特許第6458452号(P6458452)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6458452ポリアミド樹脂およびポリアミド樹脂組成物
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  • 特許6458452-ポリアミド樹脂およびポリアミド樹脂組成物 図000009
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6458452
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂およびポリアミド樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/00 20060101AFI20190121BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20190121BHJP
   C08K 5/5313 20060101ALI20190121BHJP
   C08K 5/5317 20060101ALI20190121BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20190121BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   C08G69/00
   C08L77/00
   C08K5/5313
   C08K5/5317
   C08K3/00
   C08J3/20 BCFB
【請求項の数】11
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-223882(P2014-223882)
(22)【出願日】2014年11月4日
(65)【公開番号】特開2015-110764(P2015-110764A)
(43)【公開日】2015年6月18日
【審査請求日】2017年8月9日
(31)【優先権主張番号】特願2013-229116(P2013-229116)
(32)【優先日】2013年11月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中川 裕史
(72)【発明者】
【氏名】西田 真吾
(72)【発明者】
【氏名】梅津 秀之
【審査官】 岡山 太一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−179258(JP,A)
【文献】 特開2011−026396(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/042541(WO,A1)
【文献】 特開2003−105095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/00−69/50
C08L 77/00−77/12
C08K 3/00−3/40
C08K 5/00−5/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)を満足するポリメタクリル酸メチル換算分子量分布を有するポリアミド樹脂であって、
前記ポリアミド樹脂が、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)およびポリデカメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンドデカミドコポリマー(ポリアミド10T/612)からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
重量平均分子量(Mw)が9000以上15000未満であるポリアミド樹脂。
Q/P≦1.45 (1)
上記式(1)中、Pは、ポリアミド樹脂の分子量分布曲線において、分子量分布曲線の最頻値の重量分率を100%とした時、重量分率70%に対応する点のうち分子量の最も高い点から分子量最大値までの分子量分布曲線と重量分率0%に対応する横軸で挟まれた部分の面積を示す。Qは、分子量分布曲線において、重量分率70%に対応する点のうち分子量の最も低い点から分子量最小値までの分子量分布曲線と重量分率0%に対応する横軸で挟まれた部分の面積を示す。
【請求項2】
下記式(2)を満足する少なくとも2種のポリアミド樹脂を配合して得られる請求項記載のポリアミド樹脂。
0.28≦M/(M+N)≦0.45 (2)
上記式(2)中、Mは主成分であるポリアミド樹脂の25℃における相対粘度を示し、Nは主成分であるポリアミド樹脂に配合されるポリアミド樹脂の25℃における相対粘度を示す。
【請求項3】
請求項1または2記載のポリアミド樹脂100重量部に対して、さらに亜リン酸、ジ亜リン酸およびそれらの金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物0.001〜3重量部を含有するポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1または2記載のポリアミド樹脂100重量部に対して、さらに無機充填剤5〜200重量部を含有するポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリアミド樹脂100重量部に対して、さらに無機充填剤5〜200重量部を含有し、無機充填剤の総量100重量%中、少なくとも針状充填剤および/または板状充填剤を15〜100重量%含有する請求項記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1または2記載のポリアミド樹脂100重量部に対して、さらに難燃剤1〜50重量部を含有するポリアミド樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリアミド樹脂100重量部に対して、さらに難燃剤1〜50重量部を含有する請求項のいずれか記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項8】
前記難燃剤が少なくともリン含有化合物を含む請求項または記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項9】
主成分であるポリアミド樹脂と、下記式(2)を満足する相対粘度を有するポリアミド樹脂を溶融混練する請求項1または2記載のポリアミド樹脂の製造方法。
0.28≦M/(M+N)≦0.45 (2)
上記式(2)中、Mは主成分であるポリアミド樹脂の25℃における相対粘度を示し、Nは主成分であるポリアミド樹脂に配合されるポリアミド樹脂の25℃における相対粘度を
示す。
【請求項10】
主成分であるポリアミド樹脂に対して、少なくとも下記式(2)を満足する相対粘度を有するポリアミド樹脂と、亜リン酸、ジ亜リン酸およびそれらの金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物、無機充填剤および/または難燃剤とを溶融混練する請求項いずれか記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
0.28≦M/(M+N)≦0.45 (2)
上記式(2)中、Mは主成分であるポリアミド樹脂の25℃における相対粘度を示し、Nは主成分であるポリアミド樹脂に配合されるポリアミド樹脂の25℃における相対粘度を示す。
【請求項11】
請求項1または2記載のポリアミド樹脂または請求項のいずれか記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる電気・電子部品。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂およびポリアミド樹脂組成物、ならびにそれを成形してなる電気・電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド6およびポリアミド66に代表されるポリアミド樹脂は、その優れた諸特性を活かし、数々の機械部品、電気・電子部品、自動車部品として採用されている。その中でも特にコネクタ用途においては、ポリアミド樹脂が広く採用されている。
【0003】
近年、電気・電子機器の小型化、軽量化や薄肉化に伴い、その部品に対しても、更なる薄肉化や形状の複雑化が求められている。これらの要求に対して、樹脂の流動性が不十分な場合には、薄肉や複雑形状の部品の未充填が起こり得ることや、成形時に高い充填圧力を要するために部品が残留応力を抱えてしまうことから、樹脂の流動性改良が求められている。また、近年では、環境面の配慮から鉛フリーはんだ対応の電気・電子製品が数多く見られるようになってきているが、鉛フリーはんだに対応するためには、高い耐熱性が要求される。さらに、コネクタ等の小型の電気・電子部品をアセンブリーする際に端子を圧入することが多く、充分な圧入強度を有することが要求されている。
【0004】
これらの要求に対して、機械的特性などを改善する手法として、例えば、ジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とし、ジアミン成分が1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンのいずれかであるポリアミド樹脂および繊維状強化材を含有するポリアミド樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)や、ジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とし、ジアミン成分が1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンのいずれかであり、過冷却度ΔTが40℃以下であるポリアミド樹脂と難燃剤を含有するポリアミド樹脂組成物(例えば、特許文献2参照)や、数平均分子量が23000〜50000の範囲にあるポリアミド66とガラス繊維を含有するポリアミド樹脂組成物(例えば、特許文献3参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−28798号公報
【特許文献2】特開2013−56969号公報
【特許文献3】国際公開第2006/054774号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1〜2に記載されたポリアミド樹脂組成物は、流動性が不十分であった。また、成形品が脆く、圧入強度が不十分である課題があった。一方、上記特許文献3に記載されたポリアミド樹脂組成物は、高温加工時に分解して成形時にガスが多量に発生し、流動性および耐熱性が不十分である課題があった。また、成形品が脆く、圧入強度が不十分である課題があった。
【0007】
本発明は、これら従来技術の課題に鑑み、流動性に優れ、高い耐熱性および圧入強度を有する成形品を得ることのできるポリアミド樹脂組成物と、それを用いた電気・電子部品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため、本発明は主として下記構成を有する。
[1]下記式(1)を満足するポリメタクリル酸メチル換算分子量分布を有するポリアミド樹脂であって、
前記ポリアミド樹脂が、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)およびポリデカメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンドデカミドコポリマー(ポリアミド10T/612)からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
重量平均分子量(Mw)が9000以上15000未満であるポリアミド樹脂
Q/P≦1.45 (1)
上記式(1)中、Pは、ポリアミド樹脂の分子量分布曲線において、分子量分布曲線の最頻値の重量分率を100%とした時、重量分率70%に対応する点のうち分子量の最も高い点から分子量最大値までの分子量分布曲線と重量分率0%に対応する横軸で挟まれた部分の面積を示す。Qは、分子量分布曲線において、重量分率70%に対応する点のうち分子量の最も低い点から分子量最小値までの分子量分布曲線と重量分率0%に対応する横軸で挟まれた部分の面積を示す。
]下記式(2)を満足する少なくとも2種のポリアミド樹脂を配合して得られる[1]記載のポリアミド樹脂。
0.28≦M/(M+N)≦0.45 (2)
上記式(2)中、Mは主成分であるポリアミド樹脂の25℃における相対粘度を示し、Nは主成分であるポリアミド樹脂に配合されるポリアミド樹脂の25℃における相対粘度を示す。
][1]または[2]記載のポリアミド樹脂100重量部に対して、さらに亜リン酸、ジ亜リン酸およびそれらの金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物0.001〜3重量部を含有するポリアミド樹脂組成物。
][1]または[2]記載のポリアミド樹脂100重量部に対して、さらに無機充填剤5〜200重量部を含有するポリアミド樹脂組成物。
]前記ポリアミド樹脂100重量部に対して、さらに無機充填剤5〜200重量部を含有し、無機充填剤の総量100重量%中、少なくとも針状充填剤および/または板状充填剤を15〜100重量%含有する[]記載のポリアミド樹脂組成物。
][1]または[2]記載のポリアミド樹脂100重量部に対して、さらに難燃剤1〜50重量部を含有するポリアミド樹脂組成物。
]前記ポリアミド樹脂100重量部に対して、さらに難燃剤1〜50重量部を含有する[]〜[]のいずれか記載のポリアミド樹脂組成物。
]前記難燃剤が少なくともリン含有化合物を含む[]または[]記載のポリアミド樹脂組成物。
]主成分であるポリアミド樹脂と、下記式(2)を満足する相対粘度を有するポリアミド樹脂を溶融混練する[1]または[2]記載のポリアミド樹脂の製造方法。
0.28≦M/(M+N)≦0.45 (2)
上記式(2)中、Mは主成分であるポリアミド樹脂の25℃における相対粘度を示し、Nは主成分であるポリアミド樹脂に配合されるポリアミド樹脂の25℃における相対粘度を示す。
10]主成分であるポリアミド樹脂に対して、少なくとも下記式(2)を満足する相対粘度を有するポリアミド樹脂と、亜リン酸、ジ亜リン酸およびそれらの金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物、無機充填剤および/または難燃剤とを溶融混練する[]〜[]のいずれか記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
0.28≦M/(M+N)≦0.45 (2)
上記式(2)中、Mは主成分であるポリアミド樹脂の25℃における相対粘度を示し、Nは主成分であるポリアミド樹脂に配合されるポリアミド樹脂の25℃における相対粘度を示す。
11][1]または[2]記載のポリアミド樹脂または[]〜[]のいずれか記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる電気・電子部品。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリアミド樹脂およびポリアミド樹脂組成物は、流動性および滞留安定性に優れる。本発明のポリアミド樹脂およびポリアミド樹脂組成物によれば、高い耐熱性および圧入強度を有する電気・電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例で用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって得られた、ポリアミド樹脂のポリメタクリル酸メチル換算分子量分布曲線の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明において「重量」とは「質量」を意味する。
【0012】
本発明のポリアミド樹脂は、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンおよびジカルボン酸の残基を主たる構成成分とする樹脂である。アミノ酸残基を構成する原料としては、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸やこれらの誘導体などが挙げられる。ラクタム残基を構成する原料としては、例えば、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタムやこれらの誘導体などが挙げられる。ジカルボン酸残基を構成する原料としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシリン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸やこれらの誘導体などが挙げられる。ジアミン残基を構成する原料としては、例えば、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ジアミノノナン、1,10−デカンジアミン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ドデカンジアミン、1,13−ジアミノトリデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,15−ジアミノペンタデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,17−ジアミノヘプタデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、1,19−ジアミノノナデカン、1,20−ジアミノエイコサン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタンなどの脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンなどの脂環式ジアミン、キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミンなどが挙げられる。
【0013】
本発明のポリアミド樹脂の具体例としては、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリペンタメチレンアジパミド(ポリアミド56)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリノナメチレンアジパミド(ポリアミド96)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリテトラメチレンセバカミド(ポリアミド410)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリデカメチレンセバカミド(ポリアミド1010)、ポリドデカメチレンセバカミド(ポリアミド1210)、ポリテトラメチレンドデカミド(ポリアミド412)、ポリペンタメチレンドデカミド(ポリアミド512)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリテトラメチレンテレフタルアミド(ポリアミド4T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド(ポリアミド5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリオクタメチレンテレフタルアミド(ポリアミド8T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド12T)、ポリテトラメチレンイソフタルアミド(ポリアミド4I)、ポリペンタメチレンイソフタルアミド(ポリアミド5I)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリオクタメチレンイソフタルアミド(ポリアミド8I)、ポリノナメチレンイソフタルアミド(ポリアミド9I)、ポリデカメチレンイソフタルアミド(ポリアミド10I)、ポリドデカメチレンイソフタルアミド(ポリアミド12I)、ポリテトラメチレンフタルアミド(ポリアミド4N)、ポリペンタメチレンフタルアミド(ポリアミド5N)、ポリヘキサメチレンフタルアミド(ポリアミド6N)、ポリオクタメチレンフタルアミド(ポリアミド8N)、ポリノナメチレンフタルアミド(ポリアミド9N)、ポリデカメチレンフタルアミド(ポリアミド10N)、ポリドデカメチレンフタルアミド(ポリアミド12N)、ポリテトラメチレンセバカミド/ポリカプロアミドコポリマー(ポリアミド410/6)、ポリペンタメチレンセバカミド/ポリカプロアミドコポリマー(ポリアミド510/6)、ポリヘキサメチレンセバカミド/ポリカプロアミドコポリマー(ポリアミド610/6)、ポリデカメチレンセバカミド/ポリカプロアミドコポリマー(ポリアミド1010/6)、ポリテトラメチレンセバカミド/ポリテトラメチレンアジパミドコポリマー(ポリアミド410/46)、ポリペンタメチレンセバカミド/ポリテトラメチレンアジパミドコポリマー(ポリアミド510/46)、ポリヘキサメチレンセバカミド/ポリテトラメチレンアジパミドコポリマー(ポリアミド610/46)、ポリデカメチレンセバカミド/ポリテトラメチレンアジパミドコポリマー(ポリアミド1010/46)、ポリテトラメチレンセバカミド/ポリペンタメチレンアジパミドコポリマー(ポリアミド410/56)、ポリペンタメチレンセバカミド/ポリペンタメチレンアジパミドコポリマー(ポリアミド510/56)、ポリヘキサメチレンセバカミド/ポリペンタメチレンアジパミドコポリマー(ポリアミド610/56)、ポリデカメチレンセバカミド/ポリペンタメチレンアジパミドコポリマー(ポリアミド1010/56)、ポリテトラメチレンセバカミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ポリアミド410/66)、ポリペンタメチレンセバカミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ポリアミド510/66)、ポリヘキサメチレンセバカミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ポリアミド610/66)、ポリテトラメチレンセバカミド/ポリヘキサメチレンドデカミドコポリマー(ポリアミド410/612)、ポリペンタメチレンセバカミド/ポリヘキサメチレンドデカミドコポリマー(ポリアミド510/612)、ポリヘキサメチレンセバカミド/ポリヘキサメチレンドデカミドコポリマー(ポリアミド610/612)、ポリデカメチレンセバカミド/ポリヘキサメチレンドデカミドコポリマー(ポリアミド1010/612)、ポリドデカメチレンセバカミド/ポリヘキサメチレンドデカミドコポリマー(ポリアミド1210/612)、ポリテトラメチレンセバカミド/ポリペンタメチレンセバカミドポリマー(ポリアミド410/510)、ポリテトラメチレンセバカミド/ポリヘキサメチレンセバカミドポリマー(ポリアミド410/610)、ポリテトラメチレンセバカミド/ポリデカメチレンセバカミドポリマー(ポリアミド410/1010)、ポリテトラメチレンセバカミド/ポリドデカメチレンセバカミドポリマー(ポリアミド410/1210)、ポリペンタメチレンセバカミド/ポリヘキサメチレンセバカミドポリマー(ポリアミド510/610)、ポリペンタメチレンセバカミド/ポリデカメチレンセバカミドポリマー(ポリアミド510/1010)、ポリペンタメチレンセバカミド/ポリドデカメチレンセバカミドポリマー(ポリアミド510/1210)、ポリヘキサメチレンセバカミド/ポリデカメチレンセバカミドポリマー(ポリアミド610/1010)、ポリヘキサメチレンセバカミド/ポリドデカメチレンセバカミドポリマー(ポリアミド610/1210)、ポリデカメチレンセバカミド/ポリドデカメチレンセバカミドポリマー(ポリアミド1010/1210)、ポリデカメチレンテレフタルアミド/ポリテトラメチレンセバカミドポリマー(ポリアミド10T/410)、ポリデカメチレンテレフタルアミド/ポリペンタメチレンセバカミドポリマー(ポリアミド10T/510)、ポリデカメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンセバカミドポリマー(ポリアミド10T/610)、ポリデカメチレンテレフタルアミド/ポリデカメチレンセバカミドポリマー(ポリアミド10T/1010)、ポリデカメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンドデカミドポリマー(ポリアミド10T/612)、ポリデカメチレンテレフタルアミド/ポリテトラメチレンアジパミドコポリマー(ポリアミド10T/46)、ポリデカメチレンテレフタルアミド/ポリペンタメチレンアジパミドコポリマー(ポリアミド10T/56)、ポリデカメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ポリアミド10T/66)、ポリデカメチレンテレフタルアミド/ポリドデカメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド10T/12T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド/ポリテトラメチレンセバカミドポリマー(ポリアミド12T/410)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド/ポリペンタメチレンセバカミドポリマー(ポリアミド12T/510)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンセバカミドポリマー(ポリアミド12T/610)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド/ポリデカメチレンセバカミドポリマー(ポリアミド12T/1010)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンドデカミドポリマー(ポリアミド12T/612)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド/ポリテトラメチレンアジパミドコポリマー(ポリアミド12T/46)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド/ポリペンタメチレンアジパミドコポリマー(ポリアミド12T/56)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ポリアミド12T/66)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド/ポリデカメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド12T/10I)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド/ポリドデカメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド12T/12I)などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。ここで、「/」は共重合体を示す。これらのポリアミド樹脂の中で、耐熱性および圧入強度をより向上させる観点から、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)およびポリデカメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンドデカミドコポリマー(ポリアミド10T/612)がより好ましい。
【0014】
本発明のポリアミド樹脂は、ポリメタクリル酸メチル換算分子量分布が下記式(1)を満足することを特徴とする。
Q/P≦1.45 (1)
【0015】
上記式(1)中、Pは、ポリアミド樹脂の分子量分布曲線において、分子量分布曲線の最頻値の重量分率を100%とした時、重量分率70%に対応する点のうち分子量の最も高い点から分子量最大値までの分子量分布曲線と重量分率0%に対応する横軸で挟まれた部分の面積を示す。Qは、分子量分布曲線において、重量分率70%に対応する点のうち分子量の最も低い点から分子量最小値までの分子量分布曲線と重量分率0%に対応する横軸で挟まれた部分の面積を示す。
【0016】
ここで、ポリアミド樹脂のポリメタクリル酸メチル換算分子量分布は、ポリアミド樹脂をヘキサフルオロイソプロパノール(0.005N−トリフルオロ酢酸ナトリウム添加)4.0mlに溶解した溶液(樹脂濃度:6.2ppm(wt/wt))を、温度条件を30℃に設定したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)に0.1ml注入し、ポリメタクリル酸メチルで換算することにより求めることができる。なお、GPC測定のカラムはShodex HFIP−806M(2本)+HFIP−LGを用い、流速は0.5ml/min、試料注入量は0.1mlとする。
【0017】
図1に、本発明のGPCによって得られた、ポリアミド樹脂のポリメタクリル酸メチル換算分子量分布曲線の一例の概略図を示す。横軸はポリメタクリル酸メチル換算分子量[g/mol]、縦軸は各分子量に対応するポリアミド樹脂の重量分率を示す。図1において、面積Pは、ポリメタクリル酸メチル換算分子量分布曲線1において、分子量分布曲線1の最頻値2の重量分率を100%とした時、重量分率70%に対応する点のうち分子量の最も高い点3から分子量最大値に対応する点4までの分子量分布曲線と重量モル分率0%に対応する横軸で挟まれた部分の面積(点3から点4までの分子量分布曲線と、重量モル分率0%に対応する横軸と、点3から横軸におろした垂線で囲まれた部分の面積)を示している。すなわち、Pは、ポリアミド樹脂中における、より高分子量の成分の割合を示す指標である。一方、面積Qは、重量モル分率70%に対応する点のうち分子量の最も低い点5から分子量最小値に対応する点6までの分子量分布曲線と重量モル分率0%に対応する横軸で挟まれた部分の面積(点5から点6までの分子量分布曲線と、重量モル分率0%に対応する横軸と、点5から横軸におろした垂線で囲まれた部分の面積)を示す。すなわち、Qは、ポリアミド樹脂中における、より低分子量の成分の割合を示す指標である。
【0018】
面積比Q/Pの値が大きいほど、ポリアミド樹脂中における、より低分子量の成分の割合が高いことになる。一般的なポリアミド樹脂として、例えば、公知のポリアミド66について分子量分布を測定すると、面積比Q/Pの値は1.6〜1.7程度となる。この結果は、公知のポリアミド66の場合、低分子量成分の量が多く、面積Qが増加するためと考えられる。
【0019】
本発明のポリアミド樹脂は、前記式(1)を満足する分子量分布を有する。面積比Q/Pの値は、ポリアミド樹脂の分子量分布における、低分子量成分の割合を表す指標であり、前記式(1)は、低分子量成分が適度に低減されていることを意味する。Q/Pの値が1.45を超えると、ポリアミド樹脂中において分子量がより小さい成分の割合が増大し、流動性が低下する。また、成形品の圧入強度が低下する。Q/Pの値が1.45以下であると、さらに滞留安定性および難燃性を向上させ、リフロー時の収縮を抑制することができる。Q/Pの値は1.35以下が好ましい。一方、Q/Pの値は1.20以上が好ましい。Q/Pの値が1.20以上であると、高分子量成分の割合を適度に抑え、流動性をより向上させることができる。
【0020】
Q/Pの値を前述の範囲にする手段としては、例えば、ポリアミド樹脂の重合を進めて低分子量成分を少なくする方法、分子量の異なる少なくとも2種のポリアミド樹脂を配合する方法などが挙げられる。少なくとも2種のポリアミド樹脂を配合する場合、ポリアミド樹脂間における重合反応および/またはアミド交換反応により、ポリアミド樹脂全体としての分子量を増大させ、面積Qの割合を低減することも可能である。このため、分子量の異なる少なくとも2種のポリアミド樹脂を配合する方法が好ましい。より具体的には、下記式(2)を満足する少なくとも2種のポリアミド樹脂を配合することが好ましい。
0.28≦M/(M+N)≦0.45 (2)
【0021】
上記式(2)中、Mは主成分であるポリアミド樹脂の相対粘度を示し、Nは主成分であるポリアミド樹脂に配合されるポリアミド樹脂の25℃における相対粘度を示す。また、主成分とは、配合する2種以上のポリアミド樹脂中、質量換算で最も配合量の多い成分を指し、以下同じとする。また、ポリアミド樹脂の相対粘度は、ポリアミド樹脂を98%硫酸に濃度0.01g/mlで溶解した溶液について、25℃でオストワルド式粘度計を用いて測定することができる。
【0022】
M/(M+N)の値を0.28以上にすることにより、圧入強度をより向上させることができる。耐熱性をより向上させる観点から、M/(M+N)の値は0.30以上がより好ましい。一方、M/(M+N)の値を0.45以下にすることにより、圧入強度および滞留安定性をより向上させることができる。
【0023】
本発明のポリアミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、15000未満であることが好ましい。Mwを15000未満にすることにより、流動性および圧入強度をより向上させることができる。14000未満が好ましい。一方、圧入強度をより向上させる観点から、ポリアミド樹脂のMwは、9000以上が好ましい。なお、ポリアミド樹脂を複数含む場合には、ポリアミド樹脂全体のMwが上記範囲にあることが好ましい。ここで、ポリアミド樹脂のMwは、ポリアミド樹脂をヘキサフルオロイソプロパノール(0.005N−トリフルオロ酢酸ナトリウム添加)4mlに溶解した溶液(樹脂濃度:6.2ppm(wt/wt)を、温度条件を30℃に設定したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)に0.1ml注入し、検出器として示差屈折率計を用いて、検出したポリメタクリル酸メチル換算分子量から算出することができる。なお、GPC測定のカラムはShodex HFIP−806M(2本)+HFIP−LGを用い、流速は0.5ml/min、試料注入量は0.1mlとする。
【0024】
次に、本発明のポリアミド樹脂の製造方法について説明する。ポリアミド樹脂の製造方法としては、例えば、原料となるラクタム、アミノカルボン酸、ジアミン成分とジカルボン酸成分またはその塩を加熱して低次縮合物を得て、さらに固相重合および/または溶液重合により高重合度化する方法や、低次縮合物を溶融高重合度化する方法などが挙げられる。例えば、重合缶などの圧力容器にポリアミド樹脂の原料を一括仕込みして加熱することにより低次縮合物を得て、これを固相重合、溶液重合または溶融重合させることにより、ポリアミド樹脂を得ることができる。また、2種以上のポリアミド樹脂の原料をそれぞれ圧力容器で固相重合、溶液重合または溶融重合して得られるポリアミド樹脂を、溶融混練してもよい。
【0025】
低次縮合物を高重合度化する方法としては、低次縮合物を一旦取り出して、固相重合、溶液重合および/または溶融重合する2段重合、低次縮合物の製造工程に続いて、同一反応容器内で固相重合、溶液重合および/または溶融重合する1段重合のどちらを用いてもよい。なお、固相重合とは、100℃以上融点以下の温度範囲で、減圧下あるいは不活性ガス中で加熱する工程を指し、溶融重合とは、常圧または減圧下で融点以上に加熱する工程を指す。
【0026】
溶融高重合度化に用いられる溶融混練装置としては、例えば、押出機やニーダーが挙げられるが、生産性の点から、連続的に溶融混練可能な押出機が好ましい。押出機としては、単軸押出機、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機、二軸単軸複合押出機等を1台以上使用できるが、混練性、反応性、生産性の向上の点から、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機が好ましく、二軸押出機がより好ましい。
【0027】
ポリアミド樹脂の分子量分布曲線におけるQ/Pの値を前述の範囲にするためには、例えば、分子量の異なる2種以上のポリアミド樹脂を配合することが好ましく、前記式(2)を満足する相対粘度を有するポリアミド樹脂を溶融混練することがより好ましい。
【0028】
本発明のポリアミド樹脂は、さらに他の成分を配合してポリアミド樹脂組成物とすることができる。
【0029】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、さらに亜リン酸、ジ亜リン酸およびそれらの金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有してもよい。これらを2種以上含有してもよい。亜リン酸、ジ亜リン酸およびそれらの金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することにより、耐熱性をより向上させることができる。さらに、前述のポリアミド樹脂と組み合わせることにより、成形品のひずみを低減することができるため、リフロー時の収縮を抑制することができる。
【0030】
金属塩を構成する金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属が挙げられる。亜リン酸またはジ亜リン酸の金属塩として、具体的には、亜リン酸リチウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸バリウム、ジ亜リン酸リチウム、ジ亜リン酸ナトリウム、ジ亜リン酸カリウム、ジ亜リン酸マグネシウム、ジ亜リン酸カルシウム、ジ亜リン酸バリウムなどが挙げられる。これらの中でも、ジ亜リン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウムなどのナトリウム金属塩や、亜リン酸カルシウム、ジ亜リン酸カルシウムなどのカルシウム金属塩がより好ましく、耐熱性をより向上させ、リフロー時の収縮をより抑制することができる。
【0031】
本発明のポリアミド樹脂組成物における亜リン酸、ジ亜リン酸およびそれらの金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の含有量は、ポリアミド樹脂100重量部に対し、0.001〜3重量部が好ましい。これらの化合物の含有量を0.001重量部以上とすることにより、耐熱性をより向上させ、リフロー時の収縮をより抑制することができる。0.01重量部以上がより好ましい。一方、これらの化合物の含有量を3重量部以下とすることにより、ポリアミド樹脂組成物の分解を抑制しながら、圧入強度をより向上させることができる。
【0032】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、さらに無機充填剤を含有してもよい。無機充填剤を含有することにより、成形品の圧入強度および剛性をより向上させることができる。
【0033】
無機充填剤としては、繊維状、針状、板状、球状、破砕状などの無機充填剤を挙げることができ、特に形状は限定されない。具体的には、繊維状無機充填剤としては、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、炭酸カルシウムウィスカ、ワラステナイトウィスカ、硼酸アルミウィスカ、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、炭化珪素、燐酸カルシウムなどが挙げられる。針状無機充填剤としては、ワラステナイト、針状炭酸カルシウムなどの金属炭酸塩、針状酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物、アスベストなどが挙げられる。板状無機充填剤としては、タルク、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、板状炭酸カルシウム、ガラスフレーク、黒鉛、板状アルミナ、モンモリロナイト、パイロフィライト、ベントナイト、ゼオライト、酸化マグネシウム、酸化珪素、酸化ジルコニウムなどの金属酸化物、炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属硫酸塩、窒化ホウ素、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイトなどのスメクタイト系粘度鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウムなどの各種粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母などの膨潤性雲母に代表される層状珪酸塩などが挙げられる。球状無機充填剤としては、アルミナシリケートなどの金属珪酸塩、ガラス・ビーズ、セラミックビーズ、水酸化マグネシウム、カーボンブラック、シリカなどが挙げられる。破砕状無機充填剤としては、ガラス粉などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。また、無機充填剤は、その表面が公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理されたものであってもよい。
【0034】
これら無機充填剤の中でも、ガラス繊維、タルク、マイカ、ワラステナイト、ガラスフレーク、層状珪酸塩が好ましい。ガラス繊維を含有することにより、成形品の圧入強度をより向上させることができる。また、ワラステナイト、マイカ、ガラスフレークおよびタルクなどの針状または板状充填剤を含有することがより好ましく、リフロー時の収縮をより抑制し、成形品の圧入強度をより向上させることができる。針状充填剤および/または板状充填剤の含有量は、無機充填剤の総量100重量%中、15〜100重量%が好ましい。針状充填剤および/または板状充填剤の含有量を15重量%以上とすることにより、成形品の圧入強度をより向上させることができる。20重量%以上がより好ましい。なお、針状充填剤および/または板状充填剤の含有量とは、針状充填剤または板状充填剤のいずれか一方を含有する場合には、その含有量を指し、これらを両方含有する場合には、その合計量を指す。
【0035】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、針状充填剤および/または板状充填剤を前述の範囲で含有し、さらに、亜リン酸、ジ亜リン酸およびそれらの金属塩からなる群より選ばれる化合物を含有することが好ましく、滞留安定性および耐熱性をより向上させ、リフロー時の収縮をより抑制することができる。
【0036】
本発明に用いられるガラス繊維は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ系、ウレタン系、アクリル系などの被覆剤あるいは収束剤で処理されたものでもよい。
【0037】
また、板状無機充填剤のアスペクト比は、ポリアミド樹脂との分散性の観点から、50以下が好ましく、30以下がさらに好ましい。また、針状無機充填剤の繊維長は、100μm以下が好ましく、30μm以下がさらに好ましい。
【0038】
本発明のポリアミド樹脂組成物における無機充填剤の含有量は、ポリアミド樹脂100重量部に対し、5〜200重量部が好ましい。無機充填剤の含有量を5重量部以上とすることにより、成形品の圧入強度および耐熱性をより向上させることができる。一方、無機充填剤の含有量を200重量部以下とすることにより、ポリアミド樹脂組成物の流動性をより高いレベルで維持することができる。流動性をより向上させる観点から、150重量部以下がより好ましく、100重量部以下がより好ましい。
【0039】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、さらに難燃剤を含有してもよい。前述のポリアミド樹脂とともに難燃剤を含有することにより、難燃性を向上させることができる。
【0040】
難燃剤としては、リン系難燃剤(リン含有化合物)、窒素系難燃剤および金属水酸化物系難燃剤などのハロゲン原子を含まない非ハロゲン系難燃剤や、臭素系難燃剤などのハロゲン系難燃剤などを挙げることができる。これらを2種以上含有してもよい。これら難燃剤の中でも、リン含有化合物を含むことが好ましく、高温での難燃剤の分解を防ぎ、高い耐熱性を維持することができる。
【0041】
リン含有化合物としては、具体的には、赤燐、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミンなどのポリリン酸系化合物、(ジ)ホスフィン酸金属塩、ホスファゼン化合物、芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、ハロゲン化リン酸エステルなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらリン含有化合物を含む難燃剤の中で、耐熱性および滞留安定性をより向上させる観点から、(ジ)ホスフィン酸金属塩がより好ましい。
【0042】
本発明のポリアミド樹脂組成物における難燃剤の含有量は、ポリアミド樹脂100重量部に対して、1〜50重量部が好ましい。難燃剤の含有量を1重量部以上とすることにより、難燃性を効果的に発現できる。15重量部以上がより好ましい。一方、難燃剤の含有量を50重量部以下とすることにより、流動性をより高いレベルに維持することができる。
【0043】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、特性を損なわない範囲で、さらに樹状ポリエステル樹脂を含有してもよく、流動性をより向上させることができる。流動性をより向上させる観点から、樹状ポリエステル樹脂の含有量は、ポリアミド樹脂100重量部に対し、1重量部以上が好ましい。一方、ポリアミド樹脂組成物の一般物性を維持する観点から、樹状ポリエステル樹脂の含有量は、ポリアミド樹脂100重量部に対して、5重量部以下が好ましい。
【0044】
樹状ポリエステル樹脂としては、下記一般式(3)で表される芳香族オキシカルボニル単位(S)、芳香族および/または脂肪族ジオキシ単位(T)、および、芳香族ジカルボニル単位(U)からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位と3官能以上の有機残基(D)とを含み、かつ、(D)との含有量が樹状ポリエステルを構成する全単量体に対して7.5〜50モル%の範囲にある樹状ポリエステル樹脂が好ましい。(S)、(T)および(U)を全て含むことがより好ましい。
【0045】
【化1】
【0046】
ここで、R1およびR3は、それぞれ芳香族残基である。R2は、芳香族残基または脂肪族残基である。樹状ポリエステル樹脂において、複数のR1、R2およびR3は、それぞれ同じでも異なってもよい。R1、R2およびR3は、それぞれ下式で表される構造が好ましい。
【0047】
【化2】
【0048】
ただし、式中Yは同じでも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基である。アルキル基の炭素数は1〜4が好ましい。式中nは2〜8の整数である。
【0049】
具体的には、R1は芳香族オキシカルボニル単位由来の構造であり、好ましくはp−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位であり、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸由来の構造単位を一部に含有することも可能である。R2は芳香族および/または脂肪族ジオキシ単位由来の構造であり、4,4’−ジヒドロキシビフェニルとハイドロキノンもしくは4,4’−ジヒドロキシビフェニルとエチレングリコールから生成した構造単位が含まれることが液晶性の制御の点から好ましい。R3は芳香族ジカルボニル単位から生成される構造単位であり、好ましくはテレフタル酸、イソフタル酸から生成した構造単位であり、特に両者を併用した場合に融点調節がしやすく好ましい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、セバシン酸やアジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸から生成される構造単位を一部に含有してもよい。
【0050】
本発明における樹状ポリエステル樹脂は、3官能以上の有機残基(D)が、互いにエステル結合および/またはアミド結合により直接、あるいは、枝構造部分であるS、TおよびUから選ばれる構造単位を介して結合した、3分岐以上の分岐構造を基本骨格とする。分岐構造は、3分岐、4分岐など単一の基本骨格で形成されていてもよいし、3分岐と4分岐など、複数の基本骨格で形成されていてもよい。ポリマーの全てが該基本骨格からなる必要はなく、例えば末端封鎖のために末端に他の構造が含まれてもよい。また、Dが3官能の有機残基である場合には、樹状ポリエステル樹脂中には、Dの3つの官能基が全て反応している構造、2つだけが反応している構造、および1つだけしか反応していない構造が混在していてもよい。Dの3つの官能基が全て反応した構造が、D全体に対して30モル%以上であることが好ましい。また、Dが4官能の有機残基である場合には、樹状ポリエステル樹脂中には、Dの4つの官能基が全て反応している構造、3つだけが反応している構造、2つだけが反応している構造、および1つしか反応していない構造が混在していてもよい。Dの4つの官能基が全て反応した構造がD全体に対して25モル%以上かつ3つの官能基が反応した構造が35モル%以上であることが好ましい。
【0051】
Dは3官能化合物および/または4官能化合物の有機残基であることが好ましく、3官能化合物の有機残基であることが最も好ましい。
【0052】
本発明における樹状ポリエステル樹脂は、溶融液晶性を示すことが好ましい。ここで溶融液晶性を示すとは、室温から昇温した際に、ある温度域で液晶状態を示すことである。液晶状態とは、せん断下において光学的異方性を示す状態である。
【0053】
溶融液晶性を示すために、3分岐の場合の基本骨格は、下式(4)で示されるように、有機残基(D)が、S、TおよびUからなる群より選ばれる構造単位により構成される枝構造部分Rを介して結合していることが好ましい。同様に、4分岐の場合の基本骨格は、下式(5)で示される構造が好ましい。
【0054】
【化3】
【0055】
Dで表される3官能の有機残基については特に限定されないが、カルボキシル基、ヒドロキシル基およびアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を含有する化合物の有機残基であることが好ましい。トリメシン酸、α−レゾルシル酸の残基が好ましく、特に好ましくはトリメシン酸由来の残基である。
【0056】
また、4官能以上の有機残基Dとしては、カルボキシル基、ヒドロキシル基およびアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を含有する化合物の有機残基であることが好ましい。1,2,4,5−ベンゼンテトラオール、1,2,3,4−ベンゼンテトラオール、1,2,3,5−ベンゼンテトラオール、ピロメリット酸、メロファン酸、プレーニト酸、没食子酸などの残基が好ましく、没食子酸の残基が特に好ましい。
【0057】
本発明における樹状ポリエステル樹脂の枝構造部分は、主としてポリエステル骨格からなることが好ましいが、カーボネート構造やアミド構造、ウレタン構造などを特性に大きな影響を与えない程度に導入することも可能であり、中でもアミド構造を導入することが好ましい。このような別の結合を導入することで、多種多様な熱可塑性樹脂に対する相溶性を調整することができる。アミド構造の導入方法としては、p−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸を共重合する方法が好ましい。
【0058】
本発明において使用する上記樹状ポリエステル樹脂の製造方法は、特に制限がなく、公知のポリエステルの重縮合法に準じて製造できる。前記R1、R2、R3で表される構造単位を構成する原料単量体をアシル化した後、3官能単量体を反応させる際に、3官能単量体の添加量(モル)を全仕込み単量体(モル)に対して7.5モル%以上となるようにして製造する方法が好ましい。より具体的には、例えば、特開2011−195814号公報に記載の樹状ポリエステル樹脂の製造方法を用いることができる。
【0059】
また、本発明における樹状ポリエステル樹脂は、末端封鎖されていてもよい。末端封鎖の方法としては、例えば、樹状ポリエステル樹脂を合成する際に、あらかじめ単官能の有機化合物を添加する方法や、ある程度樹状ポリエステル樹脂の骨格が形成された段階で単官能の有機化合物を添加する方法などが挙げられる。
【0060】
末端封鎖に用いられる単官能の有機化合物としては、例えば、単官能エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オルトエステル、酸無水物化合物などが挙げられる。水酸基末端やアセトキシ末端を封鎖する場合には、単官能の有機化合物として、安息香酸、4−t−ブチル安息香酸、3−t−ブチル安息香酸、4−クロロ安息香酸、3−クロロ安息香酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、3,5−ジメチル安息香酸などが好ましく用いられる。また、カルボキシル基末端を封鎖する場合には、単官能の有機化合物として、常温または加熱時にカルボン酸と反応し、エステル、アミド、ウレタン、ウレア結合を形成しうる官能基を分子内に1つ有する化合物が好ましく用いられる。樹状ポリエステル樹脂の末端を封鎖することにより、樹状ポリエステル樹脂の滞留安定性や耐加水分解性を向上させることができる。また、ポリアミド樹脂組成物における樹状ポリエステルの分散性が向上することによって、流動性や物性のさらなる改良が期待できる。
【0061】
また、有機残基Dの含有量は、樹状ポリエステル樹脂を構成する全単量体に対する、有機残基を生成する多官能化合物の配合割合を示し、その含有量は7.5モル%以上が好ましく、13モル%以上がより好ましい。有機残基Dの含有量の上限としては、50モル%以下が好ましく、40モル%以下がより好ましい。また本発明における樹状ポリエステル樹脂は特性に影響が出ない範囲で、部分的に架橋構造を有していてもよい。
【0062】
また、本発明における樹状ポリエステル樹脂の末端は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基またはそれらの基を有する誘導体の残基であることが好ましい。ヒドロキシル基またはカルボキシル基を有する誘導体としては、例えば、メチルエステルなどのアルキルエステルや、フェニルエステルやベンジルエステルなどの芳香族エステルなどが挙げられる。
【0063】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、特性を損なわない範囲で、必要に応じて各種添加剤など、前記ポリアミド樹脂、亜リン酸、ジ亜リン酸およびそれらの金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(リン系化合物)、無機充填剤、難燃剤以外の成分を含有してもよい。ポリアミド樹脂、リン系化合物、無機充填剤、難燃剤以外の成分をさらに含有することにより、ポリアミド樹脂組成物の流動性、ポリアミド樹脂組成物を用いて得られる成形品の機械特性、耐熱老化性、表面外観、圧入強度などをさらに向上できる場合がある。かかる各種添加剤としては、例えば、結晶核剤、着色防止剤、酸化防止剤(熱安定剤)、摺動剤、耐候剤、離型剤、可塑剤、滑剤、染料系着色剤、顔料系着色剤、帯電防止剤、発泡剤などを挙げることができる。これらを2種以上含有してもよい。
【0064】
次に、本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法について説明する。本発明のポリアミド樹脂組成物は、例えば、前記各成分を溶融状態で混練する方法や、溶液状態で混合する方法などにより得ることができる。2種以上のポリアミド樹脂のそれぞれ重合缶などの圧力容器で溶液重合、固相重合または溶融重合した後、これらを他の成分とともに溶融状態で混練または溶液状態で混合してもよい。溶融状態における混練方法としては、押出機による溶融混練やニーダーによる溶融混練等が挙げられるが、生産性の点から、連続的に製造可能な押出機による溶融混練が好ましい。押出機としては、ポリアミド樹脂の製造方法において溶融高重合度化に用いられる押出機として例示したものが挙げられ、二軸押出機が好ましい。
【0065】
押出機による溶融混練方法としては、ポリアミド樹脂、必要に応じて無機充填剤、リン系化合物、難燃剤およびその他添加剤を一括混練する方法(一括混練法)、ポリアミド樹脂、必要に応じてその他添加剤を溶融混練した後、サイドフィーダー等を用いて必要に応じてリン系化合物、無機充填剤、難燃剤およびその他添加剤をさらに添加し、溶融混練する方法(サイドフィーダー法−1)、ポリアミド樹脂、必要に応じてリン系化合物、難燃剤およびその他添加剤を溶融混練した後、サイドフィーダー等を用いて無機充填剤およびその他添加剤をさらに添加し、溶融混練する方法(サイドフィーダー法−2)などが挙げられる。あらかじめポリアミド樹脂を溶融混練した後に、リン系化合物、無機充填剤、難燃剤等を供給可能となる点で、サイドフィーダー法が好ましい。
【0066】
二軸押出機を用いた溶融混練によりポリアミド樹脂組成物を製造する場合、二軸押出機の全スクリュー長さLとスクリュー径Dの比(L/D)は、25以上であることが好ましく、30を超えることがより好ましい。L/Dが25以上であると、ポリアミド樹脂を十分に混練した後に、必要に応じてリン系化合物、無機充填剤、難燃剤およびその他添加剤を供給することが容易になる。その結果、ポリアミド樹脂および添加剤がより均一に混合されると考えられ、ポリアミド樹脂組成物の流動性および成形品の圧入強度をより向上させることができる。
【0067】
ポリメタクリル酸メチル分子量分布曲線におけるQ/Pの値が前記範囲にあるポリアミド樹脂を含むポリアミド樹脂組成物を得るためには、少なくとも主成分であるポリアミド樹脂に、前記式(2)を満足する相対粘度を有するポリアミド樹脂と、リン系化合物、無機充填剤および/または難燃剤とを溶融混練することが好ましい。
【0068】
本発明のポリアミド樹脂およびポリアミド樹脂組成物は、通常公知の射出成形、射出圧縮成形、圧縮成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、紡糸などの任意の方法で成形することができ、各種成形品に加工し利用することができる。成形品としては、射出成形品、押出成形品、ブロー成形品、フィルム、シート、繊維などが挙げられる。フィルムとしては、未延伸、一軸延伸、二軸延伸などの各種フィルムとして、繊維としては、未延伸糸、延伸糸、超延伸糸など各種繊維として利用することができる。特に、本発明においては流動性に優れる点を活かして、電気・電子部品等の小型射出成形品や厚み0.01〜1.0mmの薄肉部位を有する射出成形品への加工にも好適である。
【0069】
本発明のポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂組成物およびその成形品は、その優れた特性を活かし、電子部品、電気部品、家庭用品、事務用品、自動車・車両関連部品、建材、スポーツ用品など、様々な用途に使用される。
【0070】
電子部品用途としては、例えば、コネクタ、コイル、センサー、LEDランプ、ソケット、抵抗器、リレーケース、小型スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップシャーシ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに好ましく使用される。
【0071】
電気部品用途としては、例えば、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、ナイフスイッチ、他極ロッド、電気部品、モーターケース、ノートパソコンハウジングおよび内部部品、CRTディスプレーハウジングおよび内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジングおよび内部部品、各種ギヤー、各種ケース、キャビネットなどに好ましく使用される。
【0072】
家庭用品用途、事務用品用途としては、例えば、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ、レーザーディスク(登録商標)、コンパクトディスク、DVD等の音声・映像機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品、パソコンやノートパソコン等の電子機器筐体、オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライター、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに好ましく使用される。
【0073】
自動車・車両関連部品用途としては、例えば、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクタ、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブ等の各種バルブ、燃料関係・冷却系・ブレーキ系・ワイパー系・排気系・吸気系各種パイプ・ホース・チューブ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、電池周辺部品、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、トランスミッション用オイルパン、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ワイヤーハーネスコネクタ、SMJコネクタ、PCBコネクタ、ドアグロメットコネクタ、ヒューズ用コネクタ等の各種コネクタ、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルパン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウォッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、インストルメントパネル、エアバッグ周辺部品、ドアパッド、ピラー、コンソールボックス、各種モーターハウジング、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、ルーフパネル、フードパネル、トランクリッド、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプベゼル、ドアハンドル、ドアモール、リアフィニッシャー、ワイパーなどに好ましく使用される。
【0074】
建材用途としては、例えば、土木建築物の壁、屋根、天井材関連部品、窓材関連部品、断熱材関連部品、床材関連部品、免震・制振部材関連部品、ライフライン関連部品などに好ましく使用される。
【0075】
スポーツ用品用途としては、例えば、ゴルフクラブやシャフト等のゴルフ関連用品、アメリカンフットボールや野球、ソフトボール等のマスク、ヘルメット、胸当て、肘当て、膝当て等のスポーツ用身体保護用品、スポーツシューズの底材等のシューズ関連用品、釣り竿、釣り糸等の釣り具関連用品、サーフィン等のサマースポーツ関連用品、スキー・スノーボード等のウィンタースポーツ関連用品、その他インドアおよびアウトドアスポーツ関連用品などに好ましく使用される。
【0076】
本発明のポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品は、上記各種用途の中でも、流動性、耐熱性および圧入強度に優れる点を生かして、電気・電子部品、例えば、コネクタ、リレーまたはスイッチなどに特に好ましく使用される。
【実施例】
【0077】
以下、実施例により本発明を具体的に詳述するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。本実施例および比較例に用いたポリアミド樹脂(X)は以下の通りである。
【0078】
製造例1:(X−1)ポリアミド10T/612
ジアミン成分であるデカメチレンジアミン(東京化成工業(株)製)とヘキサメチレンジアミン(東京化成工業(株)製)をモル比が91:9になるように混合して混合液を調製した。また、ジカルボン酸成分であるテレフタル酸(東京化成工業(株)製)およびドデカン二酸(東京化成工業(株)製)をモル比が91:9になるように混合して混合液を調製し、ジアミン成分とジカルボン酸成分の全量が10kgで等モル量になるように添加した。さらに、デカメチレンジアミン全量に対して0.5mol%のデカメチレンジアミンおよびヘキサメチレンジアミンの混合液(91/9(mol%比))を過剰に添加し、これら原料の合計70重量部に対して、水30重量部を添加して混合し、加圧容器に仕込んで密閉し、窒素置換した。加熱を開始して、2.0時間かけて240℃まで上昇させ、缶内圧力が2.0MPaに到達した後、水分を系外へ放出させながら缶内圧力2.0MPa、缶内温度240℃で2時間保持した。その後、加圧容器から内容物を吐出し、ポリアミドオリゴマーを得た。得られたポリアミドオリゴマーを粉砕し、100℃で24時間真空乾燥して、50Pa、240℃で固相重合し、ηr=2.10、融点289℃のポリアミド10T/612を得た。なお、得られたポリアミド樹脂の相対粘度ηrは、ポリアミド樹脂を98%硫酸溶液に濃度0.01g/mlで溶解した溶液について、25℃でオストワルド式粘度計を用いて測定した。
【0079】
製造例2:(X−2)ポリアミド10T
デカメチレンジアミン(東京化成工業(株)製)とテレフタル酸(東京化成工業(株)製)を全量10kgになるように等モル量添加し、さらに、デカメチレンジアミン全量に対して0.5mol%のデカメチレンジアミンを過剰に添加し、これら原料の合計70重量部に対して、水30重量部を添加して混合し、加圧容器に仕込んで密閉し、窒素置換した。加熱を開始して2.5時間かけて240℃まで上昇させ、缶内圧力が2.0MPaに到達した後、水分を系外へ放出させながら缶内圧力2.0MPa、缶内温度240℃で2.5時間保持した。その後、加圧容器から内容物を吐出し、ポリアミドオリゴマーを得た。得られたポリアミドオリゴマーを粉砕し、140℃で24時間真空乾燥して、ηr=1.54、融点308℃のポリアミド10Tを得た。
【0080】
製造例3:(X−3)ポリアミド10T/612
ジアミン成分であるデカメチレンジアミン(東京化成工業(株)製)とヘキサメチレンジアミン(東京化成工業(株)製)をモル比が91:9になるように混合して混合液を調製した。また、ジカルボン酸成分であるテレフタル酸(東京化成工業(株)製)およびドデカン二酸(東京化成工業(株)製)をモル比が91:9になるように混合して混合液を調製し、ジアミン成分とジカルボン酸成分の全量が10kgで等モル量になるように添加した。さらに、デカメチレンジアミン全量に対して0.5mol%のデカメチレンジアミンおよびヘキサメチレンジアミンの混合液(91/9モル%比)を過剰に添加し、これら原料の合計70重量部に対して、水30重量部を添加して混合し、加圧容器に仕込んで密閉し、窒素置換した。重合開始から5分後、1.0時間かけて240℃まで上昇させ、缶内圧力が2.0MPaに到達した後、水分を系外へ放出させながら缶内圧力2.0MPa、缶内温度240℃で1.5時間保持した。その後、加圧容器から内容物を吐出し、ポリアミドオリゴマーを得た。得られたポリアミドオリゴマーを粉砕し、140℃で24時間真空乾燥し、ηr=2.02、融点286℃のポリアミド10T/612を得た。
【0081】
(X−4)ポリアミド66
ポリアミド66(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM3001−N)。
【0082】
製造例4:(X−5)ポリアミド10T
デカメチレンジアミン(東京化成工業(株)製)とテレフタル酸(東京化成工業(株)製)を、全量10kgになるように等モル量添加した。さらに、デカメチレンジアミン全量に対して0.5mol%のデカメチレンジアミンを過剰に添加し、これら原料の合計70重量部に対して、水30重量部を添加して混合し、加圧容器に仕込んで密閉し、窒素置換した。加熱を開始して、缶内圧力が2.0MPaに到達した後、水分を系外へ放出させながら缶内圧力2.0MPa、缶内温度240℃で2時間保持した。その後、加圧容器から内容物を吐出し、ポリアミドオリゴマーを得た。得られたポリアミドオリゴマーを粉砕し、100℃で24時間真空乾燥して、50Pa、240℃で固相重合し、ηr=2.480、融点318℃のポリアミド10Tを得た。
【0083】
実施例および比較例に用いた亜リン酸、ジ亜リン酸またはそれらの金属塩(B)は以下の通りである。
(B−1):ジ亜リン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製)
(B−2):ジ亜リン酸カルシウム(太平化学産業(株)製)。
【0084】
実施例および比較例に用いた無機充填剤(C)は以下の通りである。
(C−1):ガラス繊維(日本電気硝子製 T−275H、断面の直径10.5μm、繊維長3mm)
(C−2):ワラステナイト(キンセイマテック(株)製 FPW−400S、アスペクト比4)。
【0085】
実施例および比較例に用いた難燃剤(D)は以下の通りである。
(D−1)リン系難燃剤(クラリアント製ジエチルホスフィン酸アルミ「OP1230」)。
【0086】
各実施例および比較例における特性評価は下記の方法に従って行った。
【0087】
[分子量分布]
各実施例および比較例で得られたペレットを140℃で12時間減圧乾燥した。実施例1〜6、9〜11および比較例1〜4についてはペレットを2.5mg計量し、実施例7〜8、12および比較例5〜9についてはペレット中のポリアミド樹脂分が2.5mgになるようにペレットを計量し、ポリアミド樹脂をヘキサフルオロイソプロパノール(0.005N−トリフルオロ酢酸ナトリウム添加)4mlに樹脂濃度:6.2ppm(wt/wt)で溶解し、0.45μmのフィルターでろ過して得られた溶液を用いてGPC測定を行った。なお、GPCのポンプはWaters 515(Waters製)、検出器は示差屈折率計Waters 410(Waters製)、カラムはShodex HFIP−806M(2本)+HFIP−LGを用い、流速は0.5ml/min、試料注入量は0.1ml、温度は30℃の条件で測定した。分子量校正はポリメタクリル酸メチルを用いて行った。
【0088】
[流動性]
各実施例および比較例で得られたペレットを140℃で12時間減圧乾燥し、ROBOSHOTα−30C(ファナック社製)を用いて、金型温度を120℃とし、樹脂温度を表1〜4記載の樹脂温度として、射出速度を100mm/sec、射出圧力を98MPaとした条件で、10mm幅×0.5mm厚の成形品を10個射出成形した。成形品10個の長さを測定し、その数平均値を流動長として算出した。流動長が長いほど流動性に優れることを示している。
【0089】
[耐熱性]
各実施例および比較例で得られたペレットを140℃で12時間減圧乾燥し、ROBOSHOTα−30C(ファナック社製)を用いて、金型温度を120℃とし、樹脂温度を表1〜4記載の樹脂温度として、射出速度を100mm/sec、射出圧力を下限圧+0.49MPaとした条件で、80×10×4mmのISO試験片を作製した。この試験片について、JIS K7207(1983年)硬質プラスチックの荷重撓み温度試験方法(ISO75)に準拠して荷重撓み温度を測定した。すなわち、前記試験片を23℃×50%RH雰囲気下90時間放置後、高温HDTテスターHDT−500(安田精機製作所製)に試験片の方向をフラットワイズに設置し、応力1.82MPa(高荷重)、SPAN64mm、昇温速度120℃/hに設定し、成形品が0.35mm撓むまでの温度を測定した。試験片3個の撓み温度の平均値を荷重撓み温度として算出した。
【0090】
[圧入強度]
各実施例および比較例で得られたペレットを140℃で12時間減圧乾燥し、ROBOSHOTα−30C(ファナック社製)を用いて、金型温度を120℃とし、樹脂温度を表1〜4記載の樹脂温度として、射出速度を100mm/sec、射出圧力を下限圧+0.49MPaとした条件で、2.8mmピッチ、1.5mm×1.5mmの角穴が20個付いた、厚さ3mmのピン圧入成形片を得た。得られた成形片の角穴に、1.6mm×1.6mmの黄銅製角棒を各々挿入し、10秒後、角棒を角穴から抜いた。挿抜後、20個の角穴のうち圧入割れが発生した数を計数した。圧入割れが発生した数が少ないほど圧入強度が優れていることを示している。
【0091】
[滞留安定性]
各実施例および比較例で得られたペレットを140℃で12時間減圧乾燥し、ROBOSHOTα−30C(ファナック社製)を用いて、シリンダー設定温度を表1〜4記載の樹脂温度+20℃として、射出速度を100mm/sec、射出圧力を下限圧+0.49MPaとした条件で、成形機シリンダー充填後5分間滞留させた後、ASTM4号ダンベル試験片を成形し、これを滞留安定性試験処理前の試験片とした。次に、成形機シリンダー充填後、20分間の滞留時間を経て、上記と同条件にて成形し、得られたASTM4号ダンベル試験片を滞留安定性試験処理後の試験片とした。なお、この20分間の滞留時間で、成形不良により成形品が得られなかったポリアミド樹脂組成物は、「成形不可」とした。次いで、滞留安定性評価用AG−2000C(島津製作所)を用いて、測定環境温度23℃、50%RH、歪速度10mm/min、試料標点間距離50mmの条件で引張試験を行い、引張強度を測定した。滞留安定性試験処理前後の各々の成形品3個の引張強度の平均値を算出し、下記式にて引張強度変化率を算出した。変化率が小さいほど、滞留安定性に優れるといえる。
引張強度変化率(%)={1−滞留安定性試験処理後引張強度/滞留安定性試験処理前引張強度}×100 。
【0092】
[難燃性]
実施例7、8および比較例7〜9で得られたペレットを140℃で12時間減圧乾燥し、ROBOSHOTα−30C(ファナック社製)を用いて、金型温度を120℃とし、樹脂温度を表3記載の樹脂温度として、射出速度を100mm/sec、射出圧力を下限圧+0.49MPaとした条件で射出成形し、0.38mm厚のUL用試験片を各5個作製した。UL94(米国Under WriterLaboratories Incで定められた規格)に準拠した垂直燃焼方法で評価を実施した。UL94の試験方法に準拠し、垂直に保持した試験片の下端に10秒間ガスバーナーの炎を接炎させた後、燃焼が10秒以内に止まったならば、さらに10秒間接炎させ、この2回の接炎時間の合計を燃焼時間とし、5個評価した総燃焼時間を算出した。
【0093】
[寸法安定性(リフロー収縮抑制)]
実施例2および9〜12で得られたペレットを140℃で12時間減圧乾燥し、ROBOSHOTα−30C(ファナック社製)を用いて、シリンダー設定温度を表4記載の樹脂温度+20℃として、射出速度を100mm/sec、射出圧力を下限圧+0.49MPaとした条件で、幅70mm×長さ70mm×厚さ2mmの角板を成形した。得られた角板10個の角板の流動方向(MD)および角板の流動方向に対して垂直な方向(TD)それぞれの長さをノギスで測定し、その平均値を算出し、下記式により寸法安定性を評価した。得られる値が0に近いものほど寸法安定性に優れていることを示している。
寸法安定性=|70−成形片のTD方向の長さの平均値|−|70−成形片のMD方向の長さの平均値|。
【0094】
(実施例1〜6、比較例1〜4)
表1に示すポリアミド樹脂をドライブレンドした後、表1に示す樹脂温度に設定し、スクリュー回転数を200rpmに設定した(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D=35)のメインフィーダーより供給し、溶融混練を行った。このメインフィーダーはスクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て0の位置、つまりスクリューセグメントの上流側の端部の位置に接続されている。ダイから吐出されるガットを即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。前記方法により評価した結果を表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
実施例1〜6のポリアミド樹脂は、流動性および滞留安定性に優れ、耐熱性および圧入強度に優れた成形品を得ることができた。実施例2〜4のポリアミド樹脂は、圧入強度がより向上していた。一方、比較例1〜4のポリアミド樹脂は、分子量分布が前記式(1)を満たさないものであり、流動性、滞留安定性、成形品の耐熱性および圧入強度が低下した。
【0097】
(実施例7、比較例5〜6)
表2に示すポリアミド樹脂をドライブレンドした後、シリンダー設定温度を表2に示す樹脂温度に設定し、スクリュー回転数を200rpmに設定した(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D=35)のメインフィーダーより供給した。このメインフィーダーはスクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て0の位置に接続されている。続いて、表2に示す無機充填剤をサイドフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。このサイドフィーダーはスクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て0.65の位置に接続されている。ダイから吐出されるガットを即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。前記方法により評価した結果を表2に示す。
【0098】
【表2】
【0099】
実施例7のポリアミド樹脂組成物は、流動性に優れ、耐熱性および圧入強度に優れた成形品を得ることができた。一方、比較例5〜6は前記式(1)を満たさないポリアミド樹脂を含有したため、流動性、滞留安定性および成形品の圧入強度が低下した。
【0100】
(実施例8、比較例7〜9)
表3に示すポリアミド樹脂および難燃剤をドライブレンドした後、表3に示す樹脂温度に設定し、スクリュー回転数を200rpmに設定した(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D=35)のメインフィーダーより供給し、溶融混練を行った。このメインフィーダーはスクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て0の位置に接続されている。続いて、表3に示す無機充填剤をサイドフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。このサイドフィーダーはスクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て0.65の位置に接続されている。ダイから吐出されるガットを即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。前記方法により評価した結果を実施例7と対比して表3に示す。
【0101】
【表3】
【0102】
実施例8のポリアミド樹脂組成物は、流動性に優れ、耐熱性、圧入強度および難燃性に優れた成形品を得ることができた。一方、比較例7〜9は前記式(1)を満たさないポリアミド樹脂を含有したため、流動性および滞留安定性が低下し、圧入強度が低下した。
【0103】
(実施例9〜11)
表4に示すポリアミド樹脂およびリン系化合物をドライブレンドした後、表4に示す樹脂温度に設定し、スクリュー回転数を200rpmに設定した(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D=35)のメインフィーダーより供給し、溶融混練を行った。このメインフィーダーはスクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て0の位置に接続されている。ダイから吐出されるガットを即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。前記方法により評価した結果を実施例2と対比して表4に示す。
【0104】
(実施例12)
表4に示すポリアミド樹脂およびリン系化合物をドライブレンドした後、表4に示す樹脂温度に設定し、スクリュー回転数を200rpmに設定した(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D=35)のメインフィーダーより供給し、溶融混練を行った。このメインフィーダーはスクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て0の位置に接続されている。続いて、表4に示す無機充填剤をサイドフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。このサイドフィーダーはスクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て0.65の位置に接続されている。ダイから吐出されるガットを即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。前記方法により評価した結果を表4に示す。
【0105】
【表4】
【0106】
実施例9〜12のポリアミド樹脂組成物は、流動性により優れ、寸法安定性により優れた成形品を得ることができた。実施例9、10、12のポリアミド樹脂は、滞留安定性および寸法安定性がより向上していた。実施例12のポリアミド樹脂組成物は、寸法安定性が特に向上していた。
【符号の説明】
【0107】
1 ポリメタクリル酸メチル換算分子量分布曲線
2 分子量分布曲線の最頻値
3 重量分率70%に対応する点のうち分子量の最も高い点
4 分子量最大値に対応する点
5 重量分率70%に対応する点のうち分子量の最も低い点
6 分子量最小値に対応する点
図1