特許第6458186号(P6458186)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6458186
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/475 20060101AFI20190110BHJP
   A61F 13/476 20060101ALI20190110BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
   A61F13/475 120
   A61F13/475 130
   A61F13/476
   A61F13/511 110
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-104777(P2018-104777)
(22)【出願日】2018年5月31日
(62)【分割の表示】特願2016-231451(P2016-231451)の分割
【原出願日】2016年11月29日
(65)【公開番号】特開2018-130590(P2018-130590A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2018年5月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】栗原 涼子
【審査官】 木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−131442(JP,A)
【文献】 特開2010−125196(JP,A)
【文献】 特開2013−248309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
A61L 15/16 − 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性表面シートの肌側の両側部にそれぞれ長手方向に沿ってサイドシートが配設された吸収性物品において、
前記サイドシートと透液性表面シートとの積層部分の肌側に、非肌側に向けて窪むとともに、前記サイドシートと透液性表面シートとを融着したサイドエンボスが形成され、
前記サイドエンボスは、相対的に大きな面積で形成され吸収性物品の長手方向に沿って直線状に整列して等間隔で配置された複数の大エンボスと、隣り合う前記大エンボスの間に、前記大エンボスと離間して、相対的に小さな面積で形成され間隔をあけて吸収性物品の長手方向に沿って波状に配置された複数の小エンボスとのみからなり、
前記小エンボスは、前記大エンボスの幅方向の外側端を結ぶ直線と、内側端を結ぶ直線とで挟まれる幅内に配置されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
隣り合う前記大エンボス間の間隔は、20〜50mmである請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記小エンボスは、波長が吸収性物品の長手方向長さに対して1/2〜1/8の略単振動波形をした仮想線上に配置されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記大エンボスの幅寸法は、前記サイドシートと透液性表面シートとの重なり幅の50%以上である請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記サイドシートと透液性表面シートとは、前記大エンボスが施される部分を除く部分が接着剤によって接着されている請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品に係り、詳しくは肌側の両側部にそれぞれ長手方向に沿ってサイドシートが配設されるとともに、前記サイドシートにエンボスが設けられた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、前記吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に、綿状パルプなどからなる吸収体を介在するとともに、肌側の両側部にそれぞれ長手方向に沿ってサイドシートを配設したものが知られている。
【0003】
この種の吸収性物品にも幾多の改良が重ねられ、横漏れ防止、柔軟性の向上、肌触りの改善などのため、前記サイドシートにエンボスが設けられたものが存在する(例えば下記特許文献1〜3参照)。下記特許文献1においては、サイド不織布にそれぞれ、実質的に、比較的長周期の略単振動波形に比較的短周期の略単振動波形を重ね合わせた複合波状線のエンボスが、吸収性物品の長手方向に沿うとともに、吸収体の側方端縁を跨いで行き来するように、かつ吸収性物品の長手方向中心線に対して線対称となるように表面側から付与されており、少なくとも排血口部に対応する領域で前記エンボスの比較的長周期の略単振動波形成分が内側に凸となるように配置された吸収性物品が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2においては、サイドシートに、曲線状のエンボスラインが長手方向に配置されて略波線形状のエンボスパターンが複数形成されており、長手方向に隣接するエンボスパターン間に、該エンボスパターンを構成するエンボスラインとは異なる形状のエンボス模様が設けられた吸収性物品が開示されている。
【0005】
更に、下記特許文献3においては、サイドシートのそれぞれに沿って複数の圧搾部を有するエンボス部が形成され、前記エンボス部は、吸収性物品の長手方向における端部である前縁側及び後縁側に形成され複数の第1圧搾部より構成される第1エンボス部と、長手方向における中央部に形成された複数の第2圧搾部より構成される第2エンボス部とを有し、前記第1エンボス部は、前記第2エンボス部よりも幅方向に広く形成されている吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−131442号公報
【特許文献2】特開2005−323904号公報
【特許文献3】特開2008−289622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1記載の吸収性物品では、複合波状線のエンボスが連続線状に形成されているため、装着時に吸収性物品を身体の前後方向の丸みに沿って湾曲させたとき、前記エンボスの剛性によって身体に対する柔軟性が低下するおそれがあった。
【0008】
また、上記特許文献2記載の吸収性物品では、サイドシートの幅方向内方を幅方向外方に向けて折り返された部分が、前記エンボスライン及びエンボス模様によって接合される一方で、サイドシートと表面シートとは、接着剤により接合されているため、サイドシートと表面シートとの接合が剥がれやすい構造となっていた。また、前記エンボスラインが連続線状に形成されているため、上記特許文献1記載の吸収性物品と同様に、身体に対する柔軟性が低下するおそれがあった。
【0009】
一方、上記特許文献3記載の吸収性物品では、エンボス部が間欠的に設けられているため、装着時に吸収性物品を身体の前後方向の丸みに沿って湾曲させたとき、身体に対する柔軟性が良好であると考えられるが、前後端部に比べて中央部のエンボスが幅狭に形成されているため、中央部の接合強度が弱く、大きな体の動きによって接合が外れる可能性があった。サイドシートと表面シートとの接合が剥がれると、吸収体に吸収され側方に拡散した体液がこれらの接合が外れた隙間部分から表面に浸み出して装着感の悪化や漏れの原因となることがある。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、サイドシートと表面シートとを強固に接合して剥離を防止するとともに、身体に柔軟にフィットし、肌触りを改善した吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートの肌側の両側部にそれぞれ長手方向に沿ってサイドシートが配設された吸収性物品において、
前記サイドシートと透液性表面シートとの積層部分の肌側に、非肌側に向けて窪むとともに、前記サイドシートと透液性表面シートとを融着したサイドエンボスが形成され、
前記サイドエンボスは、相対的に大きな面積で形成され吸収性物品の長手方向に沿って直線状に整列して等間隔で配置された複数の大エンボスと、隣り合う前記大エンボスの間に、前記大エンボスと離間して、相対的に小さな面積で形成され間隔をあけて吸収性物品の長手方向に沿って波状に配置された複数の小エンボスとのみからなり、
前記小エンボスは、前記大エンボスの幅方向の外側端を結ぶ直線と、内側端を結ぶ直線とで挟まれる幅内に配置されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明では、前記サイドシートと透液性表面シートとの積層部分の肌側に、非肌側に向けて窪むとともに、前記サイドシートと透液性表面シートとを融着したサイドエンボスが形成されているため、サイドシートが透液性表面シートに強固に固着され、装着時に大きな身体の動きを受けても、これらが剥離するのが確実に防止できるようになる。
【0013】
また、前記サイドエンボスとして、相対的に大きな面積で形成されるとともに、吸収性物品の長手方向に沿って直線状に整列して等間隔で配置された複数の大エンボスを有しているため、身体の動きが大きな部分においても前記大エンボスによって強固に接着され、サイドシートと透液性表面シートとの剥離が防止できる。
【0014】
更に、隣り合う前記大エンボスの間に、前記大エンボスと離間して、相対的に小さな面積で形成された複数の小エンボスが間隔をあけて吸収性物品の長手方向に沿って波状に配置されているため、連続線状のエンボスラインを形成した場合より、装着時に身体の前後方向の丸みに沿った変形がしやすくなり、身体の形状に柔軟にフィットし、身体に対する柔軟性を高めることができるようになる。また、複数の小エンボスを間隔をあけて波状に配置してあるため、吸収性物品の前後方向の擦れに対する肌当たりを柔軟にすることができる。具体的には、吸収性物品の長手方向に直線状に配置した場合には、吸収性物品の前後方向への身体の動きに対して、常に同じ部分に小エンボスが当接するため、肌当たりが悪化するが、吸収性物品の長手方向に波状に配置することにより、小エンボスが当接する肌の部分が分散して、肌当たりが改善できる。
【0015】
前記小エンボスは、前記大エンボスの幅方向の外側端を結ぶ直線と、内側端を結ぶ直線とで挟まれる幅内に配置されている
【0016】
前記小エンボスが前記大エンボスの幅方向の外側端を結ぶ直線と、内側端を結ぶ直線とで挟まれる幅内に配置されているため、サイドシートに剥がされるような力が作用した際に、複数の大エンボスが剥離に対して複数で抵抗するようになり、接合強度が高まる。仮に、小エンボスが大エンボスの幅より外側に配置されていると、小エンボスが最初に力を受けるようになり、サイドシートが引き剥がされやすくなる。
【0017】
請求項に係る本発明として、隣り合う前記大エンボス間の間隔は、20〜50mmである請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0018】
上記請求項記載の発明では、隣り合う前記大エンボス間の間隔として一定の範囲を規定している。この間隔が20mm未満では融着部の硬さを感じやすくなり、肌当たりが悪化する。また、50mmを超えると接合強度が確保できなくなるおそれがある。
【0019】
請求項に係る本発明として、前記小エンボスは、波長が吸収性物品の長手方向長さに対して1/2〜1/8の略単振動波形をした仮想線上に配置されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0020】
上記請求項記載の発明では、前記小エンボスは、波長が吸収性物品の長手方向長さに対して1/2〜1/8の略単振動波形状をした仮想線上に配置されているため、吸収性物品の前後方向の身体の動きに対して、確実に小エンボスが身体の同じ部位に当接しない配置となり、肌当たりをより一層柔らかくすることができるようになる。
【0021】
請求項に係る本発明として、前記大エンボスの幅寸法は、前記サイドシートと透液性表面シートとの重なり幅の50%以上である請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0022】
上記請求項記載の発明では、前記大エンボスの幅寸法を前記サイドシートと透液性表面シートとの重なり幅の50%以上としているため、前記大エンボスによってサイドシートと透液性表面シートとを強固に接合することができ、これらの剥離が確実に防止できるようになる。
【0023】
請求項に係る本発明として、前記サイドシートと透液性表面シートとは、前記大エンボスが施される部分を除く部分が接着剤によって接着されている請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0024】
上記請求項記載の発明では、前記サイドシートと透液性表面シートとは、前記大エンボスが施される部分を除く部分が接着剤によって接着されているため、エンボスによる溶着に加えて接着剤による接着の効果でサイドシートと透液性表面シートとを更に強固に固定できるようになる。前記大エンボスが施された部分に接着剤を塗布すると硬さが更に増すため、前記大エンボスが施された部分には接着剤を塗布しないこととしている。
【発明の効果】
【0025】
以上詳説のとおり本発明によれば、サイドシートと表面シートとが強固に接合でき剥離が防止できるとともに、身体に柔軟にフィットして、肌触りが柔らかなものとすることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
図2図1のII−II線矢視図である。
図3】(A)〜(C)は、変形例に係るサイドエンボス10の拡大平面図である。
図4】(A)、(B)は、変形例に係るサイドシート7と透液性表面シート3との重なり部分の拡大平面図である。
図5】変形例に係る生理用ナプキン1の展開図である。
図6】変形例に係る生理用ナプキン1の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
〔生理用ナプキン1の基本構成〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、図1及び図2に示されるように、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介在された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、この吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞するクレープ紙又は不織布などからなる被包シート5と、肌当接面側の両側部にそれぞれ長手方向に沿って配設されたサイドシート7、7とから構成されている。また、前記吸収体4の周囲において、そのナプキン長手方向の前後端縁部では、前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4の側縁よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイドシート7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接着手段によって接合され、外周に吸収体4の存在しない外周フラップ部が形成されている。
【0028】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シートなどの少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他にポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0029】
次いで、前記透液性表面シート3は、不織布が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法及びエアスルー法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を用いることができる。前記透液性表面シート3には、サイドシート7との融着を図るため、合成繊維を配合するのが好ましい。
【0030】
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえばパルプ中に高吸水性樹脂を混入したもの、或いはパルプ中に化学繊維を混入させるとともに、高吸水性樹脂を混入したものが使用される。前記吸収体4は、図示のように、形状保持、および経血等を速やかに拡散させるとともに、一旦吸収した経血等の逆戻りを防止するために被包シート5によって囲繞するのが望ましい。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶融パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。また、前記吸収体4として、嵩を小さくできるエアレイド吸収体や、2層の不織布層間に高吸水性樹脂を配置してなるポリマーシートを用いてもよい。
【0031】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0032】
前記高吸水性樹脂としては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性樹脂は製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力と吸水速度の調整が可能である。前記高吸水性樹脂の含有率は吸収体重量の5〜60%とするのが望ましい。高吸水性樹脂含有率が5%未満の場合には、十分な吸収能を与えることができず、60%を超える場合にはパルプ繊維間の絡み合いが無くなり、シート強度が低下し破れや割れ等が発生し易くなる。
【0033】
本例のように、吸収体4を囲繞する被包シート5を設ける場合には、結果的に透液性表面シート3と吸収体4との間に被包シート5が介在することになる。前記被包シート5がクレープ紙からなる場合には、吸収性に優れる前記被包シート5によって体液を速やかに拡散させるとともに、これら経血等の逆戻りを防止するようになる。
【0034】
一方、本生理用ナプキン1の肌当接面側の両側部にはそれぞれ、長手方向に沿ってかつナプキン1のほぼ全長に亘ってサイドシート7、7が設けられ、このサイドシート7、7の一部が側方に延在されるとともに、同じく側方に延在された不透液性裏面シート2の一部とによって、本体部分の両側部に外側に突出するウイング状フラップW、Wが形成されている。前記ウイング状フラップW、Wは、装着時に下着のクロッチ部分を巻き込むように、基端部の折り線RL(図1)にて外側に折り返して使用され、ウイング状フラップWの不透液性裏面シート2の外面に備えられたズレ止め粘着剤層(図示せず)を下着の外面に貼着することにより、下着とのズレ止めを図るためのものである。
【0035】
前記サイドシート7としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いることが望ましい。また、前記ウイング状フラップW、Wにおける経血等の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるようにすることが望ましい。前記サイドシート7には、前記透液性表面シート3との融着を図るため、合成繊維を配合するのが好ましい。
【0036】
前記サイドシート7の幅方向内方側は、前記透液性表面シート3の幅方向外方側の肌側に積層され、これらサイドシート7と透液性表面シート3とがこれらの積層部分において接合されている。図1に示されるように、前記サイドシート7と透液性表面シート3との重なり幅Mは、これらの接合強度を確保するとともに、側方への体液の漏れを防止するなどの観点から、5〜15mmとするのが好ましい。
〔サイドエンボス〕
前記サイドシート7と透液性表面シート3との積層部分の肌側に、非肌側に向けて窪むとともに、前記サイドシート7と透液性表面シート3とを融着したサイドエンボス10が形成されている。すなわち、前記サイドシート7と透液性表面シート3とは、サイドシート7の肌当接面側から圧搾するサイドエンボス10の加工時に、前記サイドシート7及び透液性表面シート3の繊維の一部を融着することにより接合されている。左右のそれぞれのサイドシート7に形成されるサイドエンボス10は、生理用ナプキン1の長手方向中心線CLに対して左右対称に配置するのが好ましい。
【0037】
前記サイドエンボス10を形成するには、透液性表面シート3の肌側の両側部にそれぞれサイドシート7を配置した後、表面にエンボス凸部を備えたエンボスロールと表面が平坦なアンビルロールとの間を通過させることにより、前記サイドシート7の外面側から前記サイドシート7及び透液性表面シート3を一体的に圧搾したものである。前記透液性表面シート3及びサイドシート7は、前記サイドエンボス10のみによって接合されるようにしてもよいし、これに加えて後述する所定の領域に塗布された接着剤によって接合されるようにしてもよい。
【0038】
前記サイドシート7と透液性表面シート3との融着は、エンボス圧搾時に加熱する熱融着(ヒートシール)を用いるのが好ましいが、エンボス圧搾時に超音波を照射する超音波融着を用いてもよい。
【0039】
前記サイドエンボス10は、図1に示されるように、相対的に大きな面積で形成された複数の大エンボス11、11…がナプキン長手方向に沿って直線状に整列して等間隔で配置されるとともに、隣り合う前記大エンボス11、11の間に、前記大エンボス11と離間して、相対的に小さな面積で形成された複数の小エンボス12、12…が間隔をあけてナプキン長手方向に沿って波状に配置されて形成されている。すなわち、前記サイドエンボス10は、生理用ナプキン1の長手方向に沿って一定間隔で直線状に等間隔に複数配置された大エンボス11、11…の間に、複数の小エンボス12、12…が波状に配置されたパターンを成している。
【0040】
前記大エンボス11、11…がナプキン長手方向に沿って直線状に整列して配置されるとは、図1に示されるように、長手方向中心線CLを境に一方側に配置される全ての大エンボス11、11…の幅方向(生理用ナプキン1の幅方向)の外側端を結ぶ線Lと内側端を結ぶ線Lとを引いたとき、これらの線L、Lがナプキン長手方向中心線CLと平行する直線からなることを意味している。また、前記大エンボス11、11…が等間隔に配置されるとは、隣り合う大エンボス11、11の間の間隔S(大エンボス11、11のナプキン長手方向端部同士の間隔)がほぼ等しいことを意味している。
【0041】
前記複数の小エンボス12、12…が生理用ナプキン1の長手方向に沿って波状に配置されるとは、小エンボス12を通る仮想線Vがナプキン幅方向に交互に行き来するように配置されていることを意味し、前記仮想線Vが単振動波形のように滑らかな曲線からなるものの他に、ジグザグ線のような折れ線からなるものも含む概念である。
【0042】
本生理用ナプキン1では、前記サイドシート7と透液性表面シート3との積層部分の肌側に、非肌側に向けて窪む前記サイドエンボス10が形成されているため、前記サイドシート7が透液性表面シート3に強固に固着され、装着時に大きな身体の動きを受けても、これらが剥離するのが確実に防止できるようになる。つまり、従来の吸収性物品では、サイドシートと表面シートとが接着剤のみで接合されるものが少なくないため、接着剤のみによる接合に比べて、不織布シート同士を融着したサイドエンボス10による接合の方が強固に固定でき、シート間の剥離が防止できるようになる。
【0043】
また、前記サイドエンボス10として、相対的に大きな面積で形成されるとともに、ナプキン長手方向に沿って直線状に整列して等間隔で配置された複数の大エンボス11、11…を有しているため、この大エンボス11…によって、脚の動きの影響を受けやすい股下部などのように身体の動きが大きな部分でも、サイドシート7が透液性表面シート3に強固に接合され、サイドシート7が透液性表面シート3から剥離するのが防止できるようになる。
【0044】
更に、隣り合う大エンボス11、11の間に、前記大エンボスと離間して、相対的に小さな面積で形成された複数の小エンボス12、12…が間隔をあけてナプキン長手方向に沿って波状に配置されているため、小エンボス12、12間及び小エンボス12と大エンボス11との間にそれぞれ非エンボス部が設けられることによって、連続線状のエンボスラインを形成した場合に比べて、装着時の身体の前後方向の丸みに沿った変形が生じやすくなり、生理用ナプキン1が身体の形状に柔軟にフィットして、身体に対する柔軟性を高めることができるようになる。
【0045】
また、複数の小エンボス12、12…が間隔をあけて波状に配置してあるため、生理用ナプキン1の前後方向の擦れに対する肌当たりを柔軟にすることができる。具体的には、仮に、小エンボス12を生理用ナプキン1の長手方向に直線状に配置した場合には、生理用ナプキン1の前後方向に対して相対的な身体の動きが生じた際、常に身体の同じ部分に小エンボスが当接するため、エンボスの硬さを感じやすく、肌当たりが悪化する。これに対して、本生理用ナプキン1では、小エンボス12、12…をナプキン長手方向に波状に配置してあるため、各小エンボス12が身体の異なる部分に当接し、当接する肌の部分が分散して、肌当たりが柔らかなものとなる。
【0046】
以下、前記サイドエンボス10について更に詳しく説明すると、前記大エンボス11は、図1に示されるように、複数の窪み部が近接して配置され、これらの窪み部が一群となって一つの模様が形成されるようにしたものでもよいし、一体的な窪み部によって一つの模様が形成されるようにしたものでもよい(図3参照)。前記大エンボス11の形状は、図1に示される花形、図3に示される三角形、ハート形、三日月形など、任意の形状で形成することが可能である。
【0047】
一方、前記小エンボス12は、小さな面積からなるため比較的単純な形状で形成するのが好ましい。例えば、図1及び図3に示されるように、丸形、菱形、星形などとすることができる。
【0048】
前記大エンボス11の面積と小エンボス12の面積との比(面積比)は、大エンボス11の面積:小エンボス12の面積=4:1〜50:1、好ましくは5:1〜20:1とするのがよい。この範囲の面積比とすることにより、大エンボス11及び小エンボス12による接合強度を十分に確保できるとともに、小エンボス12が肌面に当接した際の肌当たりの悪化が防止できる。
【0049】
図1に示されるように、隣り合う前記大エンボス11、11間のナプキン長手方向の間隔Sは、20〜50mmとするのが好ましい。この間隔Sが20mm未満では、融着部の硬さを感じやすくなり、肌当たりが悪化する。一方、50mmを超えると、接合強度を確保できなくなるおそれがある。
【0050】
前記大エンボス11の幅寸法(前記大エンボス11のナプキン幅方向の寸法)は、図1に示されるように、サイドシート7と透液性表面シート3との重なり幅Mの50%以上、好ましくは50〜90%とするのがよい。これによって、大エンボス11によりサイドシート7と透液性表面シート3とが強固に接合でき、これらの剥離が確実に防止できる。前記大エンボス11は、前記重なり幅Mの範囲内に形成するのが好ましく、重なり幅Mより幅方向外側にはみ出して形成するのは好ましくない。
【0051】
前記大エンボス11は、前記サイドシート7と透液性表面シート3との重なり幅Mに対し、ナプキン幅方向の中央部に配置するのが好ましいが、これより若干内側に偏倚した位置に配置してもよい。
【0052】
前記大エンボス11は、ナプキン幅方向の寸法とナプキン長手方向の寸法とがほぼ同等となる形状で形成するのが好ましく、この縦横比が0.8〜1.2程度とするのが好ましい。これにより、接合強度が確保できるとともに、大エンボス11の剛性をほとんど受けずにナプキンの長手方向に湾曲させやすくなる。
【0053】
前記大エンボス11が方向性を有する形状で形成される場合、この大エンボス11を配置する向きは任意であるが、後段で詳述するように、隣り合う大エンボス11、11でナプキン幅方向に逆向きとなるように、交互に配置するのが好ましい。これにより、ナプキン幅方向に対する接合強度がほぼ均等になるとともに、外観デザイン上も、接合部分が片寄らずに均等に接合されていることを視覚的に強調することができるようになる。
【0054】
図1及び図3に示されるように、前記大エンボス11の面積が、生理用ナプキン1の幅方向に対して非対称となる形状で形成された場合の配向方向としては、前記小エンボス12、12…によって形成される波形が生理用ナプキン1の幅方向に突出する方向に、相対的に小さな接合強度の側が配向され、これと反対側の方向に、相対的に大きな接合強度の側が配向されるようにするのが好ましい。図1に示される大エンボス11は、楕円形の5枚の花びらが放射状に配置された花形からなり、花びらが1枚の側より花びらが2枚の側の方が接合強度(融着面積)が大きく形成されている。図3に示される(A)三角形、(B)ハート形、(C)三日月形も同様に、一方側が他方側より接合強度(融着面積)が大きく形成されている。大エンボス11をこのような方向で配置することによって、大エンボス11の接合強度が低い側に、波形に配置された小エンボス12、12…の凸部が位置するため、大エンボス11の接合強度の不均衡を小エンボスによって補うことができ、サイドシート7の剥がれが防止できるとともに、サイドエンボス10の外観デザイン上、接合強度が全長に亘ってほぼ均等であることを視覚的に強調できるようになる。
【0055】
次いで、前記小エンボス12は、前記大エンボス11の幅内に配置するのが好ましい。すなわち、前記小エンボス12は、図1に示されるように、前記大エンボス11の幅方向の外側端を結ぶ直線Lと、内側端を結ぶ直線Lとで挟まれる幅内に形成されている。したがって、前記サイドエンボス10は、大エンボス11及び小エンボス12の全てが、前記直線LとLとを側縁とする帯状の幅内に配置されている。これによって、サイドシート7に剥がされるような力が作用した際、複数の大エンボス11、11…が剥離に対して抵抗するようになり、サイドシート7と透液性表面シート3との接合強度が高まる。これに対して、小エンボス12が大エンボス11の幅寸法より外側に配置されていると、サイドシート7を剥がす力に対して小エンボス12が最初に力を受けるようになり、サイドシート7が引き剥がされやすくなる。
【0056】
前記小エンボス12は、隣り合う大エンボス11、11間に、2〜15個程度配置するのが好ましい。小エンボス12の配置個数は、隣り合う大エンボス11、11間の離間距離によるところが大きく、小エンボス12、12同士の離間距離をある程度確保して柔軟性を高めつつ、接合強度が十分に確保できる範囲で配置されている。
【0057】
隣り合う前記小エンボス12、12同士のナプキン長手方向の間隔(非エンボス部の間隔)は、2〜10mm程度とするのが好ましい。この間隔が2mmより小さいと小エンボス12同士が近接しすぎて直線状に形成したのと同じような作用を生じるようになり、10mmを超えると接合強度が確保できなくなる。
【0058】
前記小エンボス12、12…は、図1に示されるように、波長λが生理用ナプキン1の長手方向長さに対して1/2〜1/8、好ましくは1/3〜1/7の略単振動波形をした仮想線V上に配置されるようにするのが好ましい。これによって、生理用ナプキン1の前後方向の身体の動きに対して、確実に小エンボス12が身体の同じ部位に当接しなくなり、小エンボス12が当接する肌の部分をより確実に分散でき、肌当たりをより一層柔らかくすることができるようになる。前記大エンボス11は、小エンボス12によって形成される略単振動波形の仮想線Vに対して、図1に示されるように、幅方向への凸部の頂部に位置するようにしてもよいし、後述するように中間部に位置するようにしてもよい(図5参照)。
【0059】
前記サイドシート7と透液性表面シート3との接合は、前記サイドエンボス10による接合のみでもよいが、これらシート同士の接合強度を更に高めるとともに、非エンボス部における接合部分の隙間を低減するため、図4に示されるように、所定部分を接着剤によって接着するようにしてもよい。この接着部13は、同図4(A)に示されるように、少なくとも大エンボス11が施される部分を除く部分に形成するのが好ましい。大エンボス11が施される部分に重ねて接着部13を設けると、シート同士の融着による硬さに加えて、接着剤の硬化による硬さが追加されるため、大エンボス11の硬さが更に増し、装着時の違和感を感じやすくなる。また、前記接着部13は、同図4(B)に示されるように、大エンボス11及び小エンボス12が施される部分を除く部分に形成してもよい。このとき、前記接着部13は、隣り合う大エンボス11、11間において、生理用ナプキン1の幅方向に対し、小エンボス12又は接着部13のいずれかが必ず施されるように配置するのが好ましい。これにより、ナプキン幅方向に対する接合部分の隙間が無くなり、体液の漏れが防止できるようになる。
【0060】
前記小エンボス12の波状パターンの変形例としては、図5に示されるように、隣り合う大エンボス11、11間において、両側の大エンボス11、11の中心部を基点としてほぼ1周期分の略単振動波形をした仮想線上に小エンボス12、12…が配置され、これをナプキン長手方向に繰り返し平行移動させたパターンで配置することができる。
【0061】
また、上記形態例では、ウイング状フラップWより前側及び後側に延在する本体部分の長さがそれぞれほぼ同じ、所謂昼用の生理用ナプキン1について説明したが、図6に示されるように、前側より後側の方が長く形成された、所謂夜用の生理用ナプキン1についても同様に適用できる。
【符号の説明】
【0062】
1…生理用ナプキン、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…被包シート、7…サイドシート、10…サイドエンボス、11…大エンボス、12…小エンボス、13…接着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6