【実施例】
【0042】
[実施例1〜12]
まず、表1及び表2に示すように、第1のシランカップリング剤S1を含む第1の表面処理層を形成したガラス繊維合撚糸(135Tex)を経糸及び緯糸とするガラス繊維織物(経糸織密度:29本/25mm,緯糸織密度:32本/25mm)をガラス繊維織編物として用い、該ガラス繊維織編物の表面に、第2のシランカップリング剤S2を含む第2の表面処理層とを形成し、表面処理ガラス繊維織編物を作製した。前記第1の表面処理層はさらに被膜剤としてウレタン樹脂を含んでいる。なお、第2の表面処理層に、顔料は含まれない。
【0043】
次に、前記表面処理ガラス繊維織編物の前記第2の表面処理層上に、シリコーン樹脂(信越シリコーン製KE5620W−U)を、乾燥後の質量が50g/m
2となるように塗布し、乾燥してシリコーン樹脂層を形成することにより、ガラス繊維強化シリコーン樹脂膜材を作製した。
【0044】
次に、(社)日本膜構造協会試験法標準「膜材料の品質及び性能試験方法」に準拠して、前記表面処理ガラス繊維織編物に対する前記シリコーン樹脂層の接着強度を測定し、シリコーン樹脂層がガラス繊維織編物から剥離できず、破損する場合を良好(◎)、シリコーン樹脂層の一部がガラス繊維織編物に残るが、完全に破損せず、剥離する場合を良(○)、ガラス繊維織編物にシリコーン樹脂層が残らず、剥離する場合を不可(×)として評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0045】
なお、表1及び表2に記載のシランカップリング剤は次の通りである。
【0046】
アミノシラン:3−アミノプロピルトリエトキシシラン
メタクリルシラン:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
エポキシシラン:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
クロロシラン:(3−クロロプロピル)トリメトキシシラン
ジアミノシラン:N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン
アクリルシラン:3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン
ビニルシラン:ビニルトリメトキシシラン
カチオニックシラン:N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩
また、表1〜表4における「質量%」は、表面処理層を備えていないガラス繊維のみの質量を100質量%としたときの値である。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
[比較例1−5]
まず、表3に示すように、第1のシランカップリング剤S1を含む第1の表面処理層を形成したガラス繊維合撚糸(135Tex)を経糸及び緯糸とするガラス繊維織物(経糸織密度:29本/25mm,緯糸織密度:32本/25mm)をガラス繊維織編物として用い、該ガラス繊維織編物の表面に、第2のシランカップリング剤S2を含む第2の表面処理層とを形成し、表面処理ガラス繊維織編物を作製した。前記第1の表面処理層はさらに被膜剤としてウレタン樹脂を含んでいる。
【0050】
次に、前記表面処理ガラス繊維織編物の前記第2の表面処理層上に、シリコーン樹脂(信越シリコーン製KE5620W−U)を、乾燥後の質量が50g/m
2となるように塗布し、乾燥してシリコーン樹脂層を形成することにより、ガラス繊維強化シリコーン樹脂膜材を作製した。
【0051】
次に、(社)日本膜構造協会試験法標準「膜材料の品質及び性能試験方法」に準拠して、前記表面処理ガラス繊維織編物に対する前記シリコーン樹脂層の接着強度を測定し、シリコーン樹脂層がガラス繊維織編物から剥離できず、破損する場合を良好(◎)、シリコーン樹脂層の一部がガラス繊維織編物に残るが、完全に破損せず、剥離する場合を良(○)、ガラス繊維織編物にシリコーン樹脂層が残らず、剥離する場合を不可(×)として評価した。結果を表3に示す。
【0052】
なお、表3に記載のシランカップリング剤は次の通りである。
【0053】
アミノシラン:3−アミノプロピルトリエトキシシラン
メタクリルシラン:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
エポキシシラン:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
クロロシラン:(3−クロロプロピル)トリメトキシシラン
ジアミノシラン:N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン
フェニルシラン:フェニルトリメトキシシラン(分子量240.4)
アルキルシラン:n−プロピルトリメトキシシラン(分子量164.3)
ここで、フェニルトリメトキシシラン及びn−プロピルトリメトキシシランは、官能基群1、2に含まれるいずれの官能基も有していない。
【0054】
【表3】
【0055】
[比較例8]
まず、被膜剤としてウレタン樹脂を含み、シランカップリング剤を含まない、表面処理層が形成されたガラス繊維合撚糸(135Tex)を経糸及び緯糸とするガラス繊維織物(経糸織密度:29本/25mm,緯糸織密度:32本/25mm)をガラス繊維織編物として用い、該ガラス繊維織編物の表面に、第1のシランカップリング剤S1として、3−アミノプロピルトリエトキシシランと3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランとを46.9:53.1の質量比で混合した混合シランカップリング剤を含む第1の表面処理層を形成し、第2のシランカップリング剤S2を含む第2の表面処理層は全く形成せずに、表面処理ガラス繊維織編物の作製を試みた。
【0056】
しかし、前記混合シランカップリング剤は、3−アミノプロピルトリエトキシシランと3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランとの反応により白濁沈殿を生じ、均一な表面処理を行うことができず、シリコーン樹脂層接着強度を適切に評価できなかった。結果を表4に示す。
【0057】
[比較例9]
まず、被膜剤としてウレタン樹脂を含み、シランカップリング剤を含まない、表面処理層が形成されたガラス繊維撚糸(135Tex)を経糸及び緯糸とするガラス繊維織物(経糸織密度:29本/25mm,緯糸織密度:32本/25mm)を400℃の温度で54時間加熱処理するヒートクリーニングを行い、表面処理層を除去した後、シリコーン樹脂(信越シリコーン製KE5620W−U)を、乾燥後の質量が50g/m
2となるように塗布し、乾燥してシリコーン樹脂層を形成することにより、ガラス繊維強化シリコーン樹脂膜材を作製した。
【0058】
得られたガラス繊維強化シリコーン樹脂膜材では、ガラス繊維織編物に対するガラス繊維強化シリコーン樹脂膜材の接着強度は良好であったが、前記ヒートクリーニングによりガラス繊維織編物自体の機械的強度が低下していた。結果を表4に示す。
【0059】
【表4】
【0060】
表1及び表2に示すように、前記第1のシランカップリング剤が前記官能基群1から選択された第1の官能基を有し、前記第2のシランカップリング剤が前記官能基群2から選択された第2の官能基を有するか、前記第1のシランカップリング剤が前記官能基群2から選択された第1の官能基を有し、前記第2のシランカップリング剤が前記官能基群1から選択された第2の官能基を有し、前記第2のシランカップリング剤の質量が、前記第2の表面処理層全体の質量の80質量%以上である実施例1〜12の表面処理ガラス繊維織編物によれば、前記シリコーン樹脂層に対して強固な接着性を得ることができることが明らかである。
【0061】
これに対し、表3に示すように、前記第1のシランカップリング剤が前記官能基群1又は前記官能基群2から選択された第1の官能基を有し、前記第2のシランカップリング剤が第1の官能基と同一の官能基群から選択された第2の官能基を有するか、前記官能基群1又は前記官能基群2のいずれにも含まれない官能基を有する比較例1〜6の表面処理ガラス繊維織編物、又は前記第1のシランカップリング剤が前記官能基群1から選択された第1の官能基を有し、前記第2のシランカップリング剤が前記官能基群2から選択された第2の官能基を有するが、前記第2のシランカップリング剤の質量が、前記第2の表面処理層全体の質量の80質量%未満である比較例7の表面処理ガラス繊維織編物によれば、前記シリコーン樹脂層に対し、十分な接着性を得ることができないことが明らかである。
【0062】
また、表4に示すように、3−アミノプロピルトリエトキシシランと3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランとの混合シランカップリング剤のみを用いる比較例8では、ガラス繊維織編物の均一な表面処理を行うことができず、ヒートクリーニングを行ったガラス繊維織編物の表面にシリコーン樹脂層を形成した比較例9のガラス繊維強化シリコーン樹脂膜材では、ガラス繊維織編物自体の機械的強度が低下し、十分な機械的強度を得ることができないことが明らかである。