(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6458448
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】ガラス製造装置及びガラス製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 5/43 20060101AFI20190121BHJP
【FI】
C03B5/43
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-220444(P2014-220444)
(22)【出願日】2014年10月29日
(65)【公開番号】特開2016-88754(P2016-88754A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】金谷 仁
(72)【発明者】
【氏名】天山 和幸
【審査官】
若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2007/013228(WO,A1)
【文献】
国際公開第2007/020773(WO,A1)
【文献】
国際公開第2007/020754(WO,A1)
【文献】
特開2012−111667(JP,A)
【文献】
特開2000−007346(JP,A)
【文献】
特開2003−128422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 5/00−5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラスを供給する貴金属製の供給管と、前記供給管の周囲を取り囲むように組み合わされた電鋳レンガと、前記電鋳レンガを外側から拘束する拘束手段とを備えたガラス製造装置であって、
前記電鋳レンガの外面と接触する前記拘束手段の接触部が、耐熱部材で形成されるとともに、
一つの前記電鋳レンガの外面において、前記耐熱部材と接触していない露出領域の面積が、前記耐熱部材と接触している非露出領域の面積よりも大きいことを特徴とするガラス製造装置。
【請求項2】
一つの前記電鋳レンガの外面において、前記耐熱部材が、前記供給管の周方向に間隔を置いて配置されていることを特徴とする請求項1に記載のガラス製造装置。
【請求項3】
溶融ガラスを供給する貴金属製の供給管と、前記供給管の周囲を取り囲むように組み合わされた電鋳レンガと、前記電鋳レンガを外側から拘束する拘束手段とを備えたガラス製造装置であって、
前記電鋳レンガの外面と接触する前記拘束手段の接触部が、耐熱部材で形成されるとともに、
一つの前記電鋳レンガの外面において、前記耐熱部材が、前記供給管の周方向に間隔を置いて配置されていることを特徴とするガラス製造装置。
【請求項4】
前記耐熱部材が、前記電鋳レンガよりも低い熱伝導率を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス製造装置。
【請求項5】
前記電鋳レンガが、四角筒状に組み合わされており、前記拘束手段が、前記四角筒状の各面に対応する四方向から前記電鋳レンガを拘束することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のガラス製造装置。
【請求項6】
前記電鋳レンガの周囲を取り囲むように外包囲体が配置され、
前記拘束手段が、前記外包囲体と前記電鋳レンガとの間に配置された状態で、前記電鋳レンガの外面を押圧することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラス製造装置。
【請求項7】
前記外包囲体が、前記外包囲体の内部空間と外部空間を連通する複数の開口部を有することを特徴とする請求項6に記載のガラス製造装置。
【請求項8】
前記耐熱部材が、前記電鋳レンガの間に形成される目地の少なくとも一部を覆っていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のガラス製造装置。
【請求項9】
前記耐熱部材が、焼成レンガであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のガラス製造装置。
【請求項10】
前記供給管と前記電鋳レンガとの間の空間に、ガラスが充填されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のガラス製造装置。
【請求項11】
前記供給管と前記電鋳レンガとの間の空間に、別の電鋳レンガが設けられるとともに、前記空間に設けられた電鋳レンガと前記供給管の間の隙間に、前記供給管の外面を覆うようにガラス層が設けられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のガラス製造装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のガラス製造装置を用いて、ガラスを製造することを特徴とするガラス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス製造装置及びガラス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄板ガラスなどのガラスを工業的に製造する場合、ガラス原料を溶解し、清澄や均質化を行った後、得られた溶融ガラスを成形装置に供給し、所望の形状に成形するのが一般的である。
【0003】
溶解工程から成形工程へ至るまでの各工程間では、白金又は白金合金からなる供給管を通じて溶融ガラスが移送される。この際、供給管の周囲を、電鋳レンガからなる耐火物で取り囲むのが一般的である(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−111667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、供給管の周囲を取り囲む電鋳レンガが、一体的に形成された一つの部材から構成されている場合、ガラス製造中に供給管の周囲温度が上昇すると、電鋳レンガに熱歪みに起因する割れが生じることがある。また、電鋳レンガを供給管の周囲を取り囲む形状に一体的に形成する場合、電鋳レンガの加工が難しく、非常に製作コストがかかるという問題がある。
【0006】
そこで、これらの問題を解消するために、例えば、板状などの比較的単純な形状の電鋳レンガを組み合わせて、供給管の周囲を取り囲むことが考えられる。
【0007】
しかしながら、この場合には、電鋳レンガは、単純に組み合わされただけであるので不安定な構造となる。そのため、電鋳レンガを何らかの方法で拘束しなければ、電鋳レンガがずれて、隣接する電鋳レンガとの間に大きな隙間が形成されるおそれがある。このように隙間が形成されると、供給管の内部を流れる溶融ガラスの温度が不安定になりやすく、最終製品たるガラスの製造不良の原因にもなり得る。
【0008】
一方、電鋳レンガの熱伝導率は比較的高く、電鋳レンガの外面はガラス製造時に高温になる。そのため、電鋳レンガの外面に金物を直接接触させて電鋳レンガを拘束した場合には、金物に熱変形が生じて、電鋳レンガを確実に拘束できなくなるという問題がある。
【0009】
以上の実情に鑑み、本発明は、供給管の周囲を取り囲むように組み合わされた電鋳レンガを確実に拘束し、ガラス製造の安定化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために創案された本発明に係るガラス製造装置は、溶融ガラスを供給する貴金属製の供給管と、供給管の周囲を取り囲むように組み合わされた電鋳レンガと、電鋳レンガを外側から拘束する拘束手段とを備え、電鋳レンガの外面と接触する拘束手段の接触部が、耐熱部材で形成されていることを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、拘束手段の接触部が、高温となる電鋳レンガの熱によって熱変形しにくくなり、電鋳レンガの拘束状態が安定する。したがって、拘束手段によって、ガラス製造時においても電鋳レンガを確実に拘束し続けることができ、ガラス製造の安定化にも寄与できる。
【0012】
上記の構成において、耐熱部材が、電鋳レンガよりも低い熱伝導率を有することが好ましい。
【0013】
このようにすれば、高温になる電鋳レンガの熱が、耐熱部材で遮断され、拘束手段の接触部以外の部分に伝わりにくくなる。そのため、拘束手段の接触部以外の部分を、例えば耐熱性の低い安価な金物で形成することも可能となる。
【0014】
上記の構成において、一つの電鋳レンガの外面において、耐熱部材と接触していない露出領域の面積が、耐熱部材と接触している非露出領域の面積よりも大きいことが好ましい。
【0015】
すなわち、電鋳レンガは、一般的に熱伝導率が高く、供給管の内部を流れる溶融ガラスの放熱を促進する目的で用いられている。しかしながら、耐熱部材は、電鋳レンガよりも熱伝導率が低くなる場合が多く、耐熱部材で電鋳レンガの大部分を覆ってしまうと、溶融ガラスの放熱が阻害され、所望の粘度を維持するのが困難になるおそれがある。したがって、上記のように、一つの電鋳レンガの外面において、露出領域の面積を非露出領域の面積よりも大きくし、耐熱部材によって溶融ガラスの放熱が阻害されにくい構成とすることが好ましい。
【0016】
上記の構成において、一つの電鋳レンガの外面において、耐熱部材が、供給管の周方向に間隔を置いて配置されていてもよい。
【0017】
このようにすれば、耐熱部材が電鋳レンガの外面と接触する面積を少なくしつつ、耐熱部材を電鋳レンガの拘束に必要な最適な位置に配置しやすくなる。
【0018】
上記の構成において、電鋳レンガが、四角筒状に組み合わされており、拘束手段が、四角筒状の各面に対応する四方向から電鋳レンガを拘束するようにしてもよい。
【0019】
このようにすれば、四角筒状に組み合わされた電鋳レンガの全周囲を、異なる四方向(例えば、上下及び左右)から確実に拘束することができる。
【0020】
上記の構成において、電鋳レンガの周囲を取り囲むように外包囲体が配置され、拘束手段が、外包囲体に対して電鋳レンガを固定するようにしてもよい。
【0021】
このようにすれば、電鋳レンガを簡単且つ確実に拘束することができる。
【0022】
上記の構成において、外包囲体が、複数の開口部を有していてもよい。
【0023】
このようにすれば、外包囲体の内部空間の気体が、開口部を通じて外包囲体の外部空間へと効率よく排気される。そのため、外包囲体を配置しても、供給管の内部を流れる溶融ガラスの放熱が阻害されにくい。
【0024】
上記の構成において、耐熱部材が、電鋳レンガの間に形成される目地の少なくとも一部を覆っていてもよい。
【0025】
すなわち、電鋳レンガの目地部分に位置ずれが生じるので、目地部分を耐熱部材で覆って拘束手段で拘束すれば、電鋳レンガの位置ずれを確実に防止できる。
【0026】
上記の構成において、耐熱部材が、焼成レンガであることが好ましい。
【0027】
すなわち、焼成レンガは、電鋳レンガよりも一般的に熱伝導率が低い。そのため、耐熱部材を焼成レンガから構成することで、電鋳レンガよりも熱伝導率の低い耐熱部材を安価に入手することができる。
【0028】
上記の構成において、供給管と電鋳レンガとの間の空間に、ガラスが充填されていてもよい。
【0029】
ここで、ガラスは、溶融ガラスであってもよいし、粉ガラスであってもよい。すなわち、粉ガラスの場合であっても、ガラス製造時の熱によって溶融し、供給管と電鋳レンガとの間の空間に溶融ガラスが充填されることになる。したがって、供給管と電鋳レンガとの間の空間にガラスを充填すれば、ガラス製造時においては、供給管の外面と溶融ガラスが密着するとともに、電鋳レンガの内面と溶融ガラスが密着する。溶融ガラスは、比較的熱伝導率が高いため、供給管の内部を流れる溶融ガラスの熱が、供給管、溶融ガラス、電鋳レンガの順に伝わって、電鋳レンガの外側の空間に放熱されやすくなる。
【0030】
上記の構成において、供給管と電鋳レンガとの間の空間に、別の電鋳レンガが設けられるとともに、空間に設けられた電鋳レンガと供給管の間の隙間に、供給管の外面を覆うようにガラス層が設けられていてもよい。
【0031】
このようにすれば、ガラス層を介して、供給管と電鋳レンガが密着する。ガラス層は、比較的熱伝導率が高いため、供給管の内部を流れる溶融ガラスの熱が、供給管、ガラス層、電鋳レンガ(組み合わせた電鋳レンガ及びその内部空間に設けられた電鋳レンガ)の順に伝わって、電鋳レンガの外側の空間に放熱されやすくなる。
【0032】
上記課題を解決するために創案された本発明に係るガラス製造方法は、上記の構成を適宜備えたガラス製造装置を用いてガラスを製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
以上のように本発明によれば、供給管の周囲を取り囲むように組み合わされた電鋳レンガを確実に拘束し、ガラス製造の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るガラス製造装置の全体構成を示す概略図である。
【
図2】
図1のX−X断面図であって、電鋳レンガの拘束方法を説明するための図である。
【
図3】
図2のY−Y断面図であって、電鋳レンガの拘束方法を説明するための図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係るガラス製造装置における電鋳レンガの拘束方法を説明するための断面図である。
【
図5】(a)及び(b)は、本発明の第3の実施形態に係るガラス製造装置における電鋳レンガの拘束方法を説明するための要部拡大断面図である。
【
図6】(a)及び(b)は、本発明の第4の実施形態に係るガラス製造装置における電鋳レンガの拘束方法を説明するための要部拡大断面図である。
【
図7】本発明の第5の実施形態に係るガラス製造装置における電鋳レンガの拘束方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
【0036】
(第1の実施形態)
図1に示すように、第1の実施形態に係る板ガラス製造装置は、上流側から順に、溶解槽1と、清澄槽2と、均質化槽(攪拌槽)3と、状態調整槽4と、成形槽5と、供給管6〜9とを備えている。
【0037】
溶解槽1は、投入されたガラス原料を溶解して、溶融ガラスGを得る溶解工程を行うための容器である。溶解槽1は、供給管6によって清澄槽2に接続されている。
【0038】
清澄槽2は、溶解槽1から供給された溶融ガラスGを清澄剤等の働きにより清澄する清澄工程を行うための容器である。清澄槽2は、供給管7によって均質化槽3に接続されている。
【0039】
均質化槽3は、清澄された溶融ガラスGを攪拌翼等により攪拌し、均一化する均質化工程を行うための容器である。均質化槽3は、供給管8によって状態調整槽4に接続されている。
【0040】
状態調整槽4は、溶融ガラスGを成形に適した状態に調整する状態調整工程を行うための容器である。状態調整槽4は、供給管9によって成形槽5に接続されている。
【0041】
成形槽5は、溶融ガラスGを所望の形状に成形するための容器である。本実施形態では、成形槽5は、オーバーフローダウンドロー法によって溶融ガラスGを板状に成形する。詳細には、成形槽5は、断面形状(紙面と直交する断面形状)が略楔形状をなし、成形槽5の上部にオーバーフロー溝(図示省略)が形成されている。供給管9によって溶融ガラスGをオーバーフロー溝に供給した後、溶融ガラスGをオーバーフロー溝から溢れ出させて、成形槽5の両側の側壁面(紙面の表裏面側に位置する側面)に沿って流下させる。そして、その流下させた溶融ガラスGを側壁面の下頂部で融合させ、板状に成形する。成形された板ガラスは、例えば、厚みが0.01〜10mmであって、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ、有機EL照明、太陽電池などの基板や保護カバーに利用される。なお、成形槽5は、スロットダウンドロー法などの他のダウンドロー法を実行するものであってもよい。
【0042】
供給管6〜9は、白金又は白金合金からなる円筒管で構成されており、溶融ガラスGを横方向(略水平方向)に移送する。
【0043】
次に、均質化槽3と状態調整槽4を接続する供給管8及びその周囲の構造について説明する。
【0044】
図2に示すように、供給管8の周囲は、四角筒状に組み合わされた複数の電鋳レンガ11によって取り囲まれている。各電鋳レンガ11は、板状を呈する。
【0045】
供給管8と電鋳レンガ11とは離間しており、両者の間の空間には溶融ガラスGaが充填されている。これにより、供給管8の外面と溶融ガラスGaが密着するとともに、電鋳レンガ11の内面と溶融ガラスGaが密着している。溶融ガラスGaは熱伝導率(例えば、使用温度における見かけの熱伝導率は30〜40W/(m・K))が高いため、供給管8の内部を流れる溶融ガラスGの放熱を促進することができる。また、供給管8の外面が溶融ガラスGaで覆われているので、供給管8の内部を流れる溶融ガラスG中に、水素濃度の低下に起因する気泡が形成されるのを防止することもできる。
【0046】
溶融ガラスGaを充填する方法としては、供給管8と電鋳レンガ11の間の空間に溶融ガラスを直接供給してもよいが、供給管8と電鋳レンガ11の間の空間に粉末ガラスを供給し、その粉末ガラスをガラス製造時の熱で溶解することで溶融ガラスを供給するようにしてもよい。
【0047】
供給管8は、電鋳レンガからなる支柱12によって上下から支持された状態で、電鋳レンガ11に対して位置決めされている。支柱12は、供給管8の長手方向に断続的に配置されている。
【0048】
電鋳レンガ11の周囲は、四角筒状の外包囲体13によって取り囲まれている。電鋳レンガ11と外包囲体13とは離間しており、両者の間の空間には電鋳レンガ11を外側から拘束する拘束手段14が配置されている。外包囲体13は、例えば、金属から構成される。
【0049】
拘束手段14は、四角筒状に組み合わされた電鋳レンガ11を、四角筒状の各面に対応する四方向、すなわち上下及び左右から拘束している。
【0050】
詳細には、拘束手段14は、電鋳レンガ11の外面に接触する耐熱部材としての焼成レンガ15と、焼成レンガ15を固定する固定手段16とを備えている。
【0051】
焼成レンガ15は、電鋳レンガ11よりも熱伝導率が低い。詳細には、使用温度1200〜1350℃における電鋳レンガ11の熱伝導率は、例えば4〜6W/(m・K)であり、使用温度1200〜1350℃における焼成レンガ15の熱伝導率は、例えば1〜2W/(m・K)である。焼成レンガ15としては、例えば、アルミナ系、ジルコン系、アルミナ・ジルコン系、シリカ系、ムライト系、粘土質系の焼成レンガが利用できる。電鋳レンガ11としては、例えば、アルミナ系、AZS系(アルミナ・ジルコン・シリカ系)の電鋳レンガが利用できる。なお、耐熱部材としては、焼成レンガ以外にも、耐熱金属(例えば、スペシャルメタルズ社製のインコネル(登録商標)、SUS310S(JIS規格))、耐熱ガラス(例えば、石英ガラス)、耐熱樹脂などが利用できる。
【0052】
ここで、耐熱部材として焼成レンガ15の代わりに、電鋳レンガ11よりも熱伝導率の高い耐熱金属を用いる場合には、外包囲体13も耐熱金属で構成することが好ましい。
【0053】
固定手段16は、焼成レンガ15に当接する当接板16aと、当接板16aを焼成レンガ15側(電鋳レンガ11側)に押圧する押圧機構16bとを備えている。本実施形態では、押圧機構16bとして、外包囲体13を基準として当接板16aに対して進退移動可能なジャッキボルトが利用されている。押圧機構16bは、外包囲体13を基準として当接板16aを焼成レンガ15側に押圧できる機構であれば特に限定されるものではない。例えば、押圧機構16bとしてシリンダーやリンク機構などを用いてもよい。
【0054】
図3に示すように、焼成レンガ15は、供給管8の長手方向と直交する方向に長尺である。供給管8の長手方向で見た場合に、一つの電鋳レンガ11の外面において、焼成レンガ15と接触していない露出領域の全長Aが、焼成レンガ15と接触している非露出領域の全長B+Cよりも大きくなっている。これにより、一つの電鋳レンガ11の外面において、露出領域の面積が、非露出領域の面積よりも大きくなるようにしている。例えば、露出領域の面積は、非露出領域の面積の5〜10倍であることが好ましい。なお、焼成レンガ15は、供給管8の長手方向に沿って長尺となるように、電鋳レンガ11の外面に接触させてもよい。
【0055】
焼成レンガ15は、隣接する電鋳レンガ11の間に形成される目地(継ぎ目)17の少なくとも一部を覆っている。すなわち、非露出領域に電鋳レンガ11の目地17が含まれるようになっている。なお、焼成レンガ15が、電鋳レンガ11の目地17を覆うことなく、電鋳レンガ11の目地17以外の部分を覆っていてもよい。
【0056】
ここで、
図2に示すように、外包囲体13には、外包囲体13の内部空間と外部空間を連通する複数の開口部13aが形成されている。これにより、外包囲体13によって供給管8の内部を流れる溶融ガラスGの放熱が妨げられるのを防止している。なお、外包囲体13と電鋳レンガ11との間の空間に気流を形成することでも、同様の効果が得られる。このように気流を形成する場合、外包囲体13に開口部13aを設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0057】
以上のような構成によれば、拘束手段14が、耐熱部材としての焼成レンガ15を介して電鋳レンガ11の外面に接触するため、電鋳レンガ11の熱によって、電鋳レンガ11の外面と接触する拘束手段14の接触部が熱変形するのを防止できる。したがって、拘束手段14によって、電鋳レンガ11の拘束状態が安定し、ガラス製造の安定化にも寄与し得る。
【0058】
また、焼成レンガ15は、電鋳レンガ11よりも熱伝導率が低いため、電鋳レンガ11の熱が焼成レンガ15を通じて固定手段15や外包囲体13に伝わりにくい。そのため、固定手段15や外包囲体13に耐熱性の低い安価な金物を用いることができる。
【0059】
更に、一つの電鋳レンガ11の外面において、焼成レンガ15と接触していない露出領域の面積が、焼成レンガ15と接触している非露出領域の面積よりも大きいため、電鋳レンガ11よりも熱伝導率の低い焼成レンガ15によって、供給管8の内部を流れる溶融ガラスGの放熱が阻害されにくくなる。そのため、溶融ガラスGの流量を増加させても、供給管8を通電加熱するなどして、溶融ガラスGを所望の粘度に管理しやすくなる。本願発明者等は、溶融ガラスGの流量を1000kg/h〜1200kg/h程度にしても、溶融ガラスGを所望の粘度に管理できることを確認している。
【0060】
(第2の実施形態)
図4に示すように、本発明の第2の実施形態に係るガラス製造装置が、第1の実施形態に係るガラス製造装置と相違するところは以下の点である。
【0061】
第一の相違点は、四角筒状に組み合わされた電鋳レンガ11の拘束方法である。すなわち、
図4に示すように、供給管8の周方向に見た場合に、各電鋳レンガ11の外面において、焼成レンガ15が間隔を置いて配置されている。詳細には、それぞれの電鋳レンガ11につき、外面の周方向両端部のみに焼成レンガ15がそれぞれ配置されている。この場合でも、焼成レンガ15は、各電鋳レンガ11の目地に対応する位置に配置することが好ましい。
【0062】
第二の相違点は、供給管8と電鋳レンガ11との間の空間の構造にある。すなわち、供給管8と電鋳レンガ11との間の空間には、電鋳レンガ11とは別の電鋳レンガ21が設けられるとともに、電鋳レンガ21と供給管8の間の隙間に、供給管8の外面を覆うように円筒状のガラス層Gbが設けられている。すなわち、電鋳レンガ21は、ガラス層Gbを介して供給管8と密着している。これにより、第1の実施形態と同様に、供給管8の内部を流れる溶融ガラスGの放熱を促進したり、溶融ガラスG中に気泡が形成されるのを防止したりすることもできる。
【0063】
ここで、使用温度1200〜1350℃における電鋳レンガ21の熱伝導率は、例えば4〜6W/(m・K)である。電鋳レンガ21としては、例えば、アルミナ系、ジルコン系、アルミナ・ジルコン系、ムライト系、粘土質系の電鋳レンガが利用できる。電鋳レンガ21と電鋳レンガ11は、同種の電鋳レンガであることが好ましい。また、ガラス層Gbには、四角筒状に組み合わせた電鋳レンガ11の上部に設けられた供給部22を通じて溶融ガラス又は粉ガラスが供給される。なお、粉ガラスが供給される場合でも、ガラス製造時には、熱で溶解して溶融ガラスとなる。
【0064】
上記の第二の相違点に係る構成は、第1の実施形態に係るガラス製造装置に適用してもよい。
【0065】
なお、第2の実施形態のその他の構成において、第1の実施形態と共通する部材については、同一符号を付して詳しい説明は省略する。後述する第3〜第5の実施形態についても同様とする。
【0066】
(第3の実施形態)
図5(a)及び(b)に示すように、本発明の第3の実施形態に係るガラス製造装置が、第1の実施形態に係るガラス製造装置と相違するところは、四角筒状に組み合わされた電鋳レンガ11の拘束方法である。
【0067】
すなわち、第3の実施形態では、拘束手段14が、焼成レンガ15を外包囲体13の内面と、電鋳レンガ11の外面で挟み込むことで、電鋳レンガ11を拘束するように構成されている。
【0068】
詳細には、
図5(a)に示す構成では、焼成レンガ15の外包囲体13側に凹部15aが設けられている。外包囲体13のネジ穴13bに締結具31のネジ面31aを嵌め合わせた状態で、締結具31の先端部を焼成レンガ15の凹部15aに係合することで、焼成レンガ15が位置決めされている。
【0069】
一方、
図5(b)に示す構成では、焼成レンガ15の電鋳レンガ11側に凹部15bが設けられ、その凹部15bに外包囲体13のネジ穴13bへと連通する貫通穴15cが設けられている。凹部15b内に締結具31の頭部を収容した状態で、締結具31の先端部に設けられたネジ面31bを外包囲体13のネジ穴13bに嵌め合わせることで、焼成レンガ15が位置決めされている。
【0070】
(第4の実施形態)
図6(a)及び(b)に示すように、本発明の第4の実施形態に係るガラス製造装置は、拘束手段14が焼成レンガ15を外包囲体13と電鋳レンガ11で挟み込んで拘束するように構成されている点は、第3の実施形態と共通するが、以下の点で相違する。
【0071】
すなわち、
図6(a)に示す構成では、焼成レンガ15の外包囲体13側に設けられた凸部15dを、外包囲体13に設けられた凹部13cに嵌め合わせることで、焼成レンガ15が位置決めされている。
【0072】
一方、
図6(b)に示す構成では、焼成レンガ15に設けられた凹部15eを、外包囲体13に設けられた凸部13dを嵌め合わせることで、焼成レンガ15が位置決めされている。
【0073】
(第5の実施形態)
図7に示すように、本発明の第5の実施形態に係るガラス製造装置は、拘束手段14が、焼成レンガ15を外包囲体13と電鋳レンガ11で挟み込むことで拘束するように構成されている点は、第3の実施形態と共通するが、以下の点で相違する。
【0074】
すなわち、外包囲体13が、上部体51と下部体52に分離されている。分離された上部体51と下部体52は、例えばターンバックルなどの連結具53によって、互いに引き寄せられるように連結されている。下部体52は、撓みを防止するために、H形鋼などの鉄骨54や、リブ55によって補強されている。
【0075】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の形態で実施することができる。
【0076】
上記の実施形態では、均質化槽3と状態調整槽4を接続する供給管8及びその周囲の構造を説明したが、他の供給管6,7,9及びその周囲の構造についても同様の構造を採用することができる。
【0077】
また、上記の実施形態では、電鋳レンガを四角筒状に組み合わせる場合を説明したが、電鋳レンガを断面が三角形又は五角形以上の多角形をなす角筒状に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0078】
G 溶融ガラス
1 溶解槽
2 清澄槽
3 均質化槽
4 状態調整槽
5 成形槽
6〜9 供給管
11 電鋳レンガ
12 支柱
13 外包囲体
14 拘束手段
15 焼成レンガ
16 固定手段
17 目地
21 電鋳レンガ
22 供給部
31 締結具
51 上部体
52 下部体
53 連結具