(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6457952
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】巻き可能な織布スリーブおよびその作製方法
(51)【国際特許分類】
D03D 1/00 20060101AFI20190110BHJP
D03D 13/00 20060101ALI20190110BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
D03D1/00 Z
D03D13/00
F16L57/00 A
【請求項の数】12
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-556226(P2015-556226)
(86)(22)【出願日】2014年2月4日
(65)【公表番号】特表2016-514215(P2016-514215A)
(43)【公表日】2016年5月19日
(86)【国際出願番号】US2014014639
(87)【国際公開番号】WO2014121265
(87)【国際公開日】20140807
【審査請求日】2017年1月18日
(31)【優先権主張番号】61/760,607
(32)【優先日】2013年2月4日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503170721
【氏名又は名称】フェデラル−モーグル・パワートレイン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】FEDERAL−MOGUL POWERTRAIN LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウッドラフ,アレクサ・エイ
(72)【発明者】
【氏名】マロイ,キャシー・エム
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,デイビッド・エイ
【審査官】
小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/024272(WO,A1)
【文献】
特表2001−522950(JP,A)
【文献】
特開2005−337831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 1/00−27/18
F16L 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き可能な織布スリーブであって、
細長壁を含み、前記細長壁が長手軸に沿って対向端部の間に延在し、長手延在縁部が前記長手軸に沿って前記対向端部の間に延在し、
前記壁は、少なくとも1本の長手方向に延在する縦糸および複数本の円周方向に延在する横糸から織られ、
前記横糸は、複数の不連続環状バンドを形成し、
前記バンドの各々は、複数本の前記横糸を含み、
隣接するバンドは、異なる直径を有する横糸から形成され、
交互バンドは、介在バンドによって互いに離間され、
前記交互バンドは、互いに実質的に同一の直径を有する横糸から形成され、
前記介在バンドは、前記交互バンドと異なる直径を有する横糸から形成され、
前記交互バンドの全体は、前記介在バンドを形成する横糸に比べてより大きな直径を有する横糸から形成され、
前記介在バンドおよび前記交互バンドは、横糸からそれぞれ形成され、
前記介在バンドの前記横糸と前記交互バンドの前記横糸との直径の比率は1:3である、巻き可能な織布スリーブ。
【請求項2】
前記横糸は、単繊維であり、前記少なくとも1本の縦糸は、多繊維である、請求項1に記載の巻き可能な織布スリーブ。
【請求項3】
前記壁は、平織りで織られている、請求項1に記載の巻き可能な織布スリーブ。
【請求項4】
前記壁の外面に接着された外層をさらに含む、請求項1に記載の巻き可能な織布スリーブ。
【請求項5】
前記外層は、箔層である、請求項4に記載の巻き可能な織布スリーブ。
【請求項6】
前記横糸の少なくとも一部は、前記対向縁部を互いに重畳するように付勢するために、ヒートセットされる、請求項1に記載の巻き可能な織布スリーブ。
【請求項7】
巻き可能な織布スリーブを作製する方法であって、
スリーブの長手軸に沿って対向端部の間に延在する少なくとも1本の長手延在縦糸と、重畳する対向縁部の間に円周方向に沿って延在する複数本の円周延在横糸とから細長壁を形成する織り工程と、
前記織り工程の間に、隣接するバンドが異なる直径を有する横糸から形成されるように、横糸を用いて前記対向縁部の間に複数の円周方向に延在する不連続環状バンドを形成する工程とを含み、前記バンドの各々は複数本の前記横糸を含み、前記方法はさらに、
介在バンドにより軸方向に離間される交互バンドを形成する工程と、
互いに実質的に同一の直径を有する横糸から前記交互バンドを形成する工程と、
前記交互バンドと異なる直径を有する横糸から前記介在バンドを形成する工程とをさらに含み、
前記介在バンドを形成する横糸に比べてより大きな直径を有する横糸から、前記交互バンドの全体を形成する工程をさらに含み、
横糸から、前記介在バンドおよび前記交互バンドをそれぞれ形成する工程をさらに含み、前記介在バンドの前記横糸と前記交互バンドの前記横糸との直径の比率は1:3である、方法。
【請求項8】
より大きな直径の横糸から形成されたバンドに比べて、より小さな直径の横糸から、より大きな軸方向に延在する幅を有するバンドを形成する工程をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
平織りにより前記壁を形成する工程をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記壁の外面に外層を接合する工程をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記対向縁部を互いに重畳するように付勢するために、前記横糸の少なくとも一部をヒートセットする工程をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記介在バンドは、前記交互バンドの幅の約2倍である、請求項1に記載の織布スリーブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2013年2月4日に出願された米国仮出願シリアル番号第61/760,607号に基づく優先権の利益を主張し、その全体が引用によりこの明細書中に援用される。
【0002】
発明の背景
1.技術分野
本発明は、細長部材を保護するための保
護織布スリーブに関し、特に、両端開放の巻き可能な織布保護スリーブに関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術
さまざまな外部環境条件から細長部材を保護するために
、織布スリーブを利用することが知られている
。織布スリーブは、縫い目のない管状壁を有するように、または互いに重畳するように構成された長手方向に延在する対向縁部を備える開放の巻き可能な壁を有するように形成されることができる。巻き可能
な織布スリーブは、一般的に、壁の幅方向および円周方向に沿って延在する比較的に硬い単繊維横糸(充填糸ともいう)から形成される。これによって、スリーブには高いフープ強度が与えられ、スリーブが押し潰されるまたは平らに潰されることが抑制される。残念ながら
、織布スリーブは、硬い横糸を含むことにより高いフープ強度を得ることができるが、長さ沿いの可撓性が制限されるため、屈曲の多い蛇行径路の周りに取付けられる能力が低下される。また、大きく弯曲された場合に、スリーブの壁がねじれて、重畳している縁部の間の継ぎ目に開口が形成される。形成された開口は、流体汚染物または固体汚染物の侵入口となる。いくつかの例において、高い可撓性が必要された場合に、より可撓性のあるスリーブを形成するために、巻き可能
な織布スリーブの全体は、より可撓性のある多繊維横糸からまたは非常に細くかつ小さい直径を有する単繊維横糸から作製される。しかしながら、これらのスリーブは、可撓性が増加されたが、フープ強度が大きく低下したため、使用中に押し潰され易くまたは平らに潰され易くなり、その中に保護されている細長部材に損傷を与える。
【0004】
したがって、高いフープ強度を有す
る織布スリーブの利点および可撓性のあ
る織布スリーブの利点の両方を合わせて有す
る織布スリーブが必要とされる。このよう
な織布スリーブは、可撓性を有するため、屈曲の多い蛇行径路の周りに取付けられるときにおよび90度以上の隅部に沿って曲げられるときに、ねじれず、重畳する縁部の間に開口の形成を防止し、フープ強度を有するため、押し潰しに対する保護を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明の一局面によれば、巻き可能
な織布スリーブが提供される。こ
の織布スリーブは、細長壁を含む。細長壁は、長手軸に沿って対向端部の間に延在し、その長手延在縁部が長手軸に平行してまたは実質的に平行して対向端部の間に延在する。壁は、長手方向に延在する縦糸と、円周方向に延在する横糸とから織られる。横糸は、複数の不連続環状バンドを形成する。隣接するバンドは、異なる直径を有する横糸から形成される。
【0006】
本発明の一局面によれば、巻き可能
な織布スリーブを作製する方法が提供される。この方法は、長手軸に平行してまたは実質的に平行して対向端部の間に延在する長手延在縦糸と、長手軸に沿って対向端部の間に延在する対向縁部の間に長手軸を概ね横切る方向に沿って延在する円周延在横糸とから細長壁を形成する織り工程と、織り工程の間に、隣接するバンドが異なる直径を有する横糸から形成されるように、横糸を用いて対向縁部の間に複数の円周方向に延在する不連続環状バンドを形成する工程とを含む。
【0007】
この自己巻
き織布スリーブは、その中に包まれた細長部材に所望の保護を提供しながら、一定程度に強化された可撓性を有するため、ねじれずおよび/または長手方向に延在しかつ重畳している対向縁部の間において開口を生じることなく、スリーブを90度以上の隅部に取付けることを可能にする。可撓性の強化は、介在バンドによって互いに軸方向に離間された不連続の可撓性バンドを交互に形成することによって提供される。可撓性バンドの全体は、介在バンドに比べてより小さな直径を有する横糸から形成されている。対照的に、介在バンドは、隣接する可撓性バンドに比べてより大きな直径を有する横糸から形成されている。より大きな直径を有する横糸から形成された介在バンドは、強化されたフープ強度をスリーブの壁に与えるため、押し潰しに対する抵抗性を壁に与える。
【0008】
本発明の上記および他の局面、特徴および利点は、以下の現在好ましい実施形態および最良実施形態の詳細な説明、特許請求の範囲および添付図面を参照すれば、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一局面に従って作製され、保護されるべき細長部材の周りに巻か
れた巻き可能
な織布スリーブの斜視図である。
【
図3】本発明の別の局面に従って作製され、保護されるべき細長部材の周りに巻か
れた
図1と類似する巻き可能
な織布スリーブの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
現在好ましい実施形態の詳細な説明
図面をより詳細に参照すると、
図1は、本発明の一局面に従って作製され、保護されるべき細長部材12(たとえば、可撓性のあるワイヤーハーネスまたは他の可撓性部材)の周りに巻き付けられ
る織布スリーブ10を示している。スリーブ10は、細長壁14を含む。細長壁14は、長手軸16に沿って対向端部18,20の間に延在しており、その長手延在縁部22,24は、長手軸16に平行してまたは実質的に平行して対向端部18,20の間に延在している。
図2において最もよく示されるように、壁14は、少なくとも1本または複数本の長手方向に延在する縦糸および複数本の円周方向に延在する横糸28,29から織られる。横糸28,29は、それぞれ織られて複数の不連続環状バンドを形成する。本明細書において、限定することがなく例示として、複数の不連続バンドは、互いに隣接しながら長手軸16に沿って交互に延在するバンドの対A,Bとして示されている。直接隣接しているバンドA,Bは各々、異なる直径を有する横糸28,29から形成される。区別のために、バンドAは、スリーブ10の長さに沿って交互に繰返す。バンドBは、交互バンドAの間に介在する。よって、各バンドAは、軸方向に互いに離間され、バンドBも同様である。図示のように、バンドAは、第1の直径を有する横糸28から織られており、バンドBは、第2の直径を有する横糸29から織られている。第1および第2の直径は、互いに異なる。図示では、第1の直径は、第2の直径よりも小さい。このように、それぞれのバンドA,Bを形成する横糸28,29の直径が異なるため、スリーブ10は、その長さに沿って物理特性が変化するように形成される。バンドAは、非常に細くかつ比較的に小さい直径を有する単繊維横糸28から形成されたため、スリーブ10に可撓性が強化された領域を与え、よって、スリーブ10にねじれず、重畳する縁部22,24の間に開口または隙間を形成することなく、90度以上の隅部を含む隅部の周りに曲げるおよび弯曲することができる強化された曲げ能力を与える。一方、バンドBは、横糸28よりも大きい直径を有する単繊維横糸29から形成されたため、スリーブ10にバンドAよりも硬い剛性領域を与え、よって、壁14に強化されたフープ強度を与える。これにより、壁14が押し潰されるまたは平らに潰されることを防止して、スリーブ10が押し潰されることにより生じた損傷に対する保護をスリーブ内の細長部材12に与える。
【0011】
縦糸26は、単繊維糸または多繊維糸を含む任意の適切な糸材料から、任意の適切な数で形成されることができる。好ましくは、縦糸26の少なくとも一部は、多繊維糸から形成される。囲まれた細長部材12に壁14によって与えた保護を強化するために、好ましくは、縦糸26の全体は、多繊維糸から形成される。
【0012】
横糸28,29は、単繊維糸としてバンドA,Bの両方に提供されてもよく、ヒートセットすることにより壁14を熱形成の自己巻き壁にする必要に応じて、少なくとも一部がヒートセット可能な単繊維糸として提供されても良い。上述のように、交互バンドAおよび介在バンドBは、互いに異なるサイズの単繊維横糸から形成されたため、スリーブに増大した可撓性を有するバンドAと、増大したフープ強度および押し潰し強度を有するバンドBとを与える。本発明の一局面によれば、バンドAを形成する横糸28の直径は、より硬いバンドBを形成するより硬い横糸29の直径の約1/3に小さくされる。したがって、直径比約1:3の横糸28および29からそれぞれ形成されたバンドAおよびバンドBは、スリーブ10に優れた曲げ可撓性および優れた半径方向の押し潰し強度を提供することが分かった。
【0013】
壁14がよじれずおよび重畳する縁部22,24の間の継ぎ目に開口/隙間の形成を防止するとともに、所望の可撓性(バンドA)および所望のフープ強度(バンドB)を提供するために、バンドA,Bは、軸方向に延在する幅が互いに異なるように形成されている。したがって、重畳する縁部22,24が設計された互いに重畳する関係を維持することは保証され、流体汚染物または固体汚染物の侵入を最大に防止する。1つの現在好ましい実施形態において、所望の可撓性および所望のフープ強度を与えるために、バンドAの軸方向に延在する幅は、バンドBの軸方向に延在する幅よりも大きい。そのうち、バンドAの幅は、バンドBの幅の約2倍であり、よって、バンドA,Bのそれぞれの幅の比が2:1となる。バンドA,Bの軸方向に延在する幅の相対関係がこのように維持されなければ、たとえば、バンドAがバンドBに比べて広過ぎる場合、壁14は、所望のフープ強度を犠牲にし、またはバンドBがバンドAに比べて広過ぎる場合、壁14は、硬すぎになり、所望の可撓性を欠乏する。これにより、壁14がねじれるまたは縁部22,24の間の継ぎ目に沿って開口/隙間が形成される。よって、認識すべきことは、硬すぎにならずかつ所望のフープ強度を維持するとともに、ねじれずかつ開口/隙間を形成させない可撓性をスリーブ10に与えるために、バンドA,Bのそれぞれの幅をバランス良く維持する必要があるということである。
【0014】
スリーブ10が独立型スリーブとして使用するように設計され、任意の追加的な層を含まない場合、壁14は、縦方向および横方向の両方において比較的に高密度の糸から織られる。織られた構造は、緊密であり、糸26,28,29は、互いに自由に移動することができない。好ましくは、このような織り構造は、比較的に高ワープ密度および高ピック数で、平織り法により壁14を織ることによって達成される。緊密な織り目は、スリーブ10の摩耗に抵抗する能力を増強する。そうでない場合、
図3は、本発明の代替的な実施形態を示している。本発明の代替的な実施形態において、類似する特徴は、同一の参照番号に100を足して示される。スリーブ110は、たとえば箔層のような外層30を壁114の外面に接着することにより得られる。よって、
図1に示された独立型スリーブ10の縦糸の密度に比べて、縦糸の密度を大幅に低減することができる。一例として、縦糸の密度は、0.7インチおきに1本の縦糸である。充填密度は、縦糸および充填糸のサイズに依存する。縦糸の密度の減少は、箔層30が破れることなく、スリーブ110の可撓性を維持することを可能にする。
【0015】
上記の教示を考慮すると、本発明に多くの修正および変更ができることは明らかである。したがって、理解すべきことは、最終的に許可された請求の範囲に属する本発明は、詳細説明以外の方法で実施することが可能であることである。