【実施例】
【0309】
実施例1.一般的な材料および方法
植物材料および生育条件
ベニバナ植物(カルタムスチンクトリウス)遺伝子型SU、S−317、S−517、LeSaf496、CW99−OL、およびCiano−OLを、16時間(25℃)/8時間(22℃)の昼/夜サイクル下でパーライトおよび砂壌土の鉢植え用の混合物中で、温室内で種子から生育した。高リノール酸変種である野生型変種SUは、NSWのHeffernan Seedsから得られた。PI603208(LeSaf496,ATC120562)およびCW 99−OL(ATC120561)の種子は、Australian Temperate Field Crops Collectionから得られた。
【0310】
葉、根、子葉、および胚軸を含むDNAおよびRNA抽出のための植物組織は、発芽後の10日目にベニバナの実生から収穫された。開花の頭部は、花が開いた初日に得られ、発育中の胚は、開花後(DPA)7日目(早期)、15日目(中期)、および20日目(晩期)の3つの発育段階で収穫された。試料を、液体窒素中で直ちに冷却し、DNAおよびRNA抽出が行われるまで−80℃で保存した。
【0311】
ベニバナ小花は、管状であり、主として、通常、10%未満の異系交配で自家受粉する(Knowles 1969)。風ではなく、昆虫が、野外での自家受粉のレベルを増大させ得る。授粉されていない柱頭は、数日間受容可能な状態であり得る。それぞれの頭状花(ベニバナの頭部)は、約15〜30の痩果を含む。植物における発育中の種子の種子質量は、開花後の初めの15日間、急速に増加する。油含量は、10〜15DAPの期間中、5〜10倍増加し、約28 DPAで最高レベルに達する(Hill and Knowles 1968)。ベニバナ種子および植物は、開花後の約5週間で生理学的に成熟し、ほとんどの葉が茶色になり、わずかに緑がかった色が、最も遅い開花の頭部の苞葉上に残っているときには、種子が、収穫する状態にある。種子は、手で頭部を擦り合わせることによって容易に収穫された。
【0312】
脂質分析
迅速な脂肪酸組成分析のための単一種子からの脂質試料の単離
植物の成熟期に収穫した後、ベニバナ種子は、37℃で3日間、その後、すぐに分析されない場合には、室温で、種子を貯蔵することによって乾燥させた。単一種子またはプールした種子は、小さな濾紙の間で粉砕し、その紙に染み込んだ滲み出た種子油を、以下に記載されるGC方法によって脂肪酸組成について分析した。
【0313】
発芽後の半子葉からの総脂質の単離
例えば、トランスジェニック植物からの子孫種子に対するスクリーニングのために、ベニバナ種子は、ペトリ皿中の湿らせた濾紙上で1日間発芽させた。脂質分析のためにそれぞれ発芽させた種子から子葉を慎重に取り出した。それぞれの実生の残りは、土壌に移し、得られた植物は、成熟するまで生育させ、トランスジェニック系統を維持する種子を収穫した。
【0314】
ソックスレー装置を使用した種子からの油の抽出
種子油の定量的な抽出のために、収穫したベニバナ種子を、105℃で一晩オーブン内で乾燥させ、Puck Mill中で1分間挽いた。挽いた種子材料(約250グラム)を予め計量したシンブル中に回収し、油抽出前に計量した。金属の上に一層の脱脂綿を添加した後、油を、初めに、70〜80℃で、ソックレー装置中で溶媒(Petroleum Spirit 40〜60C)により抽出した。次いで、混合物を、15〜20分ごとに抽出フラスコにサイフォンで吸い上げた溶媒で一晩還流した。溶解し、抽出した油を、真空下でロータリーエバポレーターを使用して溶媒から蒸発させることによって回収した。抽出した油の重量を測定し、油含有物を決定した。抽出した油の脂肪酸組成を決定するために、少量のアリコートを、クロロホルム中で希釈し、ガスクロマトグラフィーによって分析した。
【0315】
葉材料からの総脂質の単離
Bligh and Dyer(1959)によって記載されるように、葉組織試料を凍結乾燥させ、計量し、総脂質を、約10mgの乾燥重量の試料から抽出した。
【0316】
脂質の分別
必要な場合には、予めコーティングしたシリカゲルプレート(Silica gel 60,Merck)上で、2相の薄膜クロマトグラフィー(TLC)システムを使用して、TAG分画を、他の脂質成分から分離した。10mgの乾燥重量の葉組織に相当する抽出した脂質試料を、第1の相でヘキサン/ジエチルエーテル(98/2 v/v)を用いて、非極性ワックスを除去し、次いで、第2の相でヘキサン/ジエチルエーテル/酢酸(70/30/1 v/v/v)を用いてクロマトグラフを行った。必要な場合には、第一の方向においては、クロロホルム/メタノール/水(65/25/4 v/v/v)であり、第二の方向においては、クロロホルム/メタノール/NH
4OH/エチルプロピルアミン(130/70/10/1 v/v/v/v)を使用する、二次元TLC(Silica gel 60,Merck)を使用して、等量の5mgの乾燥重量の葉の等価物から抽出された脂質試料中において、極性脂質を、非極性脂質から分離した。脂質スポットおよび同じTLCプレート上で泳動させた適切な標準物を、ヨウ素蒸気への短期間の曝露により可視化し、バイアルに収集し、以下の通りにGC分析のためトランスメチル化してFAMEを生成した。
【0317】
脂肪酸メチルエステル(FAME)の調製およびガスクロマトグラフィー(GC)分析
GCによる脂肪酸組成分析のために、上述のように調製された抽出した脂質試料を、ガラス管に移し、2mLのメタノール(Supelco)中1M HCl中で80℃で3時間トランスメチル化した。室温まで冷却した後、1.3mLの0.9% NaClおよび800μLのヘキサンをそれぞれの管に添加し、FAMEをヘキサン相に抽出した。脂肪酸組成を決定するために、温度上昇プログラムを、150℃の初期温度に変更し、1分間維持し、3℃/分で210℃まで、次いで、50℃/分で240℃まで上昇させ、最終的に、2分間維持することを除いては、Zhou et al.(2011)によって本質的に記載される、30m BPX70カラムを装備したAgilent Technologies 7890Aガスクロマトグラフ(Palo Alto,California,USA)を使用するガスクロマトグラフィー(GC)によって、FAMEを分離した。Agilent Technologies ChemStationソフトウェア(Rev B.03.01(317),Palo Alto,California,USA)を用いてピークを定量化した。ピーク応答は、キャリブレーションのために使用された18:1、18:0、20:0、および22:0を含む均等な比率の31の異なる脂肪酸メチルエステルを含む真正のNu−Check GLC standard−411(Nu−Check Prep Inc,MN,USA)の脂肪酸に類似した。試料中のそれぞれの脂肪酸の比率を、脂肪酸における個々および総ピーク面積に基づいて計算した。
【0318】
ガスクロマトグラフィー(質量分析法)によるFAMEの分析
2,4−ジメチルオキサゾリン(DMOX)の修飾およびGC−MS分析によるFAMEにおける二重結合の位置の確認を、30m BPX70カラムを装備したShimadzu GC−MS QP2010 Plusを用いることを除いて、前述のように行った(Zhou et al.,2011)。カラム温度は、150℃の初期温度で1分間、5℃/分で200℃まで、次いで、10℃/分で240℃まで上昇させ、5分間維持するようにプログラム化した。質量スペクトルを得て、GCMSsolutionソフトウェア(Shimadzu,Version 2.61)で処理した。遊離脂肪酸およびFAMEスタンダードをSigma−Aldrich(St. Louis, MO, USA)から購入した。
【0319】
LC−MSによる脂質種の分析
成熟した個々の単一種子を、School of Botany,University of Melbourneにおいて、LC−MSを使用して、脂質全代謝物(lipidomics)の分析に供した。Bligh and Dyer(1959)によって記載されるように、総脂質を抽出し、CHCl
3中に溶解した。1mgの脂質のアリコートを、N
2で乾燥させ、1mLのブタノール:メタノール(1:1 v/v)中10mM ブチル化ヒドロキシトルエン中に溶解し、Agilent 1200シリーズLCおよび6410B エレクトロスプレーイオン化三連四重極LC−MSを使用して分析した。Ascentis Express RP−Amideカラム(5cm×2.1mm,Supelco)および0.2mL/分の流速で、バイナリー勾配を使用して、脂質をクロマトグラフィーで分離した。移動相は、A、H
2O:メタノール:テトラヒドロフラン(50:20:30、v/v/v)中の10mM ギ酸アンモニウム;B.H
2O:メタノール:テトラヒドロフラン(5:20:75、v/v/v)中の10mM ギ酸アンモニウムであった。脂肪酸16:0、16:1 18:0、18:1、18:2、18:3を用いて、選択された中性脂質(TAGおよびDAG)ならびにホスホコリン(PC)を、25Vの衝突エネルギーおよび135Vのフラグメンターを使用して、多重反応モニタリング(MRM)によって分析した。個々のMRM TAGおよびDAGは、脂肪酸の中性損失からのアンモニア処理した前駆イオンおよびプロダクトイオンに基づいて特定された。10uM トリステアリン外部標準を用いて、TAGおよびDAGを定量化した。
【0320】
油試料のステロール含量の分析
内部標準としてC24:0 モノールのさらなるアリコートとともに約10mgの油の試料を、80% MeOH中の4mLの5% KOHを使用し、テフロンで裏打ちされたねじ蓋を取り付けたガラス管内で、80℃で2時間加熱して鹸化した。反応混合物を冷却した後、2mLのMilli−Q水を添加し、振とうし、ボルテックスすることによって、ステロールを、2mLのヘキサン:ジクロロメタン(4:1 v/v)に抽出した。混合物を遠心分離し、ステロール抽出物を除去し、2mLのMilli−Q水で洗浄した。次いで、振とうし、遠心分離した後、ステロール抽出物を除去した。窒素ガスの蒸気を使用して、抽出物を蒸着させ、200mLのBSTFAを使用し、80℃で2時間加熱して、ステロールをシリル化した。
【0321】
ステロールのGC/GC−MS分析のために、ステロール−OTMSi誘導体を、熱ブロック上で、40℃で、窒素ガスの蒸気下で乾燥させ、次いで、GC/GC−MS分析の直前に、クロロホルムまたはヘキサン中に再溶解した。Supelco Equity(商標)−1融合シリカキャピラリーカラム(15m×0.1mm すなわち、0.1μm フィルム厚)、FID、スプリット/スプリットレスインジェクターならびにAgilent Technologies 7683B Seriesオートサンプラーおよびインジェクターを備えたAgilent Technologies 6890A GC(Palo Alto,California,USA)を用いて、ガスクロマトグラフィー(GC)によりステロール−OTMS誘導体を分析した。ヘリウムが、担体ガスであった。120℃のオーブン温度で試料をスプリットレスモードで注入した。注入後、オーブン温度を、10℃min
−1で270℃まで上昇させ、最終的に、5℃min
−1で300℃まで上昇させた。Agilent Technologies ChemStationソフトウェア(Palo Alto,California,USA)を用いてピークを定量化した。GC結果は、個々の成分領域の±5%の誤差に供された。
【0322】
Finnigan Thermoquest GCQ GC−MSおよびFinnigan Thermo Electron Corporation GC−MSにおいてGC−質量分光(GC−MS)分析を行い、両方のシステムは、オンカラムインジェクターおよびThermoquest Xcaliburソフトウェア(Austin,Texas,USA)と装着した。それぞれのGCに上記のものと同様の極性のキャピラリーカラムを装着した。質量スペクトルデータを使用し、保持時間データを真正および実験室基準に対して得られたものと比較することによって、個々の成分を特定した。試料バッチと同時に、全手順のブランク分析を行った。
【0323】
IatroscanによるTAGの定量化
1μLのそれぞれの植物抽出物を、TLC−FID Iatroscan(商標)(Mitsubishi Chemical Medience Corporation−Japan)用の1つのChromarod−SIIに充填した。次いで、Chromarodラックを、70mlのヘキサン/CHCl
3/2−プロパノール/ギ酸(85/10.716/0.567/0.0567 v/v/v/v)溶媒系を含む平衡化した現像タンクに移した。30分間のインキュベーション後、Chromarodラックを、100℃で3分間乾燥させIatroscan MK−6s TLC−FID分析器(Mitsubishi Chemical Medience Corporation−Japan)上で直ちに走査した。DAGE内部標準およびTAGのピーク面積を、SIC−480II積分ソフトウェア(Version:7.0−E SIC System instruments Co.,LTD−Japan)を使用して積分する。
【0324】
2つのステップにおいて、TAGの定量化を行う。まず、DAGE内部標準を、すべての試料中で走査して、抽出収率を補正し、その後、濃縮したTAG試料を選択し、希釈する。次に、外部標準としてトリリノール酸グリセリル(Sigma−Aldrich)を用いて、外部校正によって第2の走査を用いて希釈した試料中でTAGの量を定量化する。
【0325】
サッカロマイセスセレヴィシエにおける候補FAD2遺伝子の発現
候補FAD2 cDNAの全オープンリーディングフレームを含むDNA断片を、EcoRI断片としてpGEMT−easyベクターから切除し、ベクターpENTR11(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)の対応する部位に挿入した。次いで、Gateway(登録商標)Cloning組み換え技術(Stratagene,LaJolla,CA,USA)を用いて、挿入物を、目的発現ベクターpYES2−DEST52にクローン化して、酵母細胞中において誘導的遺伝子発現のために、GAL1プロモーターの制御下でオープンリーディングフレームに置いた。得られたプラスミド中の遺伝子配列を、DNA配列決定によって確認した。得られたプラスミドおよび対照としてあらゆるcDNA挿入を欠いているpYES2−DEST52ベクターを、酢酸リチウム媒介形質転換によってサッカロマイセスセレヴィシエ株YPH499の細胞に導入した。外因性脂肪酸基質の供給を含む、または含まない酵母細胞中のこれらの候補FAD2遺伝子の発現は、本質的には、Zhou et al.(2006)によって前述される通りであった。それぞれの実験を三重に行った。
【0326】
一過性発現システム系における植物細胞での遺伝子発現
遺伝子は、Voinnet et al.(2003)およびWood et al.(2009)によって本質的に記載されるように、一過性発現システムを使用してニコチアナベンタミアーナ(Nicotiana benthamiana)葉細胞に発現された。CaMV 35Sプロモーターの制御下で、ウイルスサイレンシングサプレッサー発現P19の構成的発現のためのベクターが、Peter Waterhouse,CSIRO Plant Industry,Canberra,Australiaの実験室から得られた。キメラバイナリーベクター35S:P19を、アグロバクテリウムウメファシエンス株AGL1に導入した。また、プロモーター、多くの場合、35Sプロモーターから植物細胞中に発現されるコード領域を含むすべての他のバイナリーベクターを、アグロバクテリウムウメファシエンス株AGL1に導入した。組み換え細胞は、バイナリーベクターにおける選択可能なマーカー遺伝子により、28℃で、50mg/Lのリファンピシン、および50mg/Lのカナマイシンまたは80mg/Lのスペクチノマイシンのいずれかが追加された5mLのLB培養液において定常期になるように生育させた。5mMのMES、pH5.7、5mMのMgSO
4、および100μMのアセトシリンゴンを含む1.0mlの浸潤緩衝液中に再懸濁する前に、室温で5分間、3000xgで遠心分離することによって、それぞれの培地からの細菌を、ペレット化した。次いで、再懸濁した細胞培地を、さらに3時間振とうしながら、28℃でインキュベートした。次いで、浸潤緩衝液中のそれぞれの培地の10倍の希釈物を、等体積の35S:P19倍地と混合し、同じ方法で希釈し、混合物を十分に膨張したN.ベンタミアーナ葉の裏面に浸潤させた。特に指定のない限り、発現すべき遺伝子を含む混合培地は、アグロバクテリウム中において35S:P19構築物を含んだ。対照浸潤物は、アグロバクテリウム中において35S:P19構築物のみを含んだ。
【0327】
アグロバクテリウム細胞混合物を用いて、葉を浸潤させ、植物は、一般に、総脂質の単離および脂肪酸分析のためにリーフディスクを採取する前に、浸潤後さらに5日間生育させた。N.ベンタミアーナ植物を、14/10時間の明/暗サイクルで、約200ルクスの光強度を有する植物上に直接置かれたOsram ‘Soft White’蛍光灯を用いて、一定の24℃で、生育キャビネット中で生育させた。一般に、実験のために6週齢の植物を使用し、ほぼ十分に膨張した本物の葉を浸潤させた。わずかの相違を避けるために、浸潤後、浸潤していない葉をすべて、除去した。
【0328】
リアルタイム定量PCR(RT−qPCR)
BIORAD CFX96(商標)リアルタイムPCR検出システムおよびiQTM SYBR(登録商標)Green Supermix(BioRad, Hercules,CA,USA)を用いて、定量RT−PCRによって遺伝子発現分析を行った。19〜23ヌクレオチド長で、約65℃の融解温度(Tm)を有し、約100〜200bpの増幅生成物をもたらす遺伝子に特異的な増幅のために設計されたプライマー。PCR反応は、96ウェルプレート中で行った。RT−PCR反応はすべて、三重で行われた。反応混合物は、1×iQTM SYBR(登録商標)Green Supermix(BioRad,Hercules,CA,USA)、5μM 順方向および逆方向プライマー、ならびに400ngのcDNAを含み、1ウェルあたり10μLの体積で使用した。熱サイクル条件は、95℃で3分間、続いて、95℃で10秒間、60℃で30秒間、68℃で30秒間の40サイクルであった。60℃から95℃で0.1°C/秒のPCRの最終ステップ後に、融解曲線分析によって、PCR増幅の特異性をモニタリングした。さらに、PCR生成物はまた、アガロースゲル電気泳動によって純度を確認し、シークエンスによっても確認された。構造的に発現した遺伝子KASIIは、発現レベルを正規化する内因性参照として使用された。データは、対応する遺伝子発現レベルに対して較正され、その後、相対定量のために2
−ΔΔCt方法を行った(Schmittgen,2008)。このデータは、独立した96ウェルプレート上で行われた3つの反応の平均±標準偏差として示された。
【0329】
DNA単離およびサザンブロット分析
ベニバナの実生のゲノムDNA、遺伝子型「SU」を、CTAB緩衝液を使用し、Paterson et al.(1993)によって記載される方法に従って、十分に膨張した葉から単離した。前述(Liu et al.,1999)のように、CsCl勾配を用いて、さらなる精製を行った。10μgのアリコートのベニバナゲノムDNAを、8つの異なる制限酵素、すなわちAccI、BglII、BamHI、EcoRI、EcoRV、HindIII、XbaI、およびXhoIで消化した。それぞれの制限酵素で消化されたゲノムDNAは、1%のアガロースゲル上で電気泳動させた。0.5M NaOH、1.5M NaCl中に、ゲルを30分間浸し、DNAをHybond−N
+ナイロン膜(Amersham,UK)上にブロットした。フィルターは、低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件下で、CtFAD2遺伝子ファミリーの代表としてベニバナCtFAD2−6遺伝子の全コード領域に対応するα−P
32 dCTP−標識DNA断片でプローブした。6x SSPE、10% デンハルト溶液、0.5% SDS、および100μg/mLの変性サケ精子DNAを含む溶液中で、ハイブリダイゼーションを、65℃で一晩行った。ハイブリダイゼーションを行い、50℃で2x SSC/0.1% SDS中で短時間洗浄した後、オートラジオグラフィー前に、フィルターを、0.2xSSC/0.1% SDS中で、50℃で毎回20分間3回洗浄した。
【0330】
ベニバナおよびアラビドプシスサリアナの形質転換
アラビドプシスを形質転換するために使用される遺伝子を含むキメラベクターを、A.ツメファシエンス株AGL1に導入し、形質転換されたアグロバクテリウムの培地からの細胞を形質転換のためにフローラルディップ(floral dip)法(Clough and Bent,1998)を用いて、A.サリアナ(生態型Columbia)植物を処理するために使用した。形質転換されたアグロバクテリウム培地を使用して、Belide et al.(2011)によって記載されるように、形質転換されたベニバナ植物を導入した
【0331】
実施例2.FAD2をコードするための候補であるベニバナcDNAの単離
総RNA抽出およびcDNA合成
ベニバナからcDNAを生成するために、発育中の胚、葉、根、および胚軸を含む、100mgの冷凍ベニバナ組織試料から総RNAを単離した。これは、供給者のプロトコルに従って、RNeasy(登録商標)Plant総RNAキット(Qiagen, Hilden, Germany)を使用して、別々にそれぞれの組織に対して行った。調製物中のRNA濃度は、NanoDrop(商標)分光光度計ND1000(Thermo Fisher Scientific,Victoria,Australia)を用いて決定し、RNA濃度は、分析前に均一にした。それぞれの調製物中のRNAの質および相対量は、ホルムアルデヒドを含む1%(w/v)アガロースゲルを通じて試料のゲル電気泳動によって可視化した。RNA調製物を、RQ1 RNase−free DNase(Qiagen,Hilden,Germany)で処理して、汚染されているゲノムDNAを除去した。First−strand cDNAを、製造業者の取扱説明書に従って、オリゴ(dT)
20プライマーを用いてSuperScript III First−Strand Synthesis System(Qiagen, Hilden, Germany)を使用して、400ngのそれぞれのDNA−free RNA調製物から合成した。
【0332】
発育中の種子cDNAライブラリーからの種子を発現したFAD2 cDNAの単離
初めに、ベニバナ遺伝子型「SU」(野生型、高リノール酸レベル)の発育中の胚に由来するcDNAライブラリーをスクリーニングすることによって、種子を発現したベニバナFAD2 cDNAを得た。ライブラリー構築は、収穫し、液体窒素中で挽いて粉末にした、異なる発育段階の未成熟の胚の混合物からのRNA抽出から始め、製造業者の取扱説明書に従って、TRIzol(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)を使用してRNA抽出を行った。Qiagen mRNA精製キット(Qiagen,Hilden,Germany)を使用して、ポリ(A)を含有するRNAを単離した。
【0333】
製造業者の取扱説明書に従って、Stratagene cDNA合成キット(Stratagen,La Jolla,CA,USA)を使用して、第一鎖のオリゴ(dT)プライマーcDNAを合成し、二本鎖DNAに変換した。平滑末端cDNAを、EcoRIアダプターで連結し、リン酸化し、Chromaspin+TE−400カラム(Clontech,CA,USA)中のゲル濾過によってサイズ分画した。組み換えcDNAを、Stratagene Predigested Lambda ZAP II/EcoRI/CIAPクローニングキットを使用して、大腸菌株XL−1 Blue MRF’中で繁殖させた。
【0334】
FAD2クローンを特定するために、以前に記載されたプロトコル(Liu et al.,1999)に従って、アラビドプシス(Arabidopsis)FAD2(GenBankアクセッション番号L26296)のコード領域に対応するDNA断片を使用して、ライブラリーを、スクリーニングした。陽性プラークを、スクリーニングの2つの連続するラウンドを通して精製し、Stratagene λZAPII cDNA合成キットの取扱説明書に概説されるように、推定上のFAD2 cDNAを含む精製したファージミドを、摘出した。FAD2配列の配列分析を、NCBI Blastプログラム(
www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)によって行った。VectorNTIを使用することによって、オープンリーディングフレームを予測した。2つの異なる完全長cDNAを、発育中の種子cDNAライブラリーから単離し、それぞれ、CtFAD2−1およびCtFAD2−2と命名した。
【0335】
候補FAD2遺伝子に対するESTの特定
さらなる候補FAD2cDNAを特定するために、ベニバナのCompositae Genome Project(CGP)の発現配列タグ(EST)データベース(cgpdb.ucdavis.edu/cgpdb2.)を、A.サリアナ(thaliana)FAD2(GenBankアクセッション番号L26296)と類似性を有するポリペプチドをコードしたESTのためのプログラムBLASTpを使用して精査した。少なくとも11の、別個のFAD2 cDNA配列コンティグが特定され、この中で、2つのコンティグがベニバナ種子cDNAライブラリーから単離されたCtFAD2−1およびCtFAD2−2を有する同一の配列を示した。加えて、9つの異なるcDNAを特定し、それぞれ、CtFAD2−3からCtFAD2−11として表記した。
【0336】
3’および5’RACE
9つのコンティグ(CtFAD2−3からCtFAD2−11)のそれぞれの最も長いESTクローンが、対応する完全長cDNA配列の単離の出発点として選択された。プロセスは、発育中の胚、葉、根、胚軸、および花を含む様々なベニバナ組織から得たRNAから生成したcDNAを使用した3’−および5’−のcDNA末端の迅速増幅(RACE)を使用した。遺伝子特異的プライマー(GSP)を、それぞれのコンティグの最も長いESTクローンから設計した。3’−RACEは、製造業者の取扱説明書に従って、ワンステップRT−PCRキット(Bioline, London, UK)を使用して行った。遺伝子特異的プライマー(GSP)は、その3’末端でNotI部位でのポリ(dT)プライマーと組み合わせて選択されたESTのそれぞれのPCR増幅の第1ラウンドに使用された。PCRの第2ラウンドは、ポリ(dT)プライマーと組み合わせてネスト化されたGSPを使用して第1ラウンドの生成物において行った。3’RACEに対するGSPを表2中に列記する。
【0337】
5’RACE Systemキット(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)を用いて、CtFAD2−6 cDNAの5’末端のクローニングを行った。遺伝子特異的プライマーGSP1、5’− ACCTAACGACAGTCATGAACAAG−3’(配列番号76)を用いて、CtFAD2−6 mRNAのみをcDNAに逆転写した。ネスト化した遺伝子特異的プライマーGSP2、5’−GTGAGGAAAGCGGAGTGGACAAC−3’(配列番号77)は、第1のPCR増幅中に使用した。反応条件は、ポリメラーゼを添加する前に、ホットスタートを95℃で4分間使用し、変性を94℃で45秒間、アニーリングを55℃で1分間、伸長を72℃で2分間の33サイクル行った。
【0338】
増幅した3’および5’断片を、ベクターpGEM−Teasyにサブクローンし、両方向から配列決定を行った。3’および5’末端のクローン化した断片と対応するESTとの配列比較は、互いに一致した重複する領域を示し、それによって、それぞれの遺伝子に対する3’および5’配列を提供し、11のcDNAのそれぞれに対する推定上の完全長配列のアセンブリを可能にする。
【0339】
候補CtFAD2遺伝子に対する完全長cDNA配列の単離
9つのCtFAD2遺伝子に対する完全長タンパク質のコード領域を単離するために、発育中の胚、葉、根、胚軸、および花を含むいくつかのベニバナ組織由来の総RNAを使用して、ワンステップRT−PCRキットを使用して、ORFを増幅した(Stratagene,La Jolla,CA,USA)。ORFを増幅するために使用されたプライマー(表3)は、それぞれのcDNAの5’および3’UTRに位置するDNA配列に基づいた。増幅したPCR生成物を、ベクターpGEM−Teasy(登録商標)にクローン化し、DNAシークエンシングによってそれらのヌクレオチド配列を得た。
【0340】
ベニバナ由来の候補FAD2配列の特徴
11のcDNAの特徴を表4中に要約し、ポリペプチドの特徴を表5中に要約した。
【0341】
コードしたポリペプチドCtFAD2−1〜CtFAD2−11の予測されたアミノ酸配列は、互いに約44%〜86%同一性のある広範囲の配列同一性を共有した。それらはアラビドプシスFAD2と53%〜62%の配列同一性を示した。予測されたポリペプチドの大きさは、372〜388アミノ酸の範囲内であった。つまり、それらはすべて、約380アミノ酸残基の長さであった。cDNAは、独自の5’および3’非翻訳領域(UTR)配列を有し、したがって、内因性遺伝子は、それらのUTR配列によって容易に認識され得た。ベニバナゲノムDNA由来のタンパク質コード領域の増幅は、11の遺伝子のそれぞれに対して対応するcDNAを有する同一のDNA配列をもたらし、これは、それらのタンパク質コード領域を中断するイントロンがなかったことを示した。
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0342】
ベニバナ候補FAD2ポリペプチドの既知のFAD2酵素との関係を調べるために、11の推定ポリペプチド配列を、植物FAD2配列と整列させ、近接結合樹を、ベクターNTIを使用して構築した(
図1)。
図1に示されるように、CtFAD2−1およびCtFAD2−10のアミノ酸配列は、まず第一に、互いに、次いで、他の種由来の種子を発現したFAD2と最も密接に関係した。CtFAD2−2は、ベニバナにおいて、他の候補FAD2よりも他の種由来の構造的に発現した遺伝子とより密接に関係した。CtFAD2−3、−4、−5、−6、および−7は、近接結合樹において新しい枝を形成し、ベニバナにおいて増倍する最近分岐した遺伝子の進化の結果としての可能性が最も高い。興味深いことに、他種への同系性に関して、これらは、カレンデュラオフィキナリス(Calendula officinalis)由来の機能的に分岐したFAD2コンジュガーゼと最も密接に関係した。FAD2−11は、真菌性誘導物質によって誘導されたヒマワリvFAD2を含む、いくつかの植物種由来のアセチレナーゼとより密接に関係した(Cahoon et al.,2003)。CtFAD2−8および−9は、ベニバナ由来の他の候補FAD2よりもさらに分岐したと思われた。しかしながら、この分析はまた、配列比較が可能な機能についていくつかの手がかりを与えたが、それ自体、異なるFAD2候補の機能について信頼できる結論を提供し得なかったことも示した。したがって、機能分析は、それぞれの遺伝子/ポリペプチドの機能について結論を出すのに必要とされた。
【0343】
配列比較は、ベニバナ候補FAD2ポリペプチドが他の種由来の既知のFAD2酵素と約50%〜60%の配列同一性、および52%〜65%の類似性を共有することを示した。ベニバナCtFAD2遺伝子の間でのDNA配列分散の範囲は、CtFAD2−3、−4、および−5がすべて、CtFAD2−1、またはCtFAD2−10よりも互いにより類似し、逆もまた同様であるという点において、それらの系統発生関係に反映した。。これらの数は、アミノ酸の同一性マトリックスにおいて緊密な一致を有する(表6)。
【表6】
【0344】
候補CtFAD2ポリペプチドの特徴
11の候補CtFAD2の予測されたポリペプチドはそれぞれ、C末端の最末端で芳香族アミノ酸リッチなモチーフを含有した。そのようなモチーフは、他の植物FAD2ポリペプチドにおいて特定されており、ERにおいて局在性を維持するために必要であると考えられる(McCartney et al.,2004)。他の植物膜結合型脂肪酸デサチュラーゼ酵素と一致して、予測されたCtFAD2ポリペプチドはそれぞれ、3つのヒスチジンリッチなモチーフ(Hisボックス)を含有した。そのようなHisリッチモチーフは、FAD2酵素において高度に保存され、生化学的触媒作用において使用される酸化二鉄複合体の形成に関与することが示されている(Shanklin et al.,1998)。ほとんどの候補CtFAD2ポリペプチド配列において、第一のヒスチジンモチーフは、HECGHHであり、例外は、それぞれ、HDCGHHおよびHDLGHHを有するCtFAD2−5および−6であった。CtFAD2−8における第1のHisボックスの最後のアミノ酸(HECGHQ)は、HよりはむしろQであった。本発明者らは、55の既知の植物FAD2酵素においてこのモチーフを探し求め、また、HからQへの変換も、主に脂肪酸ヒドロキシラーゼ活性を有するLesquerella lindheimeri由来の分岐したFAD2同族体に存在する(Genbankアクセッション番号EF432246、Dauk et al.,2007)。第2のヒスチジンモチーフは、CtFAD2−1、−2、−8、−9、および−10を含むいくつかの候補ベニバナFAD2において、アミノ酸配列HRRHHとして高度に保存された。アミノ酸Nが、モチーフの+3位でCtFAD2−11に見出され、クレピスアルピナ(Crepis alpina)CREP1、クレピスパラエスチナ(Crepis palaestina)Cpal2、およびヒマワリvFAD2(AY166773.1)、カレンデュラオフィキナリスFAC2(AF343064.1)、ルドベッキアヒルタ(Rudbeckia hirta)アセチレナーゼ(AY166776.1)を含む、多数の機能的に分岐したFAD2型酵素にも見出されたことは注目に値した。CtFAD2−3、−4、−5、−6、および−7におけるこの位置でのアミノ酸は、SまたはTのいずれかであった。
【0345】
CtFAD2−1、−2、−9、および−10ポリペプチドのそれぞれにおいて、第1のヒスチジンボックスに直接先行するアミノ酸は、他の植物脂肪酸Δ12−デサチュラーゼ酵素に対するものと同じであるアラニンであった。アラニンではなくてアミノ酸バリン(V)が、CtFAD2−5におけるその位置で存在したが、他の6つのCtFAD2ポリペプチドは、この位置でグリシンを有した。この位置でのアラニンのグリシン置換が、脂肪酸Δ12−ヒドロキシラーゼを除く、機能的に分岐したFAD2酵素において見出されたことが、Cahoon et al.(2003)によって提案された。以下の実施例に記載されるように、候補の機能を試験するその後の異種発現実験は、CtFAD2−1、−2、および−10ポリペプチドのそれぞれが、オレイン酸塩Δ12−デサチュラーゼであったことを示したが、CtFAD2−9は、オレイン酸塩ではなくパルミトレイン酸塩(C16:1)へのデサチュラーゼ特異性を示した。
【0346】
11の候補CtFAD2のうちのCtFAD2−11ポリペプチドのみが、すべての植物アセチレナーゼに生じることを提案する(D/N)VX(H/N)モチーフと一致する第3のヒスチジンボックスの−5から−2位置においてDVTH配列を有することを意味した(Blacklock et al.,2010)。他の既知の植物FAD2オレイン酸塩デサチュラーゼに関しては、CtFAD2−1、−2、および−10ポリペプチドの第3のヒスチジンボックスの直後の5つのアミノ酸は、LFSTMであった。対照的に、パルミトレイン酸塩に特異的な脂肪酸デサチュラーゼCtFAD2−9は、+4および+5位で2つのアミノ酸置換を有するこの位置でLFSYIモチーフを有した。CtFAD2−3、−4、および−5ポリペプチドにおいて、Sは、+3位で、カレンデュラオフィキナリス(FAC2、アクセッションAAK26632)およびトリコサンテスキリロイ(Trichosanthes kirilowii)(アクセッションAAO37751)由来のものを含む他のFAD2脂肪酸コンジュガーゼにおいてのみに存在するPで置換された。
【0347】
大豆FAD2−1酵素のセリン−185は、その酵素活性のための調節機構として、種子の発育時にリン酸化されることが示されている(Tang et al.,2005)。11の候補CtFAD2ポリペプチドのうちでCtFAD2−1のみが、大豆FAD2−1に対して、対応する位置にセリン(セリン−181)を有した。発育中の種子中のミクロソームΔ12オレイン酸塩の不飽和化を調節するために、同じ翻訳後調節機構が、セリン−185のリン酸化反応を通じて、ベニバナ種子の発育および油蓄積時に動作することが結論付けられた。
【0348】
実施例3.FAD2候補のためのゲノム配列の単離
候補CtFAD2遺伝子の5’UTRイントロンの単離
FAD2遺伝子のイントロン−エクソン構造は、多くの開花植物において保存されている。第1のATG翻訳開始コドンの直後に、大豆FAD2−1のイントロンがコード領域に位置する1つの例外はあるが、研究されたすべてのFAD2遺伝子は、これまでのところ、5’UTRで位置される1つのイントロンのみを含有する(Liu et al.,2001、Kim et al.,2006、Mroczka et al.,2010)。イントロン配列の分岐は、分類学的に密接に関係した種間の進化の尺度として使用され得る(Liu et al.,2001)。
【0349】
候補CtFAD2遺伝子の5’−UTR内に位置している可能なイントロンのDNA配列を単離するために、典型的なイントロンスプライス部位(AG:GT)がそれぞれのCtFAD2 cDNA配列の5’UTRにおいて予測され、PCRプライマーが予測されたスプライス部位のフランキング配列に基づいて設計された。これらのプライマーを表7中に列記する。ベニバナ遺伝子型SUから単離されたゲノムDNAは、5’UTRに対応するゲノム領域を増幅するために、PCR反応物の鋳型として使用された。増幅は、100ngのゲノムDNA、20pmolのそれぞれのプライマー、および製造業者によって供給されたHotstar(Qiagen,Hilden,Germany)を含む50μLの反応物において達成された。PCR温度サイクルは、Kyratec supercycler SC200(Kyratec,Queensland,Australia)を使用して、94℃で15分間を1サイクル、94℃で30秒間、55℃で1分間、72℃で2分間を35サイクル、72℃で10分間、行われた。PCR生成物を、pGEM−T Easyにクローン化して、次いで、配列決定された。
【0350】
本発明者らは、CtFAD2−1、−2、−3、−4、−5、−7、−10、および−11と命名された、11つの候補CtFAD2遺伝子のうちの8つからの予測された5’イントロンを得ることができた。これらのイントロンの主な特徴を表8中に示す。恐らくは、イントロンが存在した不十分な長さの5’UTRにより、このイントロンは、CtFAD2−6、−8、および−9からは首尾よく増幅されなかった。高等植物において、核遺伝子からのイントロン欠失が通常観察されるが、イントロンの少ないFAD2は、報告されなかったと思われた(Loguercio et al.,1998、Small et al.,2000a;b)。
【表7】
【表8】
【0351】
8つの遺伝子のそれぞれのイントロン配列は、それぞれのオープンリーディングフレーム中の第1のATGの推定上の翻訳開始コドンの上流11〜38bpの範囲に及ぶ位置で、それぞれの遺伝子の5’−UTR内に位置した。イントロン長は、104bp(CtFAD2−11)〜3,090bp(CtFAD2−2)の範囲に及んだ(表8)。CtFAD2−1については、イントロンの大きさは、アラビドプシス(The Arabidopsis Information Resource,http://www.arabidopsis.org)、綿実(Liu et al.,2001)、およびゴマ(Sesamum indicum)由来のFAD2遺伝子において特定されたイントロンと同様の大きさの1,144bpであった(Kim et al.,2006)。推定上のスプライス部位のジヌクレオチドAGおよびGTは、検査されたCtFAD2遺伝子の8つすべてで保存されたが、そうでなければ、イントロン配列はすべて、それらの間にいかなる有意な相同性も有さない配列において分岐された。イントロン配列はすべて、61%〜75%のA/T含量を有するA/Tリッチであり、双子葉植物由来の多くの他のイントロン配列と一致した。他の双子葉植物由来の遺伝子において、アラビドプシスFAD2遺伝子は、そのATG翻訳開始コドンからわずかに5bp上流の1,134bpイントロンを有した。ゴシッピウムヒルスツムFAD2−1遺伝子の5’−UTRイントロンの大きさは、1,133bpであり、翻訳開始コドンから9bp上流に位置した。対照的に、綿実FAD2−4およびFAD2−3遺伝子はそれぞれ、2,780bpおよび2,967bpのより大きな5’−UTRイントロンを有し、翻訳開始コドンから12bp上流に位置した。それぞれの候補CtFAD2遺伝子は、それぞれの遺伝子において、5’−UTRイントロンの位置および大きさの違いによって区別され得る。この違いはまた、遺伝子の差次的発現を提供する際に重要であり得る。そのようなイントロンは、ゴマにおけるレポーター遺伝子の発現において好ましい効果を有することが報告されている(Kim et al.,2006)。対応するイントロンは、大豆において、FAD2の翻訳後遺伝子サイレンシングに対して有効な標的であることが示された(Mroczka et al.,2010)。
【0352】
イントロンは、遺伝子発現プロファイルにおいて劇的な効果を有し得ることが知られている。PLACEプログラム(www.dna.affrc.go.jp/PLACE/)によるイントロン配列の分析により、いくつかの推定上のシス調節要素を特定した。例えば、種子特異的なプロモーターに通常存在する、ABREおよびSEF4等のモチーフは、CtFAD2−1に位置している。損傷または誘導物質による処理等の様々な応力によって誘導された防御関連遺伝子のプロモーターに通常見出されるAGモチーフは、ベニバナの若い実生の胚軸および双子葉において特異的に発現されるCtFAD2−3で位置した。
【0353】
実施例4.候補ベニバナFAD2遺伝子のサザンブロットハイブリダイゼーション分析
ベニバナにおいて、FAD2様遺伝子ファミリーの複雑性を、サザンブロットハイブリダイゼーション分析によって試験した。低ストリンジェンシーなハイブリダイゼーション分析は、ベニバナにおいて、FAD2が複合多重遺伝子ファミリーによってコードされたことを示した(
図2)。ゲノムDNAを切断する様々制限酵素を使用することによって得られたハイブリダイズする断片を計数することによって、ベニバナにおいて、10を超えるFAD2またはFAD2様遺伝子があったことが推測された。異なる断片に対してハイブリダイゼーションの強度に見られる差異は、恐らくは、配列同一性の相対的レベルと使用されたプローブDNAとの相関性がある。ベニバナは、2倍体種であり、単一の野生子孫種C.パラエスチヌス(palaestinus)を有すると考えられる(Chapman and Burke,2007)。本発明者らは、ベニバナにおける異常に大きいFAD2遺伝子ファミリーが、恐らく、いくつかの古代遺伝子の複製由来であり、遺伝子ファミリーの異なるメンバーの特殊化および特異的な活性をもたらすと推測する。
【0354】
実施例5.酵母および植物細胞における候補遺伝子の機能的分析
酵母における候補CtFAD2遺伝子の発現−機能的分析
都合の良い宿主細胞として、いくつかの植物FAD2 Δ12オレイン酸塩脂肪酸デサチュラーゼの機能的発現を研究するために、酵母S.セレヴィシエが、使用されている(Covello and Reed 1996、Dyer et al.,2002、Hernandez et al.,2005)。S.セレヴィシエは、比較的に単純な脂肪酸プロファイルを有し、FAD2酵素の基質として使用することができるそのリン脂質内に十分なオレイン酸を含有する。それはまた、内因性FAD2活性を欠いている。したがって、実施例1に記載されるように、11の候補CtFAD2遺伝子を、pYES2由来の構築物、GAL1プロモーターの制御下でそれぞれのオープンリーディングフレームを使用して、酵母株YPH499において試験した。
【0355】
図3に示されるように、「空ベクター」pYES2を含む酵母細胞の脂肪酸組成物を分析した場合、酵母が内因性FAD2を欠いているため、予測されたように、リノール酸(18:2)もヘキサデカジエン酸(16:2)も検出されなかった。対照的に、CtFAD2−1、CtFAD2−2、およびCtFAD2−10のオープンリーディングフレームを発現する酵母細胞から得られた脂肪酸のガスクロマトグラムはそれぞれ、リノール酸(C18:2)に対応する11.293分間の保持時間を有する脂肪酸ピークを示し、CtFAD2−9およびCtFAD2−10に対するガスクロマトグラムは、C16:2に対応する8.513分間の保持時間を有する脂肪酸ピークを示した。これらのデータは、CtFAD2−1、CtFAD2−2、およびCtFAD2−10がオレイン酸をリノール酸に変換することができ、したがって、Δ12オレイン酸塩デサチュラーゼであったことを示した。しかしながら、生成された18:2のレベルは、陽性対照として使用されたアラビドプシスAtFAD2構築物に対するものよりも低かった。CtFAD2−10は、基質として、それぞれ、オレイン酸(C18:1)およびパルミトレイン酸(C16:1)を使用して、リノール酸(C18:2)およびヘキサデカジエン酸(C16:2)の両方を生成したが、CtFAD2−9は、パルミトレイン酸を不飽和化し、したがって、Δ12パルミトレイン酸塩デサチュラーゼであった。CtFAD2−11を発現する酵母細胞由来のFAMEのクロマトグラムに現れる2つの新しい微小ピークは、それらのピロリジド付加物、およびDMOXのGC−MSによって、リノール酸(18:2
Δ9(Z),12(Z))およびそのトランス異性体(18:2
Δ9(Z),12(E))として特定された(
図3H)。表9は、CtFAD2コード領域を発現する酵母細胞の脂肪酸組成物を要約する。CtFAD2−3、−4、−5、−6、−7、および−8を発現する酵母細胞において、新しいピークは検出されなかった。
【0356】
候補CtFAD2ポリペプチドのうちのいずれかが、脂肪酸ヒドロキシラーゼ活性を有するかどうかを試験するために、CtFAD2のオープンリーディングフレームのそれぞれを発現する酵母細胞から調製されたFAMEを、ヒドロキシル残基をTMS−エーテル誘導体に変換するシリル化試薬と反応させ、質量スペクトルを試験し得た。しかしながら、オレイン酸等の一般的な脂肪酸のヒドリキシル誘導体は、候補CtFAD2のオープンリーディングフレームを発現する酵母細胞株のいずれにおいても検出されなかった。これは、11のCtFAD2遺伝子のいずれも、酵母において、脂肪酸ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードしなかったことを示す。
【0357】
遊離リノール酸を有する同じ酵母細胞株の生育培地を補充し、その後、脂肪酸組成物を分析することによって、Δ12−エポキシゲナーゼおよびΔ12−アセチレナーゼの活性(両方とも脂肪酸基質としてリノール酸を使用する)を検出するために、さらなる実験が行われた。構築物を発現させるために、培地にガラクトーゼを添加した後に、補充を行った。ガスクロマトグラムにおいて、エポキシおよびアセチレン脂肪酸誘導体を表すものを含む、新規の脂肪酸ピークは、検出されなかった。外因性遊離脂肪酸の補充を伴う、酵母におけるこれらの新規の脂肪酸の異種発現は、活性を示す際にいくつかの困難に遭っている(Lee et al.,1998、Cahoon et al.,2003)。したがって、植物細胞における機能的分析が以下の通りに行われた。
【表9】
【0358】
N.ベンタミアーナにおける候補CtFAD2遺伝子の一過性発現
植物細胞において、具体的には、植物葉において構造的様式で遺伝子を発現するために、CtFAD2 ORFのそれぞれを、増強されたCaMV−35Sプロモーターとポリアデニル化シグナル配列を含むnos3’ターミネーターとの間の修飾されたpORE04バイナリーベクター中にセンス方向に挿入した(Coutu et al.,2007)(配列番号54)。先行研究は、導入遺伝子の発現がウイルスサイレンシングサプレッサータンパク質P19の共発現によって有意に増強され、N.ベンタミアーナ葉に基づいた一過性アッセイにおいて、宿主導入遺伝子サイレンシングを誘導したことを示した(Voinnet et al.,2003、Wood et al.,2009、Petrie et al.,2010)。実施例1に記載されるように、これらの実験を行った。
【0359】
上述のように、CtFAD2−11の機能は、初めに、S.セレヴィシエにおける発現によって評価され、2つの新規の脂肪酸はそれぞれ、GC−MSにより18:2
Δ9(Z),12(Z)および18:2
Δ9(Z),12(E)として特定された。酵母菌から得られた結果と一致して、N.ベンアミアーナ葉におけるCtFAD2−11の発現により、新規の18:2トランス異性体を得た。この異性体のメチルエステルは、メチル18:2
Δ9(Z),12(E)のGC保持時間と同一のGC保持時間を示した(
図4B)。新規の18:2
Δ9(Z),12(E)は、CtFAD2−11を一過的に発現した後の葉において脂肪酸の0.35%を占めた(表10)。さらに、酵母培地中で観察されなかった別の新しいピークが検出された。この新しい脂肪酸の全イオンクロマトグラムおよび質量スペクトルは、クレペニン酸(18:2
Δ9(Z),12(c))のものと一致し(
図4BおよびC)、これは、CtFAD2−11ポリペプチドがΔ12−アセチレナーゼ活性を有したことを示す。表10中に示されるように、クレペニン酸は、全脂肪酸の0.51%を占めた。
【0360】
N.ベンアミアーナ細胞中のCtFAD2−11の一過的な発現が、非形質転換対照と比較して、18:2
Δ9(Z),12(Z)の含量の減少をもたらしたことが観察された(表10)。これは、両酵素の基質のオレイン酸の利用可能なプールにおける、N.ベンアミアーナ細胞中のCtFAD2−11と内因性シス−Δ12オレイン酸塩デサチュラーゼとの競合による可能性が高かった。概して、酵母菌およびN.ベンアミアーナ発現実験の結果は、CtFAD2−11がリノール酸およびそのトランス−Δ12異性体の両方を生じるステレオ特異性を欠いているオレイン酸塩Δ12−デサチュラーゼとして主に機能したことを示した。さらに、Δ12二重結合のリノール酸をさらに非飽和して、クレペニン酸のアセチレン結合を形成し得た。
【0361】
また、その他の10の候補CtFAD2ポリペプチドは、同じ方法でN.ベンアミアーナ葉において一過的に発現したが、既に高レベルのFAD2を有するN.ベンアミアーナ葉において内因的に存在しない、いかなる新しい脂肪酸も観察しなかった。
【表10】
【0362】
考察
ベニバナにおいて特定された上述の11の候補CtFAD2遺伝子は、今まで試験されたあらゆる植物種に観察された最大のFAD2遺伝子ファミリーを表す。単一のFAD2遺伝子のみがアラビドプシス(Okuley et al.,1994)において特定されたが、FAD2は、今までに研究されたほとんどの他の植物ゲノムにおいて同義遺伝子によってコードされるように思われる。2つの別個のFAD2遺伝子が、大豆(Heppard et al.,1996)、亜麻(Fofana et al.,2004、Khadake et al.,2009)、およびオリーブ(Hernanze et al.,2005)、ヒマワリにおける3つの遺伝子(Martinez−Rivas et al.,2001)およびカメリナサティバ(Kang et al.,2011)、綿実における5つの遺伝子(Liu et al.,1998)において記載されている。アンフィテトラプロイド(amphitetraploid)種のブラシカナプスにおいて、4〜6つの異なるFAD2遺伝子が、それぞれの2倍体のサブゲノムに特定されている(Scheffler et al.,1997)。候補CtFAD2遺伝子のすべては、これらの配列がcDNAから単離されたため、ベニバナ植物において発現された。このことは、実施例6に記載されるように、さらに試験された。
【0363】
比較可能な研究を欠いているが、ベニバナが、FAD2遺伝子ファミリーの進化に関して独特であることは明らかである。ベニバナは、野生2倍体種カルタムスパラエスチヌス(Carthamus palaestinus)と最も密接に関係している自家受粉する2倍体植物種であり、広範なゲノム重複または再配置を有することは知られていない(Chapman and Burke,2007)。候補FAD2遺伝子がコード領域配列においてイントロンを含有しなかったため、特定された複数のFAD2 cDNAは、代替のスプライシングに起因し得なかった。むしろ、遺伝子重複が、ベニバナにおけるFAD2ファミリーの複雑性を生じるのに関与する可能性が高かった。系統樹のトポロジーは、遺伝子重複がいくつかの階層レベルで生じ得ることを示した。例えば、CtFAD2−3、−4、および−5ポリペプチドは、他のベニバナFAD2配列よりもクレードがあったという点において、他のものとより密接に関係し、より最近の遺伝子重複がこのクレードの出現に関与し得ることを示す。
【0364】
実施例6.ベニバナにおけるFAD2候補遺伝子の発現レベル
異なる組織におけるFAD2遺伝子の発現プロファイル
様々な候補CtFAD2遺伝子の組織発現パターンを決定するために、実施例1に記載されるような、RT−PCR分析を行った。総RNAは、10 DAGの高リノール酸遺伝子型SUのベニバナ実生由来の子葉、胚軸、根、および葉組織、ならびに開花植物由来の花組織および発生中の胚から抽出され、これらのアッセイに使用した。分析のために使用されたオリゴヌクレオチドプライマーを表11に列記する。
【表11】
【0365】
11のCtFAD2遺伝子の時間的および空間的発現を
図5に示す。RT−qPCRアッセイは、CtFAD2−1のみが発育中の種子において発現したことを示した。対照的に、CtFAD2−2は、試験した他の組織と同様に、種子において低レベルで発現された。さらに、CtFAD2−4、−5、−6、−7、−8、−9は、発育中の胚において観察されなかった。低いが、検出可能であるCtFAD2−10および−11の発現レベルは、発育中の種子中において、さらには、ベニバナ種子が成熟期を迎える晩期の発育段階において観察された。CtFAD2−4、−6、−7、−9、および−11はすべて、子葉および胚軸を含む若い実生組織において高いレベルの発現を示した。根特異的であるように思われたCtFAD2−5および−8ならびにCtFAD2−10は、花組織において選択的に発現され、比較的低いレベルで、発育中の種子および10日齢の実生組織を含む、試験された様々な他の組織に検出された。
【0366】
総RNA鋳型を用いるが、逆転写酵素を用いない対照反応物において、40サイクルの増幅後、増幅生成物は検出されず、このことは、RNA調製物における汚染ゲノムDNAの不在を示した。
【0367】
実施例7.ベニバナ株S317における遺伝子突然変異体の実証
インドからのベニバナ導入において見出されたベニバナにおける最初に特定された高オレイン酸の特徴は、単一遺伝子座OLでolと表記される部分的に劣性な対立遺伝子によって支配された(Knowles and Hill,1964)。olol遺伝子型のオレイン酸含量は、通常、温室栽培された植物において、71〜75%であった(Knowles,1989)。Knowles(1968)は、ol対立遺伝子をベニバナ繁殖プログラムに組み入れ、米国では、1966年に最初の高オレイン酸(HO)ベニバナ変種「UC−1」を公開し、これに続いて、改善された変種「Oleic Leed」、ならびにSaffola317(S−317)、S−517、およびS−518を含むSaffolaシリーズを公開した。高オレイン酸(olol)遺伝子型は、異なる温度で比較的安定していた(Bartholomew,1971)。さらに、Knowles(1972)はまた、35〜50%のオレイン酸のホモ接合条件で生成された同じ遺伝子座での異なる対立遺伝子ol
1も説明した。olol遺伝子型とは対照的に、ol
1ol
1遺伝子型は、温度に対して強い応答を示した(Knowles,1972)。
【0368】
より高いオレイン酸含量(85%超)を有するさらなる遺伝資源が報告された(Fernandez−Martinez et al.,1993、Bergman et al.,2006)。ベニバナにおける最大89%のオレイン酸含量は、元々、Banglaseshを起源とする遺伝資源アクセッションI401472において、Fernandez−Martinez et al.(1993)によって報告された。Bergman et al.(2006)によって開発されたMontolaシリーズは、Knowles and Hill(1964)によって記載される、olol対立遺伝子を含有する「UC−1」変種において、オレイン酸の最高レベルを明らかに超える、80%超のオレイン酸を含有する。異種交配による遺伝分析および分離比分析、高オレイン酸および非常に高いオレイン酸株は、これらの2つの株がOL遺伝子座で同じ対立遺伝子を共有することを示唆した。非常に高いオレイン酸含量(85%)は、ol対立遺伝子を組み合わせ、オレイン酸への小さな陽性結果を有する遺伝子を修飾することによって得た(Hamdan et al.,2009)。
【0369】
高オレイン酸突然変異株S−317のインビトロ生化学的特性分析
Stymne and Appelqvist(1978)によって記載されるように、ベニバナミクロソームを、開花後(DPA)約15日目の中期の成熟段階で高オレイン酸遺伝子型S−317の発育中の種子から新たに調製した。標準的な90μLの反応混合物は、0.1mmolのリン酸カリウム緩衝液pH7.2中に、40μgのミクロゾームタンパク質、2nmol[
14C]オレオイル−CoAを含有した。次いで、10μLの50mM NADHを添加し、さらに5、10、または20分間インキュベーションを継続した。90μLの0.15M 酢酸を添加することによって、反応を停止し、脂質は、500μLのCHCl
3:MeOH(1:1)で抽出した。より低いCHCl
3相を回収し、それからの極性脂質を、CHCl
3/MeOH/HAc/H
2O(90:15:10:3 v/v/v/v)の溶媒系を使用して、薄膜クロマトグラフィー(TLC)によって分離した。PCに対応するスポットを、プレートから削り取り、会合した脂肪酸基を、2mlのMeOH中2%硫酸中、90℃で30分間トランスメチル化した。得られたFAMEを、ヘキサン:DEE:HAc(85:15:1 v/v/v)でAgNO
3処理したTLCプレート上で分離した。
14C標識したオレイン酸塩およびリノール酸メチルエステル標準物質を、参照としてプレート上にスポッティングした。プレートを曝露し、Fujifilm FLA−5000 phosphorimagerによって分析した。それぞれの試料の放射をFujifilm Multi Gaugeソフトウェアで定量化した。
【0370】
野生型ミクロソームによる反応物へのNADHの添加時に、添加した[
14C]オレオイル−CoAは、[
14C]リノール酸塩の出現と同時に、10分以内ですぐに消失したことが観察され、これは、野生型ベニバナミクロソームにおける、オレイン酸塩のリノール酸塩への効率的な変換を示した。対照的に、高オレイン酸遺伝子型S−317については、[
14C]オレイン酸塩の[
14C]リノール酸塩に対する著しく高い比が、時間経過を通じてインビトロ反応において見出され(表12)、ミクロソームによるオレイン酸塩の不飽和化によるリノール酸の生合成がこの遺伝子型において劇的に減少したことを示した。
【表12】
【0371】
高オレイン酸塩対立遺伝子olの分子特性化
ベニバナにおける高オレイン酸遺伝子型(olol)の分子基盤を理解するために、2つの種子により発現したFAD2 cDNA、すなわち、CtFAD2−1およびCtFAD2−2を、3つの高オレイン酸変種:S−317、LeSaf 496、およびCW99−OLからのPCRによって増幅し、配列決定した。3つの高オレイン酸変種のすべてからのCtFAD2−1遺伝子の全コード領域を網羅するcDNAは、互いにヌクレオチド配列において特定され、野生型変種SU由来のCtFAD2−1 cDNAと約98%配列同一性を共有し、これには、野生型と比較して、HO遺伝子型において、1つのヌクレオチド欠失と、22のヌクレオチド置換とを含んだ。単一の塩基対欠失は、CtFAD2−1コード領域のほぼ中央にある第1のATGから計数してヌクレオチド606で見出された。この欠失は、欠失直後に停止コドンを作製した翻訳後リーディングフレーム中にシフトを生じ、そのため、第3のヒスチジンボックスを含まない、予測された切断型ポリペプチドをコードした3つのolol変種の突然変異遺伝子が、野生型タンパク質中に存在した(
図6)。さらなる突然変異が突然変異遺伝子中において蓄積されたことを示唆するol対立遺伝子の欠失した単一のヌクレオチド部位付近のDNA配列中に比較的高いレベルの配列変異があったことは、注目に値した。。
【0372】
また、CtFAD2−1およびCtFAD2−2の5’UTRイントロンを含むDNA領域を、olol突然変異S−317から単離し、野生型イントロンと比較した。S−317からのCtFAD2−1イントロンは、1144bpの長さであり、1083bpの長さの野生型SUイントロンよりも61bp長かった。CtFAD2−1イントロンのヌクレオチド配列の比較は、76.8%の全配列同一性を示し、このイントロンは、27の消失、および95の単一ヌクレオチド置換がある点で異なることを示した(
図7)。
【0373】
興味深いことに、突然変異遺伝子におけるヌクレオチド置換は、欠損CtFAD2−1のコード領域に対応する1142bp長の領域において均等に分散されず、22のうちの14(63.6%)の置換がヌクレオチド欠失付近で、ほとんどが単一のヌクレオチド欠失のちょうど下流123bp内に存在した。対照的に、野生型および突然変異遺伝子型におけるCtFAD2−2イントロンは、わずか12のヌクレオチド置換および1つの2−nt消失を有する、99.5%の全配列同一性を共有した。これは、一部の選択圧がHO突然変異体において欠損CtFAD2−1遺伝子に生じたか、あるいは、恐らく、CtFAD2−1突然変異が古い起源から成り、C.パラエスチヌス等のベニバナの子孫種に起源を有し得る可能性がさらに高いことを示す。
【0374】
市販の高オレイン酸変種S−518由来のEMS突然変異体(S−901)が、米国特許第US5,912,416号に記載されている。遺伝学研究は、この新しい遺伝子型の、いわゆるol
2対立遺伝子がOL遺伝子座においてolおよびol
1対立遺伝子とは異なることを示したが、その分子的性質は、Weisker(米国特許第US5,912,416号)によって決定されなかった。S−901遺伝子型は、成熟種子における、89.5〜91.5%の全脂肪酸に対してオレイン酸のレベルの増加を特徴とした。飽和脂肪酸の減少、すなわち、パルミチン酸では約4%減少、ステアリン酸では約2.5%減少した。しかしながら、S−901は、正常な植物表現型を示さず、生育および収率を含むことに苦戦した。形態学的には、それは、その親株S−518と比較して短く、花の頭部は小さかった。それはまた、遅く開花し、種子内には油が少なかった。
【0375】
高オレイン酸繁殖のための完全なPCRマーカー設計
HO表現型に関与する原因となる突然変異体であると結論付けられる突然変異CtFAD2−1対立遺伝子における単一のヌクレオチド欠失配列多型は、突然変異ol対立遺伝子を追跡するために高効率の分子マーカーの分子基盤として開発された。したがって、本発明者らは、それが異型接合状態中に存在した場合でさえ、繁殖目的または変種の特定目的のために突然変異ol対立遺伝子の特定および選択を可能にした分子マーカーアッセイを開発した。それによって、分子マーカー支援選抜は、脂肪酸表現型に対してスクリーニングされなければならない植物の余分な世代を生成する必要をなくす。完全な分子マーカーアッセイと組み合わせた単純な遺伝学は、ベニバナ育種家が、繁殖プログラムに高オレイン酸の特質を迅速に組み込むことを可能にするであろう。
【0376】
PCR反応に基づいて差次的マーカーを容易に生成するために、野生型SUと高オレイン酸遺伝子型S−317との間のCtFAD2−1のエクソンには、不十分な配列の突然変異があったように思われた。しかしながら、本発明者らは、OL対立遺伝子とol対立遺伝子との間のCtFAD2−1の5’UTRイントロンの比較的高い配列分散をうまく利用し得た。独自のPCRプライマーの設計を可能にしたこれらの2つの対立遺伝子間の高度な可変配列の伸長があった。以下の例示的なプライマーは、野生型SUではなく、olol突然変異対立遺伝子を担持する高オレイン酸遺伝子型からの315bp長の特定の生成物を増幅するように設計された。HO−センス:5’−ATAAGGCTGTGTTCACGGGTTT−3’(配列番号140)およびHO−アンチセンス:5’−GCTCAGTTGGGGATACAAGGAT−3’(配列番号141)(
図7)。変種SUにおいて野生型遺伝子に特異的な別の対の例示的なプライマーは、以下のような、603bpのPCR生成物を生じた:HL−センス:5’−AGTTATGGTTCGATGATCGACG−3’(配列番号142)およびHL−アンチセンス:5’−TTGCTATACATATTGAAGGCACT−3’(配列番号143)(
図7)。ベニバナKASII遺伝子由来の一対のプライマー、ctkasII−センス:5’−CTGAACTGCAATTATCTAGG−3’(配列番号144)およびctkasII−アンチセンス5’−GGTATTGGTATTGGATGGGCG−3’(配列番号145)は、鋳型DNAと同等の負荷および良好なPCR性能を確立するために、陽性対照として使用された。
【0377】
PCR反応条件は、94℃で2分間、続いて、94℃で30秒間、58℃で30秒間、および72℃で30秒間の40サイクルであった。反応生成物は、1%のアガロースゲル上で電気泳動によって分離し、このゲルのエチジウムブロマイド染色後に紫外線光下で可視化した。約300bpの断片が、試験された5つの高オレイン酸遺伝子型すべて、つまり、S−317、S−517、CW99−OL、LeSaf496、およびCiano−OLに対する増幅反応について観察されたが、そのような断片は、野生型遺伝子型SUには不在であった。逆に、約600bpの断片が野生型ベニバナSUに対する増幅に存在したが、試験した高オレイン酸変種のいずれにも存在しなかった。陽性対照として、KASII遺伝子由来の198bpの帯を、試験した株のすべてに対する反応物(eraction)で増幅した。アンプリコンの特定は、DNAシークエンシングによって確認された。
【0378】
高オレイン酸対立遺伝子と野生型ベニバナ対立遺伝子との間のCtFAD2−1遺伝子の5’UTRイントロン領域内の配列分散は、それによって、CtFAD2−1突然変異の存在または不在のためのPCRマーカー診断の開発を容易にする。それは、遺伝的背景がどうであってもol対立遺伝子に完全に連結された、つまり、それは、完全に連結したマーカーであった。しかしながら、分子マーカーは優性マーカーであり、その結果として、そのマーカーのみの使用は、ol対立遺伝子におけるホモ接合遺伝子型とヘテロ接合遺伝子型の区別を可能にし得なかった。これを克服するために、野生型Ol対立遺伝子のみ増幅する別の対のPCRプライマーが設計された。それ故に、高オレイン酸に特異的なPCRプライマーと組み合わせたそのような野生型に特異的なプライマーの使用が、CtFAD2−1遺伝子座でホモ接合遺伝子型とヘテロ接合遺伝子型を区別することを可能にした。
【0379】
CtFAD2−1発現は、高オレイン酸遺伝子型において劇的に減少する。
上の節において、CtFAD2−1が発育中の種子においてのみ発現され、若いベニバナ実生由来の葉、根、花、子葉、および胚軸を含む試験した様々な他の組織には検出されなかったことを示した。CtFAD2−1は、脂肪酸の代謝速度が高い発育中の種子中において高度に発現され、比較的短期間に大部分はC18:2を有する活性な油蓄積をもたらした。CtFAD2−1は、種子発育時にほぼ中間の地点でその最高の発現レベルを有し、種子発育の早期および晩期段階の両方でより中度の発現レベルを有した。
【0380】
RT−qPCRアッセイ方法を使用して、CtFAD2−1遺伝子の正規化された遺伝子発現のレベルを、3つの高オレイン酸変種、すなわち、S−317、Lesaff496、およびCW99−OLにおいて測定し、野生型遺伝子型SUの発育中の種子中のものと比較した。
図8中に見られ得るように、CtFAD2−1発現は、野生型ベニバナ遺伝子型SUにおける発育中の胚の3つの段階すべてにおいて検出され、中期の成熟段階で観察された最高レベルの発現を有し、既存の結果と一致し、この主要なFAD2遺伝子の一時的な転写パターンを確認した。しかしながら、CtFAD2−1転写は、3つの高オレイン酸変種S−317、Lesaff496、およびCW99−OLにおいてわずかしか検出できず(
図8)、突然変異胚中において、この遺伝子からのRNA転写物の高レベルの不安定度を示した。
【0381】
対照的に、CtFAD2−2からの転写物のレベルは、野生型および高オレイン酸遺伝子型と類似しており、CtFAD2−2発現がHO胚内において影響を受けず、ならびに、RNA調製物がアッセイに対して好ましくは純粋であった。したがって、CtFAD2−2発現はまた、野生型種子中においてCtFAD2−1に対してよりもはるかに低いレベルであるが、発育中のベニバナ種子中の貯蔵脂質に対して脂肪酸のΔ12−不飽和化に寄与し得、同様に、根、葉、および茎における膜脂質に対して脂肪酸のΔ12−不飽和化に関与し得ると結論付けられた。CtFAD2−2発現は、CtFAD2−1突然変異体の発育中のベニバナ種子中におけるCtFAD2−1活性の喪失に応答する、またはそれに対して補償として高オレイン酸突然変異に対して上昇したことにおける証拠はなかった。
【0382】
HO株における劇的に減少したCtFAD2−1転写物は、非センス媒介RNA分解(NMD)によって引き起こされる。
HO胚内のCtFAD2−1転写物の劇的に減少したレベルは、未成熟停止コドンが単一のヌクレオチド欠失直後にコード配列の中央に見られたため、CtFAD2−1 mRNAの非センス媒介mRNA分解(NMD)によって引き起こされた可能性がある。NMD系は、ゲノムの突然変異、転写エラー、およびミススプライシング等の想定外のエラーを生じる未成熟終止コドン(PTC)を含む異常なmRNAの分解に関与する機構であると考えられる。それは、広く真核生物中に存在する機構であり、特に、酵母菌および哺乳動物において広く研究されている。高等植物においては、少ししか研究されていないが、大豆Kunitz型トリプシン阻害剤遺伝子(Kti3)、インゲンマメ由来のフィトヘムアグルチニン遺伝子(PHA)(Jofuku et al.,1989、Voelker et al.,1990)、エンドウフェレドキシン遺伝子(FED1)(Dickey et al.,1994)、およびイネwaxy遺伝子(Isshiki et al.,2001)を含むいくつかの報告がある。
【0383】
これらの実験において、ベニバナ種子油中において高オレイン酸の特質をもたらすol突然変異が、発育中の種子中において低レベルのCtFAD2−1 mRNA蓄積と相関したことを示した。先行研究は、ol対立遺伝子が半劣性であり、小RNAによって媒介された転写後の遺伝子サイレンシング機構と一致しなかったことを示した。遺伝子サイレンシングは、二重鎖RNAから生成された21〜24ntのsiRNAに関与し、アンチセンスまたはヘアピンRNAの転写を生じ、優性遺伝子または半優性遺伝子の遺伝子座として遺伝的に作用し得る(Brodersen and Voinnet,2006)。ol突然変異の機構がRNAi関連遺伝子サイレンシングとは異なることを確認するために、以下のように、小RNA配列決定を行った。
【0384】
高オレイン酸遺伝子型S−317および野生型SUに由来する2つの小RNAライブラリーは、中期の成熟発育中の胚から単離されたプールしたRNAを使用して生成された。Solexa技術(Hafner et al.,2008)を用いて小RNAライブラリーのバルク配列決定を行った。IlluminaのSolexa Sequencer上で、これらの2つのライブラリーの配列決定を行い、試料を並んで走行させた。SUおよびS−317小RNAライブラリーの配列決定はそれぞれ、合計で23,160,261および21,696,852の未処理の読みを生じた。これらの読みの分析はそれぞれ、18〜30ヌクレオチド(nt)の長さの範囲に及ぶ22,860,098および21,427,392の配列の特定をもたらした。SUおよびS−317ライブラリーにおいてCtFAD2−1に対応する小RNAの存在および分散が決定された。CtFAD2−1に対応する低いほとんど検出できないレベルの小RNAのみが小RNAライブラリーの両方から検出され、CtFAD2−1遺伝子のコード領域上にほぼ均等に分散された。野生型ライブラリーと高オレイン酸ライブラリーとの間の明らかな相違はなかった。
【0385】
このデータから、小RNA媒介された転写後の遺伝子サイレンシングは、主要な機構ではなく、突然変異CtFAD2−1の転写物の蓄積を阻止したことが結論付けられた。
【0386】
N.ベンタミアーナ葉における一過的発現研究
NMD現象をさらに調査するために、本発明者らは、N.ベンタミアーナ葉における野生型および高オレイン酸遺伝子型の両方に由来するCtFAD2−1の一過的発現についての実験を行った。
【0387】
CtFAD2−1 ORFのそれぞれを、CaMV−35Sプロモーターの制御下で、センス方向に修飾されたpORE04バイナリーベクターに挿入した。35S:CtFAD2−1またはその突然変異形態35S:CtFAD2−1Δのいずれかを内部に有するアグロバクテリウムツメファシエンス株AGL1を、実施例5に記載される、35S:P19とともに十分に膨張したN.ベンタミアーナ葉の裏面に浸潤した。24℃でさらに5日間生育させた後、浸潤した領域を切除し、Rneasyミニキット(Qiagen)を使用して試料から総RNAを得た。CtFAD2−1 RNAレベルを測定するために、実施例1に記載されるように、Platinum SYBR Green qPCR SuperMix−UDG(Invitrogen)を使用して、リアルタイムqPCRアッセイを3重で行い、ABI 7900HT配列検出システム上で操作した。PCRは、初めに、48℃で30分間、次いで、95℃で10分間、続いて、95℃で15秒間、および60℃で60秒間を40サイクルの条件下で行った。外因性CtFAD2−1遺伝子に対するプライマーは、センス:5’−GTGTATGTCTGCCTCCGAGA−3’(配列番号146)、アンチセンス:5’−GCAAGGTAGTAGAGGACGAAG−3’(配列番号147)であった。参照遺伝子、ベニバナCtKASIIを使用して、発現レベルを正規化し、その特異的プライマーは、センス:5’−CTGAACTGCAATTATCTAGG−3’(配列番号144)、およびアンチセンス:5’−GGTATTGGTATTGGATGGGCG−3’(配列番号145)であった。N.ベンタミアーナ葉において、野生型SU変種由来の35S−CtFAD2−1遺伝子から高レベルのCtFAD2−1発現が観察された。対照的に、高オレイン酸遺伝子型由来の35S−CtFAD2−1Δ遺伝子に対してはるかに低いレベルの発現が観察された。
【0388】
Clough and Bent(1998)の方法に従って、A.サリアナ生態型Col−0植物を、CtFAD2−1またはCtFAD2−1Δのいずれかのコード領域を活発にする種子特異的プロモーターFp1を内部に有するバイナリーベクターを持つA.ツメファシエンスAGL1で形質転換された。総RNAを、Rneasyミニキット(Qiagen)を使用して、得られた形質転換した植物の子孫の中期の成熟段階の胚を含む長角果から単離した。遺伝子発現研究を、RNA調製物を使用して、リアルタイムRT−qPCRアッセイによって行い、上記のように、3重で行った。SU由来のFp1−CtFAD2−1を発現するアラビドプシス長角果において、高レベルのCtFAD2−1発現が観察されたが、高オレイン酸遺伝子型由来のFp1−CtFAD2−1Δの発現は、比較すると、劇的に減少した。
【0389】
突然変異CtFAD2−1の転写物が総計で劇的に減少したが、CtFAD2−1に特異的な小RNAは、野生型遺伝子由来の小RNAと比較して、発育中の高オレイン酸ベニバナ種子において著しく高いレベルで生成されなかったことを示した。したがって、高オレイン酸遺伝子型におけるCtFAD2−1 RNAの減少は、NMDによるものであり、小RNA媒介性転写後の遺伝子サイレンシング機構とは異なると結論付けた。また、NMD現象は、突然変異コード領域がN.ベンタミアーナ葉またはアラビドプシス長角果のいずれかにおいて外因的に発現された場合に観察された。
【0390】
実施例8.FATBをコードするための候補であるベニバナcDNAの単離
ベニバナFATB cDNA配列の単離
ベニバナ種子油は、約7%のパルミチン酸を含有する。この脂肪酸は、発育中の種子細胞のプラスチドで合成され、そこからそれを、トリアシルグリセロールへのその組み込みのために細胞の細胞質ゾルに輸出される。パルミチン酸輸出のための主要な酵素は、パルミトイル部分とアシル担体タンパク質(ACP)との間のチオエステル結合を加水分解するパルミトイル−ACPチオエステラーゼであり、ここに、アシル基を共有結合するが、それはプラスチドで合成される。酵素パルミトイル−ACPチオエステラーゼは、FATBと表される一連の溶解性プラスチドを標的とする酵素に属する。種子油植物において、この酵素は、基質として短鎖飽和アシル−ACPに対して特異性を示す。初めに、FATB酵素をコードする遺伝子を、California月桂樹(ウンベルラリアカリフォルニカ(Umbellularia californica))由来のラウリン酸(C12:0)等の中鎖長飽和脂肪酸を蓄積する植物種から単離した。その後の研究は、FATB相同分子種が、すべての植物組織中、主に種子中に存在し、C8:0−ACPからC18:0−ACPの範囲に及ぶ基質特異性を有することを示した。アラビドプシスおよびベニバナを含むほとんどの温暖な油糧種子作物において、パルミチン酸は、種子油中において主要な飽和脂肪酸である。
【0391】
FATBのための候補をコードされるベニバナcDNAを単離するために、実施例1に記載されるように、発育中のベニバナ種子のcDNAライブラリーを、綿(ゴシッピウムヒルスツム)由来のFATB cDNA断片から成る異種プローブを使用してスクリーニングした。CtFATB−T12と命名されるある完全長cDNAを、ベニバナ種子cDNAライブラリーから単離した。このcDNAは、343アミノ酸のポリペプチドをコードする1029ヌクレオチド長のオープンリーディングフレームを含んだ。その5’および3’UTRはそれぞれ、236ntおよび336ntの長さであった。CtFATB−T12ポリペプチドは、らせんおよびマルチストランドシート折り畳みの2つの繰り返しを含んだ約60アミノ酸および210アミノ酸残基コアの予測された輸送ペプチド、一般には、いわゆる、ホットドッグ折り畳みタンパク質を有した。
【0392】
ベニバナのためのCompositae Genome Project(CGP)の発現配列タグ(EST)データベース(cgpdb.ucdavis.edu/cgpdb2)から、CtFATB−T12に対して相同性を有する3つの異なるEST、すなわち、EL379517、EL389827、およびEL396749が特定された。それぞれが、部分長であった。対応する遺伝子はそれぞれ、CtFATB−A、CtFATB−B、およびCtFATB−Cと表した。ベニバナ種子cDNAライブラリーから単離された完全長cDNA CtFATB−T12は、それらの重複する領域内のCtFATB−CからのESTへのヌクレオチド配列において特定された。CtFATB−Aは、他の2つのCtFATB配列と比較して、そのヌクレオチド配列においてより分岐したと思われた。
【0393】
リアルタイムqPCR分析によるCtFATB遺伝子の発現プロファイル
実施例1に概説されるように、3つのCtFATB遺伝子の遺伝子発現プロファイルを、リアルタイムqPCRを用いて研究した。3つの遺伝子のそれぞれの独自の領域に対応するオリゴヌクレオチドプライマーが設計され、これには、CtFATB−A、センスプライマー:5’−AGAGATCATTGGAGACTAGAGTG−3’(配列番号148);アンチセンスプライマー:5’−CCCATCAAGCACAATTCTTCTTAG−3’(配列番号149);CtFATB−B、センスプライマー:5’−CTACACAATCGGACTCTGGTGCT−3’(配列番号150);アンチセンスプライマー:5’−GCCATCCATGACACCTATTCTA−3’(配列番号151);CtFATB−C、センスプライマー:5’−CCTCACTCTGGGACCAAGAAAT−3’(配列番号152);アンチセンスプライマー:5’−TTCTTGGGACATGTGACGTAGAA−3’(配列番号153)が含まれた。実施例1に記載されるように、PCR反応は、3重で行われた。
【0394】
図9中に示されるように、CtFATB−Aは、試験された葉、根、および発育中の胚の3つの段階すべてにおいて、低い発現レベルを示した。CtFATB−Bは、葉および根において活性であったが、葉および根においてよりも発育中の胚においてより低い発現を示した。これは、この遺伝子がもしあったとしても、発育中の種子中の脂肪酸生合成において、小さい役割のみを果たし得ることを示唆した。対照的に、CtFATB−Cは、試験した組織すべてにわたって、特に、発育中の胚中において高い発現レベルを示した。これは、CtFATB−Cが、ベニバナ種子油中においてパルミチン酸の生成のためにFATBをコードする主要な遺伝子であったことを示した。これは、種子胚ライブラリー由来のわずかに1つのFATB cDNAクローン、すなわち、CtFATB−T12の回収と一致し、CtFATB−Cに対する配列と同一であった。これらのデータに基づいて、CtFATB−T12(CtFATB−C)由来の約300bpのDNA断片が、以下の実施例に記載されるように、ベニバナ種子中においてFATBの下方調節のためのhpRNA構築物の調製において使用される遺伝子配列として選択された。
【0395】
実施例9:FAD6をコードするベニバナcDNAの単離および発現
ベニバナFAD6 cDNA配列の単離
ミクロソームおよび葉緑体膜脂質および種子貯蔵油に見出される、明確に異なる脂肪酸組成は、脂肪酸生合成を調節することによって、この組成を制御するように操作する複雑な代謝ネットワークの結果であり、いわゆる、原核生物および真核生物の経路の両方を通じて流動する。ミクロソームFAD2酵素は、細胞質中において、プラスチドからオレイン酸の輸出、およびCoAエステルへの変換後に、ERにおいて、オレイン酸塩をリノール酸塩に変換する際に重要な役割を有することは明らかである。葉緑体オメガ−6デサチュラーゼ(FAD6)はそれぞれ、ホスファチジルグリセロール、モノガラクトシルジアシルグリセロール、ジガラクトシルジアシルグリセロール、およびスルホギノボシルジアシルグリセロールを含むすべての16:1−または18:1−を含有する葉緑体膜脂質上で、16:1および18:1脂肪酸を16:2および18:2に不飽和化する酵素である。アラビドプシスfad6突然変異はそれぞれ、すべての葉緑体脂質上で、16:1および18:1の16:2および18:2への不飽和化において欠失していることが報告された(Browse et al.,1989)。fad6突然変異体が低温(5℃)で生育された場合、葉は退緑し、生育速度は、野生型と比較して、著しく減少した(Hugly and Somerville,1992)。FAD6をコードするcDNA配列は、初めに、Falcone et al.(1994)によってアラビドプシスから単離された。それ以来、FAD6およびFAD6遺伝子をコードするcDNAは、ブラシカナプス、ポルチュラカオレラセア、大豆、およびリシヌスコミュニスを含むいくつかの植物種から単離されている。
【0396】
ベニバナ由来のFAD6遺伝子によってコードされる葉緑体ω6デサチュラーゼをコードするcDNAクローンを単離するために、相同配列に対するCPGデータベースを、検索した。8つのEST配列、すなわち、EL378905、EL380564、EL383438、EL385474、EL389341、EL392036、EL393518、EL411275を特定し、808ntの単一コンティグ配列に組み立てた。この配列は、無傷5’末端を有したが、3’末端で不完全であった。その後、鋳型として、ベニバナ(SU)の発育中の種子から作製されたラムダcDNAライブラリーから抽出されたDNAを使用して、3’RACE PCR増幅を通じて、完全長cDNAを得た。PCR条件は、実施例2に記載される通りであった。ctFAD6−s2と表された単一オリゴプライマーは、このプライマーの配列がcDNAライブラリーのベクター中に存在したため、M13順方向プライマーと組み合わせた増幅反応において使用された。ctFAD6−s2プライマーの配列は、5’−CATTGAAGTCGGTATTGATATCTG−3’(配列番号154)であった。435アミノ酸の候補FAD6ポリペプチドをコードした1305bpのオープンリーディングフレームを有した1545bpのcDNAを得た。このポリペプチドは、他のクローン化した植物FAD6ポリペプチドと60〜74%のアミノ酸配列同一性を共有した。ベニバナFAD6配列と高等植物において特定された代表的なFAD6色素体Δ12デサチュラーゼとの間の系統発生関係を示す系統樹が、ベクターNTIによって形成された(
図10)。
【0397】
リアルタイムqPCR分析によるCtFAD6の発現プロファイル
CtFAD6の発現プロファイルは、Platinum SYBR Green qPCR SuperMix−UDG(Invitrogen)を使用して行われたリアルタイムRT−qPCRによって調べられ、実施例1に記載されるように、デフォルトパラメータを用いてABI 7900HT配列検出システム上で操作した。使用されたプライマーは、ctFAD6−S2:5’−CATTGAAGTCGGTATTGATATCTG−3’(配列番号155)およびctFAD6−a2:5’−GTTCCAACAATATCTTCCACCAGT−3’(配列番号156)であった。反応は、20ngの総RNA鋳型、800mMのそれぞれのプライマー、0.25μLの逆転写酵素、および5μLのワンステップRT−PCRマスターミックス試薬を含む10μLの全容積で3重で行われた。RTおよび増幅のための条件は、48℃で30分間、次いで、95℃で10分間、続いて、95℃で15秒間、および60℃で60秒間を40サイクルであった。参照遺伝子ベニバナCtkasIIの発現を使用して、FAD6発現レベルを正規化した。実施例1に記載されるように、計算を行った。
【0398】
この分析は、CtFAD6が、葉、根、および発育中の胚の3つの連続的な段階において、比較的低いレベルで発現されたことを示した。発育中の種子中において観察された低い発現レベルは、FAD6が種子中のオレイン酸塩の不飽和化において、比較的に小さい役割を有し得るという考えと一致した。
【0399】
実施例10.ベニバナにおける脂肪酸生合成遺伝子をサイレンシングするための遺伝的構築物の設計および調製
ヘアピンRNA(hpRNA)は、植物における遺伝子発現を減少させるために広く使用されている一種のRNA分子である。ヘアピンRNAは、一般に、植物細胞において、サイレンシングされる遺伝子に由来する逆方向反復の配列を含むDNA構築物から転写される。hpRNA転写物は、それによって、ハイブリダイズして、ループ配列によって結合される二本鎖RNA(dsRNA)領域を形成する相補的センスおよびアンチセンス配列を有する。そのようなdsRNA構造は、植物細胞において、内因性サイレンシング機構によって処理されて、配列において活性が減少される遺伝子に対応する約21〜24のヌクレオチドの小RNA分子を形成する。これらの小RNAは、対象となる遺伝子を特異的にサイレンシングする内因性タンパク質で複合体を形成することができる。そのようなサイレンシングは、標的遺伝子部分のDNAメチル化によって媒介される転写レベルで、標的mRNAの分解による転写後のレベルで、またはそのmRNAに結合し、その翻訳を阻害し、それによって遺伝子によってコードされるタンパク質合成を減少させることによって生じ得る。hpRNAが遺伝子ファミリーのメンバー間で共通の配列を含む場合、hpRNAは、配列を有するこれらの遺伝子のそれぞれにサイレンシングし得る。
【0400】
ベニバナは、本明細書で記載されるように特定される少なくとも11のメンバーを有する大ファミリーのFAD2遺伝子(実施例2〜6)を有する。ベニバナはまた、特定される少なくとも3つのメンバーを有するFATBポリペプチドをコードする複数の遺伝子(実施例8)、および少なくとも1つのFAD6遺伝子(実施例9)も有する。実際には、上述の実験は、ベニバナにおいて遺伝子ファミリーのすべてのメンバーを特定しなかった可能性がある。FAD2およびFATB遺伝子ファミリーのどのメンバーがベニバナ種子油中において見出されるリノール酸または飽和脂肪酸、特に、パルミチン酸の生合成に関与したか、ならびにFAD6も関与したかどうかを判定するために、いくつかの遺伝的構築物がベニバナ内でhpRNA分子を発現させ、FAD2、FATB、およびFAD6遺伝子の様々な組み合わせをサイレンシングした。これらのhpRNA構築物のそれぞれは、油合成期間中、発育中のベニバナ種子内で特異的に発現されるように設計された。これは、外来プロモーターまたは構築物を発現するためにベニバナから単離されたプロモーターのいずれかを使用することによって行われ、これらは、植物形質転換によってベニバナ中に導入された。
【0401】
pCW600の構築
植物バイナリー発現ベクターが、種子内の導入遺伝子の発現のために設計され、アラビドプシスOlesoin1遺伝子(TAIRウェブサイト遺伝子の注釈At4g25140)のプロモーター(配列番号52)を使用した。単離されたプロモーターは、1192bpの長さであり、アクセッション番号NC003075.7のヌクレオチド12899298から開始したが、1198bpの配列内で、通常の制限消化配列を避け、後続のクローニングステップを支援するために、6bpを削除した。AtOleosinプロモーターは、以前、ベニバナおよびブラシカ種における導入遺伝子の強力な種子特異的発現に使用されていた(Nykiforuk et al.,1995、Vanrooijen and Moloney,1995)。このプロモーターは、プロモーター断片の両末端に結合したコード領域の強力な種子特異的発現を誘導する双方向性プロモーターである可能性が高かった。アラビドプシスオレオシンプロモーターは、双機能性を有することを特徴とするブラシカナプスオレオシンプロモーターと特徴を共有する(Sadanandom et al.,1996)。このプロモーターは、化学的に合成され、pGEMT−EasyおよびKlenow断片酵素充填反応によって平滑化されたプロモーターを含むEcoRI断片にクローン化され、pCW265(Belide et al.,2011)のKlenowによって平滑化されたHindIII部位に連結し、pCW600(AtOleosinP::空)を生成した。このベクターは、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HPT)をコードする選択可能なマーカー遺伝子を有し、それによって、形質転換プロセス中、組織培養中のハイグロマイシン(hygomycin)への耐性のための選択を可能にした。また、このベクターには、紫外線照射下で、蛍光による形質転換した細胞または組織の選択を可能にした35S::GFP遺伝子が含まれた。AtOleosinプロモーターを挿入することによって、このベクターは、複数のクローニング部位に位置しているプロモーターの下流およびnosポリアデニル化シグナル(nos3’)の上流に挿入され得る対象となるコード領域の発現のために設計された。このベクターは、以下に記載される構築物pCW602およびpCW603の骨格ベクターとして作用した。
【0402】
pXZP410の構築
亜麻リニンプロモーター(米国特許第US7,642,346号)(配列番号53)が、NotI−XhoI断片として、バイナリーベクターpT7−HELLSGATE12(Wesley et al.,2001)に挿入され、GatewayサイレンシングバイナリーベクターpXZP410を生成した。ベクターpXZP410は、組織培養中、カナマイシンへの耐性を付与した選択可能なマーカー遺伝子を有し、リニンプロモーターの制御下でヘアピンRNA構築物の種子特異的発現を可能にした。このベクターは、プロモーターに対して、1つはセンス方向に、もう1つはアンチセンス方向にある2つのイントロンを有し、イントロンに隣接するAttL1およびAttL2組み換え部位を有した。
【0403】
pXZP410からのサイレンシング構築物を作製するために、サイレンシングされるGateway侵入ベクター中の標的遺伝子からの2コピーの配列をベクターに挿入し、互いに対して逆方向で、2つのイントロンのうちの1つは、5’で挿入し、もう1つは、3’で挿入して、逆方向反復を形成した。組み換え部位は、前述されるように、Gatewayリコンビナーゼクローニングシステム(Invitrogen,Carlsbad,USA)を使用することによって、2コピーの挿入を容易に可能にした(Wesley et al.,2001)。このベクターpXZP410は、下述のように、pCW631およびpCW632を生成するための骨格ベクターとして使用された。
【0404】
pCW571の構築
CtFATB−3 cDNAのヌクレオチド485〜784に対応するベニバナ遺伝子CtFATB−3の領域と同一である300bpの配列(配列番号50)が、化学的に合成され、製造業者の取扱説明書に従って、pENTR/D topo(Invitrogen)中に挿入され、pCW569と表されたGateway侵入クローンを生成した。ヌクレオチド427〜1182に対応するCtFAD2−2のcDNAの756bpの断片(配列番号49)は、合成され、発育中のベニバナ種子から単離されたRNAからのRT−PCRによって増幅された。このプライマーはそれぞれ、D28−PstI−5(5’−CCTGCAGGTACCAATGGCTCGACGACACTG−3’)(配列番号157)およびD28−AscI−3(5’−CGGCGCGCCTTCACCTCCTCATCTTTATCC−3’)(配列番号158)であった。プライマーは、5’PstIおよび3’AscI制限酵素部位を含み、それによって、増幅された断片をpCW569の対応する部位中に挿入することができ、pCW570を生成した。このベクターは、組み換え部位AttL1およびAttL2によって隣接された1080bpの断片として、CtFATBおよびCtFAD2−2遺伝子からの融合領域を含んだ。ついで、2コピーのこのFATB−FAD2−2断片が、pXZP410中に挿入され、供給者の取扱説明書に従ってLRクロナーゼ(Invitrogen,Carlsbad,USA)を使用して、2番目のコピーを1番目のコピーに挿入した。得られたプラスミドpCW571は、種子中においてCtFATBおよびCtFAD2−2遺伝子の発現を減少させるためにhpRNAを生成するために、種子特異的な方法で逆方向反復領域を転写するための亜麻リニンプロモーターを有した。
【0405】
pCW603の構築
2つの介在するイントロンとともに逆方向反復のCtFATB−CtFAD2−2断片を含むpCW571からのDNA断片は、SpeIで切断され、DNAポリメラーゼのKlenow I断片を使用して平滑化され、pCW600のEcoRV部位に連結されて、pCW603を生成した。この構築物pCW603は、ベニバナの種子中において、AtOleosinプロモーターの制御下でhpRNAを発現し、CtFATBおよびCtFAD2−2の発現を減少させることができた。
【0406】
pCW581の構築
pCW571に関しては、CtFAD6のcDNAのヌクレオチド451〜750に対応するCtFAD6の290bpの断片およびCtFATBの300bpの断片から作製されるDNAの590bpの断片(配列番号51)が、化学的に合成され、pENTR/D topo中に挿入されて、pCW579を生成した。pCW570に関して上述のように、CtFAD2−2の780bpの断片は、pCW579のAscI部位中にクローン化されて、pCW580を生成した。この構築物は、隣接する組み換え部位AttL1およびAttL2とともに、1370bpのDNA断片として、CtFATB、CtFAD6、およびCtFAD2−2遺伝子の順番で結合された配列を含む侵入クローンベクターであった。次いで、2コピーのこのFATB−FAD6−FAD2−2断片が、LRクロナーゼを使用して、逆方向反復としてpXZP410中に挿入され、pCW581を生成した。この構築物pCW581は、逆方向反復に作動可能に連結された亜麻リニンプロモーターを有するバイナリーベクターであり、発育中のベニバナ種子の転写時に、細胞は、CtFATB、CtFAD6、およびCtFAD2−2遺伝子の発現を減少させるためにhpRNAを発現することができた。
【0407】
pCW602の構築
2つの介在するイントロンとともに、逆方向反復の結合されたCtFATB−CtFAD6−CtFAD2−2領域を含むDNA断片は、pCW571から酵素的にNot1で切断され、Klenow I断片を使用して平滑化され、次いで、pCW600のEcoRV部位に連結されて、pCW602を生成した。リニンプロモーターを用いることを除いては同じ設計および遺伝子断片を有したpCW581とは対照的に、pCW602は、AtOleosinプロモーターの制御下でCtFATB−CtFAD6−CtFAD2−2配列を有した。
【0408】
pCW631およびpCW632の構築
リニンプロモーターは、種子中においてhpRNAを発現するのに有用であったが、pCW571およびpCW581はともに、カナマイシン耐性を付与した選択可能なマーカーを有した。予備のベニバナ形質転換実験において、外植体がカナマイシンに十分に影響を受けなかったことを観察した。したがって、pCW571およびpCW581のカナマイシン耐性カセットは、選択可能なマーカー遺伝子としてハイグロマイシン耐性カセットに置き換えられた。enCUPプロモーター:ハイグロマイシン:nos3’ポリアデニル化領域からなるハイグロマイシン耐性遺伝子は、pCW265からSpeI−AvrII制限消化で切断され、pCW571およびpCW581において、カナマイシン耐性カセットを置き換えるために使用されて、それぞれ、pCW631および632を生成した。
【0409】
要約すると、ベニバナ形質転換のこの第1のセットに使用された構築物は、以下の主要要素を含んだ。
ベクター プロモーター 逆方向反復での遺伝子断片
pCW631 リニン CtFAD2-2およびCtFATB
pCW632 リニン CtFAD2-2、CtFAD6、およびCtFATB
pCW602 AtOleosin CtFAD2-2、CtFAD6、およびCtFATB
pCW603 AtOleosin CtFAD2-2およびCtFATB
【0410】
これらの構築物は、アグロバクテリウム株AGL1中に導入され、実施例1に記載されるように、ベニバナを形質転換するために使用され、以下の通りの結果を得た。
【0411】
実施例11.遺伝子サイレンシング構築物によるベニバナの形質転換
遺伝的構築体は、接木を使用して再生された芽を救助するアグロバクテリウムによる方法を使用して、ベニバナ変種S317の切除された子葉および胚軸を形質転換するために使用された(Belide et al.,2011)。非形質転換台木(以下、T
0植物と称される)上に生育している30を超える独立して形質転換された芽は、ベクターpCW603に対して再生され、実施例1に記載されるように、成熟するまで生育させた。T
0ベニバナ若枝におけるT−DNAの組み込みは、Belide et al.(2011)によって記載されるように、T−DNAベクターに特異的なプライマーを使用するPCRによって確認された。特定の形質転換に使用されるT−DNAを欠いていることが見出され、組織培養中の再生中、ハイグロマイシン選択からの「エスケープ」であると推定されるほとんどの植物が廃棄された。しかしながら、一部は、形質転換された植物との比較のための「ヌル」植物または陰性対照として維持された。これらの対照植物は、組織培養中において形質転換された材料と同じ条件、接木、および温室条件下で処理された。
【0412】
実施例12.トランスジェニックベニバナの種子油の脂肪酸組成の分析
脂肪酸分析が、以下の通りに、形質転換されたベニバナ植物から得られた個々のT
1種子において行われた。S317遺伝的背景において、pCW603で形質転換された30の個々のT
0植物が、温室中で生育され、自家受精して、種子を生成した。それぞれのT
0植物からの単一の種子の頭部から10個もの成熟種子が、実施例1に記載されるように、GC分析を使用して、脂質組成について分析された。pCW603で形質転換されたベニバナS317の種子からの脂肪酸組成分析の結果を表13中に要約する。それぞれの形質転換したT
0ベニバナ植物が、T−DNAに対してヘテロ接合であり、そのため、T
1種子の分離集団を生じることが予測されたため、それぞれの植物からの5〜10個の種子の分析が、いくつかのヌル(分離個体)の種子を含み得ることが予測された。そのようなヌル分離個体の種子は、同じ植物からの形質転換された種子と同じ種子頭部内で生育し、発育したため、この実験において良好な陰性対照であった。表13中のデータから見られ得るように、(全脂肪酸含量の重量%として)87%を超えるオレイン酸のレベルが、30の生成された株のうちの6つの独立した株(株9、12、14、20、34、および36)において観察された。多くの形質転換された種子は、87〜91.7%の範囲のオレイン酸含量を有し、2.15〜5.9%のリノール酸レベルおよび2.32〜3.45%のパルミチン酸レベルを有した。種子中の他の脂肪酸レベルは、非形質転換対照とは有意に異ならなかった。pCW603で形質転換されたT
1ベニバナ種子において観察された最大のオレイン酸含量が、91.7%であったのに対して、非形質転換S317対照種子およびヌル分離個体の種子では、約77%であった。とりわけ、種子脂質はまた、16:0のレベルで有意に減少し、4.5%から2.3%まで下がって減少した。TLCプレート上で精製される場合、種子油のTAG画分の脂肪酸のプロファイルは、種子から抽出された総脂質のものとは有意に異ならなかった。
【0413】
2つの測定基準が、ベニバナ種子油中において最も重要な脂肪酸を占めるベニバナ種子の全脂肪酸組成に基づいて計算された。これらは、オレイン酸不飽和率(ODP)およびパルミチン酸+リノール酸対オレイン酸の比率(PLO)であった。これらは、それぞれの種子について計算され、このデータを表13中に示す。野生型種子(S317、非形質転換)およびヌル分離個体は、約0.1500のODP比および約0.2830のPLO値を有した。pCW603由来のT−DNAで形質転換された種子は、ODPおよびPLO値の有意な減少を示した。6つの独立した事象から生じた13個の種子は、0.1未満のPLO値および0.06未満のODPを有した。1つの形質転換された株は、0.0229のODPおよび0.0514のPLOを有した。
【0414】
1つのエリート株の成熟した個々の単一種子、pCW603の株9で形質転換されたS317、および非形質転換親S317を、LC−MSの脂質全代謝物の分析に供した。これらの分析は、AtOleosinp:CtFATB−CtFAD2−2 RNAiヘアピン構築物で形質転換された種子由来の油が、TAGおよびDAG組成を劇的に変化させたことを明らかに示した(
図11および12)。TAG(54:3)のレベルの明らかな増加およびTAG(54:5)の減少があり、これらはそれぞれ、主に、18:1/18:1/18:1−TAG(トリオレイン)および18:1/18:2/18:2−TAGであった。LC−MSによって分析された種子のうち、TAG中のトリオレイン(=54:3)含量は、RNAiサイレンシング株由来の種子に対して最高のオレイン酸レベル(90%超、表14)で64.6%(モル%)と同量であり、それに対して、非形質転換(S−317)親は、47%〜53%の範囲のトリオレインレベルを有した。2番目に豊富なオレイン酸塩を含有するTAGは、18:0/18:1/18:1であり、その後に、18:1/18:1/18:2が続いた。また、これらのベニバナ油の間で最も明らかな違いは、DAG脂質クラスにおいて見られ得た。DAG(36:1)レベルは、親種子と比較して、形質転換された種子由来の種子油で2倍であったが、DAG(36:4)は、最大10%減少した。DAG(36.1)は、主に、18:0/18:1−DAGであり、DAG(36:4)は、18:2/18:2−DAG(ジリノール酸塩)である。全TAGのレベルが、全DAGよりも約100倍高かったため、種子脂質中のDAGは、わずかに微量な成分であった(表15)。
【0415】
トランスジェニック植物の生育および形態
pCW603由来のT−DNAを含有するT
0ベニバナ形質転換細胞は、T−DNAに対して分離したT
1種子を生成し、一組のホモ接合体、ヘテロ接合体、およびヌル分離個体を得た。これらのサブ集団の比は、メンデル遺伝学により期待されるように、T
0植物におけるT−DNA挿入事象の数および連結に応じて異なった。したがって、それぞれのT
0植物由来のT
1種子が、独立して分析された。個々の種子からの脂質プロファイルの分析は、単一種子頭部がヌルおよびトランスジェニック事象の両方を含んだことを明らかに示した。
【表13】
【表14】
【表15】
【0416】
一部のトランスジェニック株由来の種子が、植物形態および生育速度を観察するために、温室中での制御条件下で(温度、土壌、最適な散水および施肥であるが、天然光下で)生育された。形質転換されたT
1植物とそれらのヌル分離個体の同胞種との間で表現型の違いは、観察されなかった。形質転換された種子は、非形質転換種子と同じ速度で発芽し、同じ早期実生の成長速度(成長力)を有する実生を得た。植え付けらた種子のすべてが土着し、十分に施肥された植物に生育した。DNAは、T
1世代の個々の植物からの本葉の先端から調製され、PCR分析が、ヌルおよびトランスジェニック植物の比率を決定するために行われた。予想通りに、ヌル分離個体が特定された。
【0417】
この表現型分析は、pCW603のT−DNAで形質転換され、導入遺伝子を発現するベニバナ植物がヌル分離個体と比較して、いかなる有害作用も被らなかったことを示した。
【0418】
T2世代のベニバナ種子を、油組成について試験した。高いレベルのオレイン酸を有するいくつかの植物由来の種子(表13)は、第二世代の種子(T2種子)を生成する成熟植物に生育した。これらの種子は、成熟したとき、収穫され、それらの油の脂肪酸組成について分析された。このデータを表16中に示す。T1種子は、オレイン酸が最大約92%を示したが、T2種子は、オレイン酸が94.6%に達した。T1世代に対してT2世代で観察された増加は、導入遺伝子のホモ接合性によるものであり得るか、または単に多数の株が分析されたためであり得る。
【0419】
サザンブロットハイブリダイゼーション分析が、それぞれの形質転換された株においてT−DNA挿入数を決定するために使用され、単一のT−DNA挿入を有する株が選択される。T2種子の油含量は、同じ遺伝的背景の制御された非形質転換種子において、同じ条件下で生育したものとあまり有意差がない。
【0420】
pCW631由来のT−DNAで形質転換されたベニバナ種子の分析
pCW631で形質転換されたベニバナ変種S−317のT1種子が、それらの脂肪酸組成について同様に分析された。表17は、これらの種子についてのデータならびにODPおよびPLOの測定基準を示す。これらの種子の脂質中のオレイン酸含量は、最大94.19%であった。最高レベルのオレイン酸を有する種子TS631−01 T1(21)のパルミチン酸含量は2.43%であり、ODPは0.0203であり、PLOは0.0423であった。これらの分析は、S−317遺伝的背景のベニバナに形質転換された場合、pCW603の構築物であるpCW631のヘアピンRNA構築物が、一般に、より高いオレイン酸レベルを生成したことを示した。この観察は、pCW631で使用されたリニンプロモーターが、pCW603に使用されたAtOleosinプロモーターと比較して、より強力なもしくはより良好な発現の時期、または両方の組み合わせを有するヘアピンRNAを発現したことを示した。
【0421】
pCW631由来のT−DNAで形質転換されたベニバナ変種S−317のT2種子は、GCによって分析された。最大94.95%のオレイン酸レベルが、0.01のODPおよび0.035のPLOとともに観察された。
【0422】
構築物pCW632およびpCW602由来のT−DNAで形質転換されたベニバナ種子および植物が、pCW603およびpCW631で形質転換された種子および植物に対するものと同じ方法で分析された。pCW632で形質転換されたベニバナ変種S−317のT1種子のGC分析は、0.0102のODPおよび0.0362のPLOとともに、最大94.88%のオレイン酸レベルを示した。それらのT2種子は、0.0164のODPおよび0.0452のPLOとともに、最大93.14%のオレイン酸を示した。
【0423】
より大量のベニバナ種子油の抽出
TS603−22.6と表されたホモ接合型トランスジェニック株由来のT4種子が収穫され、全種子油は、実施例1に記載されるような、ソックスレー装置を使用して抽出された。抽出された油のアリコートが、GCによって分析された(表18)。合計643グラムの油が回収された。抽出物2、3、5、および6はプールされたが、抽出物4、7、および8は、別々のロット中にプールされた。これらの混合物は、GCによって、脂肪酸組成についてさらに分析された。このデータを表18中に示す。
【0424】
実施例13.さらなる遺伝子サイレンシング構築物の設計および調製
実施例10〜12に記載された結果に基づいて、他の遺伝子サイレンシング構築物を以下の通りに調製して、ベニバナ種子油のオレイン酸含量を増加させ、ODPまたはPLO比を減少させた。これらの遺伝子サイレンシング構築物は、非ベニバナ源、ならびにベニバナ源由来の異なるプロモーターを合わせて、ベニバナFAD2−2、FATB−3、およびFAD6遺伝子発現において最大限の減少を達成することと、FAD2−2に加えて1つを超えるFAD2遺伝子をさらにサイレンシングすることを含んだ。これらの構築物は、、内因性CtFAD2−1遺伝子の不活性変形を有するベニバナの変種、例えば、S−317、Ciano−OL、およびLesaff496を形質転換するために使用された。
【0425】
pCW700の構築
この植物バイナリー発現ベクターは、内因性CtFATBおよびCtFAD2−2の発現を減少させるために、ヘアピンRNAを生成する、1つのプロモーターというよりもむしろ、ベニバナ種子中において異なるが、重複する発現パターンを有する2つの外来(非ベニバナ)プロモーターを有する。2つのプロモーターは、AtOleosinプロモーターおよび亜麻リニンプロモーターであり、2つのhpRNA発現カセットは、同じT−DNA分子中にある。このベクターは、リニンプロモーターならびにCtFAD2−2およびCtFATBのサイレンシングのためのhpRNAコード領域を有するpCW631由来のhpRNA遺伝子発現カセットの制限消化によって構築され、それをpCW603由来のT−DNAに挿入し、そのようにして、これらの2つのベニバナ遺伝子に対してヘアピンRNAをコードする構築物を生成する。この構築物は、Lesaff496、Ciano−OL、およびS−317等のベニバナ変種を形質転換するために使用される。
【表16】
【表17】
【表18】
【0426】
pCW701−pCW710の構築
ベニバナ種子中において最適活性を有することを期待されるベニバナ由来のプロモーターは、発現された遺伝子の上流および下流DNA領域についての正確な配列情報を提供するDNA配列決定技術を使用して単離される。実施例2〜6に記載される、先行の結果は、CtFAD2−1遺伝子がベニバナにおける種子発育時に高度に発現されることを示す。したがって、この遺伝子のプロモーター領域は、ベニバナ種子中において、効率的な導入遺伝子発現を活発にするための卓越した候補である。実施例6に示されるように、CtFAD2−2は、CtFAD2−1が突然変異によって不活性化された遺伝的背景において活性であった。したがって、CtFAD2−2のプロモーターを、ベニバナにおいて使用して、他の遺伝子の間でCtFAD2−2活性を標的とするヘアピンRNAの発現を活発にする。ベニバナ種子中において導入遺伝子の発現に有用な他のプロモーター要素には、オレオシン(CtOleosin)および種子貯蔵タンパク質、例えば、2Sおよび11Sタンパク質(Ct2SおよびCt11S)に対する遺伝子の上流部分に内因性(すなわち、ベニバナ)プロモーター要素が含まれる。CtFAD2−1、CtOleosin、Ct2S、およびCt11Sのプロモーター要素を、ベニバナゲノム配列に基づく標準的なPCRベースの手法を使用して単離し、植物バイナリー発現ベクターに組み込む。これらのプロモーター要素を使用して、構築物pCW701−pCW710中、あるいは、同じまたは異なるhpRNA遺伝子を発現する他の非ベニバナプロモーター、例えば、pCW602、pCW603、pCW631、またはpCW632と組み合わせて、hpRNAサイレンシング分子を発現する。異なるプロモーターとのhpRNA遺伝子の組み合わせはまた、形質転換した植物を個々の遺伝子と交配することによっても生成され、そこでは一般的に、hpRNA遺伝子は連結されない。
【0427】
CtFAD2−1プロモーターを単離するために、CtFAD2−1翻訳開始ATGコドンの約3000bp上流のゲノムDNA断片が、PCRベースの手法を使用して単離され、pCW603およびpCW602由来のAtOleosinプロモーターに置き換えるために使用され、そうすることで、それぞれ、構築物pCW701およびpCW702を生成する。
【0428】
CtFAD2−2プロモーターを単離するために、CtFAD2−2翻訳開始ATGコドンの約3000bp上流のゲノムDNA断片が、PCRベースの手法を使用して単離され、その断片を使用して、pCW603およびpCW602由来のAtOleosinプロモーターに置き換え、そうすることで、それぞれ、構築物pCW703およびpCW704を生成する。
【0429】
CtOleosin−1プロモーターを単離するために、CtOleosin翻訳開始ATGコドンの約1500塩基対の上流のゲノムDNA断片を、PCRベースの手法を使用して単離し、pCW603およびpCW602由来のAtOleosinプロモーターに置き換えるために使用され、それぞれ、構築物pCW705およびpCW706を生成する。
【0430】
Ct2Sプロモーターを単離するために、Ct2S翻訳開始ATGコドンの約1500塩基対の上流のゲノムDNA断片が、単離され、pCW603およびpCW602由来のAtOleosinプロモーターに置き換えるために使用され、そうすることによって、それぞれ、ベクターpCW707およびpCW708を生成する。
【0431】
Ct11Sプロモーターを単離するために、Ct11S開始ATGの約1500塩基対の上流のゲノムDNA断片が、PCRベースの手法を使用して、ベニバナのゲノムDNAから単離され、pCW603およびpCW602由来のAtOleosinプロモーターに置き換えるために使用され、そうすることによって、それぞれ、ベクターpCW709およびpCW710を生成する。
【0432】
これらのベクターのそれぞれを、実施例1に記載されるように、ベニバナ変種に形質転換する。
【0433】
実施例14.ベニバナ変種の野外性能
一連のベニバナの非形質転換変種およびアクセッションを、New South Wales州のNarrabriに位置する野外農場で、2011〜2012年の夏に生育させた。5m×3mの野外プロット内で、Narrabri領域内で一般に見られる重粘土に、種子を植え付けた。生育から4週間後に一度かんがいしたことを除いては、植物は天然光および降雨にさらした。成熟種子が収穫され、約50個の種子の試料が、種子油中の脂質含量および脂肪酸組成について分析された。様々な変種およびアクセッションの種子油中のオレイン酸含量を表19および
図13に示す。
【0434】
野外実験からのデータは、驚くほど、観察された範囲に及ぶ範囲内において、ベニバナ種子のオレイン酸含量の範囲があったことを示した。中でも注目すべきは、「高オレイン酸」として記載され、少なくとも70%のオレイン酸を有する種子油を提供することが既に報告されていた様々なアクセッション、例えば、Ciano−OLが、わずかに約42〜46%のオレイン酸を生成したことであった。リノール酸のレベルは、以前の報告に基づいて予測されたものよりもはるかに高かった。対照的に、例えば、アクセッションPI−5601698およびPI−560169等の高オレイン酸含量を得ると報告されていた他のアクセッションが、実際には、野外条件下で種子油中の高オレイン酸レベル(60%〜76%)を生成した。いくつかのアクセッションにおいて予測されたものよりもかなり低いオレイン酸レベルの理由は、ol対立遺伝子以外、例えば、温度感受性のあるol1対立遺伝子のようなCtFAD2−1対立遺伝子の存在、および2011〜12年の時期においてあまり理想的ではなかった生育条件と関連すると考えられた。野外で生育されたベニバナから得られた種子におけるさらなる脂肪酸分析が、いくつかのアクセッションのオレイン酸含量において観察された変種を確認するために行われた。
【表19】
【0435】
この実験はまた、野外で生育された植物から得られた種子油中のオレイン酸のレベルが、野外での優良のアクセッションに対するものでさえ、一般に、温室で生育された植物からのものよりも約5〜10%低かったことを示した。この理由は、野外で生育する条件が温室内でのものほど理想的ではなかったからだと考えられた。
【0436】
さらなる実験において、ベニバナ栽培品種S317の植物は、種子油の脂肪酸組成を比較するために、野外または温室のいずれかで生育された。野外条件が、2011〜12年の時期と比較して、生育時期により好ましいものであったが、温室で生育された植物からの1.202gと比べると、野外で生育された種子からの20個の種子の重量は、0.977gであった。それぞれの群の18〜20個の種子は、GC分析によって脂肪酸組成について分析された。野外で生育された種子のオレイン酸レベルは、74.83〜80.65の範囲に及び、78.52+/−1.53の平均(+/1標準偏差)を有したのに対し、温室で生育された種子の範囲は、75.15〜78.44であり、76.33+/−1.00の平均を有した。他の脂肪酸は、表20中のレベルで存在した。
【表20】
【0437】
実施例15.他のベニバナ変種への導入遺伝子の交配
ベニバナ変種は、例えば、Mundel and Bergman(2009)に記載されるような確立した方法を使用して、手作業で交配される。上述の構築物を含む最良の形質転換した株、具体的には、単一のT−DNA挿入のみを含む形質転換された株が選択され、ベニバナの他の変種の、異なる構築物で形質転換されない、または既に形質転換された、最適な農業生産力を有する植物で交差される。例えば、4または5回の戻し交配に対して、反復親と戻し交配する反復ラウンドを使用して、最適な農業生産力の遺伝的背景において、所望の構築物(複数を含む)に対してホモ接合である自殖植物が生成される。マーカー利用選抜は、実施例7に記載されるような、ol対立遺伝子に対する完全なマーカーの使用等の繁殖プロセスに使用され得る。
【0438】
実施例16.人工のマイクロRNAによって媒介された遺伝子サイレンシングによる種子油組成の修飾
マイクロRNA(miRNA)は、内因性遺伝子の活性を調節する植物および動物の両方に対して内因性である一種の20〜24ヌクレオチド(nt)の調節小RNA(sRNA)である。修飾されたmiRNA前駆体RNA(人工のmiRNA前駆体)のトランスジェニック発現は、内因性遺伝子をサイレンシングする近年開発されたRNAベースの配列特異的な戦略を表す。人工のmiRNA前駆体を作製するためのmiRNA前駆体配列内のいくつかのヌクレオチドの置換は、前駆体のステムループ内でマッチおよびミスマッチの位置が影響を受けないままである限り、miRNAの反復発生に影響を及ぼさないことが示されている。
【0439】
CSIROソフトウェアパッケージMatchPoint(www.pi.csiro.au/RNAi)(Horn and Waterhouse,2010)は、アラビドプシスゲノムが独特であり、それ故に、人工のmiRNAとして発現される場合、非標的遺伝子(オフ遺伝子ターゲティング)のサイレンシングを生じる可能性が低いアラビドプシスFAD2、FATB、およびFAE1遺伝子において、特異的な21量体配列を特定するために使用された。一意の21量体配列が、3つの遺伝子のそれぞれに対して選択され、それぞれの場合に、21量体は、対応する遺伝子の転写物の領域に対して完全に相補的(アンチセンス)であった。人工のmiRNA前駆体分子が、A.サリアナara−miR159bの前駆体配列に基づいて、それぞれに対して設計された。それぞれの場合に、miR159bの前駆体配列は、アンチセンス21量体配列に適合するようにその幹に修飾された。前駆体RNAのうちの1つをコードする3つの構築物がそれぞれ、種子特異的なFP1プロモーターの制御下で作製され、バイナリー発現ベクターにクローン化され、pJP1106、pJP1109、およびpJP1110と表される構築物を生成した。
【0440】
これらの構築物は、別々に、エレクトロポレーションによってA.ツメファシエンス株AGL1に形質転換され、形質転換された株は、フローラルディップ法によって、遺伝的構造体をA.サリアナ(生態型Columbia)中に導入するために使用された(実施例1)。処理された植物からの種子(T
1種子)は、形質転換された実生を選択するために、3.5mg/LのPPTを添加したMS培地上に平面培養し、これらを土壌に移して、確立されたT
1トランスジェニック植物を定着させた。これらのT
1植物の大部分は、導入された遺伝的構築物に対してヘテロ接合であることが予測された。トランスジェニック植物由来のT
2種子は、成熟時に収集され、それらの脂肪酸組成について分析された。これらのT
2植物は、遺伝的構築物に対してホモ接合であった株、ならびにヘテロ接合であったものを含んだ。ホモ接合型T
2植物は、自家受精して、T
3種子を生成し、T
3子孫植物は、これらの種子から得られ、同様に、これらを使用して、T
4子孫植物を得た。したがって、これは、子孫植物の三世代にわたる遺伝子サイレンシングの安定性の分析を可能にした。
【0441】
T
2、T
3、およびT
4種子ロットから得られた種子油の脂肪酸プロファイルは、実施例1に記載されるように、GCによって分析された。FAD2ベースの導入遺伝子の作用によって生じたΔ12−デサチュラーゼ活性の変化が、種子油プロファイルにおけるオレイン酸の量の増加として見られた。種子脂肪酸合成中のΔ12−デサチュラーゼ活性の累積的影響を評価するための関連方法は、それぞれの種子油に対するオレイン酸不飽和率(ODP)パラメーターを計算することを通じて、以下の式:ODP=18:2の%+18:3の%/18:1の%+18:2の%+18:3の%を使用することによって得られた。野生型アラビドプシス種子油は、一般に、約0.70〜0.79のODP値を有し、これは、種子内での脂肪酸合成中に形成された70%〜79%の18:1が、その後、まず第一に、Δ12−デサチュラーゼの作用によって18:2を生成し、次いで、18:3へのさらなる不飽和化によって、多価不飽和C18脂肪酸に変換されたことを意味した。したがって、ODPパラメーターは、内因性Δ12−デサチュラーゼ活性のレベルにおけるFAD2遺伝子サイレンシングの程度を判定するのに有用である。
【0442】
pJP1106構築物(FAD2標的)で形質転換されたT
2種子におけるC18:1
Δ9(オレイン酸)のレベルは、14.0%±0.2の野生型C18:1の平均レベルと比較して、30のトランスジェニック事象において、32.9%〜62.7%の範囲であった。植物選択可能なマーカー(PPT)の分離比(3:1)によって決定された、単一の導入遺伝子挿入を有した高度にサイレンシングされた株(植物ID−30)は、次世代(T
3)に転送された。46.0%〜63.8%の範囲の、57.3±5.0%の平均を有する、同様に高いレベルの18:1
Δ9が、T
3種子において観察された。それに続く世代において、T
4種子はまた、61%〜65.8%の範囲の、63.3±1.06%の平均を有する、同様に高いレベルの18:1
Δ9を示した。T
2トランスジェニック種子油の全PUFA含量(18:2+18:3)は、6.1%〜38%の範囲であったが、ホモ接合株ID−30由来の種子油の全PUFA含量は、さらに減少し、4.3〜5.7%の範囲であった。対照のアラビドプシス生態型Columbia種子油は、0.75〜0.79の範囲のODP値を有し、これは、発育中の種子中において生成した75%超のオレイン酸が、その後、18:2または18:3に変換されたことを意味した。対照的に、アラビドプシスのfad2−1突然変異体由来の種子油は、0.17のODP値を有し、これは、fad2−1突然変異体によるΔ12−不飽和化の75%の減少を示した。ODP値は、T
2トランスジェニック種子油では0.08〜0.48、T
3種子油では0.07〜0.32、T
4種子油では0.06〜0.08の範囲であり、それに対して、対照のアラビドプシス種子油では0.75の値であった。トランスジェニック株におけるODP値の劇的な減少は、人工のマイクロRNAアプローチを使用して、内因性FAD2遺伝子の効率的なサイレンシングを明らかに示した。この実験はまた、三世代にわたる遺伝子サイレンシングの安定性も示した。遺伝子サイレンシングの同様の程度が、それらの対応する遺伝子を下方調節するその他の2つの構築物で見られた。
【0443】
人工のマイクロRNAを使用するこの研究において観察されたFAD2遺伝子サイレンシングの程度および18:1
Δ9の量(63.3±1.06%)は、十分に特徴付けられたFAD2−2突然変異体におけるものよりも高く(59.4%)、FAD2をサイレンシングした株は、ヘアピンRNAアプローチ(56.9±3.6%)およびヘアピン−アンチセンスアプローチ(61.7±2.0%)を使用した。amiRNAを使用したFAD2をサイレンシングした種子油中の18:2+18:3の平均含量%は、4.8±0.37%であり、これは、以前に報告されたFAD2−2突然変異体のものよりも低く(7.5±1.1%)、FAD2をサイレンシングした株は、ヘアピン−アンチセンスアプローチ(7.2±1.4%)を使用した。したがって、これらのデータは、サイレンシングの程度で人工のマイクロRNAの利点、ならびに、子孫の世代にわたるサイレンシングの安定性を示した。
【0444】
実施例17.油におけるステロール含量および組成のアッセイ
オーストラリアにおいて商業的供給源から購入された12の植物油試料からの植物ステロールが、実施例1に記載されるように、O−トリメチルシリルエーテル(OTMSi−エーテル)誘導体としてGCおよびGC−MS分析によって特徴付けられた。ステロールは、保持データ、質量スペクトルの解釈、ならびに文献および実験の標準質量スペクトルデータによる比較によって特定された。ステロールは、5β(H)−コラン−24−オールの内部標準の使用によって定量化された。特定されたステロールのうちのいくつかの基本的な植物ステロール構造および化学構造を、
図14および表21に示す。
【表21】
【0445】
分析された植物油は、ゴマ(セサマムインディカム(Sesamum indicum))、オリーブ(オレアユーロパエア)、ヒマワリ(ヘリアンサスアナス)、ヒマシ(リシヌスコミュニス)、ナタネ(ブラシカナプス)、ベニバナ(カルタムスチンクトリウス)、ピーナッツ(アラキスヒポゲア)、亜麻(リナムウシタチシマム)、および大豆(グリシンマックス)由来であった。油試料のすべてにわたって、減少する相対存在量で、主要な植物ステロールは、β−シトステロール(全ステロール含量の28〜55%の範囲)、Δ5−アベナステロール(イソフコステロール)(3〜24%)、カンペステロール(2〜33%)、Δ5−スチグマステロール(0.7〜18%)、Δ7−スチグマステロール(1〜18%)、およびΔ7−アベナステロール(0.1〜5%)であった。いくつかの他の副次ステロールが特定され、これらは、コレステロール、ブラシカステロール、カリナステロール、カンペスタロール、およびエブリコールであった。また、4つのC29:2および2つのC30:2ステロールも検出されたが、さらなる研究が、これらの副次成分の特定を完成させるのに必要とされる。さらに、いくつかの他の特定されないステロールが一部の油中に存在したが、それらの極めて低い存在量により、質量スペクトルはそれらの構造の特定を可能にするほど十分に強力ではなかった。
【0446】
減少する量のmg/g(油)として表されるステロール含量は、ナタネ油(6.8mg/g)、ゴマ油(5.8mg/g)、亜麻油(4.8〜5.2mg/g)、ヒマワリ油(3.7〜4.1mg/g)、ピーナッツ油(3.2mg/g)、ベニバナ油(3.0mg/g)、大豆油(3.0mg/g)、オリーブ油(2.4mg/g)、ヒマシ油(1.9mg/g)であった。ステロール組成および全ステロール含量(%)を表22に示す。
【0447】
種子油試料のすべてのうちで、主要な植物ステロールは、一般に、β−シトステロール(全ステロール含量の30〜57%の範囲)であった。その他の主要なステロールの割合で様々な油があった:カンペステロール(2〜17%)、Δ5−スチグマステロール(0.7〜18%)、Δ5−アベナステロール(4〜23%)、Δ7−スチグマステロール(1〜18%)。異なる種に由来する油は、全く異なるプロファイルを有するものとは異なるステロールプロファイルを有した。ナタネ油は、最高比率のカンペステロール(33.6%)を有したが、他の種の試料は、一般に、より低いレベル、例えば、ピーナッツ油中に最大17%を有した。ベニバナ油は、比較的高い比率のΔ7−スチグマステロール(18%)を有したが、このステロールは、通常、他の種の油中では低く、ヒマワリ油中で最大9%であった。それらは、それぞれの種において独特であったため、ステロールプロファイルは、それ故に、特定の植物または植物油の特定に役立てるために、そして、それらの純種または他の油による不純物の添加を確認するために使用することができる。
【0448】
2つの試料のヒマワリおよびベニバナのそれぞれが比較され、それぞれの場合において、一方は、種子の冷却圧縮によって生成され、未精製であったが、もう一方は、冷却圧縮されず、精製された。いくつかの違いが観察されたが、油の2つの源は、同様のステロール組成および全ステロール含量を有し、加工および精製がこれらの2つのパラメーターにおいてあまり影響しなかったことを示唆した。試料の中のステロール含量は、3倍変化し、1.9mg/g〜6.8mg/gの範囲であった。ナタネ油は、最高のステロール含量を有し、ヒマシ油は、最低のステロール含量を有した。
【表22】
【0449】
別々の分析が、温室で生成された対照種子(Sシリーズ)由来のベニバナ油、遺伝的に修飾された高オレイン酸種子(Tシリーズ)、および2つの市販のベニバナ油で行われた。いくつかの特徴が観察された(表23)。第一に、対照種子と修飾された種子との間でステロールパターンの高度な類似性があり、第二に、市販のベニバナ油が別々のグループ分けされており、それ故に、有意に異なる植物ステロールプロファイルを有することが示されている。植物ステロールプロファイルのさらなる試験はまた、対照および修飾されたベニバナ種子試料からの植物ステロールプロファイル類似性を示した。
【0450】
広く記載される本発明の精神または範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に示されるような本発明への種々の変更および/または改変がなされ得ることは、当業者に明らかであろう。したがって、本発明の実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。
【0451】
本出願は、2012年4月25日に出願された米国特許第US61/638,447号、および2012年9月11日に出願されたオーストラリア特許第AU2012903992号からの優先権を主張し、これらはともに、参照により本明細書に組み込まれる。
【0452】
本明細書において論じられるおよび/または言及されたすべての刊行物は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0453】
本明細書に含まれた文書、法令、材料、装置、物品等のいかなる考察も、単に本発明についての文脈を提供する目的のためのものである。これらの事柄のいずれか、もしくはすべてが先行技術ベースの一部を形成するか、または本出願のそれぞれの特許請求の範囲の優先日以前に存在したため、本発明に関する分野における共通の一般的知識であったことの承認と解釈されるべきではない。
【表23】
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