(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記チャンバ部には、上下動可能な天井部が設けられ、前記天井部、基板保持搬送部及び泡止部材を一定の距離を保って連動して上下方向に移動させるリフタ部を有することを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
前記基板保持搬送部は、前記内槽部内で前記基板を保持する第一保持部と、前記チャンバ部で前記基板を保持する第二保持部とを有し、前記基板および前記第一保持部が洗浄液から出る前後近傍で、第二保持部が前記基板を持ち替えて保持する機構を有することを特徴する請求項1又は2に記載の基板処理装置。
前記引上げ工程は、チャンバ部内で基板を洗浄液から引上げることにより行われ、前記チャンバ部には基板と一定の間隔を保って上下動し乾燥用気体の吹出口を有する上下動可能な天井部が設けられていることを特徴とする請求項9に記載の基板処理方法。
前記基板は、基板保持搬送部により搬送され、引上げ工程中前記基板を洗浄液中で保持する第一保持部と、乾燥工程中前記基板を乾燥用気体中で保持する第二保持部を具備し、引上げ工程から乾燥工程に移行する前後近傍において第二保持部が第一保持部の上方に移動して基板を持ち替えて保持することを特徴とする請求項9または10に記載の基板処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
従来の装置は、洗浄液に基板の洗浄処理時に発生した気泡が含まれており、基板の表面に酸化膜が生じてウォーターマークが発生する。
また、これら気泡は、内槽部の底面から上昇し液面の付近に浮遊し、洗浄液から引上げられた基板に気泡が付着する、あるいは、洗浄液面で気泡が破裂して基板の表面に液滴が飛散するなど洗浄後の清浄な基板が汚染される恐れがある。
【0007】
特許文献2に記載されている構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
従来の装置は、基板を洗浄液中より順次露出させながら、基板の乾燥を行う基板乾燥装置では、窒素ガスを媒介してイソプロピルアルコール(以下、単に「IPA」と称する)を気化させて蒸気とし、エッチング処理後に洗浄液で洗浄された基板の処理槽の上部空間内に供給されている。その後、処理槽の洗浄液を処理槽底部から排水することにより、処理槽内で基板を露出させ、処理槽の上部空間に供給されたIPA蒸気が露出された基板の表面に付着した水滴と置換されるため、基板の表面が酸素に触れて酸化すること無く、基板が乾燥される。
【0008】
また、処理槽の洗浄液を処理槽底部から排水されることにより、洗浄液面を下げるのではなく、基板を処理槽液面より引上げることにより、チャンバ部内に基板を露出させ、チャンバ部内の空間に供給された高濃度IPA蒸気が露出された基板の表面に付着した水滴と置換されて、基板の表面が酸素に触れて酸化すること無く、基板を乾燥させるようにしている乾燥装置もある。
【0009】
しかしながら、上記排水により基板を露出させる構造のものでは、基板を洗浄時に発生した気泡が処理槽の洗浄液面の近傍に浮遊した状態となるが、処理槽内における底部近傍の洗浄液から順次排水が行われて、浮遊している気泡が最後に排水されることとなるため、浮遊した気泡が露出した基板の表面に付着し、付着部分の基板にウォーターマーク等の乾燥欠陥が生じる場合がある。
【0010】
また、処理槽内の洗浄液面よりの引上げによる基板の露出時に、同様に気泡が基板の表面に付着し、基板にウォーターマーク等の乾燥欠陥が生じる場合がある。
【0011】
特許文献3に記載されているような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
従来の装置は、基板が洗浄液から取り出されて乾燥時に、処理室内の雰囲気に高純度の空気を提供している。空気には酸素が含まれていることから、当該装置では被処理基板は比較的大量の酸素が存在する状況下において乾燥処理されることとなる。酸素が基板の表面の洗浄液に溶け出し、基板素材のシリコンと化学反応を起こすことで、基板にウォーターマーク等の乾燥欠陥が生じる場合がある。
【0012】
また、乾燥を行うチャンバ部の上部には、特許文献1に記載のように、スライド式開閉機構が設けられ、上部を覆う部材をスライド機構で水平方向に開閉して基板の搬出入を行い、チャンバ部内に搬入された基板は上下方向に移動される。そのため、処理装置は、水平方向に移動する駆動機構と、上下方向に移動する駆動機構が必要となり、駆動方向が二軸方向となるので、構成が複雑で経済的に得にくい。
【0013】
その上、特許文献1に記載のように、チャンバ部に乾燥用気体を供給する供給口がチャンバ部の上部に固定されているから、基板に充分に気体を作用させるためには、気体の供給圧を高めなければならない。その結果、騒音が発生したり、気体が乱流となって洗浄液の表面が乱れ、ウォーターマークの発生の原因となることがある。
【0014】
本発明の解決課題は、基板に乾燥欠損が生じることを十分に防止することができ、かつ経済的に得られる基板処理装置及び基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、基板に所定の処理を行う基板処理装置であって、基板を洗浄する洗浄液で満たされた内槽部と、内槽部の上部に連接され前記基板を内包する空間を有し内部に乾燥用気体を流通させるチャンバ部と、前記基板を前記内槽部内並びに前記チャンバ部内で保持するとともに前記内槽部内と前記チャンバ部内に搬送する基板保持搬送部と、前記基板が保持されたときにその下方に位置し、少なくとも前記基板の上昇時に前記基板保持搬送部と連動して動き、基板の鉛直投影領域よりも広い領域をカバーする泡止部材を具備する。
【0016】
請求項2に記載の基板処理装置は、請求項1において、上記チャンバ部には、上下動可能な天井部が設けられ、前記天井部、基板保持搬送部及び泡止部材を一定の距離を保って連動して上下方向に移動させるリフタ部を有する。
【0017】
請求項3に記載の基板処理装置は、請求項1又は2において、前記内槽部内で前記基板を保持する第一保持部と、前記チャンバ部で前記基板を保持する第二保持部とを有し、前記基板および前記第一保持部が洗浄液から出る前後近傍で、第二保持部が前記基板を持ち替えて保持する機構を有する。
【0018】
請求項4に記載の基板処理装置は、請求項3において、前記泡止部材は、前記第一保持部とともに洗浄液面より上方に移動する。
【0019】
請求項5に記載の基板処理装置は、請求項2ないし4のいずれかにおいて、前記天井部は前記チャンバ部内に乾燥用気体を供給する気体吹出口を有し、前記チャンバ部は、乾燥用気体を排出する気体排出口を有している。
【0020】
請求項6に記載の基板処理装置は、請求項5において、前記チャンバ部の気体排出口は、チャンバ部の側壁側の洗浄液面近傍に設けられている。
【0021】
請求項7に記載の基板処理装置は、請求項6において、前記チャンバ部の側壁は光透過性部材で作られ、外部には基板乾燥用の熱源が設けられている。
【0022】
請求項8に記載の基板処理装置は、請求項1ないし7のいずれかにおいて、基板保持搬送部は、複数の基板を保持搬送でき、泡止部材は、複数の基板の鉛直投影領域を連続的にまたは個別に覆う板状部材である。
【0023】
請求項9に記載の基板処理方法は、基板に所定の処理を行う基板処理方法であって、洗浄液に浸漬された基板の下方を基板の鉛直投影領域よりも広い領域を有する泡止部材でカバーし基板とともに上昇させて基板を洗浄液から引き上げる引上げ工程と、その後基板を乾燥用気体中で乾燥させる乾燥工程とを有する。
【0024】
請求項10に記載の基板処理方法は、請求項9において、前記引上げ工程は、チャンバ部内で前記基板を前記洗浄液から引き上げることにより行われ、前記チャンバ部には基板と一定の間隔を保って上昇し乾燥用気体の吹出口を有する上下動可能な天井部が設けられている。
【0025】
請求項11に記載の基板処理方法は、請求項9または10において、前記基板は、基板保持搬送部により搬送され、引上げ工程中前記基板を洗浄液中で保持する第一保持部と、乾燥工程中前記基板を乾燥気体中で保持する第二保持部を具備し、引上げ工程から乾燥工程に移行する前後近傍において、第二保持部が第一保持部の上方に移動して基板を保持する。
【0026】
請求項12に記載の基板処理方法は、請求項11において、前記第二保持部は、前記基板と当接する部分が乾燥した状態で、第一保持部から基板を持ち替えて保持する。
【0027】
請求項13に記載の基板処理方法は、請求項11において、前記第一保持部と前記泡止部材とが、一定の距離を保って連動する。
【0028】
請求項14に記載の基板処理方法は、請求項10において、乾燥用気体は、前記基板の上方から前記基板に向けて吹き出され、基板の横方向から排出される。
【発明の効果】
【0029】
本発明の請求項1に記載の基板処理装置によれば、洗浄液に浸漬した基板を洗浄液面より引上げてチャンバ部に露出させる際に、基板の下方に基板の鉛直投影領域よりも広い領域をカバーする泡止部材を設けて基板とともに連動して上昇させることで、洗浄液中を上昇する基板に気泡が付着し難くなり、さらに、洗浄液面で気泡が破裂して飛散した水滴が基板に付着することがないため、洗浄後の基板の汚染を抑制する効果がある。
【0030】
さらに、請求項2に記載の基板処理装置によれば、チャンバ部に上下動可能に設けた天井部と基板保持搬送部と泡止部材を、一定の距離を保ってリフタ部により上下方向に移動するようにしたから、基板の移動が安定しており、かつ各部材の移動が一軸方向となるので、駆動機構が簡単になり、経済的に得やすい。
【0031】
請求項3によれば、基板保持搬送部を、内槽部内で前記基板を保持する第一保持部と、チャンバ部内で前記基板を保持する第二保持部で構成し、基板および第一保持部が洗浄液から出る前後近傍で、乾燥した第二保持部が前記基板を第一保持部から持ち替えて保持するようにしたので、乾燥処理するチャンバ部内で、湿潤状態の第一保持部が基板に接触することがなく、基板の表面の未乾燥部分がなくなり、基板の端部に至るまでウォーターマーク発生を抑制する効果がある。
【0032】
さらに、請求項4に記載の基板処理装置によれば、第一保持部と泡止部材は、一定の距離を保ちながら連動するから、内槽部底面から上昇する気泡が泡止部材により基板より遠ざかり、気泡が基板の表面へ付着し難く、また、洗浄液面から露出して乾燥し始めた基板の近傍に気泡が接近しにくくなる。その上、チャンバ部内に露出された泡止部材はその表面全体が乾燥された状態に置かれるので、洗浄液中に泡止部材を浸漬させた時に、泡止部材の表面に気泡が発生し難くなる。このように気泡に発生が抑えられるから、基板の近傍で気泡が破裂して飛散した気泡の水滴が、乾燥し始めた基板の表面へ付着することがなくなり、これらにより、基板の表面へのウォーターマークの発生を抑制する効果がある。
【0033】
さらに、請求項5に記載の基板処理装置によれば、天井部には乾燥用気体をチャンバ部内に供給する気体吹出口があり、チャンバ部には乾燥用気体を排出する気体排出口が設けられているので、天井部は乾燥用気体を吹き出しながら拡散移動するディフーザーとして機能する。そして、前記天井部と基板は一定間隔を保ってリフタ部で連動して移動するので、気体が供給されるチャンバ部の空間容積を縮小することができ、天井部から吹き出す気体を層流状態で供給することが可能である。そのため、気体の流れによって洗浄液面が乱れるようなことがない。また、請求項6に記載のように、気体排出口を洗浄液面近傍に設けることより、洗浄液面から発生する蒸気がチャンバ部内を上昇する前に、蒸気を気体排出口から効率的に排気でき、チャンバ部内における乾燥用気体の水分濃度を略一定に保つことが出来る。これらにより、ウォーターマークの発生を抑制する効果が得られる。
【0034】
さらに、請求項7に記載の基板処理装置によれば、チャンバ部の側壁を光透過性部材で構成し、外部に基板乾燥用の熱源を設けると、チャンバ部内の構成が簡素化され、天井部等の移動に支障を生じるおそれもない。
【0035】
さらに、請求項8に記載の基板処理装置によれば、基板保持搬送部は、複数の基板を保持搬送でき、泡止部材は、複数の基板の鉛直投影領域を連続的にまたは個別に覆う板状部材であるから、複数の基板の鉛直投影領域を連続的にまたは個別に覆うことができ、内槽部底面から上昇する気泡を確実に基板より遠ざけ、気泡が基板の表面へ付着し難くなり、気泡が破裂して飛散した気泡の水滴の拡散を防止することができる。
【0036】
さらに、請求項9に記載の基板処理方法によれば、基板に所定の処理を行う基板処理方法であって、洗浄液に浸漬された基板の下方を基板の鉛直投影領域よりも広い領域を有する泡止部材でカバーし基板とともに上昇させて基板を引き上げ、その後乾燥気体中で乾燥させるようにしたので、引上げる際に洗浄液より上昇する気泡を基板より遠ざけることができ、気泡が基板の表面へ付着しにくく、気泡が破裂して飛散した気泡の水滴が、基板の表面に付着して酸化膜を発生することがないため、ウォーターマーク発生を抑制する効果がある。気泡が付着していない状態で乾燥処理を行うことができるから、基板を短時間で乾燥させる効果が得られる。
【0037】
請求項10に記載の基板の処理方法によれば、引上げ工程を行うチャンバ部には、基板と一定の間隔と保って上下動しかつ乾燥用気体の吹出口を有する天井部が設けられているので、洗浄液面との空間容積を縮小することができ、乾燥用気体を層流状態で基板に吹き付けて効率よく乾燥させることができる。
【0038】
請求項11、12に記載の基板処理方法によれば、引上げ工程中基板を第一保持部で洗浄液中に保持し、洗浄液面に露出してから乾燥工程に移行する前後近傍において第二保持部が第一保持部の上方に移動して基板を持ち替えて保持するから、第二保持部が完全に乾いた状態で、基板を保持することができ、基板の表面に水分が残留することがなく、基板の表面の未乾燥部分の発生を抑制する効果がある。
【0039】
さらに、請求項13に記載の基板処理方法によれば、第一保持部と泡止部材とが、一定の距離を保って連動し、これらに連動する泡止部材も天井部と連動して上下動するから、これらの部材を駆動する駆動機構の駆動方向が一軸方向となり、装置を簡素化することができる。
【0040】
さらに、請求項14に記載の基板処理方法によれば、乾燥用気体が、基板の上方から基板に吹き付けられ、基板の横方向から排出されることで、基板の表面と乾燥用気体の接触面の接触性が均一になり、基板の表面が全面にわたって均一な乾燥状態となる効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
まず、本発明に係る実施の形態を説明するにあたり、本明細書で用いられる用語の定義について説明する。
【0043】
本明細書における用語「ウォーターマーク」とは、物体の表面に残留した水分が蒸発する過程で上記表面に形成された染み(酸化膜)をいうものとする。
【0044】
本明細書における用語「液滴」とは、物体の表面に付着した液体のうちの大略粒状の液体をいうものとする。また、本発明の明細書における用語「水分」とは、物体表面に付着した液体のうちの目視にて確認ができないような大略粒状の液体のことをいうものとする。
【0045】
本明細書における用語「気泡」とは、液体の内部や表面にできる、気体を含んだ泡をいうものとする。
【0046】
以下に、本発明の一実施例について、添付の図面を参照して詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0047】
本発明の基板処理装置の説明において、基板とは、半導体ウェハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示装置用ガラス基板、石英ガラス基板、光ディスク基板、磁気ディスク用基板、光学水晶基板、水晶発振子、光学ローパスフィルタ等をいう。
【0048】
本発明の一実施例を示す
図1、
図2において、基板処理装置1は、チャンバ部11、内槽部10、第一保持部13及び第二保持部14を有する基板保持搬送部150、天井部12、気体吹出口120、泡止部材151、気体排出口111、熱源部110を備える。また、前記基板保持搬送部150、天井部12及び泡止部材151は、それぞれリフタ部16に保持され、このリフタ部により連動して上下方向に移動する。
【0049】
チャンバ部11の側壁は、好ましくは、例えば、石英などの光透過性部材を用いて構成され、その内部に基板を内包できる空間部が形成されており、基板処理装置1が基板19に対して所定の処理(洗浄処理や乾燥処理など)を行う場合に、基板19の周辺雰囲気(チャンバ部11内の雰囲気)と外部雰囲気とを隔離するための処理室として機能する。チャンバ部の下部には、洗浄液を溜めるための内槽部10が設けられている。
【0050】
前記天井部12は、チャンバ部の上方の開口部をほぼ覆いかつチャンバ部内に入り込む大きさに形成され、上下動可能に設けられている。この天井部12は、基板をチャンバ部11内に搬出入する際に、天井部の下方に搬出入空間が形成できる位置までリフタ部16によりチャンバ部11の上部外方に上昇され、基板を洗浄液に浸漬する際は、チャンバ部内の下方に向けて降下する。なお、天井部がチャンバ部の外方に移動したとき、天井部を反転、旋回等させてチャンバ部の上面の開口部を全開するようにしてもよい。
【0051】
本実施の形態では、基板19を洗浄する洗浄液としては、純水、炭酸水、水素水、電解イオン水その他基板19上に作られた形成膜の種類などに応じて好適な洗浄液が適宜、選択的に用いられる。
【0052】
前記天井部12の上面中央には、乾燥用気体を流入させる開口部(図示略)が設けられている。この開口部から天井部12内に入った乾燥用気体は、天井部内に設けた隔板(図示略)等によって流動を調整して天井部の下面全体に設けた気体吹出120よりチャンバ部11内に供給される。このように天井部12は、乾燥用気体を拡散させるディフーザーとして機能する。気体吹出口120による乾燥用気体の供給は、供給される乾燥用気体によって、内槽部10の洗浄液面が波立たない程度の層流になるように調整される。
【0053】
なお、乾燥用気体としては加温した窒素ガス等の不活性ガスや、不活性ガスに代えて、例えばドライエアDFを用いても良いし、IPA蒸気を用いても良く、被乾燥物の種類などに応じて適宜、選択的に用いられる。
【0054】
前記熱源部110は、チャンバ部11の外部に設けられており、赤外線を放射する。放射された熱は、好ましくは光透過性部材で構成されたチャンバ部11の側壁を通して、遮蔽されることなく、
図1、
図2において点線矢印で示す方向に直進し、チャンバ部の空間部内の雰囲気(主に乾燥用気体および蒸気から構成される)を加熱する。
【0055】
上記のように、チャンバ部11内の温度を調整する熱源部110を、チャンバ部11の外部に設けることにより、チャンバ部11の内部が簡素化され、内部を洗浄したりメンテナンスする際に、作業を容易に行うことができ、また上下動する天井部の移動の妨げになることもない。
【0056】
上記構成により、制御部18により赤外線放射の出力または出射時間を制御すれば、チャンバ部11内の雰囲気を最適の温度に調整することができ、チャンバ部11内を所定の温度(加温状態)に保つことができるとともに、乾燥処理中の基板19の温度降下が抑制され、乾燥効率を向上させることができる。
【0057】
内槽部10の洗浄液の循環ユニット17は、内槽部10内の洗浄液を回収する補助槽部170、洗浄液を加熱する加熱装置171、洗浄液をろ過する浄化装置172を備えている。循環ユニット17は、制御部18からの制御に基づいて、加熱装置171により洗浄液を所定の温度に加熱しながら、加熱された洗浄液から浄化装置172により不純物などを取り除く浄化処理を行う。このようにして生成され浄化された加熱洗浄液(以下、単に「洗浄液」と称する)は、液配管機構を介して内槽部10に供給される。循環ユニット17が洗浄液を供給する流量は制御部18からの制御により、内槽部10内の洗浄液面が波立つことのない程度の流量に調整されている。
【0058】
このように、循環ユニット17が所定の温度に加熱された洗浄液を内槽部10に供給することにより、洗浄液に基板19を浸漬して基板19の温度を昇温し、蓄熱させることができる。また、浄化装置172が洗浄液を浄化処理し、循環ユニット17が内槽部10に供給する洗浄液に含まれる不純物の残留を抑制することにより、基板19の乾燥ムラを抑制することができる。なお、加熱装置171としては、洗浄液に含まれる気泡の発生を抑制するよう加熱時に内沸や突沸の発生を抑制することができる機能がある加熱装置171を用いることが好ましい。
【0059】
また、循環ユニット17は、液配管機構により内槽部10と補助槽部170とに接続されている。液配管機構には、図示しない複数の電磁弁が所定の位置に適宜設けられており、内槽部10に溜められた液体を循環する際に制御部18がこれらの電磁弁を必要に応じて制御する。なお、本実施の形態における基板処理装置1では、内槽部10から排出される洗浄液はすべて循環ユニット17に回収されるよう循環系を構成している。
【0060】
また、図に示すように、実施例においては、好ましくは、補助槽部170をさらに備えており、この補助槽部170には、内槽部10の少なくとも一部の上端に洗浄液が達した後、内槽部10の側壁の上端よりもわずかに高くなると、内槽部10の側壁の上端から補助槽170に流入する。これにより、洗浄液を効率的に回収することができる。
【0061】
前記気体排出口111は、洗浄液の液面近くに開口しているので、
図2に示すように天井部が上昇しているとき気体吹出口120からチャンバ部11内に供給された乾燥用気体は、天井部12が下降したとき、内槽部10の洗浄液面上の空間容積が縮小される結果、内槽部10の洗浄液面より発生した蒸気とともに気体排出口111から装置外に排気される。
【0062】
リフタ部16は、基板保持搬送部150、泡止部材151及び天井部12を支持しているので、基板19を洗浄液に浸漬させる浸漬工程において、また、基板19を洗浄液から引上げる引上げ工程において、基板保持搬送部150、泡止部材151及び天井部12を連動して上下移動させることができる。このように、天井部12、基板19、基板保持搬送部150及び泡止部材151を、リフタ部16により連動して一軸的に移動するので、構成が簡単であり、経済的に作ることができる。
【0063】
基板保持搬送部150は、内槽部10内で基板19を保持する第一保持部13と、チャンバ部11で基板19を保持する第二保持部14を具備し、基板19および第一保持部13が洗浄液から出てチャンバ部11に移動する前後近傍で、第二保持部14が第一保持部13から基板19を持ち替える持ち替え機構を有している。第一保持部13と第二保持部14は、棒状若しくは枠状等の適宜の形状に形成され、平面から見て第二保持部14が第一保持部13の外側に位置するように設けられている。
【0064】
また、前記第一保持部13と第二保持部14は、夫々が基板19の上下移動の過程で適宜に基板19の下端部と当接することにより、基板19の表面が内槽部10の洗浄液面の鉛直方向と略平行となるように基板19を保持する複数の受溝(保持溝)(図示略)を有している。なお、
図1、
図2、
図5では一枚の基板19のみ図示しているが、本実施の形態における基板処理装置1は、内槽部10の洗浄液面の鉛直方向に複数の基板が互いに略平行状態で、第一保持部13または第二保持部14により保持するよう構成され、複数の基板を同時に処理できる
【0065】
また、持ち替え機構として、
図3に示すように、基板保持搬送部は、第一保持部13を駆動する部分と、エアシリンダ152を介して第二保持部14を独立して駆動する部分により構成されている。図示を省略したが、前記エアシリンダ152は、圧縮空気の給気及び排気を行う圧縮空気供給部を備えている。この圧縮空気供給部は前記制御部18により制御され、圧縮空気供給部によりエアシリンダ152内に圧縮空気を供給することにより、エアシリンダ152のピストンを、第一保持部13を支持する基板保持搬送部150に沿って上昇し、これにより第二保持部14が第一保持部13より上に上昇する。また、エアシリンダ152内に供給される圧縮空気の方向を切り替えることにより、エアシリンダ152のピストンが基板保持搬送部150に沿って下降し、第二保持部14が第一保持部13より下に下降する。
【0066】
エアシリンダ152の下降の開始は、基板19を洗浄液に浸漬する浸漬工程において、チャンバ部11内で基板19を保持する第二保持部14がチャンバ部から内槽部10内に浸漬するときに、基板19が第一保持部13に持ち替られるよう圧縮空気供給部からエアシリンダ152内に圧縮空気を供給して、エアシリンダ152のピストンを降下し、第二保持部14を第一保持部13よりも下げて、内槽部10内の洗浄液中において、第一保持部13が基板19を保持(ステップS5)する。
【0067】
また、エアシリンダ152の上昇の開始は、基板19を洗浄液から引上げる引上げ工程において、内槽部10内で基板19を保持する第一保持部13が洗浄液から出てチャンバ部11に移動する前後近傍で、圧縮空気供給部からエアシリンダ152内に圧縮空気を供給して、エアシリンダ152のピストンを上昇させ、チャンバ部11内において、第二保持部14を第一保持部13よりも上昇させて基板19を第一保持部13から持ち替えて保持(ステップS12)する。
【0068】
なお、実施例においては、上記第二保持部14は、エアシリンダ152を用いた機構により適時に第一保持部13の上下に移動するよう構成してあるが、その他の公知の昇降機構、例えば、油圧を用いた昇降機構やボールねじ軸を用いた昇降機構、ロボシリンダ等により構成しても良い。
【0069】
上記のように基板保持搬送部150は、第一保持部13と第二保持部14が、基板19の上下移動の過程で適時に基板19を保持した状態で、基板19を内槽部10の洗浄液面の鉛直方向に昇降させる。すなわち、内槽部10内に所定量の洗浄液が存在する状態において、基板19を内槽部10内の洗浄処理位置(
図1に示す位置)に保持して、基板19の全体を洗浄液に浸漬した状態にする。また、基板19がチャンバ部11内の乾燥処理位置(
図2に示す位置)にある場合には、基板19の全体を液体から引上げた状態とする。
【0070】
泡止部材151は、基板19を洗浄液から引上げる引上げ工程において、基板保持搬送部150と連動して上昇し、洗浄液中を浮遊し上昇する気泡を基板19から遠ざけ、基板19の表面にウォーターマークを発生し難くさせる。なお、上述したように、前記基板保持搬送部150と泡止部材151は、前記天井部12とともに、一定の距離を保った状態で連動して上下方向に移動する。この泡止部材151は、基板保持搬送部150の下方のリフタ部に保持され、平面もしくは曲面で構成された板状部材、若しくは、メッシュの板であり、基板保持搬送部150に並列状態で保持された複数の基板を上部から投影した面積と少なくとも同等あるいは好ましくはそれより大きい面積をカバーし、連続的に若しくは個別的に基板を覆うことができる大きさを持っている。
【0071】
内槽部内の底面近傍に、泡止部材151を固定して設けた場合、時間の経過とともに洗浄液中で泡止部材151の表面に気泡が発生して付着し、気泡が増加するとともに、気泡と気泡とが次々に重合して大きくなり、気泡の拡大に伴い気泡の浮力が上昇することで、泡止部材151の表面から気泡が離脱して浮遊と上昇が始まる。そして、基板の引上げ工程において、上昇中の基板19が洗浄液中を通過する過程で、基板19の表面に気泡が付着するとともに、洗浄液面から露出されて乾燥し始めた基板19の近傍で、気泡が破裂して飛散し、その水滴が、乾燥された基板19の表面へ付着してウォーターマークの原因となるなどの問題がある。しかし、本発明の基板処理装置1は、泡止部材151が洗浄液中に留まる時間は基板19の洗浄処理中だけであり、それ以外は、泡止部材151は基板とともに上昇してチャンバ部11内に露出されるため、表面全体が乾燥された状態になっている。浸漬工程においては、第一保持部13と、表面が乾燥された状態の泡止部材151が連動して洗浄液中に浸漬され、洗浄処理後は、泡止部材151の表面に気泡が付着し難い状態で、泡止部材151が第一保持部13と連動して上昇するため、泡止部材151の表面から離脱した気泡が基板の表面へ付着することもない。そのため、洗浄液面から露出され乾燥し始めた基板19の近傍で、気泡が破裂したり、飛散した気泡の水滴が、乾燥し始めた基板19の表面へ付着しにくくなり、ウォーターマークの発生を抑えることができる。
【0072】
制御部18は、基板処理装置1の内部に設けられ、図示しないケーブルにより基板保持搬送部150、天井部12、気体吹出口120、リフタ部16、熱源部110などの各構成部分と信号のやり取りが可能な状態で接続され、基板19を内槽部10内の洗浄液に浸漬せしめてから、洗浄終了する時間を予め測定しておき、この時間が経過することにより、基板19の引上げ開始タイミングを判断する。また、プログラムや各種データを記憶するとともに、当該プログラムに従って各種データを適宜処理することによって制御信号を生成し、それらの構成を制御する。なお、プログラムや各種データは、それらの情報を一時的に記憶する随時アクセス記憶素子、読み取り専用の記憶素子、および磁気ディスク装置などにより記憶される。
【0073】
次に、基板処理装置1において実行される基板19に対する処理動作を説明する。
図6は、本実施の形態における基板処理装置1の動作を示すフローチャート図である。なお、以下に示す各構成の動作制御は、特に断らない限り制御部18により行われるものとする。
【0074】
まず、基板処理装置1は、
図6に示す処理に先立って、供給する乾燥用気体や洗浄液の温度の設定など、所定の初期設定を行った後、送風機構を始動することにより天井部12に設けられた気体吹出口120から乾燥用気体をチャンバ部11内に供給する。
【0075】
天井部12は、天井部の下方に搬出入空間(図示略)が出現するようリフタ部16によりチャンバ部11の開口部よりも突出する位置まで上方に移動され、この搬出入空間を通して図示しない搬送手段により第二保持部14に基板19を運び入れる。その後、リフタ部により天井部12、基板保持搬送部150を降下させて基板19をチャンバ部11内で保持(ステップS1)する。
【0076】
次に、天井部12と上記基板保持搬送部150と泡止部材151は連動して下降(ステップS2)し、天井部12に設けられた気体吹出口120から乾燥用気体がチャンバ部11内に供給され、内槽部10の洗浄液面上の空間が狭められ、空間内の乾燥用気体や蒸気は気体排出口111から排気される。
【0077】
次に、基板処理装置1は、基板19の下降と連動して、泡止部材151を洗浄液中に浸漬(ステップS3)し、さらに、基板保持搬送部150は基板19を内槽部内の洗浄液に浸漬(ステップS4)させる。
【0078】
上記下降の途中で、第二保持部14が第一保持部13よりも下方に移動することにより基板19が内槽部10内の洗浄液に浸漬し始めてからは、基板19は第一保持部13に持ち替えて保持(ステップS5)され、基板19は内槽部10内の洗浄処理位置(
図1に示す位置)に位置(ステップS6)される。
【0079】
次に、基板処理装置1は、チャンバ部11内に搬入された基板19に対して洗浄液による洗浄を行う。制御部18により設定された所定の時間経過後、洗浄処理を終了(ステップS7)する。
【0080】
次に、基板処理装置1は、制御部18により基板保持搬送部150を上昇させ、基板19を洗浄液から引上げる。この引上げ工程において、天井部12と基板保持搬送部150と泡止部材151は連動して等速で上昇し、基板19は上昇(ステップS8)し始める。
【0081】
次に、基板処理装置1は、第一保持部13の上昇にともなって基板19は液面から引上げられてチャンバ部11に露出(ステップS9)する。
【0082】
次に、基板処理装置1は、基板19を洗浄液から引上げる引上げ工程の前後近傍において、第二保持部14が第一保持部13の上方に移動し、第二保持部14がチャンバ部11内に露出(ステップS10)し、第二保持部14の表面の乾燥が始まり(ステップS11)、乾燥された状態の第二保持部14が基板19を持ち替えて保持(ステップS12)する。
【0083】
前記基板19を洗浄液から引上げる引上げ工程において、泡止部材151は基板保持搬送部150と連動して等速で上昇し、チャンバ部内に露出(ステップS13)する。
【0084】
次に、基板1は、天井部12の気体吹出口120から拡散されて液面と天井部間の狭い空間を満たしている乾燥用気体と、チャンバ部外に設けた熱源部110から放射される熱により、表面が乾燥(ステップS14)される。
【0085】
チャンバ部11内の乾燥処理位置(
図2に示す位置)に基板19が位置されてから所定の時間が経過し、基板19の乾燥が完了すると、乾燥用気体の供給および熱源部110から熱の放射を停止(ステップS15)する。
【0086】
その後、天井部はチャンバ部のさらに上方に移動し、基板は搬送手段で基板保持搬送部から取り出され、以後、上述のようにして、次の基板が搬入される。
【0087】
基板19を洗浄液から引上げる引上げ工程において、基板19を保持する保持部を、基板19が内槽部10内の洗浄液に浸漬されている状態と、洗浄液面上の空間に完全に露出された状態とで基板19を持ち替える持ち替え機構を有しない場合は、基板19と保持部とが接触する部分が湿潤な状態のまま、基板19をチャンバ部11内の乾燥処理位置(
図2に示す位置)に搬送することとなるから、上記接触部分が湿潤な状態のため、基板19の表面にウォーターマークを発生する原因となる。しかし、本発明では、基板19を持ち替える機構を設けることにより、チャンバ部11内で第二保持部が露出して表面の乾燥が始まり、乾燥された状態の第二保持部14が基板19を持ち替えて保持するから、基板19と第二保持部14とが接触する部分が乾燥された状態に保たれ、基板19の表面のウォーターマークの発生を抑えられて前述のような問題を有効に抑制することができる。
【0088】
また、基板19を洗浄液から引上げる引上げ工程において、内槽部10の洗浄液面を基板19が通過する際に、基板19近傍の洗浄液面で気泡が弾けて基板19の表面に液滴が付着してウォーターマークの発生の原因となるなどの問題があるが、本発明では、前述の泡止部材151により、洗浄液中を浮遊し上昇する気泡を基板19から遠ざけることが出来る。従って、基板19の表面に気泡が付着し難くするともに、洗浄液面を基板19が通過する際に、基板19近傍の洗浄液面で気泡が弾けて基板19の表面に液滴が付着し難くすることできるので、基板19の表面にウォーターマークの発生を抑えられ、前述のような問題を有効に抑制することができる。
【0089】
基板19の表面のうち、洗浄液から引上げられた部分に付着している洗浄液は、チャンバ部11内の雰囲気(温度および湿度が適度に調整された乾燥用気体)中に置かれ、熱源部110から熱を基板19の表面に放射することにより、かつ、基板19が蓄熱されていることから速やかに蒸発し、基板19の乾燥が進行(ステップS14)する。本実施例では、基板保持搬送部150による基板19の移動速度(引上げ速度)は、制御部18により制御することができ、基板19の形状・大きさなどの状態や洗浄液の温度などによって、速度を適宜調整・設定することができる。
【0090】
また、基板19を洗浄液から引上げる引上げ工程において、天井部12と液面間の狭い空間を保持しながらゆっくりと上昇させることにより、天井部12に設けた気体吹出口120から乾燥用気体を層流状態で基板に吹き付けることができる。その上、液面が乱されることがないので、一旦、乾燥された基板19の表面に洗浄液が再度付着したり、蒸気が逸散したりすることがなく、気体排出口111から効率よく排出することができる。
【0091】
上記実施例においては、チャンバ部11内に露出した基板19を外部からの熱源により乾燥させるために、外部に熱源部110を設けてあるが、熱源部110を設けず、乾燥用気体のみにより、基板19の表面を乾燥するようにしても良い。
【解決手段】基板処理装置1は、チャンバ部11、内槽部10、基板保持搬送部150を有し、洗浄後の基板を液中から基板保持搬送部によりチャンバ部内の雰囲気中に引き上げて乾燥させる。基板の引上げ中、基板の下方をカバーする泡止部材151により、内槽内に滞留する気泡の上昇を抑制し、基板表面に気泡を付着し難くする。基板保持搬送部150は、洗浄液中の基板を保持する第一保持部13と、チャンバ部に移動した後に基板を保持する第二保持部14を有し、チャンバ部では、乾燥状態の第二保持部14が基板を保持する。その結果、基板表面に生じるウォーターマークの発生を抑えることができる。