特許第6458927号(P6458927)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6458927
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】線材圧延性に優れた高強度ばね鋼
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20190121BHJP
   C22C 38/54 20060101ALI20190121BHJP
   C22C 38/50 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   C22C38/00 301Z
   C22C38/54
   C22C38/50
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-206311(P2014-206311)
(22)【出願日】2014年10月7日
(65)【公開番号】特開2016-74949(P2016-74949A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(72)【発明者】
【氏名】木村 晃輔
(72)【発明者】
【氏名】大橋 亮介
(72)【発明者】
【氏名】石倉 亮平
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−133539(JP,A)
【文献】 特開2009−068030(JP,A)
【文献】 特開2015−178673(JP,A)
【文献】 特開2015−143391(JP,A)
【文献】 特開2014−005532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00−38/60
C21D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、
C:0.40〜0.65%、
Si:1.20〜2.80%、
Mn:0.30〜1.20%、
P:0.020%以下、
S:0.020%以下、
Cu:0.20〜0.40%
Ni:0.40〜0.80%
Cr:0.20〜0.70%
Ti:0.060〜0.140%、
B:0.0005〜0.0050%、
Al:0.10%以下、
N:0.010%以下、
O:0.0015%以下、
を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、かつ所定の化学成分の含有質量%が下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とする線材圧延性に優れた高強度ばね鋼。
X1=0.14×[Si]−0.11×[Mn]−0.05×[Cu]
−0.11×[Ni]−0.03×[Cr]+0.02≦0.2…式(1)
X2=(α−500)/β≧3.0 …式(2)
α=912−231×[C]+32×[Si]−20×[Mn]
−40×[Cu]−18×[Ni]−15×[Cr]
β=10^(0.322−0.538×[C]+0.018×[Si]
+1.294×[Mn]+0.693×[Cu]+0.609×[Ni]
+0.847×[Cr])
X3=31×[C]+2.3×[Si]+2.3×[Mn]
+1.25×[Cu]+2.68×[Ni]+3.57×[Cr]
−6×[Ti]≧24 …式(3)
【請求項2】
400℃焼戻し硬さが53.0HRC以上に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の線材圧延性に優れた高強度ばね鋼。
【請求項3】
結晶粒度番号が9番以上に設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の線材圧延性に優れた高強度ばね鋼。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は線材圧延性に優れた高強度ばね鋼に関する。
【背景技術】
【0002】
車両(自動車)の軽量化の要請に対して、懸架ばねの軽量化を図るにあたり、高い設計応力を可能とするばねの開発が進められている。ばねの設計応力を高めるには各種ばね特性の向上を図ることが必要であり、具体的には合金元素の添加が必須である。例えば、へたり性を改善するのであればSiを添加し、耐食性を改善するのであればCu,Ni,Cr等の元素を添加することが考えられる。
【0003】
ところで、ばね特性の向上を図るために合金元素を増量すると、フェライト脱炭が発生し、線材圧延後の冷却時にベイナイトが生成するというような弊害が生じやすくなる。前者はショットピーニングを施すばねにとっては致命的であり、後者は2次加工時に有害な要素となり得るため、両者の発生を回避することが重要となる。このような両者の発生を回避する技術としては、例えば下記特許文献1、2に記載の技術が知られている。
下記特許文献1には、熱間圧延時に1170℃以上で少なくとも2分間鋼材を加熱し、圧延後の750〜600℃の温度域を平均冷却速度5〜300℃/分で冷却し、さらに脱スケール工程を取り入れた技術が開示されている。下記特許文献2には、加熱炉抽出後、仕上前温度を1000℃未満として熱間圧延し、仕上圧延後、1000〜1150℃の範囲に5秒以下保持して巻き取った後に冷却速度2〜8℃/秒で750℃以下に冷却し、その後巻き取りから150秒以上かけて600℃まで徐冷するようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4031267号公報
【特許文献2】特許第5330181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1、2に記載されたいずれの技術も、特殊な圧延工程を実施しなければならない。このため、特殊な圧延工程を設ける手法ではなく、鋼材の化学成分を調整することで、フェライト脱炭の発生及びベイナイトの生成を回避し、ひいては線材圧延性に優れることとなる高強度ばね鋼の開発が望まれていた。
【0006】
本発明は以上のような事情を背景としてなされたものであり、その目的はフェライト脱炭の発生及びベイナイトの生成が回避されるように鋼材の化学成分を調整することより、線材圧延性に優れた高強度ばね鋼を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の高強度ばね鋼は、質量%で、C:0.40〜0.65%、Si:1.20〜2.80%、Mn:0.30〜1.20%、P:0.020%以下、S:0.020%以下、Cu:0.20〜0.40%、Ni:0.40〜0.80%、Cr:0.20〜0.70%、Ti:0.060〜0.140%、B:0.0005〜0.0050%、Al:0.10%以下、N:0.010%以下、O:0.0015%以下、を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、かつ所定の化学成分の含有質量%が下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とする。
X1=0.14×[Si]−0.11×[Mn]−0.05×[Cu]
−0.11×[Ni]−0.03×[Cr]+0.02≦0.2…式(1)
X2=(α−500)/β≧3.0 …式(2)
α=912−231×[C]+32×[Si]−20×[Mn]
−40×[Cu]−18×[Ni]−15×[Cr]
β=10^(0.322−0.538×[C]+0.018×[Si]
+1.294×[Mn]+0.693×[Cu]+0.609×[Ni]
+0.847×[Cr])
X3=31×[C]+2.3×[Si]+2.3×[Mn]
+1.25×[Cu]+2.68×[Ni]+3.57×[Cr]
−6×[Ti]≧24 …式(3)
【0008】
本発明の発明者らは、フェライト脱炭深さとそれに対する鋼材の各化学成分の寄与度を数値化したパラメータ(X1)との関係を定式化できること(式(1))、線材圧延後に通常の冷却速度で冷却した場合におけるベイナイト生成とそれに対する鋼材の各化学成分の寄与度を数値化したパラメータ(X2)との関係を定式化できること(式(2))、400℃で焼戻し処理を施した場合における硬さとそれに対する鋼材の各化学成分の寄与度を数値化したパラメータ(X3)との関係を定式化できること(式(3))、を見出した。すなわち、上記式(1)〜(3)を満たすように鋼材の各化学成分の含有量を調整することで、線材圧延性に優れた高強度ばね鋼を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】式(1)の条件を説明するためのグラフ。
図2】式(2)の条件を説明するためのグラフ。
図3】式(3)の条件を説明するためのグラフ。
図4】Ti含有量の下限を0.060質量%とした根拠を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の高強度ばね鋼における各化学成分(元素)の組成限定理由及び限定条件について説明する。
【0011】
(1)C:0.40〜0.65%
Cはばね鋼の強度を確保するための必須元素である。C含有量が0.40%未満では所望のばね強度が得られない一方、0.65%を超えて添加すると靭性及び疲労特性の低下を招くため、上限を0.65%とする。好ましくは0.45〜0.60%である。
【0012】
(2)Si:1.20〜2.80%
Siはばね鋼の耐へたり性を高めるのに有効な元素である。このために1.20%以上添加する。ただし、2.80%を超えて添加すると靭性の低下のみならずフェライト脱炭が生じやすくなるので、上限を2.80%とする。好ましくは1.50超〜2.50%、更に好ましくは2.00超〜2.50%である。
【0013】
(3)Mn:0.30〜1.20%
MnはMnSの形で靭性劣化元素であるSを固定する働きをする。また、焼入れ性を改善する働きもする。これらのために0.30%以上添加する。ただし、1.20%を超えて添加すると靭性の低下を招くので、上限を1.20%とする。好ましくは0.50超〜1.10%、更に好ましくは1.00%未満である。
【0014】
(4)P:0.020%以下
Pは結晶粒界を脆化させるため、その含有量の最小化が求められる。0.020%以下の含有量であれば粒界強度低下の効果は軽微である一方、含有量を極度に抑制することは精錬プロセスの延長を招き、コスト増を伴うため工業上好ましくない。
【0015】
(5)S:0.020%以下
Sは不可避に鋼中に存在し、上記したようにMnと結合して応力集中の起点となるMnS介在物を生成する。過度の含有はMnS介在物の量を増加させ、ひいては疲労強度の低下を招く。ただし、0.020%以下の含有量であれば疲労強度の低下は極めて軽微である。
【0016】
(6)Cu:0.40%以下
Cuは耐食性を改善するのに有効な元素である。また、フェライト脱炭の防止にも有効である。好ましくは0.20〜0.37%である。
【0017】
(7)Ni:0.80%以下
Niは耐食性を改善するのに有効な元素である。また、フェライト脱炭の防止にも有効である。ただし、コストの増加を招くので、上限を0.80%とする。好ましくは0.50〜0.75%である。
【0018】
(8)Cr:0.70%以下
Crは耐食性を改善するのに有効な元素である。また、焼入れ性の調整にも有効である。ただし、過度の添加は形成される腐食ピットが鋭利になるので、上限を0.70%とする。好ましくは0.20〜0.50%である。
【0019】
(9)Ti:0.060〜0.140%
Tiは炭化物を形成しやすい元素である。Ti系の炭化物は結晶粒微細化に寄与し、疲労特性、遅れ破壊特性、耐へたり性を向上させる。これらのために0.060%以上添加する。ただし、0.140%を超えるとその効果は飽和し、却って圧延性を低下させるので、上限を0.140%とする。好ましくは0.080〜0.120%である。Ti含有量の下限を0.060%に設定した理由については後述する。
【0020】
(10)Al:0.10%以下
Alは溶鋼処理時の脱酸剤として作用する元素である。ただし、0.10%を超えて添加すると介在物が増加し、却って疲労強度の低下を招くため、上限を0.10%とする。
【0021】
(11)N:0.010%以下
NはTiと結合して窒化物を形成し、疲労強度の低下を招くため、上限を0.010%とする。
【0022】
(12)O:0.0015%以下
Oは酸化物系の介在物を生成するため、0.0015%以下とするのが望ましい。
【0023】
(13)残部:Fe及び不可避不純物
なお、表1ではFe及び不可避不純物の記載を省略してある。
【0024】
(14)下記式(1)を満たすこと
X1=0.14×[Si]−0.11×[Mn]−0.05×[Cu]
−0.11×[Ni]−0.03×[Cr]+0.02≦0.2…式(1)
式(1)の妥当性を検討するためフェライト脱炭模擬試験を行った。この模擬試験では、表1に示す化学成分の鋼を溶製して鋼種毎に熱間圧延を行い、22mmφの棒材とし、その後14mmφ×20mmに機械加工を施した試料に対して900℃、100分間保持の条件で加熱処理し、油冷を施した。そして、加熱処理後の試料においてフェライト脱炭深さを測定した。表1及び図1にその結果を示す。
【0025】
【表1】
【0026】
図1は、フェライト脱炭深さを縦軸とし、式(1)中のX1を横軸として、鋼種毎に得られた座標データをプロットしたものである。X1は所定の化学成分(Si,Mn,Cu,Ni,Cr)に各々独自の係数を乗算した各成分項を加算あるいは減算した多項式からなり、図1から明らかなようにフェライト脱炭深さとほぼ線形の対応関係をなしている。
【0027】
一方、上記とは別に、鋼種毎に溶製、分塊圧延を行った後、引き続いて実機を用いて圧延温度900℃で線材圧延(13.5mmφ)を行った。この時の冷却速度は0.5℃/秒とした。そして、各線材圧延材におけるフェライト脱炭の実績、すなわちフェライト脱炭が生じているか(フェライト脱炭有り)、生じていないか(フェライト脱炭無し)を判定した。判定の結果は、図1に示された鋼種毎の座標データにおいて、「フェライト脱炭無し」を白丸で示し、「フェライト脱炭有り」を黒丸で示した。なお、表1では、「フェライト脱炭無し」を白丸で示し、「フェライト脱炭有り」を「×」で示してある。
【0028】
図1に示されるように、フェライト脱炭深さを式(1)のX1で整理することが妥当であることが分かる。そして、実際の線材圧延時におけるフェライト脱炭の実績に鑑みて、フェライト脱炭有り無しを判定するためのX1の閾値を0.2に決定した。つまり、X1を0.2以下に設定することで、フェライト脱炭無しの組織を得ることができる。
【0029】
(15)下記式(2)を満たすこと
X2=(α−500)/β≧3.0 …式(2)
α=912−231×[C]+32×[Si]−20×[Mn]
−40×[Cu]−18×[Ni]−15×[Cr]
β=10^(0.322−0.538×[C]+0.018×[Si]
+1.294×[Mn]+0.693×[Cu]+0.609×[Ni]
+0.847×[Cr])
【0030】
式(2)の妥当性を検討するために、上記と同様、鋼種毎に分塊圧延を行った後、実機を用いて圧延温度900℃で線材圧延(13.5mmφ)を行った。この場合、1.5℃/秒と0.5℃/秒の二つの冷却速度で実施した。そして、各線材圧延材におけるベイナイト生成の実績、すなわちベイナイトが生じているか(ベイナイト生成有り)、生じていないか(ベイナイト生成無し)を判定した。なお、表1及び図2には、冷却速度の単位を℃/sと表示してある。
【0031】
表1及び図2にその結果を示す。図2は、冷却速度を縦軸とし、式(2)中のX2を横軸として、鋼種毎に得られた座標データをプロットしたものである。X2はα、βを変数として含むが、等式自体の考え方は公知である(例えば、「まてりあ 第36巻第6号(1997) P603〜608」参照)。αは所定の化学成分(C,Si,Mn,Cu,Ni,Cr)に各々独自の係数を乗算した各成分項を加算あるいは減算した多項式からなり、βはそのような多項式を10のベキ指数としたものである。そして、図2に示されるように、実際の線材圧延時におけるベイナイト生成の実績に鑑みて、ベイナイト生成有り無しを判定するためのX2の閾値を3.0に決定した。つまり、X2を3.0以上に設定することで、通常実施される冷却速度の範囲内であれば、ベイナイト生成無しの組織を得ることができる。
【0032】
(16)下記式(3)を満たすこと
X3=31×[C]+2.3×[Si]+2.3×[Mn]
+1.25×[Cu]+2.68×[Ni]+3.57×[Cr]
−6×[Ti]≧24 …式(3)
【0033】
式(3)の妥当性を検討するために、鋼種毎に溶製、熱間鍛造を行い、22mmφの棒鋼とし、その後20mmφ×10mmに機械加工を施した試料に対して950℃、60分間保持後、油焼入れを実施し、続いて400℃、30分間保持後、空冷する条件で焼戻し後の硬さ(HRC)を測定した。
【0034】
表1及び図3にその結果を示す。図3は、硬さを縦軸とし、式(3)中のX3を横軸として、鋼種毎に得られた座標データをプロットしたものである。X3は所定の化学成分(C,Si,Mn,Cu,Ni,Cr,Ti)に各々独自の係数を乗算した各成分項を加算あるいは減算した多項式からなる。
【0035】
図3に示されるように、硬さを式(3)のX3で整理することが妥当であることが分かる。そして、本発明における高強度ばね鋼では、焼戻し温度を400℃とした場合に、少なくとも硬さ53.0(HRC)が得られるよう、X3の閾値を24.0に決定した。つまり、X3を24.0以上に設定することで、焼戻し温度を400℃とした場合の硬さを53.0(HRC)以上とする高強度の組織を得ることができる。
【0036】
(その他)Ti含有量の下限を0.060%とした理由
上記した熱間鍛造後に950℃より焼入れ、400℃焼戻しを実施した試料において、オーステナイト結晶粒度試験方法(JIS G 0551)により結晶粒度(オーステナイト結晶粒度)を測定した。表1及び図4にその結果(結晶粒度番号)を示す。図4は、結晶粒度番号を縦軸とし、Ti含有量を横軸として、鋼種毎に得られた座標データをプロットしたものである。
【0037】
オーステナイト結晶粒度は、各種特性(疲労特性、遅れ破壊特性、へたり性)に影響を及ぼすものであり、一般に微細にすることで、上記各特性を向上させることができる。本発明における高強度ばね鋼では、焼入れ・焼戻し後の結晶粒度が9番以上となるよう、図4に基づいてTi含有量の下限を0.060に決定した。つまり、Ti含有量を0.060%以上に設定することで、結晶粒度番号が9番以上の微細化した組織を得ることができる。
【0038】
表1に、各鋼種(実施例1〜12、比較例1〜17)に対応する式(1)〜(3)の計算結果、測定結果及び判定結果を示す。実施例1〜12に示されるように、各化学成分が所定の範囲にあり、しかも式(1)〜(3)を満たすことにより、線材圧延性に優れた高強度ばね鋼、すなわち線材圧延時においてフェライト脱炭もベイナイト生成も無く、400℃焼戻し硬さが53.0以上、かつ結晶粒度番号が9番以上となる鋼を得ることができる。
【0039】
他方、比較例1,6,10,11,14,15,17は式(3)を満たさないため、400℃焼戻し硬さが53.0HRCを下回ることとなった。また、比較例4〜11は式(1)を満たさないため、線材圧延時にてフェライト脱炭が発生することとなった。
【0040】
また、比較例2,3,15〜17はTi含有量の下限が0.060質量%を下回ったため、結晶粒度番号が9番を下回ることとなった。さらに、比較例10,12〜14は式(2)を満たさないため、線材圧延時にてベイナイトが生成することとなった。
【0041】
以上の説明からも明らかなように、本発明によれば、線材圧延性に優れた高強度ばね鋼を得ることができる。なお、本発明は上記実施例に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えた態様で実施することが可能である。
図1
図2
図3
図4