特許第6458640号(P6458640)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6458640
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】吸着式ヒートポンプ
(51)【国際特許分類】
   F25B 41/04 20060101AFI20190121BHJP
   F25B 17/08 20060101ALI20190121BHJP
   F16K 11/074 20060101ALI20190121BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   F25B41/04 J
   F25B17/08 E
   F16K11/074 Z
   F16K31/04 Z
【請求項の数】1
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-103915(P2015-103915)
(22)【出願日】2015年5月21日
(65)【公開番号】特開2016-217640(P2016-217640A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2017年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】廣田 靖樹
(72)【発明者】
【氏名】山内 崇史
(72)【発明者】
【氏名】岩田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】若杉 知寿
(72)【発明者】
【氏名】志満津 孝
(72)【発明者】
【氏名】渡橋 学芙
(72)【発明者】
【氏名】森田 真樹
【審査官】 笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−316965(JP,A)
【文献】 特開2004−177119(JP,A)
【文献】 特開2001−343077(JP,A)
【文献】 特開2014−047835(JP,A)
【文献】 特開2004−270740(JP,A)
【文献】 特開2003−014330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 41/04
F25B 15/00 〜 17/12
F16K 11/00 〜 11/24
F16K 31/00 〜 31/05
F16K 31/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷熱及び温熱の少なくとも一方を生成する3つ以上の反応器と、
3つ以上のポートを有し、前記3つ以上のポートのそれぞれに前記3つ以上の反応器のそれぞれが直接又は間接的に接続されて大気圧よりも低圧とされた閉空間が内部に形成される筐体と、
前記筐体の内部に収容されると共に回転可能に前記筐体に支持され、磁石を有し、回転位置によって連通させる前記ポートを切り替える弁部材と、
前記筐体の外部に配置され、前記磁石に磁力を作用させて前記弁部材を回転させる駆動部と、
を備え、
前記3つ以上の反応器は、
吸着質を蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器の前記吸着質を吸着して前記蒸発器で冷熱を生成させる第1吸着器と、
前記第1吸着器に吸着された前記吸着質を吸着して前記第1吸着器で冷熱を生成させる第2吸着器と、
を有し、
前記3つ以上のポートは、第1ポート、第2ポート及び第3ポートを含み、
前記第1ポートは、前記第1吸着器に接続され、
前記第2ポートは、前記蒸発器に接続され、
前記第3ポートは、前記第2吸着器に接続され、
前記弁部材の回転位置を変えることで、前記第1ポートと前記第2ポートとを連通する状態と、前記第1ポートと前記第3ポートとを連通する状態と、に切り替わる
吸着式ヒートポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ、吸着式ヒートポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、吸着式冷凍機が開示されている。この吸着式冷凍機では、熱媒体が流通する空間が、大気圧よりも低圧とされた閉空間とされている。この閉空間は、蒸発器、凝縮器及び2つの吸着器等により形成されている。蒸発器、凝縮器及び2つの吸着器の各室同士を連通する連通口には、板状の弁体が設けられている。この弁体は、各室の圧力差によって開閉するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−202922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、吸着式ヒートポンプにおける閉空間の各室同士を連通する連通口(連通路)を開閉する弁部材としては、エアシリンダ等のアクチュエータにより動作する弁部材がある。このような弁部材では、弁部材の一部が閉空間の外部に露出し、閉空間の外部に配置されたアクチュエータによって駆動される。
【0005】
この構成では、閉空間の内部が大気圧よりも低圧とされる一方、閉空間の外部が大気圧とされるため、大気圧が弁部材に作用し、弁部材を開弁又は閉弁する際に大気圧に対抗して弁部材を駆動する必要がある。これにより、弁部材を駆動する駆動力が大きくなる。
【0006】
また、前述の弁部材をその軸方向に移動させて、連通口(連通路)を開閉する構成では、弁部材の軸方向に移動スペースが必要となり、バルブの寸法が、弁部材の軸方向に長くなる。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮し、弁部材を駆動する駆動力を低減し、且つ弁部材の軸方向に沿った寸法を小さくすることができるバルブを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様は、2つ以上のポートを有し、前記2つ以上のポートのそれぞれに接続部が接続されて大気圧よりも低圧とされた閉空間が内部に形成される筐体と、前記筐体の内部に収容されると共に回転可能に前記筐体に支持され、磁石を有し、回転位置によって1つ以上の前記ポートを開閉する弁部材と、前記筐体の外部に配置され、前記磁石に磁力を作用させて前記弁部材を回転させる駆動部と、を備える。
【0009】
第1態様の構成によれば、閉空間とされた筐体の内部に収容された弁部材の磁石に、駆動部が筐体の外部から磁力を作用させて、弁部材を回転させる。これにより、弁部材の回転位置が変化し、弁部材は、回転位置によって1つ以上のポートを開閉する。
【0010】
ここで、第1態様の構成では、閉空間が大気圧よりも低圧とされているが、弁部材は閉空間の内部に収容されているため、弁部材に対して大気圧が作用しない。このため、弁部材の一部が閉空間の外部に露出して弁部材に対して大気圧が作用する場合(第1比較例)に比べ、弁部材を駆動する駆動力を低減できる。
【0011】
また、第1態様では、前述のように、駆動部が、弁部材の磁石に磁力を作用させて弁部材を回転させて、弁部材の回転位置を変えることで、ポートを開閉する。このため、弁部材が軸方向(回転軸方向)に移動してポートを開閉する場合(第2比較例)に比べ、弁部材の軸方向に弁部材の移動スペースを確保する必要がない。このため、前述の第2比較例に比べて、バルブにおける弁部材の軸方向に沿った寸法を小さくすることができる。
【0012】
第2態様は、吸着式ヒートポンプに用いられる第1態様のバルブであって、前記筐体は、3つ以上の前記ポートを有し、冷熱及び温熱の少なくとも一方を生成する反応器が前記3つ以上のポートのそれぞれに直接又は間接的に接続されて前記閉空間が内部に形成され、前記閉空間の内部に収容された吸着質が前記ポートのそれぞれの間で流通可能とされ、前記弁部材は、前記回転位置によって前記2つ以上のポートのそれぞれを開閉することで、連通させる前記ポートを切り替える。
【0013】
第2態様の構成によれば、弁部材の回転位置によって連通させるポートを切り替えることで、吸着質が流通する反応器を切り替えることができる。
【0014】
ここで、第2態様の構成では、駆動部が弁部材の磁石に磁力を作用させて、弁部材を回転させて、連通させるポートを切り替える。したがって、ポートを弁部材の回転方向にずらして配置することができるため、吸着質が流通する反応器の数を増やしてポート数を増加させても、バルブにおける弁部材の軸方向に沿った寸法を小さく維持できる。
【0015】
第3態様では、前記3つ以上のポートは、前記閉空間と常時連通する第1ポートと、前記筐体の内壁の同一面で開口する第2ポート及び第3ポートと、を含み、前記弁部材は、回転位置によって、前記第2ポート及び前記第3ポートの一方と前記閉空間とを連通させ、且つ、前記第2ポート及び前記第3ポートの他方を覆う。
【0016】
第3態様の構成によれば、第1ポートが筐体の内部の閉空間と常時連通する。一方、弁部材の回転位置によって、第2ポート及び第3ポートの一方と閉空間とが連通し、第2ポート及び第3ポートの他方が弁部材に覆われる。これにより、弁部材の回転位置を変えることで、第1ポートと第2ポートとを連通する状態と、第1ポートと第3ポートとを連通する状態と、に切り替えることができる。
【0017】
第4態様では、前記弁部材の回転位置によって、前記第1ポートが前記第2ポート及び前記第3ポートのいずれとも非連通とされる。
【0018】
第4態様の構成によれば、弁部材の回転位置を変えることで、第1ポートが第2ポート及び第3ポートのいずれとも連通しない非連通状態に切り替えることができる。
【0019】
第5態様では、前記筐体は、非磁性材で形成されている。
【0020】
第5態様の構成によれば、筐体が非磁性材で形成されているので、駆動部から弁部材へ作用する磁力が影響を受けることを抑制できる。
【0021】
第6態様では、前記筐体は、前記非磁性材としてのオーステナイト系ステンレスで形成されている。
【0022】
第6態様の構成によれば、筐体が非磁性材としてのオーステナイト系ステンレスで形成されているので、領域間で流通する流体として、水等を用いた場合でも筐体が腐食しにくい。
【0023】
請求項1の発明は、冷熱及び温熱の少なくとも一方を生成する3つ以上の反応器と、3つ以上のポートを有し、前記3つ以上のポートのそれぞれに前記3つ以上の反応器のそれぞれが直接又は間接的に接続されて大気圧よりも低圧とされた閉空間が内部に形成される筐体と、前記筐体の内部に収容されると共に回転可能に前記筐体に支持され、磁石を有し、回転位置によって連通させる前記ポートを切り替える弁部材と、前記筐体の外部に配置され、前記磁石に磁力を作用させて前記弁部材を回転させる駆動部と、を備える。
【0024】
請求項1の構成によれば、閉空間とされた筐体の内部に収容された弁部材の磁石に、駆動部が筐体の外部から磁力を作用させて、弁部材を回転させる。これにより、弁部材の回転位置が変化し、弁部材は、回転位置によって連通させるポートを切り替える。連通させるポートを切り替えることで、吸着質が流通する反応器を切り替えることができる。
【0025】
ここで、請求項1の構成では、閉空間が大気圧よりも低圧とされているが、弁部材は閉空間の内部に収容されているため、弁部材に対して大気圧が作用しない。このため、弁部材の一部が閉空間の外部に露出して弁部材に対して大気圧が作用する場合(第1比較例)に比べ、弁部材を駆動する駆動力を低減できる。
【0026】
また、請求項1では、前述のように、駆動部が、弁部材の磁石に磁力を作用させて弁部材を回転させて、弁部材の回転位置を変えることで、連通させるポートを切り替える。このため、弁部材が軸方向(回転軸方向)に移動して連通させるポートを切り替える場合(第2比較例)に比べ、弁部材の軸方向に弁部材の移動スペースを確保する必要がない。このため、前述の第2比較例に比べて、バルブにおける弁部材の軸方向に沿った寸法を小さくすることができる。
【0027】
請求項1の発明では、前記3つ以上の反応器は、吸着質を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器の前記吸着質を吸着して前記蒸発器で冷熱を生成させる第1吸着器と、前記第1吸着器に吸着された前記吸着質を吸着して前記第1吸着器で冷熱を生成させる第2吸着器と、を有し、前記3つ以上のポートは、第1ポート、第2ポート及び第3ポートを含み、前記第1ポートは、前記第1吸着器に接続され、前記第2ポートは、前記蒸発器に接続され、前記第3ポートは、前記第2吸着器に接続され、前記弁部材の回転位置を変えることで、前記第1ポートと前記第2ポートとを連通する状態と、前記第1ポートと前記第3ポートとを連通する状態と、に切り替わる。
【0028】
請求項1の構成によれば、第1ポートと第2ポートとが連通する回転位置に、弁部材を位置させることで、第1吸着器が蒸発器の吸着質を吸着して蒸発器で冷熱を生成させる動作が実行できる。また、弁部材の回転位置を変えて、第1ポートと第3ポートとを連通する状態に切り替えることで、第1吸着器に吸着された吸着質を第2吸着器が吸着して第1吸着器で冷熱を生成させる動作が実行できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、上記構成としたので、弁部材を駆動する駆動力を低減し、且つ弁部材の軸方向に沿った寸法を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本実施形態の吸着式ヒートポンプの構成を示す概略図である。
図2】本実施形態の三方弁の構成を示す概略図である。
図3】本実施形態の三方弁の構成を示す概略図である。
図4】本実施形態の三方弁の構成を示す概略図である。
図5】本実施形態の三方弁の駆動部の構成を示す概略図である。
図6】本実施形態の吸着式ヒートポンプにおける冷熱生成状態を示す説明図である。
図7】本実施形態の吸着式ヒートポンプにおける冷熱生成状態を示す説明図である。
図8】本実施形態の吸着式ヒートポンプにおける再生状態を示す説明図である。
図9】本実施形態の吸着式ヒートポンプにおける再生状態を示す説明図である。
図10】本実施形態の吸着式ヒートポンプにおける再生状態を示す説明図である。
図11】比較例のバルブの構成を示す概略図である。
図12】本実施形態の三方弁の駆動部の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
【0032】
(吸着式ヒートポンプ12)
まず、吸着式ヒートポンプ12(以下、単に「ヒートポンプ12」という)の構成について説明する。図1には、ヒートポンプ12の構成が示されている。
【0033】
ヒートポンプ12は、図1に示されるように、タンク13と、蒸発/凝縮器14(反応器の一例)と、第1吸着器20(反応器の一例)と、第2吸着器22(反応器の一例)と、を有している。
【0034】
蒸発/凝縮器14の内部には、蒸発/凝縮室14Aが形成されている。この蒸発/凝縮器14は、蒸発器としての機能と、凝縮器としての機能とを併せ持っている。すなわち、蒸発/凝縮器14では、蒸発/凝縮室14Aの吸着質(液体の状態)にエネルギー(温熱)が作用すると、この吸着質が蒸発され、その際に冷熱が生成される。また、蒸発/凝縮器14では、蒸発/凝縮室14Aの吸着質(気体の状態)からエネルギーを奪うと、吸着質が凝縮され、その際に温熱が生成される。
【0035】
タンク13は、蒸発/凝縮器14に供給される吸着質を貯留する貯留部として機能する。タンク13は、供給管15によって蒸発/凝縮器14と連通されている。供給管15には、供給弁35が設けられている。供給弁35が開弁されると、供給管15が開放されてタンク13から蒸発/凝縮器14へ吸着質が供給される。
【0036】
第1吸着器20及び第2吸着器22の内部には、それぞれ、第1吸着室20A及び第2吸着室22Aが形成されている。この第1吸着室20A及び第2吸着室22Aには、それぞれ、異なる種類の吸着剤が収容されている。第2吸着器22の吸着剤は、例えば、第1吸着器20の吸着剤よりも高い再生温度の熱で吸着質を脱着させる材料が選択される。
【0037】
本実施形態では、第1吸着器20の吸着剤は、例えばAQSOA−Z05(「AQSOA」は三菱樹脂の登録商標)であり、第2吸着器22の吸着剤は、例えば、Y型ゼオライトである。また、吸着質としては、例えば、水あるいはアンモニアを用いることができる。水及びアンモニアは、ヒートポンプ12において求められる条件(温度及び圧力)で吸着剤に対し吸着及び脱着し、しかも安価に調達できる。
【0038】
蒸発/凝縮器14と第1吸着器20とは、第1連通管16で連通(接続)されている。第1連通管16の内部には、第1連通路16Aが形成されている。また、第1連通管16には、三方弁18(バルブの一例)が設けられている。
【0039】
なお、第1連通管16は、具体的には、三方弁18に対する蒸発/凝縮器14側に配置された第1管71と、三方弁18に対する第1吸着器20側に配置された第2管72と、を有している。
【0040】
第2吸着器22は、第2連通管17により、三方弁18を介して第1連通管16と連通(接続)されている。第2連通管17の内部には、第2連通路17Aが形成されている。
【0041】
三方弁18は、第1管71(蒸発/凝縮器14)と第2管72(第1吸着器20)とを連通する第1連通状態と、第2管72(第1吸着器20)と第2連通管17(第2吸着器22)とを連通する第2連通状態と、第1管71、第2管72及び第2連通管17のいずれも連通しない非連通状態と、に切り替わる。なお、三方弁18の具体的な構成については、後述する。
【0042】
三方弁18が第1連通状態になると、蒸発/凝縮器14と第1吸着器20との間で吸着質の移動が可能となる。また、三方弁18が第2連通状態になると、第1吸着器20と第2吸着器22との間で吸着質の移動が可能となる。三方弁18が非連通状態となると、蒸発/凝縮器14、第1吸着器20及び第2吸着器22の間での三方弁18を介した吸着質の移動ができなくなる。なお、三方弁18が非連通状態であっても、蒸発/凝縮器14と第2吸着器22との間では、以下のように、第3連通管24を通じて吸着質が移動しうる。
【0043】
蒸発/凝縮器14と第2吸着器22とは、第3連通管24で連通(接続)されている。第3連通管24の内部には、第3連通路24Aが形成されている。また、第3連通管24には、開閉弁26が設けられている。開閉弁26が開弁されると、第3連通管24(第3連通路24A)が開放されて蒸発/凝縮器14と第2吸着器22との間で、第1吸着器20を経由することなく、吸着質の移動が可能となる。開閉弁26が閉弁されると、第3連通管24(第3連通路24A)が閉鎖されて蒸発/凝縮器14と第2吸着器22との間で吸着質の移動ができなくなる。
【0044】
蒸発/凝縮器14には、2つの熱源(低温熱源28L及び中温熱源28M)を接続する接続管30Aが設けられている。接続管30Aは熱源側において、それぞれの熱源に対応して分岐しており、分岐部分には、開閉弁32L、32Mが設けられている。開閉弁32L、32Mが開弁されると、熱源から熱交換媒体が蒸発/凝縮器14に流れ、蒸発/凝縮器14で熱交換されて熱源に戻る。
【0045】
第1吸着器20には、3つの熱源(低温熱源28L、中温熱源28M及び高温熱源28H)を接続する接続管30Bが設けられている。接続管30Bは熱源側において、それぞれの熱源に対応して分岐しており、分岐部分には、開閉弁34L、34M、34Hが設けられている。開閉弁34L、34M、34Hが開弁されると、熱源から熱交換媒体が第1吸着器20に流れ、第1吸着器20で熱交換されて熱源に戻る。
【0046】
第2吸着器22には、2つの熱源(中温熱源28M及び高温熱源28H)を接続する接続管30Cが設けられている。接続管30Cは熱源側において、それぞれの熱源に対応して分岐しており、分岐部分には、開閉弁36M、36Hが設けられている。開閉弁36M、36Hが開弁されると、熱源から熱交換媒体が第2吸着器22に流れ、第2吸着器22で熱交換されて熱源に戻る。
【0047】
低温熱源28L、中温熱源28M及び高温熱源28Hの具体例は特に限定されないが、中温熱源28Mは低温熱源28Lよりも高温であり、高温熱源28Hは中温熱源28Mよりも高温である。たとえば、低温熱源28Lとしては、冷却対象を冷却する(冷熱を得る)ために管路29Lを循環している冷媒の熱源を挙げることができる。中温熱源28Mとしては、冷却対象の外部(室外)において外部と熱交換するために管路29Mを流れる熱交換媒体の熱源を挙げることができる。高温熱源28Hとしては、ヒートポンプ12を再生するために管路29Hを流れる熱交換媒体の熱源を挙げることができる。
【0048】
そして、ヒートポンプ12では、蒸発/凝縮器14、第1吸着器20、第2吸着器22、第1連通管16、第2連通管17及び第3連通管24によって、大気圧よりも低圧とされた閉空間が形成されている。この閉空間は、蒸発/凝縮室14A、第1吸着室20A、第2吸着室22A、第1連通路16A、第2連通路17A及び第3連通路24Aによって構成されている。また、閉空間は、蒸気(気体状態の吸着質)が流通する空間であり、少なくとも使用環境下において外部に対して気密とされる空間である。
【0049】
(三方弁18)
次に、三方弁18の具体的な構成について説明する。図2図3及び図4(以下、図2〜4と示す)には、三方弁18の具体的な構成が示されている。なお、図2〜4(A)は、三方弁18の側断面図である。図2〜4(B)は、後述の弁部材50の上部の平面図である。また、図2〜4(B)では、後述の3つの芯体81、82、83のうち、磁力を生じている芯体を図示している。さらに、図2〜4(C)は、後述の弁部材50の下部(弁体54)の平面図である。また、図2〜4(D)は、後述の弁箱42の底面24Aの平面図である。
【0050】
三方弁18は、図2〜4(A)に示されるように、筐体40と、弁部材50と、駆動部80(図5も参照)と、を有している。
【0051】
弁部材50は、三方弁18における可動部分である。弁部材50は、具体的には、弁棒52(軸部)と、弁棒52の下端に設けられた弁体54と、弁棒52の上部に設けられた磁石56と、を有している。
【0052】
弁棒52は、図2〜4(A)及び図2〜4(B)に示されるように、円柱状に形成されており、上下方向に延びている。弁棒52は、筐体40に設けられた上下一対の軸受69によって、弁棒52の軸線周りに回転可能に支持されている。
【0053】
弁体54は、図2〜4(A)及び図2〜4(C)に示されるように、円盤状をしている。弁体54には、その厚み方向(上下方向)に貫通する円孔55(開口)が形成されている。円孔55は、図2〜4(C)に示されるように、平面視にて(弁棒52の軸方向視にて)、弁体54において弁棒52に対する径方向外側の位置に配置されている。すなわち、円孔55は、平面視にて、回転中心から偏心した位置に配置されている。
【0054】
磁石56は、図2〜4(A)及び図2〜4(B)に示されるように、円筒状に形成されている。磁石56は、半円状のS極と半円状のN極とを有している。磁石56のN極は、円孔55の上方に配置されている。すなわち、磁石56のN極は、平面視にて円孔55側に配置されている。
【0055】
筐体40は、非磁性材で形成されている。非磁性材としては、例えば、オーステナイト系ステンレスが用いられる。筐体40は、具体的には、弁体54が収容される弁箱42と、磁石56が収容される収容部60と、を有している。
【0056】
弁箱42の内部には、ポート49A(第1ポートの一例)、ポート49B(第2ポートの一例)及びポート49C(第3ポートの一例)を有する空間49が形成されている。ポート49A、ポート49B及びポート49Cは、吸着質が流入及び流出する流出入口として機能する。また、ポート49A、ポート49B及びポート49Cは、後述のように、管との接続口として機能する。
【0057】
ポート49Aは、弁箱42の側方へ開口している。このポート49Aは、弁箱42の内部空間と常時連通している。
【0058】
ポート49B及びポート49Cは、弁箱42の底面42A(内壁の同一面の一例)における弁体54の下側部分で下方へ開口している。ポート49B及びポート49Cは、図2〜4(D)に示されるように、平面視にて、弁棒52に対する径方向外側の位置に配置されている。すなわち、ポート49B及びポート49Cは、平面視にて、弁棒52の回転中心から偏心した位置に配置されている。具体的には、ポート49B及びポート49Cは、平面視にて、弁棒52を挟んで一方側と他方側に配置されている。そして、ポート49B及びポート49Cは、弁体54の回転位置によって、円孔55と重なる位置に配置されている。
【0059】
ポート49A、49B、49Cのそれぞれには、第2管72(接続部の一例)、第1管71(接続部の一例)及び第2連通管17(接続部の一例)が接続されている。これにより、図2〜4(A)に示されるように、ポート49A、49B、49Cのそれぞれは、第1吸着器20の第1吸着室20A、蒸発/凝縮器14の蒸発/凝縮室14A及び第2吸着器22の第2吸着室22Aと連通している。また、ポート49A、49B、49Cのそれぞれが、第2管72、第1管71及び第2連通管17と接続されることで、弁箱42及び収容部60を含む筐体40の内部に閉空間が形成されている。この閉空間は、ヒートポンプ12における前述の閉空間の一部を構成している。
【0060】
このように、弁箱42は、第1管71及び第2管72と連通しており、弁箱42、第1管71及び第2管72によって第1連通管16が構成されている。また、弁箱42の上部には、弁部材50の弁棒52が差し通された通し孔44が形成されている。
【0061】
収容部60は、弁箱42の天面45から立設された円筒部64と、円筒部64の上端に配置された上板部66と、を有している。収容部60の内部には、弁棒52を支持する前述の上下一対の軸受69が設けられている。一対の軸受69は、それぞれ、上板部66の下面と弁箱42の天面45とに固定されている。
【0062】
本実施形態では、弁部材50の磁石56が収容部60内に収容されると共に、弁部材50の弁体54が弁箱42内に収容されており、弁部材50の全体が閉空間である筐体40内に収容されている。なお、収容部60及び弁箱42は、それぞれ、複数の構成部材が組み付けられて構成されていてもよい。
【0063】
駆動部80は、筐体40の外部に配置されている。駆動部80は、図5に示されるように、3つの芯体81、82、83と、各芯体81、82、83に巻き回されたコイル84、85、86と、を有している。各芯体81、82、83は、角柱状に形成されている。各芯体81、82、83の軸方向一端部81A、82A、83Aが、磁石56に向けられている。芯体81は、収容部60(磁石56)に対する図2(A)における左側に配置され、芯体82は、収容部60(磁石56)に対する図2(A)における右側に配置されている。芯体83は、図2(A)には図示していないが、収容部60(磁石56)に対する図2(A)の紙面の奥側に配置されている。すなわち、芯体81、82、83は、図5に示されるように、弁棒52の周方向に沿って、90度毎に配置されている。
【0064】
各コイル84、85、86は、図5に示されるように、スイッチS1、S2、S3を介して電源89と接続されている。スイッチS1を入れることで、コイル84に電流が流れると、芯体81の軸方向一端部81AがS極となり、磁石56のN極を引き寄せる(図2(B)参照)。このとき、弁体54の円孔55とポート49Bとが重なり、ポート49Bが開放される。ポート49Bが開放されることで、ポート49Bと弁箱42内部の閉空間とが連通する(図2(C)(D)参照)。これにより、三方弁18は、第1管71(蒸発/凝縮器14)と第2管72(第1吸着器20)とを連通する第1連通状態となる(図2(A)参照)。
【0065】
また、スイッチS2を入れることで、コイル85に電流が流れると、芯体82の軸方向一端部82AがS極となり、磁石56のN極を引き寄せる(図3(B)参照)。このとき、弁体54の円孔55とポート49Cとが重なり、ポート49Cが開放される。ポート49Cが開放されることで、ポート49Cと弁箱42内部の閉空間とが連通する(図3(C)(D)参照)。これにより、三方弁18は、第2管72(第1吸着器20)と第2連通管17(第2吸着器22)とを連通する第2連通状態となる(図3(A)参照)
【0066】
さらに、スイッチS3を入れることで、コイル86に電流が流れると、芯体83の軸方向一端部83AがS極となり、磁石56のN極を引き寄せる(図4(B)参照)。このとき、弁体54の円孔55は、ポート49B及びポート49Cのいずれとも重ならず、ポート49B及びポート49Cが閉鎖される(図4(C)(D)参照)。これにより、三方弁18は、第1管71(蒸発/凝縮器14)、第2管72(第1吸着器20)及び第2連通管17(第2吸着器22)のいずれもが連通しない非連通状態となる(図4(A)参照)
【0067】
このように、三方弁18では、駆動部80が、弁部材50の磁石56に磁力を作用させて弁部材50を回転させる。弁部材50の回転位置によって連通させるポート49A、49B、49Cが切り替えられる。以上のように、本実施形態では、回転子(磁石56)を筐体40の内部に収容したPM型のステッピングモータと同様の構成とされる。
【0068】
(冷熱の生成方法)
次に、本実施形態のヒートポンプ12を用いて冷熱を生成する生成方法を説明する。以下において、開弁状態であると明記した弁以外の弁(三方弁18を除く)は、閉弁されている。
【0069】
ヒートポンプ12を用いて冷熱を生成するには、以下のように、冷熱生成工程と、再生工程と、を交互に行う。
【0070】
<冷熱生成工程>
冷熱生成工程では、まず、以下の冷熱生成ステップ1を行ってから、以下の冷熱生成ステップ2を行う。
【0071】
[冷熱生成ステップ1]
冷熱生成ステップ1では、図6に示されるように、開閉弁32Lを開弁して、蒸発/凝縮器14に低温熱源28Lから熱交換媒体を移動させる。また、開閉弁34Mを開弁して、第1吸着器20に中温熱源28Mから熱交換媒体を移動させる。そして、三方弁18を第1連通状態(図2に示す状態)にする。
【0072】
これにより、蒸発/凝縮器14で吸着質が蒸発し、図6に矢印F1で示されるように、この吸着質が第1吸着器20で吸着される。蒸発/凝縮器14で蒸発した吸着質を第1吸着器20で吸着することで、蒸発/凝縮器14において冷熱が生成される。なお、第1吸着器20で吸着質を吸着することで、第1吸着器20において温熱が生成される。
【0073】
[冷熱生成ステップ2]
次に、冷熱生成ステップ2を行う。冷熱生成ステップ2では、まず、図7に示されるように、開閉弁32L、34Mを閉弁する。
【0074】
そして、開閉弁34Lを開弁して、第1吸着器20に低温熱源28Lから熱交換媒体を移動させる。さらに、開閉弁36Mを開弁して、第2吸着器22に中温熱源28Mから熱交換媒体を移動させる。そして、三方弁18を第2連通状態(図3に示す状態)に切り替える。
【0075】
これにより、第1吸着器20で吸着質が蒸発し、図7に矢印F2で示されるように、この吸着質が第2吸着器22で吸着される。
【0076】
以上のように、冷熱生成ステップ2では、第1吸着器20で吸着質を蒸発させて、第1吸着器20から吸着質を脱着することで、第1吸着器20を再生している。そして、第1吸着器20の再生時に吸着質が脱着する際の脱着エネルギーを利用して、冷熱を生成している。なお、第2吸着器22で吸着質を吸着することで、第2吸着器22において温熱が生成される。
【0077】
<再生工程>
冷熱生成工程を行うと、特に冷熱生成ステップ2において、第2吸着器22に吸着質が吸着されるため、以下の第1再生方法、又は以下の第2再生方法を行うことで再生する。
【0078】
[第1再生方法]
第1再生方法は、第1吸着器20を用いない再生方法である。第1再生方法では、図8に示されるように、開閉弁32Mを開弁し、蒸発/凝縮器14に中温熱源28Mから熱交換媒体を移動させる。また、開閉弁36Hを開弁して、第2吸着器22に高温熱源28Hから熱交換媒体を移動させる。そして、開閉弁26を開弁する。
【0079】
これにより、高温熱源28Hの熱を受けて第2吸着器22の吸着質が脱着され、第2吸着器22が再生される。第2吸着器22に吸着されていた吸着質は、図8に矢印F3で示されるように、蒸発/凝縮器14に移動して凝縮される。なお、このとき、三方弁18は、非連通の状態(図4に示す状態)に切り替えられている。
【0080】
以上が第1再生方法である。なお、第1再生方法において、開閉弁32Mに代えて、開閉弁32Lを開弁してもよい。さらに、開閉弁32Lを開弁する場合、低温熱源28L及び中温熱源28Mの温度によっては、開閉弁36Hに代えて開閉弁36Mを開弁することも可能である。なお、第2吸着器22で吸着質が脱着されることにより、第2吸着器22において冷熱が生成される。また、蒸発/凝縮器14で吸着質が凝縮されることにより、蒸発/凝縮器14において温熱が生成される。
【0081】
[第2再生方法]
第2再生方法は、第1吸着器20を用いる再生方法であり、再生ステップ1及び再生ステップ2を交互に行う。なお、第2再生方法を行うにあたり、第1吸着器20は、上記した冷熱生成方法、特に冷熱生成ステップ2において、吸着質が脱着されており、実質的に再生されている。
【0082】
(再生ステップ1)
再生ステップ1では、図9に示されるように、開閉弁34Mを開弁し、第1吸着器20へ中温熱源28Mから熱交換媒体を移動させる。また、開閉弁36Hを開弁し、第2吸着器22へ高温熱源28Hから熱交換媒体を移動させる。そして、三方弁18を第2連通状態(図3に示す状態)に切り替える。
【0083】
これにより、高温熱源28Hの熱を受けて第2吸着器22の吸着質が脱着され、第2吸着器22が再生される。第2吸着器22に吸着されていた吸着質は、第1吸着器20に移動して吸着される。なお、第2吸着器22で吸着質が脱着されることにより、第2吸着器22において冷熱が生成される。また、なお、第1吸着器20で吸着質を吸着することで、第1吸着器20において温熱が生成される。
【0084】
(再生ステップ2)
第1吸着器20が吸着平衡に達すると、再生ステップ2を行う。再生ステップ2では、図10に示されるように、開閉弁32Mを開弁し、蒸発/凝縮器14へ中温熱源28Mから熱交換媒体を移動させる。また、開閉弁34Hを開弁し、第1吸着器20へ高温熱源28Hから熱交換媒体を移動させる。そして、三方弁18を第1連通状態(図2に示す状態)に切り替える。なお、図10は、開閉弁36Hも開弁しているが、開閉弁36Hは閉弁されていてもよい。
【0085】
これにより、高温熱源28Hの熱を受けて第1吸着器20の吸着質が脱着され、第1吸着器20が再生される。第1吸着器20に吸着されていた吸着質は、蒸発/凝縮器14に移動して凝縮される。なお、第1吸着器20で吸着質が脱着されることにより、第1吸着器20において冷熱が生成される。また、蒸発/凝縮器14で吸着質が凝縮されることにより、蒸発/凝縮器14において温熱が生成される。
【0086】
以上が第2再生方法である。第2再生方法では、第1再生方法と比較して、高温熱源28Hの温度が低くても、第2吸着器22を再生できる。第1再生方法では、第2再生方法と比較して、第1吸着器20において吸着質の吸着と脱着とを繰り返さないので、第2吸着器22の再生に必要な総エネルギーは小さくなり、効率的に第2吸着器22を再生できる。
【0087】
(本実施形態の作用効果)
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0088】
本実施形態の構成によれば、前述のように、冷熱生成ステップ1では、三方弁18を第1連通状態(図2に示す状態)にする。そして、冷熱生成ステップ2では、三方弁18を第2連通状態(図3に示す状態)に切り替える。
【0089】
具体的には、閉空間とされた筐体40の内部に収容された弁部材50の磁石56に、駆動部80が筐体40の外部からコイル85による磁力を作用させて弁部材50を回転させる。これにより、弁部材50の回転位置が変わり、開放されていたポート49Bが閉鎖され、閉鎖されていたポート49Cが開放される。このように、弁部材50でポート49B、49Cを開閉することで、連通させるポート49A、49B、49Cが切り替わる。すなわち、三方弁18が、第1連通状態(図2に示す状態)から第2連通状態(図3に示す状態)に切り替わる。
【0090】
ここで、駆動部の駆動力を用いて駆動されるバルブとしては、図11に示すバルブ100(第1比較例)がある。なお、図11に示すバルブ100は、二方弁であるが、駆動部が弁部材を駆動してポート103を開閉する点で、三方弁18と共通する。図11に示すバルブ100は、具体的には、弁体104を有する弁部材105をシリンダ―102で駆動する。弁体104に設けられたベローズ106により、大気圧とされた空間外部と、大気圧よりも低圧とされた空間内部とをシールする(図11のA部分が低圧部分、図11のB部分が大気圧部分)。このため、バルブ100では、弁体104の上面に大気圧が作用し、弁体104を開弁する際に大気圧に対抗して弁部材105を駆動する必要がある。これにより、弁部材105を駆動する駆動力が大きくなる。
【0091】
これに対して、本実施形態では、弁部材50は、閉空間とされた筐体40の内部に収容されているため、弁部材50に対して大気圧が作用しない。このため、バルブ100のように弁部材105の一部に大気圧が作用する場合に比べ、弁部材50を駆動する駆動力を低減できる。
【0092】
また、本実施形態では、弁部材50が閉空間とされた筐体40の内部に収容されているため、筐体40の壁(天面45及び円筒部64)により、閉空間の内部と外部とのシール性が確保される。したがって、バルブ100のようにベローズ106を用いる場合に比べ、簡易かつ安価な構成で、閉空間の内部と外部との間でリークすることが抑制される。
【0093】
また、本実施形態では、前述のように、駆動部88が、弁部材50の磁石56に磁力を作用させて弁部材50を回転させて、弁部材50の回転位置を変えることで、ポート49B、49Cを開閉する。このため、バルブ100のように弁部材50が軸方向(回転軸方向)に移動してポート103を開閉する場合(第2比較例)に比べ、弁部材50の軸方向に弁部材50の移動スペースを確保する必要がない。このため、前述の第2比較例に比べて、三方弁18における弁部材50の軸方向に沿った寸法を小さくすることができる。
【0094】
さらに、本実施形態では、ポート49B、49Cが弁部材50の回転方向に配置できるため、ポート数を増加させても、三方弁18における弁部材50の軸方向に沿った寸法を小さく維持できる。
【0095】
さらに、本実施形態では、閉空間を形成する筐体40は、非磁性材としてのオーステナイト系ステンレスで形成されている。このように、筐体40が非磁性材であるため、駆動部80から弁部材50へ作用する磁力が影響を受けることが抑制される。また、筐体40が、非磁性材としてオーステナイト系ステンレスで形成されているため、吸着質として水を用いた場合でも筐体40が腐食しにくく、駆動部80が弁部材50を駆動する磁力の磁場の透過性に優れる。
【0096】
(変形例)
次に、本実施形態の変形例について説明する。
本実施形態のヒートポンプ12は、蒸発/凝縮器14を有していたが、蒸発器及び凝縮器は、別体で構成されていてもよい。
【0097】
本実施形態では、ポート49B、49Cの2つが弁部材50で開閉されていたが、これに限られず、弁部材50で開閉されるポートが1つであってもよい。この場合では、バルブは2方弁として構成される。バルブを三方弁18に替えて2方弁として構成する場合には、例えば、バルブは、第1連通管16と、第1連通管16に接続される第2連通管17のそれぞれに配置される。
【0098】
本実施形態では、3つのポート(ポート49A、49B、49C)が筐体40の弁箱42に設けられていたが、接続口としてのポートは4つ以上設けられていてもよい。ポートを4つ以上設ける場合には、例えば、弁箱42の底面42Aにおいて弁体54の周方向(弁部材50の回転方向)に沿って設けられたポートの数を増やすことで構成される。なお、弁体54の周方向に沿って設けられるポートは、例えば、等間隔に、又は90度毎に配置される。
【0099】
本実施形態では、コイルが巻き回された芯体が、3つ設けられていたが、これに限られず、ポートの数に応じて、芯体を4つ以上設けてもよい。例えば、芯体を4つ設ける場合には、図12に示されるように、図5における磁石56に対する芯体83の反対側に、コイル186が巻き回された芯体188をもう一つ設けることで構成することができる。コイル186は、スイッチS4を介して電源89と接続される。これにより、4つの芯体81、82、83、188は、弁棒52の周方向に90度毎に配置される。この構成により、弁体54の回転角度を90度毎に切り替えることができる。さらに、図12及び図5に示す構成において、弁棒52の周方向に隣接する2つの芯体において、スイッチを入れることで、隣接する2つの芯体で磁石56を引き寄せることで、隣接する2つの芯体の間の回転角度(45度)で弁体54を停止させるようにしてもよい。
【0100】
本実施形態では、ポート49A、49B、49Cのそれぞれは、第2管72、第1管71及び第2連通管17のそれぞれを介して、第1吸着器20、蒸発/凝縮器14及び第2吸着器22のそれぞれと接続されていた。すなわち、ポート49A、49B、49Cのそれぞれは、第1吸着器20、蒸発/凝縮器14及び第2吸着器22のそれぞれと間接的に接続されていたが、これに限られず、第1吸着器20、蒸発/凝縮器14及び第2吸着器22のそれぞれと直接、接続されていてもよい。
【0101】
本実施形態では、三方弁18は、第1連通状態(図2に示す状態)と、第2連通状態(図3に示す状態)と、非連通状態(図4に示す状態)と、に切り替わる構成とされていたが、これに限られない。例えば、三方弁18は、非連通状態(図4に示す状態)にならず、第1連通状態(図2に示す状態)と、第2連通状態(図3に示す状態)とで切り替わるように構成されていてもよい。この場合では、前述の再生工程としては、例えば、第2再生方法が用いられる。
【0102】
本実施形態では、三方弁18は、蒸発/凝縮器14と第1吸着器20とを連通する第1連通状態と、第1吸着器20と第2吸着器22とを連通する第2連通状態と、に切替可能とされていたが、これに限られない。例えば、三方弁18は、蒸発/凝縮器14と第2吸着器22とを連通する第1連通状態と、第1吸着器20と第2吸着器22とを連通する第2連通状態と、に切替可能とされていてもよい。また、三方弁18は、蒸発/凝縮器14と第1吸着器20とを連通する第1連通状態と、蒸発/凝縮器14と第2吸着器22とを連通する第2連通状態と、に切替可能とされていてもよい。
【0103】
また、三方弁18のポートが接続(連通)される反応器としては、冷熱及び温熱を生成する反応器(例えば、蒸発/凝縮器、吸着器(吸着動作及び脱着動作))、冷熱を生成する反応器(例えば、蒸発器、吸着器(脱着動作))、及び、温熱を生成する反応器(例えば、凝縮器、吸着器(吸着動作)、蓄熱器)のいずれであってもよい。
【0104】
さらに、本発明のバルブは、弁部材が収容される閉空間が大気圧よりも低圧とされていればよく、吸着式のヒートポンプに適用する場合に限られない。
【0105】
本実施形態の吸着器には、吸着剤によって吸着質を吸着及び脱着する構成に限定されず、たとえば、吸着質の飽和蒸気圧以下の圧力で吸着質と反応することで、系の圧力を飽和蒸気圧以下に下げることが可能な反応器であってもよい。ここでいう反応には、物理吸着、化学吸着、吸収、化学反応等が含まれる。
【0106】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、上記に示した変形例は、適宜、複数を組み合わせて構成してもよい。
【符号の説明】
【0107】
12 吸着式ヒートポンプ
14 蒸発/凝縮器(反応器の一例)
17 第2連通管(接続部の一例)
18 三方弁(バルブの一例)
20 第1吸着器(反応器の一例)
22 第2吸着器(反応器の一例)
40 筐体
49A ポート(第1ポートの一例)
49B ポート(第2ポートの一例)
49C ポート(第3ポートの一例)
50 弁部材
56 磁石
71 第1管(接続部の一例)
72 第2管(接続部の一例)
80 駆動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12