特許第6458302号(P6458302)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6458302
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】逆浸透膜洗浄方法及び逆浸透膜洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 65/02 20060101AFI20190121BHJP
   B01D 71/10 20060101ALI20190121BHJP
   B01D 71/56 20060101ALI20190121BHJP
   B01D 65/06 20060101ALI20190121BHJP
   B01D 61/20 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   B01D65/02
   B01D71/10
   B01D71/56
   B01D65/06
   B01D61/20
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-86714(P2015-86714)
(22)【出願日】2015年4月21日
(65)【公開番号】特開2016-203081(P2016-203081A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】518018986
【氏名又は名称】三菱重工エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】垣上 英正
(72)【発明者】
【氏名】横濱 克彦
(72)【発明者】
【氏名】田畑 雅之
(72)【発明者】
【氏名】田浦 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】堀 孝義
(72)【発明者】
【氏名】松井 克憲
(72)【発明者】
【氏名】河田 匡仙
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/111794(WO,A1)
【文献】 特開2008−289959(JP,A)
【文献】 特開2002−095936(JP,A)
【文献】 特開平07−080260(JP,A)
【文献】 特開昭51−063375(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/099074(WO,A1)
【文献】 特開昭63−123491(JP,A)
【文献】 特開平03−278820(JP,A)
【文献】 特開2005−034749(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/119038(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/024952(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44
B01D 61/00−71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
45℃超60℃以下の洗浄水で逆浸透膜を洗浄する逆浸透膜洗浄方法であって、
前記洗浄水に有機酸又は有機酸塩が含まれており、
前記有機酸が、クエン酸、ホスホン酸、グリコール酸、エチレンジアミン四酢酸、ギ酸、及びシュウ酸からなる群から選択される1種以上である逆浸透膜洗浄方法。
【請求項2】
前記洗浄水を、フィルターを通過させながら前記逆浸透膜に循環させる請求項1に記載の逆浸透膜洗浄方法。
【請求項3】
前記有機酸としてのクエン酸及びクエン酸塩が、クエン酸濃度として2.0〜22g/Lの範囲で含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の逆浸透膜洗浄方法。
【請求項4】
前記洗浄水のpHが3.5〜5.5に調整されている請求項1〜の何れか一項に記載の逆浸透膜洗浄方法。
【請求項5】
前記洗浄水と前記逆浸透膜の接触する洗浄時間が、12時間以下であることを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の逆浸透膜洗浄方法。
【請求項6】
前記逆浸透膜がセルロース系高分子又はポリアミド系高分子によって構成されていることを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の逆浸透膜洗浄方法。
【請求項7】
逆浸透膜を備えた膜モジュールと、
洗浄水を貯留する洗浄水タンクと、
前記洗浄水タンクから前記逆浸透膜に供給される洗浄水を加熱する加熱部と、
該加熱部により加熱される洗浄水が45℃超60℃以下となるように前記加熱部を制御する温度制御装置と、
を備える逆浸透膜洗浄装置であって、
前記洗浄水に有機酸又は有機酸塩が含まれており、
前記有機酸が、クエン酸、ホスホン酸、グリコール酸、エチレンジアミン四酢酸、ギ酸、及びシュウ酸からなる群から選択される1種以上である逆浸透膜洗浄装置。
【請求項8】
前記温度制御装置は、前記加熱部により加熱される洗浄水が45℃超55℃以下となるように前記加熱部を制御する請求項に記載の逆浸透膜洗浄装置。
【請求項9】
前記洗浄水を前記膜モジュールと前記洗浄水タンクとの間で循環させる循環ポンプと、
循環する前記洗浄水が通過するフィルターと、を備える請求項又はに記載の逆浸透膜洗浄装置。
【請求項10】
前記有機酸としてのクエン酸及びクエン酸塩が、クエン酸濃度として2.0〜22g/Lの範囲で含まれることを特徴とする請求項7〜9の何れか一項に記載の逆浸透膜洗浄装置。
【請求項11】
前記洗浄水のpHが3.5〜5.5である請求項10の何れか一項に記載の逆浸透膜洗浄装置。
【請求項12】
前記循環ポンプの駆動後12時間以下で該循環ポンプの駆動を停止制御するポンプ制御装置を備える請求項11の何れか一項に記載の逆浸透膜洗浄装置。
【請求項13】
前記逆浸透膜がセルロース系高分子又はポリアミド系高分子によって構成されていることを特徴とする請求項12の何れか一項に記載の逆浸透膜洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆浸透膜洗浄方法及び逆浸透膜洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
逆浸透膜を備えた海水淡水化装置において、処理対象の海水は、先ず中空糸膜などが充填された前処理装置に通されて、固体物などの不純物が除去される。前処理装置で処理された海水は、高圧ポンプで昇圧されて逆浸透膜に接触され、逆浸透膜を通過する淡水と通過しない濃縮海水とに分離される。得られた淡水は、飲料水などの用途に利用されている。
【0003】
逆浸透膜の透過性能が低下する要因として、鉄、マンガン等の金属化合物、並びに、海水中に含まれる微生物及びその代謝産物を含む有機物を含むスケールが付着することによって、目詰まりすることが挙げられる。この目詰まりを洗浄する目的で、逆浸透膜を備えた海水淡水化装置には、一般的に化学洗浄ラインが設置されている。逆浸透膜又は中空糸膜の処理水量が低下した場合は、運転を停止して、薬剤を用いた化学洗浄が実施される。
【0004】
逆浸透膜、中空糸膜等の水処理膜に付着したスケールを除去する方法として、次亜塩素酸、クエン酸、過酸化水素等の薬剤を含む洗浄液で洗浄する方法が知られている。例えば、特許文献1には、クエン酸50〜1500mg/リットルを含有し、pH1.0〜3.0に調整された洗浄液を使用して膜モジュールを洗浄する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−9973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の地球温暖化に伴う異常気象によって、季節的に変動する海水温が例年よりも上昇する傾向がある。海水温の上昇により、海水淡水化プラントに備えられた逆浸透膜に付着する有機系スケールが異常に増加する場合があり、従来の洗浄方法では対応しきれずにファウリングが進行し、プラントの操業を停止せざるを得ない事態が発生している。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、塩透過係数の増加率を指標とする膜劣化を抑制しつつ、水透過係数の増加を指標とする洗浄効果を向上させることができる逆浸透膜洗浄方法及び逆浸透膜洗浄装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供している。
本発明の第一態様は、45℃超60℃以下の洗浄水で逆浸透膜を洗浄する逆浸透膜洗浄方法である。
【0009】
第一態様の逆浸透膜洗浄方法によれば、使用する45℃超の洗浄水の温度は従来よりも高温であるので、スケールを逆浸透膜から剥離させたり、溶出させたりする洗浄力が高い。また、洗浄水が60℃以下であることにより、洗浄効果を高めつつ、熱による逆浸透膜の劣化を抑制することができる。
【0010】
本発明の第二態様は、前記洗浄水を、フィルターを通過させながら前記逆浸透膜に循環させる上記第一態様に記載の逆浸透膜洗浄方法である。
第二態様の逆浸透膜洗浄方法によれば、循環する洗浄水に溶解されたゴミやスケールをフィルターで除去できるので、洗浄水を再利用することが可能であり、洗浄水の廃棄処理に要するコストを低減することができる。
【0011】
本発明の第三態様は、前記洗浄水に有機酸が含まれている上記第一又は第二態様に記載の逆浸透膜洗浄方法である。
第三態様の逆浸透膜洗浄方法によれば、45℃超60℃以下という高い温度域においても、逆浸透膜の劣化を抑えつつ、洗浄効果を高めることができる。
【0012】
本発明の第四態様は、前記有機酸としてのクエン酸及びクエン酸塩が、クエン酸濃度として2.0〜22g/Lの範囲で含まれることを特徴とする上記第三態様に記載の逆浸透膜洗浄方法である。
第四態様の逆浸透膜洗浄方法によれば、45℃超60℃以下という高い温度域においても、逆浸透膜の劣化を抑えつつ、洗浄効果を高めることができる。
【0013】
本発明の第五態様は、前記洗浄水のpHが3.5〜5.5に調整されていることを特徴とする上記第一〜第四態様の何れか一態様に記載の逆浸透膜洗浄方法である。
第五態様の逆浸透膜洗浄方法によれば、45℃超60℃以下という高い温度域においても、逆浸透膜の劣化を抑えつつ、洗浄効果を高めることができる。
【0014】
本発明の第六態様は、前記洗浄水と前記逆浸透膜の接触する洗浄時間が、12時間以下であることを特徴とする上記第一〜第五態様の何れか一態様に記載の逆浸透膜洗浄方法である。
第六態様の逆浸透膜洗浄方法によれば、45℃超60℃以下という高い温度域においても、逆浸透膜の劣化を抑えつつ、洗浄効果を高めることができる。
【0015】
本発明の第七態様は、前記逆浸透膜がセルロース系高分子又はポリアミド系高分子によって構成されていることを特徴とする上記第一〜第六態様の何れか一態様に記載の逆浸透膜洗浄方法である。
第七態様の逆浸透膜洗浄方法によれば、45℃超60℃以下という高い温度域においても、逆浸透膜の劣化を抑えつつ、洗浄効果を高めることができる。
【0016】
本発明の第八態様は、逆浸透膜を備えた膜モジュールと、洗浄水を貯留する洗浄水タンクと、前記洗浄水タンクから前記逆浸透膜に供給される洗浄水を加熱する加熱部と、該加熱部により加熱される洗浄水が45℃超60℃以下となるように前記加熱部を制御する温度制御装置と、を備える逆浸透膜洗浄装置である。
第八態様の逆浸透膜洗浄装置によれば、温度制御装置を備えているので、所定温度の洗浄水を安定して供給し、逆浸透膜を洗浄することができる。
【0017】
本発明の第九態様は、前記温度制御装置は、該加熱部により加熱される洗浄水が45℃超55℃以下となるように前記加熱部を制御する上記第八態様に記載の逆浸透膜洗浄装置である。
第九態様の逆浸透膜洗浄装置によれば、温度制御装置を備えているので、所定温度の洗浄水を安定して供給し、逆浸透膜を洗浄することができる。
【0018】
本発明の第十態様は、前記洗浄水を前記膜モジュールと前記洗浄水タンクとの間で循環させる循環ポンプと、循環する前記洗浄水が通過するフィルターと、を備える上記第八態様又は第九態様に記載の逆浸透膜洗浄装置である。
第十態様の逆浸透膜洗浄装置によれば、循環する洗浄水に溶解されたゴミやスケールをフィルターで除去できるので、洗浄水を再利用することが可能であり、洗浄水の廃棄処理に要するコストを低減することができる。
【0019】
本発明の第十一態様は、前記洗浄水に有機酸が含まれている上記第八〜第十態様の何れか一態様に記載の逆浸透膜洗浄装置である。
第十一態様の逆浸透膜洗浄装置によれば、45℃超60℃以下という高い温度域においても、逆浸透膜の劣化を抑えつつ、高い洗浄効果を得ることができる。
【0020】
本発明の第十二態様は、前記有機酸としてのクエン酸及びクエン酸塩が、クエン酸濃度として2.0〜22g/Lの範囲で含まれることを特徴とする第十一態様に記載の逆浸透膜洗浄装置である。
第十二態様の逆浸透膜洗浄装置によれば、45℃超60℃以下という高い温度域においても、逆浸透膜の劣化を抑えつつ、高い洗浄効果を得ることができる。
【0021】
本発明の第十三態様は、前記洗浄水のpHが3.5〜5.5である第八〜第十二態様の何れか一態様に記載の逆浸透膜洗浄装置である。
第十三態様の逆浸透膜洗浄装置によれば、45℃超60℃以下という高い温度域においても、逆浸透膜の劣化を抑えつつ、高い洗浄効果を得ることができる。
【0022】
本発明の第十四態様は、前記循環ポンプの駆動後12時間以下で該循環ポンプの駆動を停止制御するポンプ制御装置を備える第八〜第十三態様の何れか一態様に記載の逆浸透膜洗浄装置である。
第十四態様の逆浸透膜洗浄装置によれば、ポンプ制御装置の制御下において、12時間以下の運転後に循環ポンプを停止し、洗浄処理を終えることにより、洗浄が不用意に長引いて逆浸透膜が劣化することを防止できる。このため、45℃超60℃以下という高い温度域において、逆浸透膜の劣化を抑えつつ、高い洗浄効果を得ることができる。
【0023】
本発明の第十五態様は、前記逆浸透膜がセルロース系高分子又はポリアミド系高分子によって構成されていることを特徴とする第八〜第十四態様の何れか一態様に記載の逆浸透膜洗浄装置である。
第十五態様の逆浸透膜洗浄装置によれば、45℃超60℃以下という高い温度域においても、逆浸透膜の劣化を抑えつつ、高い洗浄効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の逆浸透膜洗浄方法によれば、膜の劣化を抑制するとともに洗浄効果を向上させることができる。
本発明の逆浸透膜洗浄装置によれば、所定温度に維持した洗浄水を逆浸透膜に供給し、高い洗浄効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】逆浸透膜をベッセル内に備えた逆浸透膜モジュールの断面模式図である。
図2】逆浸透膜モジュールに接続された逆浸透膜洗浄装置の構成を示す図である。
図3】実施例1において、洗浄水の温度を段階的に変えた試験結果を示す棒グラフである。
図4】実施例2において、洗浄時間を変えた試験結果を示す棒グラフである。
図5】実施例3において、洗浄水のpHを段階的に変えた試験結果を示す棒グラフである。
図6】実施例4において、洗浄水に含まれるクエン酸濃度を段階的に変えた試験結果を示す棒グラフである。
図7】実施例5において、クエン酸を含む洗浄水の温度を段階的に変えた試験結果を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の洗浄方法は公知の逆浸透膜(RO膜)に適用可能である。本発明の洗浄方法が適用可能なRO膜の種類及び形状は特に限定されず、例えば、平面ディスク状の膜であってもよいし、中空糸膜、スパイラル膜又はチューブラー膜であってもよい。RO膜は、おもて面と裏面の少なくとも二つの面、すなわち処理対象である未処理水が流入する一次面(おもて面)と、RO膜を透過した処理水が流出する二次面(裏面)とを有することが好ましい。RO膜が処理する未処理水の種類は特に制限されず、例えば、海水、河川水、上下水道、雨水、工業廃水等が挙げられる。
【0027】
本発明の洗浄方法は、大規模な水処理装置に設置されたRO膜を装置外に取り外さずにオンラインの状態で効率的に洗浄できることから、例えば、海水の淡水化処理プラントに設置されたRO膜の洗浄に好適である。
【0028】
本発明の洗浄方法を適用するRO膜の構成材料は特に限定されず、例えば、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、硝酸セルロース、セルロース、ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、シリコーンポリマー等が挙げられる。
【0029】
本実施形態の洗浄水による膜の劣化を極力抑制する観点から、RO膜の構成材料は、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、硝酸セルロース、セルロース等のセルロース系高分子、及び、ポリアミド、芳香族ポリアミド等のポリアミド系高分子から選択される材料であることが好ましい。
【0030】
本発明の洗浄方法が適用可能なRO膜を備えた水処理装置の一例として、図1に示すRO膜モジュール1が挙げられる。図1のRO膜モジュール1は、複数の中空糸状のRO膜2がU字状に折り返され、各中空糸の端部の開口状態を保持した状態で樹脂固定され、さらにベッセル(耐圧容器)6に収納されている。
【0031】
通常の海水淡水化処理において、供給配管3から海水SWがベッセル6内に供給され、中空糸状のRO膜2の外周を構成する一次面に接触して透過する。淡水化された透過水FWは中空糸状のRO膜2の内周を構成する二次面から各中空糸状のRO膜2の両端部へ集水されて、透過水出口配管4から回収される。各中空糸状のRO膜2の内部へ透過しなかった濃縮水はブライン出口配管5からベッセル6の外へ排出される。
【0032】
海水淡水化処理を行った後のRO膜2の少なくとも一次面には、海水に含まれる金属イオンを含む金属系スケールや有機物を含む有機系スケールが付着している。一次面だけでなく、RO膜2の内部及び二次面にも同様のスケールが付着している場合もある。一般的に、一次面に付着するスケールの量はRO膜2の内部及び二次面に付着するスケールよりも多い。
【0033】
以下、本発明の洗浄方法の実施形態について、図1のRO膜モジュール1に備えられたRO膜2を洗浄する場合を一例として説明する。
【0034】
従来、例えば15℃〜25℃の海水温と同程度の温度の洗浄液が使用されている。
一方、本発明の逆浸透膜洗浄方法の第一実施形態においては、45℃超60℃以下の洗浄水を使用してRO膜2を洗浄する。
本実施形態の洗浄水は従来よりも高温であるので、スケールをRO膜2から剥離させたり、溶出させたりする洗浄力が高い。この高温の洗浄水をRO膜2に接触させることにより従来よりも優れた洗浄効果が得られる。
【0035】
従来の洗浄液には、洗浄力を高める目的で次亜塩素酸や過酸化水素などの酸化剤が含まれていることが一般的である。
一方、本実施形態の洗浄水には、次亜塩素酸や過酸化水素等のラジカルを発生し易い酸化剤は含まれないことが望ましい。洗浄水が酸化剤を含み且つ高温であると、RO膜2の酸化劣化を著しく促進してしまうからである。
【0036】
ただし、極めて低濃度であれば、本実施形態の洗浄水に次亜塩素酸や過酸化水素等の酸化剤を含ませてもよい。具体的な含有濃度としては、例えば、好適には0.001〜1.0質量%、より好適には0.01〜0.1質量%である。ここで、酸化剤を含む洗浄水の全質量が100質量%である。
【0037】
前記酸化剤としては、例えば、過酸化水素、過炭酸塩、過硫酸塩、次亜塩素酸塩、過マンガン酸塩、二酸化塩素、オゾンが挙げられる。ここで、各塩を構成するカチオンは特に限定されず、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ベリリウム、アンモニウムなどの無機カチオンが挙げられる。より具体的には、例えば、過炭酸ナトリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、次亜塩素酸ナトリウム、過マンガン酸カリウムが酸化剤として好適な塩として挙げられる。前記洗浄水には、ここで例示した複数の酸化剤からなる群から選択される何れか1種以上の酸化剤が含まれていてもよい。
【0038】
本実施形態において、淡水又は海水を45℃超60℃以下の温度に加温した洗浄水を使用することにより、RO膜2の劣化を抑制しつつ充分な洗浄力を得ることができる。洗浄水の温度は、加温に要するエネルギーを節約する観点、RO膜の物性変化を予防する観点などから、45℃超55℃以下が好ましく、48℃以上55℃以下がより好ましく、50℃以上54℃以下がさらに好ましい。
洗浄水が45℃超の範囲において高い温度である程、酸化剤を使用せずとも充分な洗浄力が得られる。一方、洗浄水が60℃以下の範囲であると、RO膜2の劣化を実用上受け入れられる程度に抑制することができる。
【0039】
45℃超60℃以下の温度に加温した洗浄水とRO膜2とを接触させる時間、すなわち洗浄時間は、長くなるほど洗浄効果が得られる一方、長くなるほど膜劣化が進行する傾向がある。このため、洗浄時間は2〜12時間が好ましく、4〜10時間がより好ましく、4〜8時間がさらに好ましい。
【0040】
45℃超60℃以下の温度に加温した洗浄水のpHは、高くなるほど洗浄効果が得られる一方、高くなるほど膜劣化が進行する傾向がある。このため、洗浄水のpHは、pH3.5〜5.5が好ましく、pH4.0〜5.5がより好ましく、pH4.0〜5.0がさらに好ましい。
pHを調整する方法は特に限定されず、例えば、塩酸や硫酸等の無機酸、水酸化ナトリウムや水酸化マグネシウム等のアルカリ水溶液を添加する方法が挙げられる。
【0041】
45℃超60℃以下の温度に加温した洗浄水には、有機酸を含ませてもよい。有機酸は前述した酸化剤よりも膜劣化の原因になり難く、洗浄効果を高めることができる。
【0042】
好適な有機酸として、例えば、クエン酸、ホスホン酸、グリコール酸(ヒドロキシ酸)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ギ酸、シュウ酸等が挙げられる。本実施形態の洗浄水には、ここで例示した複数の有機酸からなる群から選択される1種以上の有機酸が含まれていてもよい。有機酸は、アンモニウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム等のカウンターカチオンを有する有機酸塩として含まれていてもよい。なお、有機酸又は有機酸塩を含む洗浄水を洗浄液と呼ぶこともできる。
【0043】
有機酸がRO膜2に付着したスケールを溶出させるメカニズムの一つとして、スケールに含まれる金属イオンと有機酸とがキレート結合することにより洗浄水中に溶解することが考えられる。
【0044】
本実施形態の洗浄水に含まれる有機酸の濃度は特に限定されず、膜劣化をより充分に抑制できる範囲で、使用する有機酸の種類によって適宜設定できる。上記で例示した好適な有機酸の濃度範囲は、例えば、0.001〜5.0質量%(0.01〜50g/L)が好ましく、0.01〜3.0質量%(0.1〜30g/L)がより好ましく、0.02〜2.0質量%(0.2〜20g/L)がさらに好ましい。ここで、有機酸を含む洗浄水の全質量が100質量%である。
上記範囲の下限値以上であると、有機酸による洗浄効果が十分に得られる。
上記範囲の上限値以下であると、有機酸による膜劣化を充分に抑制することができる。
【0045】
本実施形態の洗浄水に含まれる有機酸は、洗浄効果を高め、膜劣化を充分に抑制する観点から、クエン酸であることが好ましい。クエン酸はカウンターカチオンと対になるクエン酸塩の形態で含まれていてもよい。カウンターカチオンは特に限定されず、例えば、アンモニウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム等のカチオンが挙げられる。
【0046】
一例として、洗浄水にクエン酸を所定量加えた後、アンモニアを滴下することにより、例えばpH3.0〜5.5に調整したクエン酸及びクエン酸アンモニウム塩を含む洗浄水を得ることができる。
【0047】
本実施形態の洗浄水にクエン酸及びクエン酸塩の少なくとも一方が含まれる場合、クエン酸濃度として、2.0〜22g/Lの範囲で含まれることが好ましい。
クエン酸を含む洗浄水1L当たりのクエン酸及びクエン酸塩の含有量は、クエン酸の質量に換算して、3.0〜22gが好ましく、5.0〜20gがより好ましく、7.0〜15gがさらに好ましい。この範囲を質量基準の%に変換すると、洗浄液100%に対して、クエン酸含有量は、0.3〜2.2%が好ましく、0.5〜2.0%がより好ましく、0.7〜1.5%がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、クエン酸による洗浄効果がより充分に得られる。
上記範囲の上限値以下であると、クエン酸による膜劣化をより充分に抑制することができる。
【0048】
上記のように調整された洗浄水をRO膜2の少なくとも一次面に接触させ、RO膜2に付着していたスケールを除去する。洗浄水はRO膜2の内部及び二次面にも接触することが好ましい。
【0049】
<洗浄の手順>
(洗浄工程)
本実施形態の洗浄方法の手順として、まず、ブライン出口配管5から濃縮水を排出し、供給配管3から洗浄水をベッセル6内に注入し、少なくとも一次面を洗浄水に浸漬した状態で保持する。順方向で洗浄水を透過させることにより、スケールの付着量が多い一次面に対して、スケールからの溶出物を含まないフレッシュな洗浄水を供給することができる。なお、洗浄水をベッセル6内に注入する場合は、RO膜2の一次面から二次面の順方向(ろ過方向へ)洗浄水を透過させてもよい。
【0050】
上記の順方向の洗浄に替えて、透過水出口配管4から洗浄水をベッセル6内に注入し、RO膜2の二次面から一次面の逆方向へ洗浄水を透過させる逆洗浄を行っても構わないが、有機酸が二次面側で消費されて又はRO膜2を透過できずに二次面にトラップされて、一次面に充分な量の有機酸が供給されず、順方向の場合と比べて洗浄効率が低下する可能性がある。逆方向で洗浄水を透過させる場合には、RO膜2を透過可能な有機酸を使用するか、或いは有機酸を含まない洗浄水を使用する。
【0051】
洗浄水を透過させた後、ベッセル6内のRO膜2の一次面側の空間に洗浄水が満たされた状態で保持することにより、少なくとも一次面を洗浄水に浸漬した状態で保持することができる。この状態において、少し加圧することにより、洗浄水の一部はRO膜2の内部を浸透して二次面に染みだす。この加圧により、RO膜2の内部及び二次面も一次面と同時に浸漬してもよい。或いは、透過水出口配管4から洗浄水をベッセル6内に注入して、集水側の膜内空間を満たすことによって、RO膜2の二次面を洗浄水に浸漬した状態で保持してもよい。
【0052】
RO膜2を洗浄水に浸漬した状態で保持する方法は特に限定されず、例えば、供給配管3から洗浄水を供給してベッセル6内のRO膜2の一次面側の空間を満たし、その後、洗浄水の供給を停止するともにベッセル6を密封して、洗浄水の流通を停止してもよい。
或いは、ベッセル6内のRO膜2の一次面側の空間を洗浄水で満たした後も、洗浄水を供給し続けるとともに、供給量と同量の洗浄水をブライン出口配管5から排出することによって、洗浄水を流通させながら、RO膜2を洗浄水に浸漬した状態を保持してもよい。
【0053】
本実施形態の洗浄方法においては、洗浄水を流通させながら洗浄した方が、洗浄効果が高まるので好ましい。さらに、後述するように、洗浄水を循環させながら加温することにより、洗浄水の温度を所定温度に維持することが容易になり、洗浄効果を安定して得られるので好ましい。
【0054】
RO膜2の一次面及び二次面の少なくとも一方、好ましくは両方を流通する洗浄水に浸漬した(曝した)状態で保持することにより、一次面及び二次面に付着したスケールを充分に溶出させて、その除去効率をさらに向上させることができる。
【0055】
浸漬した状態で保持する時間は、前述した洗浄時間の範囲内であることが好ましい。
また、洗浄後に排出された洗浄水の排液について、濁度、溶出されたスケールの濃度、TOC(Total Organic Carbon)、COD(Chemical Oxygen Demand)等を公知方法で計測することにより、洗浄終了の目安時間を設定してもよい。
【0056】
溶出されたスケールは洗浄水とともにベッセル6外へ排出される。洗浄水を排出する排出口は特に限定されず、RO膜2のファウリングを防止する観点から、ブライン出口配管5又は供給配管3から排出することが好ましい。
【0057】
1回目の洗浄後に許容されない程度のスケールが残留している場合には、上述の洗浄手順を2回以上繰り返して行うことにより、許容される程度まで洗浄してもよい。
【0058】
以上で説明した洗浄水には、必要に応じて、洗浄を促進する界面活性剤、pH調整剤等の公知の薬剤を添加してもよい。
【0059】
(リンス工程)
洗浄水が有機酸等の薬剤を含む場合、洗浄後のRO膜にこれらの薬剤が残留することを防ぐ目的で、洗浄工程の後で、薬剤を含まない海水又は淡水等のリンス液でRO膜2を濯ぐリンス工程を行うことが好ましい。
【0060】
RO膜2を濯ぐ方法は特に限定されず、例えば、供給配管3から海水を供給してRO膜2の一次面に接触させて、RO膜2を海水に浸漬した状態を保持するとともに、ブライン出口配管5から連続的に排出する方法、透過水出口配管4から淡水を逆方向に注入してRO膜2のフラッシング(逆洗浄)を行う方法等が挙げられる。
【0061】
排出されたリンス液に含まれる薬剤の量を公知方法により測定し、リンス工程の終了の可否を判断することができる。リンス工程完了後、通常の操業を開始できる。
【0062】
<洗浄水の加温と循環>
本実施形態においては、洗浄水を所定温度に予め加温した後で、当該洗浄水をベッセル6内へ注入する。加温した洗浄水を供給する方法は特に限定されず、例えば、ボイラーに接続された熱交換器によって洗浄水を加温してからベッセル6内へ供給する方法、電気ヒーターによって洗浄水を加温してからベッセル6内へ供給する方法が挙げられる。
【0063】
ベッセル6内を流通し、RO膜2を洗浄した後に排出される洗浄水を、フィルターを通過させながら前記逆浸透膜に循環させることが好ましい。
RO膜2を洗浄した洗浄水に溶解されたゴミやスケールをフィルターで除去できるので、洗浄水を再利用することが可能であり、洗浄水の廃棄処理に要するコストを低減することができる。
【0064】
ベッセル6内を流通し、RO膜2を洗浄した後に排出される洗浄水は、まだ温かい状態にある。排出された洗浄水を回収し、別のフィルターで濾過して、洗浄水に溶出されたスケールを除去することにより、温かい状態の洗浄水を再生し、再び洗浄の目的でベッセル6内のRO膜2に供給することができる。
【0065】
したがって、本実施形態においては、上記の様に洗浄水を循環しながら加温することが好ましい。洗浄水を循環しながら加温することにより、加温に要するコストを低減することができる。また、洗浄水の調製に要するコスト及び洗浄水の廃棄処理に要するコストも低減することができる。さらに、所定温度の洗浄水をベッセル6内に安定に供給できるので、安定した洗浄効果が得られる。
【0066】
洗浄水を循環しながら加温する方法は特に限定されず、例えば、図2に例示する逆浸透膜洗浄装置10を使用する方法が挙げられる。以下に逆浸透膜洗浄装置10の構成について説明する。
【0067】
<逆浸透膜洗浄装置10>
図2に示す様に、本実施形態の逆浸透膜洗浄装置10は、RO膜モジュール1と、洗浄タンク11と、循環ポンプ12と、熱交換器(加熱部)13と、調節弁14と、温度センサ15と、フィルター16と、制御装置17と、を備える。
【0068】
洗浄タンク11は、RO膜モジュール1の排出口と循環ポンプ12の間に設けられ、逆浸透膜洗浄装置10の流路を循環する洗浄水を一時的に貯留する。
循環ポンプ12は、洗浄タンク11と熱交換器13及び調節弁14との間に設けられ、洗浄タンク11に貯留された洗浄水を、熱交換器13又は調節弁14を介して、フィルター16及びRO膜モジュール1に供給し、RO膜モジュール1から排出された洗浄水を洗浄タンク11まで送液する。
なお、循環ポンプ12は図示略のポンプ制御装置によってポンプ駆動の運転及び停止が制御されていてもよい。ポンプ制御装置の制御下において、所定時間(例えば12時間以下)の運転後に循環ポンプ12を停止し、洗浄処理を終えることにより、洗浄が不用意に長引いて逆浸透膜が劣化することを防止できる。
【0069】
熱交換器13は、加熱部の一例であり、循環ポンプ12とフィルター16の間に設けられ、洗浄水と別途準備された高温水との間で物理的な熱伝導を介した熱交換を行い、洗浄水を加温(加熱)する。
なお、加熱部は熱交換器に限定されず、洗浄水を加熱可能な種々の機器が適用される。
【0070】
調節弁14は、循環ポンプ12とフィルター16の間に設けられている。調節弁14は、熱交換器13を通過して加温された後でフィルター16及びRO膜モジュール1へ供給される洗浄水の流量Aと、熱交換器13を迂回してフィルター16及びRO膜モジュール1へ供給される洗浄水の流量Bと、の分配割合を調節する。具体的には、調節弁14の弁開度が小さくなるように制御された場合は、上記流量Aが増加し、相対的に上記流量Bが減少する。一方、調節弁14の弁開度が大きくなるように制御された場合は、上記流量Aが減少し、相対的に上記流量Bが増加する。
【0071】
温度センサ15は、熱交換器13を通過した洗浄水と熱交換器13を迂回した洗浄水とが混合されて得られた、フィルター16及びRO膜モジュール1に供給される前、もしくは、RO膜モジュール1に供給される前の洗浄水の温度を検出する。温度センサ15は、検出した温度を制御部18に入力する。
フィルター16は、熱交換器13及び調節弁14とRO膜モジュール1との間に設けられ、RO膜モジュール1に供給される直前の洗浄水に含まれるゴミやスケールを濾過により除去する。
【0072】
制御装置17は、制御部18を備える。制御装置17の処理により、制御部18は以下の制御を行う。
制御部18は、RO膜モジュール1に供給される洗浄水の温度が所望の温度となるように逆浸透膜洗浄装置10の各機能部を制御する。例えば、制御部18は、調節弁14の弁開度を制御し、前記流量Aと流量Bの分配割合を調節することにより、循環する洗浄水の温度調整を行う。具体的には、制御部18は、温度センサ15が検出する洗浄水の温度が所望の温度よりも低い場合に、熱交換器13を通過して加温される洗浄水の流量Aの割合を増やす制御を行う。また、制御部18は、温度センサ15が検出する洗浄水の温度が所望の温度よりも高い場合に、熱交換器13を迂回する洗浄水の流量Bの割合を増やす制御を行う。
【0073】
前記流量Aの割合が増えると、熱交換器13から循環する洗浄水に供給される熱量が増加するので、循環する洗浄水の温度は徐々に上がる。
前記流量Bの割合が増えると、循環する間に洗浄水から自然に熱が放熱されるので、循環する洗浄水の温度は自然に徐々に下がる。
循環する洗浄水の温度変化は、温度センサ15によって検知され、制御部18へ入力される。
【0074】
上記のように制御しながら、循環ポンプ12により洗浄タンク11内の洗浄水を、熱交換器13を有する第一流路又は調節弁14を有する第二流路を介して、フィルター16及びRO膜モジュール1に供給し、RO膜モジュール1に備えられたRO膜2を洗浄した洗浄水を洗浄タンク11へ回収する。この結果、再利用される洗浄水を加温しながら循環させることができる。
【0075】
逆浸透膜洗浄装置10には、温水発生装置19と、温水ポンプ20と、三方弁21と、が任意の構成として備えられていてもよい。
温水発生装置19は、熱交換器13に供給する高温水を発生する熱源機器であり、例えばボイラーや電気ヒーターが挙げられる。図2の矢印Gはボイラーから排気されるガスを表す。
温水ポンプ20は、熱交換器13と温水発生装置19の間に設けられ、温水発生装置19で発生した高温水を三方弁21へ送液する。
3つの弁を有する三方弁21は、温水発生装置19と熱交換器13及び温水ポンプ20との間に設けられている。3つの弁のうちの1つは、熱交換器13に接続されている。3つの弁のうちの別の1つは、温水発生装置19に接続されている。3つの弁のうちの別の1つは、温水ポンプ20に接続されている。
【0076】
逆浸透膜洗浄装置10において、制御部18は、RO膜モジュール1に供給される洗浄水の温度が所望の温度となるように、温水発生装置19、温水ポンプ20及び三方弁21のうち少なくとも何れか1つの機能部を制御してもよい。例えば、制御部18は、三方弁21の各弁の開閉を制御し、熱交換器13が多くの熱を必要とする場合には、熱交換器13に送液される高温水の流量を増やす。一方、熱交換器13が多くの熱を必要としない場合には、熱交換器13を迂回して温水ポンプ20に直接送液される高温水の流量を増やす。具体的には、制御部18は、温度センサ15が検出する洗浄水の温度が所望の温度よりも低い場合、熱交換器13に送液される高温水の流量を増やす制御を行う。また、制御部18は、温度センサ15が検出する洗浄水の温度が所望の温度よりも高い場合、熱交換器13を迂回して温水ポンプ20に送液される高温水の流量を増やす制御を行う。このように制御することにより、熱交換器13に供給される熱量を調節し、熱交換器13から洗浄水に供給される熱量を調節し、循環する洗浄水の温度調整を行う。
なお、制御部18は、必要に応じて、温水発生装置19及び温水ポンプ20の運転と停止を制御してもよい。
【0077】
以上、本発明の逆浸透膜洗浄方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であり、また上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【実施例】
【0078】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0079】
海水淡水化処理プラントで使用され、35,000時間以上の運転履歴を経た、三酢酸セルロース製のRO膜を図1に示す試験用のRO膜モジュール1に設置して、以下の様に洗浄した。
【0080】
各実施例において使用した洗浄前後のRO膜2について、それぞれ水透過係数(A-value)および塩透過係数(B-value)を常法により測定した。
水透過係数の増加率が高い程、洗浄効果が高いことを示す。一方、塩透過係数の増加率が高い程、RO膜2の劣化が進んだことを示す。
水透過係数(A-value)はA値とも呼ばれ、RO膜やNF膜における液体の透過性能を表す係数であり、一般に、溶液(体積)透過流速Jv=A値×(膜間差圧△P−浸透圧差△π)の関係式で表される。
塩透過係数(B-value)はB値とも呼ばれ、RO膜やNF膜における溶質の透過性を表す係数であり、一般に、溶質透過流束Js=B値×(膜面の溶質濃度Cm−透過水の溶質濃度Cp)の関係式で表される。
【0081】
[実施例1]
45℃、48℃、50℃、54℃の温水を洗浄水として使用し、RO膜2の一次面を洗浄した。この際、洗浄水を供給配管3からベッセル6内に連続的に供給し、RO膜2を洗浄した後の排液を連続的にブライン出口配管5から排出することにより、所定温度に保たれた洗浄水で循環洗浄を4時間行った。洗浄水のpHは約6であった。弱酸性のpH6である理由は、循環に伴って空気と接触し、空気中の二酸化炭素が洗浄水に溶け込んだためと考えられる。
【0082】
洗浄水による循環洗浄の結果、図3に示す様に、洗浄水の温度が高くなる程、水透過係数(A-value)の増加率が向上し、洗浄効果が向上することが分かった。その一方で、洗浄水の温度が高くなる程、塩透過係数(B-value)の増加率も増加し、RO膜の劣化が進むことが分かった。つまり、RO膜の劣化を抑えることと洗浄効果を高めることはトレードオフの関係にあることが分かった。
上記結果から、トレードオフの関係を考慮して、洗浄水の温度は45℃超60℃以下が好ましく、48℃以上55℃以下がより好ましく、50℃以上54℃以下がさらに好ましい、といえる。
【0083】
[実施例2]
54℃に設定した洗浄水で循環洗浄した時間を4時間(実施例1)から8時間(実施例2)に増やした以外は、実施例1と同様にRO膜2を洗浄した。
その結果、図4に示す様に、洗浄時間が長い程、水透過係数(A-value)の増加率が向上し、洗浄効果が向上することが分かった。その一方で、洗浄時間が長くなる程、塩透過係数(B-value)の増加率も増加し、RO膜の劣化が進むことが分かった。つまり、RO膜の劣化を抑えることと洗浄効果を高めることはトレードオフの関係にあることが分かった。
上記結果から、トレードオフの関係を考慮して、洗浄水による洗浄時間は2〜12時間が好ましく、4〜10時間がより好ましく、4〜8時間がさらに好ましい、といえる。
【0084】
[実施例3]
pH6、pH5、pH4に調整した54℃の洗浄水を使用して、8時間の循環洗浄を実施例2と同様に行った。
pH6の洗浄水は実施例1と同じ54℃の温水である。pH5の洗浄水は、温水に塩酸を滴下して調製された。pH4の洗浄水は、0.2g/L(0.02質量%)のクエン酸を含む温水にアンモニアを滴下して調製された。
その結果、図5に示す様に、pH5〜6は同等で、pH4は比較的低い水透過係数(A-value)の増加率を示した。一方、pHが低くなる程、塩透過係数(B-value)の増加率は低下し、RO膜の劣化を抑制できることが分かった。本実施例においても、RO膜の劣化を抑えることと洗浄効果を高めることはトレードオフの関係にあることが分かった。
上記結果から、トレードオフの関係を考慮して、洗浄水が45℃超60℃以下である場合、洗浄水のpHは、pH3.5〜5.5が好ましく、pH4.0〜5.5がより好ましく、pH4.0〜5.0がさらに好ましい、といえる。
【0085】
[実施例4]
クエン酸を0.02、0.2、0.5、1.0、2.0(単位:%(質量基準))の濃度で含み、アンモニアを滴下してpH4に調整された54℃の洗浄水を使用して、8時間の循環洗浄を実施例2と同様に行った。ここで、各洗浄水に含まれるクエン酸の質量は、洗浄水1L当たりそれぞれ、0.2g、2.0g、5.0g、10g、20gである。
その結果、図6に示す様に、0.02〜0.5%は同等で、1.0%はより低く、2.0%はさらに低い水透過係数(A-value)の増加率を示した。一方、0.5%以上のクエン酸濃度において、塩透過係数(B-value)の増加率が低下し、RO膜の劣化を抑制できることが分かった。本実施例においても、RO膜の劣化を抑えることと洗浄効果を高めることは概ねトレードオフの関係にあることが分かったが、特にクエン酸濃度1.0%の場合において、洗浄効果を維持しつつ、膜劣化をより一層抑制できることが分かった。
上記結果から、洗浄水が45℃超60℃以下で且つpH3.5〜5.5である場合、クエン酸濃度は質量基準で、0.3〜2.2%が好ましく、0.5〜2.0%がより好ましく、0.7〜1.5%がさらに好ましい、といえる。すなわち、1L当たりの洗浄水に含まれるクエン酸及びクエン酸塩の質量は、クエン酸の質量に換算して、3.0〜22gが好ましく、5.0〜20gがより好ましく、7.0〜15gがさらに好ましい、といえる。
【0086】
[実施例5]
クエン酸を2.0(単位:%(質量基準))の濃度で含み、アンモニア滴下によりpH4に調整された50℃、54℃、60℃の各洗浄水を使用して、3時間の循環洗浄を実施例2と同様に行った。
その結果、図7に示す様に、50℃、54℃、60℃の順に、水透過係数(A-value)の増加率が高くなり、且つ、塩透過係数(B-value)を増大させる作用も軽微であるという結果が得られた。
【0087】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0088】
1…RO膜モジュール、2…RO膜、3…供給配管、4…透過水出口配管、5…ブライン出口配管、6…ベッセル、10…逆浸透膜洗浄装置、11…洗浄水タンク、12…循環ポンプ、13…熱交換器(加熱部)、14…調節弁、15…温度センサ、16…フィルター、17…制御装置、18…制御部、19…温水発生装置、20…温水ポンプ、21…三方弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7