【実施例1】
【0016】
図1は本発明によるプロトコル変換装置を用いた空調機システムの実施例を示すブロック図である。
この空調機システムは、過去に設置されて運用されていた第2ネットワーク2と、新規に設置された第1ネットワーク1が本発明による指示禁止手段30を備えたプロトコル変換装置20を介して通信接続されたものである。なお、指示禁止手段30に関しては後で詳細に説明する。
【0017】
また、第1ネットワーク1には管理装置3(第1指示装置)と室外機4とリモコン5aを備えた室内機5と室内機6などの空調機器が通信接続されている。
一方、第2ネットワーク2内には室内機8と通信接続された室外機9などの空調機器が備えられており、室内機8はプロトコル変換装置20と通信接続されている。また、プロトコル変換装置20にはリモコン7(第2指示装置)が接続されている。このリモコン7はプロトコル変換装置20内の指示禁止手段30を介して第2ネットワーク2内の空調機器(室内機8)を操作するようになっている。ここで室外機4と室内機5と室内機6が第1空調機器であり、室内機8と室外機9が第2空調機器である。
【0018】
図2はプロトコル変換装置20のハードウェア構成を示すブロック図である。
プロトコル変換装置20は、第1ネットワーク1内の空調機器と通信を行なう第1通信部20aと、第2ネットワーク2内の空調機器と通信を行なう第2通信部20bと、後述するプロトコル変換テーブル及びリモコン操作管理テーブルが記憶された記憶部20dと、リモコン7と通信を行なうリモコン通信部20cと、これらを制御する制御部20eを備えている。
【0019】
制御部20eは第1通信部20aから入力されたデータを記憶部20dに記憶されたプロトコル変換テーブルを用いてプロトコル変換して第2通信部20bへ出力し、逆に第2通信部20bから受信したデータをプロトコル変換して第1通信部20aへ出力する。一方、制御部20eは、リモコン通信部20cで受信したリモコン7からの操作指示信号のデータを記憶部20dに記憶されたプロトコル変換テーブルを用いてプロトコル変換して第2通信部20bへ出力する。従って第2ネットワーク内の空調機器は管理装置3、又はリモコン7の双方から制御することができる。
【0020】
図4は前述したプロトコル変換テーブルを説明する説明図である。このプロトコル変換テーブルでは第1ネットワークで使用される第1プロトコルと、第2ネットワークで使用される第2プロトコルと、リモコン7で使用される第3プロトコルが相互にプロトコル変換できるように、それぞれのプロトコルで規定された項目ごとに対応するデータ(各プロトコルに適応した通信フォーマットで構成されたデータ群)が格納されている。
【0021】
項目としては「運転開始」、「運転停止」、「冷房運転モード」、「暖房運転モード」、・・・・「設定温度」などの指示データや、「室温」を通知する状態データ、さらに、例えば火災発生時に送信される緊急停止の指示である「運転禁止」、また、緊急停止の解除指示である「運転許可」、「設定温度変更禁止」、「設定温度変更許可」の操作禁止に関する指示データが規定されている。ただし、前述したように、第2ネットワーク内の空調機器は機能的な制限があるため、すべての項目に対して全てのプロトコルが対応していない。
【0022】
例えば第1プロトコルではすべての項目に対応しているが、第2プロトコルでは、「運転禁止」、「運転許可」、「設定温度変更禁止」、「設定温度変更許可」と対応する機能がない。ただし、「運転禁止」は全ての空調機器の運転を停止させると共に、リモコン7からの運転開始の操作を禁止するものであるが、運転の停止だけは「運転停止」の指示データで代替可能であるため、第2プロトコルの「運転禁止」の欄は「運転停止」のデータB’が格納されている。また、第3プロトコルに関しては操作禁止指示の指示データがすべて対応していない。また、リモコン7は室温を表示する機能がないため、室温の項目も対応する機能がない。なお、前述したように、「対応機能なし」の項目は第1ネットワーク1側から指示が有ったとしてもプロトコル変換が実行されない。
【0023】
図3は本発明によるプロトコル変換装置20の機能を示す機能ブロック図である。
プロトコル変換装置20は、第1ネットワーク内の空調機器と通信する第1通信部20aである第1通信手段21と、第2ネットワーク内の空調機器と通信する第2通信部20bである第2通信手段24と、記憶部20dに記憶されたプロトコル変換テーブルを用いて第1プロトコルと第2プロトコルと第3プロトコルのプロトコル変換を相互に行なうプロトコル変換手段23と、第2ネットワーク2に接続された空調機器である室内機8を操作するリモコン7から操作指示信号を受信して操作指示データとして出力する指示手段33と、指示禁止手段30を備えている。
指示禁止手段30は、管理装置3から送信される指示データ(第1指示)に従って、指示手段33から出力される操作指示データ(第2指示)の第2ネットワーク内の空調機器への出力を禁止するものである。なお、詳細な動作は後で説明する。
【0024】
指示禁止手段30は、記憶部20dに記憶されたプロトコル変換テーブル及び後述するリモコン管理テーブルを使用する禁止指示検出手段31と、リモコン管理テーブルを使用する禁止操作管理手段32とを備えている。
なお、プロトコル変換手段23と指示禁止手段30は、記憶部20dと制御部20eで構成され、指示手段33はリモコン通信部20cと制御部20eで構成されている。
【0025】
まず最初に各手段の概略機能を説明し、その後、具体的なデータを用いて詳細な動作説明を行なう。
第1通信手段21は、第1ネットワーク1に接続された管理装置3からの指示信号を受信して指示データとしてプロトコル変換手段23に出力する。プロトコル変換手段23は、この指示データを第2ネットワーク2で用いられるプロトコルに対応する指示データに変換して第2通信手段24に出力する。第2通信手段24はプロトコル変換手段23から出力された指示データを第2ネットワーク2へ送信する。なお、プロトコル変換手段23は、第2通信手段24で受信した第2ネットワークのデータをプロトコル変換して第1通信手段21から第1ネットワーク1へ送信する機能も備えている。
【0026】
指示禁止手段30は、指示手段33から出力される操作指示データと、第1通信手段21を介して管理装置3が送信する第2ネットワーク2内の空調機器を制御する指示データが入力される。
指示禁止手段30内の禁止指示検出手段31は、第1通信手段21からプロトコル変換手段23へ出力される指示データを監視しており、この指示データのうち第2ネットワーク2のプロトコルに対応していない操作禁止指示の指示データを後述するプロトコル変換テーブルを参照して検出する。
禁止操作管理手段32は、指示手段33から入力される操作指示データをプロトコル変換手段23を介して第2通信手段24へ出力し、第2通信手段24は入力された操作指示データを室内機8へ送信する機能を備えている。
【0027】
禁止操作管理手段32は、指示手段33から入力された操作指示データのうち、禁止指示検出手段31で検出された操作禁止指示の指示データによって、指示手段33から出力される操作指示データの室内機8への出力を禁止する。
【0028】
次に以上説明した各手段について具体的なデータを用いて詳細な動作説明を行なう。
前述したように第1通信手段21からプロトコル変換手段23へ出力される指示データは
図4で説明したプロトコル変換テーブルの項目と対応している。ただし、室温のデータは第2通信手段24から入力されてプロトコル変換手段23からプロトコル変換されたデータが第1通信手段21へ出力される状態データである。
【0029】
禁止指示検出手段31は第1通信手段21からプロトコル変換手段23へ出力される指示データを監視しており、この指示データの中から操作禁止指示の指示データを検出する。そして、禁止指示検出手段31は「運転禁止」、「運転許可」、「設定温度変更禁止」、「設定温度変更許可」のいずれかの操作禁止指示の指示データが有れば、記憶部20dに記憶されるリモコン操作管理テーブルを更新する。なお、リモコン操作管理テーブルと、その更新内容については後で詳細に説明する。
【0030】
図5はこのリモコン操作管理テーブルを説明する説明図である。リモコン操作管理テーブルは操作禁止指示の指示データ、つまり、「運転禁止」、「運転許可」、「設定温度変更禁止」、「設定温度変更許可」と対応する指示状態の欄が設けられており、禁止指示検出手段31は検出した項目に対応してリモコン操作管理テーブルの指示状態の欄を更新する。なお、リモコン操作管理テーブルの指示状態の欄の初期状態は「運転許可」と「設定温度変更許可」の項目が共に「指示有り」であり、その他の項目は「指示無し」になっている。
【0031】
例えば、最初にリモコン操作管理テーブルの指示状態の欄が初期状態で管理装置3から「運転禁止」の指示信号(データQ)が送信された場合、プロトコル変換装置20の第1通信手段21はこれを受信して「運転禁止」のデータQをプロトコル変換手段23へ出力する。「運転禁止」のデータQが入力されたプロトコル変換手段23は、プロトコル変換テーブルの第1プロトコルにおけるデータQと対応する第2プロトコルのデータB’(運転停止)を第2通信手段24へ出力し、第2通信手段24は第2ネットワーク2内の空調機器に「運転停止」の信号を送信する。この信号を受信した室内機8は室外機9と共に運転を停止する。
【0032】
一方、禁止指示検出手段31は、第1通信手段21が出力する「運転禁止」のデータQを検出すると、リモコン操作管理テーブルの「運転禁止」の「指示状態」の欄を「指示無し」から「指示有り」に変更すると共に、リモコン操作管理テーブルの「運転許可」の「指示状態」の欄を「指示有り」から「指示無し」に変更する。
【0033】
この状態の時にリモコン7から設定温度の操作指示信号(データO”)を受信した指示手段33は、操作指示のデータO”(設定温度)を禁止操作管理手段32へ出力する。操作指示データO”(設定温度)が入力された禁止操作管理手段32は、記憶部20dに記憶されているリモコン操作管理テーブルを参照し、「設定温度変更禁止」の指示状態の欄が「指示無し」であり、「設定温度変更許可」の指示状態の欄が「指示有り」であるため、設定温度に関する禁止は管理装置3から指示されていないと判断し、入力された操作指示データO”(設定温度)をプロトコル変換手段23へ出力する。
【0034】
操作指示データO”(設定温度)が入力されたプロトコル変換手段23は、プロトコル変換テーブルの第3プロトコルのデータO”と対応する第2プロトコルのデータO’を第2通信手段24を介して室内機8へ送信する。データO’(設定温度)の送信信号を受信した室内機8は受信した指示に従って設定温度を設定する。
【0035】
次に、リモコン7から運転開始の操作指示信号(データA”)を受信した指示手段33は、操作指示のデータA”(運転開始)を禁止操作管理手段32へ出力する。操作指示データA”(運転開始)が入力された禁止操作管理手段32は、記憶部20dに記憶されているリモコン操作管理テーブルを参照し、「運転許可」の指示状態の欄が「指示無し」であり、「運転禁止」の指示状態の欄が「指示有り」であるため、運転開始に関する禁止が管理装置3から指示されていると判断し、入力された操作指示データA”(運転開始)をプロトコル変換手段23へ出力しない。
【0036】
この結果、第2ネットワーク2内の空調機器は、次に管理装置3から「運転許可」の指示データ信号が送信されるまでリモコン7の操作による運転開始をすることができず、管理装置3が指示した「運転禁止」が第1ネットワーク1だけでなく、第2ネットワーク2でも実現されたことになる。なお、管理装置3が「運転許可」の指示を出力した場合、禁止指示検出手段31は、リモコン操作管理テーブルの「運転禁止」の「指示状態」欄を「指示無し」に、また、「運転許可」の「指示状態」欄を「指示有り」に変更する。なお、同様の動作にてリモコン7の設定温度変更を許可/禁止することができる。
【0037】
以上説明したようにプロトコル変換装置20は、第1ネットワーク1で使用されるプロトコルに規定された空調機器に関する禁止機能がない第2ネットワーク2内の空調機器に対応するため、第1ネットワーク1から入力された操作禁止指示の指示データによって第2ネットワーク2に指示を出力するリモコン7の操作指示データを、第2ネットワーク2内の室内機8に出力することを禁止する指示禁止手段30を備えている。
このため、従来の第2指示装置(背景技術で説明したリモコン7)をそのまま利用しても、管理装置3の操作禁止指示に従ってリモコン7による第2ネットワーク内の室内機8の運転を禁止することができる。
また、指示禁止手段30が必要となる場合は、新しいネットワーク(第1ネットワーク)と古いネットワーク(第2ネットワーク)の間を通信接続する場合だけである。このため、指示禁止手段30をプロトコル変換装置に内蔵させることで、禁止機能を備えた全ての種類のリモコンを新しく開発・生産する場合よりもコストを低減できる。また、指示禁止手段とプロトコル変換装置を個別の製品とするよりも一体とした方がコストや設置工数を低減できる。
【0038】
なお、本実施例では禁止操作管理手段32から出力される操作指示データをプロトコル変換手段23でプロトコル変換してから第2ネットワーク2へ送信しているが、これに限るものでなく、リモコン7と第2ネットワークの通信プロトコルが同じであれば、操作指示データをプロトコル変換手段23でなく、直接、第2通信手段24へ出力し、第2通信手段24から第2ネットワーク2へ送信するようにしてもよい。これにより、プロトコル変換処理が軽減される。