(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
下水管等の既設管は長年の使用により劣化し、その耐用年数は一般に約50年とされているため、耐用年数を超えた下水管は年々増加している。老朽化した下水管は変形や亀裂等が生じているため、下水の流下機能が低下しており、また、亀裂等を介して下水管周囲の地下水や土砂が下水管内に流入することにより地中に空洞が生じるため地面陥没の原因になっている。さらに、地中に埋設される下水管は地震等の地盤変動による影響を受けやすいという事情もあり、所定の時期に何らかの補修が必要となるのが現状である。
【0003】
下水管の補修方法には、人孔間に設置された下水管全体を補修する全体補修(スパン補修)と、特定箇所の亀裂や破損等を部分的に補修する部分補修がある。一般に、全体補修は下水管全体が老朽化し破損箇所が多く、強度も低下している場合に採用され、部分補修は下水管全体の強度は一定の水準にあるものの、部分的に亀裂や破損が生じたり、下水管を構成するヒューム管等の構成単位管同士の接合部における漏水が生じて周囲の地下水や土砂が下水管内に流入している場合に採用される。
【0004】
部分補修方法としては、例えば特許文献1に記載の補修用被覆体を用いた補修方法が知られている。特許文献1に記載の補修用被覆体を
図23に示している。この補修用被覆体110は、補修対象の既設管100の周方向に並べて配置される3枚のスリーブ構成部材112からなるスリーブ114と、スリーブ114の外周上に被装され且つスリーブ114の外周面と既設管100内周面との間に挟装される環状の弾性シート部材116と、スリーブ114の複数のスリーブ構成部材112の互いに対向する対向端部113間に介在させる介在部材118とを有している。弾性シート部材116は、その外周面上の幅方向両端部に、周方向に延在し且つ外方に突出形成された突条部116aを有している。
【0005】
この補修用被覆体を用いて既設管を補修するには、弾性シート部材116が被装された筒状スリーブ114を既設管100内の補修対象箇所に搬送・配置し、次いで介在部材118を隣り合うスリーブ構成部材112の対向端部113間に介在させることにより、スリーブ構成部材112を互いに離間する方向に移動させてスリーブ114の径を拡大させ、これによって弾性シート部材116を既設管100内周面に押圧した状態で固定することにより行われる。
【0006】
この補修用被覆体によれば、弾性シート部材116の突条部116aが既設管の内面に押圧されて圧縮した状態で設置されるので、既設管の亀裂等を介して流入する地下水や土砂がそこで遮断され、止水性を確保することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の補修用被覆体は止水性を確保することができるものの、既設管に亀裂等が生じることにより管の強度が低下している場合にその強度を回復させるには十分ではない。すなわち、特許文献1の補修用被覆体は、ゴム製の弾性シート部材と、薄い板状のスリーブ構成部材からなるスリーブから構成されているので、管の強度の向上機能は十分なものとはいえない。
【0009】
したがって、本発明の目的は、既設管に生じたひびや亀裂、あるいは隣り合う管構成単位管同士の離間等、局所的に生じた補修対象箇所を補修する既設管部分補修方法であって、止水性が確保され、低下した既設管の強度を向上させることのできる既設管部分補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の既設管部分補修方法は、
既設管の補修対象箇所を補修する既設管部分補修方法であって、
前記補修対象箇所を含む前記既設管の内面をその全周に亘って被覆可能な幅を有する硬化状態で筒状のライニング材を、硬化前の変形性を有する状態で前記補修対象箇所の内側に配置する配置工程と、
拡径状態で前記ライニング材の内径以上の外径を有する拡径可能な筒状スリーブを、前記ライニング材の内側に配置した後、前記筒状スリーブを拡径することにより、前記ライニング材を前記既設管の内面に押圧し、密着させる密着工程と、
前記密着した状態を維持した状態で前記ライニング材を硬化させる硬化工程と、
を含むことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、既設管の亀裂やひび、離間等の補修対象箇所を含む内周面に未硬化状態の変形性のあるライニング材を筒状スリーブで押圧することにより、ライニング材が亀裂などの補修対象箇所に浸入し且つその内周面を覆う形で硬化形成されるので、既設管の周囲から亀裂等を介して地下水や土砂が流入することを阻止することができる。また、既設管の内周面上に硬化形成されるライニング材の存在により、低下した既設管の強度を向上させることができる。さらに、筒状スリーブによりライニングを押圧した状態で硬化させることにより、ライニング材の硬化収縮を防止できるので、硬化したライニング材と既設管との間に隙間が生じることなく、ライニング材の良好な設置状態を得ることができる。したがって、止水性の確保及び管強度の向上が図られた部分補修構造を形成することができる。
【0012】
請求項2に記載の既設管補修方法は、
前記配置工程は、予め前記既設管の内面に係止用部材を固定し、該係止用部材の係止部に前記ライニング材を係止することにより行うことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、筒状スリーブをライニング材の内側に導入しやすいように予めライニング材を既設管の内面に近い位置に係止しておくことで、ライニング材の内側で筒状スリーブを拡径する作業を容易ならしめることができる。
【0014】
請求項3に記載の既設管部分補修方法は、
前記配置工程は、一方の端部に係止孔を有し、他方の端部に係止部を有する板部材を筒状に曲げ、前記係止孔に前記係止部を係止させることにより固定される筒状体を、前記ライニング材の内側に配置し、前記固定して行うことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、筒状スリーブをライニング材の内側に導入しやすいように予めライニング材を既設管の内面に近い位置に配置しておくことができるので、ライニング材の内側で筒状スリーブを拡径する作業を容易ならしめることができる。
【0016】
請求項4に記載の既設管部分補修方法は、
前記筒状スリーブと前記ライニング材との間に配置される筒状のベース部と、該ベース部の幅方向両端部の外周上に周方向に延在し、前記既設管の内面に密着する環状の突条部と、を有する環状シート部材を前記筒状スリーブの外周上に被装した後、前記密着工程を行うことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、環状シート部材に設けられた突条部が既設管の内面に接触した状態で各部材が固定されるので、亀裂等を介して流入し得る地下水の管路内への流入をその突条部によって更に確実に阻止することができる。
【0018】
また、本発明は、既設管の内面を部分的に被覆する硬化形成された筒状のライニング材と、拡径状態で前記ライニング材の内径以上の外径を有する筒状スリーブと、を有する既設管部分補修構造を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の既設管部分補修方法によれば、既設管の補修対象箇所を覆うように硬化形成されたライニング材の存在により、止水性の確保及び管強度の向上が図られた万全な部分補修構造を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
図1(A)はライニング材12を既設管100内に配置した状態を示す説明図であり、
図1(B)はその断面図である。既設管100には局所的に亀裂やひび等の補修対象箇所(図示せず)が発生して強度が低下し、周囲から地下水や土砂が既設管100内に流入している状況にある。
【0022】
本発明における配置工程では、補修対象箇所を含む既設管100の内面をその全周に亘って被覆するための硬化性のライニング材12を既設管100内の補修対象箇所内側に配置する。配置工程を行う前には、必要に応じて既設管100の内面を洗浄し、内面に付着した汚れ等の除去作業が行われる。
【0023】
ライニング材12は、補修対象箇所を覆うことが可能な幅を有する筒状のライニング材であり、その外径は既設管100の内径と略同一とされている。
【0024】
ライニング材12としては、ガラス繊維等の繊維材からなる基材に硬化性樹脂組成物を含浸したライニング材を用いることができる。硬化性樹脂組成物としては経時的に硬化する樹脂組成物や熱で硬化する樹脂組成物を使用することができる。経時的に硬化する樹脂組成物としてはエポキシ樹脂等が挙げられる。経時的に硬化する樹脂組成物を用いる場合には、施工現場にて基材に樹脂組成物を含浸することが望ましい。例えばエポキシ樹脂を用いる場合には、エポキシ樹脂主材と硬化剤を現場にて混合した後、その混合物を基材に含浸する。
【0025】
硬化前のライニング材は柔らかく変形性があるので、
図1(A)及び(B)で示されているように、配置工程が完了した状態では、ライニング材12はその下側が既設管100の下側の曲面の形状に沿って配置される一方で、上側は凹んだ状態にあり、下側と上側の間には若干の空間200が存在している。ライニング材12をこのように配置し、後述する筒状スリーブ(
図2に図示)をライニング材12の内側に配置できる状態として配置工程が完了する。
【0026】
次にライニング材12を既設管100内面に密着させるための密着工程を行う。
図2は、密着工程に使用する筒状スリーブの一例を示す斜視図である。筒状スリーブ20は、周方向に並べて配置された3枚のスリーブ構成部材22と、各スリーブ構成部材22の対向端部間に配置されて、隣り合うスリーブ構成部材22の間を拡げてそのスリーブ同士を離間させつつ固定する介在部材30とを有する。
【0027】
図3は、スリーブ構成部材22の斜視図である。スリーブ構成部材22は、例えばステンレスなどの金属製であって、ほぼ一定の曲率半径を有する円弧形状を有しており、その内周面には2本のリブ22Aが周方向に延在するように突出形成され、また、幅方向両端部にはフランジ22Bが周方向に連続するように径方向外側に折曲形成されて、剛性の向上が図られている。
【0028】
図4は、スリーブ構成部材22の対向端部24の形状を説明する要部拡大図である。スリーブ構成部材22の対向端部24は、スリーブ構成部材22の幅方向に沿って延在するように略一直線状に形成されており、幅方向両端部にはそれぞれテーパ状の傾斜部25が設けられている。また、幅方向中央部で一方のリブ22A寄り位置には、矩形の切欠部26が形成されており、該切欠部26から他方のリブ22Aに向かってテーパ状の傾斜部27が設けられている。
【0029】
図中で符号23は、後述する拡径治具40(
図7参照)を着脱自在に取り付けるための係止穴であり、スリーブ構成部材22の両方の対向端部近傍位置で幅方向に離間して対をなすように設けられている。また、一方の対向端部付近の外周面には、
図3に示されるように、対向端部24から所定長さだけ周方向に突出するように当板部材28が取り付けられている。当板部材28は、スリーブ構成部材22の対向端部24の間に形成された間隙からライニング材12が筒状スリーブ20の内側に突出するのを防止するものであり、スリーブ構成部材22よりも厚さが薄い、例えばステンレス製の金属板であって、
図4に示すように、係止穴23を外周面から被覆すると共に、対向端部24に対向する他のスリーブ構成部材22の係止穴23も外周面側から被覆する大きさを有している。
【0030】
介在部材30は、例えばステンレスなどの錆びない金属製であって、周方向に並べて配置されたスリーブ構成部材22の互いに対向する対向端部24間に介在させることにより、各スリーブ構成部材22で構成される筒状スリーブ20で上述したライニング材12(
図1参照)を既設管100の内面に押圧して密着させるとともに、スリーブ構成部材22同士を互いに接続するものである。本実施の形態では、
図2に示すように、1つの接続部分において計3個の介在部材30が取り付けられ、筒状スリーブ20全体で合計9個の介在部材30が使用される。なお、中央の切欠部26は設けないことも可能であり、1つの接続部分当たり2個の介在部材を使用する構成としてもよい。
【0031】
この介在部材30は、
図5に示すように、スリーブ構成部材22の対向端部24を挿入可能な間隔を有して互いに対向する2枚の平板部(第1平板部32、第2平板部34)と、これらの間に設けられて互いに対向する対向端部24間に差し込まれることによって、筒状スリーブ20の拡径動作を行う楔部36を有している。楔部36は、対向端部24の傾斜部25、27(
図4参照)に対向して当接する一対の対向面36aを有しており、平面図である
図5(a)に示すように、前端から後端に移行するに従って互いの間隔が漸次拡がるように形成されている。
【0032】
第1平板部32と第2平板部34は、先端側の角部が面取りされており、第1平板部32は、スリーブ構成部材22の内周面に対向し、第2平板部34は、スリーブ構成部材22の外周面に対向する。また、第2平板部34は、第1平板部32よりも厚さが薄く形成されており、側面図である
図5(b)に示すように、前端から後端に亘って延在する両側縁には面取り加工が施されている。この介在部材30を、スリーブ構成部材22の幅方向両側から互いに接近する方向に向かって対向端部24の間に差し込むことにより、対向端部24を接続することができ、更に押し込むことによって、楔部36の対向面36a上で対向端部24の傾斜部25、27を滑動させて、各スリーブ構成部材22を周方向に互いに離間する方向に移動させることができる。以下、筒状スリーブ20によるライニング材12の密着作業について詳細に説明する。
【0033】
図6は、仮組みした筒状スリーブ20を示す図である。仮組みは、3枚のスリーブ構成部材22を周方向に並べて配置し、3ヶ所の接続部分のうち、1ヶ所を予め介在部材30により接続し、他の2ヶ所の接続部分を互いに重なり合わせて、ライニング材12の内径よりも小径の円筒形状とし、拡径治具40を用いてその円筒形状を維持するように仮固定を行う。
【0034】
拡径治具40は
図7に示すようにL字断面のアングル材によって構成されており、スリーブ構成部材22の係止穴23(
図3に図示)に係入可能な突起部42と、この突起部42の係止穴23への係入によって起立する腕部44を有しており、腕部44には、スリーブ構成部材22を仮固定するための仮固定ボルト48(
図6参照)が挿通される貫通孔46が穿設されている。
【0035】
仮固定は、各スリーブ構成部材22に拡径治具40を取り付け、腕部44の貫通孔46に、仮固定ボルト48を挿通して固定することによって行われる。これにより、
図6に示すように、スリーブ構成部材22の端部2ヶ所が重なり合わされ、ライニング材12の内径よりも小さい外径を有した円筒形状とされる。
【0036】
仮組みは、既設管100内に既に配置されているライニング材12(
図1(A)及び(B)参照)の上部を作業者が持ち上げることによりライニング材12の内側の空間200を拡げつつ、他の作業者がスリーブ構成部材22等をライニング材12の内側に配置して
図6の状態とすることにより行う。仮組みは、予め介在部材30によって接続されている部分が上部に位置するように配置されることが好ましい。これにより、上部での接続部分の作業を省略し、他の下側2ヶ所の接続部分でのみの作業とすることができ、作業者の既設管100内における作業体勢を楽にし、施工作業を容易ならしめることができる。また、下側2ヶ所を既設管100内の最下部よりも上方位置に配置することができ、最下部での作業を回避し、既設管100の最下部を水が流れている場合でも筒状スリーブ20の取付作業を可能とすることができる。
【0037】
そして、筒状スリーブ20によりライニング材12を既設管100内面に押圧する作業が行われる。まず、スリーブ構成部材22の重ね合わされている部分を周方向に離間する方向に移動させる作業が行われる。
図8は、拡径治具40を用いた筒状スリーブ20の拡径作業を説明する図、
図9は、
図8のX−X線方向から矢視した断面図である。
【0038】
まず、拡径治具40によって仮固定されている2ヶ所の接続部分のうち、一方の接続部分を仮固定している仮固定ボルト48(
図6に図示)を取り外し、
図8に示すように、対向する拡径治具40の腕部44の間に拡径用ジャッキ50をセットする。この拡径用ジャッキ50は、拡径治具40の腕部44の間に介在される一対の爪部51と、これらの爪部51を油圧の供給によって互いに離反する方向に移動させるシリンダ部52を有している。
【0039】
この拡径用ジャッキ50を一人の作業者が保持し、他の作業者がその近傍位置で油圧供給装置Pを駆動することによって、拡径治具40を互いに離反する方向に付勢する。これにより、互いに重ね合わされているスリーブ構成部材22の対向端部24を、
図9(a)に示す状態から
図9(b)に示すように周方向に離間する方向に移動させ、対向端部24の間に所定の間隙を形成する。
【0040】
次に、周方向に離間された対向端部24の間に介在部材30を取り付ける作業が行われる。介在部材30は、対向端部24の間に形成された間隙に、介在部材30の楔部36の先端が介在され、第1平板部32と第2平板部34の間に対向端部24が挿入されるように、スリーブ構成部材22の幅方向両側からそれぞれ差し込まれ、ハンマーなどで後端が叩打されることにより、対向端部24同士を仮接続する。そして、拡径用ジャッキ50と拡径治具40が取り外され、固定ジャッキ55によって正規の位置に圧入され、スリーブ構成部材22を相互に接続する。
【0041】
図10は、介在部材30の圧入作業を説明する説明図であり、
図11は、介在部材30を対向端部24の間に圧入した取り付け状態を説明する要部断面拡大図である。固定用ジャッキ55は、
図10に示すように、スリーブ構成部材22の幅よりも広い間隙を有して対峙する一対の爪部56と、これらの爪部56を油圧の供給により互いに接近方向に移動させるシリンダ部57を有しており、これらの爪部56が介在部材30の基端にそれぞれ当接するように、一人の作業者が固定用ジャッキ55を両手で支持し、他の作業者が固定用ジャッキ55を両手で支持し、他の作業者がその近傍位置で油圧供給装置P(
図8参照)を駆動することによって、各介在部材30をスリーブ構成部材22の幅方向で互いに接近方向に移動させる。
【0042】
この移動により、介在部材30は、
図11に示すように、第1平板部32と第2平板部34が対向端部24と当板部材28との間に挿入される形で圧入される。したがって、スリーブ構成部材22は、対向端部24の傾斜部25が楔部36の対向面36aに当接して周方向に押圧され、更に互いに離間する方向に移動される。そして同様に、他方の接続部分を仮固定している拡径治具40の仮固定ボルト48が取り外され、拡径ジャッキ50で対向端部24の間に間隙が形成され、固定ジャッキ55により介在部材30が圧入される。
【0043】
したがって、各スリーブ構成部材22は、互いに周方向に離間する方向に移動され、結果として筒状スリーブ20を拡径させる。筒状スリーブ20は拡径状態においてライニング材12の内径以上の外径を有するため、ライニング材12が既設管100内面に押圧され、密着する。以上により、本発明の既設管部分補修方法における密着工程が完了する。
図12(A)は密着工程を終えた斜視図である。図示のように、筒状スリーブ20と既設管100の間にライニング材12が配置され、ライニング材12の外周面と既設管100の内周面が密着した状態にある。
【0044】
次にライニング材12を硬化させる硬化工程が行われる。ライニング材12の硬化は、ライニング材12が経時硬化性の場合には筒状スリーブ20を設置後、放置することにより硬化させることができる。放置時間は、使用する樹脂組成物によって異なるが、通常3〜12時間である。また、ライニング材12が熱硬化性の場合には筒状スリーブ20を介してヒータ等によりライニング材12を内側から加熱することによりライニング材12を硬化させることができる。
【0045】
図12(B)は硬化工程を終えた状態の断面図である。外側から順に既設管100、硬化したライニング材12及び筒状スリーブ20の順で設けられている。このようにして、既設管100の内周面上に新たな強化層(硬化した筒状のライニング材12)を形成することで、劣化等により低下した既設管100の強度を向上させることが可能となる。また、硬化したライニング材により既設管の補修対象箇所101の亀裂等が塞がれるので、止水性も確保することができる。ライニング材12の硬化は、筒状スリーブ12により既設管100内面に押圧された状態で行われるので、ライニング材12の硬化時における収縮を防止でき、硬化したライニング材12と既設管100との間に隙間が生じることなく、ライニング材12の良好な設置状態を得ることができる。
【0046】
なお、要求される管の強度によってはライニング材12を硬化した後、筒状スリーブ20を撤去してもよいが、筒状スリーブ20を撤去せずそのまま設置し続ければ、硬化したライニング材12が長期に亘って経時的に収縮するのことも防止でき、硬化したライニング材12と既設管100との間に隙間が生じるのを防ぐことができる。
【0047】
なお、本実施の形態では、
図4に示したように、スリーブ構成部材22の接続部分の強度を補強すべく、スリーブ構成部材22の幅方向中央部にも介在部材30が取り付けられる。この介在部材30は、互いに対向する対向端部24の切欠部26によって形成された矩形の開口部から対向端部24の傾斜部27間に挿入され、固定用ジャッキ55(
図10)によって圧入される。したがって、当板部材28と共にスリーブ構成部材22の接続部分の強度を補強することができる。
【0048】
図13(a)は、カバー部材60の取り付け状態を説明する図であり、
図13(b)は、カバー部材60の斜視図である。スリーブ構成部材22の接続部分には、
図13(a)に示すように、介在部材30の取り付け終了後、その接続部分を被覆するようにカバー部材60が取り付けてもよい。カバー部材60は、例えばステンレス製等の薄板の金属板を折り曲げ形成したものであり、作業員の手によって取り付けられる。このカバー部材60を取り付けることによって、既設管100内を流れてきた異物が介在部材30やスリーブ構成部材22の端部に引っかかるのを防止することができる。
【0049】
本発明の既設管部分補修方法は、作業者が立ち入ることができる比較的管径の大きい既設管に好適に適用することができる。管径の大きさ(内径)は、例えば、700〜4000mm、特に800〜3500mmである。
【0050】
上述したように、ライニング材12は、無機繊維材又は有機繊維材等から構成される基材に経時的に硬化する樹脂組成物又は熱により硬化する樹脂組成物が含浸されている。樹脂組成物が含浸された基材はその外面及び内面をそれぞれ覆う外側保護フィルム及び内側保護フィルムで被覆されていてもよい。
【0051】
無機繊維の基材の例としてはガラス繊維や炭素繊維を編む等したものが挙げられる。有機繊維の基材の例としてはポリアミド繊維、ポリエステル繊維等の不織布等が挙げられる。ライニング材の厚さは例えば2〜20mmである。補修対象の既設管の径が大きいほど、厚みの厚いライニング材を用いることが好ましい。
【0052】
次に、本発明の方法における配置工程の他の形態について説明する。
図14はライニング材の配置を行うための係止用部材を既設管の内面に固定した状態を示す説明図であり、
図15は係止用部材の斜視図である。図示されているように既設管100の補修対象箇所の内面100aには複数の係止用部材70が周方向に間隔を開けて設置されている。
図15に示したように、係止用部材70は、略矩形状の平板部72と、平板部72の一方の面72aの中央から起立するように設けられた係止部74を有している。係止部74は直線部74aと先端の折曲部74bを有している。
【0053】
係止用部材70の既設管内面100aへの設置は、係止用部材70の平板部72の係止部74が設けられていない方の面72bに接着剤を塗布して既設管内面100aに接着させて固定することにより行うことができる。別の方法として、係止用部材70の平板部72に孔部を設けて、その孔部を介してボルトを既設管100内面に打ち付ける方法でもよい。
【0054】
係止用部材70は、その設置状態において折曲部74bの先端が上側を向くように設置される。これにより、ライニング材12の係止用部材70への係止作業をスムーズに行うことができる。
図16は、ライニング材12を係止用部材70に係止した状態を示す断面図である。図示のように、ライニング材12の上側部分は係止用部材70に係止されて吊り下げられた状態となり、ライニング材12の下側部分は既設管100の内面形状に沿って載置された状態となる。このようにしてライニング材12を係止させることでライニング材12の配置工程が完了する。その後、上述したのと同様に筒状スリーブ20(
図2参照)によるライニング材12の密着作業及び硬化作業が行われる。係止用部材70は、図示のように、既設管100の下側には設けられていなくてよく、少なくとも上側に設けられていればよい。
【0055】
先に述べた実施の形態では、
図1(A)及び(B)のライニング材配置状態から筒状スリーブをその内側に導入するには、上側が凹んだ状態で配置されたライニング材12の当該上側部分を作業者が持ち上げ、ライニング材12の内側に筒状スリーブを配置できる空間を拡げ、他の作業者がその空間に筒状スリーブを配置・拡径する作業を行う必要があるが、本実施の形態では、予めライニング材12が既設管内面に沿うように係止することで、筒状スリーブの配置・拡径作業を着実に行うことができるので、施工作業の簡略化や正確化が図られる。
【0056】
次に、本発明の方法における配置工程の更なる他の形態について説明する。
図17(A)は、ライニング材の配置工程に使用する筒状体を示す斜視図であり、
図17(B)は筒状体の展開図である。図示のように、筒状体80は、1枚の板部材82が曲げられて筒状に整形された形状を有する。板部材82の長さ方向の一方の端部には、複数の係止孔84が長さ方向(周方向)に所定間隔を空けて複数設けられている。一方、他方の端部には係止部86が形成されている。係止孔86は、板部材82を曲げて丁度良い径となる位置で両端を固定するために複数設けられており、径の大きさを調整することが可能となっている。係止部86は他方の端部から長さ方向(周方向)外側に延出するように形成されている。
【0057】
図18(A)は、ライニング材12を筒状体80で配置した状態を示す説明図であり、(B)はその要部詳細図である。まず、
図1に示したように、既設管100内にライニング材12を導入した後、ライニング材12の内側に、
図17で示した筒状体80を配置し、係止部86を最適な係止孔84に係止させる。係止した状態の筒状体80の外径は、ライニング材12の内径と略同一であり、筒状体80の外面がライニング材12の内面と接触し、これにより、ライニング材12の配置状態の形状が断面円形に維持された状態となる。なお、図中、符号85で示した耳部55は係止作業において作業者が把持する部分であり、必要に応じて設けらればよい。耳部55は、ライニング材12の幅方向端部が垂れ下がるのを防止する機能も有する。したがって、耳部55が既設管100内において上側に位置するように筒状体80を配置することが好適である。板部材82の耳部55が設けられていない箇所の幅は、ライニング材12の幅の1/5〜1/3程度であればよく、耳部55が設けられている箇所の幅は、ライニング材12と略同一か若干小さく形成される。
【0058】
以上により本例における配置工程が完了し、その後、上述した実施の形態と同様に、
図2に示した筒状スリーブ20を筒状体80の更に内側に配置して、ライニング材12を既設管100の内面と密着させた状態とし、ライニング材12を硬化させることにより本発明の方法が完了する。本例では、筒状スリーブ20を導入する前に、ライニング材12を事前に筒状体80により既設管100内面に沿うように配置しているので、筒状スリーブ20の導入作業や拡径作業が容易となる。
【0059】
なお、
図14〜
図16で説明した係止用部材70を用いたライニング材12の配置手法と、
図17及び
図18で説明したライニング材12の配置手法を併用することも可能である。
【0060】
次に、本発明の方法の他の実施の形態について説明する。
図19は、本実施の形態において使用する弾性シート部材を示す斜視図である。弾性シート部材90は、筒状スリーブ20の外周上に被装され、設置状態ではライニング材と筒状スリーブ20の間に配置される。
【0061】
弾性シート部材90は、筒状スリーブ20の拡径作業によってライニング材12と共に既設管100内面側に押圧される環状を有している。具体的には、
図20(a)にその断面形状を示すように、筒状スリーブ20の外周上を被装する筒状のベース部92と、ベース部92の幅方向両端部の外周上に各々周方向に沿って延在し、外側に突出形成された環状の突条部94を有している。突条部94は設置状態において既設管内面に密着する。
【0062】
突条部94は、本実施の形態では片側に4本ずつ、合計8本が設けられており、台形断面形状を有している。そして、
図20(a)の要部(丸枠内)の拡大図である
図20(b)に示すように、それぞれ片側4本の中央2本には、水分を吸収することによって膨張する水膨潤ゴム96が使用されている。したがって、既設管100内面に接面されている状態で水分を吸収した場合には、筒状スリーブ20と既設管100内面との間で膨潤し、より密着させることができる。なお、突条部94は、上記構成に限定されるものではなく、その本数を増減し、断面が半円形状であってもよい。2つ設けられている突条部94の間の幅Wはライニング材12の幅と同じか若干長くなるように設定される。
図21は突条部の他の例を示している。この突条部98はゴム等からなる弾性部材からなり、内部には中空部99が複数設けられている。中空部99の存在により本発明の補修構造の耐震性を向上させることができる。
【0063】
弾性シート部材90を筒状スリーブ20に被装した後、既設管内に既に配置されているライニング材12の内側に配置し、上述した実施のと同様に筒状スリーブ20の拡径作業を行う。これにより、
図22(A)に示したように、ライニング材12が既設管100内面に押圧・密着される共に、弾性シート部材90は、その突条部94が既設管100の内面と密着し、ベース部92(
図20参照)はライニング材12と筒状スリーブ20の間で固定される。この後、上述した実施の形態と同様にライニング材12の硬化を行う。
【0064】
図22(B)は各部材を設置した後の断面図を示している。外側から既設管100、ライニング材12、弾性シート部材90、筒状スリーブ20順に配置され、弾性シート部材90のベース部92はライニング材12と筒状スリーブ20の間に配置された状態となるが、突条部94は既設管100の内面と直接密着した状態となっている。この突条部94の存在により、既設管の亀裂101等を介して流入し得る地下水や土砂の流入を確実に阻止することが可能である。なお、本例の場合には、弾性シート部材90の設置状態を維持するため、筒状スリーブ20は撤去せずそのまま設置する。
【0065】
本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、本発明の要旨を超えない範囲で種々の変更が可能である。