特許第6458090号(P6458090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6458090
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】内燃機関および車両
(51)【国際特許分類】
   F01L 13/00 20060101AFI20190110BHJP
   F01L 1/18 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
   F01L13/00 302B
   F01L1/18 A
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-128792(P2017-128792)
(22)【出願日】2017年6月30日
(65)【公開番号】特開2019-11714(P2019-11714A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2018年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】岡本 安雄
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−094901(JP,A)
【文献】 特開2011−202577(JP,A)
【文献】 特開2003−001361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドと、
前記シリンダヘッドに形成されたポートと、
前記シリンダヘッドに組み付けられ、前記ポートを開閉するバルブと、
前記シリンダヘッドに回転可能に支持されたカムシャフトと、
前記カムシャフトに設けられたカムと、
前記シリンダヘッドに支持された圧縮コイルスプリングと、
前記シリンダヘッドに揺動可能に支持された被支持部および前記バルブに当接する当接部を有する第1アームと、前記カムに接触する接触部および前記圧縮コイルスプリングの力を受けるばね力入力部を有し、前記第1アームに揺動可能に支持された第2アームと、を有するロッカーアームと、
前記第1アームと前記第2アームとを着脱自在に連結する連結機構と、
前記圧縮コイルスプリングの内側に配置され、前記圧縮コイルスプリングの巻き軸線に沿って延びる軸と、
前記バルブに固定されたバルブスプリングリテーナと、
前記シリンダヘッドに支持された第1スプリング端部と、前記バルブスプリングリテーナに支持された第2スプリング端部とを有する他の圧縮コイルスプリングからなるバルブスプリングと、を備え、
前記圧縮コイルスプリングの巻き径は、前記バルブスプリングの巻き径よりも小さく、
前記バルブスプリングは、前記第1スプリング端部から前記第2スプリング端部に向けてピッチが一定でない不等ピッチ部と、前記不等ピッチ部から前記第2スプリング端部に向けてピッチが一定である等ピッチ部とを含み、
前記第1アームと前記第2アームとが前記連結機構により連結されかつ前記バルブが閉じているときに、前記圧縮コイルスプリングの一部は前記等ピッチ部よりも前記不等ピッチ部の方に位置し、前記圧縮コイルスプリングの他の一部は前記不等ピッチ部よりも前記等ピッチ部の方に位置する、内燃機関。
【請求項2】
前記軸は、第1軸端部と、前記第1軸端部よりも前記第2アームの方に配置された第2軸端部と、を有し、
前記軸の前記第1軸端部に設けられ、前記圧縮コイルスプリングを受けるスプリングシートを更に備えた、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記圧縮コイルスプリングは、第1端部と、前記第1端部よりも前記第2アームの方に配置された第2端部とを有し、
前記圧縮コイルスプリングの前記第2端部に支持されかつ前記第2アームの前記ばね力入力部と接触する天板部と、前記天板部から前記軸の軸方向に沿って前記圧縮コイルスプリングの方に延びる筒部とを有するリテーナを更に備えた、請求項2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記第1アームと前記第2アームとが前記連結機構により連結されかつ前記バルブが閉じているときに、前記リテーナの前記筒部の一部は、前記第1軸端部よりも前記第2軸端部の方かつ前記第2軸端部よりも前記第1軸端部の方に位置している、請求項3に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記シリンダヘッドは孔を有し、
前記圧縮コイルスプリングの少なくとも一部、前記軸の少なくとも一部、および前記リテーナの少なくとも一部は、前記孔の内部に配置されている、請求項3または4に記載の内燃機関。
【請求項6】
前記天板部に貫通口が形成されている、請求項5に記載の内燃機関。
【請求項7】
前記シリンダヘッドは孔を有し、
前記圧縮コイルスプリングの少なくとも一部および前記軸の少なくとも一部は、前記孔の内部に配置されている、請求項1または2に記載の内燃機関。
【請求項8】
前記圧縮コイルスプリングのピッチは一定である、請求項1〜7のいずれか一つに記載の内燃機関。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか一つに記載の内燃機関を備えた車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に開示されているように、バルブの動作状態を切り換えることのできる可変動弁機構を備えた内燃機関が知られている。可変動弁機構は、シリンダヘッドに揺動可能に支持された第1アームと第1アームに揺動可能に支持された第2アームとを有するロッカーアームと、第1アームと第2アームとを着脱可能に連結する連結機構とを備えている。第1アームは、バルブに当接する当接部を有している。第2アームは、カムシャフトに設けられたカムと接触する接触部を有している。第1アームと第2アームとが連結機構により連結されている場合、第2アームは第1アームと一体となって揺動する。そのため、カムが第2アームの接触部を押すと、第1アームおよび第2アームは一体となって揺動し、第1アームの当接部がバルブを押すことによりバルブが開かれる。一方、第1アームと第2アームとが連結機構により連結されていない場合、第2アームは第1アームに対して揺動する。カムが第2アームの接触部を押すと、第1アームの当接部は第2アームが揺動した後にバルブを押し、バルブは遅れて開かれる。あるいは、カムが第2アームの接触部を押すと、第2アームは揺動するが第1アームは揺動せず、バルブは閉じられたままとなる。可変動弁機構は、このようにしてバルブの動作状態を切り換えることができる。
【0003】
また、可変動弁機構は、第2アームをカムに向けて付勢するロストモーションスプリングを備えている。特許文献1に開示された内燃機関の可変動弁機構は、ロストモーションスプリングとして、第1アームおよび第2アームに取り付けられたねじりコイルばねを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−185753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロストモーションスプリングとしてねじりコイルばねを用いる場合、ロッカーアームの第1アームおよび第2アームにねじりコイルばねの取付部を設ける必要がある。そのため、ロッカーアームが大型化したり、重量化する。そこで、ロストモーションスプリングとして、ロッカーアームに取り付けられるねじりコイルばねに代えて、ロッカーアームとは別体の圧縮コイルスプリングを用いることが考えられる。
【0006】
しかし、可変動弁機構は、カムおよびロッカーアームに加えて、バルブ、バルブスプリング、およびバルブスプリングリテーナなどを備える。圧縮コイルスプリングを設置する場合、設置スペースが制限される場合が多い。圧縮コイルスプリングを用いる場合、他の部材と干渉しないように、圧縮コイルスプリングの巻き径を小さく抑える必要がある。ところが、圧縮コイルスプリングは所要の力を出力しなければならない。巻き径を小さくする場合、十分な長さを確保する必要がある。よって、ロストモーションスプリングとして、細くて長い圧縮コイルスプリングを用いる必要がある。
【0007】
ところが、細くて長い圧縮コイルスプリングは、伸縮時に巻き軸線に対して曲がりやすい。そのため、所要の力を安定して出力できず、第2アームの作動が不安定となることで連結機構の動作速度が変化して、バルブの開閉動作の切換タイミングがずれてしまうおそれがある。その結果、バルブの動作状態の切換可能範囲を狭めることになり、内燃機関の燃費が低下するおそれがある。また、圧縮コイルスプリングは、伸縮時に巻き軸線に対して曲がってしまうと、他の部材に接触するおそれがある。そのような接触を避けるよう、他の部材との間に十分なクリアランスを設ける必要があり、可変動弁機構の大型化を招くおそれがある。さらに、細くて長い圧縮コイルスプリングは、内燃機関の高回転時にサージングを起こしやすい。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃費の低下および可変動弁機構の大型化が抑えられ、高回転時にサージングが生じにくく、ロッカーアームの小型化または軽量化が可能な内燃機関およびそれを備えた車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る内燃機関は、シリンダヘッドと、前記シリンダヘッドに形成されたポートと、前記シリンダヘッドに組み付けられ、前記ポートを開閉するバルブと、前記シリンダヘッドに回転可能に支持されたカムシャフトと、前記カムシャフトに設けられたカムと、前記シリンダヘッドに支持された圧縮コイルスプリングと、ロッカーアームとを備える。前記ロッカーアームは、前記シリンダヘッドに揺動可能に支持された被支持部および前記バルブに当接する当接部を有する第1アームと、前記カムに接触する接触部および前記圧縮コイルスプリングの力を受けるばね力入力部を有し、前記第1アームに揺動可能に支持された第2アームと、を有する。前記内燃機関は更に、前記第1アームと前記第2アームとを着脱自在に連結する連結機構と、前記圧縮コイルスプリングの内側に配置され、前記圧縮コイルスプリングの巻き軸線に沿って延びる軸とを備える。
【0010】
上記内燃機関によれば、ロストモーションスプリングとして、ロッカーアームとは別体の圧縮コイルスプリングを備える。ロッカーアームにねじりコイルばねを取り付ける必要がないので、ロッカーアームの小型化および軽量化が可能となる。また、圧縮コイルスプリングの内側に配置された軸が圧縮コイルスプリングの曲がりを規制するので、圧縮コイルスプリングは巻き軸線に対して曲がりにくい。そのため、圧縮コイルスプリングは所要の力を安定して出力することができ、バルブの開閉動作の切換タイミングがずれにくい。よって、バルブの動作状態の切換可能範囲が狭められることがなく、燃費の低下が抑えられる。また、圧縮コイルスプリングは巻き軸線に対して曲がりにくいので、圧縮コイルスプリングは周辺の部材と干渉しにくい。よって、圧縮コイルスプリングと周辺の部材とのクリアランスを大きくする必要がなく、可変動弁機構の大型化を抑制することができる。さらに、圧縮コイルスプリングは軸と接触し得るので、内燃機関の高回転時にサージングが発生しそうになると、圧縮コイルスプリングと軸との接触によりサージングが減衰する。よって、高回転時にサージングが生じにくい。
【0011】
本発明の好ましい一態様によれば、前記軸は、第1軸端部と、前記第1軸端部よりも前記第2アームの方に配置された第2軸端部と、を有する。前記内燃機関は、前記軸の前記第1軸端部に設けられ、前記圧縮コイルスプリングを受けるスプリングシートを更に備える。
【0012】
上記態様によれば、シリンダヘッドに対する圧縮コイルスプリングの組み付けが容易となる。また、軸を設置するときにスプリングシートも併せて設置されるので、スプリングシートの設置忘れを防止することができる。
【0013】
本発明の好ましい一態様によれば、前記圧縮コイルスプリングは、第1端部と、前記第1端部よりも前記第2アームの方に配置された第2端部とを有する。前記内燃機関は、前記圧縮コイルスプリングの前記第2端部に支持されかつ前記第2アームの前記ばね力入力部と接触する天板部と、前記天板部から前記軸の軸方向に沿って前記圧縮コイルスプリングの方に延びる筒部とを有するリテーナを更に備えている。
【0014】
上記態様によれば、リテーナの筒部により、圧縮コイルスプリングの曲がりを更に規制することができる。そのため、圧縮コイルスプリングは、より安定して所要の力を出力することができる。
【0015】
本発明の好ましい一態様によれば、前記第1アームと前記第2アームとが前記連結機構により連結されかつ前記バルブが閉じているときに、前記リテーナの前記筒部の一部は、前記第1軸端部よりも前記第2軸端部の方かつ前記第2軸端部よりも前記第1軸端部の方に位置している。
【0016】
上記態様によれば、リテーナの筒部が長い。圧縮コイルスプリングの一部は、前記軸の径方向の外方に位置し、かつ、リテーナの筒部の径方向の内方に位置する。そのため、圧縮コイルスプリングの曲がりを更に規制することができる。
【0017】
本発明の好ましい一態様によれば、前記シリンダヘッドは孔を有し、前記圧縮コイルスプリングの少なくとも一部、前記軸の少なくとも一部、および前記リテーナの少なくとも一部は、前記孔の内部に配置されている。
【0018】
上記態様によれば、シリンダヘッドに対して圧縮コイルスプリング、軸、およびリテーナを安定して組み付けることができる。また、孔の内周面により、圧縮コイルスプリングの曲がりがより一層規制される。
【0019】
本発明の好ましい一態様によれば、前記天板部に貫通口が形成されている。
【0020】
圧縮コイルスプリングの少なくとも一部、軸の少なくとも一部、およびリテーナの少なくとも一部が孔の内部に配置されている場合、孔の内部の空気圧の変動により、リテーナの動きが妨げられるおそれがある。しかし、上記態様によれば、リテーナの天板部の貫通口を通じて、孔の内部と外部との間で空気が行き来することができる。よって、孔の内部の空気圧の変動が緩和され、リテーナの動きが円滑化される。
【0021】
本発明の好ましい一態様によれば、前記シリンダヘッドは孔を有し、前記圧縮コイルスプリングの少なくとも一部および前記軸の少なくとも一部は、前記孔の内部に配置されている。
【0022】
上記態様によれば、シリンダヘッドに対して圧縮コイルスプリングおよび軸を安定して組み付けることができる。また、孔の内周面により、圧縮コイルスプリングの曲がりがより一層規制される。
【0023】
本発明の好ましい一態様によれば、前記圧縮コイルスプリングのピッチは一定である。
【0024】
ピッチが一定の圧縮コイルスプリングは、ピッチが一定でない圧縮コイルスプリングに比べて、長さを短くすることができる。コンパクトが可能となる。しかし、ピッチが一定の圧縮コイルスプリングは、ピッチが一定でない圧縮コイルスプリングに比べてサージングが生じやすい。ところが、上記態様によれば、圧縮コイルスプリングと軸との接触により、圧縮コイルスプリングのサージングを抑制することができる。上記態様によれば、コンパクト化に寄与する一定ピッチの圧縮コイルスプリングを支障なく用いることができる。
【0025】
本発明によれば、前記内燃機関は、前記バルブに固定されたバルブスプリングリテーナと、前記シリンダヘッドに支持された第1スプリング端部と前記バルブスプリングリテーナに支持された第2スプリング端部とを有する他の圧縮コイルスプリングからなるバルブスプリングと、を備えている。前記圧縮コイルスプリングの巻き径は、前記バルブスプリングの巻き径よりも小さい。
【0026】
本発明によれば、圧縮コイルスプリングの巻き径は比較的小さい。そのため、圧縮コイルスプリングと周辺の部材との干渉を容易に避けることができる。
【0027】
本発明によれば、前記バルブスプリングは、前記第1スプリング端部から前記第2スプリング端部に向けてピッチが一定でない不等ピッチ部と、前記不等ピッチ部から前記第2スプリング端部に向けてピッチが一定である等ピッチ部とを含んでいる。前記第1アームと前記第2アームとが前記連結機構により連結されかつ前記バルブが閉じているときに、前記圧縮コイルスプリング一部は前記等ピッチ部よりも前記不等ピッチ部の方に位置し、前記圧縮コイルスプリングの他の一部は前記不等ピッチ部よりも前記等ピッチ部の方に位置する。
【0028】
本発明によれば、圧縮コイルスプリングは、バルブスプリングの巻き線方向に関して、バルブスプリングの等ピッチ部から不等ピッチ部に至るまで延びている。圧縮コイルスプリングの長さが比較的長い。よって、圧縮コイルスプリングは、巻き径が小さくても、所要の力を安定して出力することができる。
【0029】
本発明に係る車両は、前記内燃機関を備えた車両である。
【0030】
これにより、前述の効果を奏する車両を得ることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、燃費の低下および可変動弁機構の大型化が抑えられ、高回転時にサージングが生じにくく、ロッカーアームの小型化または軽量化が可能な内燃機関およびそれを備えた車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態に係る内燃機関が自動車に搭載された例を表す図である。
図2】上記内燃機関の部分断面図である。
図3】上記内燃機関の部分拡大断面図である。
図4】ロッカーアームおよび支持部材の側面図である。
図5】ロッカーアームおよび支持部材の平面図である。
図6】ロッカーアームの第1アームおよび第2アームの分解斜視図である。
図7図4のVII−VII線断面図である。
図8】連結状態のロッカーアームの図7相当図である。
図9】連結状態のロッカーアームが支持部材に対して揺動したときの側面図である。
図10】第2アームが第1アームに対して揺動したときのロッカーアームの図7相当図である。
図11】第2アームが第1アームに対して揺動したときのロッカーアームおよび支持部材の側面図である。
図12】リテーナ、圧縮コイルスプリング、軸、およびスプリングシートの斜視図である。
図13】可変動弁機構の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。本実施形態に係る内燃機関は、車両に搭載され、車両の推進源として利用されるものである。車両の種類は特に限定されず、自動二輪車、自動三輪車、ATV(All Terrain Vehicle)などの鞍乗型車両であってもよく、自動車であってもよい。例えば図1に示すように、内燃機関10は自動車5のエンジンルームに配置されていてもよい。
【0034】
本実施形態に係る内燃機関10は、複数の気筒を有する多気筒エンジンである。内燃機関10は、吸気行程、圧縮行程、燃焼行程、および排気行程を行う4ストロークのエンジンである。図2は、内燃機関10の部分断面図である。図2に示すように内燃機関10は、クランクケース(図示せず)と、クランクケースに接続されたシリンダボディ7と、シリンダボディ7に接続されたシリンダヘッド12とを備えている。クランクケースの内部には、クランクシャフト(図示せず)が配置されている。シリンダボディ7の内部には、複数のシリンダ6が設けられている。各シリンダ6の内部にはピストン8が配置されている。ピストン8とクランクシャフトとは、コンロッド(図示せず)により連結されている。
【0035】
シリンダヘッド12には、吸気カムシャフト23および排気カムシャフト21が回転可能に支持されている。吸気カムシャフト23には吸気カム23Aが設けられ、排気カムシャフト21には排気カム21Aが設けられている。
【0036】
シリンダヘッド12には、吸気ポート16および排気ポート14が形成されている。吸気ポート16の一端には吸気口18が形成されている。排気ポート14の一端には排気口17が形成されている。吸気ポート16は、吸気口18を通じて燃焼室15と連通している。排気ポート14は、排気口17を通じて燃焼室15と連通している。吸気ポート16は、空気と燃料との混合気を燃焼室15に向かって導入する役割を果たす。排気ポート14は、燃焼室15から排出される排ガスを導出する役割を果たす。
【0037】
シリンダヘッド12には、吸気バルブ22および排気バルブ20が組み付けられている。吸気バルブ22は吸気ポート16の吸気口18を開閉する。排気バルブ20は排気ポート14の排気口17を開閉する。吸気バルブ22および排気バルブ20はいわゆるポペットバルブである。吸気バルブ22は軸部22aおよび傘部22bを有しており、排気バルブ20は軸部20aおよび傘部20bを有している。吸気バルブ22の構成と排気バルブ20の構成とは同様であるので、以下では吸気バルブ22の構成について説明し、排気バルブ20の構成の説明は省略することとする。吸気バルブ22の軸部22aは、円筒状のスリーブ24を介してシリンダヘッド12にスライド可能に支持されている。スリーブ24の一端および吸気バルブ22の軸部22aには、バルブステムシール25が取り付けられている。吸気バルブ22の軸部22aは、スリーブ24およびバルブステムシール25を貫通している。軸部22aの先端には、タペット26が嵌め込まれている。
【0038】
図3に示すように、吸気バルブ22の軸部22aにはコッタ28が取り付けられている。コッタ28は、バルブスプリングリテーナ30に嵌め込まれている。バルブスプリングリテーナ30は、コッタ28を介して吸気バルブ22に固定されている。バルブスプリングリテーナ30は、吸気バルブ22と共に、吸気バルブ22の軸方向に移動可能である。吸気バルブ22はバルブスプリングリテーナ30を貫通している。
【0039】
図3に示すように、内燃機関10は、吸気バルブ22に対して吸気口18を閉じる向き(図3の上向き)の力を与えるバルブスプリング32を備えている。バルブスプリング32は、圧縮コイルスプリングからなっており、シリンダヘッド12に支持された第1スプリング端部32bと、バルブスプリングリテーナ30に支持された第2スプリング端部32aとを有している。
【0040】
内燃機関10は、吸気カム23Aから力を受けて吸気バルブ22を開閉するロッカーアーム40を備えている。ロッカーアーム40は、支持部材35を介してシリンダヘッド12に揺動可能に支持されている。図4はロッカーアーム40および支持部材35の側面図であり、図5はロッカーアーム40および支持部材35の平面図である。ロッカーアーム40は、第1アーム41と、ローラ43を有する第2アーム42とを含んでいる。
【0041】
図6は、第1アーム41および第2アーム42の分解斜視図である。第1アーム41は、プレート41Aと、プレート41Bと、当接プレート41Cと、連結プレート41Dとを有している。プレート41Aとプレート41Bとは、平行に配置されている。当接プレート41Cおよび連結プレート41Dは、プレート41Aおよびプレート41Bと交差している。また、当接プレート41Cおよび連結プレート41Dは、プレート41Aとプレート41Bとを繋いでいる。プレート41Aには、孔46Aおよび孔48が形成されている。プレート41Bには、孔46B(図7参照)および孔48が形成されている。孔46A、46B、および48は、吸気カムシャフト23(図3参照)の軸線方向と平行な方向に延びている。
【0042】
図7図4のVII−VII線断面図である。図7に示すように、プレート41Aの孔46Aの周囲には、円筒状のボス部49Aが設けられている。孔46Aの内部には、連結ピン60Aがスライド可能に挿入されている。プレート41Bの孔46Bの周囲には、有底円筒状のカバー部49Bが設けられている。カバー部49Bには孔46Bよりも小径の孔47が形成されているが、孔47はなくてもよい。孔46Bの内部には、連結ピン60Bがスライド可能に挿入されている。また、孔46Bの内部には、スプリング64が配置されている。スプリング64はカバー部49Bと連結ピン60Bとの間に介在しており、連結ピン60Bをプレート41Aの方に付勢している。
【0043】
第2アーム42は第1アーム41の内側に配置されている。すなわち、第2アーム42は、プレート41Aとプレート41Bとの間に配置されている。図6に示すように、第2アーム42は、プレート42Aと、プレート42Bと、当接プレート42Cと、連結プレート42Dとを有している。プレート42Aとプレート42Bとは、平行に配置されている。当接プレート42Cおよび連結プレート42Dは、プレート42Aおよびプレート42Bと交差している。また、当接プレート42Cおよび連結プレート42Dは、プレート42Aとプレート42Bとを繋いでいる。プレート42Aおよびプレート42Bのそれぞれには、孔50および孔52が形成されている。
【0044】
図7に示すように、プレート42Aの孔50およびプレート42Bの孔50には、円筒状のローラ43が回転可能に支持されている。詳しくは、プレート42Aおよびプレート42Bの孔50には、円筒状のカラー54が挿入されている。ローラ43は、このカラー54に回転可能に支持されている。カラー54の内部には、連結ピン62がスライド可能に挿入されている。カラー54は孔50の内部に配置されているので、連結ピン62は孔50の内部にスライド可能に挿入されている。なお、カラー54は必ずしも必要ではない。連結ピン62がローラ43を回転可能に支持していてもよい。
【0045】
連結ピン60Bの外径は、カラー54の内径以下である。連結ピン60Bは、カラー54の内部に挿入可能に形成されている。連結ピン62の外径は孔46Aの内径以下である。連結ピン62は、孔46Aの内部に挿入可能に形成されている。本実施形態では、カラー54の内径と孔46Aの内径とは等しい。連結ピン60Bの外径と、連結ピン62の外径と、連結ピン60Aの外径とは等しい。
【0046】
図4に示すように、支持部材35と第1アーム41と第2アーム42とは、支持ピン56によって連結されている。支持ピン56は、第1アーム41のプレート41Aの孔48と、プレート41Bの孔48と、第2アーム42のプレート42Aの孔52と、プレート42Bの孔52とに挿入されている。第1アーム41および第2アーム42は、支持ピン56により、支持部材35に揺動可能に支持されている。また、第2アーム42は、支持ピン56により、第1アーム41に揺動可能に支持されている。
【0047】
図7に示すように、ロッカーアーム40の側方には、連結切換ピン66が配置されている。連結切換ピン66は、連結ピン60Aに接近する方向と連結ピン60Aから離反する方向とに移動可能に構成されている。
【0048】
図8に示すように、連結切換ピン66が連結ピン60Aから離れる方向に移動すると、連結ピン60A,62,60Bはスプリング64の力により、図8の左方にスライドする。これにより、連結ピン60Bは孔46Bの内部および孔50の内部(詳しくは、カラー54の内部)に位置する状態となり、連結ピン62は孔50の内部(詳しくは、カラー54の内部)および孔46Aの内部に位置する状態となる。以下、この状態のことを連結状態と言う。連結状態では、第1アーム41と第2アーム42とは、連結ピン60Bおよび連結ピン62によって連結される。その結果、図9に示すように、第1アーム41および第2アーム42は一体となって、支持ピン56の軸心を中心として揺動可能となる。
【0049】
図7に示すように、連結切換ピン66が連結ピン60Aの方に移動すると、連結ピン60A,62,60Bは連結切換ピン66によって押され、図7の右方にスライドする。これにより、連結ピン60Bは孔46Bの内部に位置しかつ孔50の内部に位置しない状態となり、連結ピン62は孔50の内部に位置しかつ孔46Aの内部に位置しない状態となる。以下、この状態のことを非連結状態と言う。非連結状態では、図10に示すように、連結ピン62は連結ピン60Aおよび連結ピン60Bに対してスライド可能となる。その結果、図11に示すように、第2アーム42は第1アーム41に対して、支持ピン56の軸心を中心として揺動可能となる。そのため、第2アーム42が支持ピン56の軸心を中心として揺動しても、第1アーム41は揺動しないこととなる。
【0050】
図3に示すように、第1アーム41のうち支持ピン56によって支持された部分(詳しくは、プレート41Aにおける孔48の周囲の部分およびプレート41Bにおける孔48の周囲の部分)は、シリンダヘッド12に揺動可能に支持された被支持部41Sを構成している。当接プレート41Cは、タペット26を介して吸気バルブ22に当接する当接部を構成している。
【0051】
図3に示すように、内燃機関10は、ロッカーアーム40を吸気カム23Aに向けて付勢するロストモーションスプリングとして、圧縮コイルスプリング68を備えている。吸気カムシャフト23の回転に伴って、吸気カム23Aは、ロッカーアーム40のローラ43を押しつける状態と押しつけない状態とを繰り返す。ローラ43が下方に押しつけられると、第2アーム42は支持ピン56の軸心を中心として下方に揺動する。これに伴い、第2アーム42の当接プレート42Cがリテーナ74を介して圧縮コイルスプリング68を押しつけ、圧縮コイルスプリング68は収縮する。第2アーム42は、圧縮コイルスプリング68から上向きの力を常時受けている。吸気カム23Aがローラ43を下方に押しつけない状態では、圧縮コイルスプリング68は伸張し、第2アーム42は圧縮コイルスプリング68の力によって、支持ピン56の軸心を中心として上方に揺動する。
【0052】
圧縮コイルスプリング68の内側には、圧縮コイルスプリング68の巻き軸線68dに沿って延びる軸70が配置されている。軸70は、第1軸端部70aと、第1軸端部70aよりも第2アーム42の方に配置された第2軸端部70bとを有している。第1軸端部70aには、圧縮コイルスプリング68を受けるスプリングシート72が設けられている。スプリングシート72は軸70に固定されていてもよく、スプリングシート72および軸70は一体成形されていてもよい。
【0053】
圧縮コイルスプリング68は、第1端部68aと、第1端部68aよりも第2アーム42の方に配置された第2端部68bとを有している。第2端部68bには、リテーナ74が支持されている。リテーナ74は、円板状の天板部74aと、円筒状の筒部74bとを有している。筒部74bは、天板部74aから軸70の軸方向に沿って圧縮コイルスプリング68の方に延びている。天板部74aは、圧縮コイルスプリング68の第2端部68bに支持されている。天板部74aは、ロッカーアーム40の第2アーム42の当接プレート42Cと接触している。第2アーム42の当接プレート42Cは、リテーナ74を介して圧縮コイルスプリング68の力を受けるばね力入力部を構成している。
【0054】
シリンダヘッド12には孔76が形成されている。スプリングシート72と、軸70の少なくとも一部と、圧縮コイルスプリング68の少なくとも一部と、リテーナ74の筒部74bの少なくとも一部とは、孔76の内部に配置されている。
【0055】
図3に示すように、ロッカーアーム40の第1アーム41と第2アーム42とが連結ピン60B,62により連結され、かつ、吸気バルブ22が閉じているときに、リテーナ74の筒部74bの一部は、軸70の第1軸端部70aよりも第2軸端部70bの方かつ第2軸端部70bよりも第1軸端部70aの方に位置している。
【0056】
吸気バルブ22、バルブスプリング32、軸70、リテーナ74、圧縮コイルスプリング68、および支持部材35は、互いに平行に配置されている。リテーナ74は、バルブスプリング32と支持部材35との間に配置されている。軸70は、バルブスプリング32と支持部材35との間に配置されている。
【0057】
図12は、リテーナ74、軸70、圧縮コイルスプリング68、およびスプリングシート72の斜視図である。図12に示すように、リテーナ74の天板部74aには、貫通口74cが形成されている。上述の通り、リテーナ74の筒部74bの少なくとも一部は、シリンダヘッド12の孔76の内部に配置されている(図3参照)。孔76は、リテーナ74によって塞がれている。天板部74aに貫通口74cが形成されていない場合、リテーナ74の上下移動に伴って孔76の内部の空気圧が変動し、リテーナ74の動きが妨げられるおそれがある。しかし、天板部74aに貫通口74cが形成されている場合、孔76の内部と外部とは貫通口74cを通じて連通する。そのため、孔76の内部と外部との間で、空気を行き来させることができる。それにより、孔76の内部の空気圧の変動が緩和される。よって、リテーナ74の動きが円滑化される。
【0058】
本実施形態では、圧縮コイルスプリング68のピッチ68pは一定である。一方、図13に示すように、バルブスプリング32は、第1スプリング端部32bから第2スプリング端部32aに向けてピッチが一定でない不等ピッチ部32Bと、不等ピッチ部32Bから第2スプリング端部32aに向けてピッチが一定である等ピッチ部32Aとを含んでいる。圧縮コイルスプリング68とバルブスプリング32とは、寸法が相違している。圧縮コイルスプリング68の長さは、バルブスプリング32の長さよりも短い。圧縮コイルスプリング68の巻き径68Dは、バルブスプリング32の巻き径32Dよりも小さい。図13に示すように、ロッカーアーム40の第1アーム41と第2アーム42とが連結ピン60B,62により連結され、かつ、吸気バルブ22が閉じているときに、圧縮コイルスプリング68の一部は等ピッチ部32Aよりも不等ピッチ部32Bの方に位置し、圧縮コイルスプリング68の他の一部は不等ピッチ部32Bよりも等ピッチ部32Aの方に位置する。圧縮コイルスプリング68は、等ピッチ部32Aの一部および不等ピッチ部32Bの一部と隣り合っている。
【0059】
図2に示すように、吸気バルブ22と同様、排気バルブ20にもバルブスプリング32、バルブスプリングリテーナ30、ロッカーアーム40、支持部材35、圧縮コイルスプリング68、軸70等が設けられている。それらの構成は前述の構成と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0060】
本実施形態に係る内燃機関10では、連結切換ピン66の状態を切り換えることにより、吸気バルブ22および排気バルブ20の動作状態を切り換えることができる。
【0061】
すなわち、連結切換ピン66を連結状態に切り換えると、ロッカーアーム40の第1アーム41および第2アーム42は、連結ピン60Bおよび連結ピン62によって連結される(図8参照)。吸気カムシャフト23の回転に伴って吸気カム23Aがロッカーアーム40のローラ43を押すと、第1アーム41および第2アーム42は一体となって、支持ピン56の軸心を中心として揺動する(図9参照)。その結果、第1アーム41の当接プレート41Cが吸気バルブ22を押し、吸気ポート16の吸気口18が開かれる。同様に、排気カムシャフト21の回転に伴って排気カム21Aがロッカーアーム40のローラ43を押すと、第1アーム41および第2アーム42は一体となって、支持ピン56の軸心を中心として揺動する。その結果、第1アーム41の当接プレート41Cが排気バルブ20を押し、排気ポート14の排気口17が開かれる。
【0062】
連結切換ピン66を非連結状態に切り換えると、連結ピン60Bおよび連結ピン62による第1アーム41および第2アーム42の連結が解除される(図7参照)。第2アーム42は第1アーム41に対して揺動可能となる(図10参照)。吸気カムシャフト23の回転に伴って吸気カム23Aがローラ43を押すと、第2アーム42は支持ピン56の軸心を中心として揺動するが、第1アーム41は揺動しない(図11参照)。そのため、第1アーム41の当接プレート41Cが吸気バルブ22を押すことはなく、吸気口18は吸気バルブ22によって閉じられたままとなる。同様に、排気カムシャフト21の回転に伴って排気カム21Aがローラ43を押すと、第2アーム42は支持ピン56の軸心を中心として揺動するが、第1アーム41は揺動しない。そのため、第1アーム41の当接プレート41Cが排気バルブ20を押すことはなく、排気口17は排気バルブ20によって閉じられたままとなる。このように、本実施形態では、連結切換ピン66を非連結状態に切り換えることにより、複数の気筒のうちの一部を休止状態にすることができる。例えば、負荷の小さいときに一部の気筒を休止させることとすれば、燃費を向上させることができる。
【0063】
以上が本実施形態に係る内燃機関10の構成である。内燃機関10によれば、ロストモーションスプリングとして、ロッカーアーム40とは別体の圧縮コイルスプリング68を備えている。ロッカーアーム40にねじりコイルばねを取り付ける必要がないので、ロッカーアーム40の小型化および軽量化が可能となる。
【0064】
本実施形態に係る圧縮コイルスプリング68は、比較的細いコイルスプリングである。圧縮コイルスプリング68の巻き径68Dはバルブスプリング32の巻き径32Dよりも小さい。そのため、圧縮コイルスプリング68と周辺の部材(例えば、バルブスプリングリテーナ30、バルススプリング32、支持部材35など)との干渉を容易に避けることができる。
【0065】
また、本実施形態に係る圧縮コイルスプリング68は、比較的長いコイルスプリングである。図13に示すように、ロッカーアーム40の第1アーム41と第2アーム42とが連結されかつバルブ20,22が閉じているときに、圧縮コイルスプリング68の一部はバルブスプリング32の等ピッチ部32Aよりも不等ピッチ部32Bの方に位置し、圧縮コイルスプリング68の他の一部は不等ピッチ部32Bよりも等ピッチ部32Aの方に位置する。圧縮コイルスプリング68は、バルブスプリング32の巻き線方向に関して、バルブスプリング32の等ピッチ部32Aから不等ピッチ部32Bに至るまで延びている。このように圧縮コイルスプリング68は比較的長いので、巻き径68Dが比較的小さくても、所要の力を安定して出力することができる。
【0066】
本実施形態によれば、圧縮コイルスプリング68は細くて長いコイルスプリングであるが、軸70が圧縮コイルスプリング68の曲がりを規制するので、圧縮コイルスプリング68は巻き軸線68dに対して曲がりにくい。そのため、圧縮コイルスプリング68は所要の力を安定して出力することができ、バルブ20,22の開閉動作の切換タイミングがずれにくい。よって、バルブ20,22の動作状態の切換可能範囲が狭められることがなく、内燃機関10の燃費の低下が抑えられる。
【0067】
また、圧縮コイルスプリング68は巻き軸線68dに対して曲がりにくいので、圧縮コイルスプリング68は周辺の部材と干渉しにくい。よって、圧縮コイルスプリング68と周辺の部材(例えば、バルブスプリングリテーナ30、バルススプリング32、支持部材35など)とのクリアランスを大きくする必要がなく、可変動弁機構の大型化を抑制することができる。
【0068】
ところで、細くて長い圧縮コイルスプリング68は、短時間の間に多くの伸縮を繰り返すとサージングを起こしやすい。そのため、内燃機関10の高回転時にサージングを起こしやすい。しかし、本実施形態に係る内燃機関10によれば、圧縮コイルスプリング68は軸70と接触し得るので、内燃機関10の高回転時にサージングが発生しそうになると、圧縮コイルスプリング68と軸70との接触によりサージングが減衰する。よって、高回転時にサージングが生じにくい。
【0069】
したがって、本実施形態に係る内燃機関10によれば、燃費の低下および可変動弁機構の大型化を抑えることができ、高回転時にサージングが生じにくく、ロッカーアーム40の小型化および軽量化が可能となる。
【0070】
スプリングシート72は必ずしも必要ではないが、本実施形態では、軸70の第1軸端部70aに圧縮コイルスプリング68を受けるスプリングシート72が設けられている。これにより、シリンダヘッド12に対する圧縮コイルスプリング68の組み付けが容易となる。また、孔76の内部に軸70を設置するときにスプリングシート72も併せて設置されるので、スプリングシート72の設置忘れを防止することができる。
【0071】
本実施形態によれば、リテーナ74は天板部74aと筒部74bとを有している。そのため、筒部74bにより、圧縮コイルスプリング68の曲がりを更に規制することができる。よって、圧縮コイルスプリング68は、より安定して所要の力を出力することができる。
【0072】
本実施形態によれば、ロッカーアーム40の第1アーム41と第2アーム42とが連結され、かつ、バルブ20,22が閉じているときに、リテーナ74の筒部74bの一部は、軸70の第1軸端部70aよりも第2軸端部70bの方かつ第2軸端部70bよりも第1軸端部70aの方に位置している(図3参照)。巻き軸線60dと直交する所定の断面において、圧縮コイルスプリング68は軸70と筒部74bとの間に配置されている。このように本実施形態によれば、リテーナ74の筒部74bが長い。圧縮コイルスプリング68の一部は、軸70の径方向の外方に位置し、かつ、筒部74bの径方向の内方に位置する。そのため、軸70および筒部74bの双方により圧縮コイルスプリング68の曲がりを規制することができるので、圧縮コイルスプリング68の曲がりを更に規制することができる。
【0073】
本実施形態によれば、シリンダヘッド12に孔76が形成され、圧縮コイルスプリング68の少なくとも一部、軸70の少なくとも一部、およびリテーナ74の少なくとも一部は、孔76の内部に配置されている。本実施形態によれば、シリンダヘッド12に対して圧縮コイルスプリング68、軸70、およびリテーナ74を安定して組み付けることができる。また、孔76の内周面により、圧縮コイルスプリング68の曲がりを更に規制することができる。
【0074】
本実施形態のように圧縮コイルスプリング68の少なくとも一部、軸70の少なくとも一部、およびリテーナ74の少なくとも一部が孔76の内部に配置されている場合、孔76の内部の空気圧の変動により、リテーナ74の動きが妨げられるおそれがある。しかし、本実施形態では、図12に示すように、リテーナ74の天板部74aに貫通口74cが形成されている。この貫通口74cを通じて、孔76の内部と外部との間で空気が行き来することができる。よって、孔76の内部の空気圧の変動が緩和され、リテーナ74の動きが円滑化される。
【0075】
圧縮コイルスプリング68のピッチ68pは一定でなくてもよいが、本実施形態では一定である。圧縮コイルスプリングが等ピッチ部と不等ピッチ部とを含む場合、圧縮コイルスプリングに作用する外力が過大でない場合、等ピッチ部は収縮するが、不等ピッチ部は実質的に収縮しない状態となる。その場合、不等ピッチ部は実質的に弾性力を発揮しないことになる。そのため、ピッチが一定の第1の圧縮コイルスプリングと、等ピッチ部および不等ピッチ部を含む第2の圧縮コイルスプリングとの長さが等しい場合、外力が過大でなければ、第1の圧縮コイルスプリングの方が弾性力を出力する部分の長さが長いので、より大きな弾性力を出力することができる。逆に、第1の圧縮コイルスプリングと第2の圧縮コイルスプリングとが同一の弾性力を出力する場合、第1の圧縮コイルスプリングの方が第2の圧縮コイルスプリングよりも短くて済む。よって、ピッチが一定の圧縮コイルスプリング68は、ピッチが一定でない圧縮コイルスプリングに比べて、コンパクトにすることができる。
【0076】
一方、ピッチが一定の圧縮コイルスプリング68は、ピッチが一定でない圧縮コイルスプリングに比べてサージングが生じやすい。しかし前述の通り本実施形態では、軸70が圧縮コイルスプリング68のサージングを抑制する。そのため、ピッチが一定の圧縮コイルスプリング68を支障なく用いることができる。圧縮コイルスプリング68と軸70との接触により圧縮コイルスプリング68のサージングを抑制するという効果が、より顕著に発揮される。
【0077】
以上、本発明の実施の一形態について説明したが、本発明の実施形態が前記実施形態に限定されないことは勿論である。次に、他の実施形態の例について簡単に説明する。
【0078】
前記実施形態では、第1アーム41は、カム21A,23Aと接触しないように構成されている。前記実施形態では、ロッカーアーム40の第1アーム41および第2アーム42を非連結状態に切り換えることにより、バルブ20,22を休止状態にすることとした。しかし、第1アーム41は、ローラ43がカム21A,23Aに押されることにより第2アーム42が揺動を開始した後にカム21A,23Aに接触する接触部を有していてもよい。この場合、第1アーム41および第2アーム42を非連結状態に切り換えることにより、バルブ20,22を開くタイミングおよび閉じるタイミングを変えることが可能である。これにより、バルブ20,22の開いている期間を変更することができる。例えば、内燃機関10の回転数が高い場合にバルブ20,22の開いている期間を長くすることにより、高回転時の性能を向上させることができる。
【0079】
前記実施形態では、内燃機関10は多気筒エンジンである。しかし、内燃機関10は、バルブ20,22の開閉タイミングを変更可変な単気筒エンジンであってもよい。
【0080】
ここに用いられた用語及び表現は、説明のために用いられたものであって限定的に解釈するために用いられたものではない。ここに示されかつ述べられた特徴事項の如何なる均等物をも排除するものではなく、本発明のクレームされた範囲内における各種変形をも許容するものであると認識されなければならない。本発明は、多くの異なった形態で具現化され得るものである。この開示は本発明の原理の実施形態を提供するものと見なされるべきである。それらの実施形態は、本発明をここに記載しかつ/又は図示した好ましい実施形態に限定することを意図するものではないという了解のもとで、実施形態がここに記載されている。ここに記載した実施形態に限定されるものではない。本発明は、この開示に基づいて当業者によって認識され得る、均等な要素、修正、削除、組み合わせ、改良及び/又は変更を含むあらゆる実施形態をも包含する。クレームの限定事項はそのクレームで用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施形態に限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0081】
5…自動車(車両)、10…内燃機関、12…シリンダヘッド、14…排気ポート、16…吸気ポート、20…排気バルブ、21…排気カムシャフト、21A…排気カム、22…吸気バルブ、23…吸気カムシャフト、23A…吸気カム、32…バルブスプリング、32A…等ピッチ部、32B…不等ピッチ部、32a…第2スプリング端部、32b…第1スプリング端部、40…ロッカーアーム、41…第1アーム、41C…当接プレート(当接部)、41S…被支持部、42…第2アーム、42C…当接プレート(ばね力入力部)、43…ローラ(接触部)、66…連結切換ピン(連結機構)、68…圧縮コイルスプリング、68a…第1端部、68b…第2端部、70…軸、70a…第1軸端部、70b…第2軸端部、72…スプリングシート、74…リテーナ、74a…天板部、74b…筒部、74c…貫通口、76…孔
図1
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