しているか否かについて、この文献で開示されるにとどまる。
【0014】
したがって、上記の従来技術の背景に対して、本発明の目的は、アモルファス微細構造、部分的アモルファス微細構造又は微結晶微細構造を備えた平鋼製品を製造するための実際に適切な方法を提供することであった。
【0015】
さらに、実際に適切な方法で低コストで製造され得る平鋼製品を提供する必要がある。平鋼製品は、ここでは、この方法で得られる、鋳造され又は圧延される鋼帯又は鋼板さらには管板(sheet bars)、抜き板(blanks)等を意味するとして理解される。
【発明の概要】
【0016】
本発明に係るこの目的を達成するための方法が、請求項1に特定されている。
【0017】
平鋼製品に関して、上記で特定される目的を達成するための本発明に係る解決法は、平鋼製品が請求項15に記載された態様を有することである。
【0018】
説明される本発明の様々な実施例が、ここでは、アモルファス微細構造、部分的アモルファス微細構造又は微結晶微細構造の形態で凝固する鋼から成る平鋼製品を、ニアネットシェイプによる鋳造法で製造し得るという、共通の概念に基づいている。本発明にしたがってそれぞれ製造される鋼は、ここでは、所望の微細構造の状態が確実に得られるような方法で構成される。鋼合金に関連して本明細書で「%」と記載された場合には、それ以外を明示的に記述しない限り、常に、「重量%」を意味するとして解すべきである。
【0019】
同時に、本発明は、アモルファス微細構造、部分的アモルファス微細構造又は微結晶微細構造を備えた鋳片を、鉄及び不可避な不純物とともに「Si、B、Cu及びP」から成る群のうちの少なくとも2つのさらなる元素を含む鋼から、十分な再現性を備えて製造し得る操業条件について言及する。
【0020】
アモルファス微細構造、部分的アモルファス微細構造又は微結晶微細構造を備えた鋼帯を製造するための本発明に係る方法は、鉄及び製造に関係する理由で不可避な不純物とともに、溶鋼が、「Si、B、C及びP」から成る群のうちの少なくとも2のさらなる元素を含むことを提供する。本発明によれば、「Si、B、C及びP」のうちの少なくとも2の元素の含有量が、(重量%で)それぞれ以下の範囲にある。
ケイ素(Si):1.2乃至7.0%、
ホウ素(B): 0.4乃至4.0%、
炭素(C): 0.5乃至4.0%、
リン(P): 1.5乃至8.0%。
【0021】
本発明の好適な原則は、製造に関係する理由でそれぞれ不可避であるが、本発明にしたがって製造された平鋼製品の特性に関して効果のない構成要素とともに、そして、鉄とともに、「Si、B、C及びP」から成る群のうちの2つのみのさらなる元素が、本発明で特定される量で存在する合金である。このような合金のケースでは、鉄及び不可避な不純物とともに、Si及びB、Si及びC、Si及びP、B及びC、B及びP、又はC及びPの組からなる合金元素のみが、さらに、鋼の中にそれぞれ存在する。このような方法で構成される鋼合金は、特に、アモルファス又は部分的アモルファス凝固に適している。必要に応じて、上記の合金元素の組に、このケースでは、本明細書の範囲内で、「Si、B、C及びP」から成る群のうちの他の1又は2の合金元素がそれぞれ追加される。それと同時に、本発明の仕様の範囲内にない「Si、B、C及びP」から成る群の合金元素が、測定可能な量で実際には存在し、その量は効果を有するが、あったとしても、本発明に係る所望の微細構造の形成にあまり寄与をするものではない。換言すれば、本発明によれば、本発明に係る平鋼製品の製造のために、「Si、B、C及びP」から成る群のうちの2の元素が、本発明にしたがって特定されるそれぞれの量で存在する必要があるが、本発明は、「Si、B、C及びP」から成る群のうちの他の元素が、本発明の仕様の範囲を超える量で存在する可能性を排除しない。本発明の仕様の範囲を超える量でそれぞれ含まれる「Si、B、C及びP」から成る群の合金元素の存在は、特に、その含有量が、該当する元素の含有量に関して本発明にしたがって決められた下限値未満である場合に可能である。
【0022】
したがって、本発明に係る鋼の最も広い組成は、必須の構成元素として、ホウ素、ケイ素、炭素及びリンのうちの少なくとも2を含み、さらに、残りの元素として、鉄及び不可避の不純物を含む。これらの元素は、比較的に低コストで入手し得るため、特に効果的であることが分かっている。特許請求の範囲に記載された含有量のこれらの元素によって、本発明の製造方法により、アモルファス微細構造、部分的アモルファス微細構造又は微結晶微細構造を備えた鋼製品の再現性のある製造が可能となる。本発明によって製造される平鋼製品は、10乃至10000nmの範囲内の粒径の微結晶微細構造を有するが、多くの場合、実際に製造し得る平鋼製品は、その粒径が最大で1000nmに限定されることが多い。
【0023】
最大で4.0重量%の炭素(C)量が、本発明にしたがって製造された平鋼製品の材料の非晶質化を促進する。この効果の達成を確実にするために、炭素(C)含有量を、少なくとも1.0重量%、特に、1.5重量%に設定し得る。
【0024】
実用的な目的にかなったケイ素(Si)、B(ホウ素)、C(炭素)及びP(リン)の含有量の設定は、Si含有量%Siとして、2.0重量%≦%Si6.0重量%、特に、3.0重量%≦%Si≦5.5重量%が適用される場合、B含有量%Bとして、1.0重量%≦%B≦3.0重量%、特に、1.5重量%≦%B≦3.0%が適用される場合、C含有量%Cとして、1.5重量%≦%C≦3.0%が適用される場合、又は、P含有量として、2.0重量%≦%P≦6.0重量%が適用される場合に得られる。ここでは、各ケースにおいて、特定されたより少なく限られた量のSi、B、C及びPのうちの1又はそれ以上の元素を添加することが好ましいが、「Si、B、C及びP」から成る群のうちの他の元素が、本発明による可能な限りの最大の範囲内で添加される。同様に、ここで特定されるより少ない量で、それぞれ本発明に係る量で存在する各元素を添加することが適切である。
【0025】
本発明の鋼の合金元素の群を、Fe及び不可避の不純物とともに、Si、B、C及びPから成る群に制限することが、本発明による効果とみなされたとしても、特定の状況下では、「Cu、Cr、Al、N、Nb、Mn、Ti及びV」から成る群のうちの1又はそれ以上の元素を鋼に添加することが、任意に得られる平鋼製品の特定の特性の設定に関して目的にかなっている。これに関して本発明によってそれぞれ考慮に入れられる量的範囲は、(重量%で)、
銅(Cu): 最大5.0%、特に、最大2.0%、
クロム(Cr): 最大10.0%、特に、最大5.0%、
アルミニウム(Al):最大10.0%、特に、最大5.0%、
窒素(N): 最大0.5%、特に、最大0.2%、
ニオブ(Nb): 最大2.0%、
マンガン(Mn): 最大3.0%、
チタン(Ti): 最大2.0%、
バナジウム(V): 最大2.0%
である。
【0026】
Cuの添加により材料の延性を高め得る一方、Crの作用は、主として、耐腐食性の改善にある。また、Alの添加も耐腐食性を高めるが、アモルファス微細構造の形成に関する支援効果を有する。NはCの代わりとなり得るとみなされる。したがって、C含有量を高くするのと同じ方法で、Nの存在がアモルファス微細構造の形成の促進を支援する。
【0027】
任意に添加される合金元素Cu、Cr、Al及びNの良い影響を利用し得るために、溶鋼は、任意に、(重量%で)少なくとも0.1%のCu、少なくとも0.5%のCr、少なくとも1.0%のAl及び少なくとも0.005%のNをそれぞれ含む。
【0028】
本発明の鋼合金は、鉄鋼業界で一般に入手可能で必須の構成要素として比較的安価な合金元素で製造し得る。
【0029】
高い含有量の「軽量」元素のために、従来の鋼と比較した軽量構成の顕著な効果が、密度の減少及び高強度の結果として考えられる。
【0030】
アモルファス微細構造、部分的アモルファス微細構造又は微結晶微細構造を備えた、本発明に係る合金の平鋼製品をうまく製造するための典型的な冷却速度は、100乃至1100K/sの範囲内にある。ここでは、驚くべきことに、工業的規模でも実現され得るこのような冷却速度により、上記のような従来技術のケースで製造されるよりも大きな厚さで所望の微細構造を備えた鋼帯を、操業上信頼性のある方法で製造可能であることが発見された。
【0031】
上記の説明にしたがって、アモルファス微細構造、部分的アモルファス微細構造又は微結晶微細構造を備えた鋼帯を製造するための本発明に係る方法の変形例が、鋳造装置で鋳片に鋳造される本発明に係る方法で構成される溶鋼に基づいており、鋳造装置では、鋳造工程の際に移動し且つ冷却される壁によって、鋳片が形成される鋳造領域が少なくとも1のその長手方向の面に形成される。鋳造領域を画定して鋳造工程の際に移動するこの壁は、特に、逆方向に回転する2つの鋳造ロール又は鋳造工程の際に鋳造方向に移動するベルトによって形成され得る。本発明によれば、溶鋼が、少なくとも200K/sで移動壁と接触することによって冷却される。
【0032】
本発明に係る鋼の組成に関してここで記載されている説明は、ここで提供される本発明に係る全ての方法に適用され、同様に、本発明に係る平鋼製品に適用される。
【0033】
平鋼製品の所望の微細構造の形成を、各鋼のガラス転移温度T
G未満に実際に実施される急冷によって確実にし得る。このような方法では、まず、アモルファス微細構造、部分的アモルファス微細構造が形成される。
【0034】
この微細構造に基づいて、微結晶微細構造が、その後、結果として生じる結晶核形成及び結晶化の結果として、後に続く結晶化温度T
Xを超える熱処理によって生成され得る。このような手順は、細かい結晶粒度を非常に緻密に設定でき、非常に均一な粒径分布が、非常に小さなばらつきで多数の結晶核形成のために得られるという効果を有する。
【0035】
各鋳造領域を出た後であっても、処理される各鋼に関してアモルファス微細構造、部分的アモルファス微細構造を形成するのに重要なガラス転移温度まで、アモルファス微細構造、部分的アモルファス微細構造を形成するのに十分な速度で鋳片を確実に冷却するために、鋳片が鋳造領域を出た後に、鋳造領域で始まる鋳片の急冷を継続し得る。このケースにおける継続的な急冷は、鋳造領域を出た後に直接的に有利に続き、加速された連続的な最大限の温度低下が、所望の各微細構造の状態が達成されるまで、確実に鋳片で起きる。
【0036】
鋳片を鋳造するために使用される鋳造装置の鋳造領域に直接的に結合されたさらなる冷却装置を、この目的のために提供し得る。このような冷却装置により、鋳造された平鋼製品のアモルファス微細構造、部分的アモルファス微細構造を製造するために、ガラス転移温度T
G未満まで本発明によって特定される冷却速度で溶鋼を冷却できる。溶鋼の冷却の際に、鋳造領域の移動する冷却壁との接触を介した鋳造装置自身の鋳造領域における不十分な熱除去のみを有するケースで、追加的な冷却装置により、鋳片の冷却が鋳造領域の後に非常に迅速に継続するため、本発明したがって生成すべき微細構造の状態が信頼性高く確実に達成される。
【0037】
鋳造装置の後で生じる追加的な冷却のさらなる効果は、このような冷却で、特別に採用された冷却曲線を制御された方法で変え得ることである。これは、特に部分的アモルファス微細構造又は微結晶微細構造を備えた鋳片を鋳造及び冷却プロセスの結果として得る場合に、目的にかなっている。したがって、加速方式でガラス転移温度T
G未満に冷却するが、完全にアモルファス微細構造を形成するのに十分な速度で冷却しないような方法で冷却を実施できる。
【0038】
代替的に、本発明の仕様に沿った加速速度で鋳片を冷却できるが、この冷却は、それぞれ処理される鋼のガラス転移温度T
Gに達する前に終了する。このやり方は、得られる平鋼製品に所定の微結晶微細構造を生成する第1の可能性を示す。微結晶微細構造は、ここでは、溶融材料から直接的に形成され、追加的な冷却によって制御される結晶化が可能である。
【0039】
微結晶微細構造を備えた本発明の平鋼製品を製造するための別のやり方は、まず最初にアモルファス微細構造又は部分的アモルファス微細構造を備えた鋳片を製造し、その後単に、焼鈍処理及び結果として引き起こされる結晶化処理によって、微結晶状態に変化させることである。この手順の特定の態様は、結晶化が多くの結晶核で発生することであり、このため、形成する結晶粒が材料の中で非常に一様に分散する。
【0040】
微結晶微細構造の形成に重要な結晶化温度T
Xは、処理されるそれぞれの鋼のガラス転移温度T
Gに対して平均して約30乃至50K高い温度にある。したがって、アモルファス微細構造又は部分的アモルファス微細構造を備えた本発明の平鋼製品の製造に関して、溶融材料を冷却する際に、v>v
critの冷却速度で、できる限り迅速に温度T
G未満まで下げることが必要であるが、本発明では、V
critは200K/sである。この方法で、鋼のアモルファス状態が「凍結され」、温度T
Xよりも高い熱処理温度への加熱の際に、鋼の結晶化が開始する。
【0041】
必須として設けられる本発明に係る追加的な冷却装置を、冷却媒体が鋳片に直接的に適用されるような方法で形成し得る。この冷却媒体は、水、液体窒素又は相応に効果的な他の冷却液とし得る。代替的又は追加的に、窒素ガス、水素ガス、ガス混合物又は水ミストといった冷却ガスを適用し得る。この目的に適した冷却装置は、従来技術(KR2008/0057755A)によって周知である。
【0042】
アモルファス微細構造を達成するのに重要な冷却速度は、特に、それぞれセットされる溶鋼の組成に依存する。したがって、250K/s、450K/s又は800K/sを超える冷却速度を与えることが目的にかなっている。
【0043】
したがって、本発明に係る方法により、アモルファス微細構造又は部分的アモルファス微細構造を備えた、本発明に係る方法で合金化された鋳片を特に製造できる。
【0044】
本発明にしたがって製造されたタイプの微結晶を備えた鋼の一の特別な態様は、構造的な超塑性能を有する。したがって、本発明の平鋼製品に基づいて、非常に複雑な構成要素の構造を高温における粒界すべりのプロセス(熱活性化)によって得ることができる。
【0045】
すでに上述したように、微結晶微細構造を備えた平鋼製品を製造するための可能且つ特に信頼性のある方法は、鋳造装置の鋳造ギャップを出てその後で任意に追加的に冷却される鋳片が、アモルファス微細構造又は部分的にアモルファス微細構造を有し、このような特性を備えた鋳片が、所望の微細構造の状態が達成されるまで、各鋼の少なくとも結晶化温度Txに対応する焼鈍温度T
annealでその後で焼鈍されることを提供することである。本発明の仕様の範囲内にある鋼の組成では、これに適した焼鈍温度T
annealは、500℃乃至1000℃である。完全な微結晶微細構造を達成するために、実際に選択されたそれぞれの組成に応じて、2秒乃至2時間の焼鈍時間が、一般にこのために十分である。
【0046】
鋳片が鋳造ギャップを出る鋳片の速さは、一般に、実際には0.3乃至1.7m/sの範囲内にある。
【0047】
本発明にしたがってストリップキャストされ冷却された状態の鋳片の厚さは、一般に、0.8乃至4.5mm、特に0.8乃至3.0mmの範囲内にある。
【0048】
鋳片の鋳造及びその後で任意に追加的に実施される冷却の後に、鋳片が熱間圧延を施されるが、熱間圧延開始温度は、500乃至1000℃である。鋳造及び冷却処理の後のインラインの熱間圧延工程により、所望の最終厚さの鋳片が可能となる一方、設定すべき表面仕上げが可能となり、さらには、例えば鋳造段階では依然として存在するキャビティを無くす点で、微細構造を最適化することが可能である。鋳片のアモルファス微細構造又は部分的にアモルファス微細構造の状態を維持するために、鋳片を、ガラス転移温度T
Gと結晶化温度T
xとの間の範囲にある熱間圧延開始温度で熱延鋼板に熱間圧延することもできる。
【0049】
例えば本発明に係る方法を実施するための鋳造装置として適切なものは、2段圧延鋳造装置であり、そのロールは、互いに平行に軸方向に揃った軸を中心として互いに逆方向に回転し、鋳造領域の長手方向の冷却壁をそれぞれ形成し、鋳造領域では、鋳造工程の際に鋳造方向に連続的に移動する鋳片が形成される。
する。
る。
【0050】
本発明に係る方法は、ニアネットシェイプの平鋼製品の連続的製造のために、既存の方法又は装置に対してわずかな変更のみを要する。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明は、典型的な実施例を示す図面に基づいて以下で詳細に説明される。1つの図面は、側面図で鋳片を製造するための装置を概略的に示す。
【0052】
鋳片Bを製造するための設備1は、従来の2段ロール鋳造装置として構成される鋳造装置2を具えており、したがって、互いに軸方向に平行に並んだ軸X1、X2を中心として互いに逆方向に回転し同じ高さを有する2つのロール3、4を具える。ロール3、4は、製造される鋳片Bが厚さDを有し、これによりその長手方向の面が鋳造領域5を画定するよう互いに距離を置いて配置され、鋳造領域5は鋳造ギャップとして形成されその中に鋳片Bが形成される。鋳造領域5の細い方の側が、ここでは図示しない側面板であって、ロール3、4の端面に押し付けられる側面板によって既知の方法で閉じられている。
【0053】
鋳造工程の間に、強く冷却されたロール3、4が回転し、これにより、ロール3、4及び側面板によって形成される鋳型の長手方向の壁を形成し、その壁が、鋳造工程の間に連続的に移動する。ロール3、4の回転方向は、このケースでは、鋳造領域5の中に向けて重力Rの方向に向いており、回転の結果として、溶鋼Sが、ロール3、4間の鋳造領域5の上方の空間内の溶融池から鋳造領域5の中に輸送される。これにより、溶鋼Sは、ロール3、4の周面と接触すると凝固し、そこで発生する強い熱除去のために、それぞれのシェルを形成する。ロール3、4に付着するシェルは、ロール3、4の回転によって、鋳造領域5の中に輸送され、鋳片形成力Kの効果によりそこで鋳片Bに圧縮される。鋳造領域5における冷却有効出力及び鋳片形成力Kは、このケースでは、連続的に鋳造領域5から出る鋳片Bが最大限完全に凝固するような方法で、互いに一致するようになっている。
【0054】
結晶化の影響を抑えるために、鋳造領域5を出ると、鋳片Bは、鋳片Bに冷却媒体を適用する冷却装置7の中に進入し、鋳片Bがさらに冷却される。冷却装置7による冷却は、ここでは鋳造領域5の直後に続き、このケースでは非常に強く行われるため、鋳片Bの温度Tが常時低下し、その温度は、鋳造された各溶鋼Sのガラス転移温度T
Gを下回る。このため、鋳片Bの微細構造の結晶化が抑えられ、上述のように、鋳片が輸送区画6に達する時にアモルファス状態となる。
【0055】
鋳造領域5を出る鋳片Bは、初めに、重力Rの方向に向けて鉛直に輸送され、その次に、既知の方法で、連続的に湾曲したアーチ状に曲げられ、水平方向に並んだ輸送区画6に運ばれる。
【0056】
輸送区画6においては、鋳片Bが、続いて加熱装置8を通過し、そこでは鋳片B全体が、t
anneal時間に亘って、鋳造された各溶鋼Sの結晶化温度T
Xよりも高い焼鈍温度T
annealに全体的に加熱される。熱処理の目的は、10−10000nmの範囲内の粒径を備えた微結晶微細構造の鋳片Bにおける制御形成である。この方法で熱処理された鋳片Bは、続いて、熱間圧延スタンド9で熱延鋼板WBに熱間圧延される。
【0057】
設備1において、鋳片Bが、表1に示す組成Z1、Z2、Z3を備えた3つの溶鋼Sからそれぞれ製造される。各組成Z1、Z2、Z3に関して、各溶鋼Sから鋳造される鋳片Bの厚さD、鋳造領域5における溶鋼Sの冷却でそれぞれ達成される冷却速度AR、追加的な冷却装置7における鋳造領域5を出る鋳片Bの冷却でそれぞれ達成される冷却速度ARZ、さらには、追加的な冷却の目標温度Tzが記載されている。さらに、微細構造の記載及び得られる鋳片の微細構造についての本願で可能な構成要素が、表2に与えられている。
【0058】
異なる熱処理が、組成Z1を備える溶鋼Sから上述される方法で製造された2つのサンプルの鋳片Bについて加熱装置8で施された。設定された焼鈍温度T
anneal及び焼鈍時間t
annealは、それぞれ、表3で比較される。
【0059】
熱処理の前に、鋳片Bが、840乃至900の硬さHV0.5を備えるα−Fe、Fe
2B、Fe
3B及びFe
3Siの微細結晶化構造を既に有することが分かった。また、熱処理の後に、微細構造は、α−Fe、Fe
2B、Fe
3B及びFe
3Siから成るが、硬さHV0.5は、760乃至810であった。
【0060】
加熱装置8及び熱間圧延スタンド9を用いた熱間圧延による説明した熱処理は、単なる任意の方法であることは言うまでもない。
【0061】
結果として、本発明は、10乃至10000nmの範囲の粒径の、アモルファス微細構造、部分的アモルファス微細構造又は微結晶微細構造を備えた鋼帯Bを製造するための方法、及び対応する特性を備えた平鋼製品を提供する。本発明によれば、この目的のために、溶鋼が、鋳造装置(2)で鋳片(B)に鋳造され、ある加速方法で冷却される。Fe及び製造に関係する理由で不可避な不純物とともに、溶鋼は、「Si、B、C及びP」から成る群に属する、少なくともさらに2の元素を含んでいる。本発明の第1の変形例によれば、これらの元素の含有量として、重量%で、Si:1.2乃至7.0%、B:0.4乃至4.0%、C:0.5乃至4.0%、P:1.5乃至8.0%が適用される。本発明の第2の変形例によれば、Si、B、C及びPを含む溶鋼が、鋳造装置(2)で鋳片(B)に鋳造され、鋳造装置の鋳造領域(5)が、鋳造方向(G)に移動する壁によって長手方向の面の少なくとも1つに形成され、鋳造工程の際に冷却され、溶鋼(S)が、少なくとも200K/sの冷却速度で、移動する冷却壁と接触することによって冷却される。
【符号の説明】
【0062】
1 鋳片Bを製造するための設備
2 鋳造装置
3、4 鋳造装置2のロール
5 鋳造領域
6 水平方向に並んだ輸送区画
7 冷却装置
8 加熱装置
9 熱間圧延スタンド
B 鋳片
D 鋳片Bの厚さ
R 重力の方向
S 溶融材料
K 鋳片形成力
X1、X2 ロール3、4の回転軸