特許第6458372号(P6458372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6458372マルチポイントダイヤモンドツール及びマルチポイントダイヤモンドツールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6458372
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】マルチポイントダイヤモンドツール及びマルチポイントダイヤモンドツールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28D 5/00 20060101AFI20190121BHJP
   C03B 33/10 20060101ALI20190121BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   B28D5/00 Z
   C03B33/10
   H01L21/78 G
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-133872(P2014-133872)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2016-10916(P2016-10916A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084364
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 宜喜
(72)【発明者】
【氏名】曽山 浩
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−207945(JP,A)
【文献】 特開2013−233793(JP,A)
【文献】 特開平03−043189(JP,A)
【文献】 実開昭56−078832(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 5/00
C03B 33/10
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脆性材料基板をスクライブするためのマルチポイントダイヤモンドツールであって、
回転対称で少なくとも外周の稜線部分がダイヤモンドで形成されたベースと、
前記ベースの稜線部分に形成された複数の切欠きと、前記切欠きの端部に更に形成された微小切欠きと、を具備し、前記稜線と前記微小切欠きの交点をポイントとしてスクライブを行うマルチポイントダイヤモンドツール。
【請求項2】
前記各切欠きは、前記ベースの外周上に等間隔で形成されたものである請求項1記載のマルチポイントダイヤモンドツール。
【請求項3】
前記ベースは、その稜線部分にダイヤモンド層が形成されたものである請求項1記載のマルチポイントダイヤモンドツール。
【請求項4】
前記各切欠きの両端部分に前記微小切欠きを有するものである請求項1記載のマルチポイントダイヤモンドツール。
【請求項5】
脆性材料基板をスクライブするためのマルチポイントダイヤモンドツールの製造方法であって、回転対称で少なくとも外周の稜線部分がダイヤモンドで形成されたベースに、複数の切欠きレーザ加工により形成し
前記複数の切欠きの端部に、更に微小切欠きを形成することを特徴とするマルチポイントダイヤモンドツールの製造方法
【請求項6】
記微小切欠き機械加工により形成することを特徴とする請求項4記載のマルチポイントダイヤモンドツールの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラス基板やシリコンウエハ等の脆性材料基板をダイヤモンドポイントによってスクライブするためのマルチポイントダイヤモンドツール及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来ガラス基板やシリコンウエハをスクライブするために、スクライビングホイールや単結晶ダイヤモンドによるダイヤモンドポイントを用いたツールが用いられている。ガラス基板に対しては、主に基板に対して転動させるスクライビングホイールが用いられてきたが、スクライブ後の基板の強度が向上するなどの利点より、固定刃であるダイヤモンドポイントの使用も検討されてきている。特許文献1,2にはサファイアウエハやアルミナウエハ等の硬度の高い基板をスクライブするためのポイントカッターが提案されている。これらの特許文献には、角錐の稜線上にカットポイントを設けたツールや、先端が円錐になったツールが用いられている。又特許文献3にはガラス板をスクライブするために円錐形の先端を有するガラススクライバを用いたスクライブ装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−183040号公報
【特許文献2】特開2005−079529号公報
【特許文献3】特開2013−043787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の固定刃であるツールでスクライブを進めていくとポイントが摩耗するため、ポイントを変更する必要がある。角錐形や円錐形のツールでは使用可能な頂点となるポイントは2箇所又は最大で4箇所である。従って2箇所又は4箇所のポイントを変更するとツールを交換する必要があり、交換頻度が高くなるという問題点があった。また、ツールによるスクライブにおいては、ポイントが基板に対して適切な角度で接触する必要がある。しかし、従来のツールでは、ポイントを変更する場合ツールを軸方向に回転させる必要があり、この接触角度を精度良く調整することが容易ではなかった。
【0005】
本発明はこのような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、スクライブに使用しているポイントが摩耗しても容易にポイント位置を変更して交換頻度を少なくすることができるダイヤモンドツールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために、本発明のマルチポイントダイヤモンドツールは、脆性材料基板をスクライブするためのマルチポイントダイヤモンドツールであって、回転対称で少なくとも外周の稜線部分がダイヤモンドで形成されたベースと、前記ベースの稜線部分に形成された複数の切欠きと、前記切欠きの端部に更に形成された微小切欠きと、を具備し、前記稜線と前記微小切欠きの交点をポイントとしてスクライブを行うものである。
【0007】
ここで前記各切欠きは、前記ベースの外周上に等間隔で形成されたものとしてもよい。
【0008】
ここで前記ベースは、その稜線部分にダイヤモンド層が形成されたものとしてもよい。
【0009】
ここで前記各切欠きの両端部分に前記微小切欠きを有するものとしてもよい。
【0010】
この課題を解決するために、本発明のマルチポイントダイヤモンドツールの製造方法は、脆性材料基板をスクライブするためのマルチポイントダイヤモンドツールの製造方法であって、回転対称で少なくとも外周の稜線部分がダイヤモンドで形成されたベースに、複数の切欠きをレーザ加工により形成し、前記複数の切欠きの端部に、更に微小切欠きを形成することを特徴とする
【0011】
ここで前記微小切欠き機械加工により形成することとしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
このような特徴を有する本発明によれば、ダイヤモンドツールの周囲に多数の切欠きを形成しておくことによって、多数のポイントを設けることができる。従って1つのポイントが摩耗してもダイヤモンドツールの固定角度を変化させることで新たなポイントを使用することができ、ダイヤモンドツールの交換頻度を少なくすることができるという効果が得られる。さらに、基板に対してツールの取付角度を一定としたままポイントを変更することができるため、ポイントの接触角度を容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は本発明の第1の実施の形態によるマルチポイントダイヤモンドツールの正面図及び側面図である。
図2図2は本実施の形態によるダイヤモンドツールの切欠きの第1の例を示す拡大図である。
図3図3は本実施の形態によるダイヤモンドツールの切欠きの第2の例を示す拡大図である。
図4A図4Aは本発明の第1の実施の形態によるダイヤモンドツールを用いたスクライブを示す正面図である。
図4B図4Bは本発明の第1の実施の形態によるダイヤモンドツールを用いたスクライブを示す側面図である。
図5図5は本発明の第2の実施の形態によるダイヤモンドツールの正面図、及びこのダイヤモンドツールを用いたスクライブを示す図である。
図6図6は本発明の第3の実施の形態によるダイヤモンドツールの正面図、及びこのダイヤモンドツールを用いたスクライブを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明の第1の実施の形態について説明する。図1は本実施の形態によるマルチポイントダイヤモンドツール(以下、単にダイヤモンドツールという)10の一例を示す正面図及び側面図である。このダイヤモンドツール10は回転対称形である円板のベース11を単結晶ダイヤモンドにより構成し、その中心に貫通孔12を有している。単結晶ダイヤモンドのベース11の直径は例えば2mm〜20mmである。図1(a)の側面図に示すように、円周部分の両側よりV字形に研磨して、稜線13aと傾斜面13b からなる刃先部13とする。そして図示のように刃先部13の6箇所にはレーザ加工により切欠き14〜19を形成する。図2は第1の例による切欠き14Aを示す拡大図である。図2に示すように実線と一点鎖線で示す元の円周部に対して図示のような切欠き14Aを形成し、稜線13aと切欠き14Aとが交わる部分をポイントP1とする。このポイントP1から例えば接線に対する角度αを約35°として例えば約5μmの深さまで切欠き、更にそこから元の接線に対して例えば3.5°の角度で切欠いて、切欠き14Aを形成する。その他の5つの切欠きについても同様であり、稜線13aと切欠き15A〜19Aの交点を夫々ポイントP2〜P6とする。
【0015】
図3は切欠き14の第2の例による切欠き14Bを示す拡大図である。この場合にはポイントP1から例えば接線に対する角度αを35°として、深さ10μmまで切欠いた後、階段状に切欠いて、切欠きを構成したものである。その他の5つの切欠きについても同様であり、稜線13aと切欠き15B〜19Bの交点を夫々ポイントP2〜P6とする。
【0016】
この実施の形態のダイヤモンドツール10を用いてスクライブする場合について、図4A図4Bを用いて説明する。尚図4A図4Bでは円周部の切欠きを誇張して大きく示しており、図4Aは正面から、図4B図4Aの右側から見た側面図である。スクライブする際には、図4A(a),図4B(a)に示すようにダイヤモンドツール10の1つのポイントP1を基板20に対して固定して基板20を図示の矢印A方向に移動させ、スクライブを行う。このときダイヤモンドツール10は転動させないので、同じポイントでスクライブを行うことができる。基板に接しているポイントが摩耗により劣化した場合には、図4A(b)、図4B(b)に示すように貫通孔12を中心にダイヤモンドツール10を60°回転させ、隣接するポイントP2を基板20に接触させ、同様にしてスクライブを行う。これを繰り返せばポイントが摩耗により劣化しても円板の周囲に形成した切欠きの回数だけ新しいポイントでスクライブを行うことができる。また、ダイヤモンドツール10を回転させても、ダイヤモンドツール10の正面視において刃先の稜線が基板に接触する角度θは変わらないため、ポイントの基板に対する接触角度を調整することが容易である。
【0017】
尚この実施の形態では円板の周囲に6箇所の切欠きを設けているが、円周部にはなるべく多くの切欠きを設けておくことが好ましい。切欠き数の上限は隣接するポイントが互いに干渉しない数とする。これにより各ポイントが摩耗したときダイヤモンドツールを回転させるだけでポイントを交換することができ、ダイヤモンドツール10の交換頻度を少なくすることができる。
【0018】
次に本発明の第2の実施の形態について図5を用いて説明する。この実施の形態のダイヤモンドツール30も第1の実施の形態と同様に、単結晶ダイヤモンドによる円板型のベース31の中心に貫通孔32を有し、その円周の両側よりV字形に研磨された刃先33を有している。そして前述した第1の実施の形態では切欠きの形状を非対称としているが、第2の実施の形態では図5(a)に示すように、ダイヤモンドツール30の円周に沿って円弧状の切欠き34〜37を形成したものである。このような切欠きはレーザ加工によって容易に形成することができる。
【0019】
このダイヤモンドツール30では図5(b)に示すように1つの切欠き34の端部をポイントとして基板20に対しスクライブを行う。そしてこのポイントが摩耗した場合には、前述した実施の形態と同様にダイヤモンドツール30を貫通孔に挿通した、図示を省略した軸に沿って90°回転させ、隣接する切欠き35の端部をポイントとしてスクライブを行う。これを繰り返すことによって4箇所のポイントを使用することができる。そして4箇所のポイントが全て摩耗すると、更に図5(c)に示すように、このダイヤモンドツール30を反転させる。そして各切欠き34〜37の異なった頂点をポイントとして同様にスクライブを行うことができる。従って合計8箇所のポイントでスクライブを行うことができる。
【0020】
次に本発明の第3の実施の形態について図6を用いて説明する。この実施の形態のダイヤモンドツール40も第1の実施の形態と同様に、単結晶ダイヤモンドによる円板型のベース41の中心に貫通孔42を有し、その円周の両側よりV字形に研磨された刃先43を有している。そして前述した第2の実施の形態と同様に、レーザにより円周部の4箇所に円弧状の切欠き44〜47を形成する。更に各切欠き44の両端部分に機械加工によって円弧状の微小切欠き44a,44bを形成する。他の切欠き45,46,46についても同様に両端位置に小さい円弧状の微小切欠き45a,45b,46a,46b,47a,47bを形成する。この場合に円周上の小さい切欠きは、機械加工で研磨することによって精密に切欠き部分の形状を整形することができるとともに、その表面粗さを小さくすることができる。
【0021】
このダイヤモンドツール40を用いてスクライブする際には図6(b)に示すように、稜線と微小切欠きの交点をポイントとしてスクライブを行う。その位置が摩耗した場合にはダイヤモンドツール40を90°づつ回転させて隣接する切欠きのポイントを用いる。こうすれば4回ポイント位置を変化させてスクライブを行うことができる。そして4箇所のポイントが全て摩耗すると、図6(c)に示すように、ダイヤモンドツール40を反転させる。こうすれば各切欠き44〜47の異なった切欠きの外側をポイントとして同様にスクライブを行うことができる。このように4回ポイント位置を変化させてスクライブを行うことができ、合計8回のポイントを交換してスクライブを行うことができる。
【0022】
尚前述した第2,第3の実施の形態において、ベースとなる円板の周囲に4箇所の切欠きを設けているが、更に多数の切欠きを設けてポイント数を多くすることができることはいうまでもない。第2,第3の実施の形態においては切欠きを円弧状としているが、ダイヤモンドツールの側面視において左右対称形状であればV字形,U字形など任意の形状に切欠いてもよい。また、第3の実施例において、微小切欠きは直線状としてもよい。さらに、切欠きの形成方法についても、レーザ加工のほか、研削や放電加工など周知の加工法を用いることができる。
【0023】
前述した各実施の形態では円板の周囲に等間隔で切欠きを設けている。これは等間隔とすれば切欠き数を多くすることができるとともに、一定の角度でダイヤモンドツールを回転することによりポイントを変更することができ、ポイントの接触角度を容易に一定にすることができるという効果があるが、必ずしも等間隔である必要はない。
【0024】
又前述した実施の形態では円板全体を単結晶ダイヤモンドで構成しているが、表面部分さえダイヤモンド層があれば足りるため、超硬合金や焼結ダイヤモンド製のベースの刃先部分の表面に多結晶ダイヤモンド層を形成してこれに切欠きを形成してもよい。また、ボロン等の不純物をドープし、導電性を持たせた単結晶または多結晶ダイヤモンドを使用してもよい。導電性を有するダイヤモンドを用いることで、放電加工により切欠きを容易に形成することができる。
【0025】
又前述した各実施の形態ではダイヤモンドツールのベースを円板状としているが、円板状である必要はなく、ベースを多角形としてもよい。ベースは貫通孔の中心に対して回転対称であれば足りる。多角形のベースを切欠く際には頂点を含む部分を直線状に切欠いてもよく、頂点を含む部分をV字形,U字形など任意の形状に切欠いてもよい。又頂点を基点として左右非対称にV字形又はU字形など任意の形状に切欠くようにしてポイントとすることができる。いずれの場合においても、稜線と切欠きがポイントとなる交点を形成するように切欠きを形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のマルチポイントダイヤモンドツールは脆性材料基板をスクライブするスクライブ装置に用いることができ、特にダイヤモンドツールの摩耗が多くなる硬度の高いスクライブ対象にも有効に使用することができる。
【符号の説明】
【0027】
10,30,40 マルチポイントダイヤモンドツール
11,31,41 ベース
12,32,42 貫通孔
13,33,43 研磨面
14〜19,34〜37,44〜47 切欠き
44a,44b,45a,45b,46a,46b,47a,47b 微小切欠き
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6