特許第6458275号(P6458275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マイクロプロセス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6458275-レーザー装置及びレーザー発振器 図000002
  • 特許6458275-レーザー装置及びレーザー発振器 図000003
  • 特許6458275-レーザー装置及びレーザー発振器 図000004
  • 特許6458275-レーザー装置及びレーザー発振器 図000005
  • 特許6458275-レーザー装置及びレーザー発振器 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6458275
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】レーザー装置及びレーザー発振器
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/097 20060101AFI20190121BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   H01S3/097 A
   H01S3/00 B
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-110746(P2014-110746)
(22)【出願日】2014年5月29日
(65)【公開番号】特開2015-225983(P2015-225983A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2017年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】514135111
【氏名又は名称】マイクロプロセス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137394
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】宮岸 喜幸
(72)【発明者】
【氏名】小関 良治
【審査官】 吉野 三寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−007684(JP,A)
【文献】 特開平08−056035(JP,A)
【文献】 特開平01−251764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00−3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のユニットと、
前記第1のユニットに対して着脱自在に接続される第2のユニットと
を有し、
前記第1のユニットは、
レーザー発振器と、
前記レーザー発振器に電力を供給する蓄電部と
を含み、
前記第2のユニットは、
前記レーザー発振器にレーザーガスを供給するためのガス供給部と、
前記蓄電部に電力を供給する電力供給部と
を含む
レーザー装置。
【請求項2】
前記第1のユニットは、
少なくとも前記レーザー発振器を制御する第1の制御部
をさらに含み、
前記第2のユニットは、
少なくとも前記ガス供給部を制御する第2の制御部
をさらに含む
請求項1に記載のレーザー装置。
【請求項3】
前記第1のユニットは、
スパークギャップスイッチと、
レーザーガスが充填されたレーザーガスチャンバと
をさらに有し、
前記レーザーガスチャンバは、前記スパークギャップスイッチとガスを共用できるように前記スパークギャップスイッチに連結されている
請求項2に記載のレーザー装置。
【請求項4】
前記レーザーガスチャンバ内でレーザー光を発生させるための主放電電極と、
前記主放電電極間に電荷を充電する主放電用キャパシタと、
前記主放電電極間を予備電離するための予備放電電極と、
前記予備放電電極間に電荷を充電する予備放電用キャパシタと、
前記予備放電用キャパシタに接続された抵抗器と
をさらに有する
請求項3に記載のレーザー装置。
【請求項5】
共振器ミラー間の間隔を既定の距離に維持する離間部材
をさらに有し、
前記離間部材は、ソーダガラスで構成されている
請求項4に記載のレーザー装置。
【請求項6】
前記第1ユニットを移動させるための車輪と、
前記レーザー発振器で生成されたレーザー光を照射する照射口と、
前記照射口を移動させるマニピュレータと
をさらに有する請求項5に記載のレーザー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー装置及びレーザー発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル機器に使われる小型精密金型は、耐久性を保つために細部にわたり熱処理を行っている。これによる形状変化は、ゼロディストーションである超低歪が必要とされる。
上記の要求を満たすには、パルス動作により短時間で金型表面を急速加熱しその後、拡散冷却により急冷することにより高い硬度と強度を兼ね備えた焼入れを実現できる。また、パルスのショット数を変えることにより高精度の温度制御が可能となる。よって、これに適合するレーザーは、高い吸収特性を持ち照射面に均一な硬化層深さの制御性と加工領域を持ち、省エネルギーを満たすTE−CO2レーザー装置を上げることができる。
なお、特許文献1には、ハロゲン発生器を単体で着脱可能としたエキシマレーザ装置のガス供給装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−116214
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
小型化したレーザー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るレーザー装置は、第1のユニットと、前記第1のユニットに対して着脱自在に接続される第2のユニットとを有し、前記第1のユニットは、レーザー発振器と、前記レーザー発振器に電力を供給する蓄電部とを含み、前記第2のユニットは、前記レーザー発振器にレーザーガスを供給するためのガス供給部と、前記蓄電部に電力を供給する電力供給部とを含む。
【0006】
好適には、前記第1のユニットは、少なくとも前記レーザー発振器を制御する第1の制御部をさらに含み、前記第2のユニットは、少なくとも前記ガス供給部を制御する第2の制御部をさらに含む。
【0007】
好適には、前記第1のユニットは、スパークギャップスイッチと、レーザーガスが充填されたレーザーガスチャンバとをさらに有し、前記レーザーガスチャンバは、前記スパークギャップスイッチとガスを共用できるように前記スパークギャップスイッチに連結されている。
【0008】
好適には、前記レーザーガスチャンバ内でレーザー光を発生させるための主放電電極と、前記主放電電極間に電荷を充電する主放電用キャパシタと、前記主放電電極間を予備電離するための予備放電電極と、前記予備放電電極間に電荷を充電する予備放電用キャパシタと、前記予備放電用キャパシタに接続された抵抗器とをさらに有する。
【0009】
好適には、共振器ミラー間の間隔を既定の距離に維持する離間部材をさらに有し、前記離間部材は、ソーダガラスで構成されている。
【0010】
好適には、前記第1ユニットを移動させるための車輪と、前記レーザー発振器で生成されたレーザー光を照射する照射口と、前記照射口を移動させるマニピュレータとをさらに有する。
【0011】
また、本発明に係るレーザー発振器は、スパークギャップスイッチと、レーザーガスが充填されたレーザーガスチャンバとを有し、前記レーザーガスチャンバは、前記スパークギャップスイッチとガスを共用できるように前記スパークギャップスイッチに連結されている。
【0012】
また、本発明に係るレーザー発振器は、レーザーガスチャンバ内でレーザー光を発生させるための主放電電極と、前記主放電電極間に電荷を充電する主放電用キャパシタと、前記主放電電極間を予備電離するための予備放電電極と、前記予備放電電極間に電荷を充電する予備放電用キャパシタと、前記予備放電用キャパシタに接続された抵抗器とを有する。
【0013】
また、本発明に係るレーザー発振器は、共振器ミラーと、前記共振器ミラー間の間隔を既定の距離に維持する離間部材とを有し、前記離間部材は、ソーダガラスで構成されている。
【発明の効果】
【0014】
レーザー装置を小型化し、使い勝手を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】レーザー加工装置1の全体構成を模式的に例示する図である。
図2】第1ユニット10及び第2ユニット20に搭載された機器又は機能を説明する図である。
図3】レーザー発振器108の一部を模式的に説明する図である。
図4】第1ユニット10における電気回路及びチャンバを模式的に例示する図である。
図5】本例のチャンバと、比較例のチャンバとを模式的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、レーザー加工装置1の全体構成を模式的に例示する図である。なお、本例では、レーザー加工装置1が、小型精密金型の微小熱処理や樹脂残渣クリーニングに用いる超小型TE−CO2レーザー装置である場合を具体例として説明するが、これに限定されるものではない。
図1に例示するように、レーザー加工装置1は、第1ユニット10と、第2ユニット20とを有する。第1ユニット10は、第2ユニット20に対して、図中の着脱面において着脱自在に接続されている。
第1ユニット10は、第1ユニットの筐体である第1筐体100と、この第1筐体100の上方に接続されたマニピュレータ102と、第1筐体100の底面を移動可能に支持するキャスター104とを有する。マニピュレータ102の先端には、レーザー発振器(後述)により発生させたレーザー光を照射するための照射口が設けられている。作業者は、第1ユニット10を移動させ、さらにマニピュレータ102を動かすことにより、作業対象位置にレーザー光を照射することができる。
第2ユニット20は、第2ユニットの筐体である第2筐体200と、第2筐体200の底面を固定支持する固定脚202とを有する。
【0017】
図2は、第1ユニット10及び第2ユニット20に搭載された機器又は機能を説明する図である。
図2に例示するように、第1ユニット10には、レーザー発振器106、高圧電源108、蓄電池110及び第1制御部112が設けられている。
第1ユニット10において、レーザー発振器106は、第1ユニット10の内部に設置され、レーザー加工に用いる赤外レーザー光を発生させる。より具体的には、レーザー発振器106は、第1ユニット10が第2ユニット20から外されているときに、レーザーガスチャンバ(後述)内で放電させ、レーザー光を発生させる。
高圧電源108は、蓄電池110から供給される電力を、高電圧の電力に変換し、レーザー発振器106に供給する。
蓄電池110は、第2ユニット20の電力供給部210から供給された電力を蓄電し、蓄電した電力を高圧電源108に供給する。
第1制御部112は、蓄電池110からの電力で動作し、少なくともレーザー発振器106を制御する。
【0018】
また、第2ユニット20には、ガス供給部208、電力供給部210及び第2制御部212が設けられている。
第2ユニット20において、ガス供給部208は、第1ユニット10が第2ユニット20と接続しているときに、レーザー発振器108にガスを供給する。より具体的には、ガス供給部208は、窒素と二酸化炭素の混合乾燥ガスを、レーザー発振器108に供給すると共に、レーザーガスチャンバ(後述)内の減圧処理又は加圧処理を行う。
電力供給部210は、第1ユニット10が第2ユニット20と接続しているときに、蓄電池110に電力を供給する。より具体的には、電力供給部210は、外部電源から供給される電力を、蓄電池110に蓄電させる。
第2制御部212は、少なくとも電力供給部210を制御する。第2制御部212は、第1制御部112と協働して、装置全体を制御する。
【0019】
レーザー発振器108では、主放電用キャパシタ(後述)に充電し、これを短時間で放電することにより高ピークパワーのレーザーを取り出すことができる。しかし、この放電は、高い電磁波を周囲に放射やケーブルを介して伝播し制御機器の誤動作や破壊を誘発させる虞があった。そこで、上記のように、第2制御部212の制御系と、レーザー発振器108との電気系統を蓄電池110にて完全に分離することにより、電気ケーブル等を伝播してくる電磁ノイズを遮断できかつ、安価に実現できる。
【0020】
図3は、レーザー発振器108の一部を模式的に説明する図である。
図3に例示するように、レーザー発振器108は、レーザーガスが充填されるレーザーガスチャンバ120と、レーザーガスチャンバ120の両端に配置された2つのミラーホルダ122と、それぞれのミラーホルダ122により保持されている共振器ミラー124と、共振器ミラー124の間を既定の距離で離間させる離間部材126とを有する
離間部材126は、ソーダガラスで構成された棒状部材である。
レーザー発振を安定して発振するためには、共振器ミラー124の間をミクロンオーダーで一定の間隔に維持する必要があり、インバー材(鉄系の材料)で構成された共振器ロッドを使うのが一般であった。しかし、重くさびやすいのが欠点であり、近傍に高電圧の供給ラインが通るため電気絶縁性も必要となる。そこで、熱膨張係数が同等で且つ比重が半分以下の絶縁材料であるソーダガラスロッドを離間部材126の材料として採用し大幅な小型化を実現できた。
【0021】
図4は、第1ユニット10における電気回路及びチャンバを模式的に例示する図である。
図4に例示するように、第1ユニット10には、レーザーガスチャンバ120内でレーザー光を発生させるための主放電電極130と、スパークギャップスイッチ電極132と、主放電電極130間を予備電離するための予備放電電極134と、主放電電極130間に電荷を充電する主放電用キャパシタ136と、予備放電電極134間に電荷を充電する予備放電用キャパシタ138と、予備放電用キャパシタ138に接続された抵抗器140と、スパークギャップスイッチ電極132が収容されるスパークギャップ用チャンバ142とが設けられている。
【0022】
抵抗器140が、リフレッシュ抵抗として機能することにより、主放電用キャパシタ136から予備放電用キャパシタ138に電荷移行により主放電電極130間に安定した放電が実現する。予備放電用キャパシタ138内部に電荷が残ると上記の電荷移行の際に発生する予備放電電極134間の放電が十分でないため主放電電極130間に安定放電を発生することはできない。そこに、抵抗器140がリフレッシュ抵抗として機能することにより、予備放電用キャパシタ138に残留する電荷を低減でき、また、スパークギャップの安定したスイッチにも寄与できる。
【0023】
図5は、本例のチャンバと、比較例のチャンバとを模式的に表す図である。
図5に例示するように、比較例では、主放電電極が収容されたレーザーガスチャンバと、スパークギャップスイッチ電極が収容されるスパークギャップ用チャンバとが互いに分離独立していた。比較例では、スパーギャップ用チャンバに乾燥空気を送込み安定したスイッチ放電を実現していた。しかし、このために外部に圧縮空気や乾燥空気を発生させる発生器等が必要になり小型化が難しい。これを改善するため、本例では、主放電電極130が収容されたレーザーガスチャンバ120と、スパークギャップスイッチ電極132が収容されるスパークギャップ用チャンバ142とを連結させて、レーザーガスがこれらのチャンバで共用されるよう構成した。レーザーガスは、安定した乾燥ガスであるため、小型化したスパークギャップ用チャンバとレーザーガスチャンバを連結することにより外部からのガス供給をすることなく安定したスイッチとして動作させることができる。レーザーガスチャンバ120とスパークギャップ用チャンバ142とを隣接させた場合には、チャンバ壁面の一部も共用させることができ、さらなる小型化も期待できる。
【0024】
以上説明したように、本例の小型化されたレーザー加工装置1によれば、精密な温度コントロール及び面均一なビームモードが可能であることに加え、可搬性が向上し、広い応用範囲(例えば、樹脂成形時に発生する金型表面の微小残渣除去クリーニング用レーザー光源、CFRP・CFRTPの積層時の接着前表面の粗化処理用レーザー光源、レーザー誘起プラズマ分光装置用レーザー光源、コンクリート構造物の検査診断の探傷装置用レーザー光源など)が期待できる。
【符号の説明】
【0025】
1…レーザー加工装置
10…第1ユニット
20…第2ユニット
106…レーザー発振器
110…蓄電池
112…第1制御部
120…レーザーガスチャンバ
126…離間部材
132…スパークギャップ用チャンバ
140…抵抗器
208…ガス供給部
210…電力供給部
212…第2制御部
図1
図2
図3
図4
図5