(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
線材を所定長さに切断して供給する線材供給部と、前記線材供給部から供給された直線状の線材を、互いに略平行に延びる1対のスロット挿入部と該1対のスロット挿入部を連結する渡り部とからなる所定の形状に成形するコイルセグメント成形部と、前記コイルセグメント成形部で成形されたコイルセグメントを円環状に配列してコイルを組み立てるコイル組立部と、前記コイル組立部で組み立てられた組立コイルを、該組立コイルの軸心方向に押し出し、前記組立コイルと同軸に配置されたコアのスロット内に挿入するコイル挿入機構とがユニット化されたコイル供給ラインと、前記コイル供給ラインに接続され、コアを有するステータ又はロータを供給するワーク供給ラインとを備え、前記コイル供給ラインの前記コイル挿入機構が前記ワーク供給ラインから供給された前記コアのスロット内に前記組立コイルを挿入するように構成されており、前記コイル組立部が、前記コイルセグメントを放射方向外側からそれぞれ挿入可能な複数のセグメント保持部が周方向に沿って円環状に配列されたセグメント配置体を有し、前記セグメント配置体は中心軸の回りを回転可能で前記中心軸が水平となるように配置され、前記コイルセグメント成形部で成形されたコイルセグメントを、前記コイルセグメント成形部での成形時の水平に寝た状態のまま搬送して前記1対のスロット挿入部のうちの一方を前記セグメント保持部に挿入する構成を有していることを特徴とする回転電機の製造システム。
前記コイル組立部が、前記一方のスロット挿入部が前記セグメント保持部に挿入された状態で他方のスロット挿入部を載せて摺動可能に支持するガイド部材を備え、先に配置されるコイルセグメントの前記他方のスロット挿入部が前記ガイド部材で支持されている間に、次に配置されるコイルセグメントの前記一方のスロット挿入部を第1の所定角度回転した前記セグメント配置体の前記セグメント保持部に挿入する構成を有していることを特徴とする請求項1に記載の回転電機の製造システム。
前記ガイド部材は、前記セグメント配置体が第2の所定角度回転した際に前記先に配置されるコイルセグメントの前記他方のスロット挿入部を自重で落下させる構成を有していることを特徴とする請求項2に記載の回転電機の製造システム。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。なお、以下に述べる実施形態は、線材として断面が四角形状の平角線を用いる場合について説明するが、例えば丸形状、正方形形状、多角形状若しくはその他の任意の断面形状の単線、又は撚り線による線材であっても本発明は適用可能である。
【0033】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る回転電機の製造装置100は、コイルセグメント成形部1と、コイルセグメント成形部1で成形されたコイルセグメントを回転電機の周方向に沿って円環状に配列されたスロットに対応させてアセンブルするコイル組立部2とを備えている。
【0034】
コイルセグメント成形部1は、線材供給部3と、線材供給部3から供給された所定長さの直線状の線材を同一平面(本実施形態では水平平面)内で所定の形状(例えばU字形状)に曲げ加工する1次曲げ部4と、1次曲げ部4で曲げ加工されたコイルセグメント(1次曲げ成形体)をこのコイルセグメントの軸線及び上述の平面と垂直な平面(本実施形態では垂直平面)内において曲げ加工する(湾曲形状に成形する)と共にその先端部にコイルセグメントの1対のスロット挿入部が互いにコアの径方向にずれるための形状(例えば、段差形状、クランク形状)を付与する(クランク形状の段差部を成形する)2次曲げ部5とを備えている。
【0035】
線材供給部3は、表面が絶縁層で被覆された平角線による線材6が巻かれたボビン7と、ボビン7から線材6を引き出して供給方向を変える供給方向転換部8と、線材6のフラットワイズ面を挟持して搬送する複数のローラ対9aと、線材6のエッジワイズ面を挟持して搬送する複数のローラ対9bと等を有し、長手方向の歪みを矯正する矯正搬送部9と、歪みが矯正された線材6の所定長さに対応する両端部における被覆絶縁層を剥離する剥離部10と、剥離部10を通過した線材6を所定長さ位置で切断する切断部11とを備えている。本実施形態における剥離部10はレーザ光で被覆絶縁層を剥離する構成を有し、剥離範囲は次の線材の片側端部の剥離部を含んでいる。従って、切断部11は剥離範囲の中央部で線材6を切断するように構成されている。なお、剥離部10として、レーザ光を用いることなく、機械的な切削又は削り取りで線材6の被覆絶縁層を剥離する構成を用いても良いことはもちろんである。
【0036】
1次曲げ部4によって曲げ加工された線材6、即ちU字形状に曲げられた1次曲げ成形体は、1次曲げ部4と2次曲げ部5との間に配置された移送機構12によって2次曲げ部5へ移送される。移送機構12はエアシリンダによる1対のチャック部(図示無し)を備えており、この1対のチャック部は1次曲げ成形体の両脚部(1対のスロット挿入部)が曲げによって旋回してくる範囲にチャック片が開放された状態で待機している。チャック部が1次曲げ成形体の両脚部を把持すると、移送機構12は上昇して1次曲げ部4から1次曲げ成形体を外し、2次曲げ部5へ移送する。移送機構12で移送された1次曲げ成形体はその両脚部の端部が保持部材13で保持される。保持部材13を移送部材12と同様に、エアシリンダによって開閉する1対のチャック部で1対のスロット挿入部を把持する構成を有している。1次曲げ成形体を保持部材13に受け渡した移送機構12が退避してスペース的にコイルエンド部(渡り部)側が開放された状態で、このコイルエンド部に対して2次曲げ部5による湾曲形状の成形及びクランク形状の段差部の形成を含む曲げ加工がなされる。なお、
図1に示す構成では、線材供給部3の供給方向転換部8、矯正搬送部9、剥離部10及び切断部11と、1次曲げ部4とが
図1(a)にて横方向に一列状に配置され、2次曲げ部5が1次曲げ部4に対して
図1(a)にて縦方向(直角方向)に配置され、コイル組立部2が2次曲げ部5に対して
図1(a)にて横方向に配置されているが、これら供給方向転換部8、矯正搬送部9、剥離部10、切断部11、1次曲げ部4、2次曲げ部5及びコイル組立部2が
図1(a)にて横方向に一列状に配置されていても良い。即ち、コイルセグメントの成形部とコイルの組立部との配置の制限、換言すれば、単一の製造装置においてコイル形成が完結する構成であれば、レイアウト上の制限はない。
【0037】
以下、1次曲げ部4の構成及び曲げ動作について詳細に説明する。
【0038】
1次曲げ部4は、
図2に示すように、両端部が剥離された直線状に延びる所定長さの線材6を支持する複数の凹溝をそれぞれ備えた複数(ここでは6個)のブロック状の治具14A、14B、15A、15B、16A及び16Bを有している。同図においては、線材6の両端の剥離部分はドットで表示されている。これらの治具14A、14B、15A、15B、16A及び16Bの回転移動又は直線移動が、設定された制御データに基づいてそれぞれ数値制御(NC制御)される。なお、本明細書において「回転移動」とは、回転中心(旋回中心)に関して回転(旋回)することを意味する。
【0039】
本実施形態において、線材6は、この1次曲げ部4によって、同一平面内で
図3(a)に示すU字形状に曲げ加工されることにより、コイルセグメントの1次曲げ成形体17Aとなる。1次曲げ成形体17Aは、頂角の角度(以下、「中央角度」という)が角度θ1の山形形状をなす渡り部17aと、この渡り部17aとの角度(以下、「肩部角度」という)が角度θ2となるように連結され、互いに略平行に延びる1対のスロット挿入部17b及び17cとからなる。これら渡り部17a並びに1対のスロット挿入部17b及び17cは、同一平面上に位置するように成形されている。なお、この1次曲げ成形体17Aは渡り部17aの各片の長さがL1と小さい、コイル幅小の例である。
【0040】
本実施形態における治具14A、14B、15A、15B、16A及び16Bは、
図2に示すように、1次曲げ部4の折り曲げ中心線C(曲げ中心線)に対して、換言すれば、線材6の軸方向の中央位置を基準として、左右側に等数(3個ずつ)、線対称に配置されている。折り曲げ中心線Cに対して最も内側に配置された1対の治具14A及び14Bは、回転移動することにより1次曲げ成形体17Aの渡り部17aの中央角度が角度θ1となる折り曲げを行うために設けられている。実際には、これら1対の治具14A及び14Bと共に1対の治具15A及び15B並びに1対の治具16A及び16Bも回転移動する。一方、折り曲げ中心線Cに対して最も外側に配置された1対の治具16A及び16B並びにその隣の1対の治具15A及び15Bは、回転移動することにより肩部角度が角度θ2となる折り曲げを行うために設けられている。治具14A及び治具15A間の距離m及び治具14B及び治具15B間の距離mによって、
図3(a)に示す1次曲げ成形体17Aの渡り部17aの各片の長さL1のコイル幅が規定される。
【0041】
図2に示すように、治具14A、14B、15A、15B、16A及び16Bは、上面が開口し横方向に貫通する凹溝14A−1、14B−1、15A−1、15B−1、16A−1及び16B−1をそれぞれ有している。各凹溝の幅w1は平角線である線材6の幅(エッジワイズ方向の幅)w2よりも僅かに大きくなるように設定されており、これにより線材6はエッジワイズ方向の曲げ動作中、治具14A、14B、15A、15B、16A及び16Bの凹溝によって確実に支持されるように構成されている。各治具による線材6の支持構成は特定の形状に限定されないが、ここでは凹溝に収容して曲げ方向の動きを拘束する形態を採っている。各凹溝の深さd1は線材6の厚み(フラットワイズ方向の幅)d2以上となるように設定されている。なお、各溝の幅w1は1次曲げ成形体17Aの寸法精度を高めるために線材6を密接に収容して支持できる幅となっている。この幅w1は可変ではなく、コイルの種類に応じて線材6の幅w2が変更となった場合には、治具14A、14B、15A、15B、16A及び16Bの交換が必要となる。このため、これら治具14A、14B、15A、15B、16A及び16Bは、後述する支持部材に対して固定ネジ等により着脱可能に設けられている。
【0042】
1次曲げ部4の曲げ加工が開始される前の初期状態においては、
図2に示すように、これら治具14A、14B、15A、15B、16A及び16Bの凹溝14A−1、14B−1、15A−1、15B−1、16A−1及び16B−1が互いに一直線上に並ぶように設定されている。即ち、治具14A、14B、15A、15B、16A及び16Bの初期位置である。
【0043】
図2に示すように、治具14A、14B、15A、15B、16A及び16Bの凹溝14A−1、14B−1、15A−1、15B−1、16A−1及び16B−1内における、線材6のエッジワイズ側の面と接するエッジ部分14A−2、14B−2、15A−2、15B−2、16A−2及び16B−2は、曲げ加工動作中にその角の形状で線材6の絶縁層を傷付けないように、湾曲形状に形成されている。また、治具14A、14B、15A、15B、16A及び16Bの外面には、曲げ加工動作中の変位による他の治具との干渉を避けるために、面取り部14A−3、14B−3、15A−3、15B−3、16A−3及び16B−3がそれぞれ形成されている。従来のように目的の曲げ形状に対応した加工面を有する1対の成形型でプレスする方式では、線材の両面、場合によっては周面全体がプレス圧を受けるため、その線材の絶縁層が傷付き易かった。曲げ加工精度を上げようとすると成形面のエッジが先鋭化するが、ここに応力が集中して絶縁層が傷付き易かった。また、成形型でプレスする方式では、実際にプレスしてみないと絶縁層が傷付くかどうかわからず、不具合があった場合に成形型作製のやり直しが必要となり高コスト化を招来していた。本実施形態では上記のように線材6を治具の凹溝に収容しただけの、開放系内での曲げ加工であるため、線材の絶縁層の傷付きは生じない。
【0044】
なお、上述の説明では、治具14A、14B、15A、15B、16A及び16Bは、上面が開口し横方向に貫通する凹溝14A−1、14B−1、15A−1、15B−1、16A−1及び16B−1をそれぞれ有し、これら凹溝内に線材6が上方から挿入される構成としたが、凹溝内に線材6が横方向から挿入される構成としても良い。また、曲げ加工動作中に上面開口型の凹溝によって線材6を拘束して支持する構成としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、治具14A、14B、15A、15B、16A及び16Bを、上下重ね合わせ構造とすることにより線材6が挿通される挿通穴を有する構成とし、線材6を横方向から挿通して曲げ加工を行い、1次曲げ加工終了後に上側又は下側の治具を移動させて開放する構成としても良い。
【0045】
1次曲げ部4が線材6の曲げ加工を行う場合、まず、所定長さに切断された線材6が、治具14A、14B、15A、15B、16A及び16Bの直線状に配列された凹溝内に上方から挿入・載置され、橋渡し状態で支持される。次いで、1次曲げ部4による曲げ加工動作が開始される。
【0046】
図4は1次曲げ部4によるこの曲げ加工動作を概略的に示している。同図(a)は、線材6が治具14A、14B、15A、15B、16A及び16Bの互いに直線状に並んだ凹溝内に橋渡し状態にセットされ支持されている状態を示している。この状態から治具14A、14B、15A、15B、16A及び16Bが回転移動することにより、同図(b)に示すように線材6の1回目の折り曲げ加工が行われ、次いで、2回目の折り曲げ加工が行われて最終的に同図(c)に示すようにU字形状の1次曲げ成形体17Aが形成される。
【0047】
上述したように、本実施形態では、6個の治具14A、14B、15A、15B、16A及び16Bが折り曲げ中心線Cについて線対称に配置され、線対称位置に配置された1対の治具が制御データに基づいて線対称に回転移動又は直線移動する。従って、本実施形態の1次曲げ部4で形成される1次曲げ成形体17Aは、
図3(a)に示すように線対称のU字形状となる。制御データを変更して治具14A、14B、15A、15B、16A及び16Bの回転移動量又は直線移動量を変えれば、種々の形状の1次曲げ成形体を形成することができる。例えば、折り曲げ加工前の初期状態時又は折り曲げ加工時に、1対の治具15A及び15Bと1対の治具16A及び16Bとを折り曲げ中心線Cから離れる方向に直線移動し、前述した治具14A及び治具15A間の距離m及び治具14B及び治具15B間の距離mを増大させた状態で2回目の折り曲げ加工を行えば、
図3(b)に示すように、渡り部17a′の各片の長さがL2であり、
図3(a)の渡り部17aの各片の長さL1より大きい(L2>L1)、従ってコイル幅の大きい線対称の1次曲げ成形体17Bを作製することができる。このように、治具14A、14B、15A、15B、16A及び16Bを移動させる量(制御データ)を変更するだけで、種々の形状のコイルセグメントに対応した1次曲げ成形体を、成形用の部品(治具)を交換することなく、直ちに得ることができる。前述したように、回転電機の1つのコイルには複数種類の形状コイルセグメントが存在するが、本実施形態では複数種類の制御データを入力しておけば、読み出される制御データに基づいて各治具が自動的に移動し、複数種類のコイルセグメント(1次曲げ成形体)が連続的に作製される。このため、ストック管理を要することなく1つのコイル形成に必要な複数種類のコイルセグメント(1次曲げ成形体)を一括で作製することができる。
【0048】
このように本実施形態においては、成形すべき曲げ形状に応じた形状を持たない単なるブロック状の複数の治具14A、14B、15A、15B、16A及び16Bを、1つの平面上(水平面上)で制御データに基づくNC制御によって回転移動又は直線移動させるだけでコイルセグメントの1次曲げ成形体を形成するものである。従って、本実施形態によれば、従来技術のように成形すべき曲げ形状に応じた形状を有する成形型を用いる必要がなく、NC制御される複数の治具を用いているので、高額な型製作費用が不要となり、コイルセグメントの製造コストが安価となる。また、種々の形状のコイルセグメントを成形する場合に、成形型交換等の作業が不要となるため、型交換に起因するダウンタイムが生じず、作業時間の短縮化を図ることができると共に、作業性が極めて容易となる。
【0049】
次に、上述した治具14A、14B、15A、15B、16A及び16Bの支持構造及び駆動構成について詳細に説明する。
【0050】
図5及び
図6に示すように、1次曲げ部4は、前方(
図6にて下方)であって折り曲げ中心線Cを中心とする中央部に切り欠き部を有する固定ベース18と、この固定ベース18上の前方部分に折り曲げ中心線Cについて線対称に配置固定された1対の円弧状のガイドレール19A及び19Bと、これらガイドレール19A及び19Bにそれぞれ係合しておりこれらガイドレール19A及び19Bに沿ってそれぞれ摺動可能な可動ベース20A及び20Bと、可動ベース20A及び20Bをガイドレール19A及び19Bに沿ってそれぞれ移動させる駆動機構21等を備えている。
【0051】
ガイドレール19A及び19Bは折り曲げ中心線C上の1点が円弧の中心となるように構成されている。
【0052】
駆動機構21は、折り曲げ中心線Cに沿ったDX方向の回転軸を有するボールネジ部22と、このボールネジ部22に螺合しておりDX方向に摺動可能なナット部23と、ボールネジ部22を回転駆動するサーボモータ24と、ナット部23に固定されており、ボールネジ部22の回転に伴ってDX方向に移動するスライダ25と、スライダ25と可動ベース20A及び20Bとの間に回転自在なジョイントを介してそれぞれ連結されたアーム26A及び26Bとを備えている。
【0053】
可動ベース20Aには、その回転軸がDX方向と直交するDU方向に沿って配置され、治具15A及び16Aを直線移動させて治具15A及び治具14A間の距離mを変更可能な駆動機構27Aと、その回転軸が駆動機構27Aと平行なDY方向に配置され、治具16Aを回転移動させる駆動機構28Aとが設けられている。可動ベース20Bには、駆動機構27Aに対向すると共にその回転軸がDX方向と直交するDV方向に沿って配置され、治具15B及び16Bを直線移動させて治具15B及び治具14B間の距離mを変更可能な駆動機構27Bと、駆動機構28Aに対向して配置されると共にその回転軸が駆動機構27Bと平行なDZ方向に配置され、治具16Bを回転移動させる駆動機構28Bとが設けられている。
【0054】
駆動機構27Aは、DU方向の回転軸を有するボールネジ部29Aと、このボールネジ部29Aに螺合しておりDU方向に摺動可能なナット部30Aと、ボールネジ部29Aを回転駆動するサーボモータ31Aと、ナット部30Aに固定されており、ボールネジ部29Aの回転に伴ってDU方向に移動するスライドプレート32Aとを備えている。このスライドプレート32Aには治具15Aが固定されていると共に、カムフォロア33Aを有する旋回プレート34Aが旋回可能に軸支されており、旋回プレート34Aには治具16Aが固定されている。駆動機構28Aは、DY方向の回転軸を有するボールネジ部35Aと、このボールネジ部35Aに螺合しておりDY方向に摺動可能なナット部36Aと、ボールネジ部35Aを回転駆動するサーボモータ37Aと、ナット部36Aに固定されており、ボールネジ部35Aの回転に伴ってDY方向に移動する旋回駆動プレート38Aとを備えている。旋回駆動プレート38Aはカムフォロア33Aに係合する係合凹部39Aを有している。
【0055】
駆動機構27Bは、DX方向と直交するDV方向の回転軸を有するボールネジ部29Bと、このボールネジ部29Bに螺合しておりDV方向に摺動可能なナット部30Bと、ボールネジ部29Bを回転駆動するサーボモータ31Bと、ナット部30Bに固定されており、ボールネジ部29Bの回転に伴ってDV方向に移動するスライドプレート32Bとを備えている。このスライドプレート32Bには治具15Bが固定されていると共に、カムフォロア33Bを有する旋回プレート34Bが旋回可能に軸支されており、旋回プレート34Bには治具16Bが固定されている。駆動機構28Bは、DZ方向の回転軸を有するボールネジ部35Bと、このボールネジ部35Bに螺合しておりDZ方向に摺動可能なナット部36Bと、ボールネジ部35Bを回転駆動するサーボモータ37Bと、ナット部36Bに固定されており、ボールネジ部35Bの回転に伴ってDZ方向に移動する旋回駆動プレート38Bとを備えている。旋回駆動プレート38Bはカムフォロア33Bに係合する係合凹部39Bを有している。
【0056】
上述したように、治具14A、15A及び16A並びに駆動機構27A及び28Aは可動ベース20A上に設けられており、この可動ベース20Aの回転移動と共に回転移動する。また、治具14B、15B及び16B並びに駆動機構27B及び28Bは可動ベース20B上に設けられており、この可動ベース20Bの回転移動と共に回転移動する。
【0057】
図7に示すように、可動ベース20Aの下面にはガイドレール19Aに嵌合する2つの図示しない嵌合部材がこのガイドレール19Aの円弧に沿った互いに離隔した位置にガイドレール19Aに対して摺動可能に取り付けられている。可動ベース20Bの下面にも同様にガイドレール19Bに嵌合する2つの図示しない嵌合部材がこのガイドレール19Bの円弧に沿った互いに離隔した位置にガイドレール19Bに対して摺動可能に取り付けられている。
【0058】
ガイドレール19A及び19Bの円弧の中心、即ち可動ベース20A及び20Bの回動移動の中心は、
図7に示すように、折り曲げ中心線C上の1点である旋回中心41となる。なお、本実施形態においては、可動ベース20A及び20Bの回動移動動作を、固定ベース18上に設けられたレール形状のガイドレール19A及び19Bに可動ベース20A及び20Bの嵌合部材40A及び40Bがそれぞれ嵌合して摺動する構成としたが、固定ベース18上に凹溝を有するガイドレールを設け、可動ベース20A及び20B側に設けた凸部がこの凹溝に係合する構成としても良い。
【0059】
可動ベース20A及び20Bの旋回中心41は、
図7に示すように、折り曲げ中心線C上であって、線材6の中心線43から曲げる内側(
図7にて下側)へ若干の距離t(例えばt=0.5mm)だけずれた位置に設定されている。その理由は、線材6をエッジワイズ方向に曲げると、曲げの内側では圧縮作用によって厚みの膨張が生じ、曲げの外側では引っ張り作用によって厚みの縮小が生じる。この厚みの変化は曲げの内側では外側より大きいため、曲げによる線材6の伸縮をできる限り少なくするため、上記のように可動ベース20A及び20Bの旋回中心41を曲げる内側にずらしている。
【0060】
次に、本実施形態の1次曲げ部4の曲げ加工動作について、
図6〜
図9に基づいて説明する。
【0061】
1次曲げ部4が初期状態にある場合は、
図6及び
図7に示すように、治具14A、14B、15A、15B、16A及び16Bの凹溝が互いに直線状に並んだ状態にあり、直線状の線材6がこれら治具の凹溝内に挿入・載置され、橋渡し状態で支持されている。
【0062】
この状態から駆動機構21が動作すると、スライダ25がDX+方向へ前進し、これによってアーム26A及び26Bをそれぞれ介して可動ベース20A及び20Bが旋回中心41の回りを回転移動する。治具14A、15A及び16A並びに治具14B、15B及び16Bが可動ベース20A及び20Bにそれぞれ固定されているので、これら治具14A、15A及び16A並びに治具14B、15B及び16Bは可動ベース20Aが20Bと共に回転移動し、これによって線材6が折り曲げ中心線Cの部分で折り曲げられ、渡り部17aの中央角度が制御データに基づく設定角度としての角度θ1となるまで折り曲げ加工される。この旋回による1回目の折り曲げ加工後の状態が
図8に示されている。
【0063】
中央角度が角度θ1となると、駆動機構28A及び28Bが動作し、旋回駆動プレート38AがDY+方向(
図6参照)に移動し、旋回駆動プレート38BがDZ+方向に移動する。これにより、
図10により詳細に示されているように、係合凹部39A及び39Bがカムフォロア33A及び33Bをそれぞれ押圧して旋回プレート34A及び34Bがその旋回中心44(
図10参照)を中心にして旋回する。旋回プレート34A及び34Bのこの旋回により治具16A及び16Bが回転移動し、線材6の肩部角度が制御データに基づく設定角度としての角度θ2となるまで折り曲げ加工されU字形状の曲げ加工が完了する。2回目の折り曲げ加工後の状態が
図9に示されている。
【0064】
旋回プレート34A及び34Bの旋回中心44、即ち治具16A及び16Bの回転移動(旋回)の中心は、
図10に示すように、線材6の中心線43から曲げる内側へ若干の距離t(例えばt=0.5mm)だけずれた位置に設定されている。その理由は、線材6をエッジワイズ方向に曲げると、曲げの内側では圧縮作用によって厚みの膨張が生じ、曲げの外側では引っ張り作用によって厚みの縮小が生じる。この厚みの変化は曲げの内側では外側より大きいため、曲げによる線材6の伸縮をできる限り少なくするため、上記のように旋回プレート34A及び34Bの旋回中心44、即ち治具16A及び16Bの回転移動(旋回)の中心を曲げる内側にずらしている。
【0065】
前述したように、治具14A及び治具15A間の距離m及び治具14B及び治具15B間の距離mを変化させることによって、1次曲げ成形体17Aの渡り部17aの各片の長さを変化させることができる。このように渡り部17aの各片の長さを変化させることによって、U字形状の1次曲げ成形体17Aの幅(コイル幅)を変化させ、要求にあったコイルセグメントを作製することができる。即ち、コイル幅小の1次曲げ成形体又はコイル幅大の1次曲げ成形体を作成することができる。この距離mの設定は、駆動機構27A及び27Bによって行われる。即ち、駆動機構27A及び27Bが動作すると、治具15A及び治具16Aが取り付けられているスライドプレート32AがDU方向に直線移動すると共に治具15B及び治具16Bが取り付けられているスライドプレート32BがDV方向に直線移動することにより、距離mを変化させることができる。なお、上記のようにスライドプレート32A及び32Bにはそれぞれカムフォロア33A及び33Bが固定され、これらのカムフォロア33A及び33Bは旋回駆動プレート38A及び38Bの係合凹部39A及び39Bに係合しているので、旋回駆動プレート38A及び38Bがスライドプレート32A及び32Bと同期移動するように駆動機構28A及び28Bが動作する。以降ではこれらの同期移動を適宜スライドプレート32A及び32Bのみの移動として略す。
【0066】
距離mの設定は曲げ加工が開始される前に設定しても良いが、曲げ加工動作中であっても治具16A及び16B自体が旋回するまでは可能である。なお、スライドプレート32A及び32Bは、曲げ加工開始前の初期状態においてはホームポジションに位置しており、与えられた制御データに基づいてこのホームポジションから移動するように構成されている。
【0067】
図11には、本実施形態における製造装置の電気的構成が示されており、
図12にはこの製造装置全体の制御工程が示されている。
【0068】
図11に示すように、タッチパネル等の入力及びディスプレイ手段を含むヒューマンマシンインターフェース(HMI)45によって、線材の成形加工のための制御データの入力、メモリに記憶されている制御データの読み出し指示、メモリに記憶されている制御データの修正指示、NC制御の開始指示、又はNC制御の終了指示等が入力される。HMI45はイーサネット(登録商標)を介してプログラマブルロジックコントローラ(PLC)46に接続され、PLC46にはCC−Link等の高速ネットワークで第1のNCコントローラ47及び第2のNCコントローラ48が接続されている。PLC46は、種々の形状のコイルセグメントを成形するための制御データと制御プログラムとを少なくとも記憶するメモリとセントラルプロセッシングユニット(CPU)と入出力インタフェースとを備えており、CPUがそのプログラムに従って指示された制御データを第1のNCコントローラ47及び第2のNCコントローラ48へ転送する機能を有している。第1のNCコントローラ47は、1次曲げ部4における線材の長さ、コイルセグメントの中央角度θ1、ピッチ、及びコイルセグメントの肩部角度θ2等の制御データ、及び多軸制御実行についてのデータ展開を行い、さらに、2次曲げ部5における折り曲げ・プレス等の制御データ、及び多軸制御実行についてのデータ展開を行う。第2のNCコントローラ48は、コイル組立部2におけるコイル配置等の制御データについてデータ展開を行う。PLC46と第1のNCコントローラ47及び第2のNCコントローラ48とにより、線材供給部3、1次曲げ部4、2次曲げ部5及びコイル組立部2を制御する制御部49が構成されている。
【0069】
第1のNCコントローラ47は、サーボリンク構成用の光通信ケーブル50を介して、線材供給部3、1次曲げ部4及び2次曲げ部5に接続されている。これら線材供給部3、1次曲げ部4及び2次曲げ部5においては、光通信ケーブル50に複数の増幅及び駆動回路が接続されており、これら複数の増幅及び駆動回路に複数のサーボモータがそれぞれ接続されている。複数の増幅及び駆動回路には、複数のサーボモータに機械的に連結されたエンコーダからの信号線がそれぞれ接続されている。
【0070】
本実施形態において、1次曲げ部4は前述したように、5軸制御構成となっており、光通信ケーブル50には、DX方向駆動用のサーボモータ24の増幅及び駆動回路、DY方向駆動用のサーボモータ37Aの増幅及び駆動回路、DZ方向駆動用のサーボモータ37Bの増幅及び駆動回路、DU方向駆動用のサーボモータ31Aの増幅及び駆動回路、並びにDV方向駆動用のサーボモータ31Bの増幅及び駆動回路が接続されている。
【0071】
また、2次曲げ部5は、6軸制御構成となっており、光通信ケーブル50には、UX方向駆動用のサーボモータ78の増幅及び駆動回路、UY方向駆動用のサーボモータ68の増幅及び駆動回路、UZ方向駆動用のサーボモータ82の増幅及び駆動回路、UU方向駆動用のサーボモータ72の増幅及び駆動回路、UV方向駆動用のサーボモータ89の増幅及び駆動回路、並びにUW方向駆動用のサーボモータ102の増幅及び駆動回路が接続されている。
【0072】
第2のNCコントローラ48は、サーボリンク構成用の光通信ケーブル51を介して、コイル組立部2に接続されている。コイル組立部2においては、光通信ケーブル51に複数の増幅及び駆動回路が接続されており、これら複数の増幅及び駆動回路に複数のサーボモータがそれぞれ接続されている。複数の増幅及び駆動回路には、複数のサーボモータに機械的に連結されたエンコーダからの信号線がそれぞれ接続されている。
【0073】
PLC46、第1のNCコントローラ47及び第2のNCコントローラ48は、
図12に示すステップに基づいて制御装置全体の動作を制御する。
【0074】
まず、PLC46は、製造すべきコイルの複数のコイルセグメントのうち、次に成形及び組立を行うコイルセグメント(以下、被処理コイルセグメントと称する)に関する1次曲げ動作用の制御データ、即ち、線材の長さ、中央角度θ1、渡り部17aの各辺の長さ、肩部角度θ2等を規定する一連の制御データをメモリから読み出し、第1のNCコントローラ47へ出力すると共に、被処理コイルセグメントに関する2次曲げ動作用の制御データ、即ち湾曲形状の成形についての各押圧治具の移動量、段差形成(Z曲げ)についての各押圧治具の移動量等を規定する一連の制御データをメモリから読み出し、第1のNCコントローラ47へ出力する。さらに、被処理コイルセグメントに関するコイル組立動作用の制御データ、即ちコイル組立部2における後述するセグメント配置ドラム105へのコイルセグメントの配置数及び層数、インデックス回転量、離脱防止手段106のアーム139A及び139Bの回動量、ブレード108の突出量、及び押圧リング135の移動量等に関する一連の制御データをメモリから読み出し、第2のNCコントローラ48へ出力する(ステップS1)。
【0075】
第1のNCコントローラ47は、これにより、受信した制御データを展開し、指定されたアドレスの駆動機構のNC制御を実行する。まず、線材供給部3における剥離部10及び切断部11により、線材の両端部の絶縁層の剥離及び所定長さへの切断のNC制御を行う(ステップS2)。即ち、線材(被処理コイルセグメント用の線材)6の長さに関する制御データを展開して剥離部10の駆動機構に出力し対象となるサーボモータを駆動して線材の両端部に相当する部分の絶縁層の剥離を実行し、線材(被処理コイルセグメント用の線材)6の長さに関する制御データを展開して切断部11の駆動機構へ出力し対象となるサーボモータを駆動して線材を所定長さに切断する。
【0076】
次いで、第1のNCコントローラ47は、図示しない搬送機構により、切断された線材(被処理コイルセグメント用の線材)6を搬送するNC制御を行う(ステップS3)。即ち、搬送のための制御データを展開して搬送機構の駆動機構に出力し対象となるサーボモータを駆動して所定長さに切断された直線状の線材(被処理コイルセグメント用の線材)6を、1次曲げ部4に搬送する。具体的には、線材(被処理コイルセグメント用の線材)6を、1次曲げ部4の初期状態に設定されている治具14A、14B、15A、15B、16A及び16Bまで搬送し、それらの凹溝14A−1、14B−1、15A−1、15B−1、16A−1及び16B−1内に挿入する。
【0077】
次いで、第1のNCコントローラ47は、この被処理コイルセグメントに関して、後述する1次曲げ処理を行う(ステップS4)。
【0078】
1次曲げ終了後、この被処理コイルセグメントに関する1次曲げ成形体を2次曲げ部5へ搬送し(ステップS5)、この被処理コイルセグメントに関して、後述する2次曲げ処理を行う(ステップS6)。
【0079】
2次曲げ終了後、この被処理コイルセグメントに関する2次曲げ成形体をコイル組立部2へ搬送する(ステップS7)。
【0080】
次いで、第2のNCコントローラ48は、この被処理コイルセグメントに関する2次曲げ成形体に関して、後述するコイル組立処理を行う(ステップS8)。このように、製造すべきコイルに応じて設定された制御情報に基づいて、各被処理コイルセグメント単位でその被処理コイルセグメントの成形からコイル組立まで一貫して行っているため、作業効率が大幅に向上する。また、成形したコイルセグメントを保管すること、保管したコイルセグメントから必要とするものを選択すること等が不要となるため、コイルセグメントの管理も非常に容易となる。
【0081】
次に、上述したステップS4の1次曲げ処理について、
図13に基づいて詳細に説明する。
【0082】
まず、第1のNCコントローラ47は、駆動機構21により線材6の中央角度の軽度の曲げ加工を開始するNC制御を行う(ステップS41)。即ち、中央角度の軽度の曲げ加工を行うための制御データを展開して駆動機構21に出力し対象となるサーボモータを駆動して線材6の中央角度の折り曲げ動作を開始させる。具体的には、制御データによって駆動機構21のサーボモータが作動し、可動ベース20A及び20Bが旋回してその上の治具14A、14B、15A、15B、16A及び16Bが軽度(例えば角度θ1の50%程度)に回転移動(旋回)し、線材6の中央角度の軽度の折り曲げが行われる。
【0083】
第1のNCコントローラ47は、駆動機構21の動作開始から僅かに遅れて(例えばスライダ25が30mm移動した時点で)、駆動機構27A及び27Bによりコイル幅調整のNC制御を行う(ステップS42)。即ち、コイル幅調整のための制御データを展開して駆動機構27A及び27Bへ出力し対象となるサーボモータを駆動してスライドプレート32A及び32Bを直線移動させる。これにより、スライドプレート32A及び32Bがホームポジションから与えられた制御データに応じた距離mを得るための移動量分移動して渡り部の各辺の長さ(コイル幅)の調整がなされる。
【0084】
次いで、第1のNCコントローラ47は、駆動機構21により線材6の中央角度が設定角度θ1まで折り曲げ加工するNC制御を行う(ステップS43)。即ち、中央角度を設定角度θ1とする曲げ加工を行うための制御データを展開して駆動機構21に出力し対象となるサーボモータを駆動して線材6の中央角度が設定角度θ1となるまで折り曲げ動作を行う。具体的には、制御データによって駆動機構21のサーボモータが作動し、可動ベース20A及び20Bが旋回してその上の治具14A、14B、15A、15B、16A及び16Bの回転移動(旋回)が行われ、線材6の中央角度が設定角度θ1まで折り曲げられる。
【0085】
中央角度が角度θ1まで曲げ終わったタイミングで、第1のNCコントローラ47は、駆動機構28A及び28Bにより線材6の肩部角度を折り曲げ加工するNC制御を行う(ステップS44)。即ち、肩部角度の曲げ加工を行うための制御データを展開して駆動機構28A及び28Bに出力し対象となるサーボモータを駆動して線材6の肩部角度の折り曲げ動作を行う。具体的には、制御データによって駆動機構28A及び28Bのサーボモータが作動し、旋回駆動プレート38A及び38BがDY+方向及びDZ+方向にそれぞれ所定距離移動すると共に旋回プレート34A及び34Bがその旋回中心44を中心にして旋回し、治具16A及び16Bが回転移動(旋回)して肩部角度が角度θ2まで折り曲げられる。
【0086】
中央角度θ1及び/又は肩部角度θ2は、スプリングバックを考慮して強めに曲げる観点から設定されている。この種の曲げ加工では、曲げた後に曲げ力を解除すると材質上の弾性で若干元に戻る、いわゆるスプリングバック現象が生じる。このスプリングバックによる戻り量は線材6の材質、フラットワイズ方向の幅d2、エッジワイズ方向の幅w2等のパラメータによって異なる。成形型でプレスする従来方式では、あらかじめスプリングバックの影響を考慮して成形面を設計しても、事後的にスプリングバックの影響が判明した場合には型を作製し直さなければならず、成形型作成費用が高騰してコイルセグメントの成形コスト、ひいては回転電機の製造コストに派生していた。成形型作成のやり直しが複数回となる場合には大幅なコスト上昇を招来していた。本実施形態では、スプリングバックの影響が判明した場合には制御データを補正するだけでやり直すことができるため、成形用部品の作り直しは一切発生せず、制御データの補正だけで迅速に対応できる。スプリングバックの影響を抑制できるデータを上記のパラメータであらかじめ実験により取得して制御テーブルを作成し、入力された線材6の種類に応じてスプリングバックを抑制できる成形条件が自動的に設定されるようにしてもよい。
【0087】
肩部角度が角度θ2まで折り曲げ終わった時点で、第1のNCコントローラ47は、移送機構12(
図1参照)により、1次曲げが終了した線材である1次曲げ成形体17Aを取り外すNC制御を行う(ステップS45)。即ち、取り外しのための制御データを展開して移送機構12の駆動機構に出力し対象となるサーボモータを駆動して1次曲げ成形体17Aをエアシリンダによる1対のチャック部で把持して、治具14A、14B、15A、15B、16A及び16Bから取り外し(凹溝からの引き上げ)、2次曲げ部5へ移送する(
図12のステップS5)。その後、第1のNCコントローラ47は、1次曲げ部4の駆動機構をリセットし、次に処理すべきコイルセグメントの1次曲げに備える。
【0088】
第1のNCコントローラ47による2次曲げ部5のNC制御及び第2のNCコントローラ48によるコイル組立部2のNC制御については後述する。
【0089】
以下、2次曲げ部5の構成及び曲げ動作について詳細に説明する。
【0090】
2次曲げ部5は、
図14に示すように、下面に凹状に湾曲した押圧面53A−1を有するブロック状の押圧治具53Aと、上面に押圧面53A−1に対応する凸状に湾曲した押圧面53B−1を有するブロック状の押圧治具53Bと、下面に凹状に湾曲した押圧面54A−1を有するブロック状の押圧治具54Aと、上面に押圧面54A−1に対応する凸状に湾曲した押圧面54B−1を有するブロック状の押圧治具54Bとを有している。1対の押圧治具53A及び53Bは、1次曲げ成形体17が保持されている平面(本実施形態では水平平面)と交差する交差方向(例えば直交する直交方向)で互いに対向するように配置されており、この交差方向に沿って互いに近接移動するように構成されている。1対の押圧治具54A及び54Bも、1次曲げ成形体17が保持されている平面(本実施形態では水平平面)と交差する交差方向(例えば直交する直交方向)で互いに対向するように配置されており、この交差方向に沿って互いに近接移動するように構成されている。1次曲げ成形体17が保持されている平面とは、1次曲げ成形体17が1次曲げ部3で曲げ加工がなされた平面である。即ち、1次曲げ成形体17は1次曲げ部3で曲げ加工された姿勢のまま移送部材12で2次曲げ部5へ移送され、その姿勢で2次曲げ部5の曲げ加工がなされる。
【0091】
図14において左上に位置している押圧治具53Aは、後述する支持部材に固定するためのボルト挿通孔53A−2及び53A−3を有しており、同図において右上に位置している押圧治具54Aも、同様に、ボルト挿通孔54A−2及び54A−3を有している。ボルト挿通孔53A−2及び53A−3は、押圧治具54Aに対する押圧治具53Aの水平方向の位置調整、換言すれば、押圧治具53A及び54Aを合わせて形成される1つの凹状に湾曲した押圧面の組み付け時の誤差を吸収するためにそれぞれ長穴形状となっている。
【0092】
図14において左下に位置している押圧治具53Bは、後述する支持部材に固定するためのボルト挿通孔53B−2及び53B−3を有しており、同図において右下に位置している押圧治具54Bも、同様に、ボルト挿通孔54B−2及び54B−3を有している。ボルト挿通孔53B−2及び53B−3は、押圧治具54Bに対する押圧治具53Bの水平方向の位置調整、換言すれば、押圧治具53B及び54Bを合わせて形成される1つの凸状に湾曲した押圧面の組み付け時の誤差を吸収するためにそれぞれ長穴形状となっている。
【0093】
前述したように、1次曲げ部4でU字形状に曲げ加工された1次曲げ成形体17は、山形形状をなす渡り部17aと、この渡り部17aによって連結され、互いに略平行に延びる1対のスロット挿入部17b及び17cとから構成されている。2次曲げ部5においては、まず、この1次曲げ成形体17の渡り部17aが、この1次曲げ成形体17の平面(本実施形態では水平平面)と交差する交差方向(例えば直交する直交方向)に湾曲状に曲げ加工される。具体的には、押圧治具53A及び54Aが成形すべきコイルセグメントの制御データに基づいて位置付けられることにより、即ち押圧治具53A及び54Aを互いに近接して隣り合う状態に移動させることにより、それらの押圧面53A−1及び54A−1が1つの凹状の湾曲面を構成した状態となり、また、押圧治具53B及び54Bが成形すべきコイルセグメントの制御データに基づいて位置付けられることにより、押圧治具53B及び54Bを互いに近接して隣り合う状態に移動させることにより、それらの押圧面53B−1及び54B−1が1つの凸状湾曲面を構成した状態となる。
【0094】
この状態で押圧治具53A及び54Aと押圧治具53B及び54Bとのいずれか一方又は双方が、1次曲げ成形体17の平面(水平平面)と直交する平面(垂直平面)内で上下方向に移動することにより、1次曲げ成形体17の渡り部17aが押圧されて湾曲形状に成形される。この押圧時に渡り部17aの表面に接触する押圧治具53A、53B、54A及び54Bの角部53A−4、53B−4、54A−4及び54B−4は、それぞれ、渡り部17aの絶縁層を傷付けないように面取りされている。
【0095】
押圧治具53A及び54Aを一体的なブロックとして構成するのではなく、互いに分割したブロックとして構成しているため、渡り部17aを湾曲形状に成形する曲げ加工工程と、渡り部17aの頂部にクランク形状の段差部を形成する曲げ加工工程とを、この2次曲げ部5で連続的に行うことができる。即ち、1次曲げ成形体17の平面(水平平面)と直交する平面(垂直平面)内で湾曲形状の曲げ加工とクランク形状の段差部の形成との2種類の曲げ加工工程を成形型(押圧治具)の交換をせずに行うことができる。押圧治具53B及び54Bについても同様である。また、これら押圧治具53A、53B、54A及び54Bの移動量をそれぞれ変えることにより、2種類の曲げ加工における制御条件を変化させることができ、これにより、種々のコイルセグメントの成形に対応することができる。
【0096】
図15は2次曲げ部5の各押圧治具の移動方向を示している。同図に示すように、押圧治具54Aの中心軸側(内側)の上下方向の厚さは押圧治具53Aの中心軸側(内側)の上下方向の厚さよりも大きくなるように設定されており、押圧治具53Bの中心軸側(内側)の上下方向の厚さは治具54Bの中心軸側(内側)の上下方向の厚さよりも大きくなるように設定されている。これら押圧治具53A、54A、53B及び54Bは、後述する駆動機構により、垂直平面内で上下方向(UY方向、UX方向、UU方向、及びUZ方向)に別個に移動可能となっている。押圧治具53A、54A、53B及び54Bそれぞれの移動方向及び移動速度を揃えることにより、押圧治具53A及び53Bは1つの押圧治具ユニット55として上下方向(UV方向)に移動可能であり、同様に、押圧治具54A及び54Bは1つの押圧治具ユニット56として上下方向(UW方向)に移動可能である。押圧治具ユニット55は水平方向(H方向)へも移動可能であり、従って上下方向への移動と水平方向への移動とを同時に行うことにより斜め方向(K方向)への移動が可能となる。押圧治具ユニット56は、上下方向の移動の他に、垂直平面内でR方向に回動(旋回)可能となっている。押圧治具ユニット56のこの回転により、1次曲げ成形体17の渡り部17aに湾曲形状(湾曲面)を成形する際のその湾曲面の曲率を可変調整できると共に、スロット挿入部17b及び17c間の幅が異なっている1次曲げ成形体17の渡り部17aに関しても湾曲面を成形することが可能となる。即ち、種々の形状のコイルセグメントに対する2次曲げ加工が可能となる。押圧治具53A、53B、54A及び54Bそれぞれの上下方向の移動、押圧治具ユニット55の水平方向の移動及び斜め方向の移動、並びに押圧治具ユニット56の旋回移動は、設定された移動量のデータ(制御データ)に基づいてそれぞれ数値制御(NC制御)される。なお、
図15、
図16及び
図17においては、各押圧治具53A、53B、54A及び54Bの支持部材に対する固定部分は、図示を省略している。
【0097】
次に、
図16を参照して、2次曲げ部5における曲げ加工動作の概要を説明する。なお、同図においては、1次曲げ成形体17はその加工対象である渡り部17aのみがハッチングで表わされている。
【0098】
図16(a)は押圧治具53A、53B、54A及び54Bが初期位置(ホームポジション)にある状態を示している。即ち、同図は、1次曲げ部4で曲げ加工されて得られた1次曲げ成形体17が移送部材12によって移送され、1次曲げ成形体17の1対のスロット挿入部17b、17cの自由端部が保持部材13によって保持され、その後、移送部材12が退避して2次曲げ部5における曲げ加工を開始可能な状態を示している。このホームポジションにおいては、互いに近接して隣り合う押圧治具53A及び54Aはそれらの上端面が同一面となるように位置しており、押圧治具53B及び54Bはそれらの下端面が同一面となるように位置している。この状態では、押圧治具53A及び54Aによる押圧面53A−1及び54A−1は両者間に段差を有しており、押圧治具53B及び54Bによるによる押圧面53B−1及び54B−1は両者間に段差を有している。
【0099】
図16(b)に示すように、ホームポジション状態から、押圧治具53A及び53Bからなる押圧治具ユニット55が一体的に左斜め下方向に移動され、その結果、押圧治具53Aと押圧治具54Aとの間に隙間gが形成されると共に、押圧治具53A及び54Aによる押圧面53A−1及び54A−1は両者間に段差のない滑らかな1つの凹状の湾曲面を構成しており、押圧治具53B及び54Bによる押圧面53B−1及び54B−1も両者間に段差のない滑らかな1つの凸状の湾曲面を構成している。
【0100】
この状態から、
図16(c)に示すように、まず、1対の押圧治具53B及び54Bを上昇させて渡り部17aの下面に当接させ、その状態で1対の押圧治具53A及び54Aを下降させて押圧動作を開始する。即ち、1対の押圧治具53A及び54Aの押圧面53A−1及び54A−1による凹状の湾曲面と、1対の押圧治具53B及び54Bの押圧面53B−1及び54B−1による凸状の湾曲面との間に渡り部17aを挟んで押圧動作を行い、渡り部17aをその水平平面に対して垂直の方向に湾曲させる。押圧動作がある程度進行した時点、換言すれば1次曲げ成形体17が位置ずれするおそれのなくなった時点で、保持部材13による保持(エアーシリンダによるチャッキング)が解除される。なお、この押圧動作における押圧治具の移動過程は上述した例に限定されず、1次曲げ成形体17が位置ずれしない範囲で種々の移動過程とすることが可能である。押圧動作の完了によって、渡り部17aの湾曲形状の成形である曲げ加工が終了する。
【0101】
渡り部17aの湾曲形状の成形が終了した後、押圧治具53A及び54Aの押圧面53A−1及び54A−1と押圧治具53B及び54Bの押圧面53B−1及び54B−1とが渡り部17aを挟持している状態で、
図16(d)に示すように、押圧治具53A及び54Aの上端面が同一面となり、かつし、押圧治具53B及び54Bの下端面が同一面となるように、押圧治具ユニット55(押圧治具53A及び53B)が右斜め上方向に移動される。これにより、渡り部17aの頂部にはクランク形状の段差部57が形成される。即ち、
図22(b)に示す押圧治具ユニット55の左斜め下方向への移動による隙間gは、渡り部17aへの湾曲形状の成形とクランク形状の段差部の形成とのために形成されたものである。
【0102】
従来技術のように押圧面の形状が固定された成形型を用いれば、渡り部17aに対する湾曲形状の成形とクランク形状の段差部の形成とを1回の押圧動作で同時に行うことは可能である。しかしながら、従来技術のように成形型が所望の湾曲形状及び段差形状をあらかじめ備えている成形方式によると、種々の形状の曲げ加工を行う場合に成形型をその都度を取り替える必要があった。また、成形型によって無理な曲げ加工が行われて線材の両面、場合によっては周面全体が押圧力を受けるため、線材の絶縁層に傷付きが発生するおそれがあった。即ち、曲げ加工精度を上げようとすると成形面のエッジが先鋭化するが、ここに応力が集中して絶縁層が傷付き易かった。また、成形型で押圧する方式では、実際に押圧してみないと絶縁層が傷付くかどうかわからず、不具合があった場合に成形型作製のやり直しが必要となり高コスト化を招来していた。これに対して本実施形態では、湾曲形状の成形とクランク形状の段差部の形成という複数種類の曲げ加工(成形)を別個に行うことにより、各曲げ加工工程(成形工程)を意図的に単純化し、押圧治具の移動によって行っている。このため、成形型を用いることによる上述した問題を解消することができ、湾曲形状の成形工程からクランク形状の段差部の形成工程間の移行も押圧治具の移動量の変更だけであるので迅速に行うことができ、成形型を用いて1工程で成形する従来技術と比べても成形時間にほぼ同じである。さらに、本実施形態では、湾曲形状の成形の曲げ加工では滑らかな湾曲面間に渡り部を挟んで押圧するので線材の絶縁層の傷付きは生じない。また、クランク形状の段差部の形成では、渡り部を挟持している対の押圧治具の位置をずらすだけであり、段差形状を有する成形面を押圧する構成ではないので、同様に絶縁層の傷付きは生じない。
【0103】
次に、
図17を参照して湾曲形状成形の曲げ加工における湾曲形状の曲率の調整動作について説明する。
図17(a)は曲率の調整動作を行う前の初期状態を示している。この状態は
図17(c)に示した状態に相当し、曲率半径はR1である。この状態から、図にて右側の押圧治具ユニット56を後述する曲率中心Cの回りを角度θだけ回動させると、
図17(b)に示すように、曲率半径がR1からR2(R1<R2)となり、曲率(1/R2)が小さくなる。即ち、押圧治具ユニット56の回動によって渡り部17aの湾曲形状における曲率を変化させることができ、渡り部17aの湾曲形状の曲率が異なる種々のコイルセグメントの曲げ加工を行うことができる。このことは、1次曲げ成形体17のスロット挿入部17b及び17c間の幅が異なる場合にも、曲率を調整して対応する曲げ加工が可能であることを意味する。
【0104】
次に、
図18〜
図22を参照し、2次曲げ部5の駆動機構を含む構成について詳細に説明する。
【0105】
図18に示すように、2次曲げ部5は、垂直平面(1次曲げ成形体17が保持されている水平平面に直交する平面)と平行に配置され、中央部に開口部58aを有する固定ベース58と、この固定ベース58と平行な左右方向に移動可能に設けられた可動ベース59と、この可動ベース59に固定され、押圧治具53Aを上下方向(UY方向)に移動させる駆動機構60Aと、可動ベース59に固定され、押圧治具53Bを上下方向(UU方向)に移動させる駆動機構60Bと、固定ベース58に固定され、可動ベース59を左右方向(UV方向)に移動させる駆動機構61と、固定ベース58に連結され、垂直平面内で曲率中心Cの回りを回動可能に設けられた回動ベース62と、この回動ベース62に固定され、押圧治具54Aを上下方向(UX方向)に移動させる駆動機構63Aと、回動ベース62に固定され、押圧治具54Bを上下方向(UZ方向)に移動させる駆動機構63Bと、回動ベース62に連結されており、この回動ベース62を上下方向(UW方向)に駆動することにより曲率中心Cの回りを回動させる駆動機構64とを備えている。なお、
図25に示すように、この固定ベース58は、長手方向(左右方向)の両側に固定されたL字形状の2つのブラケット94によって垂直に支持されている。
【0106】
駆動機構60Aは、上下方向に平行なUY方向の回転軸を有するボールネジ部65と、このボールネジ部65に螺合しておりUY方向に摺動可能なナット部66と、ボールネジ部65に螺合せずに単に回転軸に沿ってUY方向に摺動可能に設けられたスライダ67と、ボールネジ部65を回転駆動するサーボモータ68とを備えている。
【0107】
駆動機構60Bは、上下方向に平行なUU方向の回転軸を有するボールネジ部69と、このボールネジ部69に螺合しておりUU方向に摺動可能なナット部70と、ボールネジ部69に螺合せずに単に回転軸に沿ってUU方向に摺動可能に設けられたスライダ71と、ボールネジ部69を回転駆動するサーボモータ72とを備えている。
【0108】
駆動機構60Aのナット部66及び駆動機構60Bのスライダ71には押圧治具を支持する部材である移動プレート73が固定されており、移動プレート73の右側下端部には押圧治具53Aが複数のボルトネジで固定されている。従って、駆動機構60Aのサーボモータ68の動作によって押圧治具53AのみをUY方向に移動させることができる。また、駆動機構60Aのスライダ67と駆動機構60Bのナット部70には押圧治具を支持する部材である移動プレート74が固定されており、移動プレート74の図にて右側上端部には押圧治具53Bが複数のボルトネジで固定されている。従って、駆動機構60Bのサーボモータ72の動作によって押圧治具53BのみをUU方向に移動させることができる。移動プレート73及び74は、押圧治具53A及び53Bによる押圧加工精度を確保・維持するための剛性及び安定性を得るために駆動機構60A及び60Bに跨って支持されている。
【0109】
駆動機構63Aは、上下方向に平行なUX方向の回転軸を有するボールネジ部75と、このボールネジ部75に螺合しておりUX方向に摺動可能なナット部76と、ボールネジ部75に螺合せずに単に回転軸に沿ってUX方向に摺動可能に設けられたスライダ77と、ボールネジ部75を回転駆動するサーボモータ78とを備えている。
【0110】
駆動機構63Bは、上下方向に平行なUZ方向の回転軸を有するボールネジ部79と、このボールネジ部79に螺合しておりUZ方向に摺動可能なナット部80と、ボールネジ部79に螺合せずに単に回転軸に沿ってUZ方向に摺動可能に設けられたスライダ81と、ボールネジ部79を回転駆動するサーボモータ82とを備えている。
【0111】
駆動機構63Aのナット部76及び駆動機構63Bのスライダ81には押圧治具を支持する部材である移動プレート83が固定されており、移動プレート83の左側下端部には押圧治具54Aが複数のボルトネジで固定されている。従って、駆動機構63Aのサーボモータ78の動作によって押圧治具54AのみをUX方向に移動させることができる。また、駆動機構63Aのスライダ77と駆動機構63Bのナット部80には押圧治具を支持する部材である移動プレート84が固定されており、移動プレート84の左側上端部には押圧治具54Bが複数のボルトネジで固定されている。従って、駆動機構63Bのサーボモータ82の動作によって押圧治具54BのみをUZ方向に移動させることができる。移動プレート83及び84は、押圧治具54A及び54Bによる押圧加工精度を確保・維持するための剛性及び安定性を得るために駆動機構63A及び63Bに跨って支持されている。
【0112】
次に、
図18〜
図20を参照し、駆動機構60A及び60Bを支持する可動ベース59が左右に移動する構成及び可動ベース59を移動させる駆動機構61について説明する。なお、
図19は2次曲げ部5の片側部分(正面から見て左側半分)及び駆動機構61の周辺の構成を分解して表しており、
図20はこの部分の動作を表している。
【0113】
図18及び
図19に示すように、固定ベース58に固定された駆動機構61は、上下方向に平行なUV方向の回転軸を有するボールネジ部85と、このボールネジ部85に螺合しておりUV方向に摺動可能なナット部86及び87と、ナット部86及び87に固定されUV方向にスライド可能なスライドプレート88と、ボールネジ部85を回転駆動するサーボモータ89とを備えている。固定ベース58には、左右方向に延びる1対のレール部材90が互いに平行に上下2列で固定されている。可動ベース59の背面には2対の摺動部材91が固定されている。各対の摺動部材91は、各レール部材90に沿って摺動可能にこのレール部材90に係合している。これにより、可動ベース59は、UV方向(
図18参照)と直交する左右方向(水平方向)に移動可能に支持されている。
【0114】
図19及び
図20に示すように、可動ベース59にはその表面から突出するカムフォロア92が設けられており、スライドプレート88の背面にはこのカムフォロア92が係合して摺動する係合溝93がUV方向に対して傾斜して形成されている。
図16(c)に示す状態では、係合溝93に係合したカムフォロア92は
図20(a)に示す位置にある。駆動機構61のサーボモータ89が動作してスライドプレート88がUV+方向に上昇すると、スライドプレート88が上昇することにより係合溝93が上昇する。これにより、係合溝93内を摺動するカムフォロア92が、
図20(b)に示すように、図にて右方向へ案内されることとなり、このカムフォロア92が固定されている可動ベース59が
図20(b)に示す寸法Sだけ右方向に移動する。サーボモータ89を逆回転させれば、可動ベース59は逆方向に移動する。係合溝93の傾斜角及び/又は長さを変えることにより、可動ベース59の左右方向の移動量を変えることができる。可動ベース59の左右方向の移動量を変えることにより、渡り部17aに形成するクランク形状又は段差形状や、湾曲形状の曲率を変えることが可能となる。
【0115】
前述したように、押圧治具53A及び53Bからなる押圧治具ユニット55は駆動機構60A及び60Bによって上下方向に移動可能であるため、駆動機構61による左右方向の移動と駆動機構60A及び60Bによる上下方向の移動とを組み合わせて同時に行うことにより、押圧治具ユニット55の斜め移動が可能となる。例えば、駆動機構61によって可動ベース59を左方向に移動させるのと同時に、駆動機構60A及び60Bによって移動プレート73及び74を下方向に移動させることにより、
図16(a)に示すホームポジション状態から
図16(b)に示す状態に斜め移動が可能となる。また、駆動機構61によって可動ベース59を右方向に移動させるのと同時に、駆動機構60A及び60Bによって移動プレート73及び74を上方向に移動させることにより、
図16(c)に示す状態から
図16(d)に示す状態に斜め移動が可能となる。
【0116】
次に、
図21及び
図22を参照し、駆動機構63A及び63Bを支持する回動ベース62が回動する構成及び回動ベース62を回動させる駆動機構64について説明する。なお、
図21は2次曲げ部5の片側部分(正面から見て右側半分)及び駆動機構64の周辺の構成を分解して表しており、
図22はこの部分の動作を表している。
【0117】
これらの図に示すように、固定ベース58には共通の曲率中心Cを有すると共に互いに曲率の異なる円弧形状の1対のレール部材95及び96が左右方向に互いに離隔して固定されており、回動ベース62の背面には1対の摺動部材97及び1つの摺動部材98が固定されている。1対の摺動部材97はレール部材95に沿って摺動可能にこのレール部材95に係合しており、1つの摺動部材98はレール部材96に沿って摺動可能にこのレール部材96に係合している。駆動機構64は、上下方向に平行なUW方向の回転軸を有するボールネジ部99と、このボールネジ部99に螺合しておりUW方向に摺動可能なナット部104と、ナット部104に固定された係合部材101と、ボールネジ部99を回転駆動するサーボモータ102とを備えている。回動ベース62にはその表面から突出するカムフォロア103が設けられており、係合部材101の背面にはこのカムフォロア103が係合する係合溝101a(
図21参照)が設けられている。
【0118】
駆動機構64のサーボモータ102が動作して係合部材101がUW−方向に移動すると、その係合溝101aに係合しているカムフォロア103が移動することから、摺動部材97及び98がレール部材95及び96に沿って摺動し、回動ベース62は曲率中心Cを中心として反時計回り方向に回動する。即ち、
図22(a)に示す状態(中央位置)にある回動ベース62は、
図22(b)に示す状態に回動する。この回動部材62には押圧治具54A及び54Bが固定されているため、これらを一体とした押圧治具ユニット56が回動する。この場合、押圧治具53A、53B、54A及び54Bによる渡り部17aに対する湾曲形状成形時の曲率が大きくなる。逆に、回動ベース62を
図22(a)に示す中央位置から時計回り方向に回動させると、湾曲形状成形時の曲率を小さくすることができる。1対のレール部材95及び96によって安定に案内される回動ベース62の回動の中心である曲率中心Cは、押圧治具54A及び54Bの左端近傍となっており、これにより渡り部17aに対する湾曲形状成形時の曲率を高精度に変化させることができる。
【0119】
次に、2次曲げ部5の電気的構成を説明する。本実施形態において、2次曲げ部5は前述したように、6軸制御構成となっており、光通信ケーブル50には、UX方向駆動用のサーボモータ78の増幅及び駆動回路、UY方向駆動用のサーボモータ68の増幅及び駆動回路、UZ方向駆動用のサーボモータ82の増幅及び駆動回路、UU方向駆動用のサーボモータ72の増幅及び駆動回路、UV方向駆動用のサーボモータ89の増幅及び駆動回路、並びにUW方向駆動用のサーボモータ102の増幅及び駆動回路が接続されている。
【0120】
PLC46及び第1のNCコントローラ47は、
図12のステップS6の処理に対応する
図23のフローチャートに示すステップに基づいて、被処理コイルセグメントに関する1次曲げ成形体17に湾曲形状の成形及びクランク形状の段差部の形成を行う2次曲げ動作を制御する。以下、このフローチャートを用いて、2次曲げ動作を詳細に説明する。なお、以下の説明は、コイル幅が小さい、即ち渡り部の各辺の長さが小さい1次曲げ成形体17に2次曲げを行う場合である。
【0121】
第1のNCコントローラ47は、受信したコイル組立動作に関する制御データを展開し、指定されたアドレスの駆動機構のNC制御を実行する。まず、1次曲げ成形体17の寸法(形状)に応じた各押圧治具53A、53B、54A及び54Bの配置移動についてのNC制御を行う(ステップS61)。即ち、押圧治具の移動量に関する制御データを展開して、押圧治具53A及び54Aによる凹状の湾曲面、押圧治具53B及び54Bによる凸状の湾曲面が所定の曲率となるように2次曲げ部5の駆動機構60A、60B、63A及び63Bへ出力し対象となるサーボモータを駆動して押圧治具を移動させる。
図16(b)はこの状態を示している。
【0122】
次いで、第1のNCコントローラ47は、1次曲げ成形体17の渡り部17aを軽度に押圧する軽度押圧処理(軽度プレス処理)を実行するNC制御を行う(ステップS62)。即ち、押圧処理のための制御データを展開して2次曲げ部5の駆動機構に出力し対象となるサーボモータを駆動して軽度の押圧処理を行い、1次曲げ成形体17が位置ずれしないようにする。
【0123】
次いで、第1のNCコントローラ47は、保持部材13による1次曲げ成形体17の保持を解除するNC制御を行う(ステップS63)。即ち、1次曲げ成形体17を保持部材13から解放する制御データを展開して保持部材13の駆動機構に出力し、エアシリンダを駆動してチャックによるスロット挿入部17b及び17cの把持を解除させる。
【0124】
次いで、第1のNCコントローラ47は、渡り部17aを湾曲形状に曲げ加工する湾曲成形のNC制御を行う(ステップS64)。即ち、押圧のための制御データを展開して駆動機構60A、60B、63A及び63Bへ出力し対象となるサーボモータを駆動して押圧処理を行う。
【0125】
この種の曲げ加工(押圧処理)では、曲げた後に押圧力を解除すると材質上の弾性で若干元に戻る、いわゆるスプリングバック現象が生じる可能性がある。このスプリングバックによる戻り量は線材6の材質、湾曲形状の曲率等のパラメータによって異なる。成形型で押圧して成形する従来方式では、あらかじめスプリングバックの影響を考慮して成形面を設計しても、事後的にスプリングバックの影響が判明した場合には型を作製し直さなければならず、成形型作成費用が高くなりコイルセグメントの成形コスト、ひいては回転電機の製造コスト上昇を招いていた。成形型作成のやり直しが複数回となる場合には大幅なコスト上昇となっていた。本実施形態では、スプリングバックの影響が判明した場合には、例えば押圧時間を長くする、押圧治具の押圧方向への移動量を多めにするなど制御データの補正だけで修正して対応できる。スプリングバックの影響を抑制できるデータを上記のパラメータであらかじめ実験により取得して制御テーブルを作成しても良いし、入力された線材6の種類や1次曲げ成形体17の形状等に応じてスプリングバックを抑制できる成形条件が自動的に設定されるようにしても良い。
【0126】
次いで、第1のNCコントローラ47は、駆動機構61により押圧治具ユニット55(押圧治具53A及び53B)を斜めに移動させてクランク形状の段差部を形成するNC制御を行う(ステップS65)。即ち、段差部を形成するための制御データを展開して駆動機構61に出力し、サーボモータ89を駆動して可動ベース59を右方向に移動しつつ、制御データを駆動機構60A及び60Bに出力し、サーボモータ68及び72を駆動して押圧治具53A及び53Bを互いに同期した状態で上方向に移動させることにより、押圧治具53A及び53Bからなる押圧治具ユニット55を右斜め上方に移動させる。
【0127】
段差部を形成した後、第1のNCコントローラ47は、押圧状態を一部解除するNC制御を行う(ステップS66)。即ち、左側の押圧治具53A及び53Bを移動させるための制御データを展開して駆動機構60A及び60Bに出力し、サーボモータ68及び72を駆動して押圧治具53A及び53Bが押圧位置から離れるように制御する。
【0128】
左側の押圧治具53A及び53Bが押圧位置から離れるタイミングで、第1のNCコントローラ47は、2次曲げが終了した線材である2次曲げ成形体17を把持してコイル組立部2へ移送する準備のためのNC制御を行う(ステップS67)。即ち、移送のための制御データを展開して図示しないローダの駆動機構に出力し、エアシリンダを駆動して2次曲げ成形体17を1対のチャックで把持する。
【0129】
その後、第1のNCコントローラ47は、2次曲げ部5の駆動機構をリセットし、次のコイルセグメント(1次曲げ成形体)の2次曲げに備える。
【0130】
上述したように本実施形態では、1次曲げ部4の曲げ加工領域と2次曲げ部5の曲げ加工領域とは1つの平面内で重ならず、個別に存在する。即ち、従来のように3次元形状の型を用いて一度にプレス成形する考えを脱却し、敢えて別工程とすることにより、1次曲げ部4と2次曲げ部5における曲げ加工の動き及び構成を単純化し、これによって数値制御による加工を実現したものである。
【0131】
なお、上述した2次曲げ加工動作においては、1次曲げ成形体17の渡り部17aの頂部にクランク形状の段差部を形成しているが、レーンチェンジのために1次曲げ成形体17の1対のスロット挿入部を互いにスロットの径方向にずらす「ずれ」であれば、段差に限定されることなく、滑らかなものであっても良いし、いかなる形状のものであっても良い。
【0132】
以下、コイル組立部2の構成及び動作について詳細に説明する。
【0133】
コイル組立部2は、
図25、
図26及び
図29に示すように、コイルセグメント17Sを順次搬送するセグメント搬送手段110と、
図24A〜
図24F、及び
図29に示すように、複数のコイルセグメント17Sを放射方向外側からそれぞれ挿入可能な複数のセグメント保持部109が周方向に沿って円環状に配列されているセグメント配置ドラム105(本発明のセグメント配置体に対応する)と、複数のコイルセグメント17Sを複数のセグメント保持部109にそれぞれ案内して挿入させる1段構成のガイド部材112(本発明のガイド手段に対応する)とを備えている。セグメント配置ドラム105は、その中心軸C(回転軸121)の回りを図示しないインデックス回転駆動機構によって所定角度ずつ回転するように構成されている。ガイド部材112は、セグメント配置ドラム105の上方に配置されており、このセグメント配置ドラム105が第1の所定角度回転する毎に各コイルセグメント17Sの1対のスロット挿入部17b及び17cのうちの一方のスロット挿入部(前脚)17bを1つのセグメント保持部109に案内して挿入させ、この一方のスロット挿入部17bの挿入から第2の所定角度回転した際に、他方のスロット挿入部(後脚)17cを他の1つのセグメント保持部109に案内して挿入させるように構成されている。
【0134】
コイル組立部2は、
図24A〜
図24F、及び
図29に示すように、セグメント配置ドラム105の複数のセグメント保持部109内に挿入された複数のコイルセグメントがこれら複数のセグメント保持部109から離脱しないように支持する離脱防止手段106を有している。離脱防止手段106は、セグメント配置ドラム105の周面に沿って当接し、セグメント配置ドラム105の回転に伴って連れ回り(従動回転)する柔軟な当接部材としてのゴム製のベルト107(本発明のベルト体に対応する)を備えている。ベルト107は幅が3cm程度の細幅に形成されており、セグメント配置ドラム105の軸方向の複数箇所(ここでは2箇所)において、セグメント配置ドラム105の周方向の一部を覆うようにループ状に配置されている。ただし、ベルト107は、コイルセグメント17Sが案内される、セグメント配置ドラム105の上方には配置されていない。この離脱防止手段106の構成の詳細については後述する。
【0135】
セグメント配置ドラム105は、その回転の中心軸Cが水平となり、従って複数のコイルセグメント保持部109が同じく水平となるように配置されている。このセグメント配置ドラム105は、本実施形態では、
図24Aにおいて反時計回りに回転可能に支持されている。換言すれば、セグメント配置ドラム105は、その中心軸Cが、2次曲げ部5での曲げ加工が完了した状態のコイルセグメント17Sの軸線方向(スロットへの挿入方向)と略平行となるように水平配置されている。
【0136】
セグメント配置ドラム105の内部には軸方向に延びる区画壁である複数のブレード108がセグメント配置ドラム105の周方向に沿って円環状に配列され中心軸Cから放射方向に伸長して設けられており、これら複数のブレード108間に複数のセグメント保持部109がそれぞれ形成されている。複数のブレード108の放射方向の高さは、これらが放射方向に摺動することによって可変となっている。これら複数のブレード108の放射方向の高さ、即ちセグメント配置ドラム105の放射方向外側への突出量は、全てのブレード108について同時に調整できるように構成されている。この調整構造については後述する。離脱防止手段106のベルト107は実質的にブレード108に当接している。
【0137】
2次曲げ部5において曲げ加工が完了した被処理コイルセグメント17Sは、セグメント搬送手段110によって2次曲げ部5から平行移動で搬送され、セグメント配置ドラム105のセグメント保持部109に案内及び挿入される。
図25に示すように、このセグメント搬送手段110は、コイルセグメント17Sの1対のスロット挿入部17b及び17cのうちの一方のスロット挿入部(後脚)17cを把持するチャック部111を備えており、セグメント搬送手段110全体が上下方向(Z(−)(+)方向)及び水平方向(X(−)(+)方向)に移動可能となっている。X(−)(+)方向は2次曲げ部5とセグメント配置ドラム105との間をセグメント搬送手段110が行き来する方向である。また、チャック部111は垂直面内をR方向に回動可能となっており、コイルセグメント17Sの一方のスロット挿入部(後脚)17cを把持した状態でその姿勢を変化できるように構成されている。
【0138】
図25は、2次曲げ部5における曲げ加工が完了し、その押圧治具から解放される前に被処理コイルセグメント17Sがセグメント搬送手段110によって把持されて移動している状態を示している。セグメント搬送手段110のチャック部111は、コイルセグメント17Sのコイル組立部側(セグメント配置ドラム105側)に向って移動する際に後側となる他方のスロット挿入部(後脚)17cを把持している。コイルセグメント17Sがセグメント配置ドラム105に搬送される前に、セグメント搬送手段110のチャック部111が上方(R(+)方向)に回動して前側の一方のスロット挿入部(前脚)17bが斜め下になるようにコイルセグメント17Sの姿勢が傾けられる。
【0139】
このセグメント搬送手段110の構成をより詳細に説明すると、セグメント搬送手段110は、
図25に示すように、図示しない駆動機構により水平方向(X(−)(+)方向)及び上下方向(Z(−)(+)方向)に移動可能に設けられたベース157と、このベース157に回動可能に取付けられたチャック部111と、チャック部111をR(−)(+)方向に回動させる駆動機構158とを有している。駆動機構158は、X(−)(+)方向に平行な回転軸を有するボールネジ部159と、このボールネジ部159に螺合しておりX(−)(+)方向に摺動可能なナット部160と、ボールネジ部159を回転駆動するサーボモータ161と、ナット部160に固定されており、ボールネジ部159の回転に伴ってX(−)(+)方向に移動するスライダ162とを有している。
【0140】
このスライダ162は上下方向に伸長する長方形状を有しており、その下端部の裏面には、ブラケット163を介して駆動爪164が固定されている。また、ベース157の裏面側には、
図26に示すように、円弧状のレール165が固定されており、チャック部111はレール165に嵌合して旋回する旋回ベース166に支持されている。旋回ベース166にはチャック部111を開閉するエアシリンダ167が設けられている。
図25に示すように、旋回ベース166の表面側にはカムフォロア168が設けられており、駆動爪164にはカムフォロア168に係合する凹溝164aが形成されている。駆動機構158のサーボモータ161が動作してスライダ162がX(−)方向に移動すると、チャック部111がR(−)方向に回動し、スライダ162がX(+)方向に移動すると、チャック部111がR(+)方向に回動する。従って、サーボモータ161の動作を制御することにより、コイルセグメント17Sの傾きを変化させることができる。
【0141】
図24Aに示すように、セグメント配置ドラム105の上方には、セグメント配置ドラム105の周面に沿ったガイド面112cを有しコイルセグメント17Sをセグメント配置ドラム105の所定のセグメント保持部109に案内するガイド部材112が図示されていないフレームに支持されて設けられている。このガイド部材112は、
図29に示すように、セグメント配置ドラム105の軸方向に伸長しており、このセグメント配置ドラム105の周面と間隔をおいて配置されている。ガイド部材112は、
図27に示すように、複数(この例では3つ)の細幅のガイド片112aと、これらガイド片112aとを互いに離隔させて支持するブラケット112bとを備えている。ブラケット112bはセグメント配置ドラム105の軸方向に沿って設けられており、ガイド片112aはブラケット112bと直交する方向に伸長している。ブラケット112bは、前述したように、図示しないフレームに固定されている。
【0142】
コイルセグメント17Sは、セグメント搬送手段110のチャック部111で把持された状態でその前脚17bが、
図27に示すように、ガイド部材112の下側(ガイド部材112とセグメント配置ドラム105との間)を通り、その後脚17cがガイド部材112の上側(ガイド部材112のセグメント配置ドラム105とは反対側)を通るように搬送される。
図24Aに示すように、コイルセグメント17Sの前脚17bが基準点であるセグメント保持部109aの上方に達したときにセグメント搬送手段110が下降するように構成されている。本実施形態における基準点は、セグメント配置ドラム105の上部中央に位置するブレード108とセグメント配置ドラム105の回転方向の下流側に隣接するブレード108との間のセグメント保持部109aに設定されているが、基準点はこれに限定されない。セグメント搬送手段110が下降してコイルセグメント17Sの前脚17bがセグメント保持部109a内に挿入されたことが、ガイド部材112の下面に配置された検知センサ170で検知されると、セグメント搬送手段110のチャック部111がコイルセグメント17Sを解放する。これにより、コイルセグメント17Sの後脚17cはガイド部材112の上に載る。
【0143】
コイルセグメント17Sの前脚17bがセグメント保持部109a内に挿入されたことが検知されると、セグメント配置ドラム105が1スロット分の第1の所定角度だけ、即ちセグメント保持部109の1つ分の第1の所定角度だけ、図にて反時計回り方向に回転するように制御される(インデックス回転)。コイルセグメント17Sの前脚17bはセグメント保持部109に収容されて拘束されているため、セグメント配置ドラム105が回転すると、そのコイルセグメント17Sの後脚17cはガイド面112cを摺動しながら移動する。セグメント配置ドラム105が1スロット分回転すると、最初の基準点であるセグメント保持部109aの回転方向上流側に隣接するセグメント保持部109bが次に配置されるコイルセグメント17Sの基準点となる。前脚17bが基準点のセグメント保持部109に円滑に挿入されるようにするために、各ブレード108のセグメント配置ドラム105の回転方向における上流側は面取りされてテーパ面108bとなっている。なお、本実施形態においては、1周のスロット数が36であるため、セグメント配置ドラム105の1スロット分の角度、即ち第1の所定角度は10度となる。
【0144】
次に、複数のコイルセグメント17Sがセグメント配置ドラム105の周面の複数のセグメント保持部109内に順次挿入されて配置されていく動作を説明する。なお、図においてはコイルセグメント17Sをその前脚及び後脚の端面のみで表示し、前脚は白抜きで、後脚は×でそれぞれ区別して表示している。
【0145】
図24Bは、3つのコイルセグメント17Sの前脚17bがそれぞれセグメント配置ドラム105のセグメント保持部109内に挿入され、それぞれの後脚17cがガイド面112c上に載っている状態を示している。
図24Bにおいて、符号17b−1、17b−2及び17b−3はそれぞれ1番目から3番目のコイルセグメント17Sの前脚を、17c−1、17c−2及び17c−3はそれぞれ1番目から3番目のコイルセグメント17Sの後脚を示している。
【0146】
図24Cは、1番目のコイルセグメント17Sの後脚17c−1がガイド部材112から離れて落下する状態を示している。後脚17c−1がガイド部材112から離れたコイルセグメント17Sは、既にセグメント配置ドラム105のセグメント保持部109内に挿入されている前脚17b−1を支点として重力で回動し、後脚17c−1は制御をしなくても自重で所定のセグメント保持部109内に挿入される。本実施形態では、コイルセグメント17Sの幅により、前脚17b−1が挿入されたセグメント保持部109から数えてセグメント配置ドラム105の回転方向上流側に8番目のセグメント保持部109に後脚17c−1が挿入される。換言すれば、セグメント配置ドラム105が8スロット分の第2の所定角度だけ、即ちセグメント保持部109の8つ分の第2の所定角度だけセグメント配置ドラム105が回転すると、後脚17c−1がセグメント保持部109内に挿入される。なお、セグメント保持部109内に挿入された前脚の、セグメント配置ドラム105の周面に対する姿勢は、インデックス回転が進行するにつれてその相対角度が小さくなっていく、即ちその姿勢が周面と平行に寝ていく。本実施形態においては、1周のスロット数が36であるため、セグメント配置ドラム105の8スロット分の角度、即ち第2の所定角度は80度となる。ただし、この第2の所定角度は、コイルセグメントのコイル幅に応じて異なる。
【0147】
図24Dは、1〜3番目のコイルセグメント17Sの後脚がセグメント保持部に案内及び挿入されて8〜10番目のコイルセグメント17Sの前脚の上に載り、さらに4番目のコイルセグメント17Sの後脚がガイド部材112から離れた状態を示している。
図24Dから明らかにように、例えば、1番目のコイルセグメント17Sの後脚17c−1は、8番目のコイルセグメント17Sの前脚17b−8の上に挿入されて配置される。これは、
図24Aに示すように、コイルセグメント17Sの渡り部17aに形成された段差17a−1によって後脚17c−1がセグメント配置ドラム105の放射方向外側にずれることによる、いわゆるレーンチェンジが可能であるからである。換言すると、1番目のコイルセグメント17Sの前脚17b−1は1層目に配置され、後脚17c−1は2層目に配置されることになる。
【0148】
同様の動作が行われて、全てのコイルセグメント17Sの後脚についての1周目の挿入及び配置が完了すると、
図24Eに示すように、コイルセグメント17Sの2層の配置が完了する。全てのコイルセグメント17Sについて1周目の配置が完了すると、
図24Fに示すように、2周目の1番目のコイルセグメント17Sの挿入及び配置が始まる。なお、2周目の挿入及び配置が始まる前に各ブレード108がセグメント配置ドラム105の放射方向外側に突出される。ブレード108の突出量は、既に挿入されているコイルセグメントの合計厚さよりも大きくなるように設定される。コイルセグメントの合計厚さに対するブレード108の突出量の裕度(高さYt)は、コイルセグメント17Sの前脚及び後脚を安定して挿入及び配置できかつ新たな挿入を阻害しない範囲であり、例えば、4mmである。
【0149】
ブレード108の突出動作が完了した状態で、2周目のコイルセグメント17Sの1番目の前脚17b−1が基準点のセグメント保持部109aに挿入され、後脚17c−1はガイド部材112上に載る。その後、1周目と同じように順次コイルセグメント17Sが挿入されて行き、セグメント配置ドラム105が1回転すると2周目の挿入及び配置が完了し、配置済みのコイルセグメント17Sは4層となる。ブレード108を最初から目的の層の厚みに対応した突出量としておくとセグメント保持部が深くなって円滑な挿入動作が阻害されるため、上記のように層厚みに対応した段階的な突出動作としている。層が増えていくとセグメント配置ドラム105の周面の径が変化するため、ブレード108の突出動作に対応して、後述するように、ブレード108に対するベルト107の当接圧を一定に保つための調節が行われる。
【0150】
上述した実施形態においては、コイル組立部2に供給されるコイルセグメントが、
図28に示すように、基本的に同じ形状のコイルセグメント17Sを同じパターンで順次並べた配列となっている。即ち、10個のコイルセグメントを単純に配列して展開すると、1番目〜3番目のコイルセグメントの後脚が、8番目〜10番目のコイルセグメントの前脚の上にそれぞれ配置されることとなる。
【0151】
上述べたように、本実施形態によれば、所定の形状に曲げ加工がなされた被処理コイルセグメント17Sを曲げ加工時の水平に寝た状態のまま水平に配置したセグメント配置ドラム105の上方に搬送し、セグメント配置ドラム105を所定角度ずつ回転させながらコイルセグメント17Sをセグメント保持部に連続的に挿入するように構成している。このように、セグメント配置ドラム105を水平状態に配置し、その上方からコイルセグメント17Sを案内しているので、コイルセグメント17Sの前脚だけをセグメント配置ドラム105の所定のセグメント保持部に挿入すれば、後脚は自重で自動的に挿入される。このため、従来に比べて自動化が容易であり、迅速にかつ効率良くコイルを組み立てることができる。
【0152】
次に、
図25〜
図27及び
図29〜
図33に基づいて、本実施形態のコイル組立部2の具体的な構成について詳細に説明する。
【0153】
図29及び
図30に示すように、コイル組立部2は、ベース116と、このベース116上にその回転の中心軸Cである回転軸121が水平となるように配置され、回転可能に支持されたセグメント配置ドラム105と、ベルト107を有する離脱防止手段106と、セグメント配置ドラム105を回転駆動する駆動源であるサーボモータ117と、ブレード108の突出量を変更するブレード調整機構118と、セグメント配置ドラム105の円環状に配列されたセグメント保持部109に挿入され保持された所定数(上述した実施形態では36個)のコイルセグメントからなる組立コイルを、セグメント配置ドラム105の軸方向に押し出す押し出し機構119と、セグメント配置ドラム105を挟んで押し出し機構119の反対側に配置されたワーク支持台120と、前述したセグメント搬送手段110と、1段構成のガイド部材112とを有している。
【0154】
セグメント配置ドラム105は、その回転軸121を回転中心として回転可能に支持されている。このセグメント配置ドラム105の組立コイル押し出し方向(P(+)方向)と反対側には、回転軸121を支持する円板状の軸受122が配置されており、さらに、この回転軸121には大径ギア123が同軸に固定されている。この大径ギア123にはサーボモータ117の回転軸に固定された図示しない小径ギアが噛合されている。従って、サーボモータ117が回転すると、回転軸、小径ギア及び大径ギア123を介してセグメント配置ドラム105が回転駆動される。これら小径ギア及び大径ギア123の噛合による減速構造により、サーボモータ117によるセグメント配置ドラム105のインデックス回転の精度を上げることができる。
【0155】
軸受122は、ベース116に底部が固定された受け部124に支持されており、これによってセグメント配置ドラム105は片持ち支持されている。ただし、セグメント配置ドラム105のコイルセグメント17Sが配置される部分が前述したように離脱防止手段106で保持されているので、このセグメント配置ドラム105は安定した回転が可能となる。サーボモータ117と、サーボモータ117の回転軸と、この回転軸に固定された小径ギアと、この小径ギアに噛み合う大径ギア123と、サーボモータ117を制御する後述の制御部49とにより、コイルセグメント17Sの前脚17bが配置される毎にセグメント配置ドラム105を所定角度(第1の所定角度)ずつ回転させるインデックス回転機構が構成される。
【0156】
ブレード調整機構118は、
図30及び
図31に示すように、セグメント配置ドラム105の回転軸121と平行な回転軸を有するボールネジ部125と、このボールネジ部125に螺合しており回転軸と平行なP(−)(+)方向に摺動可能なナット部126と、ボールネジ部125を回転駆動するサーボモータ127と、基部がナット部126に固定されており、ボールネジ部125の回転に伴ってP(−)(+)方向に摺動するスライド部材128と、回転軸121に固定され、スライド部材128の先端部の凸部が係合する係合部129と、セグメント配置ドラム105の内部において回転軸121に固定された複数(図示の例では2つ)の中空の円錐カム130(
図31参照)とを有している。
【0157】
スライド部材128は、ナット部126に固定された基部と、この基部からボールネジ部125に沿って伸長する互いに平行な1対のアーム128a及び128bとを有している。1対のアーム128a及び128bの先端には内側に突出した1対の凸部がそれぞれ形成されており、これら1対の凸部が係合部129の環状溝129aにカムフォロア式に係合されている。これにより、回転軸121と係合部129とが共に回転している場合にも、スライド部材128と係合部129とは低摩擦下で連結された状態となっている。従って、サーボモータ127が回転してボールネジ部125が回転し、これによりナット部126及びスライド部材128がボールネジ部125に沿って摺動すると、その摺動に合わせて回転軸121がその摺動方向に移動することとなる。
【0158】
図31に示すように、セグメント配置ドラム105の各ブレード108には斜めに延びる溝108aが形成されており、この溝108aに円錐カム130は摺動可能に挿入されている。従って、サーボモータ127が回転して回転軸121がP(−)方向に移動するとブレード108がセグメント配置ドラム105の放射方向外側に向って突出し、回転軸121がP(+)方向に移動するとブレード108がセグメント配置ドラム105の放射方向内側に向って引込まれることとなる。このように、サーボモータ127の回転量及び回転方向を制御することでブレード108の突出量を調整することができる。
【0159】
押し出し機構119は、
図29に示すように、回転軸121と平行な回転軸を有するボールネジ部131と、このボールネジ部131に螺合しておりP(−)(+)方向に摺動可能なナット部132と、ボールネジ部131を回転駆動するサーボモータ133と、ナット部132に固定されており、ボールネジ部131の回転に伴ってP(−)(+)方向に移動するスライド部材134と、セグメント配置ドラム105の周面に軸方向(P(−)(+)方向)に摺動可能に配置され、スライド部材134が係合する押圧リング135とを有している。
【0160】
スライド部材134は、ナット部132に固定された基部と、この基部からボールネジ部131に沿って伸長する互いに平行な1対のアーム134a及び134bとを有している。1対のアーム134a及び134bの先端には内側に突出した1対の凸部がそれぞれ形成されており、これら1対の凸部が押圧リング135の環状溝135aにカムフォロア式に係合されている。これにより、押圧リング135がセグメント配置ドラム105の周面との摩擦で回転してもスライド部材134と押圧リング135とは低摩擦下で連結された状態となっている。従って、サーボモータ133が回転してボールネジ部131が回転し、これによりナット部132及びスライド部材134がボールネジ部131に沿って摺動すると、その摺動に合わせてセグメント配置ドラム105がその摺動方向に移動することとなる。
【0161】
ワーク支持台120は、ベース136と、このベース136に支柱137を介して固定されたV字状の凹部138aを有するワーク載置部138と、ベース136の上面両側に形成された一対のレール136aとを有している。
【0162】
離脱防止手段106は、
図32及び
図33に示すように、セグメント配置ドラム105の放射方向の側部にこのセグメント配置ドラム105を挟んで互いに対向して配置されかつ上下方向に伸長する1対のアーム139A及び139Bを有している。これら1対のアーム139A及び139Bは、それぞれの略中央部に設けられた軸140をアーム支点として回動可能に支持されており、それらの上端部がセグメント配置ドラム105の周面に接離できるように構成されている。アーム139Aの下端部はP(−)(+)方向と直交する方向に摺動するラック部材141Aにカムフォロアを介して連結されており、アーム139Bの下端部はP(−)(+)方向と直交する方向に摺動するラック部材141Bにカムフォロア連結されている。ラック部材141A及びラック部材141Bは共にピニオンギア142に噛合しており、このピニオンギア142を介して連結されている。ラック部材141Aはサーボモータ143に連結されており、このサーボモータ143が回動することにより、ラック部材141Aのみならずラック部材141Bも摺動し、その結果、1対のアーム139A及び139Bが同期して回動する。
【0163】
1対のアーム139A及び139Bの上部にはこれら1対のアームに垂直に交わるようにそれぞれ固定された1対の水平バー144が設けられている。これら1対の水平バー144の各々の両端部には、1対のホルダ145がそれぞれ固定されている。従って、1対の水平バー144の両端部に、計2対のホルダ145が設けられていることとなる。これら2対のホルダ145には、それぞれ、ベルト用の2対の可動プーリ146が回転自在に支持固定されている。離脱防止手段106のフレームには、2つの固定プーリ147が回転自在に支持固定されており、2つの小径の固定プーリ148が回転自在に支持固定されており、さらに、テンションプーリ149がこれら固定プーリ148間に回転自在に支持固定されている。これら2つの固定プーリ147、2つの小径の固定プーリ148、及びテンションプーリ149は、2対の可動プーリ146に対応して、もう1組設けられている。
【0164】
セグメント配置ドラム105の軸方向に並んで配置された1対のベルト107のうちの一方のベルトは、ホルダ145に固定された可動プーリ146と、2つの固定プーリ147と、2つの小径の固定プーリ148と、テンションプーリ149とに掛けまわされ、セグメント配置ドラム105の下側周面を覆うように構成されている。テンションプーリ149は、その支持軸150を介してエアシリンダ151に接続されている。エアシリンダ151の動作でテンションプーリ149が上下方向に変位することでセグメント配置ドラム105の周面に対するベルト107の当接圧を可変調整することができる。1対のベルト107の他方のベルトも同様の構成を有しており、同様の動作が行われるように構成されている。
【0165】
1対のアーム139A及び139Bの各々には、上下方向に離隔して複数のネジ孔139aが2列で形成されており、これによって水平バー144の上下方向の固定位置を調整できるように構成されている。
図33に示すように、水平バー144の各々には、上下方向に延びる長穴形状の2つの固定用孔144aが形成されており、これら固定用孔144aを挿通するネジ144bによって、水平バー144は、上下方向に微調整可能にアーム139A又は139Bに固定される。水平バー144の上下方向の固定位置調整を行うことによって、セグメント配置ドラム105の径の変化に対応することができる。なお、1対のベルト107のセグメント配置ドラム105の周面に対する当接圧調整は、各ベルト毎に独立して調整可能である。
【0166】
次に、本実施形態の回転電機の製造装置において、セグメント配置ドラム105で組み立てられたコイルをコア152内に挿入する構成及び動作について説明する。
【0167】
コイル組立部2においては、上述したように、セグメント配置ドラム105の周面に複数のコイルセグメント17Sが配置されてコイルの組み立てが行われる。次いで、組み立てられたコイルが回転電機のコア152内に挿入される。その場合、まず、コア152をセットしたワーク支持台120が、コイル組立部2のベース116に連結される。
図34は、ワーク支持台120にコア152をセットし、セグメント配置ドラム105上の組立コイルをコア152内に挿入できるようにワーク支持台120をベース116に連結した状態を示している。即ち、ワーク支持台120をベース116から離隔させた状態でワーク載置部138にコア152を載置し、挿入ガイドユニット153を支持するカフスサポータ154をワーク支持台120のP(−)方向からレール136aを介して移動させてリング形状をなす挿入ガイドユニット153とコア152とを連結する。その後、セグメント配置ドラム105に挿入ガイドユニット153が対向するように、コイル組立部2のベース116にワーク支持台120を連結する。なお、
図34においては、ガイド部材112は図示を省略している。
【0168】
挿入ガイドユニット153は、
図35に示すように、セグメント配置ドラム105と対向する側にカフスサポータ154を有し、反対側にコア152と嵌合する凹部153aを有している。カフスサポータ154は、コア152の各スロットに挿入された絶縁紙のカフス部155を保護するためのものであり、周方向に沿って放射状に配置された複数の突起154a間に、コア152のカフス部155が挿入されるように構成されている。複数の突起154aは、図示されていない駆動機構によって放射方向に同時に摺動できるように構成されている。
【0169】
セグメント配置ドラム105において、所定数のコイルセグメント17Sによる所定数層の挿入が行われてコイル組立が完了すると、押し出し機構119のサーボモータ133が回動し、スライド部材134がP(+)方向に移動して押圧リング135がセグメント配置ドラム105の周面に沿ってP(+)方向に移動する。押圧リング135のP(+)側には、組立コイルのコイルエンド部(渡り部)側を周方向全体に亘って収容する凹部が設けられている(図示無し)。この凹部にコイルエンド部が収容された組立コイルは、セグメント配置ドラム105の周面に沿って移動し、
図36に示すように、組立コイルのコイルエンド部(渡り部)が挿入ガイドユニット153に挿入される。即ち各コイルセグメント17Sの前脚及び後脚の端部が挿入ガイドユニット153の各突起154a間に入り込む。セグメント配置ドラム105のブレード108に組立コイルのコイルエンド部(渡り部)が干渉する直前のタイミング、又は押圧リング135が離脱防止手段106に突き当たる直前のタイミングでサーボモータ133がその回転動作を停止し、押圧リング135の移動が停止する。
【0170】
組立コイルのコイルエンド部(渡り部)が挿入ガイドユニット153に挿入されていることにより、セグメント配置ドラム105は両持ち支持の状態となる。この両持ち支持状態で、ブレード調整機構118のサーボモータ117が回転動作し、スライド部材128(
図30参照)がP(+)方向に移動してブレード108がセグメント配置ドラム105の周面から突出しない状態、即ち押圧リング135の移動を妨げない位置に退避する。また、離脱防止手段106のサーボモータ143(
図32参照)が回転動作して2対のアーム139A及び139Bがセグメント配置ドラム105の周面から放射方向外側に離れるように開き、セグメント配置ドラム105に対するベルト107の当接状態が解除される。その後、押圧リング135の移動に邪魔にならないように、離脱防止手段106が下降せしめられる。
【0171】
離脱防止手段106が下降した後、押圧リング135がP(+)方向に移動されて組立コイルのコア152への挿入が進行する。
図37に示すように、組立コイルのコイルエンド部(渡り部)がカフスサポータ154に当接する直前に押圧リング135の移動が停止され、
図38に示すように、カフスサポータ154の全ての突起154aを放射方向外側に移動されることにより、カフスサポータ154が外側に開かれる。
【0172】
その後、押圧リング135を所定位置まで前進させ、組立コイルのコイルエンド部(渡り部)がカフスサポータ154に当接する手前でこの押圧リング135の移動を停止させる。この押圧リング135の移動停止のタイミング、及びカフスサポータ154が開いた後に押圧リング135を所定距離前進させて停止させる移動停止のタイミングは、制御手段49のメモリにあらかじめ記憶されている数値に基づいて行われる。挿入完了後、押し出し機構119の動作により押圧リング135は元の位置(初期位置)に戻される。
図38は、コア152に組立コイルの挿入が完了した状態を示している。
【0173】
以上述べたように、本実施形態のコイル組立部2によれば、セグメント配置ドラム105上に複数のコイルセグメントを配置して組み立てられた組立コイルをセグメント配置ドラム105の軸方向に押し出すことでコア152への挿入ができる。従って、治具からセグメント組立体を引き抜いた後、治具とコアとを交換してからセグメント組立体をそのコアに挿入するような手順が不要であり、回転電機の製造における作業効率を大幅に向上させることができる。即ち、本実施形態の構成によれば、コイルセグメントの組立が完了したらそのままの状態で直ちにコア152に挿入する動作に移行することができ、治具とコアとを交換する等の不要な時間を省略することができる。
【0174】
次に、コイル組立部2の電気的構成を説明する。本実施形態において、コイル組立部2は、セグメント配置ドラム105のインデックス回転駆動機構、離脱防止手段106、セグメント搬送手段110、ブレード調整機構118及び押し出し機構119を備えており、光通信ケーブル51には、インデックス回転駆動機構のサーボモータ117の増幅及び駆動回路、離脱防止手段106の1対のアーム139A及び139Bを開閉するためのサーボモータ143の増幅及び駆動回路、セグメント搬送手段110のチャック部111を回動させるためのサーボモータ161の増幅及び駆動回路、ブレード108の突出量を調整するためのサーボモータ127の増幅及び駆動回路、組立コイルを押し出すためのサーボモータ133の増幅及び駆動回路、エアシリッダ151及び167の駆動回路が接続されている。複数のサーボモータの増幅及び駆動回路には、複数のサーボモータに機械的に連結されたエンコーダからの信号線がそれぞれ接続されている。
【0175】
PLC46及び第2のNCコントローラ48は、
図12のステップS1及びステップS8、並びに
図39のフローチャートに示すステップに基づいてコイル組立部2におけるコイルセグメントの挿入動作及び組立コイルのコア152への挿入動作を制御する。以下、
図12及び
図39のフローチャートを用いて、コイル組立部2における動作を詳細に説明する。
【0176】
前述したように、PLC46は、
図12のステップS1において、セグメント配置ドラム105へのコイルセグメントの配置数及び層数、インデックス回転量、離脱防止手段106のアーム139A及び139Bの回動量、ブレード108の突出量、及び押圧リング135の移動量等に関する一連の制御データをメモリから読み出し、第2のNCコントローラ48へ出力する。
【0177】
第2のNCコントローラ48は、これにより受信した制御データを展開し、指定されたアドレスの駆動機構のNC制御を実行する。本実施形態において、重要なポイントは、線材供給部3における切断及び被覆絶縁層剥離、1次曲げ部4における1次曲げ、2次曲げ部5における2次曲げ、並びにコイル組立部2における組立が、設定されている制御情報に基づいて各コイルセグメント単位で行われる点にある。即ち、ある被処理コイルセグメントに関して、設定されている制御情報に従って切断及び絶縁層剥離が行われ、その同じ被処理コイルセグメントに関して、設定されている制御情報に従って1次曲げが行われ、その同じ被処理コイルセグメントに関して、設定されている制御情報に従って2次曲げが行われ、その同じ被処理コイルセグメントに関して、設定されている制御情報に従ってコイル組立が行われるのである。これにより、線材の切断及び剥離、コイルセグメントの成形からコイル組立まで一貫して行うことが可能となるため、作業効率が大幅に向上する。また、成形したコイルセグメントを保管すること、保管したコイルセグメントから必要とするものを選択すること等が不要となるため、管理が非常に容易となる。
【0178】
コイル組立においては、まず、セグメント配置ドラム105の周面にコイルセグメント17Sを配置させるためのインデックス制御を行う(
図12のステップS8)。被処理コイルセグメントである1番目のコイルセグメント17Sがセグメント搬送手段110で搬送され、その前脚がセグメント配置ドラム105の基準点のセグメント保持部109a内に挿入されたことが検知センサ170で検知され、その信号がPLC46から送信された場合、サーボモータ117を回転駆動して1スロット分(本実施形態では10度)だけセグメント配置ドラム105を
図24Aに示す反時計回り方向に回転させる。この動作を順次繰り返し、所定周分のコイルセグメント17Sの配置が完了した際にサーボモータ127を回転駆動してブレード108を所定量突出させる(
図39のステップS11)。
【0179】
本実施形態における検知センサ170は、レーザ等を用いた距離判別センサであることが望ましい。即ち、
図24Aに示すように、ガイド部材112の下面にレーザ発光部とレーザ受光部と配置し、発光部から基準点のセグメント保持部へレーザ光を照射し、レーザ受光部でその反射光を受光することにより距離を判別する。PLC46は判別した距離から1周目のコイルセグメントが挿入されたか、2周目以降のコイルセグメントが挿入されたかを判別することができ、その結果を第2のNCコントローラ48へ送信する。また、この距離判別センサと共に、例えばカラー光を発光及び受光するセンサを設けても良い。即ち、ガイド部材112の下面に、距離判別センサと並べて、セグメント配置ドラム105の軸方向に伸長したライン形状の発光部と受光部とを備えたカラー光センサを配置し、その発光部から基準点のセグメント保持部へ光を照射し、受光部でその反射光を受光する。PLC46は検知センサ170から出力された反射光のスペクトル光強度を計算し、得られた光強度をあらかじめ記憶されている基準スペクトル光強度範囲と比較する。検出して計算されたスペクトル光強度が設定された許容範囲にある場合は、前脚が正常に挿入されて配置されたと判断し、第2のNCコントローラ48へ送信する。コイルセグメント17Sは一般に銅色でありブレード108やセグメント配置ドラム105の周面の色とは異なるので、前脚以外からの反射光とを区別することができる。なお、前脚が正常に配置されたか否かの判断は、カラーセンサ等の光電センサと、電荷結合素子(CCD)や相補型金属酸化物半導体素子(CMOS)等の撮像素子との組み合わせで行ってもよい。検知方式が異なるセンサの組み合わせによれば、検知誤差を低減することができる。
【0180】
コイルセグメント17Sがセグメント配置ドラム105に所定層数配置されて組立コイルが形成された場合に、第2のNCコントローラ48は、その組立コイルをコア152に挿入するNC制御を開始する(
図39のステップ12)。即ち、組立コイルをコア152に挿入する制御データを展開して押し出し機構119、ブレード調整機構118、及び離脱防止手段106に出力し、対象となるサーボモータを回転駆動する挿入動作を開始する。
【0181】
まず、第2のNCコントローラ48は、押し出し機構119のサーボモータ133を回転駆動して押圧リング135をP(+)方向に移動させ、組立コイルのスロット挿入部の端部を挿入ガイドユニット153に挿入させる(
図39のステップ13)。この移動は、組立コイルのコイルエンド部(渡り部)がブレード108に干渉する直前、又は押圧リング135が離脱防止手段106に当接する直前で停止させる。これにより、セグメント配置ドラム105は両持ち支持状態となる。
図36がこの状態を表している。
【0182】
次いで、第2のNCコントローラ48は、ブレード調整機構118のサーボモータ127を回転駆動してセグメント配置ドラム105の周面からブレード108が突出しないように後退させると共に、離脱防止手段106のサーボモータ143を回転駆動してベルト107をセグメント配置ドラム105の周面から離隔させかつ離脱防止手段106を下降させる(
図39のステップ14)。
【0183】
次いで、第2のNCコントローラ48は、押し出し機構119のサーボモータ133を回転駆動して押圧リング135をP(+)方向に前進させ、組立コイルのコイルエンド部(渡り部)がカフスサポータ154に当接する直前で停止させる(
図39のステップ15)。
図37がこの状態を表している。
【0184】
次いで、第2のNCコントローラ48は、図示しない駆動機構を制御してカフスサポータ154の全ての突起154aを放射方向外側に移動させ、カフスサポータ154を開く(
図39のステップ16)。
【0185】
次いで、第2のNCコントローラ48は、押し出し機構119のサーボモータ133を回転駆動して押圧リング135を所定の位置まで前進させ、これによりコア152への組立コイルの挿入、即ちコア152のスロットにおけるコイルセグメントの円環状の挿入、が完了する(
図39のステップ17)。挿入後、押圧リング135は元の位置に戻される。
図38がこの状態を表している。
【0186】
次に、本発明の他の実施形態に係る回転電機の製造装置について、
図40A〜
図41を参照して説明する。本実施形態においては、
図40A〜
図40D、及び
図41に示すように、コイル組立部のガイド手段が2段構成となっており、コイルセグメントの渡り部形状及びコイル幅が互いに異なる2種類のコイルセグメントについても組立できる構成となっている。本実施形態におけるその他の部分の構成、動作及び作用効果は、上述した実施形態の場合と同様であるため、説明は省略すると共に、同じ構成要素については同じ参照符号を用いて説明する。
【0187】
図40A及び
図41に示すように、本実施形態におけるガイド手段113は、外側ガイド部材114と、この外側ガイド部材114よりセグメント配置ドラム105の中心軸Cに近い側に位置する内側ガイド部材115とからなる2段構成を有している。これら外側ガイド部材114及び内側ガイド部材115は、セグメント配置ドラム105の上方に配置されている。外側ガイド部材114及び内側ガイド部材115の各々の構成は、基本的には、
図27に示した実施形態におけるガイド部材112の構成と同様である。即ち、複数(この例では3つ)の細幅のガイド片と、これらガイド片とを互いに離隔させて支持するブラケット114b及び115bとを備えており、ブラケット114b及び115bはセグメント配置ドラム105の軸方向に沿って設けられており、ガイド片はブラケット114b及び115bと直交する方向にそれぞれ伸長している。ブラケット114b及び115bは、図示しないフレームに固定されている。ただし、外側ガイド部材114は、スロット挿入部17b及び17c間の距離が大きい、コイル幅大のコイルセグメント17Sを案内するために設けられており、内側ガイド部材115は、スロット挿入部17d及び17e間の距離が小さい、コイル幅小のコイルセグメント17SSを案内するために設けられている。
【0188】
内側ガイド部材115はそのガイド面115cの周方向の長さが、外側ガイド部材114のガイド面114cの周方向長さよりも短くなるように構成されている。コイル幅大のコイルセグメント17Sは、セグメント搬送手段110のチャック部111で把持された状態で前脚17bが内側ガイド部材115の下側を通り、後脚17cが外側ガイド部材114の上側を通るように搬送される。セグメント配置ドラム105が回転し、前脚17bがセグメント配置ドラム105の上方の基準点のセグメント保持部に達すると下降させられる。コイル幅小のコイルセグメント17SSは、セグメント搬送手段110のチャック部111で把持された状態で前脚17dが内側ガイド部材115の下側を通り、後脚17eが内側ガイド部材115の上側を通るように搬送される。前脚17dは、セグメント配置ドラム105がインデックス回転し、基準点のセグメント保持部に達すると、下降させられる。ガイド部材が2段構成の場合には、検知センサ170は内側ガイド部材115の下面に配置され、コイルセグメント17SSの前脚17dを検知するように構成されている。
【0189】
なお、本実施形態においては、コイル幅大のコイルセグメント17Sとコイル幅小のコイルセグメント17SSとが交互に供給されてコイル組立が行われる。
図40Bは、1番目のコイル幅大のコイルセグメント17Sの前脚17b−1がセグメント配置ドラム105の所定のセグメント保持部109に挿入されかつその後脚17c−1が外側ガイド部材114上に載り、2番目のコイルセグメント17SSの前脚17d−1がセグメント配置ドラム105の次のセグメント保持部109に挿入されかつその後脚17e−1が内側ガイド部材115上に載り、3番目のコイル幅大のコイルセグメント17Sの前脚17b−2がセグメント配置ドラム105のその次のセグメント保持部109に挿入されかつその後脚17c−2が外側ガイド部材114上に載った状態を示している。
【0190】
コイル幅大のコイルセグメント17Sとコイル幅小のコイルセグメント17SSの交互の配置が進行していくと、
図40Cに示すように、2番目のコイル幅小のコイルセグメント17SSの後脚17e−1が、1番目のコイル幅大のコイルセグメント17Sの後脚17c−1よりも先に落下して配置される。後脚の落下がこのようなタイミングで生じるように外側ガイド部材114と内側ガイド部材115との周方向の長さが設定されている。
【0191】
図40Dは、1周目の配置が完了した状態を示している。ガイド部材を3段以上の構成とし、さらに複雑な配置パターンに対応できるようにすることも可能である。
【0192】
前述したように、本実施形態においては、コイル組立部2に供給されるコイルセグメントが、
図41に示すように、コイル幅大のコイルセグメント17Sとコイル幅小のコイルセグメント17SSとが交互配列されている。この場合、1番目、3番目に配置するコイル幅大のコイルセグメント17Sの後脚(1)、(3)よりも2番目、4番目に配置するコイル幅小のコイルセグメント17SSの後脚(2)、(4)が先に配置されるような非単純パターンとなる。即ち、10個のコイルセグメント17S及び17SSを配列して展開すると、2番目のコイルセグメント17SS、1番目のコイルセグメント17S、4番目のコイルセグメント17SS、及び3番目のコイルセグメント17Sの後脚が、7番目のコイルセグメント17SS、8番目のコイルセグメント17S、9番目のコイルセグメント17SS、及び10番目のコイルセグメント17Sの前脚の上にそれぞれ配置されることとなる。
【0193】
図42及び
図43は本発明の回転電機の製造装置のシステム構成例を概略的に示している。
【0194】
図42に示す製造システムは、回転電機の一例である複数のステータのコアが収容されているステータコアパレット180と、コア搬送ライン181と、このコア搬送ライン181のステータコアパレット180の下流側にあり、コアの位置決めやマーキングを行うレーザマーカ182と、コア搬送ライン181のレーザマーカ182の下流側にあり、ステータコアのスロットに絶縁紙を挿入する複数の絶縁紙インサータ183と、コア搬送ライン181の下流に位置しているステータ搬送ライン184と、このステータ搬送ライン184に交差(直交)して配置され、線材の切断、絶縁増剥離、1次曲げ成型、2次曲げ成形、コイル組立、及びコアへのコイル挿入を一貫してユニット化したコイル供給ラインである単一の回転電機の製造装置100とを備えている。
【0195】
図示されていないが、回転電機の製造装置100より下流側のステータ搬送ライン184には、コイルセグメント自由端側(スロット挿入部端側)を捩じるコイルツイスト部、ツイストした部分を溶接して全てのコイルセグメントが電気的に導通状態となるようにする溶接部等が配置されている。
【0196】
コイル供給ライン(回転電機の製造装置100)は、前述したように、両端部の絶縁層が剥離された所定長さの直線状の線材を供給する線材供給部3と、互いに略平行に延びる1対のスロット挿入部とこれら1対のスロット挿入部を連結する渡り部とからなるU字形状に同一平面内で1次曲げ加工する1次曲げ部4と、1次曲げ部4で曲げ加工がなされた1次曲げ成形体を上述の同一平面と交差する方向に2次曲げする2次曲げ部5と、2次曲げ部5での曲げ加工を終えたコイルセグメントを円環状に配列してコイルを組み立てるコイル組立部2と、コイル組立部2で組み立てられたコイルを押し出してステータコアのスロットに挿入する押し出し機構119とがユニット化されている。製造設備を構築する初期においては、このシステム構成例のように、単一のコイル供給ラインのみを設けて製造装置の規模を小型に構築し、初期投資を少なくすることができる。
【0197】
図43に示す製造システムは、ユニット化されたコイル供給ライン(回転電機の製造装置100)が複数(この例では6つ)ステータ搬送ライン184に交差(直交)して配置されている。製造設備構築の初期においては、
図42に示したシステム構成例のように、単一のコイル供給ラインのみを設けて初期投資を少なくすることができるが、ステータの需要増に応じて、ユニット化されたコイル供給ラインの数を増やし製造規模を拡大するという効率的な設備投資を行うことが可能となる。これらコイル供給ライン(回転電機の製造装置100)はユニット化されて同じスペックであるため、最初の単一のコイル供給ラインについて生産能力の検証ができれば、後の増設では検証の必要がない。
【0198】
回転電機の製造においてどの程度の需要があるか明確に把握できない状態で
の設備投資は難しくリスクも大きく、想定した需要と実際の需要との間にギャップがある場合には設備の過剰投資となる。しかしながら、上述のごとく、ユニット化された同一スペックのコイル供給ラインを回転電機の需要に応じて増やしていく製造システムによれば、最小限の設備投資から回転電機の製造を実施することができ、需要の増大に応じて段階的に増産のための設備を増やすことができるので、無駄のない(リスクの少ない)設備投資が可能となる。
【0199】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を例示したにすぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【課題】成形したコイルセグメントをその都度管理する必要がなく、コイルセグメントの成形からコイル組立までを一貫して行うことにより良好な作業効率を得ることができ、また、需要に応じた規模の設備を構築することが可能な回転電機の製造装置及び回転電機の製造方法を提供する。
【解決手段】回転電機の製造装置は、所定長さの直線状の線材を、互いに略平行に延びる1対のスロット挿入部とこれら1対のスロット挿入部を連結する渡り部とからなる所定の形状に成形するコイルセグメント成形部と、コイルセグメント成形部で成形されたコイルセグメントを円環状に配列してコイルを組み立てるコイル組立部とを備えている。コイルセグメント成形部及びコイル組立部は、製造すべきコイルに応じて設定された制御情報に基づき、成形及び組立を各コイルセグメント単位で連続して行うように構成されている。