特許第6458022号(P6458022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6458022
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】ハロゲンケトン類を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/65 20060101AFI20190110BHJP
   C07C 49/167 20060101ALI20190110BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20190110BHJP
【FI】
   C07C45/65
   C07C49/167
   !C07B61/00 300
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-525060(P2016-525060)
(86)(22)【出願日】2014年10月20日
(65)【公表番号】特表2016-534058(P2016-534058A)
(43)【公表日】2016年11月4日
(86)【国際出願番号】EP2014072388
(87)【国際公開番号】WO2015059067
(87)【国際公開日】20150430
【審査請求日】2017年10月17日
(31)【優先権主張番号】13189817.3
(32)【優先日】2013年10月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507203353
【氏名又は名称】バイエル・クロップサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】パゼノク,セルギー
(72)【発明者】
【氏名】フンケ,クリステイアン
【審査官】 齋藤 光介
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−051034(JP,A)
【文献】 特開平06−321842(JP,A)
【文献】 特開昭58−120781(JP,A)
【文献】 特開2013−202458(JP,A)
【文献】 特開2007−314482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

〔式中、Rは、ハロアルキルである〕
で表されるハロケトンを製造する方法であって、式(II)
【化2】

〔式中、
は、アルキル又はベンジルであり;及び、
は、上記で定義されているとおりである〕
で表されるケトエステルをリン酸の存在下で切断することを特徴とし、但し、カルボン酸を該ケトエステルと反応させる方法を除く、前記方法。
【請求項2】
が、CF、CFH、CFClから選択され;
が、メチル、エチル、n−プロピル、ベンジルから選択される;
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
が、CFHであり;
が、メチル、エチルから選択される;
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
70℃〜130℃の温度で実施することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
連続操作として実施することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロケトン類を製造するための新規方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロケトン類(例えば、ジフルオロアセトン及びトリフルオロアセトン)は、生物学的に活性な化合物の製造における重要な中間体である:WO 2009/000442。
【0003】
ジフルオロアセトン又はトリフルオロアセトンは、例えば、ジフルオロアセテート又はトリフルオロ酢酸とメチルマグネシウムブロミドから製造することができる(Isr. Journal of Chemistry, 1999, 39, 155)。しかしながら、ジフルオロアセトンに関する収率は47%にすぎず、トリフルオロアセトンに関する収率は56%である。
【0004】
ジフルオロアセトン及びトリフルオロアセトンは、20%強度の硫酸の存在下でトリフルオロアセトアセテートを切断することによっても製造することができる(Tetrahedron, 1964, 20, 2163)。この反応の不利な点は、当該反応をその中で実施することが可能な腐食しない適切な構造材料を見いだすのが困難であるということである。ここで、腐食を引き起こす成分は、硫酸のみではなく、遊離フッ素も腐食を引き起こす成分である。この組合せによって、鋼板エナメル、ステンレス鋼を使用することが不可能であり、ハステロイタンクを使用することも不可能である。
【0005】
EP0623575(B1)には、カルボン酸を触媒量のオニウム塩の存在下でケトエステルと反応させることによる、ケトン類の合成について記載されている:
【化1】
【0006】
この方法は、非経済的である: CFCOOHなどのカルボン酸がさらに必要とされる。加えて、生成物を精製することに関して問題を引き起こすエステルが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際特許出願公開第2009/000442号
【特許文献2】欧州特許出願公開第0623575(B1)号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Isr. Journal of Chemistry, 1999, 39, 155
【非特許文献2】Tetrahedron, 1964, 20, 2163
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来技術を考慮して、本発明が取り組んでいる問題は、上記で記載した不利な点を有しておらず、従って、高い収率でハロケトンへと至る経路をもたらす方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題は、式(I)
【化2】
【0011】
〔式中、Rは、ハロアルキルである〕
で表されるハロケトンを製造するための新規方法によって解決された。ここで、該方法は、式(II)
【化3】
【0012】
〔式中、
は、アルキル又はベンジルであり;及び、
は、上記で定義されているとおりである〕
で表されるケトエステルをリン酸の存在下で切断することを特徴とする。
【0013】
驚くべきことに、式(I)で表されるハロケトンは、本発明の条件下においては、強力な腐食性を有する反応条件を用いることなく、良好な収率で高い純度で得られる。従って、本発明による方法は、従来技術において記載されている製造方法が有している上記不利点を克服する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
好ましいのは、式(I)及び式(II)で表される化合物のラジカルが以下のように定義される、本発明による調製方法である:
は、CF、CFH、CFClから選択され;
は、メチル、エチル、n−プロピル、ベンジルから選択される。
【0015】
特に好ましいのは、式(I)及び式(II)で表される化合物のラジカルが以下のように定義される、本発明による調製方法である:
は、CFHであり;
は、メチル、エチルから選択される。
【0016】
一般的な定義
ハロアルキル: 1〜6個(好ましくは、1〜3個)の炭素原子を有している直鎖又は分枝鎖のアルキル基において、これら基の中の水素原子の一部又は全部が上記で記載されているハロゲン原子で置き換えられ得るもの、例えば(限定するものではないが)C−C−ハロアルキル,例えば、クロロメチル、ブロモメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロフルオロメチル、ジクロロフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、1−クロロエチル、1−ブロモエチル、1−フルオロエチル、2−フルオロエチル、2,2−ジフルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2−クロロ−2−フルオロエチル、2−クロロ−2−ジフルオロエチル、2,2−ジクロロ−2−フルオロエチル、2,2,2−トリクロロエチル、ペンタフルオロエチル,及び、1,1,1−トリフルオロプロパ−2−イル。
【0017】
アルキル基は、本発明の目的のためには、直鎖、分枝鎖又は環状の飽和炭化水素基である。定義「C−C12−アルキル」は、アルキル基に関して本明細書中で定義されている最も広い範囲を包含する。具体的には、この定義は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル及びtブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、1,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、n−ヘプチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル又はn−ドデシルを包含する。
【0018】
方法に関する記載
スキーム1
【化4】
【0019】
出発化合物として使用される式(II)で表されるケトエステル化合物は、既知であり、市販されている。本発明による反応における温度は、20℃〜200℃の範囲内にあり、好ましくは、70℃〜130℃の範囲内にある。
【0020】
本発明による方法は、場合により、連続操作として実施することができる。
【0021】
POの量は、式(I)で表される化合物の1molに対して、5〜500gであり、好ましくは、20〜350gである。生成物を単離したら、HPOは、精製することなく再利用する。収率を低下させることなく、少なくとも5回のそのようなサイクルが可能である。好ましくは、HPO水溶液を使用する。HPOの濃度は、20〜85%であり、好ましくは、85%である。濃度が70〜85%の工業用グレードのものを使用するのが好ましい。ポリリン酸を使用することも可能である。該反応は、場合により、クロロベンゼンやトルエンなどの不活性溶媒の中で実施する。この方法では、構造物のガラス製材料及び金属製材料の腐食は観察されなかった。
【実施例】
【0022】
実施例1
ジフルオロアセトン HCFCOCH
蒸留橋を備えた250mL容多口フラスコの中に150mLのHPO(85%w/w)を最初に装入し、100℃〜105℃に加熱した。シリンジポンプによって、132g(純度 91%w/w)のジフルオロアセト酢酸エチル(0.720mol)を3時間かけて添加した。沸点が40〜60℃である留出物を5時間以内で連続的に除去した。該反応は、5時間後に終了した。総量で75gの透明な無色の液体が収集された。
【0023】
当該フラクションの組成(19F NMRによる測定)は、以下の通りである:
70%w/w HCFCOCH
11%w/w HCFC(OH)CH水和物
14%w/w HCFC(OEt)(OH)CHモノケタール。
【0024】
上記混合物は、精製することなく、さらに使用することが可能である。必要に応じて、、さらに精製するために、HPOに対して2回目の蒸留を実施することができる。水和物及びモノケタールは、同時に切断されて、ジフルオロアセトンに変換される。
【0025】
5gのHPOを使用して、蒸留後に、67gのジフルオロアセトン(HCFCOCH)が95%〜96%の純度で得られる。その収率は、94%〜95%である。