特許第6458891号(P6458891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6458891
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】蓄電システム及び蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/34 20060101AFI20190121BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20190121BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20190121BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20190121BHJP
   H02J 1/12 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   H02J7/34 B
   H02J7/02 J
   H02J7/00 302C
   H02J1/00 306L
   H02J1/12
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-26801(P2018-26801)
(22)【出願日】2018年2月19日
【審査請求日】2018年8月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】松本 剛幸
【審査官】 宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/162025(WO,A1)
【文献】 特開2005−224009(JP,A)
【文献】 特開2015−061439(JP,A)
【文献】 特開2003−339118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J1/00−7/12、
7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を蓄電する蓄電池が接続された蓄電装置を基本単位とし、DC接続バスに接続された複数の前記蓄電装置間で電力融通を実行する蓄電システムであって、
複数の前記蓄電装置は、
前記DC接続バスに接続された双方向DC/DCコンバータと、
前記双方向DC/DCコンバータを充電用または放電用として設定する融通制御部と、をそれぞれ備え、
前記双方向DC/DCコンバータは、出力電圧特性に基づいて、前記DC接続バスのグリッド電圧の制御で個別に充電または放電を制御し、前記出力電圧特性において、放電特性は、放電方向の電流を正と定義した場合、放電電流の低下により前記グリッド電圧が増加する負の傾きを有すると共に、充電特性は、充電方向の電流を正と定義した場合、充電電流の増加により前記グリッド電圧が増加する正の傾きを有し、前記放電特性と前記充電特性とは交差するように設定されていることを特徴とする蓄電システム。
【請求項2】
前記放電特性において前記放電電流がゼロになる前記グリッド電圧は、前記グリッド電圧の電圧上限値に、前記充電特性において前記充電電流がゼロになる前記グリッド電圧は、前記グリッド電圧の電圧下限値にそれぞれ設定されていることを特徴とする請求項1記載の蓄電システム。
【請求項3】
前記融通制御部は、前記蓄電池の充電量に基づいて、前記蓄電池の充電量が閾値以上の場合には前記双方向DC/DCコンバータを放電用に、前記蓄電池の充電量が閾値未満の場合には前記双方向DC/DCコンバータを充電用に設定することを特徴とする請求項1又は2記載の蓄電システム。
【請求項4】
前記蓄電装置に発電装置が接続されている場合、前記融通制御部は、前記発電装置が未発電状態であると判断すると、前記蓄電池の充電量が十分か否かを判断するための下側閾値以上の場合には前記双方向DC/DCコンバータを放電用に、前記蓄電池の充電量が前記下側閾値未満の場合には前記双方向DC/DCコンバータを充電用に設定し、前記発電装置が発電状態であると判断すると、前記蓄電池の充電量が満充電に近づいているか否かを判断するための上側閾値以上の場合には前記双方向DC/DCコンバータを放電用に、前記蓄電池の充電量が前記上側閾値未満の場合には前記双方向DC/DCコンバータを充電用に設定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の蓄電システム。
【請求項5】
直流電力を蓄電する蓄電池とDC接続バスとの間に接続され、前記DC接続バスに接続された他の蓄電装置との間で電力融通を実行する蓄電装置であって、
前記DC接続バスに接続された双方向DC/DCコンバータと、
前記双方向DC/DCコンバータを充電用または放電用として設定する融通制御部と、を具備し、
前記双方向DC/DCコンバータは、出力電圧特性に基づいて、前記DC接続バスのグリッド電圧の制御で個別に充電または放電を制御し、前記出力電圧特性において、放電特性は、放電方向の電流を正と定義した場合、放電電流の低下により前記グリッド電圧が増加する負の傾きを有すると共に、充電特性は、充電方向の電流を正と定義した場合、充電電流の増加により前記グリッド電圧が増加する正の傾きを有し、前記放電特性と前記充電特性とは交差するように設定されていることを特徴とする蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散設置された複数の電力蓄電装置間で電力融通を行う蓄電システム及び蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然エネルギーの利用方法として、系統連系ではなく自己消費(自家消費)システムへのシフトが予想されている。自己消費システムとしては、例えば、防災拠点において、太陽電池装置で発電された電力を蓄電する蓄電装置が考えられる。
【0003】
さらに、これらの蓄電装置を分散設置した自立分散型電力ネットワークも研究され、各蓄電装置間で電力の融通制御を行う技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−288162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、需要家集団内で需要家間の電力融通制御を集中管理している。従って、電力融通制御を集中管理しているコントローラのダウンによりシステム全体の電力融通制御ができなくなるため、システム効率、リスク管理の面で問題が生じる。
【0006】
本発明の目的は、従来技術の上記問題を解決し、エネルギーの利用効率が高く、リスク低減された安価なシステムを実現できる蓄電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の蓄電システムは、直流電力を蓄電する蓄電池が接続された蓄電装置を基本単位とし、DC接続バスに接続された複数の前記蓄電装置間で電力融通を実行する蓄電システムであって、複数の前記蓄電装置は、前記DC接続バスに接続された双方向DC/DCコンバータと、前記双方向DC/DCコンバータを充電用または放電用として設定する融通制御部と、をそれぞれ備え、前記双方向DC/DCコンバータは、出力電圧特性に基づいて、前記DC接続バスのグリッド電圧の制御で個別に充電または放電を制御し、前記出力電圧特性において、放電特性は、放電方向の電流を正と定義した場合、放電電流の低下により前記グリッド電圧が増加する負の傾きを有すると共に、充電特性は、充電方向の電流を正と定義した場合、充電電流の増加により前記グリッド電圧が増加する正の傾きを有し、前記放電特性と前記充電特性とは交差するように設定されていることを特徴とする。
本発明の蓄電装置は、直流電力を蓄電する蓄電池とDC接続バスとの間に接続され、前記DC接続バスに接続された他の蓄電装置との間で電力融通を実行する蓄電装置であって、前記DC接続バスに接続された双方向DC/DCコンバータと、前記双方向DC/DCコンバータを充電用または放電用として設定する融通制御部と、を具備し、前記双方向DC/DCコンバータは、出力電圧特性に基づいて、前記DC接続バスのグリッド電圧の制御で個別に充電または放電を制御し、前記出力電圧特性において、放電特性は、放電方向の電流を正と定義した場合、放電電流の低下により前記グリッド電圧が増加する負の傾きを有すると共に、充電特性は、充電方向の電流を正と定義した場合、充電電流の増加により前記グリッド電圧が増加する正の傾きを有し、前記放電特性と前記充電特性とは交差するように設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、DC接続バスに接続された双方向DC/DCコンバータを放電用と充電用とに切り換えるだけで、各蓄電装置1間を電力融通制御させることができ、エネルギーの利用効率が高く、リスク低減された安価なシステムを実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る蓄電システムの実施の形態の構成例を示す構成図である。
図2図1に示す蓄電装置の構成を示すブロック図である。
図3図1に示す蓄電装置による電力融通動作を説明する説明図である。
図4図2に示す第1双方向DC/DCコンバータの出力電圧特性を示す図である。
図5図2に示す融通制御部による第1双方向DC/DCコンバータの設定動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態において、同様の機能を示す構成には、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0011】
本実施の形態は、図1を参照すると、蓄電池2が接続された蓄電装置1を1つの基本単位として、複数の蓄電装置1をDC接続バス20で並列に接続し、蓄電装置1間の電力融通を実施する蓄電システムである。なお、DC接続バス20は、無電化地域や防災地区等の安定した電源(電力系統等)に接続されていないDCグリッドを形成する。また、図1には、3台の蓄電装置1をDC接続バス20に接続した例が示されているが、DC接続バス20に接続する蓄電装置1の台数に制限はない。
【0012】
蓄電装置1は、電力融通端子T1と、蓄電地接続端子T2と、PV接続端子T3と、負荷接続端子T4とをそれぞれ備えている。
【0013】
電力融通端子T1は、DC接続バス20に接続され、直流電力を送受電する端子である。蓄電地接続端子T2は、接続された蓄電池2の充放電用の端子である。PV接続端子T3は、接続箱31を介して接続された太陽電池3によって発電された直流電力を受電する端子である。負荷接続端子T4は、接続された負荷4に電力を供給する端子である。
【0014】
蓄電装置1は、図2を参照すると、第1双方向DC/DCコンバータ11(以下、第1DC/DC11と称す)と、第2双方向DC/DCコンバータ12(以下、第2DC/DC12と称す)と、MPPTDC/DCコンバータ13と、PCS14と、電流センサ15、16と、充電量検出部17と、融通制御部18とを備えている。そして、第1DC/DC11と、第2DC/DC12と、MPPTDC/DCコンバータ13及びPCS14は、DCリンク19を介して接続されている。
【0015】
第1DC/DC11は、電力融通端子T1とDCリンク19との間に接続される。これにより、図3に示すように、DC接続バス20には、第1DC/DC11が複数並列に接続されることになる。
【0016】
第1DC/DC11は、充電用または放電用として設定され、図4に示す出力電圧特性(ドループ特性)に基づいて、DC接続バス20の電圧(以下、グリッド電圧と称す)制御で個別に制御する。
【0017】
図4に示す出力電圧特性において、放電特性は、グリッド電圧の増加に従い放電電流が低下する負の傾きを有し、グリッド電圧Vで放電電流がゼロになるように設定されている。また、充電特性は、グリッド電圧Vよりも低いグリッド電圧Vで充電電流がゼロでDC接続バス20のグリッド電圧の増加に従い充電電流が増加する正の傾きに設定されている。なお、図4において、充電特性では充電方向の電流を正とし、放電特性では放電方向の電流を正としている。
【0018】
図3(a)に示すように、充電用に設定された第1DC/DC11と、放電用に設定された第1DC/DC11とがDC接続バス20に1台ずつ接続された状態では、図4(a)に示すように、充電特性と放電特性との交点が動作点Aとなる。この場合、動作点Aでのグリッド電圧Vは、グリッド電圧Vよりも大きくグリッド電圧Vよりも低い値となる。そして、第1DC/DC11が放電用に設定された蓄電装置1からの放電電流がa(A)となると共に、第1DC/DC11が充電用に設定された蓄電装置1への充電電流がa(A)となり、1台の蓄電装置1から1台の蓄電装置1に電力融通が実行される。
【0019】
図3(b)に示すように、充電用に設定されたN台の第1DC/DC11と、放電用に設定された1台の第1DC/DC11とがDC接続バス20に接続された状態では、図4(b)に示すように、N倍の傾きの充電特性と放電特性との交点が動作点Bとなる。この場合も、動作点Bでのグリッド電圧Vは、グリッド電圧Vよりも大きくグリッド電圧Vよりも低い値となる。そして、第1DC/DC11が放電用に設定された1台の蓄電装置1からの放電電流がb(A)となると共に、第1DC/DC11が充電用に設定されたN台の蓄電装置1への充電電流がそれぞれb/N(A)となり、1台の蓄電装置1からN台の蓄電装置1に分配して電力融通が実行される。
【0020】
図3(c)に示すように、充電用に設定された1台の第1DC/DC11と、放電用に設定されたM台の第1DC/DC11とがDC接続バス20に接続された状態では、図4(c)に示すように、充電特性とM倍の傾きの放電特性との交点が動作点Cとなる。この場合も、動作点Cでのグリッド電圧Vは、グリッド電圧Vよりも大きくグリッド電圧Vよりも低い値となる。そして、第1DC/DC11が放電用に設定されたM台の蓄電装置1からの放電電流がそれぞれc/M(A)となると共に、第1DC/DC11が充電用に設定された1台の蓄電装置1への充電電流がc(A)となり、M台の蓄電装置1が分担して1台の蓄電装置1に電力融通が実行される。
【0021】
上述のように動作点A〜Cでのグリッド電圧V〜Vは、いずれもグリッド電圧Vよりも大きくグリッド電圧Vよりも低い値となる。従って、放電特性で放電電流がゼロとなるグリッド電圧Vをグリッド電圧の電圧上限値に、充電特性で充電電流がゼロとなるグリッド電圧Vをグリッド電圧の電圧下限値にそれぞれ設定すると、グリッド電圧が適正範囲内で運用されることになる。
【0022】
第2DC/DC12は、蓄電地接続端子T2とDCリンク19との間に接続され、DCリンク19のDCリンク電圧一定制御(固定値制御)で蓄電池2を充放電する充放電器である。第2DC/DC12は、蓄電池2を充電する際、DCリンク19の直流電圧を蓄電池2の充電に適した電圧に変換して蓄電池2への充電を行う。また、第2DC/DC12は、蓄電池2から放電する際、蓄電池2の直流電圧をDCリンク19の直流電圧に変換して蓄電池2からの放電を行う。
【0023】
MPPTDC/DCコンバータ13は、PV接続端子T3とDCリンク19との間に接続され、太陽電池3によって発電された直流電力を受電する最大電力点追従方式(MPPT:Maximum Power Point Tracking)のDC/DCコンバータである。MPPTDC/DCコンバータ13は、太陽電池3から受電した直流電力をDCリンク19に出力する。
【0024】
PCS14は、負荷接続端子T4とDCリンク19との間に接続され、DCリンク19の直流電圧を負荷4に適した電力に変換して負荷4に供給するパワーコンディショナシステムである。
【0025】
電流センサ15は、蓄電池2が充放電される際の充放電電流を検出し、充電量検出部17に出力する。
【0026】
電流センサ16は、太陽電池3の発電電流Ipvを検出し、融通制御部18に出力する。
【0027】
充電量検出部17は、蓄電池2の充電量レベルとして、電流センサ15によって検出された蓄電池2の充放電電流に基づいて、蓄電池2の充電量としてSOC(State of charge)を算出する。充電量検出部17は、蓄電池2の充電電流と、放電電流とそれぞれ積算し、その差分値に基づいてSOCを算出する。なお、SOCの算出は、蓄電池2の端子電圧等に基づいて算出しても良い。
【0028】
融通制御部18は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたマイクロコンピュータ等の情報処理部である。ROMには制御プログラムが記憶されている。融通制御部18のCPUは、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出し、制御プログラムをRAMに展開させることで動作する。
【0029】
融通制御部18は、太陽電池3の発電状態と、蓄電池2の充電量とに基づいて、第1DC/DC11を放電用もしくは充電用に設定する。
【0030】
以下、融通制御部18による第1DC/DC11の設定動作について図5を参照して詳細に説明する。
図5を参照すると、融通制御部18は、太陽電池3の発電の有無を判断するため、電流センサ16によって検出される発電電流Ipvが0(A)以下か否かを判断する(ステップS101)。なお、発電電流Ipvではなく、別途に設けた照度計の出力に基づいて発電の有無を判断しても良く、また、時刻によって発電の有無を判断するようにしても良い。
【0031】
融通制御部18は、ステップS101で発電電流Ipvが0(A)以下の場合に太陽電池3が未発電状態と判断する。そして、融通制御部18は、充電量検出部17によって算出されたSOCが、電池残量が十分か否かを判断するための下側閾値TH(例えば、20%)以上か否かを判断する(ステップS102)。
【0032】
ステップS102でSOCが下側閾値TH以上の場合、融通制御部18は、電池残量が十分であると判断し、第1DC/DC11を放電用に設定する(ステップS103)。これにより、DC接続バス20に接続され他の蓄電装置1に電力を融通する放電可能状態になる。そして、蓄電池2に接続された第2DC/DC12はDCリンク電圧一定制御のため、負荷4に供給する負荷電流Ir及び第1DC/DC11への安定供給状態となる。
【0033】
ステップS102でSOCが下側閾値TH未満の場合、融通制御部18は、電池残量が不十分であると判断し、第1DC/DC11を充電用に設定する(ステップS104)。これにより、DC接続バス20に接続され他の蓄電装置1から電力を融通される充電可能状態になる。そして、蓄電池2に接続された第2DC/DC12はDCリンク電圧一定制御のため、負荷電流Irへの安定供給状態、且つ第1DC/DC11からの安定充電状態となる。
【0034】
融通制御部18は、ステップS101で発電電流Ipvが0(A)を上回る場合に太陽電池3が発電状態と判断する。そして、融通制御部18は、充電量検出部17によって算出されたSOCが、電池残量が満充電に近づいているか否かを判断するための上側閾値TH(例えば、70%)以上か否かを判断する(ステップS105)。なお、上側閾値THは、下側閾値THよりも大きい値に設定されている。
【0035】
ステップS105でSOCが上側閾値TH以上の場合、融通制御部18は、電池残量が満充電に近づいていると判断し、第1DC/DC11を放電用に設定する(ステップS103)。これにより、DC接続バス20に接続され他の蓄電装置1に電力を融通する放電可能状態になる。そして、蓄電池2に接続された第2DC/DC12はDCリンク電圧一定制御のため、総発電量Icがゼロ未満で負荷電流Ir及び第1DC/DC11への安定供給状態となり、総発電量Icがゼロ以上で発電電力の安定充電状態、且つ第1DC/DC11への安定供給状態となる。なお、図1に示すように、MPPTDC/DCコンバータ13及びPCS14から見た総発電量をIcと定義する。
【0036】
ステップS105でSOCが上側閾値TH未満の場合、融通制御部18は、電池残量が満充電に近づいておらず、蓄電余力があると判断し、第1DC/DC11を充電用に設定する(ステップS104)。これにより、DC接続バス20に接続され他の蓄電装置1から電力を融通される充電可能状態になる。そして、蓄電池2に接続された第2DC/DC12はDCリンク電圧一定制御のため、総発電量Icがゼロ未満で負荷電流Irへの安定供給状態、且つ発電電力の安定充電状態となり、総発電量Icがゼロ以上で発電電力の安定充電状態となる。
【0037】
なお、融通制御部18は、ステップS101、S102、S105の判断を定期的に行っており、ステップS101、S102、S105の判断が変化した場合に、上述の設定動作を実行する。これにより、太陽電池3の発電状態や、蓄電池2の充電量の変化に対応することができる。
【0038】
これにより、夜間、太陽電池3が発電していない状態においては、充電量が十分でSOCが下側閾値TH以上の蓄電装置1は放電可能状態として待機する。そして、SOCが下側閾値TH未満になった蓄電装置1から充電可能状態に遷移し、電力の融通を受けることができる。
【0039】
また、日中、太陽電池3が発電し蓄電池2を充電している状態において、蓄電池2の充電量が浅くSOCが上側閾値TH未満の蓄電装置1は充電可能状態として待機する。そして、SOCが下側閾値TH以上になった蓄電装置1が充電可能状態から放電可能状態に遷移し,充電可能状態で待機している蓄電装置1へ電力を融通する。
【0040】
なお、本実施の形態では、各蓄電装置1における第1DC/DC11の放電特性及び充電特性の傾きは同じものとして説明した。しかし、放電特性及び充電特性は、傾きを制御することにより充放電量の重みづけ制御が可能である。すなわち、放電特性の傾きが異なる第1DC/DC11が並列に接続されている場合、放電特性の傾きが大きい第1DC/DC11の放電量が大きくなる。同様に、充電特性の傾きが異なる第1DC/DC11が並列に接続されている場合、充電特性の傾きが大きい第1DC/DC11の充電量が大きくなる。
【0041】
また、本実施の形態では、蓄電装置1の第1DC/DC11は、充電用と放電用とのいずれかに設定されるように構成したが、充電用と放電用との間の状態として停止状態を設けても良い。
【0042】
この場合、例えば、下側閾値THよりも小さい下側限界閾値(例えば、10%)を設けると共に、上側閾値THよりも大きい上側限界閾値(例えば、90%)を設ける。
【0043】
そして、ステップS101で発電電流Ipvが0(A)以下の場合、SOCが下側閾値TH以上で放電用に、SOCが下側閾値TH未満且つ下側限界閾値以上で停止状態に、SOCが下側限界閾値未満で充電用に設定すると良い。
【0044】
また、ステップS101で発電電流Ipvが0(A)を上回る場合、SOCが上側限界閾値以上で放電用に、SOCが上側限界閾値未満且つ上側閾値TH以上で停止状態に、SOCが上側閾値TH未満で充電用に設定すると良い。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態によれば、直流電力を蓄電する蓄電池2が接続された蓄電装置1を基本単位とし、DC接続バス20に接続された複数の蓄電装置1間で電力融通を実行する蓄電システムであって、蓄電装置1は、DC接続バス20のグリッド電圧の増加に従い放電電流が低下する放電特性に基づく放電用、もしくは前記グリッド電圧の増加に従い充電電流が増加する充電特性に基づく充電用に設定可能な第1DC/DC11を介してDC接続バス20に接続され、放電特性における放電方向の電流を正と定義すると共に、充電特性における充電方向の電流を正と定義した場合、放電特性と充電特性とは交差するように設定されている。
この構成により、電力融通制御の集中管理を行う必要がなく、自己消費(自家消費)システムをターゲットに小型の蓄電装置1を分散設置することができる。そして、DC接続バス20に接続された第1DC/DC11を放電用と充電用とに切り換えるだけで、各蓄電装置1間を電力融通制御させることができ、エネルギーの利用効率が高く、リスク低減された安価なシステムを実現できる。
【0046】
さらに、本実施の形態は、放電特性において放電電流がゼロになるグリッド電圧Vは、グリッド電圧の電圧上限値に、前記充電特性において充電電流がゼロになるグリッド電圧Vは、グリッド電圧の電圧下限値にそれぞれ設定されている。
この構成により、動作点A〜Cでのグリッド電圧V〜Vは、いずれもグリッド電圧Vよりも大きくグリッド電圧Vよりも低い値となる。従って、グリッド電圧が適正範囲内で運用されることになる。
【0047】
さらに、本実施の形態は、蓄電池の充電量に基づいて、蓄電池2の充電量が閾値以上の場合には第1DC/DC11を放電用に、蓄電池2の充電量が閾値未満の場合には第1DC/DC11を充電用に設定する融通制御部18を備えている。
この構成により、蓄電池の充電量に基づいて、DC接続バス20に接続された第1DC/DC11を放電用と充電用とに切り換えることができる。
【0048】
さらに、本実施の形態は、蓄電装置1に発電装置として太陽電池3が接続されている場合、融通制御部18は、太陽電池3が未発電状態であると判断すると、蓄電池2の充電量が十分か否かを判断するための下側閾値TH1以上の場合には第1DC/DC11を放電用に、蓄電池2の充電量が下側閾値TH1未満の場合には第1DC/DC11を充電用に設定し、太陽電池3が発電状態であると判断すると、蓄電池2の充電量が満充電に近づいているか否かを判断するための上側閾値TH2以上の場合には第1DC/DC11を放電用に、蓄電池2の充電量が上側閾値TH2未満の場合には第1DC/DC11を充電用に設定する。
この構成により、太陽電池3の発電状態が変化する夜間と日中とで、それぞれ適切な電力融通制御に変更することができる。
【0049】
さらに、本実施の形態は、直流電力を蓄電する蓄電池2とDC接続バス20との間に接続され、DC接続バス20に接続された他の蓄電装置1との間で電力融通を実行する蓄電装置1であって、DC接続バス20のグリッド電圧の増加に従い放電電流が低下する放電特性に基づく放電用、もしくは前記グリッド電圧の増加に従い充電電流が増加する充電特性に基づく充電用に設定可能な第1DC/DC11を介してDC接続バス20に接続され、放電特性における放電方向の電流を正と定義すると共に、充電特性における充電方向の電流を正と定義した場合、放電特性と充電特性とは交差するように設定されている。
この構成により、電力融通制御の集中管理を行う必要がなく、自己消費(自家消費)の側電システムに蓄電装置1を簡単に接続することができる。そして、DC接続バス20に接続された第1DC/DC11を放電用と充電用とに切り換えるだけで、他の蓄電装置1との間で電力融通制御させることができ、エネルギーの利用効率が高く、リスク低減された安価なシステムを実現できる。
【0050】
以上、本発明を具体的な実施形態で説明したが、上記実施形態は一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0051】
1 蓄電装置
2 蓄電池
3 太陽電池
4 負荷
11 第1双方向DC/DCコンバータ
12 第2双方向DC/DCコンバータ
13 MPPTDC/DCコンバータ
14 PCS
15、16 電流センサ
17 充電量検出部
18 融通制御部
19 DCリンク
20 DC接続バス
31 接続箱
T1 電力融通端子
T2 蓄電地接続端子
T3 PV接続端子
T4 負荷接続端子
【要約】
【課題】エネルギーの利用効率が高く、リスク低減された安価なシステムを実現できる蓄電システムを提供する。
【解決手段】直流電力を蓄電する蓄電池が接続された蓄電装置を基本単位とし、DC接続バスに接続された複数の蓄電装置間で電力融通を実行する蓄電システムであって、蓄電装置は、DC接続バスのグリッド電圧の増加に従い放電電流が低下する放電特性に基づく放電用、もしくは前記グリッド電圧の増加に従い充電電流が増加する充電特性に基づく充電用に設定可能な第1双方向DC/DCコンバータを介してDC接続バスに接続され、放電特性における放電方向の電流を正と定義すると共に、充電特性における充電方向の電流を正と定義した場合、放電特性と充電特性とは交差するように設定されている。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5