特許第6458188号(P6458188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6458188
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】電力量計用のバイパス工具
(51)【国際特許分類】
   G01R 11/04 20060101AFI20190110BHJP
   G01R 1/04 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
   G01R11/04 B
   G01R11/04 D
   G01R1/04 A
   G01R1/04 B
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-106069(P2018-106069)
(22)【出願日】2018年6月1日
【審査請求日】2018年6月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390009999
【氏名又は名称】日動電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】田中 茂宏
(72)【発明者】
【氏名】石谷 直樹
(72)【発明者】
【氏名】日前 武志
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏和
(72)【発明者】
【氏名】安田 英幸
(72)【発明者】
【氏名】領野 昌治
(72)【発明者】
【氏名】元家 正信
【審査官】 青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−025468(JP,A)
【文献】 実開昭59−062185(JP,U)
【文献】 特開2017−044366(JP,A)
【文献】 実開平04−018114(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/04
G01R 11/00
G01R 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力量計が備える端子台の前面に対向配置される背面を有するケースと、
前記端子台にバイパス回路を接続するためのバイパス端子であって、該ケース内に配置され、該ケースの前記背面と前面とが並ぶ前後方向で移動可能であり、且つ該前後方向での移動により前記端子台の接続端子に接触することで該接続端子に導通接続する接続状態となる位置と、前記端子台の接続端子から離間することで接続端子から切り離される切離状態となる位置とに配置変更可能なバイパス端子と、
該バイパス端子を前記前面から前記背面に向かう方向に向けて付勢する付勢手段と、
前記ケースの前面側に設けられ、且つ前記ケースの前記背面から前記前面に向かう方向に向けて前記バイパス端子を引き操作可能な操作部と、を備え、
前記ケースは、
前記切離状態となる位置に配置されたバイパス端子全体を覆う端子カバー部と、
前記前面に形成され且つ前記バイパス端子を引き操作して前記切離状態となる位置に配置させている状態の前記操作部を前記前面の前方で掛止可能であり、且つ前記操作部の掛止を解除することで前記バイパス端子の前記切離状態となる位置から前記接続状態となる位置への配置変更を許容する後退用受部とを有する、
電力量計用のバイパス工具。
【請求項2】
前記ケースを前記電力量計に固定するための固定ねじであって、前記電力量計に螺合させる螺合位置と、該螺合位置から退避した退避位置とに配置変更可能である固定ねじを備え、
前記ケースは、前記退避位置に配置された固定ねじ全体を覆う固定ねじカバー部を有する、
請求項1に記載の電力量計用のバイパス工具。
【請求項3】
前記ケースは、前記背面を、電力量計の端子台であって、ケーブルが接続される接続端子が配置された端子用凹部が形成された端子台の前記前面にあてがうように構成され、
前記端子カバー部は、前記ケースが前記端子台の前記前面にあてがわれた状態で前記端子用凹部内に挿入されるようにして前記ケースの前記背面から突出する、
請求項1又は請求項2に記載の電力量計用のバイパス工具。
【請求項4】
前記端子カバー部の横幅は、前記端子用凹部の横幅に合わせて設定される、
請求項3に記載の電力量計用のバイパス工具。
【請求項5】
前記固定ねじカバー部は、前記ケースの前記背面に設けられ、
前記ケースには、前記前面から前記背面に亘って貫設される覗穴が形成され、
該覗穴の前記ケースの前記背面側の開口は、前記固定ねじカバー部に隣接する位置に形成される、
請求項2に記載の電力量計用のバイパス工具。
【請求項6】
前記固定ねじカバー部は、前記ケースの前記背面から突出するように構成され、
前記固定ねじカバー部には、前記固定ねじの位置を示す基準表示部であって、前記覗穴との間に形成される基準表示部が形成される、
請求項5に記載の電力量計用のバイパス工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力量計に取り付けて電源側と負荷側とをつなぐバイパス回路を形成する電力量計用のバイパス工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電源と負荷とをつなぐ電路上に設置される電力量計に対して、電源側と負荷側とをつなぐためのバイパス回路を新たに接続するバイパス工具が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電線を接続する電線接続部が複数設けられた端子ブロックを備える電力量計を対象とし、該端子ブロックに取り付けることで電力量計に前記バイパス回路を接続するように構成されたバイパス工具が開示されている。
【0004】
かかるバイパス工具は、端子ブロックの前面にあてがうケースと、該ケースに設けられたブスバであって、前記バイパス回路を構成するブスバと、を備えており、該ブスバには、ケースの背面側で外部に露出する一対の接続端子部が含まれている。
【0005】
そのため、前記バイパス工具は、ケースが端子ブロックの前面にあてがわれると、一対の接続端子部が別々の電線接続部に当接(すなわち、導通)し、これにより、バイパス回路が端子ブロックに接続されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−80687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記従来のバイパス工具では、電線接続部に当接する接続端子部が常時ケースの外部に露出しているため、ケースを端子台に近付けたときに、接続端子部が使用者の意図しないタイミングで電線接続部に当接してしまい、電力量計に対してバイパス回路が誤って接続されてしまうことがあった。
【0008】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、電力量計へのバイパス回路の誤接続を防止できる電力量計用のバイパス工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電力量計用のバイパス工具は、
電力量計が備える端子台の前面に対向配置される背面を有するケースと、
前記端子台にバイパス回路を接続するためのバイパス端子であって、該ケース内に配置され、該ケースの前記背面と前面とが並ぶ前後方向で移動可能であり、且つ該前後方向での移動により前記端子台の接続端子に接触することで該接続端子に導通接続する接続状態となる位置と、前記端子台の接続端子から離間することで接続端子から切り離される切離状態となる位置とに配置変更可能なバイパス端子と、
該バイパス端子を前記前面から前記背面に向かう方向に向けて付勢する付勢手段と、
前記ケースの前面側に設けられ、且つ前記ケースの前記背面から前記前面に向かう方向に向けて前記バイパス端子を引き操作可能な操作部と、を備え、
前記ケースは、
前記切離状態となる位置に配置されたバイパス端子全体を覆う端子カバー部と、
前記前面に形成され且つ前記バイパス端子を引き操作して前記切離状態となる位置に配置させている状態の前記操作部を前記前面の前方で掛止可能であり、且つ前記操作部の掛止を解除することで前記バイパス端子の前記切離状態となる位置から前記接続状態となる位置への配置変更を許容する後退用受部とを有する。
【0010】
上記構成の電力量計用のバイパス工具によれば、バイパス端子を電力量計に接続しないときは、該バイパス端子を端子カバー部に収容しておくことができるため、電力量計へのバイパス端子の誤接触(誤接続)を防止することができる。
【0011】
本発明の電力量計用のバイパス工具は、
前記ケースを前記電力量計に固定するための固定ねじであって、前記電力量計に螺合させる螺合位置と、該螺合位置から退避した退避位置とに配置変更可能である固定ねじを備え、
前記ケースは、前記退避位置に配置された固定ねじ全体を覆う固定ねじカバー部を有する、ように構成されていてもよい。
【0012】
かかる構成によれば、固定ねじを電力量計に螺合させない場合は、該固定ねじ全体を固定ねじカバー部内に配置することができるため、使用者の意図しないタイミングで固定ねじが電力量計に対して接触(導通)してしまうことを防止できる。
【0013】
また、本発明の電力量計用のバイパス工具は、
前記ケースは、前記背面を、電力量計の端子台であって、ケーブルが接続される接続端子が配置された端子用凹部が形成された端子台の前記前面にあてがうように構成され、
前記端子カバー部は、前記ケースが前記端子台の前記前面にあてがわれた状態で前記端子用凹部内に挿入されるようにして前記ケースの前記背面から突出していてもよい。
【0014】
かかる構成によれば、ケースを端子台に対して前方側からあてがうと、端子用凹部内に端子カバー部が挿入されるため、端子カバー部内のバイパス端子を外部の構造に接触しないようにしつつ、接続端子の近くまで案内することができる。
【0015】
この場合、
前記端子カバー部の横幅は、前記端子用凹部の横幅に合わせて設定されていてもよい。
【0016】
このようにすれば、ケースを端子台に対して前方側からあてがった状態で、ケースの位置が端子台に対して横ずれしてしまうことを防止できる。
【0017】
本発明の電力量計用のバイパス工具において、
前記固定ねじカバー部は、前記ケースの前記背面に設けられ、
前記ケースには、前記前面から前記背面に亘って貫設される覗穴が形成され、
該覗穴の前記ケースの前記背面側の開口は、前記固定ねじカバー部に隣接する位置に形成されていてもよい。
【0018】
かかる構成によれば、覗穴を通じて、ケースの後方に位置する端子台と固定ねじカバー部の状態を確認しながらバイパス工具を電力量計の端子台に取り付けることができるようになる。
【0019】
この場合、
前記固定ねじカバー部は、前記ケースの前記背面から突出するように構成され、
前記固定ねじカバー部には、前記固定ねじの位置を示す基準表示部であって、前記覗穴との間に形成される基準表示部が形成されるようにしてもよい。
【0020】
かかる構成によれば、覗穴を通じて、固定ねじカバー部内の固定ねじの位置も把握することができるため、バイパス工具を電力量計に取り付け易くなる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明の電力量計用のバイパス工具は、電力量計へのバイパス回路の誤接続を防止できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る電力量計用のバイパス工具の正面図である。
図2図2は、同実施形態に係る電力量計用のバイパス工具の背面図である。
図3図3は、同実施形態に係る電力量計用のバイパス工具の平面図である。
図4図4は、図1のIV−IV線における断面図である。
図5図5は、図1のV−V線における断面図である。
図6図6において、(a)は第一の姿勢に切り替えた操作部の正面図であり、(b)は第一の姿勢に切り替えた操作部の平面図である。
図7図7において、(a)は第二の姿勢に切り替えた操作部の正面図であり、(b)は第二の姿勢に切り替えた操作部の平面図である。
図8図8において、(a)は電力量計の正面図であり、(b)は電力量計の底面図である。
図9図9は、同実施形態に係る電力量計用のバイパス工具の使用状態の正面図であって、(a)はバイパス回路を端子台に接続する前の状態の正面図であり、(b)はバイパス回路を端子台に接続した後の状態の正面図である。
図10図10は、同実施形態に係る電力量計用のバイパス工具の使用状態の平面図であって、(a)はバイパス回路を端子台に接続する前の状態の平面図であり、(b)はバイパス回路を端子台に接続した後の状態の平面図である。
図11図11は、本発明の他の実施形態に係る電力量計用のバイパス工具の正面図である。
図12図12は、本発明の他の実施形態に係る電力量計用のバイパス工具の使用状態の平面図であって、(a)はバイパス回路を端子台に接続する前の状態の平面図であり、(b)はバイパス回路を端子台に接続した後の状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る電力量計用のバイパス工具(以下、バイパス工具と称する)について添付図面を参照しつつ説明を行う。
【0024】
電力量計5は、図8(a)、及び図8(b)に示すように、計量部50と、端子台51と、を備えており、該端子台51は、横並びに配置された複数の接続端子510を備えている。
【0025】
端子台51は、電源側につながるケーブルと、負荷側につながるケーブルと、が接続されるように構成されており、電源側のケーブルと負荷側のケーブルとは計量部50を通じて電気的に接続されるようになっている。なお、端子台51は、底面の差込孔510aを通じてケーブルを内部に差し込めるように構成されている(図8(b)参照)。なお、端子台51の前面には、凹状の端子用凹部510aが形成されており、接続端子510は、この端子用凹部510a内に配置されている。
【0026】
本実施形態に係るバイパス工具は、上記構成の電力量計5に使用するものであり、端子部に対して、計量部50を通さずに(迂回して)電源側のケーブルと負荷側のケーブルとを電気的に接続するバイパス回路を接続するように構成されている。
【0027】
本実施形態に係るバイパス工具は、図1に示すように、バイパス回路が内装されるケース2と、該ケース2内に設けられるバイパス端子3であって、バイパス回路を電力量計5(本実施形態では、端子台51)に接続するためのバイパス端子3(図2参照)と、該バイパス端子3に設けられる操作部4であって、バイパス端子3を端子台51に導通接続した接続状態と、バイパス端子3を端子台51から切り離した切離状態とに切り替えるための操作部4と、を備えている。
【0028】
なお、本実施形態では、ケース2の前面と背面とが並ぶ方向を前後方向、ケース2の上下に対応する方向を上下方向、前後方向と上下方向とに直交する方向(すなわち、ケース2の横幅に対応する方向)を横方向、と称して以下の説明を行うこととする。
【0029】
また、本実施形態に係るバイパス工具1には2つのバイパス回路が設けられており、一方のバイパス回路には2つのバイパス端子3が接続され、この2つのバイパス端子3には共通の1つの操作部4が設けられている。他方のバイパス回路にも、2つのバイパス端子3が接続されているが、この2つのバイパス端子3のそれぞれには、別々の操作部4が設けられている(図1図2参照)。
【0030】
各バイパス端子3は、前記横方向で間隔をあけて並ぶように配置されており、さらに、ケース2を端子台51の前面にあてがった状態で、接続端子510の前方に配置されるようになっている(図2参照)。
【0031】
ケース2は、図4に示すように、端子台51の前面にあてがわれる背面200、及び該背面200とは反対側の前面201を有するケース本体20と、バイパス端子3をケース本体20に対して前後方向でスライドさせるためのスライド構造21と、バイパス端子3を前記前後方向における後方側に付勢するための付勢部材22と、バイパス端子3を前記前後方向で位置決め可能な端子用位置決部23と、ケース本体20を端子台51に固定するための固定構造24(図2参照)と、を備えている。
【0032】
ケース本体20は、箱状に形成されており、内部にはバイパス端子3が配置されている。なお、ケース本体20内には、バイパス回路を構成するための基板や電子部品も配置されている。
【0033】
また、ケース本体20には、図1、及び図5に示すように、前後方向で貫通する覗穴202が形成されている。覗穴202は、前後方向に沿って真っすぐに形成されており、横方向における形成位置が、後述する固定用挿通部241の位置と一致している。そのため、覗穴202の後方側の開口(ケース本体20の背面200側の開口)は、後述する固定用挿通部241の上側に隣接する位置に形成されている。
【0034】
図4に示すように、スライド構造21は、操作部4を前記前後方向でスライド可能となるように挿通する操作部用挿通部210であって、ケース本体20の前面201で開口する筒状の操作部用挿通部210と、バイパス端子3を前記前後方向でスライド可能となるように挿通する端子用挿通部211であって、ケース本体20の背面200に設けられる端子用挿通部211とを有する。
【0035】
操作部用挿通部210は、筒状であり、且つケース本体20の前面201の内側(ケース本体20内に位置する一面側)から前記前後方向における後方側に向かって延出している。
【0036】
また、操作部用挿通部210では、先端側の内径が基端側の内径よりも大きくなっている。そのため、操作部用挿通部210の先端側の内周面と基端側の内周面との境目には、操作部用挿通部210の基端側の内周面に対応する位置から径方向外方(操作部用挿通部210の径方向外方)に広がる内平面212が形成されている。
【0037】
なお、本実施形態では、2つの操作部用挿通部210が前記横方向で間隔をあけて並んでいる。
【0038】
端子用挿通部211は、筒状であり、且つケース本体20の背面200の外側(ケース本体20外に位置する一面側)から前記前後方向における後方側に向かって延出している。また、端子用挿通部211は、基端側の開口がケース本体20の内部に向けて開放している。端子用挿通部211は、バイパス端子3(後述する端子本体部30)を覆う端子カバー部でもある。
【0039】
本実施形態では、上述のように、2つのバイパス端子3がケース2の横方向で間隔をあけて並ぶように配置されるため、ケース本体20の背面200には、各バイパス端子3の配置位置に合わせて2つの端子用挿通部211が前記横方向で間隔をあけて並ぶように形成されている。なお、付勢部材22は、板ばね等で構成されていてもよい。
【0040】
また、端子用挿通部211は、操作部用挿通部210に対して上方側にずれた位置に設けられている。
【0041】
付勢部材22は、圧縮コイルバネである。また、付勢部材22は、端子用挿通部211の先端側に挿入されており、伸縮方向における一端が内平面212に当接するように配置されている。なお、付勢部材22は、バイパス端子3が、後述する進出位置に配置した状態で、伸縮方向における全長が知全長未満となるように構成されることが好ましい。このようにすれば、バイパス端子3に対して前後方向における後方側に働く付勢力を常にかけておくことができる。
【0042】
端子用位置決部23は、図6(b)、図7(b)に示すように、バイパス端子3を前記前後方向における後方側にスライドさせた進出位置に位置決めする進出用位置決部230と、バイパス端子3を前記前後方向における前方側にスライドさせた後退位置に位置決めする後退用位置決部231と、を有する。
【0043】
なお、進出位置とは、端子台51の前面201にケース2(ケース本体20の背面200)をあてがっている状態でバイパス端子3が端子台51の接続端子510に接触(導通)する位置のことである。また、後退位置とは、端子台51の前面201にケース2(ケース本体20の背面200)をあてがっている状態でバイパス端子3が端子台51の接続端子510に対して非接触となる位置のことである。
【0044】
進出用位置決部230は、図6(b)に示すように、前記前後方向における後方側で操作部4を受ける進出用受部230aと、該進出用受部230a上に操作部4を留めるための進出用ずれ止部230bと、を有する。
【0045】
後退用位置決部231は、図7(b)に示すように、前記前後方向における後方側で操作部4を受ける後退用受部231aと、後退用受部231a上に操作部4を留めるための後退用ずれ止部231bと、を有する。
【0046】
ここで、本実施形態に係る端子用位置決部23(進出用位置決部230、後退用位置決部231)は、操作部4を介してバイパス端子3を位置決めするように構成されている。
【0047】
より具体的に説明すると、端子用位置決部23は、ケース本体20の前面201から前方に向かって延出する筒状部232によって構成されている。
【0048】
筒状部232には、先端面から前記前後方向における基端側に向かって凹む凹部232aが形成されている。また、筒状部232には、周方向(自身の周方向)で間隔をあけて複数(本実施形態では2つ)の凹部232aが形成されている。
【0049】
進出用受部230aでは、図6(b)に示すように、凹部232a底面232bにより進出用受部230aが構成され、凹部232aの側面232cにより進出用ずれ止部230bが構成されている。
【0050】
そして、後退用受部231aでは、図7(b)に示すように、筒状部232の先端面232d(筒状部232の周方向で隣り合う凹部232aと凹部232aの間の先端面232d)により後退用受部231aが構成されており、該先端面232dの両側端部から手前側(前記前後方向における前方側)に膨出する膨出部232eにより後退用ずれ止部231bが構成されている。
【0051】
固定構造24は、図5に示すように、前記前後方向に沿ってケース本体20の前面201から背面200まで連続する挿通領域を形成する前側挿通部240と、該前側挿通部に対して前記前後方向における後方側で並ぶ位置に設けられる固定用挿通部241と、固定用挿通部241に対して前記前後方向における前方側から挿通される固定ねじ242と、固定用挿通部241内の固定ねじ242をケース本体20の前面201側に付勢する押戻手段243と、を備えている。
【0052】
前側挿通部240の挿通領域は、ケース本体20の前面201、及びケース本体20の背面200で開放するように形成されている。
【0053】
本実施形態に係る前側挿通部240は、固定ねじ242を配置する第一の配置部241aと、押戻手段243を配置する第二の配置部241bと、を有する。第二の配置部241bは、第一の配置部の後方側に連設されており、さらに、第二の配置部241bは、第一の配置部よりも内径が小さくなっている。
【0054】
固定用挿通部241は、筒状であり且つケース本体20の背面200から前記前後方向における後方側に向かって延出している。また、固定用挿通部241は、横方向において端子用挿通部211よりも内側に設けられている。なお、固定用挿通部241は、固定ねじ242を収容可能な固定ねじカバー部でもある。
【0055】
固定用挿通部241には、内部に挿通される固定ねじ242の位置(固定ねじ242の軸線)を表示する基準表示部241aが形成されている。
【0056】
固定用挿通部241の上面は、先細り、より具体的には、横方向における外側から中央部側になるにつれて上方に向かうように形成されている。そのため、本実施形態の固定用挿通部241では、上面に対して前後方向に沿って真っすぐに延びるように形成された頂部が基準表示部241aとなっている。
【0057】
また、各固定用挿通部241、各端子用挿通部211は、ケース2が端子台51の前面201にあてがわれている状態において別々の接続端子510の前方に配置されるように形成されている。
【0058】
固定ねじ242は、固定用挿通部241に対して前記前後方向でスライド可能となるように挿通されている。また、固定ねじ242は、固定用挿通部241内でのスライドにより、雄ねじ部の先端部を固定用挿通部241から前記前後方向における後方側に露出(進出)させた露出状態と、雄ねじ部の先端部全体を固定用挿通部241内に収容した収容状態(すなわち、雄ねじ部の先端が固定用挿通部241の先端よりも前後方向のける前方側に位置する状態)とに切替可能である。
【0059】
固定ねじ242が露出状態に切り替えられると、雄ねじ部を電力量計5(端子台51)におけるバイパス工具の取付箇所(例えば、接続端子510に形成されているねじ孔)に螺合させることができる状態になる。一方、固定ねじ242が収容状態に切り替えられると、雄ねじ部を前記取付箇所に螺合させることができない状態になる。
【0060】
押戻手段243は、圧縮コイルバネで構成されており、前記前後方向で伸縮するようにして前側挿通部240内に配置されており、前側挿通部240内で前記前後方向における後方側にスライドさせた固定ねじ242を手前側に押し返すように構成されている。
【0061】
バイパス端子3は、図4に示すように、軸状の端子本体部30と、端子本体部30と操作部4とを連結する連結構造31と、端子本体部30をバイパス回路の電路に接続するための導通接続部32と、を備えている。
【0062】
端子本体部30は、軸心方向を前記前後方向に一致又は略一致させた状態で配置されており、端子用挿通部211に挿通されている。
【0063】
また、端子本体部30は、バイパス端子3を進出位置又は退避位置への配置変更に伴い、端子用挿通部211内で前記前後方向にスライドするように構成されている。そして、端子台51の前面201にケース2をあてがった状態でバイパス端子3が進出位置に配置されると、端子本体部30の先端部は、端子挿通部から外部に進出して(すなわち、端子挿通部よりも前記前後方向における後方側に進出して)接続端子510に接触する。一方、端子台51の前面201にケース2をあてがった状態でバイパス端子3が退避位置に配置されると、端子本体部30の先端部は、端子挿通部内に完全に退避して接続端子510から離れる。このようにして、バイパス端子3が接続端子510に導通接続された状態と、バイパス端子3が接続端子510から切り離された状態とが切り替わるようになっている。
【0064】
連結構造31は、端子本体部30が取り付けられる連結板部310と、該連結板部310と操作部4とを連結する連結軸部311と、を有する。
【0065】
連結板部310には、端子本体部30の軸心方向における一端(以下、基端と称する)が取り付けられている。また、連結板部310は、細長い形状(本実施形態では、長方形状)であり、長手方向における一端部にバイパス端子3が取り付けられ、長手方向における中央部に連結軸部311が取り付けられている。
【0066】
連結軸部311は、軸心方向が前記前後方向に一致又は略一致する姿勢で、操作部用挿通部210の先端側から該操作部用挿通部210内に挿通されている。
【0067】
また、本実施形態では、連結軸部311が操作部用挿通部210内の付勢部材22の内側にも挿通された状態になっており、連結板部310が付勢部材22の伸縮方向における他端(以下、先端と称する)を受けるように構成されている。
【0068】
さらに、連結軸部311の軸心は、端子本体部30の軸心から離れた場所(端子本体部30の径方向で離れた場所)に位置している。そのため、端子本体部30は、連結軸部311の軸心を中心とする周方向で回転可能であり、端子用挿通部211との間のスペースにより許容される範囲内で、横方向に動くことができるように構成されている。
【0069】
導通接続部32は、連結構造31の一部に対して一体に形成されている。本実施形態では、連結板部310の長手方向における他端部により導通接続部32が構成されている。そして、本実施形態では、各バイパス端子3の導通接続部32同士が電気的に接続されることで、一つのバイパス回路が構成されている。
【0070】
操作部4は、ケース本体20の前面201よりも手前側に配置される操作部本体40と、該操作部本体40から延出し且つ操作部4用ガイド部に対して前記前後方向でスライド可能となるように挿入される被ガイド部41と、を有する。
【0071】
操作部本体40は、細長い形状(本実施形態では長方形状)であり、長手方向における寸法が端子用位置決部23(筒状部232)の外径よりも大きくなっている。本実施形態に係る操作部本体40では、図6(a)、及び図7(a)に示すように、長手方向における両側が端子用位置決部23(進出用受部230a、若しくは後退用受部231a)に対して前方側から掛止する掛止部400となっている。
【0072】
被ガイド部41は、この操作部本体40の長手方向における中央部側から延出している。そのため、各掛止部400は、被ガイド部41を中心とする周方向に沿って回動可能となっている。
【0073】
本実施形態に係るバイパス工具の構成は以上の通りである。続いて、本実施形態に係るバイパス工具の使い方を説明する。
【0074】
バイパス工具を用いてバイパス回路を端子台51に接続するにあたり、操作部本体40を第二の姿勢に切り替えておき(図9(a)参照)、各バイパス端子3を後退位置に配置しておく。このとき、端子本体部30の先端は、端子用挿通部211内に配置されている(完全に収容されている)。また、操作部本体40は、掛止部400が後退用受部231aに対して前方側から掛止されている。
【0075】
掛止部400は、被ガイド部41を中心とする周方向に沿って回動しようとすると後退用ずれ止部231bが干渉する。そのため、掛止部400は、後退用ずれ止部231bによって後退用受部231a上に留められている。
【0076】
バイパス工具を端子台51に取り付けるには、まず、ケース2(ケース本体20の背面200)を端子台51の前面201にあてがう。ケース本体20の背面200を端子台51の前面201にあてがった状態においては、各端子本体部30と各固定用挿通部241とが別々の接続端子510の前方に配置され、さらに、固定用挿通部241は、前記設置個所(本実施形態では、接続端子510に形成されているねじ孔)の前方に配置される。
【0077】
また、端子用収容部が端子台51の端子用凹部510a内に挿入されるが、端子用収容部と端子用凹部510aとの間には隙間がほとんど生じないようになっている。そして、覗穴202を通じてケース2の手前側から、ケース2の後方側の様子を見ながら、固定用挿通部241の基準表示部241aを目安にして固定ねじ242と該固定ねじ242の設置個所との位置関係を目視で確認し、固定ねじ242を前記設置個所、すなわち、接続端子510のねじ孔に螺合させる。
【0078】
そして、操作部本体40を第一の姿勢に切り替え(図9(b)参照)、各バイパス端子3を後退位置から進出位置に移動させることで、バイパス回路が端子台51に接続される。
【0079】
より具体的に説明すると、操作部本体40を後退用ずれ止部231bよりも手前側に引き出した後、該操作部本体40を回転させて各掛止部400を後退用受部231aの前方から進出用受部230aの前方に移動させる。そして、各掛止部400を進出用受部230aに配置し、付勢手段の付勢力に任せて各掛止部400を進出用受部230aに掛止する。
【0080】
なお、掛止部400は、進出用受部230aに掛止されている状態で被ガイド部41を中心とする周方向に沿って回動しようとすると、進出用ずれ止部230bが干渉する。そのため、掛止部400は、被ガイド部41を中心とする周方向での回動が規制された状態になる。
【0081】
また、掛止部400を後退用受部231aから進出用受部230aに掛け替えるに伴い、端子本体部30が前記前後方向における前方側にスライドする。そのため、端子本体部30の先端部が端子用挿通部211から外側に進出し、該端子本体部30の先端部(先端面232d)が接続用端子の前面201に当接する(図10(b)参照)。
【0082】
端子本体部30は、このようにして接続用端子に導通接続される。そして、各バイパス端子3の端子本体部30を接続用端子に導通接続することにより、バイパス回路を端子台51に接続することができる。
【0083】
端子台51からバイパス回路を切り離す場合は、各バイパス端子3を進出位置から後退位置に移動させる。
【0084】
より具体的に説明すると、操作部本体40を進出用ずれ止部230b及び後退用ずれ止部231bよりも手前側に引き出した後、該操作部本体40を回転させて各掛止部400を進出用受部230aの前方から後退用受部231aの前方に移動させる。そして、各掛止部400を後退用受部231aに配置し、付勢手段の付勢力に任せて各掛止部400を後退用受部231aに掛止する。
【0085】
掛止部400を進出用受部230aから後退用受部231aに掛け替えるに伴い、端子本体部30が前記前後方向における後方側にスライドする。そのため、端子本体部30の先端部全体が端子用挿通部211内に移動し、該端子本体部30の先端部(先端面232d)が接続用端子の前面201から離れる(図10(a)参照)。
【0086】
接続端子510に導通接続されている端子本体部30は、このようにして接続用端子から切り離される。そして、各バイパス端子3の端子本体部30を接続用端子から切り離すことで、バイパス回路を端子台51から切り離すことができる。
【0087】
以上のように、本実施形態に係るバイパス工具1によれば、バイパス端子3を電力量計5に接続しないときは、該バイパス端子3を端子用挿通部211に収容しておくことができるため、電力量計5へのバイパス端子3の誤接触(誤接続)を防止することができる。従って、バイパス工具1は、電力量計5へのバイパス回路の誤接続を防止できるという優れた効果を奏し得る。
【0088】
また、ケース2には、固定ねじ242全体を覆う固定用挿通部241が形成されているため、固定ねじ242を固定用挿通部241内に配置しておけば、使用者の意図しないタイミングで固定ねじ242が電力量計5に対して接触(導通)してしまうことを防止することもできる。
【0089】
さらに、端子用挿通部211は、ケース2を端子台51に対して前方側からあてがったときに端子用凹部510a内に挿入されるように構成されているため、ケース2を端子台51に対して前方側からあてがうと、端子用凹部510a内に端子用挿通部211が挿入されるため、端子用挿通部211部内のバイパス端子3を外部の構造に接触しないようにしつつ、接続端子510の近くまで案内することができる。
【0090】
また、端子用挿通部211の横幅が端子用凹部510aの横幅に合わせて設定されているため、ケース2を端子台51に対して前方側からあてがった状態においては、ケース2の位置が端子台51に対して横ずれしてしまうことを防止することもできる。
【0091】
本実施形態に係るバイパス工具1では、ケース2に対して前面201から背面200に亘って貫設される覗穴202が形成されており、また、覗穴202のケース2の背面200側の開口が固定用挿通部241に隣接する位置に形成されていているため、覗穴202を通じて、ケース2の後方に位置する端子台51と固定ねじ242カバー部の状態を確認しながらバイパス工具1を電力量計5の端子台51に取り付けることができるようになる。
【0092】
また、固定用挿通部241には、固定ねじ242の位置を示す基準表示部241aであって、前記覗穴202との間に形成される基準表示部が形成されているため、覗穴202を通じて、固定用挿通部241内の固定ねじ242の位置も容易に把握することができる。
【0093】
なお、本発明のバイパス工具は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0094】
上記実施形態において、バイパス工具1には2つのバイパス回路が設けられていたが、この構成に限定されない。例えば、バイパス工具1には、図11,12に示すように1つのバイパス回路が設けられていてもよいし、3つ以上のバイパス回路が設けられていてもよい。
【0095】
上記実施形態では、固定用挿通部241の上面に頂部を形成することで基準表示部241aが構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、基準表示部241aは、固定用挿通部241の上面に着色したり、ラベルを貼り付けたりすることで構成されていてもよい。
【0096】
上記実施形態において、覗穴202の後方側の開口は、固定用挿通部241の上方側に隣接していたが、この構成に限定されない。例えば、覗穴202の後方側の開口は、固定用挿通部241の上方側に隣接していてもよい。なお、基準表示部241aは、覗穴202の後方側の開口との間に形成されるよう、適宜位置を変更すればよい。
【符号の説明】
【0097】
1…バイパス工具、2…ケース、3…バイパス端子、4…操作部、5…電力量計、20…ケース本体、21…スライド構造、22…付勢部材、23…端子用位置決部、24…固定構造、30…端子本体部、31…連結構造、32…導通接続部、40…操作部本体、41…被ガイド部、50…計量部、51…端子台、200…背面、201…前面、202…覗穴、210…操作部用挿通部、211…端子用挿通部、212…内平面、230…進出用位置決部、230a…進出用受部、230b…進出用ずれ止部、231…後退用位置決部、231a…後退用受部、231b…後退用ずれ止部、232…筒状部、232a…凹部、232d…先端面、240…前側挿通部、241…固定用挿通部、241a…基準表示部、241b…第二の配置部、243…押戻手段、310…連結板部、311…連結軸部、400…掛止部、510…接続端子、510a…端子用凹部
【要約】
【課題】かかる実情に鑑み、電力量計へのバイパス回路の誤接続を防止できる電力量計用のバイパス工具を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、電力量計5にバイパス回路を接続するためのバイパス端子3であって、該バイパス回路に接触させることで導通接続可能な接続位置と、該バイパス回路から切り離される切離位置とに配置変更可能なバイパス端子3と、該バイパス端子3を内装するケース2とを備え、前記ケース2は、前記切離位置に配置されたバイパス端子3全体を覆う端子カバー部を有する。
【選択図】図10
図1
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