特許第6458998号(P6458998)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6458998
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20190121BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20190121BHJP
   B60K 37/06 20060101ALI20190121BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   G02B27/01
   B60K35/00 A
   B60K37/06
   H04N5/64 521Z
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-97999(P2015-97999)
(22)【出願日】2015年5月13日
(65)【公開番号】特開2016-212338(P2016-212338A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松浦 宗也
(72)【発明者】
【氏名】菊地 裕太
(72)【発明者】
【氏名】川合 健
(72)【発明者】
【氏名】山添 尚
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祐一
【審査官】 右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−237412(JP,A)
【文献】 特開2008−268485(JP,A)
【文献】 特開2007−148092(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/060193(WO,A1)
【文献】 特開2010−096874(JP,A)
【文献】 特開平11−091404(JP,A)
【文献】 特開2014−181025(JP,A)
【文献】 米国特許第3533104(US,A)
【文献】 特開平08−156646(JP,A)
【文献】 特開2003−029196(JP,A)
【文献】 特開2004−302643(JP,A)
【文献】 特開2003−399821(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/271698(US,A1)
【文献】 特開2009−150947(JP,A)
【文献】 特開2014−115591(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/190157(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
B60K 37/06
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、透過反射部に表示光を投影することで、仮想的な第一の虚像表示面上と第二の虚像表示面上とにそれぞれ虚像を表示可能なヘッドアップディスプレイであって、
前記第一の虚像表示面に対応する第一の表示面を有し、前記第一の表示面から前記虚像を表示する第一の表示光を発する第一の画像表示部と、
前記第二の虚像表示面に対応する第二の表示面を有し、前記第二の表示面から前記虚像を表示する第二の表示光を発する第二の画像表示部と、
前記第一、第二の画像表示部が発する前記第一、第二の表示光を前記透過反射部に向けるリレー光学系と、
少なくとも前記第一の表示面または前記リレー光学系のいずれかを回転させ、前記第一の虚像表示面が生成される実空間上における角度を調整可能なアクチュエータと、
前記アクチュエータを制御し、前記第一の虚像表示面と前記第二の虚像表示面とのなす角度を変化させる制御部と、を備える、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ。
【請求項2】
前記第一の虚像表示面は、前記第二の虚像表示面より水平方向に傾いて生成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項3】
前記第一の虚像表示面は、前記第二の虚像表示面より前記視認者から離れた位置に生成される、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項4】
前記第一の虚像表示面は、水平方向に平行に配置される、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項5】
前記第一の虚像表示面と前記第二の虚像表示面とは、視認者から見て、離間して配置される、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項6】
前記車両の車両姿勢に関する情報を含む車両姿勢情報を取得する車両姿勢情報取得手段をさらに備え、
前記制御部は、前記車両姿勢情報取得手段が取得した前記車両姿勢情報に基づき、前記アクチュエータを駆動する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項7】
前記制御部は、前記車両姿勢情報取得手段が取得した前記車両姿勢の変化の大きさに応じて、前記アクチュエータの駆動量を大きくする、
ことを特徴とする請求項6に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項8】
前記制御部は、前記車両姿勢情報取得手段が取得した前記車両姿勢の変化を取得した場合、前記第一の虚像表示面と前記車両が走行する路面とのなす角度が前記車両の挙動が発生する前の角度に維持されるように、前記アクチュエータを駆動する、
ことを特徴とする請求項6または7のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項9】
前記制御部は、前記車両姿勢情報取得手段が取得した前記車両姿勢の変化の大きさに応じて、前記第一の画像表示部の前記第一の表示面のうちの一部である前記画像の表示に使用する使用領域を決定する、
ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虚像を表示するヘッドアップディスプレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヘッドアップディスプレイは、自車両前方の風景(実景)に重畳画像を重ねて表示することで、実景に情報などを付加したり、実景における特定の対象を強調したりする拡張現実(AR:Augmented Reality)を生成し、車両運転する視認者の視線移動を極力抑えつつ、所望の情報を的確に提供することで、安全で快適な車両運行に寄与するものである。
【0003】
例えば特許文献1は、2つの画像表示部を備え、これらの画像表示部に画像を表示することで、仮想的な2つの虚像表示面上に虚像を生成するヘッドアップディスプレイを開示し、このヘッドアップディスプレイは、第一、第二の画像表示部の表示面を視認者の視線軸に対して異なる角度でそれぞれ配置することで、第一、第二の画像表示部により生成される2つの虚像表示面の視認角度を異ならせている。具体的には、このヘッドアップディスプレイは、一方の虚像表示面を視認者の視線に対して概ね垂直となるように生成し、他方の虚像表示面をもう一方の虚像表示面より水平方向に傾いて生成する。すなわち、2つの虚像表示面は、平行ではなく、所定の角度を有する。このように2つの虚像表示面を所定の角度だけ傾けて生成することで、それぞれの虚像表示面に虚像を表示した場合、視認者は、前記虚像を立体的に認識することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−037241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されるヘッドアップディスプレイにおいて、2つの虚像表示面の間の角度は固定となっている。したがって、例えば、車両の加減速などの挙動により車両のピッチ角が変化した場合でも、2つの虚像表示面の間の角度は維持されたままであり、車両外の実景に対して表示位置がずれて視認されるのみである。このように、車両の姿勢(ピッチ角)が変化した場合でも2つの虚像表示面に表示されたそれぞれの虚像が同じように実景に対してずれた場合、どちらが一方の虚像表示面に表示された情報で、どちらが他方の虚像表示面に表示された情報であるか認識しづらくなってしまう。すなわち、虚像表示面それぞれに表示される情報を区別して認識しづらくなってしまい、立体的な印象が薄れてしまうという問題があった。
【0006】
図11には、車両のピッチ角が変化した際の虚像表示面の位置を表す例として、3つの車両のピッチ角の状態の例が示されている。図11(a)は、車両のピッチ角が概ね路面に平行である場合の第一の虚像表示面521r及び第二の虚像表示面522rの位置を示し、図11(b)は、車両のピッチ角が路面よりも鉛直方向の上側に向いた場合の第一の虚像表示面521u及び第二の虚像表示面522uの位置を示し、図11(c)は、車両のピッチ角が路面よりも鉛直方向の下側に向いた場合の第一の虚像表示面521d及び第二の虚像表示面522dの位置を示している。従来のヘッドアップディスプレイは、第一の虚像表示面521と第二の虚像表示面522との相対的な角は変化しない。そのため、視認している情報のうち、どちらが第一の虚像表示面521(第二の虚像表示面522)に表示されたものかが認識しづらく、立体的な印象が薄れてしまっていた。
【0007】
本発明の1つの目的は、立体表示に含まれる情報の差別化を容易にし、立体感のある表示ができるヘッドアップディスプレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明のヘッドアップディスプレイは、所定の角度を有するように設けられ、虚像をそれぞれ表示可能な第一、第二の虚像表示面を生成し、少なくとも第一の虚像表示面に対応する第一の画像生成部の第一の表示面、または前記第一の画像生成部から出射される第一の表示光を透過反射部に向けるリレー光学系、のいずれかを回転させることで第一の虚像表示面と前記第二の虚像表示面とのなす角度を変化させる。これにより、本発明のヘッドアップディスプレイは、第一の虚像表示面と前記第二の虚像表示面とのなす角度を変化させることで、視認する情報のうちどれが第一の虚像表示面(第二の虚像表示面)に表示された情報であるか視認者に認識させることができるため、第一、第二の虚像表示面のそれぞれに表示される虚像をより立体的に認識させることができる、ことをその要旨とする。
【0009】
本発明におけるヘッドアップディスプレイは、車両に搭載され、透過反射部に表示光を投影することで、仮想的な第一の虚像表示面上と第二の虚像表示面上とにそれぞれ虚像を表示可能なヘッドアップディスプレイであって、前記第一の虚像表示面に対応する第一の表示面を有し、前記第一の表示面から前記虚像を表示する第一の表示光を発する第一の画像表示部と、前記第二の虚像表示面に対応する第二の表示面を有し、前記第二の表示面から前記虚像を表示する第二の表示光を発する第二の画像表示部と、前記第一、第二の画像表示部が発する前記第一、第二の表示光を前記透過反射部に向けるリレー光学系と、少なくとも前記第一の表示面または前記リレー光学系のいずれかを回転させ、前記第一の虚像表示面が生成される実空間上における角度を調整可能なアクチュエータと、前記アクチュエータを制御し、前記第一の虚像表示面と前記第二の虚像表示面とのなす角度を変化させる制御部と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
立体表示に含まれる情報の差別化を容易にし、立体感のある表示ができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のヘッドアップディスプレイが生成する第一の虚像表示面と第二の虚像表示面の例を説明する図である。
図2】運転席から車両の前方を向いた場合の、実景と図1に示されるヘッドアップディスプレイが表示する虚像とが視認される様子の例を示す図である。
図3図1に示されるヘッドアップディスプレイの構成の例を示す図である。
図4図2に示される第一のスクリーンに第一の画像が表示された例を示す図である。
図5図2に示される制御部の構成の例を示す図である。
図6図2に示されるヘッドアップディスプレイの動作を説明するフローチャートである。
図7A図2に示されるヘッドアップディスプレイにより、車両のピッチ角が概ね路面に平行である場合の第一、第二の虚像表示面がなす角度の例を説明する図であり、(a)が車両のピッチ角の例を示し、(b)が反射部の角度の例を示し、(c)が第一、第二の虚像表示面の配置を示す図である。
図7B図2に示されるヘッドアップディスプレイにより、車両のピッチ角が鉛直方向の上側に向いた場合の第一、第二の虚像表示面がなす角度の例を説明する図であり、(a)が車両のピッチ角の例を示し、(b)が反射部の角度の例を示し、(c)が第一、第二の虚像表示面の配置を示す図である。
図7C図2に示されるヘッドアップディスプレイにより、車両のピッチ角が鉛直方向の下側に向いた場合の第一、第二の虚像表示面がなす角度の例を説明する図であり、(a)が車両のピッチ角の例を示し、(b)が反射部の角度の例を示し、(c)が第一、第二の虚像表示面の配置を示す図である。
図8A図2に示される第一の画像表示部の第一の表示面において、車両のピッチ角が概ね路面に平行である場合の使用領域の例を説明する図である。
図8B図2に示される第一の表示面において、車両のピッチ角が鉛直方向の上側に向いた場合の使用領域の例を説明する図である。
図8C図2に示される第一の表示面において車両のピッチ角が鉛直方向の下側に向いた場合の使用領域の例を説明する図である。
図9図2のヘッドアップディスプレイにおいて、車両の姿勢に応じた第一、第二の虚像表示面の配置を説明する図である。
図10】運転席から車両の前方を向いた場合の、実景と図2に示されるヘッドアップディスプレイの変形例が表示する虚像とが視認される様子の例を示す図である。
図11】従来のヘッドアップディスプレイにおいて、車両の姿勢に応じた第一、第二の虚像表示面の配置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に説明する実施形態は、本発明を容易に理解するために用いられ、当業者は、本発明が以下に説明される実施形態によって不当に限定されないことを留意すべきである。
【0013】
図1を参照して、本発明のヘッドアップディスプレイ(以下、HUDと記載)100が生成する仮想的な第一の虚像表示面310、第二の虚像表示面320について説明する。以下の説明を容易にするために、図1に示されるように、実空間において、例えば、車両1の前方を向いた左右方向をX軸(右方向がX軸正方向)に規定し、鉛直方向をY軸(鉛直方向上側がY軸正方向)に規定し、前後方向をZ軸(後方向がZ軸正方向)に規定する。
【0014】
図1に示すように、HUD100は、例えば、車両(移動体の一適用例)1のダッシュボード3内に収納される。例えばHUD100は、車両1のフロントウインドシールド(透過反射部の一例)2の一部に車両情報等を示す表示光200(第一の表示光210及び第二の表示光220)を投影する。フロントウインドシールド2は、第一の表示光210及び第二の表示光220を視認者側に向けて反射することで所定のアイボックス(図示しない)を生成する。視認者は、視点(視認者の眼の位置)4を前記アイボックス内におくことで、フロントウインドシールド2を介した前方に、HUD100が仮想的に生成した第一の虚像表示面310、第二の虚像表示面320上で第一の虚像311、第二の虚像321を視認することができる。
【0015】
図1に示される第一の虚像表示面310は、例えば、第一の虚像表示面310の中心と視点4とを結ぶ線を視線軸4aとすると、第一の虚像表示面310の中心から視認者側の表示領域と視線軸4aとのなす角310aが鋭角となるように設けられ、路面5の所定の範囲(図1の位置5aから5b)に亘って重畳して視認される第一の虚像311を表示する。具体的に例えば、第一の虚像表示面310は、図1の路面5(X−Z平面からなる水平方向)に平行であり、前記アイボックスから前方方向(車両1の進行方向)に20m離れた位置5aから50m離れた位置5bに亘って重なって視認されるように設けられる。なお、第一の虚像表示面310は、図1の路面5に平行となる角度から±5度程度傾いて設けられてもよい。
【0016】
また、図1に示される第二の虚像表示面320は、例えば、第二の虚像表示面320の中心と視点4とを結ぶ線を視線軸4bとすると、第二の虚像表示面320の中心から鉛直方向の下側の表示領域と視線軸4bとのなす角320aが、第一の虚像表示面310と視線軸4aとのなす角310aより大きくなるように設けられ、第二の虚像321を表示する。具体的に例えば、第二の虚像表示面320は、図1の車両1の進行方向に垂直な方向(X−Y平面)に概ね平行であり、前記アイボックスから前方方向(車両1の進行方向)の5m〜10m離れた位置に視認されるように設けられる。なお、第二の虚像表示面320は、図1の車両1の進行方向に垂直な方向(X−Y平面)に平行となる角度から±5度程度傾いて設けられてもよい。
【0017】
図2は、図1に示されるHUD100を備える車両1の運転席に座る視認者から見える風景及び第一の虚像311、第二の虚像321の例を示す図である。第一の虚像表示面310は、この表示面上に、例えば、車両1の経路を示す矢印などの第一の虚像311を実景(路面5)に重ねて視認させることで路面5に情報を付加し、第二の虚像表示面320は、この表示面上に、例えば、車両1の車速などの実景に直接関係しない第二の虚像321を表示する。
【0018】
図1の車両1には、車両1の姿勢を検出する車両姿勢検出部6が搭載されている。車両姿勢検出部6は、例えば、三軸加速度センサ(図示しない)と、前記三軸加速度センサが検出した三軸加速度を解析することで、水平面を基準とした車両1のピッチ角(車両姿勢)を推定し、車両1のピッチ角に関する情報を含む車両姿勢情報GをHUD100(制御部70)に出力する。なお、車両姿勢検出部6は、前述した三軸加速度センサ以外に、車両1のサスペンション近傍に配置されるハイトセンサ(図示しない)で構成されてもよい。このとき、車両姿勢検出部6は、前記ハイトセンサが検出する車両1の地面からの高さを解析することで、前述したように車両1のピッチ角を推定し、車両1のピッチ角に関する情報を含む車両姿勢情報GをHUD100(制御部70)に出力する。また、車両姿勢検出部6は、車両1の外部を撮像する撮像カメラ(図示しない)と、この撮像画像を解析する画像解析部(図示しない)から構成されてもよい。このとき、車両姿勢検出部6は、前記撮像画像に含まれる風景の時間変化から車両1のピッチ角(車両姿勢)を推定する。なお、車両姿勢検出部6が、車両1のピッチ角を求める方法は、前述した方法に限定されず、公知のセンサや解析方法を用いて車両1のピッチ角を求めてもよい。
【0019】
図3は、図1に示されるHUD100の構成の例を示す図である。
図1のHUD100は、例えば、第一の画像表示部10、第二の画像生成部20、反射部30、アクチュエータ40、表示合成部50、凹面ミラー60、及び制御部70を有する。HUD100は、一般的に車両1のダッシュボードの中に収納されるが、第一の画像表示部10、第二の画像生成部20、反射部30、アクチュエータ40、表示合成部50、凹面ミラー60及び制御部70の全部または一部がダッシュボードの外部に配置されてもよい。HUD100(制御部70)は、車両1に搭載される車載LAN(Local Area Network)などからなるバス7に接続され、このバス7から車両情報の一部又は全部を入力することができる。
【0020】
図3の第一の画像表示部10は、例えば、DMDやLCoSなどの反射型表示デバイスを用いたプロジェクタなどからなる第一の投影部11と、第一の投影部11からの投影光を受光して第一の画像14を表示し、この第一の画像14を示す第一の表示光210を反射部30に向けて出射する第一のスクリーン12と、から主に構成される。第一の画像表示部10は、後述する制御部70から入力する画像データDに基づき、第一のスクリーン(第一の表示面)12に第一の画像14を表示することで、視認者の前方に仮想的に生成される第一の虚像表示面310上に第一の虚像311を表示させる。
【0021】
図4は、図3に示される第一のスクリーン(第一の表示面)12を第一のスクリーン12と反射部30との間から視線軸4aに沿って視認した例の図である。以下の説明の理解を容易にするため、図4に示されるように、視線軸4aに沿った軸をdz軸と規定し、第一のスクリーン12の左右方向をdx軸(左方向をdx軸正方向)と規定し、第一のスクリーン12の上下方向をdy軸(下方向をdy軸正方向)と規定する。図2で示される視認者が車両1の運転席から視認する第一の虚像311のX軸方向の位置は、図4に示される第一のスクリーン12上に表示される第一の画像14のdx軸方向の位置に対応する。同様に、図2で示される視認者が車両1の運転席から視認する第一の虚像311のY軸方向の位置は、図4に示される第一のスクリーン12上に表示される第一の画像14のdy軸方向の位置に対応する。なお、HUD100内の光学部材(第一の画像表示部10、第二の画像生成部20、反射部30、アクチュエータ40、表示合成部50、凹面ミラー60)などの配置などにより、前述した実空間上のXYZ座標軸と、第一のスクリーン12の説明で用いるdxdydz座標軸との関係は、前述した限りではない。
【0022】
図3の第一のスクリーン12は、図4に示されるように、第一の画像14を表示可能な領域13を有する。第一のスクリーン12のうち、第一の画像14を表示可能な領域13を、例えば、第一の使用領域13という。第一の虚像表示面310は、第一の画像表示部10の第一の使用領域13に対応しており、第一の虚像表示面310の大きさや実空間上における第一の虚像表示面310が生成される位置は、第一のスクリーン12上の第一の使用領域13の大きさや第一のスクリーン12上における第一の使用領域13の位置に応じて調整することが可能である。なお、第一のスクリーン12の面は、例えば、第一のスクリーン12の第一の使用領域13の中心と視点4とを結ぶ線を視線軸4aとすると、この視線軸4aに対して所定の角度で傾いて配置される。
【0023】
図3の第二の画像生成部20は、前述の第一の画像表示部10と同様に、例えば、DMDやLCoSなどの反射型表示デバイスを用いたプロジェクタなどからなる第二の投影部21と、第二の投影部21からの投影光を受光して第二の画像24を表示し、この第二の画像24を示す第二の表示光220を後述する表示合成部50に向けて出射する第二のスクリーン22と、から主に構成される。第一の画像表示部10は、後述する制御部70から入力する画像データDに基づき、第二のスクリーン(第二の表示面)22に第二の画像24を表示することで、第二の虚像表示面320に第二の虚像321を表示させる。なお、第二のスクリーン22は、第二の画像24を表示可能な領域23を有する。第二のスクリーン22のうち、第二の画像24を表示可能な領域23を、例えば、第二の使用領域23という。第二の虚像表示面320は、第二の画像生成部20の第二の使用領域23に対応しており、第二の虚像表示面320の大きさや実空間上における第二の虚像表示面320が生成される位置は、第二のスクリーン22上の第二の使用領域23の大きさや第二のスクリーン22上における第二の使用領域23の位置に応じて調整することが可能である。なお、第二のスクリーン22の面は、例えば、第二のスクリーン22の第二の使用領域23の中心と視点4とを結ぶ線を視線軸4bとすると、この視線軸4bに対して所定の角度で傾いて配置される。
【0024】
図3の反射部(リレー光学系)30は、例えば、平板状の平面鏡で形成され、第一の画像表示部10から視点4に向かう第一の表示光210の光路上に傾いて配置され、第一の画像表示部10から出射された第一の表示光210を表示合成部50に向けて反射する。反射部30には、反射部30を回転させるアクチュエータ40が備えられている。なお、反射部30は、平面ではなく、曲面を有していてもよい。
【0025】
アクチュエータ40は、例えば、ステッピングモータやDCモータなどであり、後述する制御部70の制御のもと、後述する車両姿勢検出部6が検出する車両姿勢情報Gに基づいて反射部30を回転させることで第一の虚像表示面310の角度及び位置を調整する。
【0026】
図3の表示合成部(リレー光学系)50は、例えば、透光性の基板の一方の表面に金属反射膜あるいは誘電体多層膜などの半透過反射層を形成した平面のハーフミラーなどで構成される。表示合成部50は、反射部30により反射された第一の画像表示部10からの第一の表示光210を凹面ミラー60に向けて反射し、第二の画像生成部20からの第二の表示光220を凹面ミラー60側に透過する。表示合成部50の透過率は、例えば50%だが、適宜調整することで第一の虚像311、第二の虚像321の輝度を調整してもよい。
【0027】
図3の凹面ミラー60は、例えば、第一の画像表示部10及び第二の画像生成部20から視点4に向かう第一の表示光210及び第二の表示光220の光路上に傾いて配置され、第一の画像表示部10、第二の画像生成部20から出射された第一の表示光210、第二の表示光220を、フロントウインドシールド2に向けて反射する。また、前述した第一の画像表示部10の第一のスクリーン12及び第二の画像生成部20の第二のスクリーン22は、凹面ミラー60の焦点距離より凹面ミラー60側に配置される。なお、より詳細に述べると、第一の画像表示部10の第一のスクリーン12及び第二の画像生成部20は、凹面ミラー60とフロントウインドシールド(透過反射部)2との光学特性を組み合わせた際の焦点距離よりも凹面ミラー60側に配置される。これにより、第一のスクリーン12及び第二のスクリーン22に表示される第一の画像14及び第二の画像24が、第一の虚像311及び第二の虚像321として表示される。また、前述した第一の画像表示部10の第一のスクリーン(第一の表示面)12から凹面ミラー60までの第一の表示光210の光路長は、第二の画像生成部20の第二のスクリーン(第二の表示面)22から凹面ミラー60までの第二の表示光220の光路長より長くなるように配置され、これにより、第一の画像表示部10により生成される第一の虚像311は、第二の画像生成部20により生成される第二の虚像321より前記アイボックスから離れた位置に結像される。なお、凹面ミラー60は、典型的には、第一の画像表示部10及び第二の画像生成部20が生成する第一の表示光210及び第二の表示光220をフロントウインドシールド(透過反射部)2と協働して拡大する機能、フロントウインドシールド2の曲面により生ずる第一の虚像311、第二の虚像321の歪みを補正し、歪みのない虚像を視認させる機能、第一の虚像311、第二の虚像321を視認者から所定の距離だけ離れた位置で結像させる機能を有する。
【0028】
図5は、図3の制御部70の概略構成例を示す。図5に示されるように、制御部70は、例えば、処理部71、記憶部72及びインターフェース73を含む。処理部71は、例えばCPUやRAMで構成され、記憶部72は、例えばROMで構成され、インターフェース73は、バス7に接続される入出力通信インターフェースで構成される。例えば、インターフェース73は、バス7を介して車両情報や後述する車両姿勢情報G等を取得することができ、記憶部72は、入力した車両情報等に基づいて画像データDを生成するためのデータ、及び入力した車両姿勢情報Gに基づいて駆動データTを生成するためのデータを記憶することができ、処理部71は、記憶部72からのデータを読み取り、所定の動作を実行することで画像データD及び駆動データTを生成することができる。なお、インターフェース73は、例えば、バス7を介して車両姿勢検出部6から車両1の姿勢に関する情報を含む車両姿勢情報Gを取得することができ、本発明の請求項に記載の車両姿勢情報取得手段としての機能も有する。なお、制御部70は、HUD100の内部にあってもよく、その一部または全部の機能がHUD100の外側の車両1側に設けられてもよい。
【0029】
図6は、本実施形態のHUD100の動作の例を示すフローチャートである。HUD100は、例えば、車両1が起動されたとき、又は、車両1の電子機器に電力が供給されたとき、又は、車両1の起動または車両1の電子機器の電力供給から所定時間経過したときに以下に説明する処理を開始する。
【0030】
ステップS01では、制御部70は、車両姿勢検出部6から車両1の車両姿勢に関する情報を含む車両姿勢情報Gを取得する。
【0031】
ステップS02では、制御部70が、ステップS01で取得した車両姿勢情報Gに対応するアクチュエータ40の駆動量を含む駆動データTを決定する。具体的には、制御部70は、記憶部72に予め記憶されたテーブルデータを読み出し、ステップS01で取得した車両姿勢情報Gに対応する駆動データTを決定する。なお、ステップS02で、制御部70は、車両姿勢情報Gから駆動データTを予め設定された算出式を用いて演算により求めてもよい。
【0032】
ステップS03では、制御部70は、ステップS02で決定した駆動データTに基づいてアクチュエータ40を駆動する。制御部70は、アクチュエータ40を駆動し、第一の画像表示部10が出射する第一の表示光210の光路上に位置する反射部30を回転させることで、第二の虚像表示面320に対する第一の画像表示部10の相対的な角度330を変化させる。具体的に例えば、制御部70は、車両1の車両姿勢が変化した場合であっても第一の虚像表示面310が路面5に平行となるようにアクチュエータ40を制御し、反射部30を回転させてもよい。
【0033】
図7A図7B図7Cは、本実施形態のHUD100が生成する第一の虚像表示面310と第二の虚像表示面320とがなす角度330を変化させる様子を示した図である。図7A図7B図7Cにおける(a)は、車両1のピッチ角がXZ平面からなる路面5に対してどの程度傾いているかのピッチ角(車両姿勢)を示した図であり、(b)は、(a)に示される車両姿勢に基づいて反射部30をどのように回転させるかを示した図であり、(c)は、(a)に示される車両姿勢に基づいて第一の虚像表示面310と第二の虚像表示面320とのなす角度330を示す図である。
【0034】
図7Aは、車両1が路面5に対して平行である車両姿勢1rの場合の第一の虚像表示面310と第二の虚像表示面320とがなす角度330を示す図である。図7Aの(a)に示されるように、車両1が路面5に対して平行である車両姿勢1rの場合、反射部30は、例えば、図6に示されるステップS02で決定された駆動データTに基づいた図7Aの(b)に示される角度30rとなり、第一の虚像表示面310は、例えば、図7Aの(c)に示されるように路面5に対して概ね平行となるように調整され、第一の虚像表示面310と第二の虚像表示面320とがなす角度330は、概ね90度の角度330rとなる。図7Aの(a)に示される車両1が路面5に対して平行である車両姿勢1rを、以下では、基準車両姿勢1rとも呼ぶ。また、図7Aの(b)に示される反射部30の角度30rを基準角度30rとも呼ぶ。また、図7Aの(c)に示されるような第一の虚像表示面310と第二の虚像表示面320とがなす角度330rを、以下では、基準角度330rとも呼ぶ。
【0035】
図7Bは、車両1の前方が鉛直方向の上側に傾いた場合の第一の虚像表示面310と第二の虚像表示面320とがなす角度330を示す図である。図7Bの(a)に示されるように、車両1の前方が基準車両姿勢1rよりも鉛直方向の上側に傾いた車両姿勢1uの場合、反射部30は、例えば、図6に示されるステップS02で決定された駆動データTに基づいて、図7Bの(b)に示されるように、基準角度30rに対して時計回り(CW方向)に回転した角度30uとなり、第一の虚像表示面310は、例えば、図7Bの(c)に示されるように路面5に対して概ね平行となるように調整され、第一の虚像表示面310と第二の虚像表示面320とがなす角度330は、基準角度330rより大きい角度330uとなる。
【0036】
図7Cは、車両1の前方が鉛直方向の下側に傾いた場合の第一の虚像表示面310と第二の虚像表示面320とがなす角度330を示す図である。図7Cの(a)に示されるように、車両1の前方が基準車両姿勢1rよりも鉛直方向の下側に傾いた車両姿勢1dの場合、反射部30は、例えば、図6に示されるステップS02で決定された駆動データTに基づいて、図7Cの(b)に示されるように、基準角度30rに対して反時計回り(CCW方向)に回転した角度30dとなり、第一の虚像表示面310は、例えば、図7C(c)に示されるように路面5に対して概ね平行となるように調整され、第一の虚像表示面310と第二の虚像表示面320とがなす角度330は、基準角度330rより小さい角度330dとなる。
【0037】
ここで、図7A(c)、図7B(c)、図7C(c)を参照すると、第一の虚像表示面310と第二の虚像表示面320とのなす角度330が、車両1の車両姿勢に応じて変化している。図7A図7B図7Cに示される例のように、例えば、車両1の前方が鉛直方向の上側にいくにつれて、第一の虚像表示面310と第二の虚像表示面320とがなす角度330が大きくなる。その一方で、例えば、車両1の前方が鉛直方向の下側にいくにつれて、第一の虚像表示面310と第二の虚像表示面320とがなす角度330が大きくなる。
【0038】
その結果、車両1の車両姿勢に基づいて、第一の虚像表示面310と第二の虚像表示面320とがなす角度330が変化するため、視認する虚像のうちどれが第一の虚像表示面310または第二の虚像表示面320に表示された情報であるか視認者に認識させることができるため、第一の虚像表示面310、第二の虚像表示面320のそれぞれに表示される第一の虚像311、第二の虚像321とをより立体的に認識させることができる。
【0039】
また、本実施形態のHUD100において、第一の虚像表示面310は、第二の虚像表示面320より水平方向に傾いて生成され、アクチュエータ40の駆動により、実景に対する角度が調整される。水平方向に傾いた虚像表示面(第一の虚像表示面310)の実景に対する角度調整は、鉛直方向に傾いた虚像表示面(第一の虚像表示面310)の実景に対する角度調整よりも、虚像表示面の一定の角度変化に対する視認者に与える印象が大きい。したがって、水平方向に傾いた虚像表示面(第一の虚像表示面310)を角度調整することにより、第一の虚像表示面310に表示される第一の虚像311と、第二の虚像表示面320に表示される第二の虚像321と、を区別しやすくなり、第一の虚像表示面310、第二の虚像表示面320のそれぞれに表示される第一の虚像311、第二の虚像321とをより立体的に認識させることができる。
【0040】
これより、本発明の実施形態の変形例を説明する。以上の説明では、第一の表示光210と第二の表示光220とを同じ方向に向ける表示合成部50までの第一の表示光210の光路上に位置する反射部30をアクチュエータ40により回転させることで、第一の虚像表示面310と第二の虚像表示面320とがなす角度330を変化させたが、表示合成部50をアクチュエータ40により回転させてもよい。この場合においても、前述した反射部30を回転させるものと同様に、第二の虚像表示面320の角度を調整させずに、実景に対する第一の虚像表示面310の角度のみを調整することができる。
【0041】
なお、反射部30または表示合成部50を回転させることで、実景に対する第一の虚像表示面310の角度を調整した場合、図2に示す視認者が運転席から見る第一の虚像表示面310の鉛直方向の実景に対する相対位置が変化してしまう。図8A図8B図8Cは、車両1の姿勢変化に基づいて反射部30または表示合成部50を回転させることで実景に対する第一の虚像表示面310の鉛直方向の位置が変化してしまう問題に対応したHUD100の第一の画像表示部10の動作を説明する図であり、第一のスクリーン12上の第一の使用領域13の位置及び第一の使用領域13の大きさの変化を示す図である。図9は、図8A図8B図8Cに示される第一の画像表示部10により生成される第一の虚像表示面310(第一の虚像表示面310r、第一の虚像表示面310u、第一の虚像表示面310d)を示した図である。
【0042】
制御部70は、車両1のピッチ角に基づいて、第一の画像表示部10を制御することで、第一のスクリーン12上で第一の画像14を表示可能な第一の使用領域13の位置及び大きさを変化させることが可能である。以下に車両1のピッチ角と第一のスクリーン12上の第一の使用領域13の位置及び大きさとの関係について説明する。
【0043】
図8Aは、車両1の路面5に対するピッチ角が概ね平行である場合の第一のスクリーン12上の第一の使用領域13を表している。例えば、車両姿勢検出部6から取得される車両姿勢情報Gが、車両1の路面5に対するピッチ角が概ね平行であることを示すとき、第一の画像表示部10は、第一のスクリーン12における第一の使用領域13の位置を図8Aに示される第一の使用領域13rに決定する。以下、図8Aに示される、両1の路面5に対するピッチ角が概ね平行である場合の第一の使用領域13rを第一の基準使用領域13rとも呼ぶ。HUD100は、第一の画像表示部10の第一の基準使用領域13rに対応した図9に示される第一の虚像表示面310rを生成する。
【0044】
図8Bは、車両1のピッチ角が路面5よりも鉛直方向の上側に向いた場合の第一のスクリーン12上の第一の使用領域13を表している。例えば、車両姿勢検出部6から取得される車両姿勢情報Gが、車両1のピッチ角が路面5よりも鉛直方向の上側に向いたことを示すとき、第一の画像表示部10は、第一のスクリーン12における第一の使用領域13の位置を、図8Bに示される第一の使用領域13uに決定する。
【0045】
図8Bに示される第一の使用領域13uは、第一の基準使用領域13rと比較して、dy軸正方向側に位置する。また、図8Bに示される第一の使用領域13uにおけるIy軸方向の長さ131uは、第一の基準使用領域13rにおけるIy軸方向の長さ13rと比較して、短くなっている。その結果、図9に示されるように、第一の使用領域13uに対応する第一の虚像領域310uは、第一の基準使用領域13rに対応する第一の基準虚像表示面310rと比較して、実空間上の鉛直方向上側(Y軸正方向)かつ車両1の進行方向の後側(Z軸正方向)に位置し、且つ、実空間上の車両1の進行方向における長さが短くなる。
【0046】
すなわち、車両姿勢検出部6によって検出された車両姿勢情報Gに基づき、車両1のピッチ角が鉛直方向上側にいくにつれて、第一のスクリーン12の第一の使用領域13の位置がdy軸正方向側に位置するように決定される。また、車両姿勢検出部6によって検出された車両姿勢情報Gに基づき、車両1のピッチ角が鉛直方向上側にいくにつれて、第一のスクリーン12の第一の使用領域13のdy軸方向の長さが短くなるように決定される。その結果、車両1のピッチ角が鉛直方向上側にいくにつれて、第一の虚像表示面310は、実空間上の鉛直方向上側に位置し、且つ、実空間上の鉛直方向の長さが短くなる。
【0047】
図8Cは、車両1のピッチ角が路面5よりも鉛直方向の下側に向いた場合の第一のスクリーン12上の第一の使用領域13を表している。例えば、車両姿勢検出部6から取得される車両姿勢情報Gが、車両1のピッチ角が路面5よりも鉛直方向の下側に向いたことを示すとき、第一の画像表示部10は、第一のスクリーン12における第一の使用領域13の位置を、図8Cに示される第一の使用領域13dに決定する。
【0048】
図8Cに示される第一の使用領域13dは、第一の基準使用領域13rと比較して、dy軸負方向側に位置する。また、図8Bに示される第一の使用領域13uにおけるIy軸方向の長さ131dは、第一の基準使用領域13rにおけるIy軸方向の長さ13rと比較して、長くなっている。その結果、図9に示されるように、第一の使用領域13dに対応する第一の虚像領域310dは、第一の基準使用領域13rに対応する第一の基準虚像表示面310rと比較して、実空間上の鉛直方向下側(Y軸負方向)かつ車両1の進行方向の前側(Z軸負方向)に位置し、且つ、実空間上の車両1の進行方向における長さが長くなる。
【0049】
すなわち、車両姿勢検出部6によって検出された車両姿勢情報Gに基づき、車両1のピッチ角が鉛直方向下側にいくにつれて、第一のスクリーン12の第一の使用領域13の位置がdy軸負方向側に位置するように決定される。また、車両姿勢検出部6によって検出された車両姿勢情報Gに基づき、車両1のピッチ角が鉛直方向下側にいくにつれて、第一のスクリーン12の第一の使用領域13のdy軸方向の長さが長くなるように決定される。その結果、車両1のピッチ角が鉛直方向下側にいくにつれて、第一の虚像表示面310は、実空間上の鉛直方向下側に位置し、且つ、実空間上の車両1の進行方向における長さが長くなる。
【0050】
以上に説明したように、車両1のピッチ角(車両姿勢)の変化に応じて、反射部30を回転させ、第一の画像表示部10の第一の使用領域13の位置及びdy軸の長さを調整することで、車両1のピッチ角(車両姿勢)の変化の前後において、第一の虚像表示面310と路面5とがなす角度が保持され、且つ、第一の虚像表示面310が重畳する路面5の位置5a〜5bが一定に保たれる。他方、第二の虚像表示面320は、車両1のピッチ角(車両姿勢)の変化の前後において、第一の虚像表示面310及び路面5とのなす角度や位置が変化する。したがって、第一の虚像表示面310に表示される第一の虚像311と、第二の虚像表示面320に表示される第二の虚像321と、を区別しやすくなり、第一の虚像表示面310、第二の虚像表示面320のそれぞれに表示される第一の虚像311、第二の虚像321とをより立体的に認識させることができる。
【0051】
なお、第一の虚像表示面310と第二の虚像表示面320とがなす角度330の調整は、前述した車両1の車両姿勢の変化を契機とする以外に、車両1側から所定の信号を入力したこと、または車両1の外部から所定の情報を入力したこと、または、第一の虚像表示面310、第二の虚像表示面320の表示内容を切り替えたことなどを契機としてもよい。具体的に例えば、車両1に異常が発生したり、車外ネットワークからお勧めの経路が入力されたりした場合に、第一の虚像表示面310と第二の虚像表示面320とがなす角度330を変化させることで、第一の虚像表示面310に表示される第一の虚像311と、第二の虚像表示面320に表示される第二の虚像321と、を区別しやすくなり、第一の虚像表示面310、第二の虚像表示面320のそれぞれに表示される第一の虚像311、第二の虚像321とをより立体的に認識させることができ、視認者に対して情報をより印象深く伝達することが可能である。
【0052】
また、本発明のHUD100は、第一の画像表示部10の表示面(第一のスクリーン12)をアクチュエータ40で回転させることで、第一の虚像表示面310と第二の虚像表示面320とのなす角度330を変化させてもよい。
【0053】
なお、アクチュエータ40は、反射部30、表示合成部50、第一の画像表示部10の表示面(第一のスクリーン12)の中心を回転軸AXとする必要はなく、それぞれの光学部材の所定の位置(端部を含む)を回転軸AXとしてもよい。また、それぞれの光学部材と離間した位置に回転軸AXを設けてもよい。
【0054】
図10は、運転席から車両1の前方を向いた場合の、実景と図2に示されるHUD100の変形例が表示する第一の虚像311、第二の虚像321とが視認される様子の例を示す図である。本発明のHUD100は、図10に示されるように、第一の画像表示部10が生成する第一の虚像表示面310と、第二の画像生成部20が生成する第二の虚像表示面320とが離間して視認されるようにしてもよい。具体的に例えば、この変形例におけるHUD100は、第一の画像表示部10から第一の表示光210が入射する表示合成部50上の領域と、第二の画像表示部20から第二の表示光220が入射する表示合成部50上の領域と、を離間させることで構成されていてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、第一の虚像表示面310を生成する第一の画像表示部10と、第二の虚像表示面320を生成する第二の画像生成部20とを設けていたが、画像表示部が単体であってもよい。この変形例におけるHUD100は、単体の投影部(図示しない)からの投影光を複数のスクリーン(表示面)(図示しない)に投影し、一方の前記スクリーンをアクチュエータで回転させることで、第一の虚像表示面310と第二の虚像表示面320とのなす角度330を調整してもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、第一の虚像表示面310の実景に対する角度を調整することで、第一の虚像表示面310と第二の虚像表示面320とのなす角度330を調整していたが、第一の虚像表示面310と第二の虚像表示面320との双方の実景に対する角度をそれぞれ調整し、角度調整量を異ならせることで、第一の虚像表示面310と第二の虚像表示面320とのなす角度330を調整してもよい。
【0057】
また、第一の画像表示部10は、例えば、液晶表示素子などの透過型表示パネルや、有機EL素子などの自発光表示パネルや、レーザー光を走査する走査型表示装置などを適用してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…車両、2…フロントウインドシールド(透過反射部)、3…ダッシュボード、4…視点、5…路面5、6…車両姿勢検出部、7…バス、10…第一の画像表示部、20…第二の画像生成部、30…反射部(リレー光学系)、40…アクチュエータ、50…表示合成部(リレー光学系)、60…凹面ミラー、70…制御部、71…処理部、72…記憶部、73…インターフェース(車両姿勢情報取得手段)、100…HUD(ヘッドアップディスプレイ)、200…表示光、210…第一の表示光、220…第二の表示光、310…第一の虚像表示面、311…第一の虚像、320…第二の虚像表示面、321…第二の虚像、330…角度、AX…回転軸、D…画像データ、G…車両姿勢情報


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11