【実施例】
【0055】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
再捏法によって山型食パンを製造するために、以下の製パン実験を行った。
【0057】
図1に記載の製パン配合にて、各原料を配合した。より具体的には、製パン実施例1−2、及び比較例1−2について、各々のミキサーボールに、小麦粉(市販外麦強力粉)、砂糖、食塩、ショートニング、イースト、L−アスコルビン酸及び水を入れた。製パン実施例1−2及び比較例1では、さらにα−アミラーゼ剤(新日本化学工業社製、スミチームAS、0.03重量%添加で対小麦粉当たりの酵素活性4200mU/gとなる)を配合した。また、製パン実施例2では、さらにアルコール発酵風味液(MCフードスペシャリティーズ社製、ポルテ芳醇酒種、アルコール濃度:13〜14%)を2重量%配合した。なお、
図1の製パン配合における各原料の数値は、小麦粉100重量部に対する値として示される。
【0058】
製パン実施例1−2、及び比較例1−2について、各々のミキサーボールに各原料を入れた後、第1ミキシングを行った。より具体的には、小型ピンミキサーを用いて、捏上温度27℃にて、低速で3分間ミキシングを行い、製パン実施例1−2、及び比較例1−2の第1ミキシング生地を得た。
【0059】
製パン実施例1−2の第1ミキシング生地を、プラスチック袋に充填して密封し、圧力処理装置(東洋高圧社製、まるごとエキス 500ccタイプ)内に入れて、10MPaにて、30℃で20分間、圧力処理を行い、中間生地を得た。比較例1−2の第1ミキシング生地を、油を塗布したステンレス容器に入れ、乾燥を防ぐためにサランラップ(登録商標)を用いて蓋をした。比較例1の第1ミキシング生地については、圧力処理すること無く、30℃で20分間発酵を行い、発酵生地を得た。比較例2の第1ミキシング生地については、圧力処理すること無く、30℃で90分間発酵を行い、発酵生地を得た。
【0060】
前述の中間生地及び発酵生地に対して、第2ミキシングを行った。より具体的には、製パン実施例1−2の中間生地の全量をミキサーボールに入れ、前述同様の小型ピンミキサーを用いて、捏上温度27℃にて、高速で最適時間ミキシングを行い(ミキシング時のピンミキサーの電力量の変化を指標に、電力量ピークを少し過ぎるまで高速でミキシングを行った)、最終生地を得た。比較例1−2の発酵生地についても同様に第2ミキシングを行い、第2ミキシング生地を得た。
【0061】
前述の製パン実施例1−2の最終生地、及び比較例1−2の第2ミキシング生地について、以下の条件で発酵、焼成して、製パン実施例1−2、及び比較例1−2の山型食パンを得た。
フロアタイム:30℃、15分間
分割、丸め:生地量100gずつ手で分割し、手丸目を行った。
ベンチタイム:30℃、15分間
成形:モルダーにて成形し、パン型に入れた。
最終発酵:38℃、湿度85%(比較例2では最終発酵を90分間行った結果、生地の体積はV
1となった。製パン実施例1−2及び比較例1では、生地の体積がV
1となるまで最終発酵を行った。)
焼成:180℃、25分間
【0062】
図1に、“製パン結果”として、製パン時生地状態、パンの外観、内相、食感・風味及び比容積を示す。なお、製パン時生地状態、外観、内相及び食感・風味の評価基準は、◎:非常に良好、○:良好、△:やや劣る、×:劣る、である。「製パン時生地状態」とは、最終発酵を行う前の生地状態をいい、適度な弾力性があってべとつかない状態である場合に“◎”と評価され、生地がだれておりべとつく状態である場合に“×”と評価される。「(パンの)外観」とは、パンの形状、焼き色の度合い及び焼き色の均一性で評価され、パンが大きく膨らんでおり良好な形状で、均一かつ良好な焼き色がついた状態である場合に“◎”と評価される。「(パンの)内相」とは、パンの内部の白い部分(クラム)の状態を評価するものであり、クラムが白くかつ均一な細かい気泡からなり、気泡以外のパンの壁の部分(内相のマク)の厚さが薄い状態である場合に“◎”と評価される。評価方法については、5人のパネラーによって、製パン時生地状態、焼成1日後の外観、内相、食感・風味の評価を行った。また、焼成1時間後に菜種置換法によって比容積測定評価を行った。
【0063】
図1の“製パン結果”より、製パン実施例1−2により得られた山型食パンの製パン結果は、比較例1−2により得られた山型食パンに比して良好であった。より具体的には、製パン実施例1−2の山型食パンについては、比較例1(α−アミラーゼ剤の添加有り、圧力処理無し、発酵時間20分間)及び比較例2(α−アミラーゼ剤の添加無し、圧力処理無し、発酵時間90分間)のそれに比して、製パン時生地状態、パンの外観、内相、食感・風味の評価が顕著に高く、比容積についても明らかに大きな値となった。また、アルコール発酵風味液を添加した製パン実施例2の山型食パンでは、食感・風味が特に優れていた。
【0064】
また、
図1に、保存後のパンの“老化の評価”として、パンをポリエチレン袋に入れて、20℃で保存した後、クラム部分の硬さ(1日後、2日後)を評価した結果を示す。パンの硬さの評価方法について、より具体的には、山型食パンを2cmにスライスし、中央部の合計3枚のパン片のクラムの中央を3cm×3cmにカットし、そのカットクラムを半分の厚さまで1mm/sのスピードで圧縮した時の最大応力を測定し、その平均値をパンの硬さの値とした。なお、パンの硬さの値が低いほど、パンが柔らかいことを表す。
【0065】
図1の“老化の評価”より、製パン実施例1−2により得られた山型食パンでは、比較例1−2により得られた山型食パンに比して、明らかに保存中の老化が遅く、柔らかさが維持されることが示された。
【0066】
図1の“製パン結果”及び“老化の評価”より、製パン実施例1−2により得られた山型食パンでは、比較例1−2により得られた山型食パンに比して、製パン結果に優れ、保存中の老化が遅いことが示された。従来法の再捏法による、比較例2の山型食パンでは、90分間という十分な発酵時間をとっているにもかかわらず、α−アミラーゼ剤を添加し、圧力処理を施した製パン実施例1−2の山型食パンよりも劣る結果となった。また、アルコール発酵風味液を添加した製パン実施例2の山型食パンでは、特に優れた結果となった。
【0067】
以上の結果から、本実施例による、α−アミラーゼ剤を添加し、圧力処理を行って製造した再捏法による山型食パンは、製パン結果に優れ、焼成後も柔らかさが維持されることが示された。
【0068】
(実施例2)
中種法によって山型食パンを製造するために、以下の製パン実験を行った。
【0069】
図2に記載の製パン配合にて、中種の各原料を配合した。より具体的には、製パン実施例3−4、及び比較例3−4について、各々のミキサーボールに、小麦粉(市販外麦強力粉)、イースト、L−アスコルビン酸及び水を入れた。製パン実施例3−4及び比較例3では、さらにα−アミラーゼ剤(新日本化学工業社製、スミチームAS、0.005重量%添加で対小麦粉当たりの酵素活性700mU/gとなる)を配合した。なお、
図2の製パン配合における各原料の数値は、小麦粉100重量部に対する値として示される。
【0070】
製パン実施例3−4、及び比較例3−4について、各々のミキサーボールに各原料を入れた後、中種ミキシングを行った。より具体的には、小型ピンミキサーを用いて、捏上温度24℃にて、低速で2分間ミキシングを行い、製パン実施例3−4、及び比較例3−4の中種ミキシング生地を得た。
【0071】
製パン実施例3−4の中種ミキシング生地を、プラスチック袋に充填して密封し、圧力処理装置(実施例1と同様)内に入れて、50MPaにて、30℃で30分間、圧力処理を行い、中間生地を得た。比較例3−4の第1ミキシング生地を、油を塗布したステンレス容器に入れ、乾燥を防ぐためにサランラップを用いて蓋をした。比較例3の中種ミキシング生地については、圧力処理すること無く、30℃で30分間発酵を行い、発酵生地を得た。比較例4の中種ミキシング生地については、圧力処理すること無く、30℃で4時間発酵を行い、発酵生地を得た。
【0072】
前述の中間生地及び発酵生地に、
図2の本捏の各原料を配合し、本捏ミキシングを行った。より具体的には、製パン実施例3−4の中間生地の全量、及び
図2の本捏の各原料(小麦粉、砂糖、食塩、ショートニング及び水)をミキサーボールに入れ、前述同様の小型ピンミキサーを用いて、捏上温度27℃にて、高速で最適時間ミキシングを行い(ミキシング時のピンミキサーの電力量の変化を指標に、電力量ピークを少し過ぎるまで高速でミキシングを行った)、最終生地を得た。製パン実施例4では、さらにアルコール発酵風味液(実施例1と同様)を2重量%添加した。比較例3−4の発酵生地についても同様に、
図2の本捏の各原料を配合して本捏ミキシングを行い、本捏ミキシング生地を得た。
【0073】
前述の製パン実施例3−4の最終生地、並びに比較例3−4の本捏ミキシング生地について、以下の条件で発酵、焼成して、製パン実施例3−4、及び比較例3−4の山型食パンを得た。
フロアタイム:30℃、20分間
分割、丸め:生地量100gずつ手で分割し、手丸目を行った。
ベンチタイム:30℃、15分間
成形:モルダーにて成形し、パン型に入れた。
最終発酵:38℃、湿度85%(比較例4では最終発酵を50分間行った結果、生地の体積はV
2となった。製パン実施例3−4及び比較例3では、生地の体積がV
2となるまで最終発酵を行った。)
焼成:180℃、25分間
【0074】
図2に、“製パン結果”及び“老化の評価”を示す。なお、製パン結果の評価基準及び評価方法、並びに老化の評価方法については、実施例1と同様である。
【0075】
図2の“製パン結果”より、製パン実施例3−4により得られた山型食パンの製パン結果は、比較例3により得られた山型食パンに比して良好であり、比較例4の従来法の中種法により得られた山型食パンと同等程度であった。より具体的には、製パン実施例3−4の山型食パンについては、比較例3(α−アミラーゼ剤の添加有り、圧力処理無し、発酵時間30分間)のそれに比して、製パン時生地状態、パンの内相、食感・風味の評価が顕著に高く、比容積についても明らかに大きな値となった。また、アルコール発酵風味液を添加した製パン実施例4の山型食パンでは、食感・風味が特に優れていた。
【0076】
また、
図2の“老化の評価”より、製パン実施例3−4により得られた山型食パンでは、比較例3−4により得られた山型食パンに比して、保存中の老化が遅く、柔らかさが維持されることが示された。特に、比較例4の山型食パンでは、保存1日後では柔らかさが維持されているものの、保存2日後では老化が進み硬くなっていたのに対し、製パン実施例3−4の山型食パンでは、保存2日後においても比較例3−4の山型食パンよりも柔らかさが維持されていることが示された。
【0077】
図2の“製パン結果”より、製パン実施例3−4により得られた山型食パンでは、比較例3により得られた山型食パンに比して、製パン結果に優れ、比較例4のそれと同等程度であった。また、
図2の “老化の評価”より、製パン実施例3−4により得られた山型食パンでは、比較例3−4により得られた山型食パンに比して、保存中の老化が遅く、柔らかさが維持されることが示された。従来法の中種法による、比較例4の山型食パンでは、4時間という十分な発酵時間をとっているにもかかわらず、α−アミラーゼ剤を添加し、圧力処理を施した製パン実施例3−4の山型食パンよりも老化の点で劣る結果となった。また、アルコール発酵風味液を添加した製パン実施例4の山型食パンでは、特に優れた結果となった。
【0078】
以上の結果から、本実施例による、α−アミラーゼ剤を添加し、圧力処理を行って製造した中種法による山型食パンは、製パン結果に優れ、焼成後も柔らかさが維持されることが示された。
【0079】
(実施例3)
再捏法によってバターロールを製造するために、以下の製パン実験を行った。
【0080】
図3に記載の製パン配合にて、各原料を配合した。より具体的には、製パン実施例5−6、及び比較例5−6について、各々のミキサーボールに、小麦粉(市販外麦強力粉)、砂糖、食塩、バター、イースト、全卵、脱脂粉乳、L−アスコルビン酸及び水を入れた。製パン実施例5−6及び比較例5では、さらにα−アミラーゼ剤(新日本化学工業社製、スミチームAS、0.01重量%添加で対小麦粉当たりの酵素活性1400mU/gとなる)を配合した。また、製パン実施例6では、さらにアルコール発酵風味液(実施例1と同様)を2重量%配合した。なお、
図3の製パン配合における各原料の数値は、小麦粉100重量部に対する値として示される。
【0081】
製パン実施例5−6、及び比較例5−6について、各々のミキサーボールに各原料を入れた後、第1ミキシングを行った。より具体的には、小型ピンミキサーを用いて、捏上温度25℃にて、低速で3分間ミキシングを行い、製パン実施例5−6、及び比較例5−6の第1ミキシング生地を得た。
【0082】
製パン実施例5−6の第1ミキシング生地を、プラスチック袋に充填して密封し、圧力処理装置(実施例1と同様)内に入れて、20MPaにて、25℃で10分間、圧力処理を行い、中間生地を得た。比較例5−6の第1ミキシング生地を、油を塗布したステンレス容器に入れ、乾燥を防ぐためにサランラップを用いて蓋をした。比較例5の第1ミキシング生地については、圧力処理すること無く、25℃で10分間発酵を行い、発酵生地を得た。比較例6の第1ミキシング生地については、圧力処理すること無く、30℃で60分間発酵を行い、発酵生地を得た。
【0083】
前述の中間生地及び発酵生地に対して、第2ミキシングを行った。より具体的には、製パン実施例5−6の中間生地の全量をミキサーボールに入れ、前述同様の小型ピンミキサーを用いて、捏上温度28℃にて、高速で最適時間ミキシングを行い(ミキシング時のピンミキサーの電力量の変化を指標に、電力量ピークを少し過ぎるまで高速でミキシングを行った)、最終生地を得た。比較例5−6の発酵生地についても同様に第2ミキシングを行い、第2ミキシング生地を得た。
【0084】
前述の製パン実施例5−6の最終生地、及び比較例5−6の第2ミキシング生地について、以下の条件で発酵、焼成して、製パン実施例5−6、及び比較例5−6のバターロールを得た。
フロアタイム:30℃、15分間
分割、丸め:生地量40gずつ手で分割し、手丸目を行った。
ベンチタイム:30℃、15分間
成形:バターロール形状に手成形した。
最終発酵:38℃、湿度85%(比較例6では最終発酵を40分間行った結果、生地の体積はV
3となった。製パン実施例5−6及び比較例5では、生地の体積がV
3となるまで最終発酵を行った。)
焼成:210℃、8分間
【0085】
図3に、“製パン結果”として、製パン時生地状態、パンの外観、内相、食感・風味及び見た目のボリュームを示す。なお、評価基準は、◎:非常に良好、○:良好、△:やや劣る、×:劣る、である。評価方法については、8人のパネラーによって、製パン時生地状態、並びに焼成後1日後の外観、内相、食感・風味及び見た目のボリュームの評価を行った。
【0086】
図3の“製パン結果”より、製パン実施例5−6により得られたバターロールの製パン結果は、比較例5−6により得られたバターロールに比して良好であった。より具体的には、製パン実施例5−6のバターロールについては、比較例5(α−アミラーゼ剤の添加有り、圧力処理無し、発酵時間10分間)及び比較例6(α−アミラーゼ剤の添加無し、圧力処理無し、発酵時間60分間)のそれに比して、パンの外観及び見た目のボリュームの評価が顕著に高かった。
【0087】
また、
図3に、保存後のパンの“老化の評価”として、パンをポリエチレン袋に入れて、20℃で2日間保存した後のパンの硬さを評価した結果を示す。バターロールの硬さの評価方法については、直径5mmの円形プランジャーを1mm/sのスピードで3つのバターロールの上部の山の部分に突き刺した時の最大応力を測定し、その平均値をパンの硬さの値とした。なお、パンの硬さの値が低いほど、パンが柔らかいことを表す。
【0088】
図3の“老化の評価”より、製パン実施例5−6により得られたバターロールでは、比較例5−6により得られたバターロールに比して、明らかに保存中の老化が遅く、柔らかさが維持されることが示された。
【0089】
図3の“製パン結果”及び“老化の評価”より、製パン実施例5−6により得られたバターロールでは、比較例5−6により得られたバターロールに比して、製パン結果に優れ、保存中の老化が遅いことが示された。従来法の再捏法による、比較例6のバターロールでは、60分間という十分な発酵時間をとっているにもかかわらず、α−アミラーゼ剤を添加し、圧力処理を施した製パン実施例5−6のバターロールよりも特に老化の評価において劣る結果となった。
【0090】
以上の結果から、本実施例による、α−アミラーゼ剤を添加し、圧力処理を行って製造した再捏法によるバターロールは、製パン結果に優れ、焼成後も柔らかさが維持されることが示された。
【0091】
(実施例4)
中種法湯種製パン法によって山型食パンを製造するために、以下の製パン実験を行った。
【0092】
図4に記載の製パン配合にて、中種の各原料を配合した。より具体的には、製パン実施例7−8、及び比較例7−8について、各々のミキサーボールに、小麦粉、L−アスコルビン酸及び水を入れた。配合された小麦粉について、製パン実施例7では、“国産小麦粉ブレンド粉1”として、ゆめちから粉ときたほなみ粉との7:3のブレンド粉を用い、製パン実施例8では、“国産小麦粉ブレンド粉2”として、ゆめちから粉とキタノカオリ粉との7:3のブレンド粉を用い、比較例7−8では、市販外麦強力粉を用いた。製パン実施例7−8及び比較例7では、さらにα−アミラーゼ剤(新日本化学工業社製、スミチームAS、0.01重量%添加で対小麦粉当たりの酵素活性1400mU/gとなる)を配合した。また、比較例7−8では、さらに
図4に記載された量のイーストを添加し、製パン実施例7−8では、さらにアルコール発酵風味液(実施例1と同様)を2重量%配合した。なお、
図4の製パン配合における各原料の数値は、小麦粉100重量部に対する値として示される。
【0093】
製パン実施例7−8、及び比較例7−8について、各々のミキサーボールに各原料を入れた後、中種ミキシングを行った。より具体的には、小型ピンミキサーを用いて、捏上温度24℃にて、低速で2分間ミキシングを行い、製パン実施例7−8、及び比較例7−8の中種ミキシング生地を得た。
【0094】
製パン実施例7−8の中種ミキシング生地を、プラスチック袋に充填して密封し、圧力処理装置(実施例1と同様)内に入れて、100MPaにて、30℃で3分間、圧力処理を行い、中間生地を得た。比較例7−8の第1ミキシング生地を、油を塗布したステンレス容器に入れ、乾燥を防ぐためにサランラップを用いて蓋をした。比較例7の中種ミキシング生地については、圧力処理すること無く、30℃で3分間発酵を行い、発酵生地を得た。比較例4の中種ミキシング生地については、圧力処理すること無く、30℃で4時間発酵を行い、発酵生地を得た。
【0095】
また、以下の方法により、湯種生地1〜3を調製した。調製後の湯種生地1〜3を各々冷蔵庫で一晩保存して、製パンに用いた。
・湯種生地1:ゆめちから粉ときたほなみ粉との7:3のブレンド粉100重量部に、温水300重量部を添加し、攪拌機を用いて均一に混合しながら80℃±1℃に昇温した。この状態で水分蒸発が起こらないように容器を十分密閉し、15分保持して、湯種生地1を得た。
・湯種生地2:ゆめちから粉とキタノカオリ粉との7:3のブレンド粉を用いて、湯種生地1と同様に調製し、湯種生地2を得た。
・湯種生地3:市販強力粉100重量部に、98℃の熱水100重量部を、ミキサーで混捏しながら徐々に添加した。その後3分間混捏して、湯種生地3を得た。
【0096】
以下の通り配合し、本捏ミキシングを行った。
・製パン実施例7:前述の中間生地の全量+湯種生地1+
図4記載の本捏の各原料
・製パン実施例8:前述の中間生地の全量+湯種生地2+
図4記載の本捏の各原料
・比較例7:前述の発酵生地+湯種生地3+
図4記載の本捏の各原料
・比較例8:前述の発酵生地+湯種生地3+
図4記載の本捏の各原料
前述同様の小型ピンミキサーを用いて、捏上温度27℃にて、高速で最適時間ミキシングを行い(ミキシング時のピンミキサーの電力量の変化を指標に、電力量ピークを少し過ぎるまで高速でミキシングを行った)、製パン実施例7−8の最終生地を得た。比較例7−8の発酵生地についても同様に本捏ミキシングを行い、本捏ミキシング生地を得た。
【0097】
前述の製パン実施例7−8の最終生地、及び比較例7−8の本捏ミキシング生地について、以下の条件で発酵、焼成して、製パン実施例7−8、及び比較例7−8の山型食パンを得た。
フロアタイム:30℃、15分間
分割、丸め:生地量100gずつ手で分割し、手丸目を行った。
ベンチタイム:30℃、20分間
成形:モルダーにて成形し、パン型に入れた。
最終発酵:38℃、湿度85%(比較例8では最終発酵を60分間行った結果、生地の体積はV
4となった。製パン実施例7−8及び比較例7では、生地の体積がV
4となるまで最終発酵を行った。)
焼成:180℃、25分間
【0098】
図4に、“製パン結果”及び“老化の評価”を示す。なお、製パン結果の評価基準及び評価方法、並びに老化の評価方法については、実施例1と同様である。
【0099】
図4の“製パン結果”より、製パン実施例7−8により得られた山型食パンの製パン結果は、比較例7−8により得られた山型食パンに比して良好であった。より具体的には、製パン実施例7−8の山型食パンについては、比較例7(α−アミラーゼ剤の添加有り、圧力処理無し、発酵時間3分間)及び比較例8(α−アミラーゼ剤の添加無し、圧力処理無し、発酵時間4時間)のそれに比して、製パン時生地状態、パンの外観、内相及び食感・風味の評価が顕著に高く、比容積についても明らかに大きな値となった。
【0100】
また、
図4の“老化の評価”より、製パン実施例7−8により得られた山型食パンでは、比較例7−8により得られた山型食パンに比して、保存中の老化が遅く、柔らかさが維持されることが示され、特に、保存1日後及び保存2日後の両方において比較例7−8に比して柔らかさが維持されていることが示された。
【0101】
図4の“製パン結果”より、製パン実施例7−8により得られた山型食パンでは、比較例7−8により得られた山型食パンに比して、製パン結果に優れ、保存中の老化が遅く、柔らかさが維持されることが示された。従来法の中種法湯種製パン法による、比較例8の山型食パンでは、4時間という十分な発酵時間をとっているにもかかわらず、α−アミラーゼ剤を添加し、圧力処理を施した製パン実施例7−8の山型食パンよりも、製パン結果及び老化の両点で劣る結果となった。また、製パン実施例7−8では、Wx−B1タンパク質を欠失しているアミロース含量がやや低い澱粉を含有する国内小麦品種由来の小麦粉を用いているが、本実施例による中種法湯種製パン法によって、これらの品種の優れた特性が引き出された結果、製パン結果に優れ、柔らかさが維持される山型食パンが得られたことが考えられる。また、長時間の発酵時間をとっている比較例8の山型食パンに比して、3分間という短時間の圧力処理を行った製パン実施例7−8の山型食パンにおいて良好な結果が得られた。
【0102】
以上の結果から、本実施例による、α−アミラーゼ剤を添加し、圧力処理を行って製造した中種法湯種製パン法による山型食パンは、製パン結果に優れ、焼成後も柔らかさが維持されることが示された。
【0103】
(実施例5)
再捏法によって国産小麦粉(キタノカオリ小麦粉)を用いてバターロールを製造するために、以下の製パン実験を行った。
【0104】
図5に記載の製パン配合にて、各原料を配合した。より具体的には、製パン実施例9−11、及び比較例9−11について、各々のミキサーボールに、小麦粉(キタノカオリ小麦粉)、砂糖、食塩、バター、イースト、全卵、脱脂粉乳、L−アスコルビン酸及び水を入れた。製パン実施例9−11及び比較例9−10では、さらにヘミセルラーゼ剤(新日本化学工業社製、スミチームSNX、0.01重量%添加で対小麦粉当たりの酵素活性は1400mU/gになる)を配合し、製パン実施例11及び比較例10では、さらにα−アミラーゼ剤(天野エンザイム社製、ビオザイムA、0.003重量%添加で対小麦粉当たりの酵素活性は1200mU/gになる)を配合した。また、製パン実施例10−11では、さらにアルコール発酵風味液(オリエンタル酵母工業社製、サカリッチ、アルコール濃度:約13%、食塩:約3%)を2重量%配合した。なお、
図5の製パン配合における各原料の数値は、小麦粉100重量部に対する値として示される。
【0105】
製パン実施例9−11及び比較例9−11について、各々のミキサーボールに各原料を入れた後、実施例3と同様に第1ミキシングを行い、製パン実施例9−11及び比較例9−11の第1ミキシング生地を得た。
【0106】
製パン実施例9−11の第1ミキシング生地を、プラスチック袋に充填して密封し、圧力処理装置(実施例1と同様)内に入れて、5MPaにて、30℃で15分間、圧力処理を行い、中間生地を得た。比較例9−11の第1ミキシング生地を、油を塗布したステンレス容器に入れ、乾燥を防ぐためにサランラップを用いて蓋をした。比較例9−10の第1ミキシング生地については、圧力処理すること無く、30℃で15分間発酵を行い、発酵生地を得た。比較例11の第1ミキシング生地については、圧力処理すること無く、30℃で80分間発酵を行い、発酵生地を得た。
【0107】
前述の中間生地及び発酵生地に対して、実施例3と同様に第2ミキシングを行い、製パン実施例9−11の最終生地及び比較例9−10の第2ミキシング生地を得た。
【0108】
前述の製パン実施例9−11の最終生地、及び比較例9−11の第2ミキシング生地について、実施例3と同様の条件で発酵(ただし、比較例11では最終発酵を40分間行った結果、生地の体積はV
5となった。製パン実施例9−11及び比較例9−10では、生地の体積がV
5となるまで最終発酵を行った。)、焼成して、製パン実施例9−11、及び比較例9−11のバターロールを得た。
【0109】
図5に、“製パン結果”及び“老化の評価”を示す。製パン結果の評価基準及び評価方法並びに老化の評価方法については、実施例3と同様である。
【0110】
図5の“製パン結果”より、製パン実施例9−11により得られたバターロールの製パン結果は、比較例9−11により得られたバターロールに比して良好であった。また、
図5の“老化の評価”より、製パン実施例9−11により得られたバターロールは、比較例9−11により得られたバターロールに比して保存中の老化が遅く、柔らかさが維持されることが示された。特に、ヘミセルラーゼ剤及びα−アミラーゼ剤の両方を配合した製パン実施例11では、製パン結果において顕著に優れていただけでなく、保存2日後の柔らかさの維持の点でも優れていた。
【0111】
図5の“製パン結果”及び“老化の評価”より、製パン実施例9−11により得られたバターロールでは、比較例9−11により得られたバターロールに比して、製パン結果に優れ、保存中の老化が遅いことが示された。従来法の再捏法による、比較例11のバターロールでは80分間という十分な発酵時間をとっているにもかかわらず、ヘミセルラーゼ剤(又はヘミセルラーゼ剤及びα−アミラーゼ剤の両方)を添加し、圧力処理を施した製パン実施例9−11のバターロールよりも劣る結果となった。
【0112】
以上の結果から、本実施例による、ヘミセルラーゼ剤(又はヘミセルラーゼ剤及びα−アミラーゼ剤の両方)を添加し、圧力処理を行って製造した再捏法によるバターロールは、製パン結果に優れ、焼成後も柔らかさが維持されることが示された。
【0113】
(実施例6)
中種法湯種製パン法によって山型食パンを製造するために、以下の製パン実験を行った。
【0114】
図6に記載の製パン配合にて、中種の各原料を配合した。より具体的には、製パン実施例12−14、及び比較例12−14について、各々のミキサーボールに、小麦粉、L−アスコルビン酸及び水を入れた。配合された小麦粉について、製パン実施例12では、“国産小麦粉ブレンド粉1”として、ゆめちから粉ときたほなみ粉との6:4のブレンド粉を用い、製パン実施例13−14では、“国産小麦粉ブレンド粉2”として、ゆめちから粉とキタノカオリ粉との6:4のブレンド粉を用い、比較例12−14では、市販外麦強力粉を用いた。製パン実施例12−14及び比較例12−13では、さらにヘミセルラーゼ剤(新日本化学工業社製、スミチームSNX、0.01重量%添加で対小麦粉当たりの酵素活性は4200mU/gになる)を配合し、製パン実施例14及び比較例13では、さらにα−アミラーゼ剤(天野エンザイム社製、ビオザイムA、0.001重量%添加で対小麦粉当たりの酵素活性は400mU/gになる)を配合した。また、比較例12−14では、さらに
図6に記載された量のイーストを添加し、製パン実施例13−14では、さらにアルコール発酵風味液(実施例5と同様)を2重量%配合した。なお、
図6の製パン配合における各原料の数値は、小麦粉100重量部に対する値として示される。
【0115】
製パン実施例12−14及び比較例12−14について、各々のミキサーボールに各原料を入れた後、実施例4と同様に中種ミキシングを行い、製パン実施例12−14及び比較例12−14の中種ミキシング生地を得た。
【0116】
製パン実施例12−14の中種ミキシング生地を、プラスチック袋に充填して密封し、圧力処理装置(実施例1と同様)内に入れて、80MPaにて、30℃で5分間、圧力処理を行い、中間生地を得た。比較例12−14の第1ミキシング生地を、油を塗布したステンレス容器に入れ、乾燥を防ぐためにサランラップを用いて蓋をした。比較例12−13の中種ミキシング生地については、圧力処理すること無く、30℃で5分間発酵を行い、発酵生地を得た。比較例14の中種ミキシング生地については、圧力処理すること無く、30℃で4時間発酵を行い、発酵生地を得た。
【0117】
また、小麦粉のブレンドが異なる以外は実施例4と同様の方法により、湯種生地1〜3を調製した。小麦粉のブレンドについて、具体的には、湯種生地1について、ゆめちから粉ときたほなみ粉との6:4のブレンド粉を用い、湯種生地2について、ゆめちから粉とキタノカオリ粉との6:4のブレンド粉を用いた。湯種生地3については市販外麦強力粉を用いた。
【0118】
以下の通り配合し、本捏ミキシングを行った。
・製パン実施例12:前述の中間生地の全量+湯種生地1+
図6記載の本捏の各原料
・製パン実施例13:前述の中間生地の全量+湯種生地2+
図6記載の本捏の各原料
・製パン実施例14:前述の中間生地の全量+湯種生地2+
図6記載の本捏の各原料
・比較例12:前述の発酵生地+湯種生地3+
図6記載の本捏の各原料
・比較例13:前述の発酵生地+湯種生地3+
図6記載の本捏の各原料
・比較例14:前述の発酵生地+湯種生地3+
図6記載の本捏の各原料
実施例4と同様に本捏ミキシングを行い、製パン実施例12−14の最終生地及び比較例12−14の本捏ミキシング生地を得た。
【0119】
前述の製パン実施例12−14の最終生地、及び比較例12−14の本捏ミキシング生地について、実施例4と同様の条件で発酵(ただし、比較例14では最終発酵を60分間行った結果、生地の体積はV
6となった。製パン実施例12−14及び比較例12−13では、生地の体積がV
6となるまで最終発酵を行った。)、焼成して、製パン実施例12−14及び比較例12−14の山型食パンを得た。
【0120】
図6に、“製パン結果”及び“老化の評価”を示す。なお、製パン結果の評価基準及び評価方法、並びに老化の評価方法については、実施例1と同様である。
【0121】
図6の“製パン結果”より、製パン実施例12−14により得られた山型食パンの製パン結果は、比較例12−14により得られた山型食パンに比して良好であった。また、
図6の“老化の評価”より、製パン実施例12−14により得られた山型食パンは、比較例12−14により得られた山型食パンに比して保存中の老化が遅く、柔らかさが維持されることが示された。特に、ヘミセルラーゼ剤及びα−アミラーゼ剤の両方を配合した製パン実施例14では、製パン結果において顕著に優れていただけでなく、保存後の柔らかさの維持の点でも優れていた。
【0122】
図6の“製パン結果”及び“老化の評価”より、製パン実施例12−14により得られた山型食パンでは、比較例12−14により得られた山型食パンに比して、製パン結果に優れ、保存中の老化が遅いことが示された。従来法による、比較例14の山型食パンでは4時間という十分な発酵時間をとっているにもかかわらず、ヘミセルラーゼ剤(又はヘミセルラーゼ剤及びα−アミラーゼ剤の両方)を添加し、圧力処理を施した製パン実施例12−14の山型食パンよりも劣る結果となった。また、製パン実施例12−14では、Wx−B1タンパク質を欠失しているアミロース含量がやや低い澱粉を含有する国内小麦品種由来の小麦粉を用いているが、本実施例による中種法湯種製パン法によって、これらの品種の優れた特性が引き出された結果、製パン結果に優れ、柔らかさが維持される山型食パンが得られたことが考えられる。また、長時間の発酵時間をとっている比較例14の山型食パンに比して、5分間という短時間の圧力処理を行った製パン実施例12−14の山型食パンにおいて良好な結果が得られた。
【0123】
以上の結果から、本実施例による、ヘミセルラーゼ剤(又はヘミセルラーゼ剤及びα−アミラーゼ剤の両方)を添加し、圧力処理を行って製造した再捏法による山型食パンは、製パン結果に優れ、焼成後も柔らかさが維持されることが示された。
【0124】
(実施例7)
冷凍生地再捏法によって山型食パンを製造するために、以下の製パン実験を行った。
【0125】
図7に記載の製パン配合にて、各原料を配合した。より具体的には、製パン実施例15−16、及び比較例15−16について、各々のミキサーボールに、小麦粉、砂糖、食塩、ショートニング、冷凍耐性イースト(日本甜菜製糖社製、FRイースト)、L−アスコルビン酸及び水を入れた。配合された小麦粉について、製パン実施例15−16では、北海道産超強力小麦「ゆめちから」をパン用に製粉した小麦及び北海道産強力小麦「キタノカオリ」をパン用に製粉した小麦を用い、比較例15−16では、市販外麦強力粉を用いた。製パン実施例15−16及び比較例15では、さらにヘミセルラーゼ剤(新日本化学工業社製、スミチームSNX、0.001重量%添加で対小麦粉当たりの酵素活性140mU/gとなる)及びα−アミラーゼ剤(新日本化学工業社製、スミチームAS、0.001重量%添加で対小麦粉当たりの酵素活性140mU/gとなる)を配合した。また、製パン実施例16では、さらにアルコール発酵風味液(実施例1と同様)を3重量%配合した。なお、
図7の製パン配合における各原料の数値は、小麦粉100重量部に対する値として示される。
【0126】
製パン実施例15−16、及び比較例15−16について、各々のミキサーボールに各原料を入れた後、第1ミキシングを行った。より具体的には、小型ピンミキサーを用いて、捏上温度27℃にて、低速で4分間ミキシングを行い、製パン実施例15−16、及び比較例15−16の第1ミキシング生地を得た。
【0127】
製パン実施例15−16の第1ミキシング生地を、プラスチック袋に充填して密封し、圧力処理装置(実施例1と同様)内に入れて、75MPaにて、30℃で5分間、圧力処理を行い、中間生地を得た。比較例15−16の第1ミキシング生地を、油を塗布したステンレス容器に入れ、乾燥を防ぐためにサランラップを用いて蓋をした。比較例15の第1ミキシング生地については、圧力処理すること無く、30℃で5分間発酵を行い、発酵生地を得た。比較例16の第1ミキシング生地については、圧力処理すること無く、30℃で60分間発酵を行い、発酵生地を得た。
【0128】
前述の中間生地及び発酵生地に対して、第2ミキシングを行った。より具体的には、製パン実施例15−16の中間生地の全量をミキサーボールに入れ、前述同様の小型ピンミキサーを用いて、捏上温度27℃にて、高速で最適時間ミキシングを行い(ミキシング時のピンミキサーの電力量の変化を指標に、電力量ピークを少し過ぎるまで高速でミキシングを行った)、最終生地を得た。比較例15−16の発酵生地についても同様に第2ミキシングを行い、第2ミキシング生地を得た。
【0129】
前述の最終生地及び第2ミキシング生地について、以下の条件で常法により分割及び成形した。
分割、丸め:生地量100gづつ手分割し、手丸目を行った。
ベンチタイム:30℃、20分間
成形:モルダーにて成形
【0130】
前述の通り成形した各生地ついて、冷凍処理をしない生地と、冷凍処理をする生地と、に分けた。冷凍処理をする生地については、さらに、冷凍保存1週間の生地と、冷凍保存2週間の生地と、に分け、以下の条件で常法により急速冷凍、冷凍保存及び解凍を行った。
急速冷凍:−30℃、45分
冷凍保存:−20℃、1週間又は2週間
解凍:30℃、60分間
【0131】
前述の通り得られた各生地について、以下の条件で発酵、焼成して、製パン実施例15−16、及び比較例15−16の山型食パンを得た。
最終発酵:38℃、湿度85%、60分間
焼成:180℃、25分間
【0132】
図7に、“製パン結果”として、冷凍処理をしない生地(
図7において、“冷凍無”)と、冷凍保存1週間の生地(
図7において、“1週間後”)と、冷凍保存2週間の生地(
図7において、“2週間後”)と、におけるパンの外観、内相、食感・風味及び比容積を示す。なお、製パン結果の評価基準については、実施例1と同様である。評価方法については、6人のパネラーによって、焼成1日後の外観、内相、食感・風味の評価を行った。また、焼成1時間後に菜種置換法によって比容積測定評価を行った。
【0133】
図7の“製パン結果”より、製パン実施例15−16により得られた山型食パンの製パン結果は、比較例15−16により得られた山型食パンに比して良好であった。より具体的には、製パン実施例15−16の山型食パンについては、冷凍保存1週間後及び2週間後のいずれにおいても、比較例15(酵素の添加有り、圧力処理無し、発酵時間5分間)及び比較例15(酵素の添加無し、圧力処理無し、発酵時間60分間)のそれに比して、パンの外観、内相、食感・風味の評価が顕著に高く、比容積についても明らかに大きな値となった。また、製パン実施例15−16の山型食パンにおいては、比較例15−16に比して、冷凍処理無しの生地と、冷凍保存1週間後及び2週間後の生地と、の間の製パン結果の差が小さく、製パン実施例15−16では、冷凍による生地の劣化が低減されたことが示された。
【0134】
図7の“製パン結果”より、製パン実施例15−16により得られた山型食パンでは、比較例15−16により得られた山型食パンに比して、製パン結果に優れることが示された。従来法による、比較例16の山型食パンでは、60分間という十分な発酵時間をとっているにもかかわらず、ヘミセルラーゼ剤及びα−アミラーゼ剤を添加し、圧力処理を施した製パン実施例15−16の山型食パンよりも劣る結果となった。
【0135】
以上の結果から、本実施例による、ヘミセルラーゼ剤及びα−アミラーゼ剤を添加し、圧力処理を行って製造した冷凍生地再捏法による山型食パンは、製パン結果に優れ、焼成後も柔らかさが維持されることが示された。このように、本実施例により得られた最終生地は冷凍保存が可能であり、解凍後焼成させても、柔らかく老化が遅いパンを製造することができる。
【0136】
(実施例8)
冷凍生地再捏法によってバターロールを製造するために、以下の製パン実験を行った。
【0137】
図8に記載の製パン配合にて、各原料を配合した。より具体的には、製パン実施例17−18、及び比較例17−18について、各々のミキサーボールに、小麦粉、砂糖、食塩、バター、冷凍耐性イースト(実施例7と同様)、全卵、脱脂粉乳、L−アスコルビン酸及び水を入れた。配合された小麦粉について、製パン実施例17−18では、北海道産超強力小麦「ゆめちから」をパン用に製粉した小麦及び北海道産中力小麦「きたほなみ」をパン用に製粉した小麦を用い、比較例17−18では、市販外麦準強力粉を用いた。製パン実施例17−18及び比較例17では、さらにヘミセルラーゼ剤(新日本化学工業社製、スミチームSNX、0.02重量%添加で対小麦粉当たりの酵素活性2800mU/gとなる)及びα−アミラーゼ剤(新日本化学工業社製、スミチームAS、0.01重量%添加で対小麦粉当たりの酵素活性1400mU/gとなる)を配合した。また、製パン実施例18では、さらにアルコール発酵風味液(実施例1と同様)を3重量%配合した。なお、
図8の製パン配合における各原料の数値は、小麦粉100重量部に対する値として示される。
【0138】
製パン実施例17−18、及び比較例17−18について、各々のミキサーボールに各原料を入れた後、第1ミキシングを行った。より具体的には、小型ピンミキサーを用いて、捏上温度25℃にて、低速で5分間ミキシングを行い、製パン実施例17−18、及び比較例17−18の第1ミキシング生地を得た。
【0139】
製パン実施例17−18の第1ミキシング生地を、プラスチック袋に充填して密封し、圧力処理装置(実施例1と同様)内に入れて、35MPaにて、25℃で20分間、圧力処理を行い、中間生地を得た。比較例17−18の第1ミキシング生地を、油を塗布したステンレス容器に入れ、乾燥を防ぐためにサランラップを用いて蓋をした。比較例17の第1ミキシング生地については、圧力処理すること無く、25℃で20分間発酵を行い、発酵生地を得た。比較例18の第1ミキシング生地については、圧力処理すること無く、25℃で60分間発酵を行い、発酵生地を得た。
【0140】
前述の中間生地及び発酵生地に対して、第2ミキシングを行った。より具体的には、製パン実施例17−18の中間生地の全量をミキサーボールに入れ、前述同様の小型ピンミキサーを用いて、捏上温度28℃にて、高速で最適時間ミキシングを行い(ミキシング時のピンミキサーの電力量の変化を指標に、電力量ピークを少し過ぎるまで高速でミキシングを行った)、最終生地を得た。比較例17−18の発酵生地についても同様に第2ミキシングを行い、第2ミキシング生地を得た。
【0141】
前述の最終生地及び第2ミキシング生地について、以下の条件で常法により分割及び成形した。
分割、丸め:生地量40gづつ手分割し、手丸目を行った。
ベンチタイム:30℃、15分間
成形:バターロール形状に手成形した。
【0142】
前述の通り成形した各生地ついて、冷凍処理をしない生地と、冷凍処理をする生地と、に分けた。冷凍処理をする生地については、さらに、冷凍保存1週間の生地と、冷凍保存2週間の生地と、に分け、以下の条件で常法により急速冷凍、冷凍保存及び解凍を行った。
急速冷凍:−30℃、30分
冷凍保存:−20℃、1週間又は2週間
解凍:30℃、60分
【0143】
前述の通り得られた各生地について、以下の条件で発酵、焼成して、製パン実施例17−18、及び比較例17−18のバターロールを得た。
最終発酵:38℃、湿度85%、50分間
焼成:210℃、7分間
【0144】
図8に、“製パン結果”として、冷凍処理をしない生地(
図8において、“冷凍無”)と、冷凍保存1週間の生地(
図8において、“1週間後”)と、冷凍保存2週間の生地(
図8において、“2週間後”)と、におけるパンの外観、内相、食感・風味及び見た目のボリュームを示す。なお、製パン結果の評価基準については、実施例1と同様である。評価方法については、7人のパネラーによって、焼成1日後の外観、内相、食感・風味及び見た目のボリュームの評価を行った。
【0145】
図8の“製パン結果”より、製パン実施例17−18により得られたバターロールの製パン結果は、比較例17−18により得られたバターロールに比して良好であった。より具体的には、製パン実施例17−18のバターロールについては、冷凍保存1週間後及び2週間後のいずれにおいても、比較例17(酵素の添加有り、圧力処理無し、発酵時間20分間)及び比較例18(酵素の添加無し、圧力処理無し、発酵時間60分間)のそれに比して、パンの外観、内相、食感・風味及び見た目のボリュームの評価が顕著に高かった。また、製パン実施例17−18のバターロールについて、冷凍保存1週間後及び2週間後のいずれにおいても、冷凍処理無しの生地と同等程度又はそれに近い製パン結果が得られた。
【0146】
図8の“製パン結果”より、製パン実施例17−18により得られたバターロールでは、比較例17−18により得られたバターロールに比して、製パン結果に優れることが示された。従来法による、比較例18のバターロールでは、60分間という十分な発酵時間をとっているにもかかわらず、ヘミセルラーゼ剤及びα−アミラーゼ剤を添加し、圧力処理を施した製パン実施例17−18のバターロールよりも劣る結果となった。
【0147】
以上の結果から、本実施例による、ヘミセルラーゼ剤及びα−アミラーゼ剤を添加し、圧力処理を行って製造した冷凍生地再捏法によるバターロールは、製パン結果に優れ、焼成後も柔らかさが維持されることが示された。このように、本実施例により得られた最終生地は冷凍保存が可能であり、解凍後焼成させても、柔らかく老化が遅いパンを製造することができる。