(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0004】
(発明が解決しようとする課題)
ところで、車両側面衝突の後期段階では慣性力が低下するため、主に車両側面衝突の初期段階でのみ有効な慣性ストッパ部材を利用して車両ドアの開放を確実に防止することができない。この場合、ドアアウタパネルの車内側への変形が進行し、ドアアウタパネルの変形部位がアウトサイドハンドルとドアラッチ機構とを連結する長尺状の連結レバーに干渉することが想定される。連結レバーの先端部は、第1延出片及び第2延出片からなる二股状(略U字状)に構成され、第1延出片と第2延出片との間の開口部に、ドアラッチ機構のポール(図示省略)と連係するアウトサイドオープンレバーの連結ピンが挿入されている。従って、車両側面衝突の後期段階において連結レバーがドアアウタパネルの変形部位から下向きの荷重を受けた場合、この連結レバーが開口部の開口縁にて連結ピンを押し下げる。この場合、アウトサイドオープンレバーが作動してドアラッチ機構がストライカとのラッチ状態からラッチ解除状態に移行する結果、車両ドアが解錠されて開放する現象が生じ得る。このような問題に対して、上記の従来装置は、車両側面衝突の初期段階で有効な慣性ストッパ部材を備えるのみであり、車両側面衝突の後期段階において車両ドアの開放を防止するには不十分である。
【0005】
そこで本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、車両用ドアハンドル装置において、車両側面衝突の後期段階での車両ドアの開放を防止するのに有効な技術を提供することである。
【0006】
(課題を解決するための手段)
上記目的を達成するため、本発明に係る車両用ドアハンドル装置は、車両ドアに組付けられる装置であり、ベースフレーム、アウトサイドハンドル、連結レバー及びドア開放防止機構を含む。ベースフレームは、車両ドアのドアアウタパネルに固定される。アウトサイドハンドルは、ベースフレームにドア閉位置とドア開位置との間で揺動可能となるように設けられ車体の外表面に沿ったハンドル延在方向に延在する。例えば、車両側部(側面)に設けられた車両ドアの場合にはハンドル延在方向が車両前後方向となり、車両後部(背面)に設けられた車両ドアの場合にはハンドル延在方向が車両左右方向となる。連結レバーは、アウトサイドハンドルがドア閉位置からドア開位置に向けて揺動するドア開方向の動作を車体に設けられたストライカにラッチ係合するドアラッチ機構のアンラッチ方向の動作に変換するために、ドアラッチ機構と連係するアウトサイドオープンレバーの連結ピンに係合する。ドア開放防止機構は、車両側面衝突により連結レバーを介してアウトサイドオープンレバーが作動してドアラッチ機構がアンラッチ方向に動作するのを規制することによって車両ドアの開放を防止する。
【0007】
このドア開放防止機構は、固定アーム及び可動アームを備える。固定アームは、連結レバーのうち連結ピン側のレバー先端部に設けられ、連結ピンが挿入された状態での所定量の相対移動を可能とする挿入溝を有する。可動アームは、固定アームよりも車外側においてドアアウタパネルに対向配置され、固定アームに移動可能に取付けられる。この可動アームは、車両側面衝突によりドアアウタパネルから荷重を受けることによって、固定アームに対して挿入溝を閉鎖した状態で連結ピンに係合する初期位置から挿入溝の閉鎖を解除して当該挿入溝への連結ピンの挿入を可能とする作動位置へと移動するように構成されている。
【0008】
本構成によれば、車両側面衝突が発生していない通常時に可動アームが初期位置に設定される。可動アームが初期位置にある場合は、アウトサイドハンドルの操作に連動して作動した連結レバーが連結ピンを押し下げることによって、アウトサイドオープンレバーが通常に作動する。この場合、ドアラッチ機構がアンラッチ方向に動作して車両ドアが開放される。これに対して、車両側面衝突が発生したときに可動アームが初期位置から作動位置へと移動する。可動アームが作動位置にある場合は、固定アームの挿入溝への連結ピンの挿入が可能になる。この場合、アウトサイドハンドルの操作に連動して連結レバーが作動しても、連結ピンの押し下げが挿入溝の溝縁によって制限される。従って、連結ピンが挿入溝を所定量相対移動して溝縁にて固定アームに当接するまで、連結レバーの作動ストローク、即ち遊びストロークを伸ばすことができる。その結果、車両側面衝突により連結レバーがある程度作動しても、アウトサイドオープンレバーが作動しないようにしてドアラッチ機構がアンラッチ方向に動作するのを規制することによって車両ドアの開放を防止することができる。
【0009】
また、可動アームは、固定アームに支持軸を中心に回動可能に取付けられるとともに、支持軸から一方のアーム端部まで車両下方に延在する第1延在片と、支持軸から他方のアーム端部まで車両上方に延在する第2延在片と、を備え
る。そして、可動アームは、車両側面衝突により第1延在片がドアアウタパネルからの荷重を受けることによって、第2延在片が挿入溝を閉鎖する初期位置から挿入溝の閉鎖を解除する作動位置まで回動するように構成され
る。本構成によれば、ドアアウタパネルからの荷重によって可動アームを初期位置から作動位置へと移動させるのに該可動アームの回動を利用することによって、連結レバーの構造を簡素化することができる。
【0010】
上記の車両用ドアハンドル装置では、可動アームは、作動位置において第1延在片が固定アームと交差することによって連結ピンを車両下方側から支持するように構成されるのが好ましい。本構成によれば、連結ピンの動きを可動アームの第1延在片によって規制することができる。
【0011】
上記の車両用ドアハンドル装置では、固定アーム及び可動アームはいずれも、当該アームの板幅方向が車両内外方向になるように構成された板状部材であるのが好ましい。この場合、可動アームは、第1延在片が固定アームのいずれか一方の板面のうち連結レバーが車両側面衝突により車両上下方向の回転軸を中心に捩れ回転するときの回転後方側に位置する部位に重ねられるのが好ましい。本構成によれば、連結レバーが車両側面衝突により車両上下方向の回転軸を中心に捩れ回転した場合に、連結ピンが固定アームと可動アームの第1延在片とによって挟まれ難くなる。換言すれば、連結ピンが固定アームと可動アームの第1延在片とによって挟まれるまでの捩れ回転角度を増やすことができる。その結果、車両側面衝突により連結レバーが捩れ回転した場合でも、この連結レバーによってアウトサイドオープンレバーがロックされ難い構造を実現できる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、車両用ドアハンドル装置において、車両側面衝突による車両ドアの開放を防止することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態にかかる車両用ドアハンドル装置について図面を参照しながら説明する。なお、当該図面では、車両前方及び車両後方をそれぞれ矢印X1及び矢印X2で示し、車両上方及び車両下方をそれぞれ矢印Y1及び矢印Y2で示し、車両内方及び車両外方をそれぞれ矢印Z1及び矢印Z2で示している。車両ドアに取付けられる前の状態の車両用ドアハンドル装置に対して、また車両ドアに取付けられた後の状態の車両用ドアハンドル装置に対して、これらの方向を適用することができる。
【0015】
本実施の形態の車両用ドアハンドル装置(以下、単に「ドアハンドル装置」ともいう)100は、車両ドア10に組付けられるものであり、
図1に示されるように、ベースフレーム110及びアウトサイドハンドル120を含む複数の構成部品が一体状に組み付けられたアセンブリ(「アッシー」ともいう)として構成されている。
【0016】
ベースフレーム110は、車体の外表面に沿った車両前後方向X1,X2に長尺状に延在する部材であり、車両ドア10の外表面を構成する金属製のドアアウタパネル11の車内側に固定される。このベースフレーム110は、アウトサイドハンドル120との係合によって当該アウトサイドハンドル120を保持する機能を果たす。このベースフレーム110は、樹脂材料によって構成されている。このベースフレーム110には、アウトサイドハンドル120に加えて、連係機構130、慣性機構140及びキャップ150等が組み付けられている。キャップ150は、ベースフレーム110に対するアウトサイドハンドル120の抜け止めのために、ベースフレーム110の車両後方側の端部(
図1中の左側端部)111に組み付けられている。このベースフレーム110が本発明の「ベースフレーム」に相当する。
【0017】
アウトサイドハンドル120は、車両ドアの車外側に配置され、且つベースフレーム110と同様に車体の外表面に沿った車両前後方向X1,X2のハンドル延在方向に長尺状に延在し、一方端及び他方端を備えるグリップ型の操作ハンドル(アウタハンドル)として構成されている。このアウトサイドハンドル120は、樹脂材料によって構成されている。ユーザはアウトサイドハンドル120を手指で把持して車両ドアの開閉操作を行うことができる。このアウトサイドハンドル120が本発明の「アウトサイドハンドル」に相当する。
【0018】
アウトサイドハンドル120は、車両前方側の端部(
図1中の右側端部)121に設けられたハンドル軸部(図示省略)を中心に
図1に示されているドア閉位置(初期位置)と車両外方へ所定量回動したドア開位置との間で揺動可能となるようにベースフレーム110に組付けられている。このため、アウトサイドハンドル120をドア閉位置からドア開位置へと揺動させるドア開方向の動作と、アウトサイドハンドル120をドア開位置からドア閉位置へと揺動させるドア閉方向の動作が可能である。アウトサイドハンドル120は、車両後方側の端部(
図1中の左側端部)122に設けられた係合部(
図2中の係合部122a)において、連係機構130の構成要素であるベルクランク131と係合している。
【0019】
連係機構130は、アウトサイドハンドル120がドア閉位置から前記ドア開位置に向けて揺動するドア開方向の動作を、車体に対して車両ドア10を閉状態で保持可能に構成されたドアラッチ機構170のアンラッチ動作(ラッチ状態からアンラッチ状態に移行する動作)に変換する。この目的のために、連係機構130は、前記のベルクランク131に加えて、コイルスプリング(
図2中のコイルスプリング132)及び連結レバー133等の要素を備えている。尚、ドアラッチ機構170は周知の構造を有し、車体側に固定されたストライカSTと、車両ドア10側に組付けられるラッチ171およびポール等を備えている。ドアラッチ機構170のラッチ状態では、ストライカSTに係合しているラッチ171の回転がポールによって規制されるため、閉じられた状態の車両ドア10を開放するドア開動作が不能になる。一方で、ドアラッチ機構170のアンラッチ状態では、ストライカSTに係合しているラッチ171の回転がポールによって規制されないため、解錠(「開錠」ともいう)されて車両ドア10のドア開動作が可能になる。このドアラッチ機構170の詳細については、例えば特開2013−130028号公報に開示の「ラッチ機構10」が参照される。
【0020】
図2に示されるように、ベルクランク131は、車両ドア10が閉じた状態で車両前後方向X1,X2に沿って延在する円柱状の軸部131aにてベースフレーム110に回転可能に組付けられている。このベルクランク131は、入力アーム部131bと出力アーム部131cを備えている。入力アーム部131bは、車両下方へと延出しており、その延出先端部がアウトサイドハンドル120の係合部122aのうち車両外方側の部位に係合(当接)している。出力アーム部131cは、円柱状の連結軸134を介して連結レバー133のレバー上端部133aに一体的に連結されている。尚、連結レバー133と連結軸134とが一体的に構成されてもよい。ベルクランク131にはカウンターウェイト(慣性部)131dが設けられている。このカウンターウェイト131dは、車両外方に向けて作用する慣性力でアウトサイドハンドル120が開作動することを規制するためのものであり、このための規制力はカウンターウェイト131dの質量とコイルスプリング132の付勢力との双方によって設定される。
【0021】
コイルスプリング132は、ベルクランク131とアウトサイドハンドル120を
図2中のドア閉位置(初期位置)に向けて弾性付勢するリターンスプリング(アウトサイドハンドル120をドア開位置からドア閉位置に自動的に復帰させる部材)である。このコイルスプリング132は、ベルクランク131の軸部131aの軸外周に組付けられ、一方の端部がベースフレーム110に係合し、且つ他方の端部がベルクランク131に係合している。従って、ベルクランク131は、その入力アーム部131bがアウトサイドハンドル120の係合部122aと係合する方向にコイルスプリング132による所定の弾性付勢力で回転付勢され、入力アーム部131bにおいてアウトサイドハンドル120の係合部122aと弾性的に係合している。
【0022】
連結軸134は、ベルクランク131の出力アーム部131cに対して回転可能に組付けられ、ベルクランク131と共に回動可能である。このため、アウトサイドハンドル120がドア閉位置からドア開位置に向けてドア開方向に移動すると、ベルクランク131によって連結軸134及び連結レバー133が駆動されて下方へ移動するため、連結レバー133による
図1中のドアラッチ機構170のアンラッチ動作が可能になる。
【0023】
連結レバー133は、アウトサイドハンドル120がドア閉位置からドア開位置に向けて揺動するドア開方向の動作をドアラッチ機構170のアンラッチ方向の動作に変換するために、ドアラッチ機構170と連係するアウトサイドオープンレバー180の連結ピン181に係合するように構成されている。この連結レバー133が本発明の「連結レバー」に相当する。
【0024】
上記構成の連係機構130によれば、車両ドア10が閉じた状態で、アウトサイドハンドル120がドア閉位置にあり、且つ連結レバー133が初期位置にあるときには、
図1中のドアラッチ機構170がラッチ状態になり、車両ドア10の前述のドア開動作が不能になる。一方で、アウトサイドハンドル120がドア閉位置からドア開位置に操作されて、連結レバー133が初期位置から所定量下方に移動したときには、
図1中のドアラッチ機構170がアンラッチ状態になり、車両ドア10の前述のドア開動作が可能になる。
【0025】
慣性機構140は、ベースフレーム110のうち連係機構130よりも車両前方側に組付けられている。この慣性機構140は、車両ドア10が閉じた状態での車両側面衝突の初期段階において、車両ドア10が受ける衝撃荷重によって車両外方Z2への慣性力が作用した場合、連係機構130の動き、具体的には連結軸134が車両下方へ移動する(ドア開方向に作動する)動きを規制することによって、車両ドア10が開放するのを防止する機能を果たす。この目的のために、慣性機構140は、慣性レバー141及びコイルスプリング147を備えている。
【0026】
慣性レバー141は、車両前後方向X1,X2に沿って延びる樹脂製の部材であり、支持軸部142、第1アーム部143及び第2アーム部144を備えている。慣性レバー141は、取付けピン142aによって支持軸部142においてベースフレーム110に回動(「揺動」ともいう)可能に取付けられている。このため、慣性レバー141は、支持軸部142を回動中心として、
図2に示される初期位置と、連係機構130の連結軸134が車両下方へ移動するのを規制するための規制位置との間で回動可能となるように構成されている。コイルスプリング147は、支持軸部142とベースフレーム110との間に組付けられている。このコイルスプリング147は、慣性レバー141を連係機構130の連結軸134の動きを規制しない初期位置に向けて、即ち慣性レバー141を車両上方から視たときの左回り方向に常時に弾性付勢している。
【0027】
このため、慣性レバー141は、車両外方Z2への慣性力を受けていない場合には、コイルスプリング147の弾性付勢力にしたがって初期位置に保持されるように構成されている。一方で、慣性レバー141は、車両外方Z2にコイルスプリング147の弾性付勢力を上回る慣性力を受けた場合には、コイルスプリング147の弾性付勢力に抗して初期位置から規制位置に向けて回動するように構成されている。
【0028】
第1アーム部143は、支持軸部142から車両後方X2へ延出するアーム部分である。この第1アーム部143の延出先端には、車両内外方向に互いに離間し且つ車両前後方向に延在する第1係合片145及び第2係合片146が設けられている。第2アーム部144は、支持軸部142から車両前方X1へ延出するアーム部分である。この第2アーム部144の延出先端領域に設けられた凹状の収容空間144aには、金属製のカウンターウェイト148が取付けられている。
【0029】
また、この第2アーム部144には、初期位置から規制位置まで回動した慣性レバー141を規制位置に保持するための保持機構160が割り当てられている。保持機構160は、ベースフレーム110に慣性レバー141の第2アーム部144と対向するように凸状に設けられた係合凸部112と、第2アーム部144のうち車両前方側の延出先端領域に設けられた板バネ(板片状のバネ部材)149と、を備えている。慣性レバー141が規制位置まで回動したとき、係合凸部112に押し付けられて弾性変形した板バネ149が係合凸部112を乗り越えて元の形状に戻ることによって係合凸部112に係止保持される。
【0030】
ところで、車両側面衝突の後期段階では慣性力が低下するため、主に車両側面衝突の初期段階でのみ有効な慣性レバー141を利用して車両ドア10の開放を確実に防止することができない。車両側面衝突の後期段階では、ドアアウタパネル11の車内側への変形が進行し、ドアアウタパネル11の変形部位がアウトサイドハンドル120とドアラッチ機構170とを連結する連結レバー133に干渉することが想定される。そこで、本実施の形態では、連結レバー133のうちアウトサイドオープンレバー180側のレバー先端部135にドア開放防止機構190が設けられている。このドア開放防止機構190は、車両側面衝突の後期段階において車内側へ変形したドアアウタパネル11に干渉した連結レバー133を介してアウトサイドオープンレバー180が作動してドアラッチ機構170がアンラッチ方向に動作するのを規制することによって車両ドア10の開放を防止する機能を果たす。ここでいうドア開放防止機構190が本発明の「ドア開放防止機構」に相当する。このドア開放防止機構190について、
図3〜
図7を参照しつつ以下に説明する。
【0031】
図3に示されるように、連結レバー133は、車両前後方向X1,X2について概ね一定の板厚を有し、且つ車両内外方向Z1,Z2について所定の板厚を有するとともに、レバー上端部133aからレバー先端部135まで車両下方Y2に長尺状に延在する部材である。この連結レバー133は、そのレバー先端部135においてアウトサイドオープンレバー180に係合している。アウトサイドオープンレバー180は、
図1中のドアラッチ機構170のポール(図示省略)と連係している。連結レバー133は、アウトサイドハンドル120がドア閉位置からドア開位置に操作されて、ベルクランク131がコイルスプリング132の弾性付勢力に抗して所定量回転するときに、
図3に示される初期位置から所定量下方に移動するように構成されている。
【0032】
ドア開放防止機構190を構成するレバー先端部135は、固定アーム136及び可動アーム137によって二股形状、所謂「カニ爪形状」となるように構成されている。固定アーム136と可動アーム137との間に形成される保持空間138に、アウトサイドオープンレバー180に固定された連結ピン181が挿入されることにより、アウトサイドオープンレバー180が連結レバー133と係合する。
【0033】
図3及び
図4が参照されるように、固定アーム136は、連結レバー133の本体部と一体状に構成されており、連結レバー133のうちアウトサイドオープンレバー180に係合するレバー先端部135に設けられている。この固定アーム136は、当該アームの板幅方向が車両内外方向Z1,Z2になるように構成された板状部材である。この固定アーム136は、連結ピン181が挿入された状態での所定量の相対移動を可能とする挿入溝136cを備え、この挿入溝136cを隔てて互いに離間した状態で概ね平行に延在する第1延在片136a及び第2延在片136bを備えている。第2延在片136bは、第1延在片136aよりも長く車両下方Y2に延在する部位であり、直線状に延在した後に斜め前方下向きに延在するように構成されている。この固定アーム136が本発明の「固定アーム」に相当する。
【0034】
可動アーム137は、固定アーム136よりも車外側においてドアアウタパネル11に対向配置され、固定アーム130に移動可能に取付けられている。この可動アーム137は、当該アームの板幅方向が車両内外方向Z1,Z2になるように構成された板状部材である。この可動アーム137は、固定アーム136の一方の板面と重なるように固定アーム136に取付けられて、車両前後方向X1,X2に延在する支持軸137aを中心にして固定アーム136の第1延在片136aに対して
図3及び
図4に示される初期位置と
図5に示される作動位置との間で回動可能に構成されている。この場合、可動アーム137は、固定アーム136の延在平面とは別の平面(車両後方側の平面)上に延在しており、回動時に固定アーム136に干渉しないように構成されている。この可動アーム137が本発明の「可動アーム」に相当する。
【0035】
可動アーム137は、固定アーム136と同様の板厚を有し、支持軸137aから下側の一方のアーム端部まで車両下方Y2に延在する第1延在片137bと、支持軸137aから上側の他方のアーム端部まで車両上方Y1に延在する第2延在片137cと、を備えている。ここでいう第1延在片137b及び第2延在片137cがそれぞれ本発明の「第1延在片」及び「第2延在片」に相当する。第2延在片137cは、側面視の形状が概ね四角形であり、車両内外方向Z1,Z2の板幅が第1延在片137bの板幅を上回るように構成されている。第2延在片137cは、車両下方Y2に直線状に延在した後に斜め後方下向きに延在するように構成されている。
【0036】
可動アーム137には、当該可動アーム137を初期位置に向けて弾性付勢するためのバネ部材(図示省略)と、当該可動アーム137を初期位置に係止するために固定アーム136に設けられたストッパ139と、が割り当てられている。このため、可動アーム137は、外力を受けていない場合、バネ部材の弾性付勢力を受けた状態でストッパ139に当接することによって初期位置に係止される。また、可動アーム137は、外力を受けて作動位置まで回動した後に当該外力が解除された場合には、バネ部材の弾性付勢力にしたがって作動位置から初期位置へと復帰することができる。
【0037】
可動アーム137が初期位置にあるとき、第2延在片137cは固定アーム136のうち第1延在片136aと第2延在片136bとの間の挿入溝136cを閉鎖する(塞ぐ)閉鎖位置に配置される。また、可動アーム137が初期位置にあるとき、固定アーム136の第2延在片136bと可動アーム137の第1延在片137bとの間に前記の保持空間138が形成される。この場合、連結ピン181は、
図3及び
図4中の白抜き矢印方向からこの保持空間138に挿入される。保持空間138に挿入された連結ピン181は、可動アーム137の第2延在片137cのうち保持空間138を区画する区画壁137dによって挿入溝136cへの挿入が阻止される。この場合、連結ピン181に対する連結レバー133の車両下方Y2への移動が阻止される。従って、車両側面衝突が発生していない通常時において、アウトサイドハンドル(
図1中のアウトサイドハンドル120)のドア開方向の操作に連動して連結レバー133が車両下方Y2に移動した場合、可動アーム137の区画壁137dによって押圧された連結ピン181が車両下方Y2へと押し下げられてアウトサイドオープンレバー180が通常に作動する。その結果、
図1中のドアラッチ機構170がストライカSTとのラッチ状態からラッチ解除状態に移行する結果、車両ドア10が解錠されて開放する。
【0038】
これに対して、車両側面衝突の後期段階においてドアアウタパネル11が
図3中の衝突荷重Fを受けて車内側へ変形した場合、このドアアウタパネル11が連結レバー133のうち可動アーム137の第1延在片137bに干渉する。これにより、可動アーム137は、第1延在片137bにおいてドアアウタパネル11から車内方向Z1への荷重を受ける。この場合、可動アーム137は、
図5に示されるように、固定アーム136に対して第2延在片137cによって挿入溝136cを閉鎖した状態で連結ピン181に係合する初期位置から挿入溝136cの閉鎖を解除して当該挿入溝136cへの連結ピン181の挿入を可能とする作動位置へと支持軸137aを回動中心に前述のバネ部材の弾性付勢力に抗して矢印D1方向に、即ち固定アーム136に近接する方向に回動する。可動アーム137のこの回動によって、少なくとも2つの作用効果が生じる。
【0039】
第1の作用効果として、可動アーム137の第2延在片137cは、可動アーム137が初期位置にあるときに閉鎖していた挿入溝136cを開放して、連結ピン181に対する連結レバー133の車両下方Y2への移動を許容する。挿入溝136cの車両上下方向Y1,Y2の空間のうち第2延在片137cによって開放された領域は、連結レバー133が車両下方Y2へ移動しても連結ピン181が車両下方Y2に押し下げられるのを阻止する領域となる。要するに、可動アーム137の回動開始前に比べて、連結ピン181が挿入溝136cを所定量相対移動して溝縁136dにて固定アーム136に当接するまでのストローク、所謂「遊びストローク」を伸ばすことができる。この場合、アウトサイドハンドル120の操作に連動して連結レバー133が作動しても、連結ピン181の押し下げが挿入溝136cの溝縁136dによって制限される。
【0040】
従って、車両側面衝突の後期段階においてドアアウタパネル11に干渉した連結レバー133がある程度作動して車両下方Y2へ移動しても、連結レバー133の固定アーム136が連結ピン181に当接するまではアウトサイドオープンレバー180が作動しないようにしてドアラッチ機構170がアンラッチ方向に動作するのを規制することによって、車両ドア10が解錠されるのを阻止することができる。特に、ドアアウタパネル11からの荷重によって可動アーム137を初期位置から作動位置へと移動させるのに当該可動アーム137の回動を利用することによって、連結レバー133の構造を簡素化することができる。
【0041】
第2の作用効果として、可動アーム137は、その作動位置において第1延在片137bが固定アーム136の第2延在片136bと交差することによって連結ピン181に当接し連結ピン181を車両下方側から支持する。これにより、連結ピン181の動きを可動アーム137の第1延在片137bによって規制することができる。
【0042】
車両側面衝突の後期段階では、
図6に示されるように、ドアアウタパネル11のうちアウトサイドハンドル120よりも車両前方側の部位が衝突荷重Fを受けて車内側へ変形する場合が想定される。この場合、ドアハンドル装置100がキャップ150側の車両上下方向Y1,Y2の回転軸を中心に矢印D2方向に回転角度A1で回転する。連結レバー133もその回転に伴って連結ピン181に対して矢印D2方向に捩れ回転角度(
図7中の捩れ回転角度A2)で捩れ回転する。このとき、連結レバー133の捩れ回転角度が大きいと、固定アーム136の第2延在片136bと可動アーム137の第1延在片137bとによって連結ピン181が挟まれてアウトサイドオープンレバー180がロックされる不具合が生じ得る。
【0043】
そこで、本実施の形態の連結レバー133では、
図7に示されるように、可動アーム137は、その第1延在片137bが固定アーム136の車両後方側の板面のうち連結レバー133が車両側面衝突の後期段階において車両上下方向Y1,Y2の回転軸Pを中心に矢印D2方向に捩れ回転するときの回転後方側に位置する部位(第1延在片136a)に重ねられている。本構成によれば、連結レバー133が車両側面衝突の後期段階において回転軸Pを中心に捩れ回転した場合に、連結ピン181が固定アーム136の第2延在片136bと可動アーム137の第1延在片137bとによって挟まれ難くなる。換言すれば、連結ピン181が挟まれるまでの捩れ回転角度A2を増やすことができる。その結果、車両側面衝突の後期段階において連結レバー133が捩れ回転した場合でも、この連結レバー133によってアウトサイドオープンレバー180がロックされ難い構造を実現できる。また、連結レバー133が矢印D2方向に捩れ回転可能な捩れ回転角度A2を更に増やすために、可動アーム137の第1延在片137bのうち連結ピン181に当接し得る内面137eの形状を、
図7に示されるような平面から凸面(曲面)に変更することもできる。
【0044】
本発明は、上記の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0045】
上記実施の形態では、可動アーム137は、その作動位置において第2延在片137cが挿入溝136cを開放する構造(第1の構造)と、第1延在片137bが固定アーム136の第2延在片136bと交差する構造(第2の構造)の双方を備える場合について記載したが、本発明では、これら2つの構造のうち第2の構造を省略することもできる。
【0046】
上記実施の形態では、ドアアウタパネル11からの荷重によって可動アーム137を初期位置から作動位置へと移動させるのに当該可動アーム137の回動を利用する場合について記載したが、本発明では可動アーム137の回動に代えてスライド動作を利用することもできる。
【0047】
本発明では、上記構成のドアハンドル装置100の本質的な構造を車両の各車両ドアに適用することができる。例えば、車両前席用の左右のドアや、車両後席用の左右のドア、更には車両後部のドア(バックドア)等にドアハンドル装置100の本質的な構造を適用することもできる。