(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6458404
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】飲用組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 2/38 20060101AFI20190121BHJP
A23L 2/39 20060101ALI20190121BHJP
A23F 3/14 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
A23L2/38 C
A23L2/39
A23F3/14
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-171062(P2014-171062)
(22)【出願日】2014年8月26日
(65)【公開番号】特開2015-77125(P2015-77125A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2017年8月9日
(31)【優先権主張番号】特願2013-189098(P2013-189098)
(32)【優先日】2013年9月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】桑子 正行
(72)【発明者】
【氏名】奥平 玄
(72)【発明者】
【氏名】唐木 美由紀
【審査官】
西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第102972559(CN,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0324788(US,A1)
【文献】
特開2001−069917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/
A23F 3/
A23L 33/
A23L 19/
A61K 36/
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリーブ果実抽出物1質量部に対して、1.0〜120質量部の粉末茶を含有することを特徴とする飲用組成物。
【請求項2】
オリーブ果実抽出物が、オリーブ果実の酸処理抽出物である、請求項1に記載の飲用組成物。
【請求項3】
粉末茶が玄米茶、緑茶、抹茶、ほうじ茶からなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項1に記載の飲用組成物。
【請求項4】
飲用組成物が、粉末飲料または液体飲料である請求項1〜3のいずれかに記載の飲用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリーブ果実抽出物の苦渋味及び独特の芳香を抑制した飲用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オリーブはモクセイ科の小さな常緑樹であり、古代ギリシャ時代以来、地中海地方において人々の生活と密接な関わりをもっており、食用・薬用に広く利用されてきた。オリーブの実にはポリフェノールの一種であるオレウロペインまたはヒドロキシチロソールと呼ばれる抗酸化物質が含有されていることが知られており、近年では、オリーブと健康との関連に注目が集まるようになっている。
オリーブの果実から得られるオリーブオイルは様々な有効成分を含有する植物油であって、健康状態の改善効果について最近注目されており、動脈硬化、胃潰瘍および便秘の軽減、骨の強化、老化の防止、美肌作用等、様々な優れた効果があることが知られている。
一方、オリーブ果実から得られるオリーブ果実抽出物は、活性酸素除去作用、メラニン生成抑制作用および腫瘍細胞増殖抑制・死滅作用、ヒト白血球エラスターゼ阻害を奏することが報告されている(特許文献1〜2)。オリーブ果実抽出物は、オリーブオイルと比べて苦渋味が強く、独特な香りを有することから、日常的な飲用には不向きであるという問題がある。そのため、主に化粧品や外用剤の分野で利用されているのが実態である(特許文献1〜3)
従来、オリーブ葉については、独特の臭いや苦味を抑える方法が試みられている。緑茶やハーブをブレンドすることで飲みやすくしたオリーブ茶として提供するものである(特許文献4)。しかしながら、オリーブ葉の抽出物を飲用するオリーブ茶と、オリーブ果実抽出物とでは、含まれる成分構成や含量が異なり、味の傾向が大きく異なる。
今までに、オリーブ果実抽出物を含有し、オリーブ果実抽出物由来の苦渋味や独特の芳香を抑えた、風味の点で満足できる飲用組成物は報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−181197号公報
【特許文献2】特開2010−265183号公報
【特許文献3】特開2011−26216号公報
【特許文献4】特開2001−69917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、オリーブ果実抽出物由来の苦渋味や独特の香りがなく、日常的に飲用可能な飲用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、オリーブ果実抽出物について、日常的な飲用に適した飲用組成物を開発すべく鋭意検討を行った。その結果、オリーブ果実抽出物に対して特定量の粉末茶を配合すると、オリーブ果実抽出物由来の独特の苦渋味と香りを抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)オリーブ果実抽出物1質量部に対して、1.0〜120質量部の粉末茶を含有することを特徴とする飲用組成物、
(2)粉末茶が玄米茶、緑茶、抹茶、ほうじ茶からなる群から選ばれる1種又は2種以上である(1)記載の飲用組成物、
(3)飲用組成物が、粉末飲料または液体飲料である(1)又は(2)に記載の飲用組成物、
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、オリーブ果実抽出物特有の苦渋味と芳香を抑制した飲用組成物を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の「オリーブ果実抽出物」としては、オリーブ果実を圧搾して得られたオリーブ果汁を酸処理し、濾過・精製したものを粉末化した抽出物を利用することができる。
【0009】
本発明の「粉末茶」としては、好ましくは玄米茶、緑茶、抹茶、ほうじ茶、麦茶、紅茶などが挙げられるが、発明の効果の点から玄米茶、緑茶、抹茶、ほうじ茶が好ましく、更に好ましくは緑茶、抹茶、及び玄米茶の3種を組み合わせて配合するのが好ましい。本発明の粉末茶は、熱水、温水、水蒸気などを用いて、それぞれの茶葉から抽出あるいは濃縮した液を、例えば噴霧乾燥法などを用いて粉末化することによって得られる。本発明において、粉末茶の配合量は、オリーブ果実抽出物1質量部に対して1.0〜120質量部であることが好ましく、より好ましくは1.0〜80質量部であることが好ましく、さらに好ましくは2.0〜25質量部、特に好ましくは3.0〜6.0質量部である。
【0010】
本発明の飲用組成物としては、粉末、水や湯を注いで攪拌して飲用に供するようにした粉末飲料、または液体飲料など、飲食した際に味を感じやすい形式が好ましく、この中でも粉末飲料が最も好ましい。また、液体飲料は、通常飲料として使用できる容器に封入した容器詰めの液体飲料として提供することができる。
【0011】
本発明のオリーブ果実抽出物の含有量は、特に制限ないが、粉末飲料の場合は、粉末飲料全体に対し0.05〜12.0質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜7質量%であり、さらに好ましくは0.5〜7.0質量%である。また、液体飲料の場合は、液体飲料中に含まれるオリーブ果実抽出物の含有量は0.001〜0.5質量%が好ましく、より好ましくは0.005〜0.5質量%、さらに好ましくは0.01〜0.3質量%である。
【0012】
本発明の飲用組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば以下の方法が挙げられる。
粉末あるいは粉末飲料の製造法としては、オリーブ果実抽出物と粉末茶を混合し、必要に応じて食品に汎用される公知の添加剤を混合すればよい。また、デキストリンを配合すると、粉末飲料とした場合に水中に速やかに分散するので好ましいものとなる。本発明の飲用組成物中におけるデキストリンの含有量は、特に限定されないが、例えば、50〜90質量%、好ましくは80〜90質量%が好ましい。また、デキストリンを使用して本発明の飲用組成物を製造する際は、単に混合するだけでも良いが、造粒して製造するのが好ましい。造粒方法としては、例えば撹拌造粒、流動層造粒、押し出し造粒、転動流動造粒、乾式造粒などが挙げられるが、好ましくは流動層造粒である。また、湿式造粒を行う場合は、例えば水、エタノール、イソプロピルアルコールあるいはそれらの混合溶媒を調製し、オリーブ果実抽出物、粉末茶、デキストリンを配合した混合粉体に噴霧して湿式造粒を行ったのち、湿粒を乾燥すればよい。
液体飲料の製造方法は、常法に従い、オリーブ果実抽出物、粉末茶、精製水を混合し、必要であればpHを調整し、更に精製水を加えて容量調整し、適宜濾過、滅菌処理を施し、ペットボトルや金属缶、紙容器、瓶などの通常飲料として使用できる容器に封入すればよい。
【実施例】
【0013】
以下に、実施例、比較例及び試験例を挙げ、本発明を更に詳細に説明する。
【0014】
実施例1
オリーブ果実抽出物 1.12g
デキストリン 23.52g
玄米茶粉末 3.36g
上記成分を秤量、混合して飲用組成物を調製した。
【0015】
実施例2
オリーブ果実抽出物 1.01g
デキストリン 23.66g
緑茶粉末 3.33g
上記成分を秤量、混合して飲用組成物を調製した。
【0016】
実施例3
オリーブ果実抽出物 1.12g
デキストリン 23.52g
抹茶粉末 3.36g
上記成分を秤量、混合して飲用組成物を調製した。
【0017】
実施例4
オリーブ果実抽出物 1.01g
デキストリン 23.68g
ほうじ茶粉末 3.33g
上記成分を秤量、混合して飲用組成物を調製した。
【0018】
実施例5
オリーブ果実抽出物 1.12g
デキストリン 23.52g
玄米茶粉末 1.40g
緑茶粉末 1.12g
抹茶粉末 0.84g
上記成分を秤量、混合して飲用組成物を調製した。
【0019】
実施例6
オリーブ果実抽出物 29.9g
デキストリン 607.6g
玄米茶粉末 37.5g
緑茶粉末 30.0g
抹茶粉末 22.5g
上記成分を秤量、混合したものを、デキストリンを精製水に溶解し、デキストリン濃度が30.0%とした溶液を結合液として、流動層造粒乾燥機(商品名:FLO−1;フロイント社製)を用いて造粒し、飲用組成物を調製した。
【0020】
実施例7
オリーブ果実抽出物 15.3g
デキストリン 622.2g
玄米茶粉末 37.5g
緑茶粉末 30.0g
抹茶粉末 22.5g
上記成分を秤量、混合したものを、デキストリンを精製水に溶解し、デキストリン濃度が30.0%とした溶液を結合液として、流動層造粒乾燥機(商品名:FLO−1;フロイント社製)を用いて造粒し、飲用組成物を調製した。
【0021】
実施例8
オリーブ果実抽出物 0.29g
ほうじ茶粉末 0.96g
精製水 260mL
オリーブ果実抽出物及びほうじ茶粉末を秤量し、精製水に溶解して飲用組成物を調製した。
【0022】
実施例9
オリーブ果実抽出物 0.32g
玄米茶粉末 0.40g
緑茶粉末 0.32g
抹茶粉末 0.24g
精製水 260mL
上記成分を秤量し、精製水に溶解して飲用組成物を調製した。
【0023】
実施例10
オリーブ果実抽出物 0.014g
デキストリン 12.31g
玄米茶粉末 0.70g
緑茶粉末 0.56g
抹茶粉末 0.42g
上記成分を秤量、混合して飲用組成物を調製した。
【0024】
実施例11
オリーブ果実抽出物 0.07g
デキストリン 12.25g
玄米茶粉末 0.70g
緑茶粉末 0.56g
抹茶粉末 0.42g
上記成分を秤量、混合して飲用組成物を調製した。
【0025】
実施例12
オリーブ果実抽出物 0.014g
デキストリン 12.31g
ほうじ茶粉末 1.68g
上記成分を秤量、混合して飲用組成物を調製した。
【0026】
実施例13
オリーブ果実抽出物 0.07g
デキストリン 12.25g
ほうじ茶粉末 1.68g
上記成分を秤量、混合して飲用組成物を調製した。
【0027】
実施例14
オリーブ果実抽出物 0.013g
ほうじ茶粉末 0.96g
精製水 260mL
オリーブ果実抽出物及びほうじ茶粉末を秤量し、精製水に溶解して飲用組成物を調製した。
【0028】
実施例15
オリーブ果実抽出物 0.013g
玄米茶粉末 0.40g
緑茶粉末 0.32g
抹茶粉末 0.24g
精製水 260mL
上記成分を秤量し、精製水に溶解して飲用組成物を調製した。
【0029】
比較例1
オリーブ果実抽出物 1.01g
デキストリン 27.00g
上記成分を秤量、混合して飲用組成物を調製した。
【0030】
比較例2
オリーブ果実抽出物 0.29g
精製水 260mL
オリーブ果実抽出物を秤量し、精製水に溶解して飲用組成物を調製した。
【0031】
試験例1:オリーブ果実抽出物の味・香りの評価
(1)方法
実施例1〜7、10〜13、及び比較例1で調製した飲用組成物各4gを量りとり、それぞれ熱湯約130mLを注いだものをパネルにて、以下の5段階の評価基準に基づき、味・香りを評価した。また、実施例8〜9、14〜15、及び比較例2の飲用組成物についてもパネルにて、以下の5段階の評価基準に基づき、味・香りを評価した。結果を表1〜2に示す。
評価基準
5:良い
4:やや良い
3:許容できる
2:やや悪い
1:悪い
味・香りいずれかが3以上であるサンプルを許容とした。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
(2)結果
表1〜2より、比較例では味・香りともに3未満の数値を示し、日常的な飲食には不向きであった。 一方、実施例1〜15では、味・香りともに比較例より高い数値を示し、オリーブ果実抽出物特有の苦渋味や香りを抑制できた。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明により、オリーブ果実抽出物を配合し、独特の苦渋味及び香りを抑え、日常的な飲用に適した飲用組成物の提供が可能となった。