(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基準温度に対応する基準オーバードライブ量が格納され、現在フレームの画素の画素値と、フレームメモリから出力された、前記現在フレームの画素に対応する過去フレームの画素の画素値とに対応する基準オーバードライブ量を出力する第1のLUTと、
前記現在フレームの画素の画素値と、前記現在フレームの画素に対応する過去フレームの画素の画素値との差分値に対応する画素係数を出力する画素係数出力部と、
複数の温度に対応する温度係数が格納され、温度センサにより検出された現在の温度に対応する温度係数を出力する第2のLUTと、
前記第1のLUTから出力された基準オーバードライブ量と、前記画素係数出力部から出力された画素係数と、前記第2のLUTから出力された温度係数とを乗算して補正後のオーバードライブ量を算出し、前記補正後のオーバードライブ量と、前記現在フレームの画素の画素値とを加算してオーバードライブ後の現在フレームの画素の画素値を出力するオーバードライブ処理部とを備えることを特徴とするオーバードライブ回路。
前記画素係数出力部は、マイナスの最大値からプラスの最大値までの前記差分値を、前記差分値が0からマイナスの方向およびプラスの方向に大きくなるほど、含まれる差分値の個数が少なくなるように、異なる個数の差分値を含む複数の差分範囲に分割し、同じ差分範囲に含まれる差分値に対して同じ値の画素係数を出力するものである請求項1に記載のオーバードライブ回路。
前記画素係数出力部は、0または0からプラスおよびマイナスの一定範囲内の差分値である場合に、前記基準オーバードライブ量が補正されない画素係数を出力するものである請求項4に記載のオーバードライブ回路。
前記画素係数出力部は、前記差分値が、0からプラスの方向に向かって大きくなる場合よりも、0からマイナスの方向に向かって大きくなる場合に、値が大きくなる画素係数を出力するものである請求項2〜6のいずれか1項に記載のオーバードライブ回路。
前記画素係数出力部は、前記温度センサにより検出された現在の温度が、前記基準温度を含む一定範囲内の温度である場合に、前記基準オーバードライブ量が補正されない画素係数を出力するものである請求項1〜8のいずれか1項に記載のオーバードライブ回路。
前記フレームメモリは、前記現在フレームの画素の画素値を保持し、一定のフレーム時間の後に、前記保持された現在フレームの画素の画素値を前記過去フレームの画素の画素値として出力するものである請求項1〜9のいずれか1項に記載のオーバードライブ回路。
前記フレームメモリは、前記現在フレームの画素の画素値を圧縮して保持し、一定のフレーム時間の後に、前記圧縮して保持された現在フレームの画素の画素値を伸張して前記過去フレームの画素の画素値として出力するものである請求項1〜9のいずれか1項に記載のオーバードライブ回路。
前記第1のLUTは、前記基準オーバードライブ量の代わりに、前記オーバードライブ後の現在フレームの画素の画素値が格納され、前記オーバードライブ後の現在フレームの画素の画素値から前記現在フレームの画素の画素値を減算して前記基準オーバードライブ量を出力するものである請求項1〜11のいずれか1項に記載のオーバードライブ回路。
さらに、前記オーバードライブ処理部から出力されたオーバードライブ後の現在フレームの画素の画素値が、前記現在フレームの画素の画素値がとりうる値の有効範囲を超えた場合に、前記有効範囲内となるようにリミット処理を行うリミット処理部を備える請求項1〜12のいずれか1項に記載のオーバードライブ回路。
【背景技術】
【0002】
液晶パネル用画像表示装置において、液晶パネルの応答速度が遅いことを補う一般的な方法として、画素の明暗が急峻に変化する場合に、液晶のドライブ量(印加電圧)を大きくするオーバードライブ方式が挙げられる。
【0003】
液晶は、温度が低くなるほど、応答速度が遅くなることが知られている。従って、温度に応じてオーバードライブ量を変化させることにより、液晶パネルに表示される画像の画質を向上させることができる。
また、現在フレームの画素の画素値と1フレーム前の過去フレームの画素の画素値との差分値(画素値の変化量、つまり、印加電圧の変化量)が大きくなるほど、オーバードライブ量を大きくする必要がある。
【0004】
温度に応じてオーバードライブ量を変化させる方法として、特許文献1により提案された方法がある。この方式では、基準温度に対応する基準オーバードライブ量が格納されたLUT(ルックアップテーブル)から出力された、現在フレームの画素の画素値と過去フレームの画素の画素値に対応する基準オーバードライブ量と、現在の温度に対応する温度係数とを乗算することにより、基準オーバードライブ量が現在の温度に応じて補正された、現在の温度に対応する補正後のオーバードライブ量が算出される。
【0005】
図2は、従来のオーバードライブ回路の構成を表す一例のブロック図である。同図に示すオーバードライブ回路50は、特許文献1に記載されたものであり、第1のLUT14と、第2のLUT20と、オーバードライブ処理部23と、リミット処理部24とによって構成されている。
【0006】
第1のLUT14には、基準温度、例えば、25℃に対応する基準オーバードライブ量が格納され、第2のLUT20には、複数の温度に対応する温度係数が格納されている。
【0007】
オーバードライブ回路50では、現在フレームの画素の画素値、および、フレームメモリ12から出力された、現在フレームの画素に対応する過去フレームの画素の画素値に対応する基準オーバードライブ量が、第1のLUT14から順次出力される。
【0008】
また、温度センサ16により検出された現在の温度に対応する温度係数が、第2のLUT20から出力される。
【0009】
続いて、オーバードライブ処理部23では、乗算器38により、第1のLUT14から出力された基準オーバードライブ量と、第2のLUT20から出力された現在の温度に対応する温度係数とが乗算される。
続いて、加算器40により、現在フレームの画素の画素値と、乗算器38から出力された現在の温度に対応する補正後のオーバードライブ量とが加算され、オーバードライブ後の現在フレームの画素の画素値が、加算器40から出力される。
【0010】
続いて、リミット処理部24により、オーバードライブ後の現在フレームの画素の画素値が有効範囲を超えた場合に、現在フレームの画素の画素値が有効範囲内となるようにリミット処理が行われる。
【0011】
リミット処理が行われたオーバードライブ後の現在フレームの画素の画素値は液晶パネル42に順次入力され、現在フレームの画像が液晶パネル42に表示される。
【0012】
従来のオーバードライブ回路50でも、温度変化に適応したオーバードライブ量を得ることは、ある程度可能であった。しかし、液晶パネルは、一般に画素値の変化に対する応答が遅く、尾引き、あるいは画像のボケなどを引き起こす。これは、画素値の変化量、つまり、現在フレームの画素の画素値と過去フレームの画素の画素値との差分値が大きくなるほど顕著となり、画質が低下しやすくなる。これは、温度が低くなるほど、かつ、差分値が大きくなるほど、より大きなオーバードライブ量を必要とすることを意味する。
【0013】
従来のオーバードライブ回路50では、現在の温度に応じて、基準オーバードライブ量が補正されているが、現在フレームの画素の画素値と過去フレームの画素の画素値との差分値に応じて、基準オーバードライブ量が補正されていない。つまり、差分値によらず、同一の温度係数を使用するため、現在の温度が低くなるほど、かつ、差分値が大きくなるほど、適切なオーバードライブ量を得られず、画質が低下するという問題があることが分かっている。
【0014】
これを解決するため、第1のLUT14として、複数の温度に対応する複数のLUTを持つ方法もある。しかし、この方法では、きめ細かい温度調整を行おうとした場合、LUT数が増大し、メモリコストが増大することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解消し、現在の温度に加え、現在フレームの画素の画素値と過去フレームの画素の画素値との差分値に応じて、オーバードライブ量を高精度に補正することができるオーバードライブ回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明は、基準温度に対応する基準オーバードライブ量が格納され、現在フレームの画素の画素値と、フレームメモリから出力された、前記現在フレームの画素に対応する過去フレームの画素の画素値とに対応する基準オーバードライブ量を出力する第1のLUTと、
前記現在フレームの画素の画素値と、前記現在フレームの画素に対応する過去フレームの画素の画素値との差分値に対応する画素係数を出力する画素係数出力部と、
複数の温度に対応する温度係数が格納され、温度センサにより検出された現在の温度に対応する温度係数を出力する第2のLUTと、
前記第1のLUTから出力された基準オーバードライブ量と、前記画素係数出力部から出力された画素係数と、前記第2のLUTから出力された温度係数とを乗算して補正後のオーバードライブ量を算出し、前記補正後のオーバードライブ量と、前記現在フレームの画素の画素値とを加算してオーバードライブ後の現在フレームの画素の画素値を出力するオーバードライブ処理部とを備えることを特徴とするオーバードライブ回路を提供するものである。
【0018】
ここで、前記画素係数出力部は、
マイナスの最大値からプラスの最大値までの前記差分値のうち、マイナスの最大値から0までの差分値および0からプラスの最大値までの差分値を、それぞれ、同数の差分値を含む複数の差分範囲に分割し、さらに、0の差分値を含む2つの差分範囲に含まれる差分値を、0または0からプラスおよびマイナスの一定範囲
内の差分値を含む差分範囲と、0または0からプラスおよびマイナスの
前記一定範囲
内ではない差分値をそれぞれ含む2つの差分範囲に分割し、同じ差分範囲に含まれる差分値に対して同じ値の画素係数を出力するものであることが好ましい。
【0019】
また、前記画素係数出力部は、マイナスの最大値からプラスの最大値までの前記差分値を、前記差分値が0からマイナスの方向およびプラスの方向に大きくなるほど、含まれる差分値の個数が少なくなるように、異なる個数の差分値を含む複数の差分範囲に分割し、同じ差分範囲に含まれる差分値に対して同じ値の画素係数を出力するものであることが好ましい。
【0020】
また、前記画素係数出力部は、0または0からプラスおよびマイナスの一定範囲内の差分値である場合に、前記基準オーバードライブ量が補正されない画素係数を出力するものであることが好ましい。
【0021】
また、前記画素係数出力部は、前記差分値が0からプラスおよびマイナスの方向に向かって大きくなるほど、値が大きくなる画素係数を出力するものであることが好ましい。
【0022】
また、前記画素係数出力部は、前記差分値が、0からプラスの方向に向かって大きくなる場合よりも、0からマイナスの方向に向かって大きくなる場合に、値が大きくなる画素係数を出力するものであることが好ましい。
【0023】
また、前記画素係数出力部は、マイナスの最大値からプラスの最大値までの
前記差分値の絶対値を、複数の差分範囲に分割するものであることが好ましい。
【0024】
また、前記画素係数出力部は、前記温度センサにより検出された現在の温度が、前記基準温度を含む一定範囲内の温度である場合に、前記基準オーバードライブ量が補正されない画素係数を出力するものであることが好ましい。
【0025】
また、前記フレームメモリは、前記現在フレームの画素の画素値を保持し、一定のフレーム時間の後に、前記保持された現在フレームの画素の画素値を前記過去フレームの画素の画素値として出力するものであることが好ましい。
【0026】
また、前記フレームメモリは、前記現在フレームの画素の画素値を圧縮して保持し、一定のフレーム時間の後に、前記圧縮して保持された現在フレームの画素の画素値を伸張して前記過去フレームの画素の画素値として出力するものであることが好ましい。
【0027】
また、前記第1のLUTは、前記基準オーバードライブ量の代わりに、前記オーバードライブ後の現在フレームの画素の画素値が格納され、前記オーバードライブ後の現在フレームの画素の画素値から前記現在フレームの画素の画素値を減算して前記基準オーバードライブ量を出力するものであることが好ましい。
【0028】
さらに、前記オーバードライブ処理部から出力されたオーバードライブ後の現在フレームの画素の画素値が、前記現在フレームの画素の画素値がとりうる値の有効範囲を超えた場合に、前記有効範囲内となるようにリミット処理を行うリミット処理部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、第1のLUTの数を増やすことなく、画素値の変化量、および、現在の温度に応じて、オーバードライブ量を高精度に補正することができるため、液晶パネルに表示される画像の画質を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明のオーバードライブ回路を詳細に説明する。
【0032】
図1は、本発明のオーバードライブ回路の構成を表す一実施形態のブロック図である。同図に示すオーバードライブ回路10は、オーバードライブを行って、液晶パネル42を駆動するものであり、第1のLUT14と、画素係数出力部18と、第2のLUT20と、オーバードライブ処理部22と、リミット処理部24とによって構成されている。
同図には、オーバードライブ回路10の他に、フレームメモリ12、温度センサ16、液晶パネル42も示されている。
【0033】
フレームメモリ12には、現在フレームの画素の画素値が順次入力される。
フレームメモリ12は、図示していない動作クロックに同期して、現在フレームの画素の画素値を順次保持するものである。フレームメモリ12からは、一定のフレーム時間の後に、動作クロックに同期して、保持された現在フレームの画素の画素値(非圧縮データ)が過去フレームの画素の画素値として順次出力される。
【0034】
フレームメモリ12は、現在フレームの画素の画素値を圧縮して保持し、一定のフレーム時間の後に、圧縮して保持された現在フレームの画素の画素値(圧縮データ)を伸張して過去フレームの画素の画素値として出力してもよい。
これにより、フレームメモリ12に保持される現在フレームの画像(1フレーム分の画像)の容量、つまり、フレームメモリ12の容量を削減し、コストダウンを実現することができる。
【0035】
第1のLUT14には、現在フレームの画素の画素値、および、フレームメモリ12から出力された、現在フレームの画素に対応する過去フレームの画素の画素値が入力される。
第1のLUT14には、基準温度、例えば、25℃に対応する基準オーバードライブ量が格納されている。第1のLUT14は、現在フレームの画素の画素値と、過去フレームの画素の画素値とに対応する基準オーバードライブ量を出力するものである。
【0036】
なお、基準オーバードライブ量の代わりに、オーバードライブ後の現在フレームの画素の画素値を第1のLUT14に格納してもよい。この場合、例えば、オーバードライブ後の現在フレームの画素の画素値から現在フレームの画素の画素値を減算することにより基準オーバードライブ量を出力することができる。
また、第1のLUT14のサイズは、例えば、17×17のものであるが、必要に応じて適宜変更することができる。
【0037】
温度センサ16は、現在の温度を検出するものである。
【0038】
画素係数出力部18には、現在フレームの画素の画素値、フレームメモリ12から出力された過去フレームの画素の画素値、および、温度センサ16により検出された現在の温度が入力される。
画素係数出力部18は、現在フレームの画素の画素値と、現在フレームの画素に対応する過去フレームの画素の画素値との差分値に対応する画素係数を出力するものである。画素係数は、差分値に応じて基準オーバードライブ量を補正するための補正係数である。
また、画素係数出力部18は、0または0からプラスおよびマイナスの一定範囲内の差分値である場合や、温度センサにより検出された現在の温度が、基準温度を含む一定範囲内の温度である場合に、基準オーバードライブ量が補正されない画素係数、つまり、1を出力する。
【0039】
画素係数出力部18は、差分値算出部26と、画素係数算出部28と、基準温度設定レジスタ30と、温度判定部32と、セレクタ34とを備えている。
【0040】
差分値算出部26は、現在フレームの画素の画素値と過去フレームの画素の画素値との差分値を算出するものである。
また、差分値算出部26は、現在フレームの画素の画素値と過去フレームの画素の画素値との差分値の絶対値を算出してもよい。
【0041】
画素係数算出部28は、差分値算出部26により算出された差分値に対応する画素係数を算出するものである。
【0042】
基準温度設定レジスタ30は、第1のLUT14に格納された基準オーバードライブ量に対応する基準温度が設定されるものである。
温度判定部32は、温度センサ16により検出された現在の温度が、基準温度設定レジスタ30に設定された基準温度を含む一定範囲内の温度であるか否かを判定するものである。
【0043】
例えば、基準温度が25℃で、かつ、一定範囲が±1℃の場合、基準温度設定レジスタ30に25℃を設定し、温度判定部32により、現在の温度が、25℃±1℃である24℃〜26℃の範囲内に含まれているか否かを判定してもよい。あるいは、基準温度設定レジスタ30に25℃±1℃である24℃および26℃を設定し、温度判定部32により、現在の温度が、24℃〜26℃の範囲内に含まれているか否かを判定してもよい。
【0044】
セレクタ34は、温度判定部32により、現在の温度が、基準温度設定レジスタ30に設定された基準温度を含む一定範囲内に含まれていると判定された場合、基準オーバードライブ量が補正されない画素係数、つまり、1を出力し、現在の温度が、基準温度設定レジスタ30に設定された基準温度を含む一定範囲内に含まれていないと判定された場合、画素係数算出部28により算出された画素係数を出力するものである。
【0045】
続いて、第2のLUT20には、温度センサ16から現在の温度が入力される。
第2のLUT20には、複数の温度に対応する温度係数が格納されている。第2のLUT20は、温度センサ16により検出された現在の温度に対応する温度係数を出力するものである。温度係数は、現在の温度に応じて基準オーバードライブ量を補正するための補正係数である。
【0046】
第2のLUT20には、表1に示すように、代表的な温度とその温度係数が格納されている。第2のLUT20に存在しない温度に対応する温度係数は、その温度の近傍の温度に対応する温度係数から線形補間などにより算出される。また、第2のLUT20に設定された温度範囲を超えた場合、温度係数は、設定範囲内になるように丸められる。
なお、表1に示す温度の値や、温度および温度係数の個数は一例であり、適宜設定することができる。
【0048】
オーバードライブ処理部22には、現在フレームの画素の画素値、第1のLUT14から出力された基準オーバードライブ量、画素係数出力部18から出力された画素係数、第2のLUT20から出力された温度係数が入力される。
オーバードライブ処理部22は、第1のLUT14から出力された基準オーバードライブ量と、画素係数出力部18から出力された画素係数と、第2のLUT20から出力された温度係数とを乗算して補正後のオーバードライブ量を算出し、補正後のオーバードライブ量と、現在フレームの画素の画素値とを加算してオーバードライブ後の現在フレームの画素の画素値を出力するものである。
【0049】
オーバードライブ処理部22は、2つの乗算器36,38と、加算器40とを備えている。
【0050】
乗算器36には、第1のLUT14から出力された基準オーバードライブ量と、画素係数出力部18から出力された画素係数とが入力される。
乗算器36は、基準オーバードライブ量と画素係数とを乗算するものである。乗算器36からは、基準オーバードライブ量が差分値に応じて補正された、差分値に対応する補正後のオーバードライブ量が出力される。
【0051】
乗算器38には、乗算器36から出力された、差分値に対応する補正後のオーバードライブ量と、第2のLUT20から出力された、現在の温度に対応する温度係数とが入力される。
乗算器38は、差分値に対応する補正後のオーバードライブ量と、現在の温度に対応する温度係数とを乗算するものである。乗算器38からは、基準オーバードライブ量が差分値および現在の温度に応じて補正された、差分値および現在の温度に対応する補正後のオーバードライブ量が出力される。
【0052】
なお、基準オーバードライブ量と画素係数とを乗算した後、現在の温度に対応する温度係数を乗算することに限らず、基準オーバードライブ量と、画素係数と、現在の温度に対応する温度係数とを乗算することができればよい。つまり、基準オーバードライブ量と現在の温度に対応する温度係数とを乗算した後、画素係数を乗算してもよいし、現在の温度に対応する温度係数と画素係数とを乗算した後、基準オーバードライブ量を乗算してもよい。
【0053】
加算器40には、現在フレームの画素の画素値と、乗算器38から出力された差分値および現在の温度に対応する補正後のオーバードライブ量が入力される。
加算器40は、現在フレームの画素の画素値と、差分値および現在の温度に対応する補正後のオーバードライブ量とを加算するものである。加算器40からは、オーバードライブ後の現在フレームの画素の画素値が出力される。
【0054】
最後に、リミット処理部24には、オーバードライブ処理部22から出力されたオーバードライブ後の現在フレームの画素の画素値が入力される。
リミット処理部24は、オーバードライブ後の現在フレームの画素の画素値が、現在フレームの画素の画素値がとりうる値の有効範囲を超えた場合に、有効範囲内となるようにリミット処理を行うものである。
【0055】
例えば、画素値が8ビットで表現されている場合、その値は、0〜255の範囲となる。オーバードライブ処理部22では、乗算および加算が行われるため、その演算の結果、画素値が0〜255の範囲を超える場合もあり得る。リミット処理部24は、画素値が、有効範囲である0〜255の場合を超えた場合、例えば、画素値が255を超えた場合、画素値が255となるように丸めるリミット処理を行う。
【0056】
次に、画素係数出力部18の詳細について説明する。
【0058】
表2は、画素係数出力部18において、差分値、および、差分値に対応して設定された画素係数の一例を表したものである。表2は、画素値が8ビットで表現されている場合の例であり、差分値は、−255〜255の範囲となる。
【0059】
表2の例では、マイナスの最大値である−255〜0までの差分値および0〜プラスの最大値である255までの差分値が、それぞれ、16個の差分値を含む32個の差分範囲に分割され、さらに、0の差分値を含む2つの差分範囲に含まれる−15〜0および0〜15の差分値が、0の差分値を含む差分範囲と、0ではない−15〜−1および1〜15の差分値をそれぞれ含む2つの差分範囲とに分割されている。
【0060】
つまり、−255〜255の差分値は、それぞれ、16個の差分値を含む15個の差分範囲1〜15と、15個の差分値を含む差分範囲16と、1個の差分値を含む差分範囲17と、15個の差分値を含む差分範囲18と、それぞれ、16個の差分値を含む15個の差分範囲19〜33とからなる、合計33個の差分範囲1〜33に分割されている。
【0061】
そして、同じ差分範囲に含まれる差分値に対して同じ値の画素係数が設定されている。つまり、画素係数出力部18からは、同じ差分範囲に含まれる差分値に対して同じ値の画素係数が出力される。
【0062】
例えば、−255〜−240の差分範囲1に含まれる差分値に対して同じ値の画素係数1が設定されている。他の差分範囲2〜33に含まれる差分値についても同様である。画素係数1〜33の値は、レジスタ等を用いて設定することが可能である。
【0063】
なお、差分値が0または0に近い場合、このような画素は静止画素と呼ばれ、通常、オーバードライブを行わない。従って、0の差分値を含む差分範囲17を、0からプラスおよびマイナスの一定範囲内の差分値を含む差分範囲としてもよい。
【0065】
続いて、表3は、表2に示す画素係数の具体的な数値例を表したものである。
表3の例では、差分値が0の場合に、画素係数が1に設定されている。画素係数が1の場合、基準オーバードライブ量は差分値に応じて補正されない。
また、差分値が0からプラスおよびマイナスの方向に向かって大きくなるほど、画素係数の値が大きくなるように設定されている。つまり、差分値が大きくなるほど、オーバードライブ量が大きくなるように設定されている。
さらに、差分値が、0からプラスの方向に向かって大きくなる場合よりも、0からマイナスの方向に向かって大きくなる場合に、画素係数の値が大きくなるように設定されている。つまり、暗い画素が明るくなる場合よりも、明るい画素が暗くなる場合に、よりオーバードライブ量が大きくなるように設定されている。
【0068】
続いて、表4および表5は、差分値、および、差分値に対して設定された画素係数の別の例を表したものである。表2の例では、差分値を、均等な刻み幅で分割しているが、表4および表5の例のように、差分値を、不均等な刻み幅で分割して画素係数を設定することも可能である。このように、差分値が大きくなるほど、刻み幅をより細かく調節した方が、液晶パネル42に表示される画像の画質を向上させることができる。
【0069】
表4および表5の例では、−255〜−248の差分値および248〜255の差分値が、それぞれ、4個の差分値を含む(刻み幅4)4個の差分範囲に分割されている。また、−247〜−208および208〜247の差分値が、それぞれ、8個の差分値を含む(刻み幅8)10個の差分範囲に、−207〜−96および96〜207の差分値が、それぞれ、16個の差分値を含む(刻み幅16)12個の差分範囲に、−95〜−1および1〜95の差分値が、それぞれ、32個の差分値を含む(刻み幅32)6個の差分範囲に、0の差分値が、1個の差分値を含む1個の差分範囲に分割されている。
【0070】
つまり、−255〜255の差分値は、それぞれ、4個の差分値を含む2個の差分範囲1,2と、それぞれ、8個の差分値を含む5個の差分範囲3〜7と、それぞれ、16個の差分値を含む6個の差分範囲8〜13と、それぞれ、32個の差分値を含む3個の差分範囲14〜16と、1個の差分値を含む1個の差分範囲17と、それぞれ、32個の差分値を含む3個の差分範囲18〜20と、それぞれ、16個の差分値を含む6個の差分範囲21〜26と、それぞれ、8個の差分値を含む5個の差分範囲27〜31と、それぞれ、4個の差分値を含む2個の差分範囲32,33とからなる、合計33個の差分範囲1〜33に分割されている。
【0071】
つまり、表4および表5の例では、マイナスの最大値からプラスの最大値までの差分値が、差分値がマイナスの方向およびプラスの方向に大きくなるほど、含まれる差分値の個数が少なく(差分値の刻み幅が小さく)なるように、異なる個数の差分値を含む複数の差分範囲に分割されている。
【0072】
同様に、同じ差分範囲に含まれる差分値に対して同じ値の画素係数が設定されている。つまり、画素係数出力部18からは、同じ差分範囲に含まれる差分値に対して同じ値の画素係数が出力される。
【0074】
続いて、表6は、差分値、および、差分値に対して設定された画素係数のさらに別の例を表したものである。
差分値が0からプラスの方向へ大きくなる場合と、0からマイナスの方向へ大きくなる場合、つまり、暗い画素が明るくなる場合と、明るい画素が暗くなる場合の液晶の応答特性が対称である場合、差分値算出部26から出力される、現在フレームの画素の画素値と過去フレームの画素の画素値との差分値の絶対値から画素係数を得ることも可能である。
【0075】
表6の例では、マイナスの最大値である−255からプラスの最大値である255までの差分値の絶対値0〜255が、それぞれ、16個の絶対値を含む16個の差分範囲に分割され、さらに、0の絶対値を含む差分範囲に含まれる0〜15の絶対値が、0の絶対値を含む差分範囲と、0ではない1〜15の絶対値を含む差分範囲とに分割されている。
【0076】
つまり、0〜255の絶対値は、1個の絶対値を含む差分範囲1と、15個の絶対値を含む差分範囲2と、それぞれ、16個の絶対値を含む15個の差分範囲とからなる、合計17個の差分範囲1〜17に分割されている。
【0077】
同様に、同じ差分範囲に含まれる差分値に対して同じ値の画素係数が設定されている。つまり、画素係数出力部18からは、同じ差分範囲に含まれる差分値に対して同じ値の画素係数が出力される。
【0078】
表6の例の場合、画素係数は17個でよいことになり、さらに、回路規模の削減が可能である。
【0079】
なお、表4および表5、ならびに、表6の場合において、画素係数の具体的な数値例は、表3に示すものと同様なものを例示することができる。
【0080】
次に、オーバードライブ回路10の動作を説明する。
【0081】
動作クロックに同期して、現在フレームの画素の画素値が、フレームメモリ12に順次保持される。フレームメモリ12からは、例えば、1フレーム時間の後に、保持された現在フレームの画素の画素値が過去フレームの画素の画素値として順次出力される。
【0082】
続いて、現在フレームの画素の画素値と、現在フレームの画素に対応する過去フレームの画素の画素値とに対応する基準オーバードライブ量が、第1のLUT14から順次出力される。
【0083】
一方、画素係数出力部18では、差分値算出部26により、例えば、現在フレームの画素の画素値から過去フレームの画素の画素値を減算した差分値が算出される。
続いて、画素係数算出部28により、差分値算出部26により算出された差分値に対応する画素係数が算出される。
また、温度判定部32により、温度センサ16により検出された現在の温度が、基準温度設定レジスタ30に設定された基準温度を含む一定範囲内の温度であるか否かの判定が行われる。
【0084】
ここで、温度判定部32により、現在の温度が、基準温度設定レジスタ30に設定された基準温度を含む一定範囲内の温度であると判定された場合、基準オーバードライブ量が補正されない画素係数、つまり、1がセレクタ34から出力される。
一方、現在の温度が、基準温度設定レジスタ30に設定された基準温度を含む一定範囲内の温度ではないと判定された場合、画素係数算出部28により算出された画素係数がセレクタ34から出力される。
【0085】
また、温度センサ16により検出された現在の温度に対応する温度係数が、第2のLUT20から出力される。
【0086】
続いて、オーバードライブ処理部22では、乗算器36により、第1のLUT14から出力された基準オーバードライブ量と、画素係数出力部18から出力された、差分値に対応する画素係数とが乗算され、乗算器38により、乗算器36から出力された差分値に対応する補正後のオーバードライブ量と、第2のLUT20から出力された、現在の温度に対応する温度係数とが乗算される。
続いて、加算器40により、現在フレームの画素の画素値と、乗算器38から出力された差分値および現在の温度に対応する補正後のオーバードライブ量とが加算され、オーバードライブ後の現在フレームの画素の画素値が、加算器40から出力される。
【0087】
続いて、リミット処理部24により、オーバードライブ後の現在フレームの画素の画素値が有効範囲を超えた場合に、有効範囲内となるようにリミット処理が行われる。
【0088】
リミット処理が行われたオーバードライブ後の現在フレームの画素の画素値は液晶パネル42に順次入力され、現在フレームの画像が液晶パネル42に表示される。
【0089】
オーバードライブ回路10では、第1のLUT14の数を増やすことなく、画素値の変化量、および、現在の温度に応じて、オーバードライブ量を高精度に補正することができるため、液晶パネル42に表示される画像の画質を向上させることができる。
【0090】
なお、オーバードライブ回路10において、第1のLUT14、画素係数出力部18、第2のLUT20、オーバードライブ処理部22、リミット処理部24、差分値算出部26、画素係数算出部28、基準温度設定レジスタ30、温度判定部32等の具体的な構成は何ら限定されず、同様の機能を果たす各種構成の回路、プログラムされたコンピュータ等によって実現することができる。
【0091】
本発明は、基本的に以上のようなものである。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。