(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6458359
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】ブロー成形容器の製造方法およびブロー成形容器
(51)【国際特許分類】
B29C 49/00 20060101AFI20190121BHJP
B29C 49/04 20060101ALI20190121BHJP
B29C 49/10 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
B29C49/00
B29C49/04
B29C49/10
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-113484(P2014-113484)
(22)【出願日】2014年5月30日
(65)【公開番号】特開2015-227012(P2015-227012A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2017年4月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】岩本 晋也
【審査官】
辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−004631(JP,A)
【文献】
特開昭55−005914(JP,A)
【文献】
特開昭61−255832(JP,A)
【文献】
特開平05−061230(JP,A)
【文献】
特開昭54−071166(JP,A)
【文献】
特開平02−117811(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/010534(WO,A1)
【文献】
特開2014−177541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C49/00−49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗面化用微粒子が分散された樹脂組成物を用いての溶融成形により、該樹脂組成物により内面が形成されたチューブ状のプリフォームを成形するプリフォーム成形工程、
前記プリフォームの容器の端部となる部分を固定しての引っ張りにより一軸方向延伸を行い、該プリフォームの容器口部に相当する部分が縮径された円錐形状の異形プリフォームを成形する一軸延伸成形工程、
及び、
前記異形プリフォームをブロー成形して容器の形態に賦形するブロー工程;
を含む粗面化された内面を有するブロー成形容器の製造方法。
【請求項2】
前記ブロー成形がダイレクトブロー成形である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記ブロー工程の後、容器内に収容される内容物に対して非混和性の滑り性向上液をコーティングする工程を行う請求項1または2に記載のブロー容器の製造方法。
【請求項4】
前記内面を形成する樹脂組成物に使用される樹脂成分がオレフィン系樹脂である請求項1〜3の何れかに記載のブロー容器の製造方法。
【請求項5】
前記粗面化用微粒子が1〜100μmの平均粒径を有している請求項1〜4の何れかに記載のブロー容器の製造方法。
【請求項6】
前記粗面化用微粒子が、前記樹脂組成物中の樹脂成分100質量部当り0.3〜20質量部の量で分散されている請求項5に記載のブロー容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケチャップやマヨネーズに代表される粘稠な内容物の収容に適したブロー容器、特にはダイレクトブロー成形容器に関するものであり、より詳細には、内面が粗面化されたダイレクトブロー容器を製造する方法および内面が粗面化されたダイレクトブロー容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチック容器は、成形が容易であり、安価に製造できることなどから、各種の用途に広く使用されている。特に、容器壁の内面が低密度ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂で形成され且つダイレクトブロー成形で成形されたボトル形状のオレフィン系樹脂容器は、内容物を絞り出し易いという観点から、ケチャップなどの粘稠なスラリー状或いはペースト状の内容物を収容するための容器として好適に使用されている。
【0003】
また、粘稠な内容物を収容するボトルでは、該内容物を速やかに排出するため、或いはボトル内に残存させることなくきれいに最後まで使いきるために、ボトルを倒立状態で保存しておかれる場合が多い。従って、ボトルを倒立させたときには、粘稠な内容物がボトル内壁面に付着残存せずに、速やかに落下するという特性が望まれている。
【0004】
このような要求を満足させるために、従来は、ボトルの内面を形成する樹脂に滑剤を配合するなどの手段により対処していたが、このような手段では滑り性向上に限界があり、飛躍的な向上は達成されていないのが実情である。
【0005】
このような観点から、最近では、滑り性を飛躍的に向上させる手段として、容器の内面に液膜を形成するという手段が提案されている(特許文献1〜3参照)。
即ち、容器内面に液膜を形成しておくと、容器内容物は液−液接触で容器内面上を滑り落ちることとなるから、内容物に応じて液膜を形成する液体を適宜のものに選択することにより、粘稠な内容物に対しても著しく高い滑落性を確保することができ、その排出性を飛躍的に高めることができるというものである。
【0006】
ところで、上記のような液膜の形成により内容物に対する滑落性を高める場合、その液膜が容器内面から脱落しないように安定に保持することが重要な問題となるが、前述した特許文献1〜3にも記載されているように、容器内面を微細な凹凸が形成されている粗面とするという手段が採用されている。
容器内面をこのような粗面とする手段としては、例えば特許文献3には、容器内面を形成する樹脂にシリカ等の微細粒子を配合して容器への成形を行うという手段が開示されている。かかる手段は、特別な成形型を用いたり、粗面加工等の処理を行う必要がなく、工業的実施に極めて有利である。
【0007】
しかしながら、容器内面を形成する樹脂に微細粒子を配合することにより、容器内面を粗面とするという手段では、粗さにバラつきを生じ易く、特に、容器の肩部内面が、胴部内面に比して粗さの度合いが低くなり、かかる部分で液膜の脱落が生じ易くなり、その改善が必要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2012/100099
【特許文献2】WO2013/022467
【特許文献3】WO2014/010534
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、特に粘稠な内容物の収容に好適に適用されるダイレクトブロー容器について、容器内面に液膜の安定保持に必要な粗面を容器内面の全体にわたって均質に形成することが可能な製造方法、および容器内面に液膜の安定保持に必要な粗面を容器内面の全体にわたって均質に形成された容器を提供することにある。
本発明の他の目的は、容器内面の全体にわたって液膜が安定に保持されたダイレクトブロー容器を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、粗面化用微粒子が分散された樹脂組成物を用いての溶融成形により、該樹脂組成物により内面が形成された
チューブ状のプリフォームを成形するプリフォーム成形工程、
前記プリフォームの
容器の端部となる部分を固定しての引っ張りにより一軸方向延伸を行い、該プリフォームの
容器口部に相当する部分が縮径された円錐形状の異形プリフォームを成形する一軸延伸成形工程、
及び、
前記異形プリフォームをブロー成形して容器の形態に賦形するブロー工程;
を含む粗面化された内面を有するブロー成形容器の製造方法が提供される。
【0011】
本発明の製造方法においては、
(1)前記ブロー成形がダイレクトブロー成形であること、
(2)前記ブロー工程の後、容器内に収容される内容物に対して非混和性の滑り性向上液をコーティングする工程を行うこと、
(3)前記内面を形成する樹脂組成物に使用される樹脂成分がオレフィン系樹脂であること、
(4)前記粗面化用微粒子が1〜100μmの平均粒径を有していること、
(5)前記粗面化用微粒子が、前記樹脂組成物中の樹脂成分100質量部当り0.3〜20質量部の量で分散されていること、
が好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、粗面化用微粒子が配合された樹脂組成物を用いてのブロー成形により容器を成形する。例えば、通常のダイレクトブロー成形では、押出成形によりチューブ状のパリソンを成形した後、ブロー流体を吹き込んでのブロー成形により容器が製造される。また、通常のインジェクションブロー成形においては、射出成形により口部が形成された試験管状またはお椀状のプリフォームを成形した後、ブロー流体を吹き込んでのブロー成形が行われる。
本発明では、一旦、プリフォームを一軸延伸し、プリフォームの一部分が縮径された形状の異形プリフォームを成形し、この異形プリフォームをブロー成形することにより容器を製造するという手段が採用される。
【0014】
特に、ダイレクトブロー成形を例にして詳しく説明すると、通常のダイレクトブロー成形により、粗面化された内面を有する容器を成形する場合、容器内面の位置によって延伸の度合いが異なるため、結果として、粗面化の度合いにバラつきが生じてしまう。例えば、容器の肩部は、低延伸部分であり、その肉厚は厚く、一方、胴部は、高延伸部分であり、その肉厚は最も薄い。従って、粗面化用の微粒子が配合された樹脂組成物を用いて容器内面が形成されるように成形を行った場合、容器の胴部では、薄肉化により微粒子の形状を表面に反映され、所望の粗面が内面に形成されるが、肩部は、胴部に比して厚肉であるため、微粒子の形状が表面に反映されにくく、この結果、容器の肩部では、内面の粗面化の度合いが胴部に比して低くなってしまう。
これに対して、本発明にしたがい、一旦、異形プリフォームを成形した後でのブロー成形により容器形状に賦形した場合には、延伸が均等化するため、例えば、容器の肩部と胴部との厚み差が緩和され、この結果、容器の内面全体にわたって、均質な粗面が形成され、粗面化の度合いのバラつきを有効に回避することが可能となる。
【0015】
このように、本発明では、容器の内面全体にわたって、均質な粗面を形成できるため、スプレーコーティング等により液体をコーティングしたとき、容器の内面全体にわたってムラなく液膜を安定に形成することができ、該液膜による内容物に対する滑落性を有効に発揮させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】本発明方法によって製造されるブロー成形容器の形態の一例を示す図。
【
図3】従来公知のダイレクトブロー成形によって容器を形成した場合、チューブ状パリソンと容器との大きさの関係を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<粗面化の原理>
本発明の製造方法を説明するに先立って、粗面化用の微粒子を用いてのダイレクトブロー成形による粗面化の原理を説明しておく。
【0018】
図1を参照して、粗面化用の微粒子が配合された樹脂組成物を用いての溶融押出成形により、チューブ状のパリソンを形成すると、パリソン壁1の内部には、微粒子3が分散しており、この状態では、微粒子3の形状は、壁面に反映されず、従って、パリソン壁1の表面は平滑な面となっている。
このような構造のチューブ状パリソンをブロー成形に供して容器の形態に賦形すると、ブロー成形による延伸によって、パリソン壁1が薄肉化され、得られる容器壁5は、ブロー(延伸)の度合いに応じて薄肉化されることとなる。このようなブロー成形(延伸成形)による薄肉化によって、微粒子3の形状が表面に反映され、容器壁5の内面側が粗面となる。即ち、このような内面に所望の液体がコーティングされて滑性を高めるための液膜が形成されることとなる。
尚、
図1に示されているように、外面側が粗面化されず、平滑面となっているのは、外面側は、容器形状に賦形するためのブロー型に接触して冷却されるため、ブロー型の型面が転写されるからである。
【0019】
上記の説明から理解されるように、粗面化用の微粒子3が配合されている樹脂組成物を用いてのダイレクトブロー成形により容器の内面を粗面化する場合、ブロー成形(延伸)による薄肉化の度合いが粗面化の程度に大きく影響することとなる。即ち、薄肉化の度合いが大きい場合、具体的には、パリソンの大きさに対する容器の大きさの比率が大きい場合には、微粒子3の形状が容器内面に大きく反映されて粗面化の度合いが大きくなる。また、薄肉化の度合いが小さい場合、具体的には、パリソンの大きさに対する容器の大きさの比率が小さい場合には、微粒子3の形状が容器内面にあまり反映されず、粗面化の度合いは小さくなる。
【0020】
ところで、ダイレクトブロー成形により成形される容器は、
図2に示されるように、ボトルの形態を有しており、このボトル10は、螺条を備えた首部11、肩部13を介して首部11に連なる胴部15及び胴部15の下端を閉じている底部17を有している。
かかるボトル10は、内容物を充填した後、首部11の上端開口部にアルミ箔等の金属箔19をヒートシールにより施し、所定のキャップ20を装着することにより、包装ボトルとして使用に供される。かかる包装ボトルでは、キャップ20を開封し、シール材が塗布された金属箔19を引き剥がし、ボトル10を傾倒乃至倒立させることにより、必要により胴部壁15をスクイズすることにより容器内容物の取り出しが行われる。
【0021】
上記のようなボトル10は、
図3に示されているように、チューブ状のパリソン30の一方側端部(ボトル10の底部に相当する側)をピンチオフし、この状態でブロー流体を吹き込んでのブロー成形により得られることとなる。
ここで、
図3に示されているボトル10とパリソン30との形態から理解されるように、ボトル10の胴部15は、ブローにより大きく膨張しており、薄肉化の度合いが大きいが、肩部13は、胴部15と比較すると膨張の度合いが小さく、薄肉化の度合いは小さい。
従って、粗面化用の微粒子3が配合された樹脂組成物を用いてのダイレクトブロー成形では、粗面化にバラつきが生じてしまい、胴部15では粗面化の度合いが液膜の保持に適していたとしても、肩部13では、粗面化の度合いが小さく、液膜の保持には不適切となってしまう。この場合、微粒子3の配合量を多くして、肩部13でも適度な粗面化がなされるように調整すると、胴部15では、さらに粗面化の度合いが大きくなってしまい、このため、液膜を形成するための液量が多くなってしまうなどの不都合を生じ、やはり肩部13の部分での液膜の安定性と胴部15での液膜の安定性に差が出てしまう。
【0022】
本発明の製造法は、上記のような容器内面での粗面化のバラつきを有効に抑制し、胴部15や肩部13での液膜の安定性を同程度とし、液膜による内容物に対する滑性をバラつきなく発現するものである。
【0023】
<ダイレクトブロー容器の製造>
図4を参照して、本発明によるダイレクトブロー容器の製造方法では、粗面化用の微粒子が配合された樹脂組成物を用いての押出成形により、該樹脂組成物により内面が形成されたチューブ形状のパリソン40を成形する(
図4(a))。
かかるパリソン40の厚みは、目的とする容器の大きさや用途等によっても大きく異なるが、一般的には、500〜5000μm程度である。
【0024】
上記の微粒子が配合される樹脂としては、容器の形態への成形が可能な熱可塑性プラスチック、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸に代表されるポリエステルやオレフィン系樹脂などを例示することができ、特に滑り性の向上が要求される粘稠な流動性内容物が充填される容器、例えばダイレクトブロー容器の成形に好適に使用されるという観点から、オレフィン系樹脂、特に、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、中或いは高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンなどにより形成される。勿論、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同志のランダムあるいはブロック共重合体等も好適であり、さらに、特開2007−284066号等に開示されている環状オレフィン共重合体であってもよい。
【0025】
上記の樹脂に配合される粗面化用微粒子としては、一般に、無機微粒子、例えば、シリカ、アルミナ、チタン酸化物などの金属酸化物の微粒子が使用されるが、有機の微粒子、例えば、多官能アクリルモノマーを重合硬化して得られる有機微粒子(例えば架橋ポリメタクリル酸メチル等)、なども使用することができる。
また、無機微粒子は、吸湿などを回避するために、疎水化処理されていることが好ましい。このような疎水化処理は、シラン化合物、シロキサン化合物、シラザン化合物、チタンアルコキシド化合物などの疎水化剤を用い、カップリングアルキル基、アルキルシリル基、フルオロアルキル基、フルオロアルキルシリル基などの疎水性官能基により無機微粒子表面を修飾することや、無機微粒子と脂肪酸などの疎水性物質を(加熱)混合し、無機微粒子表面を被覆することなどにより行われる。
【0026】
本発明において、上述した粗面化用微粒子は、最終的に得られる容器の内面の最大粗さRzが4〜10μmの範囲となるように、一般に、レーザ回折散乱法で測定される平均粒径(D
50)が1〜100μm、特には2〜50μm、格段には2〜20μmの範囲にあることが好適である。この粒子径が小さ過ぎると、粗面化を有効に行うには、その使用量が多量となり、分散ムラなどにより、粗面化の程度にバラつきが生じ易くなる傾向があり、また、容器の内面の最大表面粗さを上記範囲に調整することが困難となってしまう。さらに、粒子径が大き過ぎると、粗面化というよりも、クラックの発生や成形不良などを生じてしまうおそれがある。
さらに、かかる粗面化用微粒子は、通常、上記の樹脂100質量部当り、0.3〜20質量部、特に1〜10質量部の量で使用することが好ましい。この量が少な過ぎると、粗面化を有効に行うことが困難となり、例えば、容器の内面の最大表面粗さを上記範囲に調整することが困難となってしまい、また、多すぎると、成形が困難となってしまう。
【0027】
粗面化用微粒子の上記樹脂への配合は、押出機中の混練部に樹脂及び粗面化用微粒子を投入しての溶融混練により容易に行われる。
この際、粗面化に影響を与えない限りにおいて、この樹脂組成物に公知の添加剤を配合してもよいことは勿論である。
【0028】
また、ダイレクトブロー成形におけるパリソン40の成形は、粗面化用の微粒子が配合された樹脂組成物を溶融押出しすることにより行われるが、該樹脂組成物により内面が形成される限り、他の樹脂との共押出成形により、多層構造とすることもできる。このようなパリソン40の層構造は、目的とする容器の層構造に対応するものであり、例えば、エチレンビニルアルコール共重合体などのガスバリア性樹脂の層が接着剤樹脂の層を介して中間層として設けられた多層構造とすることもできるし、パリソン40の成形の際に発生するバリ等のスクラップをバージンの樹脂に混合されたリグラインドの層を中間層と設けることも可能である。
【0029】
図4(a)から理解されるように、このパリソン40は、ストレートなチューブ形状を有するものであるが、本発明では、このパリソン40を直ちにブロー成形に付するのではなく、一旦、軸方向(高さ方向)に引っ張って一軸延伸し(
図4(b)参照)、この後にブロー成形が行われる(
図4(c)参照)。
【0030】
即ち、パリソン40の底部を治具で固定し、その上端を上方に引っ張ることにより、
図4(b)で示されているように、底部に比して上部の径が縮径した異形パリソン50を得る。この異形パリソン50の上端部分51は、
図2で示されている容器10の首部
(口部)11に相当するものであり、通常、この上端部51の外面には螺子が形成されている。
【0031】
上記のようにして成形された異形パリソン50は、その底部をピンチオフして閉塞し、
図4(c)に示されるように、エア等のブロー流体を供給してのブロー成形に供され、これにより、異形パリソン50の上端部分51の下方部分が膨張し、
図2に示されるような形状のダイレクトブロー容器60が得られる。
【0032】
このように、異形パリソン50を介してのブロー成形により得られる容器60では、異形パリソン50の上部が縮径された形状を有しているため、その肩部Aと胴部Bの膨張の程度、即ち延伸の程度(ブロー比)が近似したものとなる。即ち、前述した粗面化の原理の説明から理解されるように、このような肩部Aと胴部Bとは同程度に粗面化することとなり、その粗さのバラつきはなく、容器60の内面は、ブローされていない首部を除き、最大表面粗さRzが、前述した4〜10μmの範囲の粗面となる。
【0033】
尚、上記の製造プロセスにおいて、異形パリソン50を得るための一軸延伸及びブロー容器60を得るためのブロー成形は、それ自体公知の方法で、樹脂のガラス転移点(Tg)以上の温度で行われる。
また、一軸延伸の程度は、最終的に得られる容器60の大きさやチューブ状パリソン40の壁部の厚みによっても異なるが、一般的には、1.1〜3倍程度とするのがよく、このような延伸倍率で最終的に得られる容器60と同じ高さの異形パリソン50が得られるように、チューブ状パリソン40の長さが設定される。パリソン40の長さが必要以上に長いと、1軸方向の延伸倍率が小さくなり、この結果、最終的に得られる容器60の肩部Aと胴部Bとの延伸の程度が大きく異なったものとなってしまい、粗さのバラつきを防止するという本発明の目的を達成することが困難となってしまう。また、1軸方向の延伸倍率が大きすぎると、この段階で薄肉化が大きく進行してしまうため、次のブロー成形で成形不良などを生じ易くなってしまう。
さらに、容器60を形成するためのブロー成形では、一般に、所望の強度や柔軟性、可能性、スクイズ性等が発現し得るように、例えば胴部Bでの厚みが200〜800μm程度となるように、周方向延伸倍率が2〜4倍程度に設定される。
【0034】
上記のようにして得られた容器60の内面には、これに収容される内容物に応じて、適宜の液体をスプレーやディッピング等によりコーティングして液膜を形成し、次いで内容物を充填し、
図2に示されているように、シール箔19をヒートシールし、次いでキャップ20を装着して販売に供される。
【0035】
例えばこの、この容器60に収容される内容物としては、一般に、25℃での粘度が100mPa・s以上の粘稠な流動物が好適であり、本発明では、このような粘稠な流動物が容器内に充填されていた場合にも、所定の液体を適宜選択して液膜を形成することにより、該内容物の容器60の内壁面への付着を防止し、綺麗に排出させたり或いは最後まで使い切ることができる。即ち、容器内面に液膜を形成することにより、内容物である粘稠な内容物が液−液接触して排出されることとなり、容器内面に粘稠な内容物が接触しないため、容器60の内面に粘稠な内容物が付着することなく、速やかにきれいに排出することができる。
【0036】
このような粘稠な内容物は、乳化物、非乳化物の何れの形態を有するものであってよく、その具体例としては、マヨネーズ、ケチャップ、各種ソース類(ウスターソース、中濃ソースなど)、水性糊、蜂蜜、マヨネーズ、マスタード、ドレッシング、ジャム、チョコレートシロップ、乳液等の化粧液、液体洗剤、シャンプー、リンス等を挙げることができる。
【0037】
また、上記のような粘稠な内容物に対する滑り性を向上させるための滑り性向上液体としては、食用油または流動パラフィン(以下、これらを油性液体と呼ぶ)が好適である。これらの油性液体は、大気圧下での蒸気圧が小さい不揮発性の液体であり、且つ粘度が適度に高いため、容器60の内面から流れ落ち難いばかりか、容器60の内面を形成するオレフィン系樹脂に対する接触角が低く、容器60の内面に広がって均一な膜を形成し易く、さらには、水分を含む多くの粘稠な内容物に対して非混和性を示し、粘稠な内容物に対して高い滑り性を示すからである。
【0038】
尚、上記の油性液体の内、食用油としては、大豆油、菜種油、オリーブオイル、米油、コーン油、べに花油、ごま油、パーム油、ひまし油、アボガド油、ココナッツ油、アーモンド油、クルミ油、はしばみ油、サラダ油等を例示することができ、これらは、混合して使用することも可能である。また、食用油の種類によっては、内容物と混和してしまって膜が形成できなくなってしまうことがあるが、このような場合は、他の食用油或いは流動パラフィンの内から、内容物と混和しないものを選択して使用すればよい。
また、上述した油性液体は、2種以上を混合して油膜の形成に使用してもよいし、液膜による発現する滑り性等の特性に影響を与えない限りにおいて、界面滑性剤等の添加剤を適宜配合することもできる。
【0039】
本発明においては、上記のような油性液体から形成される液膜は、一般に、液量が5〜60g/m
2、特に5〜30g/m
2の範囲となるように形成される。即ち、液量が少ないと、十分な表面特性を付与することができず、一方、液量が過度に多いと、液の脱落などを生じ易くなり、液量の変動が大きくなり、安定した特性を確保することができなくなるおそれがあるからである。
特に本発明においては、前述したように異形パリソン50を介してのブロー成形により容器60が形成されているため、内面全体が最大表面粗さRzが4〜10μmの範囲内にある粗面に形成されており、肩部や胴部においてもバラつきなく安定に液膜が保持され、液膜による内容物に対する滑り性向上効果が安定に発揮される。
【符号の説明】
【0040】
1:パリソン壁
3:粗面化用の微粒子
40:チューブ状パリソン
50:異形パリソン
60:容器