(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電力変換部の前記二次側に接続される負荷に関するパラメータを、前記マトリクスコンバータ装置及び前記インバータ装置の一方側から他方側に転送するパラメータ転送部を更に備える、請求項2又は3記載の電力変換システム。
交流電源が交流−交流変換用のマトリクスコンバータ回路の一次側に接続される通常状態と、前記交流電源とは別の非常用電源が直流−交流変換用のインバータ回路の一次側に接続される非常状態とを切り替えるように電源切替部を制御することと、
前記通常状態及び前記非常状態の切り替えに応じて、前記マトリクスコンバータ回路の二次側に電動機が接続される交流−交流変換状態と、前記インバータ回路の二次側に前記電動機が接続される直流−交流変換状態とを切り替えるように出力切替部を制御することと、
前記電動機の動力によって昇降する昇降体に対して制動力を付与するブレーキの作動状態及び解除状態を切り替えるように制動状態切替部を制御することと、
前記マトリクスコンバータ回路及び前記インバータ回路のいずれも前記一次側及び前記二次側の間に接続されない状態を経て、前記交流−交流変換状態及び前記直流−交流変換状態を切り替えるように前記出力切替部を制御することと、
前記マトリクスコンバータ回路及び前記インバータ回路のいずれからも前記電動機に電力が供給されていないときには前記ブレーキを作動させ、前記マトリクスコンバータ回路又は前記インバータ回路から前記電動機に電力が供給されているときには前記ブレーキを解除するように前記制動状態切替部を制御することと、を含む電力変換方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
1.第一実施形態
(1)昇降システム
図1に示す昇降システム1は、例えばエレベータシステムであり、昇降体12と、巻上機13と、錘14と、ワイヤロープ15と、ブレーキ17と、電力変換システム20とを備える。ワイヤロープ15は、その両端部が下方に垂れ下がるように巻上機13にかけられている。昇降体12は、利用者が搭乗する乗りかごであり、ワイヤロープ15の一端部に接続されている。錘14は、ワイヤロープ15を介して昇降体12の重量に抗する張力をワイヤロープ15に発生させるためのカウンターウェイトである。巻上機13は、昇降体12側に垂れ下がるワイヤロープ15の長さ、及び錘14側に垂れ下がるワイヤロープ15の長さの比を変更するように回転する。
【0012】
駆動装置11は、モータ16(電動機)を動力源として巻上機13を回転させ、昇降体12を昇降させる。すなわち、昇降体12はモータ16の動力によって昇降する。ブレーキ17は、昇降体12に対して制動力を付与する。ブレーキ17の具体例としては、巻上機13に対して制動力を付与するディスクブレーキ等の機械式ブレーキが挙げられる。
【0013】
電力変換システム20は、電源とモータ16との間に介在し、電源からの電力を駆動用の交流電力に変換してモータ16に出力する。電力変換システム20は、電力変換部30と、電源切替部40と、電力消費部50と、ブレーキドライバ60と、電源マネジメント装置300とを備える。
【0014】
電力変換部30は、マトリクスコンバータ回路を有し、当該マトリクスコンバータ回路により一次側(電源側)の交流電力及び二次側(モータ16側)の交流電力の間で双方向の電力変換を行う。双方向の電力変換を行うとは、一次側から二次側に交流電力を伝える電力変換と、二次側から一次側に交流電力(例えば回生電力)を伝える電力変換の両方を行い得ることを意味する。電力変換部30の一次側には、第一交流電源又は第一交流電源とは別の非常用電源が接続される。電力変換部30の二次側には、モータ16が接続される。このため電力変換部30は、第一交流電源又は非常用電源とモータ16との間で双方向の電力変換を行う。
【0015】
電源切替部40は、第一交流電源が電力変換部30の一次側に接続される状態(以下、「通常状態」という。)と、非常用電源(例えば第二交流電源)が電力変換部30の一次側に接続される状態(以下、「非常状態」という。)とを切り替える。第一交流電源は、例えば三相交流の電力系統2である。第二交流電源は、例えば三相交流の無停電電源装置3である。電力消費部50は、第二交流電源と電力変換部30との間に接続され、電力変換部30の二次側から一次側への回生電力(例えばモータ16からの回生電力)を消費する。
【0016】
ブレーキドライバ60は、昇降体12に対して制動力を付与する作動状態と、昇降体12に対する制動力を解除する解除状態とを切り替えるための電力をブレーキ17に供給する。
【0017】
電源マネジメント装置300は、電力系統2の状態(例えば停電の発生状態)に応じて通常状態及び非常状態を切り替えるように電源切替部40を制御し、これに応じた各種指令を電力変換部30及びブレーキドライバ60に出力する。
【0018】
(2)電力変換システム
以下、電力変換システム20の電力変換部30、電力消費部50、電源切替部40及び電源マネジメント装置300の構成をより詳細に例示する。上述したように、電力変換部30は、電力系統2又は無停電電源装置3からの電力を駆動用の交流電力に変換してモータ16に出力する。
【0019】
図2に示すように、無停電電源装置3は、電力系統2からの交流電力を直流に変換して蓄電し、電力系統2の停電等の非常時には蓄電した直流電力を三相交流に変換して出力する。電力系統2からの交流電力を蓄電するために、無停電電源装置3の一次側は、入力ライン24R,24S,24Tを介して電力系統2に接続されている。
【0020】
電力変換部30は、交流−交流変換用のマトリクスコンバータ回路111と、直流−交流変換用のインバータ回路214と、出力切替部31とを有する。マトリクスコンバータ回路111は、電力系統2と、モータ16(交流型の負荷)との間で双方向の交流−交流変換を行う。インバータ回路214は、無停電電源装置3とモータ16との間で双方向の直流−交流変換を行う。
【0021】
出力切替部31は、上記通常状態及び上記非常状態の切り替えに応じて、一次側及び二次側の間にマトリクスコンバータ回路111が接続される(すなわちマトリクスコンバータ回路111がモータ16に接続される)交流−交流変換状態と、一次側及び二次側の間にインバータ回路214が接続される(すなわちインバータ回路214がモータ16に接続される)直流−交流変換状態とを切り替える。
【0022】
なお、上記通常状態及び上記非常状態の切り替えに応じて交流−交流変換状態及び直流−交流変換状態を切り替えることは、上記通常状態及び上記非常状態の切り替えと交流−交流変換状態及び直流−交流変換状態の切り替えとが互いに関係することを意味しているに過ぎず、これらの間の前後関係は規定しない。すなわち出力切替部31は、上記通常状態及び上記非常状態の切り替えの後に交流−交流変換状態及び直流−交流変換状態を切り替えてもよく、上記通常状態及び上記非常状態の切り替えと同時に交流−交流変換状態及び直流−交流変換状態を切り替えてもよく、上記通常状態及び上記非常状態の切り替えに先立って交流−交流変換状態及び直流−交流変換状態を切り替えてもよい。
【0023】
電力消費部50は、整流回路211と、電力消費用の抵抗素子233と、切替スイッチ232(消費状態切替部)とを有する。整流回路211は、無停電電源装置3からの交流電力を直流電力に変換して電力変換部30側に出力する。切替スイッチ232は、整流回路211により生成された直流電力の正極側及び負極側の間に抵抗素子233が接続される消費オン状態と、当該正極側及び負極側の間に抵抗素子233が接続されない消費オフ状態とを、モータ16からの回生電力の発生状況に応じて切り替える。
【0024】
一例として、電力変換部30及び電力消費部50は、互いに別体としてユニット化されたマトリクスコンバータ装置100及びインバータ装置200を利用して構成されている。
【0025】
マトリクスコンバータ装置100は、上述のマトリクスコンバータ回路111と、スナバ回路120と、放電回路130と、電圧センサ115と、制御回路140と、一次側端子113R,113S,113Tと、二次側端子114U,114V,114Wとを有する。
【0026】
マトリクスコンバータ回路111は、一次側端子113R,113S,113T及び二次側端子114U,114V,114Wの間に設けられ、双方向の電力変換を行う。例えばマトリクスコンバータ回路111は、マトリクス状に配置された複数の双方向スイッチ112(例えば3行3列のマトリクス状に配置された9個の双方向スイッチ112)を含み、双方向スイッチ112のオン・オフによって双方向の電力変換を行う。一例として、双方向スイッチ112は、互いに逆向きとなるように並列接続された二つのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を含む。一次側端子113R,113S,113Tは、入力ライン21R,21S,21Tをそれぞれ介して電力系統2に接続されている。二次側端子114U,114V,114Wは、出力ライン28U,28V,28Wをそれぞれ介してモータ16に接続されている。これにより、マトリクスコンバータ回路111は、電力系統2と、モータ16(交流型の負荷)との間で双方向の交流−交流変換を行う。
【0027】
スナバ回路120は、少なくともマトリクスコンバータ回路111の二次側の交流電力(回生電力)を直流化して蓄電する。一例として、スナバ回路120は、マトリクスコンバータ回路111の一次側及び二次側の交流電力の両方を直流化して蓄電する。例えばスナバ回路120は、整流回路121,122と、コンデンサ124とを含む。整流回路121は、例えばダイオードブリッジ回路であり、マトリクスコンバータ回路111の一次側の交流電流を直流化して直流母線123P,123Nに供給する。整流回路122は、例えばダイオードブリッジ回路であり、マトリクスコンバータ回路111の二次側の交流電流を直流化して直流母線123P,123Nに供給する。コンデンサ124は、直流母線123P,123Nの間に接続され、直流母線123P,123Nに供給された直流電力を蓄電する。
【0028】
放電回路130は、コンデンサ124を放電させる回路である。例えば放電回路130は、放電スイッチ131及び抵抗素子132を含む。放電スイッチ131及び抵抗素子132は、直流母線123P,123Nの間に直列に接続されている。放電スイッチ131は、例えばIGBTであり、直流母線123P,123Nの間に抵抗素子132が接続されるオン状態と、直流母線123P,123Nの間に抵抗素子132が接続されないオフ状態とを切り替える。放電スイッチ131をオン状態にすると、コンデンサ124に蓄電された電力が抵抗素子132において消費される。電圧センサ115は、直流母線123P,123Nの間の直流電圧を検出する。
【0029】
制御回路140は、一次側(一次側端子113R,113S,113T側)の交流電力及び二次側(二次側端子114U,114V,114W側)の交流電力の間で電力変換(交流−交流変換)を行うようにマトリクスコンバータ回路111を制御する。また、制御回路140は、直流母線123P,123Nの間に抵抗素子132が接続される放電状態と、直流母線123P,123Nの間に抵抗素子132が接続されない非放電状態とを、マトリクスコンバータ回路111の二次側からの回生電力の発生状況に応じて切り替える。
【0030】
例えば制御回路140は、機能上の構成(以下、「機能モジュール」という。)として、交流−交流変換制御部141及び放電制御部142を有する。交流−交流変換制御部141は、上記交流−交流変換を行うようにマトリクスコンバータ回路111を制御する。より具体的に、交流−交流変換制御部141は、所望の電力変換を実行させるように、マトリクスコンバータ回路111の複数の双方向スイッチ112に対しゲート駆動信号を出力する。放電制御部142は、上記回生電力の発生状況に応じて上記放電状態と非放電状態とを切り替えるように放電回路130を制御する。具体的に、放電制御部142は、電圧センサ115により検出される直流母線123P,123Nの間の直流電圧値に応じて放電スイッチ131のオン・オフを切り替える。例えば放電制御部142は、直流母線123P,123Nの間の直流電圧値が所定の閾値を下回っている場合には放電スイッチ131をオフ状態に保ち、当該直流電圧値が当該閾値を超えたときに放電スイッチ131をオン状態にする。
【0031】
インバータ装置200は、上述の整流回路211と、上述のインバータ回路214と、上述の切替スイッチ232と、電圧センサ215と、制御回路240と、直流母線212P,212Nと、交流端子221R,221S,221Tと、交流端子222U,222V,222Wと、直流端子223P,223Nと、制動抵抗端子231P,231Nとを有する。
【0032】
整流回路211は、例えばダイオードブリッジ回路であり、交流端子221R,221S,221Tに入力された交流電力を直流化して直流母線212P,212Nに出力する。
【0033】
インバータ回路214は、直流母線212P,212Nの直流電力を交流電力に変換して交流端子222U,222V,222Wに出力する。インバータ回路214は、例えばIGBT等の複数のスイッチを有する。当該複数のスイッチのオン・オフを切り替えることにより、直流電力を交流電力に変換することが可能である。
【0034】
直流端子223P,223Nは、交流電力に代えて直流電力を入力するための端子であり、インバータ回路214の直流側に接続されている。具体的に、直流端子223P,223Nは、直流母線212P,212Nにそれぞれ接続されている。コンデンサ213は、直流母線212P,212Nの間に接続されている。
【0035】
制動抵抗端子231P,231Nは、制動抵抗等を外付けするための端子である。制動抵抗端子231Pは直流母線212Pに接続されており、制動抵抗端子231Nは切替スイッチ232を介して直流母線212Nに接続されている。切替スイッチ232は、例えばIGBTであり、制動抵抗端子231P,231Nに外付けされた制動抵抗が直流母線212P,212Nの間に接続されるオン状態と、当該制動抵抗が直流母線212P,212Nの間に接続されないオフ状態とを切り替える。電圧センサ215は、直流母線212P,212Nの間の直流電圧を検出する。
【0036】
交流端子221R,221S,221Tは、非常用入力ライン25R,25S,25Tをそれぞれ介して無停電電源装置3の二次側(出力側)に接続されている。交流端子222U,222V,222Wは、出力ライン29U,29V,29Wをそれぞれ介してモータ16に接続されている。これにより、インバータ回路214は、無停電電源装置3とモータ16との間で双方向の直流−交流変換を行う。
【0037】
更に、制動抵抗端子231P,231N間には抵抗素子233が接続されている。この接続により、整流回路211、抵抗素子233及び切替スイッチ232が上記電力消費部50を構成している。切替スイッチ232は、整流回路211とインバータ回路214との間(すなわち無停電電源装置3とインバータ回路214との間)における直流電力の正極側及び負極側の間に抵抗素子233が接続される消費オン状態と、当該正極側及び負極側の間に抵抗素子233が接続されない消費オフ状態とを、回生電力の発生状況に応じて切り替える。
【0038】
制御回路240は、直流−交流変換を行うようにインバータ回路214を制御する。また、制御回路240は、直流母線212P,212Nの間に抵抗素子233が接続される消費オン状態と、直流母線212P,212Nの間に抵抗素子233が接続されない消費オフ状態とを、モータ16からの回生電力の発生状況に応じて切り替える。例えば制御回路240は、機能モジュールとして、直流−交流変換制御部242及び消費制御部241を有する。
【0039】
直流−交流変換制御部242は、上記直流−交流変換を行うようにインバータ回路214を制御する。より具体的に、直流−交流変換制御部242は、所望の電力変換を実行させるように、インバータ回路214の複数のスイッチに対しゲート駆動信号を出力する。直流−交流変換制御部242は、上記直流−交流変換状態(インバータ回路214がモータ16に接続される状態)の開始に際して、出力電力を漸増させるようにインバータ回路214を制御してもよい。
【0040】
消費制御部241は、上記回生電力の発生状況に応じて上記消費オン状態と消費オフ状態とを切り替えるように切替スイッチ232を制御する。例えば消費制御部241は、上記回生電力の上昇に応じて消費オフ状態を消費オン状態に切り替え、上記回生電力の下降に応じて消費オン状態を消費オフ状態に切り替えるように切替スイッチ232を制御する。
【0041】
具体的に、消費制御部241は、直流母線212P,212Nの間の直流電圧値に基づいて消費オン状態と消費オフ状態とを切り替える。例えば消費制御部241は、直流母線212P,212Nの間の直流電圧値が所定の閾値を下回っている場合には消費オフ状態を保ち、当該電圧値が当該閾値を超えたときに消費オフ状態を消費オン状態に切り替えるように切替スイッチ232を制御する。
【0042】
なお、切替スイッチ232は、上記回生電力の発生状況に応じて消費オン状態と消費オフ状態とを切り替える限り、どのように構成されていてもよいので、消費制御部241は、切替スイッチ232の制御に際して必ずしも直流母線212P,212Nの間における直流電圧値に基づかなくてよい。例えば消費制御部241は、スナバ回路120の直流母線123P,123N間の直流電圧値に基づいて消費オン状態と消費オフ状態とを切り替えるように切替スイッチ232を制御してもよい。また、消費制御部241は、回生電力が発生しているか否かに応じて消費オン状態と消費オフ状態とを切り替えるように切替スイッチ232を制御してもよい。回生電力が発生しているか否かは、例えば昇降体12が上昇しているか下降しているかに基づいて検出可能である。
【0043】
出力切替部31は、上記交流−交流変換状態(マトリクスコンバータ回路111がモータ16に接続される状態)と、上記直流−交流変換状態(インバータ回路214がモータ16に接続される状態)とを切り替えられるように、マトリクスコンバータ装置100及びインバータ装置200とモータ16との間に設けられている。例えば出力切替部31は、マトリクスコンバータ装置100をモータ16に接続する出力ライン28U,28V,28Wにそれぞれ設けられた切替スイッチ32U,32V,32Wと、インバータ装置200をモータ16に接続する出力ライン29U,29V,29Wにそれぞれ設けられた切替スイッチ33U,33V,33Wとを有する。
【0044】
切替スイッチ32U,32V,32Wは、例えば電磁接触器であり、マトリクスコンバータ装置100とモータ16との間の電路を開閉する。切替スイッチ33U,33V,33Wは、例えば電磁接触器であり、インバータ装置200とモータ16との間の電路を開閉する。
【0045】
電源切替部40は、上記通常状態(電力系統2が電力変換部30の一次側に接続される状態)と、上記非常状態(無停電電源装置3が電力変換部30の一次側に接続される状態)とを切り替えるように、電力系統2及び無停電電源装置3と電力変換部30との間に設けられている。例えば電源切替部40は、マトリクスコンバータ装置100を電力系統2に接続する入力ライン21R,21S,21Tにそれぞれ設けられた切替スイッチ41R,41S,41Tと、インバータ装置200を無停電電源装置3に接続する非常用入力ライン25R,25S,25Tにそれぞれ設けられた切替スイッチ42R,42S,42Tとを有する。切替スイッチ41R,41S,41Tは、例えば電磁接触器であり、電力系統2とマトリクスコンバータ装置100との間の電路を開閉する。切替スイッチ42R,42S,42Tは、例えば電磁接触器であり、無停電電源装置3とインバータ装置200との間の電路を開閉する。
【0046】
電源マネジメント装置300は、機能モジュールとして、入力切替制御部311と、出力切替制御部312と、パラメータ転送部313と、制動状態切替部314とを有する。
【0047】
入力切替制御部311は、電力系統2の状態(例えば停電の発生状態)に応じて上記通常状態及び上記非常状態を切り替えるように電源切替部40を制御する。例えば入力切替制御部311は、通常状態及び非常状態を切り替えるための開閉指令を切替スイッチ41R,41S,41T及び切替スイッチ42R,42S,42Tに出力する。
【0048】
出力切替制御部312は、電源切替部40による上記通常状態及び上記非常状態の切り替えに応じて、上記交流−交流変換状態と上記直流−交流変換状態とを切り替えるように出力切替部31を制御する。例えば出力切替制御部312は、交流−交流変換状態及び直流−交流変換状態を切り替えるための開閉指令を切替スイッチ32U,32V,32W及び切替スイッチ33U,33V,33Wに出力する。
【0049】
出力切替制御部312は、マトリクスコンバータ回路111及びインバータ回路214のいずれも一次側及び二次側の間に接続されない状態(マトリクスコンバータ回路111及びインバータ回路214のいずれもモータ16に接続されない状態)を経て、交流−交流変換状態と直流−交流変換状態とを切り替えるように出力切替部31を制御してもよい。例えば出力切替制御部312は、マトリクスコンバータ回路111及びインバータ回路214のいずれも一次側及び二次側の間に接続されない状態を、交流−交流変換状態と直流−交流変換状態との間において、所定期間以上継続させるように出力切替部31を制御してもよい。当該所定期間は、マトリクスコンバータ装置100及びインバータ装置200の間における還流電流を実質的にゼロにするように設定されている。
【0050】
パラメータ転送部313は、モータ16に関するパラメータを、マトリクスコンバータ装置100及びインバータ装置200の一方側から他方側に転送する。モータ16に関するパラメータの具体例としては、モータ16のインダクタンス、抵抗及び制御ゲイン等が挙げられる。例えばパラメータ転送部313は、上記パラメータを交流−交流変換制御部141及び直流−交流変換制御部242の間で転送する。
【0051】
制動状態切替部314は、ブレーキ17の作動状態及び解除状態を切り替えるようにブレーキドライバ60を制御する。例えば制動状態切替部314は、電力変換部30からモータ16に電力が供給されていないときにはブレーキ17を作動させ、電力変換部30からモータ16に電力が供給されているときにはブレーキ17を解除する。
【0052】
なお、入力切替制御部311、出力切替制御部312、パラメータ転送部313及び制動状態切替部314は必ずしも電源マネジメント装置300に設けられていなくてもよい。例えば、電源切替部40及び出力切替部31が互いに連携し、通常状態及び非常状態の切り替えと、交流−交流変換状態及び直流−交流変換状態の切り替えを自律的に実行するように構成されていてもよい。
【0053】
また、マトリクスコンバータ装置100の制御回路140及びインバータ装置200の制御回路240の少なくとも一方がパラメータ転送部を備えていてもよい。更に、ブレーキドライバ60自体がマトリクスコンバータ装置100及びインバータ装置200と連携して制動状態切替部として機能するように構成されていてもよい。
【0054】
(3)ハードウェア構成の例示
続いて、制御回路140,240及び電源マネジメント装置300のハードウェア構成を例示する。
【0055】
図3に示すように、制御回路140は、一つ又は複数のプロセッサ191と、メモリ192と、ストレージ193と、ゲート駆動回路194と、入出力ポート195と、通信ポート196とを有する。ストレージ193は、例えばハードディスク等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有する。記憶媒体は、制御回路140の各機能モジュールを構成するためのプログラムを記憶している。記憶媒体は、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク及び光ディスク等の取り出し可能な媒体であってもよい。メモリ192は、ストレージ193の記憶媒体からロードしたプログラム及びプロセッサ191による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ191は、メモリ192と協働して上記プログラムを実行することで、制御回路140の各機能モジュールを構成する。ゲート駆動回路194は、プロセッサ191からの指令に従って、マトリクスコンバータ回路111にゲート駆動信号を出力する。入出力ポート195は、プロセッサ191からの指令に従って、電圧センサ115及び放電スイッチ131との間で電気信号の入出力を行う。通信ポート196は、プロセッサ191からの指令に従って、電源マネジメント装置300との間で情報通信を行う。
【0056】
図3に示すように、制御回路240は、一つ又は複数のプロセッサ291と、メモリ292と、ストレージ293と、ゲート駆動回路294と、入出力ポート295と、通信ポート296とを有する。ストレージ293は、例えばハードディスク等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有する。記憶媒体は、制御回路240の各機能モジュールを構成するためのプログラムを記憶している。記憶媒体は、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク及び光ディスク等の取り出し可能な媒体であってもよい。メモリ292は、ストレージ293の記憶媒体からロードしたプログラム及びプロセッサ291による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ291は、メモリ292と協働して上記プログラムを実行することで、制御回路240の各機能モジュールを構成する。ゲート駆動回路294は、プロセッサ291からの指令に従って、インバータ回路214にゲート駆動信号を出力する。入出力ポート295は、プロセッサ291からの指令に従って、電圧センサ215及び切替スイッチ232との間で電気信号の入出力を行う。通信ポート296は、プロセッサ291からの指令に従って、電源マネジメント装置300との間で情報通信を行う。
【0057】
電源マネジメント装置300は、例えばプログラマブルロジックコントローラ等により構成されており、回路390を有する。回路390は、一つ又は複数のプロセッサ391と、メモリ392と、ストレージ393と、停電センサ394と、入出力ポート395と、通信ポート396とを有する。ストレージ393は、例えばハードディスク等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有する。記憶媒体は、電源マネジメント装置300の各機能モジュールを構成するためのプログラムを記憶している。記憶媒体は、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク及び光ディスク等の取り出し可能な媒体であってもよい。メモリ392は、ストレージ393の記憶媒体からロードしたプログラム及びプロセッサ391による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ391は、メモリ392と協働して上記プログラムを実行することで、電源マネジメント装置300の各機能モジュールを構成する。停電センサ394は、プロセッサ391からの指令に従って電力系統2における停電の発生状態を検出する。入出力ポート395は、プロセッサ391からの指令に従って、ブレーキドライバ60、電源切替部40及び出力切替部31との間で電気信号の入出力を行う。通信ポート396は、プロセッサ391からの指令に従って、制御回路140,240との間で情報通信を行う。
【0058】
(4)通常状態及び非常状態の切り替え手順
続いて、電力変換方法の一例として、電力変換システム20による上記通常状態及び非常状態の切り替え手順を説明する。この手順は、上記通常状態と非常状態とを切り替えるように電源切替部40を制御することと、非常状態において、二次側から一次側への回生電力を消費するように電力消費部50を制御することと、を含む。また、この手順は、通常状態及び非常状態の切り替えに応じて、上記交流−交流変換状態と直流−交流変換状態とを切り替えるように出力切替部31を制御すること、を更に含む。
【0059】
図4に示すように、電力変換システム20は、まずステップS01,S02,S03,S04を順に実行する。ステップS01では、入力切替制御部311が、電力系統2における停電の発生を待機する。ステップS02では、制動状態切替部314が、ブレーキ17を解除状態から作動状態に切り替えるようにブレーキドライバ60を制御する。ステップS03では、入力切替制御部311が、上記通常状態を非常状態に切り替えるように電源切替部40を制御する。ステップS04では、出力切替制御部312が、マトリクスコンバータ装置100及びインバータ装置200をいずれもモータ16から遮断するように出力切替部31を制御する。例えば出力切替制御部312は、マトリクスコンバータ装置100及びモータ16の間を切替スイッチ32U,32V,32Wにより遮断し、インバータ装置200及びモータ16の間を切替スイッチ33U,33V,33Wにより遮断するように出力切替部31を制御する。
【0060】
次に、電力変換システム20は、ステップS05,S06,S07を順に実行する。ステップS05では、出力切替制御部312が、上記所定期間の経過を待機する。ステップS06では、出力切替制御部312が、マトリクスコンバータ装置100をモータ16に接続せず、インバータ装置200をモータ16に接続するように出力切替部31を制御する。例えば出力切替制御部312は、マトリクスコンバータ装置100及びモータ16の間を切替スイッチ32U,32V,32Wにより遮断した状態にて、インバータ装置200及びモータ16の間を切替スイッチ33U,33V,33Wにより接続するように出力切替部31を制御する。ステップS07では、制動状態切替部314が、ブレーキ17を作動状態から解除状態に切り替えるようにブレーキドライバ60を制御する。
【0061】
図5に示すように、電力変換システム20は、次にステップS11,S12を順に実行する。ステップS11では、直流−交流変換制御部242が、所定の救出位置までモータ16により昇降体12を移動させる救出運転を開始するようにインバータ回路214を制御する。ステップS12では、電圧センサ215により検出される直流母線212P,212N間の電圧値(以下、「直流母線電圧」という。)が上記閾値を超えているか否かを消費制御部241が確認する。
【0062】
ステップS12において直流母線電圧は閾値を超えていると判定した場合、電力変換システム20はステップS13を実行し、ステップS12において直流母線電圧は閾値を超えていないと判定した場合、電力変換システム20はステップS14を実行する。ステップS13では、制御回路240が切替スイッチ232をオン状態にし、ステップS14では、制御回路240が切替スイッチ232をオフ状態にする。
【0063】
次に、電力変換システム20はステップS15を実行する。ステップS15では、昇降体12が上記救出位置に到達したか否かを直流−交流変換制御部242が確認する。ステップS15において、昇降体12が上記救出位置に到達していないと判定した場合、電力変換システム20は処理をステップS12に戻す。以後、昇降体12が救出位置に到達するまでは、直流母線電圧に応じた切替スイッチ232のオン・オフ切り替えが継続される。ステップS15において、昇降体12が上記救出位置に到達したと判定した場合、電力変換システム20はステップS16を実行する。ステップS16では、直流−交流変換制御部242が、上記救出運転を停止するようにインバータ回路214を制御する。
【0064】
図6に示すように、電力変換システム20は、次にステップS21,S22,S23,S24を順に実行する。ステップS21では、制動状態切替部314が、ブレーキ17を解除状態から作動状態に切り替えるようにブレーキドライバ60を制御する。ステップS22では、入力切替制御部311が、電力系統2における停電の解除を待機する。ステップS23では、出力切替制御部312が、マトリクスコンバータ装置100をモータ16に接続することなく、インバータ装置200をモータ16から遮断するように出力切替部31を制御する。例えば出力切替制御部312は、マトリクスコンバータ装置100及びモータ16の間を切替スイッチ32U,32V,32Wにより遮断した状態を保ちつつ、インバータ装置200及びモータ16の間を切替スイッチ33U,33V,33Wにより遮断するように出力切替部31を制御する。ステップS24では、出力切替制御部312が、上記所定期間の経過を待機する。
【0065】
次に、電力変換システム20は、ステップS25,S26,S27を順に実行する。ステップS25では、入力切替制御部311が、上記非常状態を通常状態に切り替えるように電源切替部40を制御する。ステップS26では、インバータ装置200をモータ16に接続することなく、マトリクスコンバータ装置100をモータ16に接続するように出力切替部31を制御する。例えば出力切替制御部312は、インバータ装置200及びモータ16の間を切替スイッチ33U,33V,33Wにより遮断した状態を保ちつつ、マトリクスコンバータ装置100及びモータ16の間を切替スイッチ32U,32V,32Wにより接続するように出力切替部31を制御する。ステップS27では、制動状態切替部314が、ブレーキ17を作動状態から解除状態に切り替えるようにブレーキドライバ60を制御する。以上で通常状態及び非常状態の切り替え手順が完了する。電力変換システム20は以上の手順を繰り返す。
【0066】
なお、ステップS03と、ステップS04,S05,S06との前後関係は適宜変更可能である。例えばステップS03をステップS04,S05,S06のいずれかと同じタイミングで実行してもよいし、ステップS03をステップS06の後に実行してもよい。また、ステップS25,S26の前後関係も適宜変更可能であり、ステップS25をステップS26と同じタイミングで実行してもよいし、ステップS25をステップS26の後に実行してもよい。
【0067】
(5)パラメータの転送手順
続いて、電力変換方法の一例として、マトリクスコンバータ装置100とインバータ装置200との間における上記パラメータの転送手順を説明する。
図7に示すように、電力変換システム20は、まずステップS31を実行する。ステップS31では、パラメータ転送部313が、インバータ装置200の入れ替えの有無を確認する。インバータ装置200の入れ替えは、インバータ装置200の識別情報等により確認可能である。
【0068】
ステップS31において、インバータ装置200の入れ替えはないと判定した場合、電力変換システム20はステップS32を実行する。ステップS32では、パラメータ転送部313が、マトリクスコンバータ装置100の入れ替えの有無を確認する。マトリクスコンバータ装置100の入れ替えは、マトリクスコンバータ装置100の識別情報等に基づいて確認可能である。ステップS32において、マトリクスコンバータ装置100の入れ替えはないと判定した場合、電力変換システム20は処理をステップS31に戻す。以後、マトリクスコンバータ装置100及びインバータ装置200の一方の入れ替えが検出されるまでは、マトリクスコンバータ装置100及びインバータ装置200の入れ替え有無の確認が繰り返される。
【0069】
ステップS31において、インバータ装置200の入れ替えがあると判定した場合、電力変換システム20はステップS33を実行する。ステップS33では、パラメータ転送部313が、マトリクスコンバータ装置100からインバータ装置200にパラメータを転送する。ステップS32において、マトリクスコンバータ装置100の入れ替えがあると判定した場合、電力変換システム20はステップS34を実行する。ステップS34では、パラメータ転送部313が、インバータ装置200からマトリクスコンバータ装置100にパラメータを転送する。以上でパラメータの転送手順が完了する。
【0070】
なお、パラメータの転送は、必ずしもマトリクスコンバータ装置100及びインバータ装置200の入れ替えタイミングで行わなくてよい。例えば、上述した通常状態及び非常状態に際し、マトリクスコンバータ装置100及びインバータ装置200の両方がモータ16から遮断されているタイミングでパラメータの転送を実行してもよい。
【0071】
2.第二実施形態
(1)電力変換システム
第二実施形態に係る電力変換システム20Aは、上記通常状態及び上記非常状態のいずれにおいてもマトリクスコンバータ回路111により電力変換を行う点で第一実施形態に係る電力変換システム20と異なる。換言すると、電力変換システム20Aの電力変換部30は、インバータ回路214及び出力切替部31を有していない。一例として、電力変換システム20Aにおいても、電力変換部30及び電力消費部50は、互いに別体としてユニット化されたマトリクスコンバータ装置100及びインバータ装置200を利用して構成されている。
【0072】
図8に示すように、電力変換システム20Aにおいては、インバータ装置200の交流端子222U,222V,222Wはモータ16に接続されておらず、マトリクスコンバータ装置100の二次側端子114U,114V,114Wは切替スイッチ32U,32V,32Wを介さずにモータ16に接続されている。
【0073】
これにより、インバータ回路214は電力変換部30の構成から外れているので、制御回路240は、インバータ回路214を駆動しないように構成されている。例えば直流-交流変換制御部242は、全てのスイッチをオフ状態に保つようにインバータ回路214を制御する。
【0074】
整流回路211、抵抗素子233及び切替スイッチ232により電力消費部50を構成するために、電力変換システム20Aにおいては、直流端子223P,223Nが電力変換部30の一次側に接続されている。具体的には、直流端子223Pが非常用入力ライン27R,27Sをそれぞれ介して一次側端子113R,113Sに接続され、直流端子223Nが非常用入力ライン27Tを介して一次側端子113Tに接続されている。
【0075】
電力変換システム20Aの電源切替部40は、上記非常状態において直流端子223P,223Nを電力変換部30の一次側に接続するように構成されている。例えば電源切替部40は、上記入力ライン21R,21S,21Tにそれぞれ設けられた切替スイッチ41R,41S,41Tと、上記非常用入力ライン27R,27S,27Tにそれぞれ設けられた切替スイッチ43R,43S,43Tとを有する。切替スイッチ41R,41S,41Tは、例えば電磁接触器であり、電力系統2と電力変換部30との間の電路を開閉する。切替スイッチ43R,43S,43Tは、例えば電磁接触器であり、電力消費部50と電力変換部30との間の電路を開閉する。
【0076】
制御回路140は、上記通常状態においては一次側及び二次側の間で交流−交流変換を行い、上記非常状態においては一次側及び二次側の間で直流−交流変換を行うようにマトリクスコンバータ回路111を制御する。例えば制御回路140は、上記交流-交流変換制御部141に代えて電力変換制御部143を有する。電力変換制御部143は、上記通常状態においては一次側及び二次側の間で交流−交流変換を行い、上記非常状態においては一次側及び二次側の間で直流−交流変換を行うようにマトリクスコンバータ回路111を制御する。以下、一次側の交流電力及び二次側の交流電力の間で電力変換を行うようにマトリクスコンバータ回路111を制御することを「AC−ACモードの制御」といい、一次側の直流電力及び二次側の交流電力の間で電力変換を行うようにマトリクスコンバータ回路111を制御することを「DC−ACモードの制御」という。
【0077】
本実施形態においては、マトリクスコンバータ装置100及びインバータ装置200におけるパラメータ転送は不要であり、また出力切替部31の制御も不要である。このため電源マネジメント装置300は、パラメータ転送部313及び出力切替制御部312を有していない。
【0078】
インバータ装置200は、インバータ回路214の交流側に接続された交流端子222U,222V,222Wをマスクするマスク部材250を更に有してもよい。
図9は、マスク部材の構造を例示する模式図である。交流端子222U,222V,222W等を含む各種端子は、端子台220に設けられている。端子台220の各端子には、ケーブル固定用のビス229を装着可能である。マスク部材250は、マスク本体251と三箇所の挿入部252とを有する。マスク本体251は、端子台220における交流端子222U,222V,222Wを覆う板状体である。三箇所の挿入部252は、マスク本体251から突出し、交流端子222U,222V,222Wの孔(ビス229の装着用の孔)にそれぞれ挿入される。
【0079】
(2)通常状態及び非常状態の切り替え手順
続いて、電力変換システム20Aによる上記通常状態及び非常状態の切り替え手順を説明する。
図10に示すように、電力変換システム20Aは、まずステップS41,S42,S43,S44,S45を順に実行する。ステップS41では、ステップS01と同様に、入力切替制御部311が電力系統2における停電の発生を待機する。ステップS42では、ステップS02と同様に、制動状態切替部314が、ブレーキ17を解除状態から作動状態に切り替えるようにブレーキドライバ60を制御する。ステップS43では、ステップS03と同様に、入力切替制御部311が、上記通常状態を非常状態に切り替えるように電源切替部40を制御する。ステップS44では、入力切替制御部311が、上記AC−ACモードからDC−ACモードへの切り替え指令を電力変換制御部143に出力する。これに応じ、電力変換制御部143は、マトリクスコンバータ回路111の制御モードを上記AC−ACモードからDC−ACモードに切り替える。ステップS45では、ステップS07と同様に、制動状態切替部314が、ブレーキ17を作動状態から解除状態に切り替えるようにブレーキドライバ60を制御する。
【0080】
図11に示すように、電力変換システム20Aは、次にステップS51,S52を実行する。ステップS51では、電力変換制御部143が上記救出運転を開始するようにマトリクスコンバータ回路111を制御する。ステップS52では、ステップS12と同様に、上記直流母線電圧が上記閾値を超えているか否かを消費制御部241が確認する。
【0081】
ステップS52において直流母線電圧は閾値を超えていると判定した場合、電力変換システム20AはステップS53を実行し、ステップS52において直流母線電圧は閾値を超えていないと判定した場合、電力変換システム20AはステップS54を実行する。ステップS53では、ステップS13と同様に制御回路240が切替スイッチ232をオン状態にし、ステップS54では、ステップS14と同様に制御回路240が切替スイッチ232をオフ状態にする。
【0082】
次に、電力変換システム20はステップS55を実行する。ステップS55では、昇降体12が上記救出位置に到達したか否かを電力変換制御部143が確認する。ステップS55において、昇降体12が上記救出位置に到達していないと判定した場合、電力変換システム20Aは処理をステップS52に戻す。以後、昇降体12が救出位置に到達するまでは、直流母線電圧に応じた切替スイッチ232のオン・オフ切り替えが継続される。
【0083】
ステップS55において、昇降体12が上記救出位置に到達したと判定した場合、電力変換システム20AはステップS56を実行する。ステップS56では、電力変換制御部143が上記救出運転を停止するようにマトリクスコンバータ回路111を制御する。
【0084】
図12に示すように、電力変換システム20Aは、次にステップS61,S62,S63,S64,S65を順に実行する。ステップS61では、ステップS21と同様に、制動状態切替部314がブレーキ17を解除状態から作動状態に切り替えるようにブレーキドライバ60を制御する。ステップS62では、ステップS22と同様に、入力切替制御部311が電力系統2における停電の解除を待機する。ステップS63では、ステップS25と同様に、入力切替制御部311が上記非常状態を通常状態に切り替えるように電源切替部40を制御する。ステップS64では、入力切替制御部311が、上記DC−ACモードからAC−ACモードへの切り替え指令を電力変換制御部143に出力する。これに応じ、電力変換制御部143は、マトリクスコンバータ回路111の制御モードを上記DC−ACモードからAC−ACモードに切り替える。ステップS65では、ステップS27と同様に、制動状態切替部314がブレーキ17を作動状態から解除状態に切り替えるようにブレーキドライバ60を制御する。以上で通常状態及び非常状態の切り替え手順が完了する。電力変換システム20は以上の手順を繰り返す。
【0085】
なお、ステップS43,S44との前後関係は適宜変更可能である。また、ステップS63,S64の前後関係も適宜変更可能である。
【0086】
3.第三実施形態
(1)電力変換システム
第三実施形態に係る電力変換システム20Bは、無停電電源装置3及び電力変換部30の間において電力を直流化することなく回生電力を消費する点で第二実施形態に係る電力変換システム20Aと異なる。
【0087】
図13に示すように、電力変換システム20Bにおいては、無停電電源装置3からの非常用入力ライン25R,25S,25Tが一次側端子113R,113S,113Tにそれぞれ接続されており、電源切替部40の切替スイッチ43R,43S,43Tは非常用入力ライン25R,25S,25Tにそれぞれ設けられている。
【0088】
電力変換システム20Bは、電力消費部50に代えて電力消費部70を有する。電力消費部70は、三つの抵抗素子71,72,73と、消費状態切替部74とを有する。消費状態切替部74は、無停電電源装置3からの交流電力の相間に抵抗素子71,72,73が接続される消費オン状態と、相間に抵抗素子71,72,73が接続されない消費オフ状態とを、上記回生電力の発生状況に応じて切り替える。消費状態切替部74は、切替スイッチ75,76,77を含む。切替スイッチ75は、非常用入力ライン25R,25S間において抵抗素子71と直列に接続される。切替スイッチ76は、非常用入力ライン25S,25T間において抵抗素子71と直列に接続される。切替スイッチ77は、非常用入力ライン25R,25T間において抵抗素子73と直列に接続される。
【0089】
消費状態切替部74は、電力変換部30の二次側からの回生電力の発生状況に応じて、切替スイッチ75,76,77のオン・オフを切り替える。例えば消費状態切替部74は、上記回生電力の上昇に応じて切替スイッチ75,76,77をオン状態に切り替え、上記回生電力の下降に応じて切替スイッチ75,76,77をオフ状態に切り替える。
【0090】
より具体的に、消費状態切替部74は、スナバ回路120の直流母線123P,123N間の直流電圧値に基づいて切替スイッチ75,76,77のオン・オフを切り替える。例えば消費状態切替部74は、電圧センサ115により検出される直流電圧値が所定の閾値を下回っている場合には切替スイッチ75,76,77をオフ状態に保ち、当該直流電圧値が当該閾値を超えたときに切替スイッチ75,76,77をオン状態に切り替える。
【0091】
なお、消費状態切替部74は、上記回生電力の発生状況に応じて消費オン状態と消費オフ状態とを切り替える限り、どのように構成されていてもよいので、消費オン状態と消費オフ状態との切り替えに際して必ずしも直流母線123P,123Nの間の直流電圧値に基づかなくてよい。例えば消費状態切替部74は、回生電力が発生しているか否かに応じて消費オン状態と消費オフ状態とを切り替えてもよい。上述したように、回生電力が発生しているか否かは、例えば昇降体12が上昇しているか下降しているかに基づいて検出可能である。
【0092】
電力変換システム20Bにおいては、無停電電源装置3と電力変換部30との間において電力を直流化する必要はない。このため、制御回路140は、上記非常状態においても一次側及び二次側の間で交流−交流変換を行うようにマトリクスコンバータ回路111を制御する。すなわち制御回路140は、上記電力変換制御部143に代えて上記交流−交流変換制御部141を有する。
【0093】
(2)電力変換方法
続いて、電力変換システム20Bによる上記通常状態及び非常状態の切り替え手順を説明する。
図14に示すように、電力変換システム20Bは、まずステップS71,S72,S73,S74を順に実行する。ステップS71では、ステップS01と同様に、入力切替制御部311が電力系統2における停電の発生を待機する。ステップS72では、ステップS02と同様に、制動状態切替部314が、ブレーキ17を解除状態から作動状態に切り替えるようにブレーキドライバ60を制御する。ステップS73では、ステップS03と同様に、入力切替制御部311が、上記通常状態を非常状態に切り替えるように電源切替部40を制御する。ステップS74では、ステップS07と同様に、制動状態切替部314が、ブレーキ17を作動状態から解除状態に切り替えるようにブレーキドライバ60を制御する。
【0094】
次に、電力変換システム20Bは、ステップS81,S82を実行する。ステップS81では、ステップS51と同様に、電力変換制御部143が上記救出運転を開始するようにマトリクスコンバータ回路111を制御する。ステップS82では、電圧センサ115により検出される直流母線123P,123N間の電圧値(以下、「直流母線電圧」という。)が上記閾値を超えているか否かを消費状態切替部74が確認する。
【0095】
ステップS82において直流母線電圧は閾値を超えていると判定した場合、電力変換システム20BはステップS83を実行し、ステップS82において直流母線電圧は閾値を超えていないと判定した場合、電力変換システム20BはステップS84を実行する。ステップS83では、消費状態切替部74が切替スイッチ75,76,77をオン状態にし、ステップS84では、消費状態切替部74が切替スイッチ75,76,77をオフ状態にする。
【0096】
次に、電力変換システム20BはステップS85を実行する。ステップS85では、昇降体12が上記救出位置に到達したか否かを電力変換制御部143が確認する。ステップS85において、昇降体12が上記救出位置に到達していないと判定した場合、電力変換システム20Bは処理をステップS82に戻す。以後、昇降体12が救出位置に到達するまでは、直流母線電圧に応じた切替スイッチ75,76,77のオン・オフ切り替えが継続される。
【0097】
ステップS85において、昇降体12が上記救出位置に到達したと判定した場合、電力変換システム20BはステップS86を実行する。ステップS86では、電力変換制御部143が、上記救出運転を停止するようにマトリクスコンバータ回路111を制御する。
【0098】
図15に示すように、電力変換システム20Bは、次にステップS91,S92,S93,S94を順に実行する。ステップS91では、ステップS21と同様に、制動状態切替部314がブレーキ17を解除状態から作動状態に切り替えるようにブレーキドライバ60を制御する。ステップS92では、ステップS22と同様に、入力切替制御部311が電力系統2における停電の解除を待機する。ステップS93では、ステップS25と同様に、入力切替制御部311が上記非常状態を通常状態に切り替えるように電源切替部40を制御する。ステップS94では、ステップS27と同様に、制動状態切替部314がブレーキ17を作動状態から解除状態に切り替えるようにブレーキドライバ60を制御する。以上で通常状態及び非常状態の切り替え手順が完了する。電力変換システム20Bは以上の手順を繰り返す。
【0099】
4.第四実施形態
(1)電力変換システム
第四実施形態に係る電力変換システム20Cは、電力変換部30を無停電電源装置3から切り離して回生電力を消費する点で第二実施形態に係る電力変換システム20Aと異なる。
図16に示すように、電力変換システム20Cにおいては、無停電電源装置3からの非常用入力ライン25R,25S,25Tが一次側端子113R,113S,113Tにそれぞれ接続されており、電源切替部40の切替スイッチ43R,43S,43Tは非常用入力ライン25R,25S,25Tにそれぞれ設けられている。
【0100】
電力変換システム20Cは、電力消費部50に代えて電力消費部80を有する。電力消費部80は、抵抗素子81と、消費ライン82R,82S,82Tと、消費状態切替部84とを有する。消費ライン82R,82Sは、分岐点83R,83Sにおいて非常用入力ライン25R,25Sからそれぞれ分岐して抵抗素子81の一端側に接続されている。消費ライン82Tは、分岐点83Tにおいて非常用入力ライン25Tから分岐して抵抗素子81の他端側に接続されている。
【0101】
消費状態切替部84は、抵抗素子81が電力変換部30の一次側に接続され、無停電電源装置3が電力変換部30の一次側に接続されない消費オン状態と、抵抗素子81が電力変換部30に接続されず、無停電電源装置3が電力変換部30の一次側に接続される消費オフ状態とを、上記回生電力の発生状況に応じて切り替える。例えば消費状態切替部84は、切替スイッチ85R,85S,85Tと、切替スイッチ86R,86S,86Tとを含む。切替スイッチ85R,85S,85Tは、無停電電源装置3と分岐点83R,83S,83Tとの間において、非常用入力ライン25R,25S,25Tにそれぞれ設けられている。切替スイッチ86R,86S,86Tは、消費ライン82R,82S,82Tにそれぞれ設けられている。
【0102】
消費状態切替部84は、電力変換部30の二次側からの回生電力の発生状況に応じて、切替スイッチ85R,85S,85T及び切替スイッチ86R,86S,86Tのオン・オフを切り替える。消費状態切替部84は、上記回生電力の上昇に応じて切替スイッチ85R,85S,85Tをオフ状態に切り替え、切替スイッチ86R,86S,86Tをオン状態に切り替える。また、消費状態切替部84は、上記回生電力の下降に応じて切替スイッチ85R,85S,85Tをオン状態に切り替え、切替スイッチ86R,86S,86Tをオフ状態に切り替える。
【0103】
より具体的に、消費状態切替部84は、スナバ回路120の直流母線123P,123N間の直流電圧値に基づいて切替スイッチ85R,85S,85T及び切替スイッチ86R,86S,86Tのオン・オフを切り替える。例えば消費状態切替部84は、電圧センサ115により検出される直流電圧値が所定の閾値を下回っている場合には切替スイッチ85R,85S,85Tをオン状態に保って切替スイッチ86R,86S,86Tをオフ状態に保つ。そして消費状態切替部84は、当該直流電圧値が当該閾値を超えたときに切替スイッチ85R,85S,85Tをオフ状態に切り替え、切替スイッチ86R,86S,86Tをオン状態に切り替える。
【0104】
なお、消費状態切替部84は、上記回生電力の発生状況に応じて消費オン状態と消費オフ状態とを切り替える限り、どのように構成されていてもよいので、消費オン状態と消費オフ状態との切り替えに際して必ずしも直流母線123P,123Nの間の直流電圧値に基づかなくてよい。例えば消費状態切替部84は、回生電力が発生しているか否かに応じて消費オン状態と消費オフ状態とを切り替えてもよい。上述したように、回生電力が発生しているか否かは、例えば昇降体12が上昇しているか下降しているかに基づいて検出可能である。
【0105】
以上の構成によれば、消費オン状態において非常用入力ライン25R,25S間が短絡することとなる。そこで、電力変換部30の制御回路140(電力変換制御部143)は、通常状態及び消費オフ状態においてはAC−ACモードの制御を行い、消費オン状態においてはDC−ACモードの制御を行う。
(2)電力変換方法
続いて、電力変換システム20Cによる上記通常状態及び非常状態の切り替え手順を説明する。
図17に示すように、電力変換システム20Cは、まずステップS101,S102,S103,S104を順に実行する。ステップS101では、ステップS01と同様に、入力切替制御部311が電力系統2における停電の発生を待機する。ステップS102では、ステップS02と同様に、制動状態切替部314が、ブレーキ17を解除状態から作動状態に切り替えるようにブレーキドライバ60を制御する。ステップS103では、ステップS03と同様に、入力切替制御部311が、上記通常状態を非常状態に切り替えるように電源切替部40を制御する。ステップS104では、ステップS07と同様に、制動状態切替部314が、ブレーキ17を作動状態から解除状態に切り替えるようにブレーキドライバ60を制御する。
【0106】
図18に示すように、電力変換システム20Cは、次にステップS111,S112を実行する。ステップS111では、ステップS51と同様に、電力変換制御部143が上記救出運転を開始するようにマトリクスコンバータ回路111を制御する。ステップS112では、電圧センサ115により検出される直流母線123P,123N間の電圧値(以下、「直流母線電圧」という。)が上記閾値を超えているか否かを電力変換制御部143が確認する。
【0107】
ステップS112において直流母線電圧は閾値を超えていると判定した場合、電力変換システム20CはステップS113,S114を順に実行し、ステップS112において直流母線電圧は閾値を超えていないと判定した場合、電力変換システム20CはステップS115,S116を実行する。ステップS113では、電力変換制御部143が、マトリクスコンバータ回路111の制御モードを上記DC−ACモードにする。ステップS114では、電力変換制御部143が、消費オン状態の指令を消費状態切替部84に出力する。これに応じ、消費状態切替部84は、切替スイッチ85R,85S,85Tをオフ状態にし、切替スイッチ86R,86S,86Tをオン状態にする。ステップS115では、電力変換制御部143が、消費オフ状態の指令を消費状態切替部84に出力する。これに応じ、消費状態切替部84は、切替スイッチ85R,85S,85Tをオン状態にし、切替スイッチ86R,86S,86Tをオフ状態にする。ステップS116では、電力変換制御部143が、マトリクスコンバータ回路111の制御モードを上記AC−ACモードにする。
【0108】
次に、電力変換システム20CはステップS117を実行する。ステップS117では、昇降体12が上記救出位置に到達したか否かを電力変換制御部143が確認する。ステップS117において、昇降体12が上記救出位置に到達していないと判定した場合、電力変換システム20Cは処理をステップS112に戻す。以後、昇降体12が救出位置に到達するまでは、直流母線電圧に応じたマトリクスコンバータ回路111の制御モードの切り替えと、切替スイッチ85R,85S,85T及び切替スイッチ86R,86S,86Tのオン・オフ切り替えとが継続される。
【0109】
ステップS117において、昇降体12が上記救出位置に到達したと判定した場合、電力変換システム20CはステップS118を実行する。ステップS118では、電力変換制御部143が、上記救出運転を停止するようにマトリクスコンバータ回路111を制御する。
【0110】
図19に示すように、電力変換システム20Cは、次にステップS121,S122,S123,S124を順に実行する。ステップS121では、ステップS21と同様に、制動状態切替部314がブレーキ17を解除状態から作動状態に切り替えるようにブレーキドライバ60を制御する。ステップS122では、ステップS22と同様に、入力切替制御部311が電力系統2における停電の解除を待機する。ステップS123では、ステップS25と同様に、入力切替制御部311が上記非常状態を通常状態に切り替えるように電源切替部40を制御する。ステップS124では、ステップS27と同様に、制動状態切替部314がブレーキ17を作動状態から解除状態に切り替えるようにブレーキドライバ60を制御する。以上で通常状態及び非常状態の切り替え手順が完了する。電力変換システム20Cは以上の手順を繰り返す。
【0111】
5.実施形態の効果
以上に説明したように、電力変換システム20は、マトリクスコンバータ回路111を有し、当該マトリクスコンバータ回路111により一次側の交流電力及び二次側の交流電力の間で双方向の電力変換を行う電力変換部30と、電力系統2が電力変換部30の一次側に接続される通常状態と、非常用の無停電電源装置3が電力変換部の一次側に接続される非常状態とを切り替える電源切替部と、無停電電源装置3及び電力変換部30の間に接続され、二次側から一次側への回生電力を消費する電力消費部50と、を備える。
【0112】
非常用の無停電電源装置3は、非常用の蓄電を行うために、電力系統に電力を戻すルートを有しない。無停電電源装置3が電力変換部30の一次側に接続される場合、二次側から一次側への回生電力によって無停電電源装置3に過電圧が生じる可能性がある。これに対し、本電力変換システムは、無停電電源装置3及び電力変換部30の間に接続され、二次側から一次側への回生電力を消費する電力消費部50を有する。これにより、無停電電源装置3自体、又は無停電電源装置3を介して接続される他の装置が保護されるので、無停電電源装置3を非常用電源として利用することが可能となる。したがって、非常時の電源を確保し易い。
【0113】
電力消費部は、無停電電源装置3からの交流電力を直流電力に変換して電力変換部30側に出力する整流回路211と、電力消費用の抵抗素子233と、整流回路211により生成された直流電力の正極側及び負極側の間に抵抗素子233が接続される消費オン状態と、正極側及び負極側の間に抵抗素子233が接続されない消費オフ状態とを、回生電力の発生状況に応じて切り替える切替スイッチ232と、を有してもよい。この場合、抵抗素子233の配置箇所における電力を直流化することにより、電力消費用の構成を簡素化することができる。例えば、三相交流電力を、直流化することなく消費するためには、各相と中性点との間、又は各相間に電力消費部を設ける必要がある。これに対し、電力消費部50における電力を直流にすることで、直流電力の正極側及び負極側の間にて回生電力をまとめて消費することができる。
【0114】
切替スイッチ232は、正極側及び負極側の間の直流電圧値に基づいて消費オン状態と消費オフ状態とを切り替えてもよい。この場合、抵抗素子233の近傍において回生電力の発生状況が検出されるので、回生電力の発生状況に応じて消費オン状態及び消費オフ状態を迅速に切り替えることができる。
【0115】
電力変換部30は、通常状態においては一次側及び二次側の間で交流−交流変換を行い、非常状態においては一次側及び二次側の間で直流−交流変換を行うようにマトリクスコンバータ回路111を制御する電力変換制御部143を更に有していてもよい。この場合、整流回路により生成された直流電力を再度交流化することなく電力変換部に入力可能である。このため、システム構成の簡素化を図ることができる。
【0116】
電力変換システム20は、整流回路211と、切替スイッチ232と、整流回路211により生成された直流電力を交流電力に変換するインバータ回路214と、を有するインバータ装置200を備えていてもよい。インバータ装置200のハードウェアの流用により、電力消費部50を容易に構成することができる。
【0117】
インバータ装置200は、インバータ回路214の直流側に接続された直流端子223P,223Nを有し、電源切替部40は、非常状態において直流端子223P,223Nを電力変換部30の一次側に接続してもよい。この場合、インバータ装置200の直流端子223P,223Nを電力変換部30の一次側への接続用に利用することで、電力消費部50を更に容易に構成することができる。
【0118】
インバータ装置200は、インバータ回路214の交流側に接続された交流端子222U,222V,222Wと、交流端子222U,222V,222Wをマスクするマスク部材250とを更に有していてもよい。この場合、例えば交流端子222U,222V,222Wを電力変換部30の一次側に接続するような誤配線の発生を抑制することができる。
【0119】
電力変換部30は、交流−交流変換用のマトリクスコンバータ回路111と、直流−交流変換用のインバータ回路214と、通常状態及び非常状態の切り替えに応じて、一次側及び二次側の間にマトリクスコンバータ回路111が接続される交流−交流変換状態と、一次側及び二次側の間にインバータ回路が接続される直流−交流変換状態とを切り替える出力切替部31と、を有していてもよい。この場合、非常状態においては一次側及び二次側の間にインバータ回路214が接続されるので、整流回路211により生成された直流電力を再度交流化することなく電力変換部30に入力可能である。このため、システム構成の簡素化を図ることができる。
【0120】
電力変換システム20は、マトリクスコンバータ回路111及びインバータ回路214のいずれも一次側及び二次側の間に接続されない状態を経て、交流−交流変換状態と直流−交流変換状態とを切り替えるように出力切替部31を制御する出力切替制御部312を更に備えていてもよい。この場合、同一の負荷に対してマトリクスコンバータ回路111及びインバータ回路214の両方が電力を供給することに起因する過電流異常等の発生を抑制することができる。
【0121】
電力変換システム20は、マトリクスコンバータ回路111と、交流−交流変換を行うようにマトリクスコンバータ回路111を制御する交流−交流変換制御部141とを有するマトリクスコンバータ装置100と、整流回路211と、消費制御部241と、インバータ回路214と、直流−交流変換を行うようにインバータ回路214を制御する直流−交流変換制御部242とを有するインバータ装置200と、を備えていてもよい。この場合、既存のインバータ装置200及びマトリクスコンバータ装置100のハードウェアの流用により、上記電力変換システムを容易に構成することができる。
【0122】
直流−交流変換制御部242は、直流−交流変換状態の開始に際して、出力電力を漸増させるようにインバータ回路214を制御してもよい。この場合、マトリクスコンバータ回路111が供給していた交流電力と、インバータ回路214が供給を開始する交流電力との間の位相ずれに起因する出力電力の急変を抑制することができる。
【0123】
電力変換システム20は、電力変換部30の二次側に接続される負荷に関するパラメータを、マトリクスコンバータ装置100及びインバータ装置200の一方側から他方側に転送するパラメータ転送部313を更に備えていてもよい。この場合、マトリクスコンバータ装置100及びインバータ装置200のいずれかの交換等に際してパラメータの再設定が不要となるので、使い勝手が向上する。
【0124】
電力消費部70は、電力消費用の抵抗素子71,72,73と、無停電電源装置3からの交流電力の相間に抵抗素子71,72,73が接続される消費オン状態と、相間に抵抗素子71,72,73が接続されない消費オフ状態とを、回生電力の発生状況に応じて切り替える消費状態切替部74と、を有していてもよい。この場合、回生電力を交流電力の相間で消費させることにより、無停電電源装置3からの交流電力の直流化を不要とし、電力消費部70の構成を簡素化することができる。
【0125】
電力変換部30は、マトリクスコンバータ回路111と、一次側及び二次側の間で交流−交流変換を行うようにマトリクスコンバータ回路111を制御する制御回路140と、回生電力を直流化する整流回路122を含むスナバ回路120と、を有し、消費制御部241は、スナバ回路120の直流電圧値に基づいて消費オン状態と消費オフ状態とを切り替えてもよい。この場合、電力変換部30のスナバ回路120を利用することで、消費オン状態及び消費オフ状態の切り替えタイミングを容易に検出することができる。
【0126】
電力消費部70は、電力消費用の抵抗素子71,72,73と、抵抗素子71,72,73が電力変換部30の一次側に接続され、無停電電源装置3が電力変換部30の一次側に接続されない消費オン状態と、抵抗素子71,72,73が電力変換部30に接続されず、無停電電源装置3が電力変換部30の一次側に接続される消費オフ状態とを、回生電力の発生状況に応じて切り替える消費状態切替部74と、を有していてもよい。この場合、消費オン状態及び消費オフ状態の切り替えにより、回生電力をより確実に抵抗素子71,72,73に導くことができる。
【0127】
電力変換部30は、マトリクスコンバータ回路111と、通常状態及び消費オフ状態においては一次側及び二次側の間で交流−交流変換を行うようにマトリクスコンバータ回路111を制御し、消費オン状態においては一次側及び二次側の間で直流−交流変換を行うようにマトリクスコンバータ111回路を制御する制御回路140と、を有していてもよい。この場合、回生電力を直流化して抵抗素子81に導くことで、電力消費用の構成を簡素化することができる。
【0128】
昇降システム1は、マトリクスコンバータ回路111を有し、当該マトリクスコンバータ回路111により一次側の交流電力及び二次側の交流電力の間で双方向の電力変換を行う電力変換部30と、電力系統2が電力変換部30の一次側に接続される通常状態と、非常用の無停電電源装置3が電力変換部30の一次側に接続される非常状態とを切り替える電源切替部40と、無停電電源装置3及び電力変換部30の間に接続され、二次側から一次側への回生電力を消費する電力消費部50と、電力変換部30の二次側に接続されたモータ16と、モータ16の動力によって昇降する昇降体12と、を備える。この昇降システム1は、上述した電力変換システム20を備えることにより、非常時におけるモータ16の駆動電力を確保し易い。このため、非常時の昇降体12の救出運転をより確実に遂行することができる。
【0129】
昇降システム1は、昇降体12に対して制動力を付与するブレーキ17と、ブレーキ17の作動状態及び解除状態を切り替える制動状態切替部314と、を更に備え、電力変換部30は、交流−交流変換用のマトリクスコンバータ回路111と、直流−交流変換用のインバータ回路214と、通常状態及び非常状態の切り替えに応じて、一次側及び二次側の間にマトリクスコンバータ回路111が接続される交流−交流変換状態と、一次側及び二次側の間にインバータ回路214が接続される直流−交流変換状態とを切り替える出力切替部31と、を有し、出力切替部31は、マトリクスコンバータ回路111及びインバータ回路214のいずれも一次側及び二次側の間に接続されない状態を経て、交流−交流変換状態及び直流−交流変換状態を切り替え、制動状態切替部314は、電力変換部30からモータ16に電力が供給されていないときにはブレーキ17を作動させ、電力変換部30からモータ16に電力が供給されているときにはブレーキ17を解除してもよい。この場合、モータ16に対してマトリクスコンバータ回路111及びインバータ回路214の両方が電力を供給することに起因する過電流異常等の発生を抑制することができる。これにより、非常時におけるモータ16の駆動電力をより確保し易い。また、マトリクスコンバータ回路111及びインバータ回路214のいずれも一次側及び二次側の間に接続されない状態においてはブレーキ17が作動するので、当該状態における昇降体12の落下も防止される。したがって、非常時の昇降体12の救出運転をより確実に遂行することができる。
【0130】
電力変換システム20は、交流−交流変換用のマトリクスコンバータ回路111と、直流−交流変換用のインバータ回路214とを有し、一次側及び二次側の間で双方向の電力変換を行う電力変換部30と、電力系統2が電力変換部30の一次側に接続される通常状態と、電力系統2とは別の無停電電源装置3が電力変換部30の一次側に接続される非常状態とを切り替える電源切替部40と、通常状態及び非常状態の切り替えに応じて、一次側及び二次側の間にマトリクスコンバータ回路111が接続される交流−交流変換状態と、一次側及び二次側の間にインバータ回路214が接続される直流−交流変換状態とを切り替える出力切替部31と、を備える。
【0131】
この場合、交流−交流変換状態においては電力系統2及びモータ16の間にマトリクスコンバータ回路111を接続することにより、モータ16の回生電力を電力系統2に戻して有効活用することができる。直流−交流変換状態においては無停電電源装置3及びモータ16の間にインバータ回路214を接続することにより、モータ16の回生電力をインバータ回路214及び無停電電源装置3の間で直流化することができる。これにより、インバータ回路214及び無停電電源装置3の間における電圧制御が容易になるので、回生電力に起因する無停電電源装置3への過電圧の印加を抑制し易い。したがって、モータ16の回生電力の有効活用と、非常時におけるモータ16への電力供給との両立を図るのに有効である。
【0132】
電力変換システム20は、マトリクスコンバータ回路111及びインバータ回路214のいずれも一次側及び二次側の間に接続されない状態を経て、交流−交流変換状態及び直流−交流変換状態を切り替えるように出力切替部31を制御する出力切替制御部312を更に備えていてもよい。この場合、同一の負荷に対してマトリクスコンバータ回路111及びインバータ回路214の両方が電力を供給することに起因する過電流異常等の発生を抑制することができる。
【0133】
電力変換システム20は、マトリクスコンバータ回路111と、交流−交流変換を行うようにマトリクスコンバータ回路111を制御する交流−交流変換制御部141とを有するマトリクスコンバータ装置100と、インバータ回路214と、直流−交流変換を行うようにインバータ回路214を制御する直流−交流変換制御部242とを有するインバータ装置200と、を備えていてもよい。この場合、既存のインバータ装置200及びマトリクスコンバータ装置100のハードウェアの流用により、上記電力変換システム20を容易に構成することができる。
【0134】
直流−交流変換制御部242は、直流−交流変換状態の開始に際して、出力電力を漸増させるようにインバータ回路214を制御してもよい。この場合、マトリクスコンバータ回路111が供給していた交流電力と、インバータ回路214が供給を開始する交流電力との間の位相ずれに起因する出力電力の急変を抑制することができる。
【0135】
電力変換システム20は、電力変換部30の二次側に接続されるモータ16に関するパラメータを、マトリクスコンバータ装置100及びインバータ装置200の一方側から他方側に転送するパラメータ転送部313を更に備えていてもよい。この場合、マトリクスコンバータ装置100及びインバータ装置200のいずれかの交換等に際してパラメータの再設定が不要となるので、使い勝手が向上する。
【0136】
電力変換システム20は、無停電電源装置3とインバータ回路214との間に接続され、電力変換部30の二次側に接続されるモータ16からの回生電力を消費する電力消費部50を更に備えていてもよい。この場合、無停電電源装置3及びインバータ回路214の間において直流電力の正極側及び負極側の間に電力消費部50を設けることが可能となるので、電力消費用の構成の簡素化が可能となる。
【0137】
電力消費部50は、電力消費用の抵抗素子233と、無停電電源装置3とインバータ回路214との間における直流電力の正極側及び負極側の間に抵抗素子233が接続される消費オン状態と、正極側及び負極側の間に抵抗素子233が接続されない消費オフ状態とを、回生電力の発生状況に応じて切り替える切替スイッチ232と、を有していてもよい。この場合、正極側及び負極側の間に抵抗素子233及び切替スイッチ232を配置した簡素な構成で無停電電源装置3への過電圧の印加を抑制することができる。
【0138】
切替スイッチ232は、正極側及び負極側の間の直流電圧値に基づいて消費オン状態と消費オフ状態とを切り替えてもよい。この場合、抵抗素子233の近傍において回生電力の発生状況が検出されるので、回生電力の発生状況に応じて消費オン状態及び消費オフ状態を迅速に切り替えることができる。
【0139】
昇降システム1は、モータ16と、モータ16の動力によって昇降する昇降体12と、電力系統2と、モータ16との間で電力変換を行うマトリクスコンバータ回路111と、電力系統2とは別の無停電電源装置3と、モータ16との間で電力変換を行うインバータ回路214と、マトリクスコンバータ回路111がモータ16に接続される交流−交流変換状態と、インバータ回路214がモータ16に接続される直流−交流変換状態とを切り替える出力切替部31と、を備えていてもよい。この昇降システム1は、上述した電力変換システム20を備えることにより、通常時におけるモータ16の回生電力の有効活用と、非常時における昇降体12の救出運転の遂行との両立を図るのに有効である。
【0140】
昇降システム1は、昇降体12に対して制動力を付与するブレーキ17と、ブレーキ17の作動状態及び解除状態を切り替える制動状態切替部314と、マトリクスコンバータ回路111及びインバータ回路214のいずれもモータ16に接続されない状態を経て、交流−交流変換状態及び直流−交流変換状態を切り替える出力切替制御部312と、を更に備え、制動状態切替部314は、マトリクスコンバータ回路111及びインバータ回路214のいずれからもモータ16に電力が供給されていないときにはブレーキ17を作動させ、マトリクスコンバータ回路111又はインバータ回路214からモータ16に電力が供給されているときにはブレーキ17を解除してもよい。この場合、電動機に対してマトリクスコンバータ回路111及びインバータ回路214の両方が電力を供給することに起因する過電流異常等の発生を抑制することができる。これにより、非常時におけるモータ16の駆動電力をより確保し易い。また、マトリクスコンバータ回路111及びインバータ回路214のいずれも一次側及び二次側の間に接続されない状態においてはブレーキ17が作動するので、当該状態における昇降体12の落下も防止される。したがって、非常時における昇降体12の救出運転をより確実に遂行することができる。
【0141】
なお、第一実施形態において、非常用電源は直流電源であってもよい。
図20の電力変換システム20Dは、第一実施形態の無停電電源装置3を直流のバッテリー4に置き換えたものである。バッテリー4の二次側(出力側)の正極及び負極は、非常用入力ライン26P,26Nによってマトリクスコンバータ装置100の直流端子223P,223Nにそれぞれ接続されている。電力変換システム20Dの電源切替部40は、切替スイッチ43R,43S,43Tに代えて、非常用入力ライン26P,26Nにそれぞれ設けられた切替スイッチ44P,44Nを有している。電源切替部40は、上記非常状態においてバッテリー4を直流端子223P,223Nに接続する。このような構成によれば、インバータ装置の直流端子を電力変換部の一次側への接続用に利用することで、電力消費部を更に容易に構成することができる。
【0142】
電力変換システム20Dのインバータ装置200は、交流端子221R,221S,221Tをマスクするマスク部材260を更に有してもよい。
図21は、マスク部材の構造を例示する模式図である。マスク部材260は、マスク部材250と同様に、マスク本体261と三箇所の挿入部262とを有する。マスク本体261は、端子台220における交流端子221R,221S,221Tを覆う板状体である。三箇所の挿入部262は、マスク本体261から突出し、交流端子221R,221S,221Tの孔(ビス229の装着用の孔)にそれぞれ挿入される。このような構成によれば、例えば交流端子を電力変換部の一次側に接続するような誤配線の発生を抑制することができる。
【0143】
以上、実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0144】
上述した実施形態では昇降システムの一例としてエレベータシステムを示したが、電力変換システム20,20A,20B,20C,20Dの構成は、昇降体、電動機及びブレーキを備える限りいかなる昇降システムにも適用可能である。例えば昇降システムは建設作業用等のクレーンシステムであってもよい。
電力変換システム20は、交流−交流変換用のマトリクスコンバータ回路111と、直流−交流変換用のインバータ回路214とを有し、一次側及び二次側の間で双方向の電力変換を行う電力変換部30と、電力系統2が電力変換部30の一次側に接続される通常状態と、電力系統2とは別の無停電電源装置3が電力変換部30の一次側に接続される非常状態とを切り替える電源切替部40と、通常状態及び非常状態の切り替えに応じて、一次側及び二次側の間にマトリクスコンバータ回路111が接続される交流−交流変換状態と、一次側及び二次側の間にインバータ回路214が接続される直流−交流変換状態とを切り替える出力切替部31と、を備える。