(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の電線群は、比較的に直径の小さな細径電線を含む細径電線群と、前記細径電線よりも大きな直径を有する大径電線を含む大径電線群と、を有する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の多芯ケーブルのシール構造。
前記大径電線群を挟んで、2つの前記細径電線群が、前記シースにおける前記多芯ケーブルの長手方向と直交する断面内において、点対称に配されている、請求項4に記載の多芯ケーブルのシール構造。
少なくとも2本の電線からなる複数の電線群がシースで包囲されると共に、前記シースの端部から前記複数の電線が導出された多芯ケーブルに取り付けられるゴム栓であって、
前記ゴム栓は、前記シースの前記端部に外嵌されるシース外嵌部と、前記シースの前記端部から導出された前記複数の電線のそれぞれが貫通される複数の貫通孔を有する電線貫通部と、を備え、
前記シース外嵌部の内周には前記シースの外周に密着するシース側リップが設けられており、
前記複数の貫通孔のそれぞれの内周には前記複数の電線のそれぞれの外周に密着する電線側リップが設けられており、
前記複数の貫通孔は、前記複数の電線群に対応する複数の貫通孔群を形成しており、前記の貫通孔群は、前記シースにおける前記多芯ケーブルの長手方向と直交する断面内において、点対称に形成されており、
前記ゴム栓には、前記シース外嵌部と前記電線貫通部との間の位置に、前記シースの前記端部から導出された前記複数の電線がそれぞれ挿通される複数のガイド孔を有するガイド部材が保持される保持部が形成されており、
前記ガイド部材が前記保持部に保持された状態において、前記複数のガイド孔のそれぞれと、前記複数の貫通孔のそれぞれとが対応するようになっている、ゴム栓。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の技術によると、複数の電線の配置が不均一になった場合に、複数の電線間のシールが不十分になることが懸念された。
【0006】
本明細書に記載された技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、多芯ケーブルのシール性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示された技術に係る多芯ケーブルのシール構造は、複数の電線がシースで包囲されると共に、前記シースの端部から前記複数の電線が導出される多芯ケーブルと、前記シースの前記端部に外嵌したシース外嵌部を有するゴム栓と、を備え、前記複数の電線は、前記シース外嵌部が外嵌した領域で、前記複数の電線のうち少なくとも2本の電線からなる複数の電線群が、前記シースにおける前記多芯ケーブルの長手方向と直交する断面内において、点対称に配されている。
【0008】
上記の構成によれば、複数の電線は、シースにおける多芯ケーブルの長手方向と直交する断面内において、略点対称に配されるようになっている。これにより、ゴム栓によって押圧されたシースは、シースの径方向の内方に変形し、概ね、複数の電線の外面に沿う形態になる。この結果、シースの内圧は、複数の電線に対して均等に加えられるようになっているので、シースとゴム栓との間のシール性を向上させることができる。
【0009】
本発明の実施態様としては以下の態様が好ましい。
【0010】
前記電線群は、前記2本の電線が互いに撚られたツイストペアを含むことが好ましい。
【0011】
上記の構成によれば、ツイストペアとされた電線群について、ノイズの影響を低減させることができる。
【0012】
本明細書に開示された技術は、前記複数の電線は6本の電線を含み、前記複数の電線群は、2本の電線を含む3つの電線群からなる構成に好適に適用することができる。
【0013】
上記の構成によれば、複数の電線が6本の電線を含み、複数の電線群が、2本の電線を含む3つの電線群からなる多芯ケーブルについて、シースとゴム栓との間のシール性を向上させることができる。
【0014】
本明細書に開示された技術は、前記複数の電線群は、比較的に直径の小さな細径電線を含む細径電線群と、前記細径電線よりも大きな直径を有する大径電線を含む大径電線群と、を有する構成に好適に適用することができる。
【0015】
上記の構成によれば、電線の直径が異なる場合であっても、複数の電線群を、シースにおける多芯ケーブルの長手方向と直交する断面内において、点対称に配することにより、シースの内圧を、複数の電線に対して均等に加えることができる。これにより、シースとゴム栓との間のシール性を向上させることができる。
【0016】
前記大径電線群を挟んで、2つの前記細径電線群が、前記シースにおける前記多芯ケーブルの長手方向と直交する断面内において、点対称に配されていることが好ましい。
【0017】
上記の構成によれば、大径電線群が中央位置に配された状態で、2つの細径電線群が大径電線群を挟んで点対称に配される。これにより、大径電線群と細径電線群とを包囲するシースを、より円形に近い形にできるため、複数の電線に対して均等に力を加えることができる。
【0018】
前記ゴム栓は、前記シースの前記端部から導出された前記複数の電線のそれぞれが貫通される複数の貫通孔を有する電線貫通部を有し、前記複数の貫通孔のそれぞれの内周には前記複数の電線のそれぞれの外周に密着する電線側リップが設けられており、前記複数の貫通孔は、前記複数の電線群に対応する複数の貫通孔群を形成しており、前記の貫通孔群は、前記シースにおける前記多芯ケーブルの長手方向と直交する断面内において、点対称に形成されている。
【0019】
前記ゴム栓には、前記シース外嵌部と前記電線貫通部との間の位置に、前記シースの前記端部から導出された前記複数の電線がそれぞれ挿通される複数のガイド孔を有するガイド部材が保持される保持部が形成されており、前記ガイド部材が前記保持部に保持された状態において、前記複数のガイド孔のそれぞれと、前記複数の貫通孔のそれぞれとが対応するようになっている。
【0020】
上記の構成によれば、複数の電線群を、点対称の配置を維持した状態で、複数のガイド孔へと誘導することができる。
【0021】
上記の構成によれば、複数の電線は、複数の貫通孔のそれぞれに貫通されて、電線側リップによってシールされる。これにより、各電線と、ゴム栓とのシール性を向上させることができる。更に、複数の貫通孔群は、シースにおける多芯ケーブルの長手方向と直交する断面内において、点対称に形成されているので、シース外嵌部における複数の電線群の点対称配置を位置することができる。
【0022】
また、本明細書に開示された技術は、ゴム栓であって、少なくとも2本の電線からなる複数の電線群がシースで包囲されると共に、前記シースの端部から前記複数の電線が導出された多芯ケーブルに取り付けられるゴム栓であって、前記ゴム栓は、前記シースの前記端部に外嵌されるシース外嵌部と、前記シースの前記端部から導出された前記複数の電線のそれぞれが貫通される複数の貫通孔を有する電線貫通部と、を備え、前記シース外嵌部の内周には前記シースの外周に密着するシース側リップが設けられており、前記複数の貫通孔のそれぞれの内周には前記複数の電線のそれぞれの外周に密着する電線側リップが設けられており、前記複数の貫通孔は、前記複数の電線群に対応する複数の貫通孔群を形成しており、前記の貫通孔群は、前記シースにおける前記多芯ケーブルの長手方向と直交する断面内において、点対称に形成されている。
【0023】
上記の構成によれば、複数の電線は、複数の貫通孔のそれぞれに貫通されて、電線側リップによってシールされる。これにより、各電線と、ゴム栓とのシール性を向上させることができる。更に、複数の貫通孔群は、シースにおける多芯ケーブルの長手方向と直交する断面内において、点対称に形成されているので、シース外嵌部における複数の電線群の点対称配置を位置することができる。
【0024】
前記ゴム栓には、前記シース外嵌部と前記電線貫通部との間の位置に、前記シースの前記端部から導出された前記複数の電線がそれぞれ挿通される複数のガイド孔を有するガイド部材が保持される保持部が形成されており、前記ガイド部材が前記保持部に保持された状態において、前記複数のガイド孔のそれぞれと、前記複数の貫通孔のそれぞれとが対応するようになっている。
【0025】
上記の構成によれば、上記の構成によれば、複数の電線群を、点対称の配置を維持した状態で、複数のガイド孔へと誘導することができる。
【発明の効果】
【0026】
本明細書に記載された技術によれば、多芯ケーブルのシール性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<実施形態1>
本発明を、多芯ケーブル11のシール構造12に適用した実施形態1を、
図1ないし
図15を参照しつつ説明する。本実施形態は、例えば、車両(図示せず)に搭載された、電気パーキングブレーキ用のワイヤーハーネスに使用することができる。
【0029】
(多芯ケーブル11)
図1〜
図4に示すように、本実施形態に係る多芯ケーブル11は、複数の電線13A,13B,13C,13D,13E,13F(本実施形態では6つ)が絶縁性の合成樹脂製のシース14で包囲された構成となっている。電線13A,13B,13C,13D,13E,13Fは、金属製の芯線(図示せず)の外周が合成樹脂製の絶縁被覆(図示せず)で覆われた構成となっている。多芯ケーブル11の断面形状は円形状をなしている。多芯ケーブル11は、シース14の軸線に沿って延びている。軸線は、実体を有するものでは無く、シース14の断面の中心位置において多芯ケーブル11の長手方向に沿って延びる仮想的な線と定義される。
【0030】
6本の電線13A,13B,13C,13D,13E,13Fは、電気パーキングブレーキ用のモータに接続されるものであって電力用の第1電線13A、及び第2電線13Bと、センサに接続されるものであって信号用の第3電線13C、第4電線13D、第5電線13E、及び第6電線13Fとを含む。第1電線13A、第2電線13B、第3電線13C、第4電線13D、第5電線13E、及び第6電線13Fの断面形状は円形状をなしている。
【0031】
第1電線13A、及び第2電線13Bの外径寸法は、第3電線13C、第4電線13D、第5電線13E、及び第6電線13Fの外径寸法よりも大きく設定されている。第1電線13Aの外径寸法と、第2電線13Bの外径寸法とは同じに設定されている。また、第3電線13Cの外径寸法と、第4電線13Dの外径寸法とは同じに設定されている。また、第5電線13Eの外径寸法と、第6電線13Fの外径寸法とは同じに設定されている。なお、第3電線13C、及び第4電線13Dの外径寸法と、第5電線13E、及び第6電線13Fの外径寸法とは、実質的に同じに設定されている。実質的に同じとは、同じ場合を含むと共に、異なる場合であっても実質的に同じと認識しうる程度のものを含む。
【0032】
第1電線13Aと第2電線13Bとは、電力電線対50(電線群の一例)を形成している。また、第3電線13Cと第4電線13Dとは、第1信号電線対51(電線群の一例)を形成しており、第5電線13Eと第6電線13Fとは第2信号電線対52(電線群の一例)を形成している。
【0033】
第3電線13Cと第4電線13Dとは互いに撚り合わされており、いわゆるツイストペアとされている。また、第5電線13Eと第6電線13Fも互いに撚り合わされており、これもいわゆるツイストペア53とされている。
【0034】
多芯ケーブル11のシース14の端部14Aからは第1電線13A、第2電線13B、第3電線13C、第4電線13D、第5電線13E、及び第6電線13Fが導出されて、それぞれ分岐されている。
【0035】
(シール部材10)
図3〜
図4に示すように、多芯ケーブル11のシース14の端部14Aにおいて、第1電線13A、第2電線13B、第3電線13C、第4電線13D、第5電線13E、及び13Dが分岐された領域には、シール部材10が取り付けられている。シール部材10によって、シース14の端部14Aから水、油等の液体がシース14内に浸入することが抑制されるようになっている。シール部材10は、シース14の端部14Aに外嵌されるゴム栓15と、ゴム栓15に外嵌されるキャップ17と、を備える。
【0036】
(ゴム栓15)
図3〜
図4に示すように、シース14の端部14Aには、ゴム栓15が外嵌されている。ゴム栓15は、シース14の端部14Aに外嵌されるシース外嵌部18を有する。シース外嵌部18は、シース14の端部14Aと反対側に延びて、シース14の端部14Aと反対方向に開口するフード状に形成されている。シース外嵌部18の端縁部には、シース外嵌部18の径方向の外方に突出するフランジ部19が形成されている。シース外嵌部18は、自然状態において実質的に円筒形状に形成されている。
【0037】
(シース側リップ20)
図3〜
図4に示すように、シース外嵌部18の内周には、内方に突出する複数のシース側リップ20が、シース外嵌部18の周方向に沿って環状に形成されている。シース外嵌部18がシース14の端部14Aに外嵌された状態で、シース側リップ20は、シース14の外周に密着するようになっている。これにより、ゴム栓15と、シース14との間がシールされる。
【0038】
(電線貫通部21)
図6〜
図7に示すように、ゴム栓15には、シース外嵌部18と反対側の端部に、第1電線13A、第2電線13B、第3電線13C、第4電線13D、第5電線13E、及び第6電線13Fのそれぞれが貫通される、複数(本実施形態では6つ)の貫通孔22A,22B,22C,22D,22E,22Fを有する電線貫通部21が設けられている。複数の貫通孔22A,22B,22C,22D,22E,22Fは、第1電線13Aが貫通される第1貫通孔22Aと、第2電線13Bが貫通される第2貫通孔22Bと、第3電線13Cが貫通される第3貫通孔22Cと、第4電線13Dが貫通される第4貫通孔22Dと、第5電線13Eが貫通される第5貫通孔22Eと、第6電線13Fが貫通される第6貫通孔22Fと、を含む。
【0039】
図7に示すように、電線貫通部21には、
図7における上側に、第3貫通孔22C及び第4貫通孔22Dが、
図7における左右方向に並んで形成されている。
【0040】
図7において、第3貫通孔22C及び第4貫通孔22Dの下方には、第1貫通孔22A及び第2貫通孔22Bが、
図7における左右方向に並んで形成されている。
【0041】
図7において、第1貫通孔22A及び第2貫通孔22Bの下方には、第5貫通孔22E及び第6貫通孔22Fが、
図8における左右方向に並んで形成されている。
【0042】
第1貫通孔22Aの内径寸法は、第1電線13Aの外径寸法よりもやや大きく形成されている。第1貫通孔22Aの内周には、第1電線13Aの外周に密着する第1電線側リップ26Aが、第1貫通孔22Aの周方向に沿って環状に形成されている。第1電線側リップ26Aは、第1貫通孔22Aの内部に第1電線13Aが貫通された状態で、第1電線13Aの外周に密着するようになっている。これより、第1電線13Aとゴム栓15との間がシールされる。
【0043】
第2貫通孔22Bの内径寸法は、第2電線13Bの外径寸法よりもやや大きく形成されている。第2貫通孔22Bの内周には、第2電線13Bの外周に密着する第2電線側リップ26Bが、第2貫通孔22Bの周方向に沿って環状に形成されている。第2電線側リップ26Bは、第2貫通孔22Bの内部に第2電線13Bが貫通された状態で、第2電線13Bの外周に密着するようになっている。これにより、第2電線13Bとゴム栓15との間がシールされる。
【0044】
第3貫通孔22Cの内径寸法は、第3電線13Cの外径寸法よりもやや大きく形成されている。第3貫通孔22Cの内周には、第3電線13Cの外周に密着する第3電線側リップ26Cが、第3貫通孔22Cの周方向に沿って環状に形成されている。第3電線側リップ26Cは、第3貫通孔22Cの内部に第3電線13Cが貫通された状態で、第3電線13Cの外周に密着するようになっている。これにより、第3電線13Cとゴム栓15との間がシールされる。
【0045】
第4貫通孔22Dの内径寸法は、第4電線13Dの外径寸法よりもやや大きく形成されている。第4貫通孔22Dの内周には、第4電線13Dの外周に密着する第4電線側リップ26Dが、第4貫通孔22Dの周方向に沿って環状に形成されている。第4電線側リップ26Dは、第4貫通孔22Dの内部に第4電線13Dが貫通された状態で、第4電線13Dの外周に密着するようになっている。これにより、第4電線13Dとゴム栓15との間がシールされる。
【0046】
第5貫通孔22Eの内径寸法は、第5電線13Eの外径寸法よりもやや大きく形成されている。第5貫通孔22Eの内周には、第5電線13Eの外周に密着する第5電線側リップ26Eが、第5貫通孔22Eの周方向に沿って環状に形成されている。第5電線側リップ26Eは、第5貫通孔22Eの内部に第5電線13Eが貫通された状態で、第5電線13Eの外周に密着するようになっている。これにより、第5電線13Eとゴム栓15との間がシールされる。
【0047】
第6貫通孔22Fの内径寸法は、第6電線13Fの外径寸法よりもやや大きく形成されている。第6貫通孔22Fの内周には、第6電線13Fの外周に密着する第6電線側リップ26Fが、第6貫通孔22Fの周方向に沿って環状に形成されている。第6電線側リップ26Fは、第6貫通孔22Fの内部に第6電線13Fが貫通された状態で、第6電線13Fの外周に密着するようになっている。これにより、第6電線13Fとゴム栓15との間がシールされる。
【0048】
図7に示すように、第1貫通孔22A及び第2貫通孔22Bは、比較的大径な第1電線13A及び第2電線13Bが挿通される、大径貫通孔対41(貫通孔群の一例)とされる。また、第2貫通孔22C及び第3貫通孔22Dは、第1電線13A及び第2電線13Bよりも細径な、第3電線13C及び第4電線13Dが挿通される、第1細径貫通孔対42(貫通孔群の一例)とされる。また、第5貫通孔22E及び第6貫通孔22Fは、第1電線13A及び第2電線13Bよりも細径な、第5電線13E及び第6電線13Fが挿通される、第2細径貫通孔対43(貫通孔群の一例)とされる。
【0049】
図7において、ゴム栓15のうち、電線貫通部21側の端部における、多芯ケーブル11の略中央位置を点56で示す。点56について、大径貫通孔対41は点対称に配されている。また、点56について、第1細径貫通孔対42と、第2細径貫通孔対43とは、点対称に配されている。全体として、大径貫通孔対41、第1細径貫通孔対42、及び第2細径貫通孔対43は、点56について点対称に配されている。
【0050】
(キャップ17)
図3〜
図4に示すように、ゴム栓15には合成樹脂製のキャップ17が外嵌されている。キャップ17は、シース14の端部14Aから、第1電線13A、第2電線13B、第3電線13C、第4電線13D、第5電線13E、及び第6電線13Fが導出された側(
図3における左側)からゴム栓15に外嵌されている。キャップ17は、第1電線13A、第2電線13B、第3電線13C、第4電線13D、第5電線13E、及び第6電線13Fが導出された側からシース14側に向かって(
図3における右方)に開口されている。キャップ17の開口端縁は、ゴム栓15のフランジ部19に当接している。
【0051】
キャップ17には、キャップ17の開口端縁側(
図4における右側)の位置に、ゴム栓15のシース外嵌部18に外嵌される大径部30が形成されている。
図9に示すように、大径部30の断面形状は、シース外嵌部18の外形状に倣って、円形状に形成されている。大径部30の内周は、シース外嵌部18の外周に形成された複数(本実施形態では3つ)の大径部側リップ31と密着するようになっている。
図3〜
図4に示すように、大径部側リップ31は、シース外嵌部18の外周面に、外方に突出すると共に、シース外嵌部18の周方向に沿って形成されている。大径部側リップ31と、キャップ17の大径部30の内周とが密着することにより、キャップ17の大径部30と、ゴム栓15のシース外嵌部18との間がシールされる。
【0052】
図3〜
図4に示すように、キャップ17の大径部30が、ゴム栓15のシース外嵌部18に外嵌された状態で、大径部30はシース外嵌部18を、シース外嵌部18の径方向の内方に押圧するようになっている。これにより、シース外嵌部18は、シース14の外周に外方から押圧されるようになっている。これにより、シース外嵌部18のシース側リップ20は、シース14の外周に確実に密着されるようになっている。
【0053】
図3に示すように、キャップ17の内部には、大径部30よりも、キャップ17の開口方向と反対側(図における左側)の位置に、ゴム栓15の電線貫通部21に外嵌される小径部34が形成されている。小径部34の外径寸法は、大径部30の外径寸法よりも小さく設定されている。
図5に示すように、小径部34の形状は、電線貫通部21の外形状に倣って形成されている。
【0054】
図3〜
図4に示すように、小径部34の内周は、電線貫通部21の外周に形成された複数(本実施形態では3つ)の小径部側リップ35と密着するようになっている。
図6に示すように、小径部側リップ35は、電線貫通部21の外周面に、外方に突出すると共に、電線貫通部21の周方向に沿って形成されている。小径部側リップ35と、キャップ17の小径部34の内周とが密着することにより、キャップ17の小径部34と、ゴム栓15の電線貫通部21との間がシールされる。
【0055】
図3〜
図4に示すように、キャップ17の小径部34が、ゴム栓15の電線貫通部21に外嵌された状態で、小径部34は電線貫通部21を、電線貫通部21の径方向の内方に押圧するようになっている。これにより、電線貫通部21は外方から圧縮される。これにより、第1〜第6貫通孔22A,22B,2C,22D,22E,22Fの内周に形成された第1〜第6電線側リップ26A,26B,26C,26D,26E,26Fは、第1〜第6電線13A,13B,13C,13D,13E,13Fのそれぞれの外周に確実に密着されるようになっている。
【0056】
図3〜
図4に示すように、キャップ17は、キャップ17の開口方向と反対側の位置に、奥壁36が形成されている。
図3〜
図4に示すように、奥壁36には、第1電線13A、第2電線13B、第3電線13C、第4電線13D、第5電線13E、及び第6電線13Fのそれぞれがキャップ17から導出される、第1導出孔37A、第2導出孔37B、第3導出孔37C、第4導出孔37D、第5導出孔37E、及び第6導出口37Fが、奥壁36を貫通して形成されている。
【0057】
(断面構造)
図9には、
図8におけるIX―IX線断面図を示す。
図9には、IX―IX線断面における多芯ケーブル11の略中央位置を点55で示す。シース14は、ゴム栓15のシース外嵌部18に押圧されている。シース14の内面40は、第1〜第6電線13A,13B,13C,13D,13E,13Fの配置に対応する形状に変形している。シース14の内面40は、略菱形形状をなしている。詳細には、第1電線13Aと、第2電線13Bと、第3電線13C及び第4電線13Dからなる第1信号電線対51と、第5電線13E及び第6電線13Fからなる第2信号電線対52と、により、略菱形形状の頂点部分が形成されている。
【0058】
図9において、点55について、電力電線対50は点対称に配されている。また、点55について、第1信号電線対51と、第2信号電線対52とは、点対称に配されている。全体として、電力電線対50、第1信号電線対51、及び第2信号電線対52は、点55について点対称に配されている。これにより、ゴム栓15のシース外嵌部18によってシース14が径方向の内方に潰されるように変形した時に、シース14の内面40は、第1〜第6電線13A,13B,13C,13D,13E,13Fの外周位置まで変形される。このとき、電力電線対50、第1信号電線対51、及び第2信号電線対52は、点55について点対称に配されているので、シース14の内面40は、概ね、点55について点対称な形状に変形されている。この結果、シース14に対して、ゴム栓15のシース外嵌部18からの押圧力が均等に加えられるようになっている。これにより、シース14の内面40は、略菱形形状になり、円形に近い形状になっている。このため、シース14の外側から加えられた押圧力は、シース14の内面40側に対して、均等に加えられるようになっている。
【0059】
(ガイド部材16)
図10〜
図12に示すように、ガイド部材16は合成樹脂製であって、第1電線13Aが挿通される第1ガイド孔38Aと、第2電線13Bが挿通される第2ガイド孔38Bと、第3電線13Cが挿通される第3ガイド孔38Cと、第4電線13Dが挿通される第4ガイド孔38Dと、第5電線13Eが挿通される第5ガイド孔38Eと、第6電線13Fが挿通される第6ガイド孔38Fが貫通されている。
【0060】
ガイド部材16は、ゴム栓15の保持部28に保持されるようになっている。これにより、ゴム栓15の第1〜第6貫通孔22A,22B,22C,22D,22E,22Fのそれぞれと、ガイド部材16の第1〜第6ガイド孔38A,38B,38C,38D,38E,38Fのそれぞれとが、整合するようになっている。詳細に説明すると、第1貫通孔22Aと第1ガイド孔38Aとが整合し、第2貫通孔22Bと第2ガイド孔38Bとが整合し、第3貫通孔22Cと第3ガイド孔38Cとが整合し、第4貫通孔22Dと第4ガイド孔38Dとが整合し、第5貫通孔22Eと第5ガイド孔38Eとが整合し、第6貫通孔22Fと第6貫通孔38Fとが整合するようになっている。
【0061】
図10に示すように、第1ガイド孔38A及び第2ガイド孔38Bは、比較的大径な第1電線13A及び第2電線13Bが挿通される、大径ガイド孔対44(ガイド孔群の一例)とされる。また、第2ガイド孔38C及び第3ガイド孔38Dは、第1電線13A及び第2電線13Bよりも細径な、第3電線13C及び第4電線13Dが挿通される、第1細径ガイド孔対45(ガイド孔群の一例)とされる。また、第5ガイド孔38E及び第6ガイド孔38Fは、第1電線13A及び第2電線13Bよりも細径な、第5電線13E及び第6電線13Fが挿通される、第2細径ガイド孔対46(ガイド孔群の一例)とされる。
【0062】
図10において、ガイド部材16のうち、端部における、多芯ケーブル11の略中央位置を点57で示す。点57について、大径ガイド孔対44は点対称に配されている。また、点57について、第1細径ガイド孔対45と、第2細径ガイド孔対46とは、点対称に配されている。全体として、大径貫通孔対41、第1細径貫通孔対42、及び第2細径ガイド孔対46は、点57について点対称に配されている。
【0063】
(本実施形態の作用、効果)
続いて、本実施形態の作用、効果を説明する。まず、本実施形態の作用、効果との比較のために、仮想的な技術について説明する。
【0064】
(仮想的な技術)
図13には、シース14が、ゴム栓15に押圧された状態が模式的に示されている。仮想的な技術においては、シース14の内部において、
図13における上側に、第1電線13Aと第2電線13Bとが左右方向に並んで配されており、第1電線13Aと第2電線13Bの下方には、第3電線13Cと第4電線13Dと左右方向に並んで配されており、第3電線13Cと第4電線13Dの下方には、第5電線13Eと第6電線13Fとが左右方向に並んで配されている。
【0065】
仮想的な技術においては、シース14の軸線54(シース14の長手方向を示す)と、多芯ケーブル11の中心位置を示す点55について、第1〜第6電線13A,13B,13C,13D,13E,13Fは、点対称には配されていない。このため、ゴム栓15に押圧されたシース14の内面40は、点55について点対称な形状には変形していない。特に、第3電線13C、第4電線13D、第5電線13E、第6電線13Fの、
図13における左右方向については、シース14の内面40との間に隙間が形成されている。この隙間が形成された領域と、シース14の内面40のうち、第1電線13A及び第2電線13Bと接触する部分とでは、シース14の、径方向内方についての押圧力が異なってしまう。
【0066】
一方、
図14には、本実施形態について、シース14が、ゴム栓15に押圧された状態が模式的に示されている。上記したように、ゴム栓15に押圧されることにより、シース14の内面40は、シース14の軸線54(シース14の長手方向を示す)と、多芯ケーブル11の中心位置を示す点55について、実質的に点対称な形状に変形している。詳細には、シース14の内面40は、略菱形形状になっている。これにより、ゴム栓15からシース14に加えられた圧力は、シース14の内面40から、第1〜第6電線13A,13B,13C,13D,13E,13Fの外面に対して、均等に加えられるようになっている。
【0067】
図13に表された仮想的な技術におけるシース14の内面40の断面形状を比べると、本実施形態に係るシース14の内面40は、略菱形形状となっており、比較的に円形に近い形状となっている。これにより、シース14の外側からゴム栓15によって加えられた力は、シース14の内面40側に対して、均等に加えられるようになっている。
【0068】
図15には、仮想的な技術と、本実施形態について、シース14の外周における位置と、シース14の内面40における面圧との関係について示す。仮想的な技術においては、シース14の外周における位置によって、面圧が異なっている。詳細には、第3電線13C及び第5電線13Eの、
図13における左右方向に形成された隙間に対応する部分では面圧が急激に低下し、第5電線13Eと第6電線13Fとシース14の内面40とが接触する部分では面圧が急激に上昇し、第5電線13E及び第6電線13Fの、
図13における左右方向に形成された隙間に対応する部分では、再び、面圧が急激に低下している。その後、第1電線13Aとシース14の内面40が接触する部分では面圧が急激に上昇するとともに、第2電線13Bとシース14の内面40が接触する部分でも、面圧が急激に上昇している。このように仮想的な技術においては、シース14の内面40の面圧が非常に不均一になっている。
【0069】
これに対して、本実施形態においては、シース14の外周における位置が異なった場合でも、シース14の内面40における面圧は略一定の値を示している。
【0070】
本実施形態に係る多芯ケーブルのシール構造は、複数の電線がシースで包囲されると共に、シースの端部から複数の電線が導出される多芯ケーブルと、シースの端部に外嵌されるシース外嵌部を有するゴム栓と、を備え、複数の電線は、少なくともゴム栓の内部の領域で、複数の電線のうち2本の電線からなる複数の電線対が、多芯ケーブルの軸線54と直交する断面内において、点55について点対称に配されている。
【0071】
上記の構成によれば、第1〜第6電線13A,13B,13C,13D,13E,13Fは、点55について、略点対称に配されるようになっている。これにより、ゴム栓15のシース外嵌部18によって押圧されたシース14は、シース14の径方向の内方に変形し、概ね、第1〜第6電線13A,13B,13C,13D,13E,13Fの外面に沿う形態になる結果、シース14の内圧は、第1〜第6電線13A,13B,13C,13D,13E,13Fに対して略均等に加えられるようになっている。これにより、シース14とゴム栓15との間のシール性を向上させることができる。
【0072】
また、本実施形態においては、第1信号電線対51と、第2信号電線対52は、それぞれ、2本の電線が互いに撚られたツイストペア53電線となっている。これにより、信号用の第3〜第6電線13C,13D,13E,13Fについて、ノイズの影響を低減させることができる。
【0073】
また、本実施形態においては、複数の電線は、6本の、第1〜第6電線13A,13B,13C,13D,13E,13Fとされている。これにより、シース14内において、点55について、より点対称な配置とすることができる。この結果、シース14とゴム栓15との間のシール性を向上させることができる。
【0074】
<実施形態2>
次に、本明細書に記載された技術の実施形態2を、
図16〜
図20を参照しつつ説明する。実施形態2は、複数の電線を個別にシールする構造が省略されている点で、実施形態1と異なる。
【0075】
図16に示すように、シース14の端部14Aには、ゴム栓60が外嵌されている。
図18に示すように、ゴム栓60は、シース14の端部14Aに外嵌されるシース外嵌部63を有する。シース外嵌部63は、シース14の端部14Aと反対側に延びて、シース14の端部14Aと反対方向に開口するフード状に形成されている。シース外嵌部63の端縁部には、シース外嵌部63の径方向の外方に突出するフランジ部19が形成されている。シース外嵌部63は、自然状態において実質的に円筒形状に形成されている。
【0076】
図17に示すように、本実施形態に係るキャップ61は、ゴム栓60のシース外嵌部63に外嵌される大径部62が形成されている。
図17に示すように、大径部62の断面形状は、シース外嵌部63の外形状に倣って、円形状に形成されている。
【0077】
(断面構造)
図20には、
図19におけるXX―XX線断面図を示す。
図20において、シース14の略中央位置には、
図19におけるXX―XX線断面における多芯ケーブル11の中央位置を示す点65が示されている。シース14は、ゴム栓60のシース外嵌部63に押圧されることにより、シース14の径方向の内方に潰れるように変形している。シース14の内面40は、第1〜第6電線13A,13B,13C,13D,13E,13Fの配置に対応する形状に変形している。
【0078】
図20において、点65について、電力電線対50は点対称に配されている。また、点65について、第1信号電線対51と、第2信号電線対52とは、点対称に配されている。全体として、電力電線対50、第1信号電線対51、及び第2信号電線対52は、点65について点対称に配されている。これにより、ゴム栓60のシース外嵌部63によってシース14が径方向の内方に潰されるように変形した時に、シース14の内面40は、第1〜第6電線13A,13B,13C,13D,13E,13Fの外周位置まで変形される。このとき、電力電線対50、第1信号電線対51、及び第2信号電線対52は、点65について点対称に配されているので、シース14の内面40は、概ね、点65について点対称な形状に変形されている。この結果、シース14に対して、ゴム栓60のシース外嵌部63からの押圧力が均等に加えられるようになっている。
【0079】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0080】
本実施系形態においては、キャップ61、及びゴム栓60について、構造が簡素化されている。このような簡易な構成により、シース14と、ゴム栓60との間のシール性を向上させることができる。
【0081】
<他の実施形態>
本明細書に記載された技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に記載された技術の技術的範囲に含まれる。
【0082】
(1)実施形態1においては、電線の本数は6本とされていたが、これに限られず、電線の本数は、2本以上の複数であってもよい。例えば、
図21に示す多芯ケーブルは、10本の電線71A,71B,71C,71D,71E,71F,71G,71H,71I,71Jがシース72内に配されている。10本の電線71A〜71Jは、シース72に内側において、一括してシート73に覆われている。シート73は紙、合成樹脂等、必要に応じて任意の材料で構成することができる。電線71A〜71Jは、2本ずつ撚り合わされて、いわゆるツイストペアをなしている。
図21には、2本の電線71A,71Bからなる信号用の第1信号線対74A(電線群の一例)、2本の電線71C,71Dからなる第2信号線対74B(電線群の一例)、2本の電線71E,71Fからなる第3信号線対74C(電線群の一例)、2本の電線71G,71Hからなる第4信号線対74D(電線群の一例)と、2本の電線71I,71Jからなる電力用の電力電線対75(電線群の一例)が示されている。
図21に示すように、多芯ケーブル70内において、第1信号線対74A〜第4信号線対74D、及び電力電線対75は、点76について点対称に配されている。
【0083】
(2)また、多芯ケーブル80は、
図22に示すように、14本の電線81A,81B,81C,81D,81E,81F,81G,81H,81I,81J,81K,81L,81M,81Nがシース82内に配される構成としてもよい。14本の電線81A〜81Nは、シース82の内側において、一括してシート83に覆われている。電線81A〜81Nは、2本ずつ撚り合わされて、いわゆるツイストペアをなしている。
図22には、信号用の第1信号線対84A(電線群の一例)、第2信号線対84B(電線群の一例)、第3信号線対84C(電線群の一例)、第4信号線対84D(電線群の一例)、第5信号線対84E(電線群の一例)、第6信号線対84F(電線群の一例)と、電力用の電力電線対85(電線群の一例)が示されている。
図22に示すように、多芯ケーブル80内において、電力電線対85は、点86について点対称に配されている。なお、第1信号線対84A〜第6信号線対84Fは、それぞれ、2本の電線が撚り合わされているので、各信号線対84〜84Fは、シース82内においては、2本の電線が螺旋状に撚り合わされた領域を占有する。この、各信号線対84〜84Fが占有する領域について見ると、第1信号線対84A〜第6信号線対84Fは、点86について点対称に配されている。
【0084】
(3)実施形態1においては、1つの多芯ケーブルには6本の電線が含まれる構成とし、上記した(1)では10本の電線が含まれる構成とし、上記した(2)では14本の電線が含まれる構成としたが、これに限られず、1つの多芯ケーブルには任意の本数の電線が含まれる構成とすることができる。
【0085】
(4)実施形態1においては、第1信号電線対51と、第2信号電線対52とは、それぞれツイストペア53とされていたが、これに限られず、2本の電線が単に対をなしていて、互いに撚り合わされていない構成であってもよい。
【0086】
(5)実施形態1においては、電線群は、2本の電線からなる電線対とする構成としたが、これに限られず、電線群は、3本以上の電線を含む構成としてもよい。