(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一または相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、便宜上、上および下などの位置や方向を示して説明しているが、これに採集容器用アダプタは限定されない。
【0013】
(実施の形態1)
図1に示すように、採集容器アセンブリは、採集容器20および採集容器用アダプタ10を備えている。採集容器20は少量の血液などの検体を収容するための容器であり、採集容器用アダプタ10は採集容器20に着脱可能に装着されるアダプタである。
【0014】
図2〜
図3(c)に示すように、採集容器用アダプタ10は本体11および開口部12を有している。本体11は、検査機器による検査の際に受ける力に対して機械的強度を有し、かつ、ラベルを貼り付け可能な材料であれば、特に限定されない。たとえば、ポリカーボネート、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、ポリ塩化ビニルおよびポリエステルなどの樹脂が本体11の材料として用いられる。
【0015】
本体11は、上部および下部のそれぞれが開口した筒形状であって、内周面で囲まれた内部空間を有している。この内部空間は、採集容器20を挿入可能な空間である。本体11の断面は、採集容器20の断面に応じて定められ、この実施の形態では、円形状断面の採集容器20に対して円形状である。本体11の内周面には、当接部13および第1係合部14が設けられている。
【0016】
本体11の上端と下端との間の寸法(本体11の高さ)は、この上端と下端との間にラベルの貼り付け範囲を確保できるように定められる。また、本体11の高さは、本体11の上端と当接部13との間で採集容器20を保持し、かつ、当接部13と本体11の下端との間が、検査機器における採集容器の規定寸法と採集容器20の高さとの差になるように定められる。採集容器20を採集容器用アダプタ10に収容することにより様々な規定寸法を有する検査機器に適用することができる。
【0017】
本体11の内周面の径(本体11の内径)は、採集容器20を本体11の内部空間に収容し、かつ、採集容器20を安定的に支持できるように、採集容器20の外径と同じまたはそれよりわずかに大きく設定される。
【0018】
本体11の内周面と外周面との間の寸法(本体11の厚み)は、採集容器20の外径と検査機器における採集容器の規定径との差で定められる。すなわち、本体11の厚みは、この差を埋めるように、この差と等しいまたはそれより小さく設定される。また、この実施の形態では、本体11の厚みは、円形状断面の周方向に一定である。
【0019】
当接部13は、本体11の内部空間に収容された採集容器20の下端25の面(下端面)(
図7(c))と当接するストッパであって、たとえば、周方向の全体に亘って延びる環形状である。当接部13は、たとえば、断面が矩形状の突起であって、本体11の内周面から径方向の内側に突き出している。
【0020】
当接部13の突き出した端と本体11の内周面と接合する端との間の寸法(当接部13の幅)は、採集容器20の下端25(
図7(c))を受けられるように設定される。また、当接部13の上端と下端との間の寸法(当接部13の高さ)は、採集容器20の下端25(
図7(c))を支え止められるように設定される。
【0021】
当接部13の位置は、採集容器アセンブリの高さが検査機器の規格高さと等しいまたはほぼ等しくなるように設定される。つまり、当接部13と本体11の下端との間隔は、採集容器20の高さと規格高さとの差に等しいまたはほぼ等しく設定される。
【0022】
第1係合部14は、本体11内に収容された採集容器20の係合部(第2係合部)24(
図7(c))と係合する係合部であって、たとえば、開口部12に対応する部分が欠けた環形状であり、周方向に弧形状に延びている。第1係合部14は、たとえば、断面が半円形状の突起であって、本体11の内周面から径方向の内側に突き出している。
【0023】
第1係合部14の突き出した端と本体11の内周面と結合する端との間の寸法(第1係合部14の幅)、および、第1係合部14の上端と下端との間の寸法(第1係合部14の高さ)は、第2係合部24(
図7(c))の幅および高さにそれぞれ対応するように設定されている。第1係合部14の位置は、採集容器20と対向する位置であればよく、当接部13と本体11の上端との間に設けられる。この実施の形態では、第1係合部14は、採集容器20の底部に対応する位置より少し上側に設けられている。
【0024】
開口部12は、本体11の内周面と外周面との間を貫通する孔である。この実施の形態では、開口部12は、本体11の上端から本体11の軸方向に長く延びる矩形状のスリットで形成されている。周方向における開口部12の両側縁はそれぞれ平行に延びており、開口部12の下縁は両側縁のそれぞれに垂直に設けられている。開口部12の下縁と側縁との角にはアールが付けられており、開口部12の側縁と本体11の上端との角にもアールが付けられている。
【0025】
周方向における開口部12の両側縁間の線分の長さ(開口部12の幅)は、採集容器20の外径より小さく設定されている。また、開口部12の中心角は、たとえば、180°より小さく、好ましくは、90°以下に設定される。この開口部12の中心角は、開口部12の断面形状を本体11の円周上の一部の弧としたとき、この弧の開口部12の両側縁と円の中心とを結んでできた角である。開口部12の中心角が大きく開口部12の幅が広いほど、採集容器20を開口部12から挿入し易く、かつ、開口部12を介して採集容器20内の血液などの採集した検体を見易くなる。一方、開口部12の中心角が小さく開口部12の幅が狭いほど、採集容器20に対する採集容器用アダプタ10の保持力が大きくなる。よって、これらを踏まえて、採集容器用アダプタ10の用途に応じた開口部12の幅が設定される。
【0026】
また、開口部12は、その下縁が当接部13の上端に位置しており、本体11の上端から当接部13の上側まで延びている。これにより、開口部12は、当接部13より上側に位置している採集容器20の底部22(
図7(c))の対応位置および第1係合部14に設けられている。
【0027】
図4〜
図5(c)に示すように、採集容器20は側部21、底部22および受け口部23を有しており、側部21、底部22および受け口部23は一体的に形成されている。この採集容器20の高さは、側部21の下端25と受け口部23の上端との間の寸法である。採集容器20の材料としては、特に限定されないが、たとえば、ポリカーボネート、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、ポリ塩化ビニルおよびポリエステルなどの樹脂が挙げられる。採集容器20は、透過性であることが好ましい。
【0028】
側部21は、上部および下部のそれぞれが開口した筒形状であって、この実施の形態では、その断面が円形状である。側部21の外径は軸方向に一定であり、内径は、底部22と下端25との間が底部22と上端との間より大きい。側部21の上端と下端25との間の寸法(側部21の高さ)は、採集容器用アダプタ10(
図7(c))の本体11の上端と当接部13との間の寸法と等しいまたはそれより大きく設定されている。側部21の外面には、第2係合部24が設けられている。
【0029】
第2係合部24は、採集容器20アダプタの第1係合部14と係合する係合部であって、たとえば、周方向の全体に亘って延びる環形状である。第2係合部24は、たとえば、断面が半円形状の溝であって、側部21の外面から径方向の内側に窪んでいる。第2係合部24の窪んだ端と側部21の外面に繋がる端との間の寸法(第2係合部24の幅)は、側部21の厚みより小さく設定される。第2係合部24の位置は、側部21の外面のうち開口部12に対向する範囲であれば特に限定されないが、この実施の形態では、底部22より上側に設けられている。
【0030】
底部22は、側部21の軸に対して垂直に設けられており、側部21の内部空間を閉じる部分である。受け口部23は、その内径および外径が側部21より大きく、側部21から広がっている。受け口部23の内面は、軸方向に緩やかに湾曲して側部21に繋がっている。受け口部23の一部の上端は、他より高くなって上方に突き出している。
【0031】
次に、
図6〜
図7(c)を参照しながら、採集容器用アダプタ10を採集容器20に装着する方法を説明する。まず、
図6に示すように、採集容器20に対して採集容器用アダプタ10を傾けて、採集容器20の下端25を開口部12に挿入する。このとき、採集容器20の側部21の外径は開口部12の幅より大きいが、本体11が撓んで開口部12の幅が広がることにより、採集容器20の下端25を開口部12から採集容器用アダプタ10内に差し込むことができる。
【0032】
そして、傾けていた採集容器用アダプタ10を採集容器20に平行になるように立てると、下端25から上部にかけて順に採集容器20が開口部12の両側縁に当たり、本体11が撓みながら開口部12が拡がる。これにより、採集容器20は開口部12から採集容器用アダプタ10に差し入れられる。
【0033】
図7(a)〜
図7(c)に示すように、採集容器20を下方に挿入すると、採集容器20の下端25が採集容器用アダプタ10の当接部13に当たり、採集容器20の下方への動きが停止される。このとき、採集容器20の第2係合部24に採集容器用アダプタ10の第1係合部14が嵌って、これらが係合するため、採集容器20の上方への動きが防止される。この結果、採集容器20が採集容器用アダプタ10内に固定されて、採集容器用アダプタ10が採集容器20に装着される。
【0034】
また、
図7(a)〜
図8(c)を参照しながら、採集容器用アダプタ10を採集容器20に装着する他の方法を説明する。この他の方法では、まず、
図8(a)に示すように、採集容器用アダプタ10に対して採集容器20を平行に配置して、採集容器20をその下端25から採集容器用アダプタ10の上部開口へ挿入する。採集容器20の側部21の外径は採集容器用アダプタ10の本体11の内径以下であるため、
図8(b)に示すように、採集容器用アダプタ10の内周面に沿って採集容器20を差し込むことができる。そして、
図7(a)〜
図7(c)に示すように、採集容器20の下端25が当接部13に当たり、第1係合部14が第2係合部24に嵌って、採集容器用アダプタ10が採集容器20に装着される。
【0035】
上記構成によれば、採集容器用アダプタ10の本体11の厚みを分析機械の規定寸法に応じて調整することにより、幅広い規定寸法の分析機械に採集容器アセンブリを対応させることができる。一方、採集容器用アダプタ10の本体11の厚みを大きくすることにより、分析機器の規定寸法に寄らず採集容器20の内径を小さくすることができる。このため、採集容器20の断面積が小さくして、採集容器20内の少量の血液などの検体の蒸発を防止し、より正確な分析を行うことができる。
【0036】
加えて、採集容器20の下端25を開口部12のどこからでも採集容器用アダプタ10内に差し込むことができる。よって、採集容器20に採集容器用アダプタ10を容易に取り付けることができるため、より優れた作業性とすることができる。
【0037】
さらに、採集容器用アダプタ10に開口部12を設けている。このため、採集容器20が採集容器用アダプタ10により覆われていても、開口部12から透過性の採集容器20を介して採集容器20内の検体を目視することができる。よって、高価な透明樹脂で採集容器用アダプタ10を形成しなくても、採集容器用アダプタ10を装着した状態で採集容器20内の検体を容易に確認することができる。さらに、本体11の上端から採集容器20の底部22に対応する本体11の位置まで開口部12が延びていれば、採集容器20内の検体の全体の状態を確認することができるため、分析結果をより確実に判断することができる。
【0038】
しかも、開口部12により採集容器20内の検体を目視できることにより、採集容器20の側部21の広い範囲を採集容器用アダプタ10で覆って、採集容器用アダプタ10の本体11の面積を広くすることができる。これにより、ラベルの貼り付け面積を採集容器用アダプタ10の本体11に大きくとって、二次元コードなど多くの情報を含んだ大きなラベルも本体11に貼り付けることができる。また、採集容器20の側部21の外面が本体11の内周面に沿って、採集容器20の下端25から上端の少し下方位置までの広い範囲を採集容器用アダプタ10で覆うことができる。このため、採集容器用アダプタ10は採集容器20を安定的に保持することができる。
【0039】
また、採集容器20の下端25と係合する当接部13を本体11の内周面に設けている。この係合により、採集容器用アダプタ10内に収容された採集容器20が下方へ動くことが防止され、採集容器20が安定的に採集容器用アダプタ10に装着される。さらに、摩擦により採集容器用アダプタ10が採集容器20に固定されるのではないため、小さい力で採集容器用アダプタ10を採集容器20から脱着することができる。
【0040】
さらに、採集容器20の第2係合部24と係合する第1係合部14を当接部13より上方に設けている。この係合により、採集容器用アダプタ10内に収容された採集容器20が上方へ動くことが防止され、採集容器20が安定的に採集容器用アダプタ10に装着される。さらに、摩擦により採集容器用アダプタ10が採集容器20に固定されるのではないため、小さい力で採集容器用アダプタ10を採集容器20から脱着することができる。
【0041】
その上、本体11の上端から当接部13まで開口部12が延びている。よって、周方向に延びる第1係合部14が開口部12により切断されるため、この第1係合部14の両側縁間が拡がることにより、本体11が撓み易くなる。この結果、本体11が撓んで、採集容器20が第1係合部14を通過し易く、第2係合部24に第1係合部14を容易に係合させることができる。
【0042】
さらに、採集容器用アダプタ10に装着された採集容器20では、受け口部23は採集容器用アダプタ10の上端より上に設けられる。受け口部23は、その外径が採集容器用アダプタ10の本体11の外径より大きく、採集容器用アダプタ10から外側に拡がる。このため、血液などの検体を受け口部23から採集容器20に受け入れ易くなる。
【0043】
(実施の形態2)
実施の形態1では本体11の上端から長く延びるスリット形状の開口部12を採集容器用アダプタ10に形成したが、開口部の形状および位置はこれに限定されない。たとえば、実施の形態2では、
図9に示すように、開口部15は、矩形状であって、本体11の上端より下方で当接部13より上方に設けられている。
【0044】
周方向における開口部15の両側縁は互いに平行に延びている。この両側縁間の線分の長さ(開口部15の幅)は、特に限定されないが、たとえば、採集容器20の外径より小さく設定される。また、開口部15の中心角も、特に限定されないが、たとえば、180°より小さいことが好ましく、90°以下がさらに好ましい。
【0045】
開口部15の上縁および下縁は、互いに平行で両側縁に垂直に延びている。この上縁は、本体11の上端と第1係合部14との間に設けられており、下縁は、当接部13の上端に設けられている。このため、開口部15は、本体11の上端に近い位置から採集容器20の底部22の対応位置まで延びている。
【0046】
上記構成によれば、採集容器用アダプタ10を装着した状態でも採集容器20内の検体を開口部15から容易に確認することができる。さらに、本体11の上端に近い位置から採集容器20の底部22の対応位置まで開口部15が延びており、採集容器20内の検体の全体の状態を確認することができるため、分析結果をより確実に判断することができる。
【0047】
また、実施の形態1と同様の構成を有することにより、同様の作用および効果を奏する。たとえば、本体11の厚みを調整することにより、採集容器アセンブリを分析機器の規格寸法に適応させながら、採集容器20の断面積が小さくすることができる。さらに、当接部13および第1係合部14によって、採集容器20を上下方向に固定すると共に、採集容器20を容易に取り外すことができる。しかも、開口部15により、ラベル貼り付け面積を広くとれるとともに、採集容器用アダプタ10で採集容器20を安定的に保持することができる。さらに、採集容器用アダプタ10のから外側に拡がる受け口部23によって、検体を受け口部23から採集容器20に受け入れ易い。
【0048】
(その他の実施の形態)
上記全実施の形態では、1つの開口部12、15を採集容器用アダプタ10に設けたが、複数の開口部12、15を設けてもよい。たとえば、細いスリット形状の開口部12を2本、設けてもよい。これにより、開口部12の幅が狭くなって本体11が撓みにくくなるが、本数を増やすことにより本体11の撓み易さを維持することができる。
【0049】
上記全実施の形態では、開口部12、15の下縁を当接部13の上端に設けたが、その位置はこれに限定されない。たとえば、開口部12、15の下縁を当接部13と第1係合部14との間に設けてもよい。ここで、開口部12が本体11の上端から第1係合部14まで延びるようすると、第1係合部14が開口部12により切断される。このため、採集容器20を採集容器用アダプタ10に容易に挿入して、第1係合部14を第2係合部24と小さな力で脱着させることができる。また、開口部12、15の下縁を第1係合部14と本体11の上端との間に設けてもよい。
【0050】
上記全実施の形態では、第1係合部14を凸形状に形成し、第2係合部24を凹形状に形成したが、第1係合部14を凹形状に形成し、第2係合部24を凸形状に形成してもよい。また、上記全実施の形態では、当接部13を凸形状に形成し、採集容器用アダプタ10の下部は開放されているが、これに限定されない。たとえば、当接部13が板形状であって、採集容器用アダプタ10の下部を覆っていてもよい。
【0051】
上記全実施の形態では、第1係合部14を底部22の上方で近傍に設けたが、第1係合部14の位置はこれに限定されない。たとえば、第1係合部14を側部21の上端近傍に設けてもよいし、底部22と側部21の下端25との間に設けてもよい。
【0052】
上記全実施の形態では、採集容器用アダプタ10の内周面が採集容器20の外周面に沿って形成されている。これに対し、第1係合部14および第2係合部24が当接し、これ以外の範囲では採集容器用アダプタ10の内周面と採集容器20の外周面との間に間隙が設けられていてもよい。
【0053】
なお、上記全実施の形態は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。
【0054】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造および/または機能の詳細を実質的に変更できる。