特許第6458032号(P6458032)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6458032腐植質のフルボ試薬を使用して温室ガスを濾過し再利用するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6458032
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】腐植質のフルボ試薬を使用して温室ガスを濾過し再利用するための方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20190110BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20190110BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20190110BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20190110BHJP
   B01D 53/50 20060101ALI20190110BHJP
   B01D 53/56 20060101ALI20190110BHJP
   A61L 9/14 20060101ALI20190110BHJP
   B01D 53/64 20060101ALI20190110BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20190110BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20190110BHJP
   C02F 1/42 20060101ALI20190110BHJP
   B01J 20/24 20060101ALI20190110BHJP
   B01J 45/00 20060101ALI20190110BHJP
   B01J 39/16 20170101ALI20190110BHJP
【FI】
   B01D53/14 210
   B01D53/18 150
   B01D53/78ZAB
   B01D53/62
   B01D53/50 260
   B01D53/56 200
   A61L9/14
   B01D53/64
   A61L9/01 H
   C02F1/28 A
   C02F1/42 H
   B01J20/24 A
   B01J45/00
   B01J39/16
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-531857(P2016-531857)
(86)(22)【出願日】2014年7月30日
(65)【公表番号】特表2016-530991(P2016-530991A)
(43)【公表日】2016年10月6日
(86)【国際出願番号】US2014048882
(87)【国際公開番号】WO2015017534
(87)【国際公開日】20150205
【審査請求日】2017年7月28日
(31)【優先権主張番号】61/860,110
(32)【優先日】2013年7月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/446,862
(32)【優先日】2014年7月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516027580
【氏名又は名称】アークテック,インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】ARCTECH,INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】516027591
【氏名又は名称】ワリア,ダマン
(73)【特許権者】
【識別番号】516027605
【氏名又は名称】ジェイン,アショク
(73)【特許権者】
【識別番号】516027384
【氏名又は名称】リー,シンウー
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ワリア,ダマン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイン,アショク
(72)【発明者】
【氏名】リー,シンウー
【審査官】 佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03931394(US,A)
【文献】 特公昭46−025008(JP,B1)
【文献】 特開2011−045827(JP,A)
【文献】 特開平11−104221(JP,A)
【文献】 特開平07−000492(JP,A)
【文献】 特開平04−272760(JP,A)
【文献】 特開平10−034278(JP,A)
【文献】 特開昭53−054185(JP,A)
【文献】 米国特許第06143692(US,A)
【文献】 特開平11−009674(JP,A)
【文献】 特開2012−017275(JP,A)
【文献】 特開2006−008495(JP,A)
【文献】 米国特許第4861481(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34−53/85
B01D 53/14−53/18
A61L 9/00− 9/22
C02F 1/28、 1/42
B01J 20/00−20/34
B01J 39/00−49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流体を、腐植酸を含む高度にアルカリ化された液体濾過試薬に通すことを含む濾過方法であって
前記高度にアルカリ化された液体が0.5N〜10Nの規定度を有し、
使用済みの前記高度にアルカリ化された液体濾過試薬を架橋して、固形化することを含む、濾過方法。
【請求項2】
高度にアルカリ化された液体濾過試薬が、アルカリ性溶液と腐植酸を組み合わせて形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルカリ性溶液が、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウムまたはそれらの組み合わせを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
腐植酸を含む高度にアルカリ化された液体濾過試薬が、ガス流体から複数の夾雑物を除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
複数の夾雑物が、二酸化炭素、硫黄酸化物、窒素酸化物、硫化水素、メルカプタン、アンモニア、放射性核種、有害金属、微粒子、揮発性の蒸気および有機物、またはこれらの組み合わせを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
使用済みの高度にアルカリ化された液体濾過試薬が架橋され、固形化されて形成された固形化したフィルターを使用して水性物質を濾過するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ガスで満たされたチャンバーを、腐植酸を含む高度にアルカリ化された液体濾過試薬をチャンバー内で噴霧することによって、処置すること
を含む、臭気化学物質および微生物を除去する方法であって、
高度にアルカリ化された液体が0.5N〜10Nの規定度を有し、
ガスが、アンモニアを含む臭気化学物質を含み、ガスが、複数の微生物および芽胞をさらに含み、
処置が、アンモニアレベルを低下させ、および、複数の微生物および芽胞の少なくとも一部を死滅させる、前記方法。
【請求項8】
チャンバー内に家禽敷料が配置され、および、微生物が、敷料のクロストリジウム菌およびサルモネラ菌を含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
腐植酸を含む高度にアルカリ化された液体濾過試薬が、多機能性固体、遷移金属、遷移金属錯体またはそれらの組み合わせを含む触媒を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の背景
本発明は、ガスを濾過することに、より詳細には、腐植質のフルボ濾過試薬(a humic and fulvic filter reagent)を使用して、ガス供給源から有害な汚染物質を濾過し再利用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、種々のタイプのガスが、汚染および不快臭を引き起こすことがある。ガス流体は、典型的には大気中へ放出される多数の夾雑物を含む。煙道ガスは、暖炉、オーブン、かまど、ボイラーまたは蒸気発生器から排ガスを運ぶためのパイプまたは導管である煙道を介して大気へ出て行くガスである。煙道ガスは、典型的には、発電所で生成された燃焼排ガスである。煙道ガス組成物は、焼却されるものに依存するが、通常、窒素、二酸化炭素および水蒸気ならびに過剰酸素を含むであろう。ガス流体は、粒子状物質(スス)、一酸化炭素、窒素酸化物および硫黄酸化物などの汚染物質をさらに含有する。これらの多くのガスは、環境に対して有害なことがある。
【0003】
家禽畜産は、食用の肉または卵を畜産する(farm)目的で、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒルおよびガチョウなどの家畜化されたトリを飼育することである。集約されたブロイラー小屋において、空気は、ふんからのアンモニアで高度に汚染されるようになり得る。これによって、ニワトリの目および呼吸器系が損傷を受けることがあり、痛みを伴う火傷がそれらの脚(膝火傷(hock burn)と呼ばれる)および足に対して引き起こされることがある。さらに、アンモニアは、農業従事者および周囲の居住者に対し不快であり得る悪臭を引き起こすことがある。
【0004】
以上のように、多種多様なガス供給源によって放出された有害な汚染物質を回収するための試薬に対してニーズが存在する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の概要
本発明の一側面において、ガスを濾過する方法は、以下:ガスを、腐植質のフルボ物質(humic and fulvic substance)を含む高度にアルカリ化された液体濾過試薬に通すこと、を含む。
本発明の別の側面において、濾過の方法は、以下:ガス流体を、腐植質のフルボ物質を含む高度にアルカリ化された液体濾過試薬に通し、使用済みの高度にアルカリ化された液体濾過試薬を形成すること;および、使用済みの高度にアルカリ化された液体濾過試薬を架橋して、固形化したフィルターを形成すること、を含む。
【0006】
本発明の別の側面において、臭気化学物質および微生物を除去する方法は、以下:ガスで満たされたチャンバーを、高度にアルカリ化された液体の腐植質のフルボ濾過試薬をチャンバー内で噴霧することによって、処置すること、を含み、ここで、ガスが、アンモニアを含む臭気化学物質を含み、ガスが、複数の微生物および芽胞をさらに含み、処置が、アンモニアレベルを低下させ、および、複数の微生物および芽胞の少なくとも一部を死滅させる。
本発明の、これらのおよび他の特徴、側面ならびに利点は、以下の図面、説明および特許請求の範囲を参照してより良く理解されるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、炭燃焼ガスおよび合成ガスの濾過処理の概略図であり;および
図2図2は、本発明の腐植質のフルボ濾過試薬による炭燃焼ガスおよび合成ガスからのCO吸収を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の詳細な説明
以下の詳細な説明は、本発明の例示的な態様を実行するのに最良であると現在考えられている実施法についてである。説明は、限定する意味で取られるべきではないが、本発明の範囲が添付の特許請求の範囲によって最良に定義されているため、本発明の一般原理を解説する目的のみでなされている。
【0009】
本発明は、多数の夾雑物の除去のための天然有機試薬の利用を含む。ガス流体から除去される夾雑物は、これらに限定されないが、二酸化炭素、硫黄酸化物、窒素酸化物、硫化水素、メルカプタン、アンモニア、有害金属、微粒子、揮発性の蒸気および有機物を含んでもよい。本発明は、土壌の生産力ために天然有機フィルターを使用すること、フィルターフィルターから二酸化炭素を放出すること、廃棄するため、または水、廃棄物および化学物質用の夾雑物除去フィルターとして使用するために液体フィルターを固体に転化する手段によって、フィルターの廃棄をさらに含む。
【0010】
本発明の天然有機試薬は、液体形態であってもよく、および次いで、固体形態へ転化されてもよい、腐植質のフルボ物質を含む高度にアルカリ化された試薬フィルターである。液体形態の腐植質のフルボ試薬フィルターは、COを捕捉するための独特の革新的なアプローチである。いったんCOが捕捉されると、液体試薬は、廃水から多数の夾雑物を除去するための固形化したフィルターへ変換され得る。腐植質のフルボ試薬フィルターは、炭燃焼ガスから100%温室ガス(GHG)を除去するための小規模試験において実行可能であることが証明された、炭由来の有機腐植質液体製品である。
【0011】
加えて、腐植質のフルボ液体濾過試薬は、GHG潜在能力がCOより約200倍高い前駆体酸化窒素のNOx、ならびに、炭および油などの化石燃料の燃焼に起因するSOxおよび有害微量金属を除去する。燃焼ガスからこれら多数の夾雑物を除去することは、ガスを液体の腐植質のフルボ試薬フィルターに通すことによって達成される。試薬は、ガスが容器に通されながら、ガスフローに対し並流またはガスフローに対し逆流に噴霧され得る。本発明はまた、独立型のタワー反応器における低コスト処置としても展開されてもよいし、ならびに、煙道ガス処置に一般的に利用される既存の液体試薬ベースのSOx洗浄器(scrubber)を改造するという実際的でコスト効率の良いアプローチを展開してもよい。
【0012】
液体濾過試薬は、炭由来の有機腐植質製品である。液体の腐植質のフルボ試薬は、その多数の官能基を有し、カルボキシル、ヒドロキシル、および、エノールおよびその炭素マトリックスを構成する。試薬は、吸着、キレート化およびイオン交換の多数の特性を含み、よって、様々な媒体からの多数の有機および無機化合物と結合することができる。次いで、使用された液体試薬フィルターは架橋されて、水または化学物質の処置のための固形化したフィルターを形成してもよい。多数の結合部位に起因して、固形化したフィルターは首尾よく、多数の夾雑物の除去のための水フィルターへ進化する。
【0013】
腐植質のフルボ濾過試薬は腐植酸(Humic acid)に由来する。腐植酸は、黒〜茶色で、高度に官能基化されており、炭素が豊富な高分子である。この化学物質の構造的な構成および特性は、世界中の様々な大学および調査機関での広範囲な調査研究の課題である。腐植酸に特有の汎用的な特性は、以下:高カチオン交換容量、金属キレート能、有機物吸着能および高保水容量を含む。腐植酸分子は、均一な化学組成においてのみならず、金属イオン捕捉能に関して類似した特質においてもまた、注目に値するものであると見出されている。それは安定した分子であり、我々の惑星において、堆積岩、化石燃料および海洋に次ぐ4番目に大きい炭素の宝庫である。加えて、土壌中の有機腐植物(humic matter)は、最終的なものであり(terminal)、その独特の分子構成に起因してさらに石化することはない。腐植質は、高度にアルカリ性の溶液に可溶性になり、pH<2でのプロトン化によって沈殿する。それと関連する微量な構成要素はフルボ酸(fulvic acid)と呼ばれ、それは、依然として全pH条件で水溶性である。
【0014】
腐植酸の供給源は、褐炭などの炭、泥炭、堆肥、および、湖、川などの底質を含む。液体の腐植質のフルボ濾過試薬の生成は、腐植質が豊富な炭から腐植酸を抽出することを含む。腐植酸の抽出は、微生物の使用の有無にかかわらず実施されてもよい。微生物を利用して腐植酸を生成する例は、以下を含んでもよい。処理は、好気性の微生物による炭の消化、および次いで続く、アルカリ性条件下での水溶性の腐植酸の抽出を含んでもよい。炭は、シロアリの消化管に由来する微生物の共同体により処置されてもよく、処置されたものをここではMic−1と呼ぶ。炭は、好気性条件下での穏やかな撹拌により水とともにスラリーにされてもよい。処理における細菌の濃度は、炭、水および細菌の混合物の約1〜約20重量%に及んでもよい。混合物中の炭の濃度は、混合物の約0.01重量%〜約50重量%に及び得る。処理は、炭中の腐植酸のおよそ95%転化を得ることができる。
【0015】
抽出された水溶性の腐植酸は、特定の腐植酸含有量を有する高度にアルカリ化された腐植質のフルボ濾過試薬へ処方されてもよい。例えば、腐植酸は、アルカリ性溶液、例えばこれらに限定されないが、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウムなどと混合されてもよい。アルカリ性溶液との腐植酸の混合物は、高度にアルカリ化された腐植質のフルボ液体濾過試薬を形成する。ある態様において、高度にアルカリ化された腐植質のフルボ液体濾過試薬は、約0.5N〜約10N、約1〜約9N、約2N〜約8N、約3N〜約7N、約4N〜約8N、または、約5Nの規定度を有していてもよい。腐植質のフルボ液体濾過試薬の高度にアルカリ化された側面は、フィルターが、ガス流体から大量のCOを捕捉するのを可能にする。
【0016】
ある態様において、COおよび他の温室ガスの捕捉は、触媒の使用によって増大されてもよい。CO捕捉を向上させるために使用されてもよい触媒は、例えばこれらに限定されないが、ゼオライト、アルミナなどの多機能性固体を含んでもよい。さらに、遷移金属は、例えばこれらに限定されないが、コバルト、銅、ニッケル、亜鉛、バナジウムなどが使用されてもよい。さらに、リガンドを有する遷移金属錯体は、例えばこれらに限定されないが、サイクレンおよびサイクラムなどが使用されてもよい。
【0017】
上で述べたように、腐植質のフルボ液体濾過試薬は、ガス流体から多数の夾雑物を除去するために使用される。腐植酸は高アルカリ度で調製されてもよく、そのことが、燃焼ガスを濾過試薬に通すことによって該ガスからの関心のある夾雑物と結合するのに役立つ。COが腐植質の分子と結合されて、カーボナートおよびバイカーボナートおよびCO−腐植酸錯体有機化合物を形成することが、その前後のフーリエ変換赤外分光法(FTIR)分析によって、実証する。小規模な実行可能性試験の結果から、同じ条件下で、腐植質のフルボ濾過試薬が1ガロンあたり0.7kg除去したのに対し、アルカリ性溶液は1ガロンあたり0.2kgしか除去しなかったことを示す。したがって、本発明は、対照に比べて3倍より多くのCOを捕捉した。また、NOxおよびSOxも、本発明の高アルカリ度に起因して、捕捉され、水銀、ヒ素などの有害金属も、腐植質の分子上に吸着されるようになる。
【0018】
いったん、液体の腐植質のフルボ濾過試薬が、ガス流体の夾雑物を捕捉するために使用されると、使用済みの液体の腐植質のフルボ濾過試薬は、固形化した腐植質のフルボフィルターへ変化されてもよい。かかる態様において、使用済みの液体の腐植質のフルボ濾過試薬は、重合化または架橋されてもよい。液体の腐植質のフルボ濾過試薬を架橋することによって、水不溶性ポリマーが形成され、このことが、pHの上昇につれて吸着体の溶解性を低下させる。腐植酸の活性基は、カルシウムによって保護されてもよい。架橋された液体の腐植質のフルボ濾過試薬は、架橋した後、ナトリウムイオンの存在下でさえ、中性pH近くでの水への溶解度が低い。
【0019】
従来の架橋剤のいずれも、液体の腐植質のフルボ濾過試薬を架橋し、不溶性の固形化した腐植質のフルボフィルターを生成するために使用され得る。生成するために使用され得る架橋剤の中では、アルデヒドおよびオキシドレダクターゼ酵素である。これらの製品は、より高いpHで、有意に低い溶解度を示した。例えば、グルタルアルデヒドまたはグルタルアルデヒドと鉱酸(HCl、HNO、HSO、HPOなど)との混合物が使用されるとき、その結果得られる架橋腐植酸は、ナトリウムイオンの存在下、中性pH近くでの水への溶解度が低い。
【0020】
腐植酸を架橋するために使用され得るアルデヒドの中では、1〜22個の炭素原子を有する脂肪族または芳香族アルデヒドである。アルデヒドは、アルデヒドの架橋容量に悪影響を及ぼさないいずれの置換基で置換されていてもよい。アルデヒドは飽和であっても不飽和であってもよい。アルデヒドは、ベンズアルデヒド、トルアルデヒド(o−、m−またはp−)またはサリチルアルデヒドなどの芳香族アルデヒドであってもよい。いずれのタイプのオキシドレダクターゼ酵素も、液体の腐植質のフルボ濾過試薬を架橋するために使用され得、ペルオキシダーゼおよびヒドロゲナーゼを含む。
【0021】
廃水からの環境夾雑物の除去のための、転化された固形化した腐植質のフルボフィルターの使用は、カルボキシル、ヒドロキシルならびにエノールおよびその炭素マトリックスから構成される腐植酸の多数の官能基に依拠し、それらは、吸着、キレート化およびイオン交換のその多数の特性を付与する。よって、固形化した腐植質のフルボフィルターは、様々な廃水流体からの多数の有機および無機の化学物質に結合することが可能である。金属は、窒素、酸素または硫黄などのヘテロ原子を通じて腐植質の物質の炭素骨格へ結合される。金属結合は、カルボキシルおよびフェノールの酸素を介して生じる。さらに、窒素および硫黄は、金属結合に対してプラスの効果を有する。固形化した腐植質のフルボフィルターは、1グラムあたり2〜5meqの間の高カチオン交換容量を有する。しかしながら、固形化した腐植質のフルボフィルターの使用の耐用年数は、廃水中の夾雑物の濃度に依存するであろう。
【0022】
上で述べた腐植質のフルボ濾過試薬は、他のガス供給源から汚染物質を除去するために使用されてもよい。例えば、腐植質のフルボ濾過試薬は、アンモニアなどの臭気化学物質を家禽小屋などから除去してもよい。アンモニアは、微生物および化学物質の活性によって放出されることがある。本発明は、空気中の臭気化学物質を捕捉してもよく、ならびに、臭気化学物質を生成する微生物および化学物質を除外してもよい。家禽小屋などは、腐植質のフルボ液体濾過試薬を用いて、化学物質、生物製剤および放射性核種で汚染された表面に噴霧することによって処置されてもよく、それによって次々に、臭気および夾雑物が実質的に低減される。さらに、試薬は、臭気化学物質で汚染された空気中へ噴霧され得、それによって、空気中の臭気および夾雑物が除去される。
【0023】
前述したことが、本発明の例示的な態様に関すること、および、改変が、以下のクレームに記載の本発明の精神および範囲を逸脱せずになされてもよいことが、もちろん理解されるべきである。
【0024】
例1
試験を、合成ガスならびに炭燃焼ガスを用いて行った。小規模試験の略図を図1に解説する。液体の腐植質のフルボ濾過試薬を、ガラスビーズで満たされたカラム反応器へ加えた。液体の腐植質のフルボ濾過試薬で満たされたカラム反応器を、周囲条件に保つ。組成(重量%):H 4.5%、CO 10%、N 25%、CO 30.5%、CH 30%を有する、ガスシリンダー中で予め混合された合成ガスを、カラム反応器の底から通過させた。ガスサンプルを、ガスクロマトグラフによるCO、SOxおよびNOxの分析のために処置の前後でセプタムから取った。処置されたガス体積を、水置換方法によって測定する。
【0025】
炭を用いる試験のために、炭サンプルを、セ氏800度で加熱されたチューブ炉中、空気ガスシリンダーからそれへ空気をフローしながら、燃焼させた。燃焼ガスを、フラスコ中へ通過させて、いずれのススも除去し、次いで、液体の腐植質のフルボ濾過試薬カラム反応器において処置する。ガス組成およびガス体積の両方を、有害金属の分析を除く、合成ガスを用いた試験と類似して測定する。処置されたガスを、ガス流体中の金属を捕捉するために酸化性酸中へバブリングし、次いで、Inductively Coupled Plasmaを使用して金属について分析する。低品位および高品位の炭の両方を用いた試験を行った。炭サンプルにもまた、濃度を増大させるために有機金属:ヒ素、カドミウム、クロム、水銀および鉛を混ぜた。それによって、それらが、炭中に本来備わっているものから得られるものより相対的に高濃度で燃焼ガス中に存在するようになる。これによって、実験的な設定において実行可能な少量の炭燃焼を使用した後であっても分析が可能になった。小規模な原理の証明の結果を図2に解説する。
【0026】
例2
臭気のための試験において、アンモニア対照およびそれらの形成の緩和を、密閉されたチャンバー内の家禽敷料(poultry litter)上に、液体の腐植質のフルボ試薬を噴霧することによって試験した。アンモニアレベルは最初、敷料中のアンモニアを生成する化学物質が加水分解されたため、平均50ppmから100ppmまで上昇したが、24時間以内にアンモニアレベルが、規制限度を満たすのに必要な平均25ppmレベルまで減少した。処置された敷料の分析においてもまた、臭気化学物質を形成するのみならず、疾患をも増加させる、クロストリジウム菌、芽胞およびサルモネラ菌が除去されていた。
図1
図2