(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シェルの開口部からの深さは、前記シェルへの前記雌コネクタの挿入が完了した状態で、雌コネクタに押されて変形した前記天壁と前記側壁を収納できる深さである請求項1または2に記載の情報処理装置。
前記磁石は前記スリットの両側に配置されており、前記雌コネクタが前記シェルに未挿入の状態で、前記スリットを閉じる方向に引き合い、前記雌コネクタが前記シェルから引き抜かれる時に、前記金属シェルとの磁気結合により前記金属シェルに追従して移動する請求項1から3の何れか1項に記載の情報処理装置。
雌コネクタの金属シェルが挿入されるシェルを備え、前記シェルの底面には前記雌コネクタの端子に接続する端子を保持する端子保持突起が設けられた雄コネクタに装着される防水キャップであって、
前記シェルの底面を覆う底壁と、
前記端子保持突起の側面を覆い、伸縮可能に形成された側壁と、
前記端子保持突起の先端部を覆う天壁を備え、
前記天壁には前記雌コネクタの前記シェルへの挿入時に開口して、前記端子保持突起を挿通可能なスリットが設けられ、
前記シェル内への装着後の前記雌コネクタの前記シェルへの挿入時には、前記スリットが開口して前記端子保持突起を挿通すると共に前記側壁が収縮し、
前記雌コネクタが前記シェルから引き抜かれた場合は、前記側壁が伸長して前記天壁が前記端子保持突起の先端部を覆う状態に復帰する防水キャップ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を用いて本出願の実施の形態を、具体的な実施例に基づいて詳細に説明するが、本出願のより良い理解のために、
図1、
図2を用いて比較技術における情報処理装置のコネクタを説明する。なお、以後の説明においては、同じ構成部材については同じ符号を付して説明する。
【0014】
図1(a)は、情報処理装置10の側面を示すものである。防塵、防滴対応している情報処理装置10では、側面の黒枠部分で示す部分にインターフェースコネクタを接続するためのコネクタ穴11があり、取り外し可能なコネクタキャップ12で塞ぐようになっている。コネクタ穴11の中には、外部ケーブルの雌コネクタと接続する雄コネクタが設けられている。外部からの水や塵埃の侵入を防止するためのコネクタキャップ12は、情報処理装置10の筐体から外れないように、筐体に連結されていることが多い。しかし、コネクタキャップ12があると、コネクタ穴11の中のコネクタに外部ケーブルを接続する際、コネクタキャップ12をコネクタ穴11から取り外さなくてはならないので、不便であった。
【0015】
一方、最近では、コネクタ穴11の中に、コネクタ自体を防塵、防滴構造にし、コネクタキャップを除去した
図1(b)に示すような雄コネクタ20を備える情報処理装置10が商品化されている。雄コネクタ20がUSB雄コネクタ25の場合には、
図1(c)に示すように、外部ケーブル13の端部にあるUSB雌コネクタ35が接続される。
図1(d)は情報処理装置10にUSB雌コネクタ35が接続された状態を示している。しかし、コネクタ穴11の内部にあるUSB雄コネクタ25では、端子が防塵、防滴構造の外部に露出しているため、端子に残存した水分により露出した端子に錆が発生したり、端子に塵埃が堆積して接触不良となる問題が生じる。
【0016】
また、雄コネクタ20が充電端子である場合、端子部周辺に塵埃が堆積すると接触不良になり、充電ができなくなる。このような問題発生を防止するために、金属端子部に付着した水分や塵埃を除去することが行われる。水分や塵埃を除去する方法としては、例えば、エアダスター等を使用して定期的に金属端子やその周りに付着している水分や塵埃を吹き飛ばすことが可能である。しかし、この方法は非常に手間がかかる。
【0017】
図2(a)は、図示を省略した情報処理装置に取り付け可能な雄コネクタ20の第1の形態の一例の断面を示すものであり、
図2(b)は
図2(a)に示した雄コネクタ20の正面図である。雄コネクタ20は、シェル1、端子保持突起2、雄コネクタ端子3及びコネクタベース7を備える。端子保持突起2及びコネクタベース7は樹脂製であり、端子保持突起2がコネクタベース7に突設されている。端子保持突起2の一方の面には、複数の雄コネクタ端子3が露出している。
【0018】
雄コネクタ端子3はコネクタベース7を貫通して雄コネクタ20の外部に引き出され、雄コネクタ20が情報処理装置に取り付けられた場合は、情報処理装置内の図示を省略した回路基板に接続される。本例では雄コネクタ20のシェル1は金属製であり、シェル1の開口部近傍に、コネクタ抜け防止突起9が設けられている。コネクタ抜け防止突起9は、端子保持突起2の雄コネクタ端子3がある面の反対側の面に対向するシェル1の先端部近傍に設けられている。コネクタ抜け防止突起9はシェル1の一部を加工して形成することができ、弾性を備えて外部方向に撓むことができる。
【0019】
図2(c)は
図2(a)に示した雄コネクタ20に挿入される雌コネクタ30を断面で示すものであり、
図2(d)は雌コネクタ30を正面から見たものである。雌コネクタ30には金属製のシェル4の内側に中空の樹脂シェル31があり、中空の樹脂シェル31の、雄コネクタ端子3に対向する内面に複数の雌コネクタ端子5が設けられている。雌コネクタ端子5の先端部は鉤状になっており、ばね性を備える。雌コネクタ30のシェル4の所定位置には係止穴32が設けられている。
【0020】
図2(e)は
図2(a)に示した雄コネクタ20に雌コネクタ30が挿入された状態を断面で示すものである。雌コネクタ30が雄コネクタ20に差し込まれた時に、鉤状の雌コネクタ端子5の外面が雄コネクタ20の雄コネクタ端子3の上を摺動し、雌コネクタ端子5が雄コネクタ端子3に電気的に接続される。雌コネクタ30が雄コネクタ20に完全に挿入された状態では、雄コネクタ20に設けられたコネクタ抜け防止突起9が、雌コネクタ30の係止穴32に係合する。コネクタ抜け防止突起9と係止穴32との係合はそれほど強いものではなく、雌コネクタ30を所定以上の力で引っ張れば、雌コネクタ30は雄コネクタ20から抜ける。
【0021】
図2(f)は、図示を省略した情報処理装置に取り付け可能な雄コネクタ20の第2の形態の一例の断面を示すものであり、
図2(g)は
図2(f)に示した雄コネクタ20に雌コネクタ30が挿入された状態を示す断面図である。
図2(a)に示した第1の形態の雄コネクタ20と
図2(c)に示した雌コネクタ30では、雌コネクタ端子5の先端部がばね性を備える鉤状になっていた。一方、
図2(g)に示した第2の形態の雄コネクタ20と雌コネクタ30では、雄コネクタ端子3の先端部がばね性を備える鉤状になっている点が、第1の形態の雄コネクタ20と雌コネクタ30と異なる。
【0022】
以上説明した構造を備え、金属製のシェル4を備える雌コネクタ30が接続される雄コネクタ20に対して、本出願の情報処理装置は、後付け可能な防水キャップが装着された雄コネクタ20を備える。即ち、本願では、
図3(a)に示すような、シェル1の内部に端子保持突起2を備える雄コネクタ20に対して、
図3(b)に示すような防水キャップ6を用意する。雄コネクタ20の形状は一実施例であり、防水キャップ6は本形状に限定されない。雌雄のコネクタ20、30には、内部に端子保持突起2を備える前述の第1の形態の製品を使用することができる。
【0023】
防水キャップ6は弾性部材で形成され、天壁63、側壁62及び底壁61を備えており、側壁62の内部は、
図3(d)に示すように、端子保持突起2を挿入可能な空洞である。なお、
図3(d)に示す防水キャップ6は縦方向の縮尺が横方向の縮尺より小さく描いてあり、防水キャップ6の実際の寸法を表していない。開示の防水キャップ6の弾性部材には、ゴムが使用されている。防水キャップ6の天壁63には後に詳述するスリット64があり、スリット64の両側には永久磁石65(以後単に磁石65と記す)が埋め込まれている。側壁62は端子保持突起2を覆うように形成され、所定の肉厚を備える4つの側面は、伸縮可能な蛇腹状になっている。また、底壁61は側壁62の端部に接続しており、フランジ状である。底壁61の外寸は、雄コネクタ20のシェル1の底面の内寸よりも僅かに大きく形成されている。
【0024】
防水キャップ6は、
図3(c)に示すように、底壁61を僅かに圧縮させながらシェル1の開口部から雄コネクタ20の内部に挿入する。防水キャップ6をシェル1に挿入する時は、端子保持突起2を側壁62で囲まれた空洞内に進入させながら、底壁61がシェル1の底面に達するまで防水キャップ6をシェル1の内部に挿入する。防水キャップ6は、底壁61がシェル1の底面に密着する状態まで嵌め込まれることにより、雄コネクタ20の内部に装着される。
図3(e)は雄コネクタ20に防水キャップ6が正しく装着された状態を示している。
【0025】
図4(a)は、
図3(d)に示したシェル1の内部に、防水キャップ6が正しく装着された状態の雄コネクタ20を示している。シェル1の内部に防水キャップ6が正しく装着された状態では、防水キャップ6の底壁61がコネクタベース7に密着して防水キャップ6内への水や塵埃の侵入を防いでいる。また、防水キャップ6の側壁62はコネクタベース7に突設された端子保持突起2を覆っており、天壁63は端子保持突起2の先端部の前方にある。天壁63と端子保持突起2の位置については後に詳述する。
【0026】
図4(b)は
図4(a)に示した防水キャップ6が装着された雄コネクタ20の正面図であり、
図4(c)は
図3(a)に示した防水キャップ6が装着されていない雄コネクタ20の正面図である。
図4(c)に示されるように、端子保持突起2には複数の雄コネクタ端子3が設けられている。そして、防水キャップ6に設けられたスリット64の長さL1は、端子保持突起2の幅L2より長く形成されており、スリット64を開いて端子保持突起2を通す時に、スリット64がスムーズに開くようになっている。
【0027】
また、スリット64の両側に配置されて天壁63に内蔵される磁石65は、
図4(d)に示すように、2つの磁石65のN極とS極が対向しており、N極からS極に磁力線Mが流れて2つの磁石65が磁力で吸着し合うように配置されている。これは、防水キャップ6がゴム製の場合、ゴムの弾性だけでスリット64を密閉することは不十分なため、スリット64の両側に設けた磁石65によりスリット64を閉じる方向に磁力が作用するようにしているためである。
【0028】
図5(a)は、防水キャップ6の天壁63と側壁62の一部を断面で示すものである。開示の防水キャップ6では、天壁63の裏面部において、スリット64の両側に、スリット64を通る平面Pに対して所定の角度で傾斜するテーパ穴66が設けられている。テーパ穴66の、平面Pに対する傾斜角度は平面Pの両側で同じで良い。
【0029】
図5(b)は、防水キャップ6が、
図4(a)に示したように、正しく雄コネクタシェル1に装着された時の、防水キャップ6に設けられたテーパ穴66と端子保持突起2との関係を説明するものである。防水キャップ6が正しく雄コネクタシェル1に装着された状態では、端子保持突起2の先端部はテーパ穴66の中に位置しており、天壁63の裏面と端子保持突起2の先端部との間には重なり部Dが存在する。端子保持突起2の先端部は、
図5(c)に示すように、テーパ穴66の底面に接触する状態でも良い。
【0030】
図5(d)は、防水キャップ6の天壁63が雌コネクタ等により、矢印Q方向に押された時の天壁63の動作を説明するものである。天壁63が矢印Q方向に押されると、端子保持突起2の先端部がテーパ穴66の斜面の上をスリット64の方向に摺動し、スリット64の両側の天壁63を矢印R方向に移動させるので、端子保持突起2の先端部によりスリット64が押し開かれる。そして、端子保持突起2の先端部は、押し開かれたスリット64の内部に進入し、この後に天壁63を突き抜けて天壁63の外部に突出する。このように、天壁63の裏面にテーパ穴66があり、テーパ穴66の内部に端子保持突起2の先端部が位置した状態であると、雌コネクタの挿入時に、スリット64が開き易く、端子保持突起2の先端部が露出し易い。
【0031】
ここで、防水キャップ6の天壁63の裏面部において、スリット64の両側にテーパ穴66がなく、天壁63の裏面部が平坦な場合について考える。天壁63の裏面部が平坦な場合は、雄コネクタシェル1に正しく防水キャップ6を取り付けた場合でも、
図5(e)に示すように、防水キャップ6が天壁63に内蔵された磁石65の自重によって、矢印Sで示す方向に垂れ下がる場合がある。この場合、例えば、防水キャップ6が端子保持突起2の延長線の方向から距離Eだけ垂れ下がったとすると、端子保持突起2の先端部の位置がスリット64の位置からずれ、天壁63が外部から押されてもスリット64が開かなくなる。
【0032】
また、天壁63の裏面部が平坦な場合、防水キャップ6が天壁63の自重によって垂れ下がっていない場合でも、
図5(f)に示すように、天壁63が外部から矢印Q方向に押されると、天壁63は座屈してしまう。このため、
図6(e)に示すように、雄コネクタ20に雌コネクタ30が挿入されると、
図6(f)に示すように、端子保持突起2がスリット64から露出せず、雄コネクタ20と雌コネクタ30が共に破損する可能性がある。従って、天壁63の裏面にテーパ穴66を設け、防水キャップ6が正しく雄コネクタシェル1に装着された状態において、端子保持突起2の先端部をテーパ穴66の中に位置させることは、防水キャップ6の動作において重要である。
【0033】
ここで、以上のように形成された開示の雄コネクタ20に雌コネクタ30が接続される時の、防水キャップ6の動作を
図6(a)から
図6(c)を用いて説明する。また、雄コネクタ20から雌コネクタ30が引き抜かれる時の、防水キャップ6の動作を
図7(a)から
図7(c)を用いて説明する。
【0034】
図6(a)は、防水キャップ6が装着された雄コネクタ20に雌コネクタ30が挿入され、防水キャップ6の天壁63に雌コネクタ30の先端部が当接した状態を示すものである。雄コネクタ20に雌コネクタ30が挿入されると、まず防水キャップ6の天壁63に雌コネクタ30の先端部が当接する。雌コネクタ30の先端部が防水キャップ6の天壁63に当接した状態では、端子保持突起2の先端部はテーパ穴66の中に位置している。雌コネクタ30が雄コネクタ20に更に押し込まれると、雌コネクタ30の先端部が天壁63を雄コネクタ20の内部に移動させる。
【0035】
図6(b)は、
図6(a)に示した状態から雌コネクタ30が雄コネクタ20に対して更に挿入された状態を示すものである。防水キャップ6の天壁63が雌コネクタ30の先端部に押されて内部側に移動すると、
図5(d)で説明したように、端子保持突起2の先端部がテーパ穴66の斜面の上をスリット64の方向に摺動し、スリット64が押し開かれる。そして、端子保持突起2の先端部は、押し開かれたスリット64の内部に進入していき、やがては天壁63を突き抜けて天壁63の外部に突出する。
【0036】
図6(c)は、防水キャップ6が設けられた雄コネクタ20に雌コネクタ30が完全に挿入された状態を示している。また、
図6(d)は、
図6(c)のA−A線における断面を示している。防水キャップ6が設けられた雄コネクタ20に雌コネクタ30が完全に挿入された状態では、端子保持突起2が防水キャップ6のスリット64を突き抜けて天壁63の外部に突出している。そして、この状態では雌コネクタ端子5が端子保持突起2にある雄コネクタ端子3に接触している。一方、開示の防水キャップ6の側壁62は蛇腹状をしているので、天壁63が雌コネクタ30の先端部に押されて端子保持突起2に沿って移動していくと、側壁62は折り畳まれる。雄コネクタ20に雌コネクタ30が完全に挿入された状態では、折り畳まれた側壁62と天壁63は、雌コネクタ30の先端部とコネクタベース7の間の空間に収納される。
【0037】
図6(c)に示す状態では、防水キャップ6の磁石65と雌コネクタ30の金属製のシェル4の間に磁力による吸引力が作用している。このため、防水キャップ6の天壁63の外面と雌コネクタ30の先端部とは圧着した状態にあり、防水キャップ6の内部には水や塵埃は侵入しない。また、雄コネクタ20の底面は防水キャップ6の底壁61で防水されている。更に、雌コネクタ30にある係止穴32には雄コネクタ20のコネクタ抜け防止突起9が入り込んで、雄コネクタ20からの雌コネクタ30の抜けを防止している。
【0038】
図7(a)は、防水キャップ6が設けられた雄コネクタ20に挿入された雌コネクタ30が引き抜かれる直前の状態を示しており、
図6(c)と同じ状態を示している。この状態から雌コネクタ30が矢印Tで示す方向に引き抜かれると、雌コネクタ30にある係止穴32と雄コネクタ20のコネクタ抜け防止突起9との係合が外れ、雌コネクタ30が雄コネクタ20から離れていく。この時、防水キャップ6の磁石65と雌コネクタ30の金属製のシェル4との間には磁力による吸引力が作用しているので、防水キャップ6の天壁63が雌コネクタ30と共に移動する。
【0039】
図7(b)は、
図7(a)に示した状態から雌コネクタ30が更に引き抜かれた状態を示すものである。この状態では、雌コネクタ端子5が雄コネクタ端子3から離れ、端子保持突起2がスリット64から抜け出るところである。この状態でも防水キャップ6の磁石65と雌コネクタ30の金属製のシェル4との間には磁力による吸引力が作用しているので、防水キャップ6の天壁63は依然として雌コネクタ30の移動に追従して移動する。天壁63の移動により、折り畳まれていた蛇腹状の側壁62は次第に元の形状に復帰していく。
【0040】
図7(c)は、防水キャップ6が設けられた雄コネクタ20から雌コネクタ30が完全に引き抜かれた状態を示すものである。防水キャップ6の磁石65と雌コネクタ30の金属製のシェル4との磁力による係合は、防水キャップ6がこれ以上移動できなくなった状態で解除される。防水キャップ6の磁石65と雌コネクタ30の金属製のシェル4との係合が解除された時点で、防水キャップ6が元の状態から多少伸長しても、防水キャップ6は、蛇腹状の側壁62の復元力によって元の状態に戻る。
【0041】
このように、開示の雄コネクタ20では、雌コネクタ30が引き抜かれる時に、防水キャップ6の磁石65の作用により、防水キャップ6が雌コネクタ30の移動に追従するので、防水キャップ6が雌コネクタ30の引き抜き時に素早く元の形状に復帰する。また、防水キャップ6が元の形状に復帰した後は、磁石65の磁力による吸引力によってスリット64が密着するので、防水、防塵性能が保たれる。なお、以上説明した実施例の防水キャップ6では、底壁61の外寸が雄コネクタ20のシェル1の底面の内寸よりも僅かに大きく形成され、防水キャップ6は底壁61を僅かに圧縮させながらシェル1の開口部から雄コネクタ20の内部に挿入している。一方、底壁61の外寸を雄コネクタ20のシェル1の底面の内寸と同等にする実施例も可能である。この場合は、防水キャップ6は底壁61をシェル1の底面に接着固定すれば良い。
【0042】
次に、雄コネクタ20として、内部に端子保持突起2を備える前述の第2の形態の製品を使用した実施例について説明する。なお、第2の形態の雄コネクタ20と雌コネクタ30は、雄コネクタ20の雄コネクタ端子3の形状と、雌コネクタ30における雌コネクタ端子5の形状が異なるだけであるので、説明はごく簡単に行う。第2の形態の製品を使用する防水キャップ6の底壁61の外寸は、雄コネクタ20のシェル1の底面の内寸よりも僅かに大きく形成しても良いし、シェル1の底面の内寸と同等にしても良い。
【0043】
図8(a)は、シェル1の内部に、防水キャップ6が正しく装着された状態の雄コネクタ20を示している。この状態では、端子保持突起2及びコネクタベース7の底面が、防水キャップ6により水や塵埃の侵入から守られている。
図8(b)は
図8(a)に示した防水キャップ6が装着された雄コネクタ20の正面図であり、
図8(c)は防水キャップ6が装着されていない雄コネクタ20の正面図である。
図8(c)に示されるように、端子保持突起2からは複数の雄コネクタ端子3の鉤状部が突出している。防水キャップ6に設けられたスリット64の長さL1は端子保持突起2の幅L2より長く形成されており、スリット64が端子保持突起2に当接した時に、スムーズに開くようになっている。
【0044】
以上のように形成された第2の形態の雄コネクタ20に雌コネクタ30が接続される時の、防水キャップ6の動作を
図9(a)から
図9(c)を用いて説明する。
図9(a)は、防水キャップ6が装着された雄コネクタ20に雌コネクタ30が挿入され、防水キャップ6の天壁63に雌コネクタ30の先端部が当接した状態を示すものである。雌コネクタ30が雄コネクタ20に更に押し込まれると、雌コネクタ30の先端部が天壁63を雄コネクタ20の内部に移動させる。
【0045】
図9(b)は、
図9(a)に示した状態から雌コネクタ30が雄コネクタ20に対して更に挿入された状態を示すものである。防水キャップ6の天壁63が雌コネクタ30の先端部に押されて内部側に移動すると、端子保持突起2の先端部がテーパ穴66の斜面の上をスリット64の方向に摺動し、スリット64が押し開かれる。そして、端子保持突起2の先端部は、押し開かれたスリット64の内部に進入し、天壁63を突き抜けて天壁63の外部に突出する。
【0046】
図9(c)は、防水キャップ6が設けられた雄コネクタ20に雌コネクタ30が完全に挿入された状態を示している。また、
図9(d)は、
図9(c)のAA−AA線における断面を示している。この状態では、端子保持突起2が防水キャップ6のスリット64を突き抜けて天壁63の外部に突出している。そして、この状態では雌コネクタ端子5が端子保持突起2にある雄コネクタ端子3の鉤状部に接触している。天壁63が雌コネクタ30の先端部に押されて端子保持突起2を挿通して移動し終えた状態では、天壁63と折り畳まれた蛇腹状の側壁62は、雌コネクタ30の先端部とコネクタベース7の間の空間に収納されている。
【0047】
図9(c)に示す状態では、防水キャップ6の磁石65と雌コネクタシェル4の間に磁力による吸引力が作用しているので、防水キャップ6の天壁63の外面と雌コネクタ30の先端部とが圧着しており、防水キャップ6の内部には水や塵埃は侵入しない。また、雄コネクタ20の底面は防水キャップ6の底壁61で防水されている。更に、雌コネクタ30にある係止穴32には雄コネクタ20のコネクタ抜け防止突起9が入り込んで、雄コネクタ20からの雌コネクタ30の抜けを防止している。
【0048】
ところで近年、情報処理装置の小型化に伴って、情報処理装置の厚さが小さくなる傾向にあり、内蔵される雄コネクタのシェルの高さも低くなる傾向にある。このような場合、第1の形態と第2の形態の雄コネクタに装着される開示の防水キャップは、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、雄コネクタ20の高さに合わせて防水キャップ6の肉厚を薄くすることにより、様々な雄コネクタ20に対応させることができる。例えば、携帯型の情報処理装置に内蔵された薄型の雄コネクタに防水キャップ適用する場合は、端子保持突起2の厚さを薄くし、蛇腹状部のゴムの厚みを薄くすることで実現が可能である。
【0049】
また、以上説明した実施例は、端子保持突起2が雄コネクタ20のコネクタベース7の中央部に突設されており、端子保持突起2の両面と雄コネクタシェル1との距離が均等であった。一方、USBコネクタ雄コネクタ(USBソケット或いはUSBレセプタクルと呼ばれることがある)のように、端子保持突起がコネクタベースの中央部から偏った位置に突設されているものがある。そこで、USB雌コネクタのように、端子保持突起が雄コネクタのコネクタベースの中央部から偏った位置に設けられている場合の、第2の形態の雌雄のコネクタの実施例を、
図11を用いて説明する。
【0050】
図11(a)はUSB雄コネクタ25に防水キャップ6Aが取り付けられた状態を示すものである。防水キャップ6Aに隠れているが、端子保持突起はUSB雄コネクタ25のコネクタベースの中央部からオフセットされた位置に突設されている。このため、端子保持突起を覆うようにUSB雄コネクタ25に装着された防水キャップ6Aは、USB雄コネクタ25の一方の側(通常は上側)にオフセットされた位置に装着されている。
【0051】
図11(b)に示すように、防水キャップ6Aはゴム部材で形成され、天壁63、側壁62及び底壁61Aを備えている。防水キャップ6の天壁63にスリット64があり、スリット64の両側には磁石65が埋め込まれている点は同様である。側壁62は端子保持突起を覆うように形成され、所定の肉厚を備える4つの側面は蛇腹状になっている点も同様である。開示の防水キャップ6Aが
図3(b)に示した防水キャップ6と異なる点は、側壁62が底壁61の中央部からではなく、オフセットされた位置から突出している点のみである。また、底壁63のスリット64から遠い側の端部に、防水キャップ6Aの復帰用の別の磁石68を内蔵させることもできる。
【0052】
図11(c)は、
図11(a)に示したUSB雄コネクタ25に、USB雌コネクタ35が挿入される直前の状態を示している。USB雌コネクタ35のシェル4は金属製である。USB雄コネクタ25では、端子保持突起2の一方の面とUSB雄コネクタ25のシェルとの間のスペースが狭いので、防水キャップ6Aの側壁62は薄く形成されている。また、磁石68を雌コネクタ35のシェル4に近接する位置に配置した場合は、シェル4に対して磁力による吸引力が作用するようになっている。
【0053】
図11(d)は、防水キャップ6Aが装着されたUSB雄コネクタ25にUSB雌コネクタ35が完全に挿入された状態を示すものである。USB雄コネクタ25にUSB雌コネクタ35が挿入された時の、防水キャップ6Aの動作は
図6で説明した防水キャップ6の動作と殆ど同じであるので、ここではその説明を省略する。また、USB雄コネクタ25からUSB雌コネクタ35が引き抜かれる時の、防水キャップ6Aの動作は
図7で説明した防水キャップ6の動作と殆ど同じであるので、ここではその説明を省略する。相違点は、防水キャップ6AがUSB雄コネクタ25の中心からオフセットされているために、防水キャップ6Aにスリット64の両側に設置した磁石65に加えて磁石68を設ける場合がある点である。この場合は、USB雄コネクタ25からUSB雌コネクタ35が引き抜かれる時は、磁石65の磁力に加えて、磁石68の磁力によって、防水キャップ6AがUSB雌コネクタ35の引き抜き動作に追従して移動する。
【0054】
図12(a)は別の実施形態の防水キャップ6Bを備える雄コネクタ20を示すものである。ゴムで形成された防水キャップ6及び防水キャップ6Aでは、側壁62が蛇腹状になっており、雌コネクタ30の挿入によって蛇腹状の側壁62が折り畳まれて天壁63と底壁61の距離が収縮していた。一方、防水キャップ6Bもゴムで形成することができるが、側壁62は平坦である。そして、側壁62はその肉厚が薄く形成されており、天壁63と底壁61の間にコイルスプリング67が挿入されている点が防水キャップ6及び防水キャップ6Aと異なる。
【0055】
図12(b)は、
図12(a)に示した雄コネクタ20の防水キャップ6Bが、雌コネクタ30の挿入により収縮した状態を示すものである。防水キャップ6Bでは、雌コネクタが挿入されて天壁63と底壁61の距離が縮まると、コイルスプリング67が圧縮されて縮むことによって防水キャップ6Bが収縮する。防水キャップ6Bが収縮した状態では、平坦で肉厚の薄い側壁62は弛んだ状態となる。
【0056】
以上、本出願を特にその好ましい実施の形態を参照して詳細に説明した。本出願の容易な理解のために、本出願の具体的な形態を以下に付記する。
【0057】
(付記1) 雄コネクタが筐体に設けられた情報処理装置であって、
前記雄コネクタは、シェルと、前記シェルの底面に突設されて、金属シェルを備える雌コネクタとの接続端子を保持する端子保持突起とを備え、
前記雄コネクタの前記シェル内に装着される防水キャップは、前記底面を覆う底壁、前記端子保持突起の周囲を覆う側壁、及び前記端子保持突起の先端部を覆う天壁を備え、
前記天壁には、前記雌コネクタの前記シェルへの挿入時に開口して、前記端子保持突起を挿通するスリットと、挿入された前記雌コネクタの金属シェルと磁気結合する磁石が設けられており、
前記側壁は前記雌コネクタの前記シェルへの着脱に応じて伸縮するように形成されている情報処理装置。
(付記2) 前記天壁の内面にテーパ穴が形成されており、
前記端子保持突起の先端部は、前記雌コネクタが前記シェルに未挿入の状態で、前記テーパ穴内に位置している付記1に記載の情報処理装置。
(付記3) 前記シェルの開口部からの深さは、前記シェルへの前記雌コネクタの挿入が完了した状態で、雌コネクタに押されて変形した前記天壁と前記側壁を収納できる深さである付記1または2に記載の情報処理装置。
(付記4) 前記磁石は前記スリットの両側に配置されており、前記雌コネクタが前記シェルに未挿入の状態で、前記スリットを閉じる方向に引き合い、前記雌コネクタが前記シェルから引き抜かれる時に、前記金属シェルとの磁気結合により前記金属シェルに追従して移動する付記1から3の何れかに記載の情報処理装置。
(付記5) 前記防水キャップはゴムで形成され、伸縮可能な前記側壁は蛇腹状に形成されている付記1から4の何れかに記載の情報処理装置。
【0058】
(付記6) 前記防水キャップはゴムで形成され、前記側壁は、前記側壁の内側に配置したコイルスプリングによって伸縮可能に形成されている付記1から4の何れかに記載の情報処理装置。
(付記7)雌コネクタの金属シェルが挿入されるシェルを備え、前記シェルの底面には前記雌コネクタの端子に接続する端子を保持する端子保持突起が設けられた雄コネクタに装着される防水キャップであって、
前記シェルの底面を覆う底壁と、
前記端子保持突起の側面を覆い、伸縮可能に形成された側壁と、
前記端子保持突起の先端部を覆う天壁を備え、
前記天壁には前記雌コネクタの前記シェルへの挿入時に開口して、前記端子保持突起を挿通可能なスリットが設けられ、
前記シェル内への装着後の前記雌コネクタの前記シェルへの挿入時には、前記スリットが開口して前記端子保持突起を挿通すると共に前記側壁が収縮し、
前記雌コネクタが前記シェルから引き抜かれた場合は、前記側壁が伸長して前記天壁が前記端子保持突起の先端部を覆う状態に復帰する防水キャップ。
(付記8) 金属シェルを備える前記雌コネクタに対応する防水キャップであって、
前記天壁には、前記金属シェルと磁気結合する磁石が前記スリットの両側に配置されており、
前記磁石は、前記雌コネクタが前記シェルに未挿入の状態で、前記スリットを閉じる方向に引き合い、前記雌コネクタが前記シェルから引き抜かれる時に、前記金属シェルとの磁気結合により前記金属シェルに追従して移動する付記7に記載の防水キャップ。
(付記9) 前記防水キャップはゴムで形成され、伸縮可能な前記側壁は蛇腹状に形成されている付記7または8に記載の防水キャップ。
(付記10) 前記防水キャップはゴムで形成され、前記側壁は、前記側壁の内側に配置したコイルスプリングによって伸縮可能に形成されている付記7または8に記載の防水キャップ。
【0059】
(付記11)
前記底壁の外寸は、前記底面の内寸より僅かに大きく形成され、
前記底壁は圧縮された状態で雄コネクタに装着されて前記シェルの底面を覆う付記7から10の何れかに記載の防水キャップ。
(付記12)
前記底壁の外寸は、前記底面の内寸と同等以下に形成され、
前記底壁は雄コネクタに装着され、接着剤により前記シェルの底面を水密に覆う付記7から10の何れかに記載の防水キャップ。