(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記羽根車の回転軸方向視で、前記投射機による投射材の投出位置と、前記加工位置に配置されたワークの前記投射機に向く面の両端との成す角度が30°以内となるワークの表面加工用とされ、
前記後傾部は、前記羽根車の径方向に対して回転方向後方側に30°〜50°傾斜している、
請求項1又は2に記載のショット処理装置。
前記投射機は、前記羽根車のブレードが、羽根車の回転中心線の方向に見て、装置上方側、前記加工ゾーンの側、装置下方側の順に移動するように羽根車の回転方向が設定されている、
請求項11に記載のショット処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、投射材をワークに対して有効に投射して投射材の使用量を減少させたいという要請があった。
【0006】
本発明は、上記要請を考慮して、投射材の使用量を抑制することができるショット処理装置、投射機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
ワークに投射材を投射する遠心式の投射機と、前記投射機による表面加工が可能な加工位置でワークを支持する支持機構とを備えたショット処理装置であって、
前記投射機が、円筒形状を有し、内部に投射材が供給され、側壁に前記投射材の排出口となる開口が形成されたコントロールケージと、
前記コントロールケージの外方で前記コントロールケージの径方向外方に延びるように配置された複数のブレードを備え前記コントロールケージの中心軸線を中心に回転する羽根車であって、前記ブレードには回転方向前方側の表面に回転方向後方側に傾斜した後傾部が設けられている、羽根車と、を備えている、
ことを特徴とするショット処理装置が提供される。
【0008】
このような構成によれば、羽根車のブレードの表面には、羽根車の回転方向後方側に傾斜した後傾部が形成されている。
このため、コントロールケージの開口から先に排出された投射材がブレードの表面に接触する前に、コントロールケージの開口から後に排出された投射材がブレードの表面に接触してブレードの先端側へ向けて加速される。
これにより、先に排出された投射材がブレードの表面に接触する時点では、後から排出された投射材と先に排出された投射材とがブレードの表面の隣接した位置に集められる。そして、ブレードの表面の隣接した位置に集められた投射材が投射されるので、投射分布を集中させることができ、ワークに対する無駄な投射を抑えることができる。
【0009】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記開口は、二辺が前記コントロールケージの円筒軸心に平行な矩形形状を備えている。
【0010】
このような構成によれば、ワークに投射材を集中的に投射することができる。
【0011】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記羽根車の回転軸方向視で、前記投射機による投射材の投出位置と、前記加工位置に配置されたワークの前記投射機に向く面の両端との成す角度が30°以内となるワークの表面加工用とされ、
前記後傾部は、前記羽根車の径方向に対して回転方向後方側に30°〜50°傾斜している。
【0012】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記後傾部は、前記ブレードの基端部側に形成され、
前記ブレードの先端部側には、前記後傾部より回転方向後方側への傾斜角が小さな非後傾部が形成されている。
【0013】
このような構成によれば、後傾部がブレードの基端部側に形成され、ブレードの先端部側に非後傾部が形成されているので、後傾部で集中された投射材を非後傾部で加速して投射することができる。
【0014】
尚、本明細書では、「後傾部より回転方向後方側への傾斜角が小さな」とは、その傾斜角が、後傾部の回転方向後方側への傾斜角より小さい場合の他、径方向に延びる構成、および回転方向前方側に傾斜している構成も包含する。
【0015】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記羽根車は、駆動モータの回転軸にハブを介して取り付けられている。
【0016】
このような構成によれば、羽根車は、駆動モータの回転軸にハブを介して取り付けられているので、ベルトを介して駆動モータに接続されている場合と比べて装置全体を小型化できる。
【0017】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記後傾部の径方向長さが前記非後傾部の径方向長さよりも長く設定されている。
【0018】
このような構成によれば、ブレードの後傾部で投射材を十分に集めてから非後傾部で投射材を加速して投射することができる。
【0019】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記後傾部と前記非後傾部とをなだらかに繋ぐ湾曲部が設けられている。
【0020】
このような構成によれば、ブレードの後傾部で投射材を集めた後、投射材の速度を湾曲部及び非後傾部で徐々に増加させ、投射することができる。
【0021】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記コントロールケージの内側に配置され前記羽根車の回転方向と同じ方向に回転するディストリビュータを更に備え、
前記ディストリビュータが回転することで、前記コントロールケージの内側に供給された投射材が、前記ディストリビュータとコントロールケージとの間の間隙中を前記ディストリビュータの内周面に沿って移動し、前記コントロールケージの開口からの前記投射材の排出方向が前記羽根車の回転中心からの径方向に対して前記羽根車の回転方向前方側に傾く。
【0022】
このような構成によれば、前記コントロールケージの開口からの前記投射材の排出方向が前記羽根車の回転中心からの径方向に対して前記羽根車の回転方向前方側に傾くので、コントロールケージの開口から先に排出された投射材がブレードの表面に接触するタイミングを遅らせ、ブレードの表面の後傾部に投射材を集中させることができる。
【0023】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記ブレードの前記羽根車の回転方向後方側の表面は、基端部に、径方向に対して傾斜部より大きく回転方向後方側に傾斜した傾斜部を備えている。
【0024】
このような構成によれば、開口から排出された投射材が、ブレードの裏面の基端部に当たって反射した場合、隣接したブレードに向かう投射材の量を抑えることができる。このため、ブレード同士の間における投射材の流動の乱れを抑えることができる。
【0025】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記ワークが搬入出される搬入出ゾーンを内部の上方位置に、前記投射機により投射された投射材によって前記ワークの表面加工を施す加工ゾーンを内部の下方位置に、それぞれ有しているキャビネットと、
前記支持機構を構成し、前記ワークを支持しながら前記ワークを前記搬入出ゾーンと前記加工ゾーンとの間で昇降させ且つ該昇降方向を中心に回転可能な昇降回転機構と、を備えている。
【0026】
このような構成によれば、複数のワークを積み重ねて昇降回転機構に支持させれば、複数のワークの全周を加工することができる。
【0027】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記搬入出ゾーンの上端側の位置する第一位置と、前記搬入出ゾーンと前記加工ゾーンとの間に位置する第二位置との間で昇降可能な内蓋と、
前記ワークを前記搬入出ゾーンに搬入出するとき前記内蓋を前記第一位置に配置し、前記ワークが前記加工ゾーンに配置されたとき前記内蓋を前記第二位置に配置するように、前記内蓋を昇降させる昇降機構と、を備えている。
【0028】
このような構成によれば、ワークが加工ゾーンに配置された状態で投射機がワークの側へ向けて投射材を投射しても、搬入出ゾーンの側への投射材の漏れ出しが内蓋によって阻止される。
【0029】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記昇降回転機構は、前記内蓋を貫通可能であり前記ワークを上方側から押さえて該ワークと共に前記昇降方向を中心に回転可能な押さえ部を有している。
【0030】
上記構成によれば、ワークを複数個、積み重ねたときでも、ワークを昇降の方向の軸回りに安定的に回転させることができる。
【0031】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記搬入出ゾーンの側方側の側壁側にワーク検査装置をさらに備え、
該ワーク検査装置は、
前記昇降回転機構に支持されたワークに対して前記内蓋及び前記押さえ部が装置上方側に離間して配置されたとき、前記ワークと前記内蓋及び押さえ部との間に側方側から挿入可能な退避位置と、
前記退避位置の側方側の位置であって前記ワークの側面を包囲する検査位置と、の間で移動可能に支持されている。
【0032】
このような構成によれば、ワークに投射材が投射された後であってワークをキャビネットから搬出する前に、ワークの側部の状態を非破壊検査することができる。
【0033】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記投射機は、前記加工ゾーンの側方側において前記キャビネットの側壁部に配置されている。
【0034】
このような構成によれば、投射機よりも上方側に投射材供給部等を配置しても装置全体の高さを抑えることができる。
【0035】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記投射機は、前記羽根車のブレードが、羽根車の回転中心線の方向に見て、装置上方側、前記加工ゾーンの側、装置下方側の順に移動するように羽根車の回転方向が設定されている。
【0036】
このような構成によれば、上方側への投射材の漏れ出しが抑えられる。
【0037】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記投射機によって投射された投射材を前記投射機へ循環させる循環機構をさらに備え、
前記循環機構は、
上部に入口を有し該入口から供給された投射材及び粉塵から粉塵を分離除去して投射材を下部側に排出するセパレータと、
上部において前記セパレータの前記入口と隣接するショット供給口を有し該ショット供給口に供給された投射材を前記投射機への供給用として貯留するショットタンクと、
前記投射材及び粉塵を下部側から上部側へ搬送し前記セパレータの入口に供給する第一列搬送部と、前記第一列搬送部と並列に設けられ前記セパレータから排出された投射材を下部側から上部側へ搬送して前記ショットタンクのショット供給口に供給する第二列搬送部とを有する搬送機構と、を備えている。
【0038】
このような構成によれば、ショットタンクのショット供給口がセパレータの入口に隣接して設けられ、ショットタンクの上方側にセパレータを配置していないので、装置全体の高さを抑えることができる。
【0039】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記搬送機構は、
前記第一列搬送部及び前記第二列搬送部を駆動する共通のモータと、
前記モータによって回転駆動される単一の無端ベルトと、
前記無端ベルトに取付けられ前記第一列搬送部を構成する複数の第一バケットと、
前記無端ベルトに前記第一バケットと並列して取付けられ前記第二列搬送部を構成する複数の第二バケットと、を有しているバケットエレベータと、備えている。
【0040】
このような構成によれば、共通のモータ及び単一の無端ベルトが用いられているので、部品点数を減らせると共に、装置を小型化することができる。
【0041】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記無端ベルトの下部に近接して前記第一列搬送部と前記第二列搬送部とを仕切る仕切部をさらに備えている。
【0042】
このような構成によれば、セパレータで粉塵が分離除去される前の混合物(投射材及び粉塵)と、セパレータで粉塵が分離除去された後の投射材と、が混ざってしまうのを防止することができる。
【0043】
本発明の他の態様によれば、
投射材をワークに対して投射する遠心式の投射機であって、
円筒形状を有し、内部に投射材が供給され外周壁には投射材の排出部として開口が形成され、前記開口は前記円筒形状の軸心に平行な二辺を含む矩形形状を有しているコントロールケージと、
前記コントロールケージの径方向外方位置に配置され前記コントロールケージの周方向に回転する複数のブレードを備え、前記ブレードの回転方向前方側の表面に回転方向後方側に傾斜した後傾部が設けられている羽根車と、を備えている、
ことを特徴とする投射機が提供される。
【0044】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記羽根車の回転軸方向視で、前記投射機による投射材の投出位置と、前記加工位置に配置されたワークの前記投射機に向く面の両端との成す角度が30°以内となるワークの表面加工用とされ、
前記後傾部は、前記羽根車の径方向に対して回転方向後方側に30°〜50°傾斜している。
【0045】
本発明の他の態様によれば、
ショット処理装置に設置されて羽根車の回転により投射材を投射する遠心式の投射機であって、
前記羽根車の回転軸方向視で、前記投射機による投射材の投出位置と、加工位置に配置されたワークの前記投射機に向く面の両端との成す角度が50°〜80°以内となるワークの表面加工用とされ、
円筒形状を有し、内部に投射材が供給され外周壁には投射材の排出部として開口が形成され、前記開口は前記円筒形状の軸心に平行な二辺を含む矩形形状を有しているコントロールケージと、
前記コントロールケージの径方向外方位置に配置され前記コントロールケージの周方向に回転する複数のブレードを備え、前記ブレードの回転方向前方側の表面に回転方向後方側に傾斜した後傾部が設けられている羽根車と、を備え、
前記開口は、
前記コントロールケージの軸心に平行な二辺を含む矩形形状を有している第一貫通部と、
前記コントロールケージの軸心に平行かつ互いに対向する第二の平行な二辺を含む矩形形状を有し、前記第一貫通部に対し前記コントロールケージの周方向にオフセットしている第二貫通部と、を備え、
前記第一貫通部と前記第二貫通部とは、前記コントロールケージの円筒軸心の方向に各々の略半分がオーバーラップしている、
ことを特徴とする投射機が提供される。
【0046】
このような構成によれば、コントロールケージの開口から先に排出された投射材がブレードの表面に接触する前に、コントロールケージの開口から後に排出された投射材がブレードの表面に接触してブレードの先端側へ向けて加速される。これにより、先に排出された投射材がブレードの表面に接触する時点では、後から排出された投射材と先に排出された投射材とがブレードの表面の近い位置に集められる。これにより、投射材を集中的に投射することができる。
【0047】
また、第一貫通部及び第二貫通部からそれぞれ排出される投射材は、コントロールケージの周方向においてずれた位置から排出されるので、全体としての投射分布は、第一貫通部から排出された投射材の投射分布と、第二貫通部から排出された投射材の投射分布とが合成されたものとなる。
【0048】
ここで、第一貫通部と第二貫通部とは、コントロールケージの円筒軸心方向において略半分がオーバーラップしているので、第一貫通部及び第二貫通部からそれぞれ排出された投射材の各投射分布も、各々の分布幅の略半分の範囲で重なる。このため、全体の投射分布としては、投射割合が高い範囲(投射の集中化が図られた範囲)が広げられる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、投射材の投射量を抑制することができるショット処理装置、投射機が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0051】
[第1の実施形態]
図1〜
図23に沿って、本発明のショット処理装置の第1の実施形態であるショットブラスト装置10について説明する。なお、これらの図において、矢印FRは装置正面視の手前側を示しており、矢印UPは装置上方側を示しており、矢印LHは装置正面視の左側を示している。
【0052】
図1は、ショットブラスト装置10の右側面図であり、
図2は、ショットブラスト装置10の正面図である。
図1に示されるように、ショットブラスト装置10は、箱状に形成されたキャビネット12を備えている。
図2に示されるように、キャビネット12の正面側上部には、搬入出口14が形成されている。
【0053】
図5(B)は、ショットブラスト装置10のキャビネット12の内部を装置正面側から見た概略的な構成図である。
図5(B)に示されるキャビネット12の内部空間の上部は、ワークWが搬入出される搬入出ゾーン16とされている。これに対して、キャビネット12の内部空間の下部は、ワークWに表面加工を施す加工ゾーン18とされている。
【0054】
図5(A)は、キャビネット12を含むショットブラスト装置10の一部の左側面図である。
図5に示されるように、加工ゾーン18(
図5(B))の側方にはキャビネット12の側壁部12Aに遠心式の投射機20が設置されている。投射機20は、
図5(B)に示されるワークWに対して投射材を投射可能であり(
図23)、ワークWの表面加工は、投射機20から投射された投射材によって行われる。なお、投射機20の詳細は、後述する。
【0055】
キャビネット12には、昇降回転機構22が設けられている。昇降回転機構22は、投射機20による表面加工が可能な位置である加工位置(
図22及び
図23)でワークWを支持する支持機構を構成し、ワークWを支持しながらワークWを搬入出ゾーン16と加工ゾーン18との間で昇降させ、上下方向に延びる軸線を中心に回転可能させることができるように構成されている。
【0056】
昇降回転機構22は、ワークWを受けるワーク受け部24を備えている。本実施形態では、ワークWは、複数枚(例えば5枚)の積み重ねられたギヤによって構成されている。これらのギヤの中心穴にはシャフト(図示せず)が上下方向に貫通し、シャフトの上端部にはキャップ23が嵌合されている。また、キャップ23の下端面は、最上段のギヤの上面に当接する。また、キャップ23が、上下方向に延びる軸線を中心に回転可能に押さえられた状態では、キャップ23とワークWとは、上下方向に延びる軸線を中心に一体的に回転可能とされている。ワーク受け部24は、駆動力伝達機構26を介してモータ28に接続され、モータ28の作動によって上下方向に延びる軸線を中心に回転可能とされている。
【0057】
モータ28は、モータ保持部30Aに固定され、モータ保持部30Aの上端部は、連結部30Bを介して逆L字状のブラケット32Aに連結されている。
図5(A)に示されるように、ブラケット32Aは、上下方向に延びる一対のガイド軸32Bに沿って昇降可能とされている。ブラケット32Aの装置左側(
図5(A)の手前側)には、昇降部材32Sが固定されている。昇降部材32Sは、一対のガイド軸32Bの間において装置上下方向に延びるボールネジ32Cに螺合されている。ボールネジ32Cは、昇降サーボモータ32Mに接続されている。昇降サーボモータ32Mの回転を上下方向の直線運動に変換すること、すなわち、昇降サーボモータ32Mの正転逆転に応じて昇降部材32Sを昇降させることが可能になっている。
このように、昇降サーボモータ32M、ボールネジ32C、昇降部材32S、ブラケット32A、及びガイド軸32Bが、昇降用のジャッキ32を構成している。昇降サーボモータ32Mは制御部25に接続されており、制御部25によって作動が制御されている。すなわち、制御部25は、操作者からの指示情報に基づいて、昇降サーボモータ32Mの正転、逆転、及び停止の制御を行う。
【0058】
図5(B)に示されるように、ブラケット32Aには第一シリンダ機構34のシリンダ34Aが固定されている。第一シリンダ機構34では、シリンダ34A内にロッド34Bの上部、及び図示しないピストンが配置されている。ロッド34Bは、その上端部がピストンに固定され、下端部分がシリンダ34Aの下方に延出している。ピストン及びロッド34Bは、シリンダ34A内の流体圧(本実施形態では、空気圧)によってシリンダ34Aに対して相対移動(上下方向に往復運動)可能となっている。
【0059】
ロッド34Bの下端部には、内蓋36が固定されている。内蓋36は、ジャッキ32及び第一シリンダ機構34の作動によって、搬入出ゾーン16の上端側の位置である第一位置36X(
図5(B)に示される位置)と、搬入出ゾーン16と加工ゾーン18との間の位置である第二位置36Y(
図22)との間で上下動可能に構成されている。すなわち、ジャッキ32と第一シリンダ機構34とが協働することで、ワークWを搬入出ゾーン16に搬入出するときに内蓋36を第一位置36Xに配置すると共に、ワークWを加工ゾーン18に配置させたときに内蓋36を第二位置36Y(
図22)に配置するように、内蓋36を昇降させる昇降機構38が構成されている。
【0060】
また、ブラケット32Aには第二シリンダ機構40のシリンダ40Aが固定されている。第二シリンダ機構40では、シリンダ40A内に、ロッド40Bの下部及び図示しないピストンが配置されている。ロッド40Bは、その下端部がピストンに固定されると共に上部側がシリンダ40Aの上方側に延出している。ピストン及びロッド40Bは、シリンダ40A内の流体圧(本実施形態では、空気圧)によってシリンダ40Aに対して相対移動(上下方向に往復運動)可能となっている。
【0061】
ロッド40Bの上端部は、連結部42を介して軸受44に連結されている。軸受44は、第二シリンダ機構40の装置右側に配置されている。この軸受44には、上下方向に延びる押さえ用シャフト46の上端部が挿し込まれている。押さえ用シャフト46は、軸受44に対して上下方向の相対移動が不能とされているが、押さえ用シャフト46を中心に軸受44に対して回転可能とされている。押さえ用シャフト46の下端部には、押さえ部48が取り付けられている。押さえ部48は、上下方向に延びる軸線を中心に押さえ用シャフト46と共に回転可能とされており、内蓋36の貫通孔を貫通可能とされている。押さえ部48は、ワーク受け部24に載置されたワークWをキャップ23を介して装置上方側から押さえることが可能となっており、ワークWを押さえた状態ではワークWと共に上下方向(昇降方向)に延びる軸線を中心に回転可能とされている。
【0062】
なお、第一シリンダ機構34のシリンダ34A及び第二シリンダ機構40のシリンダ40Aは、それぞれ電磁弁等のエア方向制御機器(図示せず)を介してエア供給源と接続されており、エア方向制御機器は、制御部25に接続されている。制御部25は、操作者からの指示情報に基づいて、各エア方向制御機器を制御することで、ロッド34B、40Bの進退方向を制御できるようになっている。
【0063】
また、キャビネット12には、搬入出ゾーン16の側壁部にワーク検査装置200が設けられている。ワーク検査装置200は、例えば短円筒状等の筒状形状を有し、その貫通方向が上下方向になるように配置され、ハウジング(図示せず)に収容されている。なお、
図1等においても、ハウジングの図示を省略すると共にワーク検査装置200の図示も適宜省略している。
【0064】
図5(B)に示されるように、ワーク検査装置200は、昇降回転機構22に支持されるワークWの側面を包囲するように配置されること、すなわちワーク検査装置200の内周面200AとワークWの側面とが対向するように配置されることで、ワークWの側部の状態(例えば、残留応力、表面粗さ、及び硬度等)を非破壊検査することができる。本実施形態では、ワーク検査装置200は、非接触式の検査装置とされ、渦電流による電圧変化にてワークWの側部の状態を非破壊検査する。なお、ワーク検査装置は、接触式の検査装置であってもよい。
【0065】
ワーク検査装置200は、回転アーム202の先端部に固定されている。回転アーム202は、基端部がキャビネット12側に設置され、上下方向に延びる軸線を中心に回転移動可能とされている。ワーク検査装置200は、回転アーム202の先端部に固定されることで、実線で示される退避位置と、二点鎖線で示される検査位置との間で移動可能に支持されている。
【0066】
ここで、ワーク検査装置200の退避位置は、昇降回転機構22に支持されるワークWに対して内蓋36及び押さえ部48が上方に離間して配置された場合に、ワークWと内蓋36及び押さえ部48との間に、ワーク検査装置200を側方側から挿入可能な位置とされている。
本実施形態では、
図5(B)に示される状態から、ジャッキ32の作動によって、ワークW、内蓋36及び押さえ部48が、ワークWと内蓋36及び押さえ部48との相対位置関係を変えずに降下されると、退避位置のワーク検査装置200が、ワークWと内蓋36及び押さえ部48との間に側方側から挿入可能となっている。
さらに、ワーク検査装置200の退避位置は、昇降回転機構22によるワークWの昇降時及び昇降機構38による内蓋36の昇降時に、昇降する他の部材とワーク検査装置200が干渉しない位置に設定されている。
【0067】
これに対して、ワーク検査装置200の検査位置は、退避位置の側方の位置であって、昇降回転機構22がワークWを昇降させた場合にワークWの側面を包囲する位置となる位置である。すなわち、ワーク検査装置200の検査位置は、昇降回転機構22がワークWを昇降させるとき、ワークWの側面の移動軌跡の外方の位置である。
【0068】
一方、回転アーム202は、モータ(図示せず)に接続され、モータの駆動力によって回転移動するようになっている。また、モータは、制御部25(
図5(A))に接続されている。制御部25は、操作者からの指示情報に基づいて、モータの正転、逆転及び停止等の作動を制御する。
【0069】
図6は、ショットブラスト装置10の内部における循環機構50を右側から見た側面図である。循環機構50は、投射機20によって投射された投射材を投射機20へ循環させる機構である。
図6に示されるように、加工ゾーン18の下方側には、スクリュウコンベヤ52が設けられている。スクリュウコンベヤ52は、装置前後方向に延びるように水平に配置され、装置奥側に設けられたモータ52Mに接続されている。スクリュウコンベヤ52は、モータ52Mの作動によって長手方向軸線を中心に回転し、加工ゾーン18から落下した投射材を、スクリュウコンベヤ52の長手方向に装置奥側へ搬送する。
【0070】
スクリュウコンベヤ52の搬送方向下流側には、上下方向に延びる搬送機構としてのバケットエレベータ54の下端部が配置されている。バケットエレベータ54は、スクリュウコンベヤ52から供給された投射材等を装置上部に搬送する装置である。バケットエレベータ54の構成については後述する。
【0071】
図7(A)は、
図6の7A−7A線に沿った断面図であり、
図7(B)は、
図6の7B−7B線に沿った断面図であり、
図7(C)は、
図6の7C−7C線に沿った断面図である。また、
図8は、
図7(A)の8−8線に沿った断面図である。
【0072】
図7(B)及び
図8に示されるように、ショットブラスト装置10の装置上部には、バケットエレベータ54の上部の装置奥側(
図8の右側)に対応して、セパレータ56の入口56Aが設定されている。セパレータ56は、本実施形態では、風選式のセパレータであり、バケットエレベータ54から投げ出されて入口56Aから供給された投射材及び粉塵に気流を当て、気流に乗せられる軽量物と落下する重量物とに選別し、投射材から異物を分級するようになっている。セパレータ56は、投射材及び粉塵から粉塵を分離除去した後の適正な投射材を装置下部側に排出する。
図8に示されるように、セパレータ56による投射材の排出位置56Zは、バケットエレベータ54の下端部の装置手前側(
図8の左側)に設定されている。
【0073】
バケットエレベータ54の上部の投出部に対して装置奥側にはセトリングチャンバ58が設けられている。
図3には、ショットブラスト装置10が平面図で示されている。
図3に示されるように、セトリングチャンバ58には篩部60及び集塵機62が接続されている。なお、
図3及びショットブラスト装置10の背面図である
図4に示されるように、集塵機62の装置奥側には制御盤64が配置されている。
【0074】
図3に示されるセトリングチャンバ58は、バケットエレベータ54の上部から投げ出された投射材を含む混合物に含まれる粉塵を微粉と粗粉とに分離する。分離された微粉はエアと共に集塵機62に吸引され、粗粉は篩部60に流れるようになっている。集塵機62は、微粉を含むエアを濾過してエアのみを大気中へ排気する。また、篩部60は、粗粉を篩い分け、篩い分けが使用可能な投射材を、バケットエレベータ54の下端部の装置手前側に戻すように構成されている。
【0075】
図7(A)及び
図8に示されるように、ショットブラスト装置10の装置上部には、セパレータ56の入口56Aと隣接して、ショットタンク66のショット供給口66Aが設けられている。ショット供給口66Aは、バケットエレベータ54の上部の装置手前側(
図8の左側)に対応する位置に配置されている。ショットタンク66は、ショット供給口66Aに供給された投射材を、投射機20(
図6)への供給用投射材として貯留する。
図6に示されるように、ショットタンク66は、流量調整装置68及び導入筒70を介して投射機20に接続されている。なお、流量調整装置68は、投射材の流量を調整するための装置であり、投射材供給用の開口を開閉可能なショットゲート(図示せず)を備えている。
【0076】
次に、バケットエレベータ54について説明する。
図9は、バケットエレベータ54の構成を示す模式的な概略斜視図である。
図7(A)、
図7(B)及び
図9に示されるように、バケットエレベータ54は、ショットブラスト装置10の上部及び下部に配置されたプーリ54A、54Bを備え、上側のプーリ54Aは、駆動用のモータ54M(
図9)に接続されて回転駆動可能とされている。上下一対のプーリ54A、54Bには、単一の無端ベルト54Cが巻回され、無端ベルト54Cは、プーリ54Aを介してモータ54Mにより回転するように構成されている。
【0077】
図9に示されるように、無端ベルト54Cの幅方向一端側には、無端ベルト54Cの長手方向に一定間隔で並んで配置された複数の第一バケット54Xが取り付けられている。また、無端ベルト54Cの幅方向他端側には、無端ベルト54Cの長手方向に一定間隔で並んで第一バケット54Xと並列的に配置された複数の第二バケット54Yが取り付けられている。
図7(B)に示されるように、複数の第一バケット54Xによって構成された第一列搬送部55Aは、投射材及び粉塵を装置下部側から装置上部側へ搬送してセパレータ56の入口56Aに供給する搬送部となる。これに対して、
図7(A)に示されるように、複数の第二バケット54Yによって構成された第二列搬送部55Bは、セパレータ56から排出された投射材を装置下部側から装置上部側へ搬送してショットタンク66のショット供給口66Aに供給する搬送部となる。そして、
図9に示されるように、第一列搬送部55A及び第二列搬送部55Bは、共通のモータ54Mで駆動力される。
【0078】
また、
図7(B)に示されるように、無端ベルト54Cの下部に近接して仕切部57が設けられている。この仕切部57は、第一列搬送部55Aと第二列搬送部55B(
図7(A))とを仕切っている。
【0079】
(投射機の構成)
次に、
図10〜
図20を参照して、投射機20について詳細に説明する。
本実施形態の投射機20は、小型のワークW(一例として、直径100mm〜200mm、高さ45〜50mm程度のギヤ、積み重ね高さ250mm程度)に対して、投射材を投射する遠心式の投射機である。
【0080】
本実施形態の投射機20では、羽根車100の回転軸方向視で、投射される投射材の拡がり(投射角)が30°程度である。そして、本実施形態のショットブラスト装置10では、投射機20による投射材の投出位置を頂点とし、加工位置に配置したワークWの投射機20に対向する面の両端とを結んだ時の頂点の角度(中心角)が30°以内となるように、ワークWの寸法、位置等が設定され、ワークWの被加工面が、投射材20からの投射材によって十分に処理されるように構成される。
【0081】
本実施形態のショットブラスト装置10で使用される小型のワークWは、投射材を含む圧縮空気をノズルから噴射する装置であるエア式の噴射装置でショット処理されるワークと同等のサイズである。
【0082】
図10は、投射機20の正面図であり、
図11は、投射機20の分解側面図である。
なお、投射機20の側面視の縦断面は、駆動モータ76の組付部分を除き、後述する第2実施形態の投射機21を示す
図24に示す縦断面と同様である。したがって、本実施形態の説明においても、適宜、
図24を参照する。
図10および
図11に示されるように、投射機40は、ケース本体72を備えている。ケース本体72は、外形が概ね台形錐状に形成され、底部側(
図10の下方側)が開放されて投射材の投射部側となっている。
図10に示されるように、ケース本体72の底部側からはベース72Aが互いに離反する方向に延出されており、キャビネット12の側壁部12A(
図1)へ固定されている。
【0083】
また、ケース本体72の一方側の側部72Bには、ハブ82等が挿通される貫通孔が形成されている。一方、ケース本体72の他方側の側部72Cには、導入筒70が挿通される貫通孔が形成されている。一方、ケース本体72の頂部は、蓋80が取付けられ、この蓋80には、ライナ78の上方部分が挿通される貫通孔が形成されている。ライナ78は、ケース本体72の内側に取り付けられている。
【0084】
ケース本体72の内部の中央には、コントロールケージ92が配置されている。コントロールケージ92は、ケース本体72の側部72Cに、前面カバー88を介して取り付けられている。コントロールケージ92は、円筒形状を有し、駆動モータ76の回転軸76Xと同心に配置され、導入筒70から内部に投射材が供給されるように構成されている。コントロールケージ92の内周部と導入筒70の端部との間には、環状のブラケット96とシール部材98とが配置されている。なお、導入筒70の一部は、導入筒押さえ86(
図11)によって押さえられている。
【0085】
また、コントロールケージ92の外周壁92Aには、外周壁92Aを貫通し、投射材の排出部となる、一個の開口92Xが形成されている。コントロールケージ92の側面図である
図12に示されているように、コントロールケージ92の開口92Xは、円筒軸心CLに平行な二辺を含む矩形状に設定されている。
【0086】
図11に示される駆動モータ76の回転軸76Xの外周には、フランジ付円筒体であるハブ82の円筒部82Aがキーによって固定されている。ハブ82には、センタープレート90がボルトで固定されている。また、ディストリビュータ94は、センタープレート90を介して駆動モータ76の回転軸76Xの先端部76Aにボルト84で固定されている。
【0087】
図10に示されるように、円筒状のディストリビュータ94は、内部に、径方向に延びる複数の羽根94Aと、周方向に等間隔に配置された複数の開口とを備え、コントロールケージ92との間に間隙を形成するように、コントロールケージ92の内側に配置されている。
ディストリビュータ94は、駆動モータ76(
図11参照)の作動によって回転し、コントロールケージ92の内側で回転する。ディストリビュータ94が回転することで、導入筒70からコントロールケージ92の内側に供給された投射材が、ディストリビュータ94内でかき混ぜられ、回転するディストリビュータ94の開口から遠心力で、ディストリビュータ94の開口を通して、ディストリビュータ94とコントロールケージ92の間の間隙に供給される。この間隙に供給された投射材は、間隙中を、コントロールケージ92の内周面に沿って回転方向に移動し、コントロールケージ92の開口92Xから径方向外方に排出される。
このとき、コントロールケージ92の開口92Xから投射材の排出方向が、ディストリビュータ94の回転中心(後述する羽根車100の回転中心Cと同じ)からの径方向に対して羽根車100の回転方向(矢印R方向)に傾斜した方向となる。
【0088】
図11及び
図24に示されるように、ハブ82の円筒部82Aの軸方向一端部から半径方向外側に延びるフランジ82Bは、側板ユニット102の円環状の第一側板102Aにボルトで固定されている。側板ユニット102は、コントロールケージ92の外周側に配置された羽根車100の一部を構成している。羽根車100は、駆動モータ76の回転軸76Xにハブ82を介して取り付けられている。羽根車100は、第一側板102Aと、第一側板102Aと間隔をおいて対向配置された円環状の第二側板102Bと、を備えている。第一側板102Aと第二側板102Bとは、連結部材102Cによって連結されている。
【0089】
さらに、羽根車100は、第一側板102Aと第二側板102Bとの間にコントロールケージ92の径方向外方に延びるように配置された複数のブレード(羽根)104を備えている。羽根車100は、駆動モータ76(
図11)の作動によって回転力を得てコントロールケージ92の周方向に回転するようになっている。羽根車100の回転方向とディストリビュータ94の回転方向とは、同一方向に設定されている。
各ブレード104は、径方向外方端が、径方向内方端より、径方向に対して羽根車100の回転方向(矢印R方向)後方側に位置するように傾斜して配置され、コントロールケージ92の外周に沿って配置されている。
また、
図23に示されるように、投射機20では、羽根車100のブレード104が、羽根車100の回転中心線の方向に見て、装置上方側、加工ゾーン18の側、装置下方側の順に移動するように羽根車100の回転方向(矢印R方向参照)が設定されている。
【0090】
図13は、ブレード104の斜視図であり、
図14は、羽根車100の正面視の断面図である。
【0091】
図14に示されるように、ブレード104の回転方向側の表面106は、径方向内方(基端部)側の部分に、回転方向後方側に傾斜した後傾部110を備えている。後傾部110は、羽根車100の径方向に対して、30°〜50°の角度、回転方向後方に傾斜しているのが好ましく、本実施形態では40°傾斜している。
【0092】
また、ブレード104の表面106における先端側(すなわち後傾部110の径方向外方側)には、羽根車110の回転中心Cから略径方向(放射方向線L2方向)に延びる非後傾部114が形成されている。後傾部110径方向長さは、非後傾部114の径方向長さよりも長く設定されている。後傾部110と非後傾部114との間には、湾曲部112が形成されている。
非後傾部114は、回転方向後方への傾斜角度が、後傾部110より小さく設定されていればよい。
【0093】
また、ブレード104の表面106とは反対側の裏面108は、基端部に、径方向に対して後傾部110より大きく回転方向後方側に傾斜した傾斜部116を備えている。ブレード104の裏面108には、径方向中間部に隆起部118が突出形成されている。この隆起部118は、羽根車100の半径方向外側の凹湾曲部が連結部材102Cに当接している。
【0094】
図13に示されるように、ブレード104の表面106の両側部には、表面106からブレード104の厚さ方向外方に向かって延びる側壁部120が形成されている。ブレード104の基端の側壁部120には、側壁部120の幅方向外方に段状に突出した基端側段部122が形成されている。また、側壁部120の先端部側には、側壁部120の幅方向外方に段状に突出した先端側段部124が形成されている。基端側段部122及び先端側凸部124は、裏面108側から表面106側へ向かう方向へ向けて基端部側(図中下側)に若干傾斜しながら延びている。
【0095】
側壁部120が、
図11に示される第一側板102A及び第二側板102Bの溝部に嵌め込まれる、ブレード104の部位となる。また、
図13に示される側壁部120の基端側段部122及び先端側凸部124は、
図11に示される第一側板102A及び第二側板102Bの溝部底面に当接するブレード104の部位となる。
【0096】
次に、
図5、
図21〜
図23等を参照しながら、本実施形態のショットブラスト装置10によるショット処理について説明する。なお、
図21及び
図22は、ショットブラスト装置によるショット処理の各工程を示す、
図5(B)と同様の方向からの断面図である。
【0097】
まず、
図5(B)に示されるように、ワークWが搬入出ゾーン16に搬入され、ワーク受け部24にセットされる。次に、
図21(A)に示されるように、第一シリンダ機構34を作動させることで、内蓋36を降下させる。さらに、
図21(B)に示されるように、第二シリンダ機構40を作動させ、押さえ部48を降下させ、押さえ部48にてキャップ23を介してワークWを上方側から押さえる。
【0098】
次に、
図22(A)に示されるように、ジャッキ32を作動させてワークW及び内蓋36を降下させる。これにより、ワークWが加工ゾーン18における第一の加工位置である第一投射位置18Aに配置されると共に、内蓋36が第二位置36Yに配置されて搬入出ゾーン16と加工ゾーン18とを仕切る。この状態でモータ28が作動することでワークWは上下方向軸線を中心に回転し、駆動モータ76(
図11)が作動することで
図23(A)に示される羽根車100が回転して投射材が投射される。
この結果、ワークWの全周に表面加工がなされる。
図23(A)の状態では、積み重ねられた(段積みされた)複数のワークWのうち、主として下部に配置されたワークWがショット処理される。
【0099】
また、内蓋36が搬入出ゾーン16と加工ゾーン18とを仕切ることで、搬入出ゾーン16の側への投射材の漏れ出しが阻止される。また、本実施形態では、
図23に示されるように、羽根車100の回転中心線の方向に見て、装置上方側、加工ゾーン18の側、装置下方側の順に移動するように羽根車100の回転方向(矢印R方向参照)が設定されている。このような構成によっても、装置上方側への投射材の漏れ出しが抑えられる。
さらに、本実施形態では、昇降回転機構22に設けられた押さえ部48が内蓋36を貫通可能で、かつワークWを上方側から押さえてワークWと共に上下方向軸線を中心に回転可能となっている。このため、昇降回転機構22で支持されるワークWが複数個積み重ねられても、ワークWを昇降の方向の軸回りに安定的に回転させることができる。
【0100】
次に、流量調整装置68(
図6参照)のショットゲートが閉じられ、投射材の投射が停止される。そして、ワークWを、上下方向軸線を中心に回転させながら、
図22(B)に示されるように、ジャッキ32の作動によってワークWを下降させて、加工ゾーン18における第二の加工位置である第二投射位置18Bに配置される。
【0101】
次いで、流量調整装置68(
図6)のショットゲートが開かれることで、投射機20からの投射材の投射が再開される。
図23(B)の状態では、積み重ねられた複数のワークWのうち、主として上下方向中間部に配置された分がショット処理される。
【0102】
次に、流量調整装置68(
図6)のショットゲートが閉じられ、投射材の投射が再び停止される。そして、ワークWを、上下軸線を中心に回転させながら、
図22(C)に示されるように、ジャッキ32の作動によってワークWを下降させて、加工ゾーン18における第三の加工位置である第三投射位置18Cに配置される。
【0103】
次いで、流量調整装置68(
図6)のショットゲートが開かれることで
図23(C)に示される投射機20から投射材が投射される。
図23(C)の状態では、積み重ねられた複数のワークWのうち主として上部に配置された分がショット処理される。
【0104】
このように、昇降回転機構22のジャッキ32の作動で、ワークWを加工ゾーン18において順次、降下させることで、積み重ねられた複数個のワークWの全てにショット処理を施すことができる。
本実施形態では、
図22及び
図23においてワークWの降下させる際に投射機20による投射材の投射を停止させているが、投射機20による投射材の投射を継続しながらワークWを降下させてもよい。
【0105】
次に、ワークWの搬出までの手順について説明する。
図23(C)に示される状態で、ワークWに所望の表面加工がなされると、流量調整装置68(
図6)のショットゲートが閉じられ、投射材の投射が停止される。さらに、投射機20の駆動モータ76(
図11)が停止される。
次に、
図22(C)に示される第二シリンダ機構40を作動させ、押さえ部48を上昇させる。次に、第一シリンダ機構34を作動させ、内蓋36を上昇させる。これにより、押さえ部48及び内蓋36と、ワークWと、の間に隙間(空間)が形成される。
【0106】
次に、ジャッキ32を作動させ、押さえ部48及び内蓋36と、ワークWとの相対位置関係を維持しながら、押さえ部48、内蓋36、及びワークWを上昇させる。そして、押さえ部48及び内蓋36と、ワークWとの間の隙間の高さ位置が、ワーク検査装置200の高さ位置と同じ高さ位置になった時点でジャッキ32を停止させる。
【0107】
この状態で、回転アーム202を作動させ、退避位置にあったワーク検査装置200を、押さえ部48及び内蓋36と、ワークWとの間の隙間に挿入し、検査位置(
図5(B)に二点鎖線で示される位置)に移動させる。
次に、ジャッキ32を作動させ、ワークWの最上段のギヤ(対象物)をワーク検査装置200に包囲される位置まで上昇させた後、ジャッキ32を停止させる。そして、ワーク検査装置200がワークWの最上段のギヤの側部の状態を非破壊検査する。
【0108】
最上段のギヤの検査終了後には、ジャッキ32を作動させ、ワークWの上から2個目のギヤをワーク検査装置200に包囲される位置まで上昇させた後、ジャッキ32を停止させる。そして、ワーク検査装置200がワークWの上から2個目のギヤの側部の状態を非破壊検査する。
【0109】
以下同様に、各ワークWの非破壊検査が、順次なされる。
図5(B)には、二点鎖線で示すワーク検査装置200がワークWの最下段のギヤの側面を包囲した状態が示されている。この最下段のギヤの非破壊検査が終了した後には、ジャッキ32を作動させることで、押さえ部48及び内蓋36と、ワークWとの相対位置関係を変えずに、ワークWを下降させる。そして、回転アーム202を作動させることで、検査位置にあるワーク検査装置200を退避位置に移動させる。
【0110】
その後、ジャッキ32を作動させることで、押さえ部48及び内蓋36と、ワークWとの相対位置関係を変えずに、これらを上昇させて搬入出ゾーン16の
図5(B)に示される位置に配置する。そして、ワーク受け部24にセットされたワークWが搬入出ゾーン16から搬出される。
【0111】
なお、本実施形態では、投射機20によるワークWの表面加工後にワーク検査装置200によるワークWの非破壊検査が行われているが、ワーク検査装置200を設けない変形例では、ワークWの搬出までの手順が以下の通りとなる。
【0112】
すなわち、
図23(C)に示される状態で、ワークWに所望の表面加工がなされたタイミングで流量調整装置68(
図6)のショットゲートが閉じられ、投射材の投射が停止される。また、投射機20の駆動モータ76(
図11)が停止される。その後、ジャッキ32(
図21(B))を作動させることで、
図21(B)に示されるように、ワークW、押さえ部48及び内蓋36を上昇させる。そして、ワークW、押さえ部48及び内蓋36を搬入出ゾーン16に配置する。
【0113】
次に、第二シリンダ機構40を作動させることで、
図21(A)に示されるように、押さえ部48を上昇させる。その後、第一シリンダ機構34を作動させることで、
図5(B)に示されるように、内蓋36を上昇させて第一位置36Xに配置させる。そして、ワーク受け部24にセットされたワークWが搬入出ゾーン16から搬出される。
【0114】
なお、本実施形態では、
図23に示されるように、投射機20は、加工ゾーン18の側方側においてキャビネット12の側壁部12Aに設置されている。すなわち、投射機20がキャビネット12の下部側(装置下部側)に配置されるので、投射機20よりも装置上方側に
図6に示されるショットタンク66等を配置しても装置全体の高さを抑えることができる。
【0115】
次に、
図6〜
図9を参照しながら、投射された投射材を循環させる循環機構50の動作について説明する。
【0116】
投射機20によって投射されて落下した投射材は、スクリュウコンベヤ52によってバケットエレベータ54の下端部側に搬送される。このとき、スクリュウコンベヤ52は、再利用可能な投射材の他、投射材が砕ける等によって生じた粉塵も搬送する。そして、
図7(B)及び
図9に示されるバケットエレベータ54の第一列搬送部55Aは、投射材及び粉塵を装置下部側から装置上部側へ搬送し、
図7(B)及び
図8に示されるセパレータ56の入口56Aに供給する。
【0117】
セパレータ56は、入口56Aから供給された投射材及び粉塵から粉塵を分離除去して投射材をバケットエレベータ54の第二列搬送部55Bの下端部側に排出する。バケットエレベータ54の第二列搬送部55Bは、セパレータ56(
図7(B))から排出された投射材を装置下部側から装置上部側へ搬送して
図7(A)に示されるショットタンク66のショット供給口66Aに供給する。
ショットタンク66は、ショット供給口66Aに供給された投射材を投射機20への供給用として貯留する。そして、ショットタンク66は、流量調整装置68及び導入筒70を介して投射機20に投射材を供給する。
【0118】
(作用・効果)
次に、上記実施形態のショットブラスト装置10の作用及び効果について説明する。
上記実施形態のショットブラスト装置10によれば、
図12に示されるように、コントロールケージ92の開口92Xが、コントロールケージ92の円筒軸心CLに平行な二辺を含む矩形状に設定されている。このため、投射材はコントロールケージ92の周方向の同じ位置から集中的に排出される。
【0119】
また、
図10に示されるように、コントロールケージ92の外周側に配置された羽根車100は、複数のブレード104がコントロールケージ92の周方向に回転するので、コントロールケージ92の開口92Xから排出された投射材は、ブレード104によって加速されてワークWに向けて投射される。
【0120】
図15(A)は、
図12のコントロールケージ92を用いて投射した場合の投射分布を示す。
図15(A)に示されるように、
図12のコントロールケージ92を用いた場合、投射材の分布は、分布幅の中央にピークが1つ存在する投射分布曲線に沿ったものとなる。また、
図15(B)は、
図12のコントロールケージ92を用いて投射した場合の投射範囲を示す平面図である。
【0121】
上記実施形態のショットブラスト装置10によれば、羽根車100のブレード104の表面106に、羽根車100の径方向(放射方向線L1)に対して回転方向(矢印R方向)後方に傾斜する後傾部110が形成されている。これにより、ブレード104の表面106に投射材を集めることができる。
【0122】
この点について、
図16及び
図17を参照しながら対比例と比較して説明する。
図16は、ブレードB1を後傾(羽根車I1の径方向から回転方向(矢印R方向)後方側に傾斜)させた羽根車I1の作用を説明するための模式図である。
これに対して、
図17は、ブレードB2が径方向に延びている対比例の羽根車I2の作用を説明するための模式図である。なお、
図16及び
図17のいずれにおいても、(A)〜(G)は時系列順に並べられている。
【0123】
まず、
図17を参照しながら対比例の作用について説明する。
図17(A)〜
図17(C)に示されるように、まず、コントロールケージC2の開口から、投射材a、投射材b、投射材cが、径方向に対して羽根車100の回転方向(矢印R方向)に傾斜した方向に、一定の間隔で順次、排出されるとする。
【0124】
図17(D)及び
図17(E)に示されるように、まず、三番目に排出された投射材cが、次いで、二番目に排出された投射材bが、最後に、最初に排出された投射材aがブレードB2の表面に当たる。
【0125】
投射材a、b、cは、それぞれ、ブレードB2の先端側へ向けて加速されるが、ブレードB2に当たるタイミングが上記の通りであり、かつブレードB2の先端側へいくほど投射材の加速度が増すことから、
図17(F)に示されるように、ブレードB2上に投射材a、b、cを集めることができない。そして、
図17(G)に示されるように、最初に排出された投射材aが投射される。また、図示を省略するが、その後、投射材b、投射材cがこの順でタイミングをずらして投射される。このように、羽根車I2のブレードB2を径方向に延びるように配置した場合には、投射材を集中させて投射することができない。
【0126】
一方、ブレードB1が回転方向後方側に傾斜した
図16の構成でも、
図16(A)〜
図16(C)に示されるように、コントロールケージC1の開口から投射材s1、投射材s2、投射材s3が、順次、排出される。
【0127】
この構成では、
図16(D)に示されるように、ブレードが羽根車の回転方向後方側に傾斜し、投射材の排出方向が、羽根車100の回転方向に傾斜し、さらに、ブレードの表面に後傾部が設けられているので、最初に排出された投射材s1及び二番目に排出された投射材s2がブレードB1の表面に当たる前に、最後に排出された投射材s3がブレードB1の表面に当たり、ブレードB1の先端側へ向けて加速される。
次に、
図16(E)に示されるように、二番目に排出された投射材s2がブレードB1の表面に当たる。このとき、既にブレードB1上で加速されている投射材s3のブレードB1上の径方向位置は、投射材s2のブレードB1上の径方向位置とほぼ同様の位置になっている。その結果、投射材s3、s2は、概ね一塊となってブレードB1の先端側へ向けて加速される。
【0128】
次いで、
図16(F)に示されるように、最初に排出された投射材s1がブレードB1の表面に当たる。このとき、既にブレードB1上で加速されている投射材s3、s2のブレードB1上の径方向位置は、投射材s1のブレードB1上の径方向位置とほぼ同様の位置になっている。これにより、投射材s3、s2、s1は、略一塊となってブレードB1の先端側へ向けて加速される。
【0129】
そして、
図16(G)に示されるように、投射材s3、s2、s1が概ね一塊となって、同時に投射される。このように、羽根車I1のブレードB1を後傾させた場合には、ブレードB1上に集められた投射材s3、s2、s1が投射されるので、投射分布を集中させることができる。このため、ワークWに対する無駄な投射を抑えることができる。
【0130】
上記実施形態の投射機20では、羽根車100の回転方向側の表面106が、径方向内方(基端部)側の部分に、径方向に対して回転方向後方側に40°傾斜した後傾部110を備えている。
【0131】
後傾部の回転方向後方側への傾斜角度を30°以上にすることで、投射材がブレードに乗る時間差を十分に確保することができるので、投射分布の集中度を高めることができる。さらに、後傾部の回転方向後方側傾斜角度を50°以下にすることで、投射材がブレードに乗る時間差を、ブレード上に投射材を集中させるうえで一層好ましい時間差にすることができると共に、ブレードの長さを抑えることができる。
なお、ブレードの長さが抑えられると、ブレードの重量及び部品コストが抑えられると共に組付時の作業性等の面でもメリットがある。
【0132】
この点を、
図18を参照しながら具体的に説明する。
図18には、ブレードが羽根車の回転中心からの径方向に沿って延在している(以下、単に「ブレードが傾いていない」という。)場合と、ブレードが羽根車の径方向に対して回転方向(矢印R方向)後方側に傾斜している(以下、単に「ブレードが後傾している」という。)場合と、を比較した投射分布のグラフが示されている。
【0133】
図18において、縦軸は投射割合を示し、横軸は投射機による投射材の投出位置から投射中心に沿う直線を0°とする場合の角度で平面の加工位置及びその延長位置における投射範囲を示したものである。
図18において、実線で示される線図は本実施形態の場合を示し、点線で示される線図はブレードが傾いていない対比例の場合を示す。なお、
図18において二点鎖線で示される線図については別実施形態として後述する。
【0134】
図18に示されるように、本実施形態の場合(実線参照)は、対比例の場合(点線参照)に比べて、投射分布が0°付近に集中していることが判る。−15°〜+15°の範囲では、本実施形態の場合(実線参照)は、対比例の場合(点線参照)よりも投射割合が高い。このため、羽根車の回転軸方向視で、投射機による投射材の投出位置と、加工位置に配置されたワークの投射機の側に向く面の両端位置と、を結んだ角度が30°以内となる場合、本実施形態の場合(実線参照)は、対比例の場合(点線参照)に比べて、表面加工に有効な投射の割合を高くすることができることが判る。
【0135】
ところで、
図18の対比例の場合(点線参照)、投射材がワークに当たらない所謂無駄打ちが多くなるだけでなく、ワークに当たらない投射材がキャビネットやライナ等に当たることで、それらの製品寿命を縮めることにもなる。これに対して、本実施形態の場合(実線参照)は、キャビネットやライナ等に直接当たる投射材の量が抑えられるので、消耗部品代の削減も実現することができ、結果として、トータルのランニングコストも大幅に削減できる。
【0136】
ここで、さらに他の観点から補足説明する。投射分布が狭い範囲に集中するものとして、投射材を含む圧縮空気をノズルから噴射するエア式の噴射装置が知られている。しかしながら、エア式の噴射装置は、圧縮エアを生成するための消費電力に比べて投射材を加速させて投射できる量が極めて少なく、投射のための電力効率が悪い。すなわち、エア式の噴射装置の場合には、消費電力が嵩むことになる。
これに対して、本実施形態の投射機20は、遠心式の投射機であるため、消費電力に比べて投射材を効率的に投射できる。このため、エア式の噴射装置に代えて、本実施形態の投射機20を適用すれば、消費電力、ひいてはランニングコストを大幅に削減することができる。
【0137】
本実施形態では、ブレード104の表面106の先端側には、羽根車100の回転中心Cから略径方向(放射方向線L2方向)に延びる非後傾部114が形成されている。この非後傾部によって、後傾部110で集中された投射材の速度を増加させ、投射することができる。
【0138】
この点について、
図19及び
図20を用いて、詳細に説明する。
図19は、投射速度を説明するための模式図である。
図19(A)は、ブレードB3が傾いていない場合を示し、
図19(B)はブレードB1が40°後傾している場合を示す。
【0139】
図19(A)において、f4は遠心加速される方向の速度、f5はブレードB3の先端の接線方向の速度、f6はf4とf5との合成速度である。また、
図19(B)において、f1は遠心加速される方向の速度、f2はブレードB1の先端の接線方向の速度、f3はf1とf2との合成速度である。なお、
図19(A)及び
図19(B)では、ブレードの回転外径及び回転周速は同じものとしている。
図19(A)及び
図19(B)に示されるように、ブレードB1が後傾している場合の合成速度f3は、ブレードB3が傾いていない場合の合成速度f6よりも小さい。このため、ブレードの傾き以外の条件を同じにした場合、ブレードB1を後傾させると、ブレードB3を傾けない場合に比べて、投射速度は遅くなってしまう。
【0140】
一方、投射速度を上げるために、駆動モータにて羽根車をより高速回転させると、騒音が増加すると共に消費電力も増えてしまう。ちなみに、駆動モータの回転数を上げると、無負荷電力も増加してしまう。
【0141】
図20には、投射速度を70m/s相当とした場合の消費電力について、ブレードが傾いていない場合とブレードが後傾している場合とを比較したグラフが示されている。
図20では、縦軸を消費電力とし、横軸を単位時間あたりの投射量としている。また、実線で示される線図はブレードが後傾している場合を示し、一点鎖線で示される線図はブレードが傾いていない場合を示す。この図に示されるように、ブレードを単純に後傾させると、消費電力の点で不利になる。
【0142】
しかしながら、本実施形態では、
図14に示される後傾部110で集中された投射材が非後傾部114で速度を増してから投射されるので、ブレードを傾けない場合と同等の投射電力効率で投射することができる。
【0143】
また、本実施形態では、
図11に示されるように、羽根車100は、駆動モータ76の回転軸76Xにハブ82を介して取り付けられている。このため、例えば、ベルトを介して駆動モータに接続されている場合と比べて装置全体が小型化する。
【0144】
また、本実施形態では投射材が、非後傾部114で速度を増してから投射されるので、羽根車100の単位時間当たり回転数の増加を抑えることができ、消費電力の増加を抑えることができる。
【0145】
また、本実施形態では、羽根車100の回転軸方向視で後傾部110の長さが非後傾部114の長さよりも長く設定されている。このため、非後傾部114で投射材の速度を十分に増すことができる。
【0146】
また、本実施形態では、ブレード104の表面106には、後傾部110と非後傾部114をなだらかに繋ぐ湾曲部112が形成されている。このため、ブレード104の後傾部110で投射材を集めた後、投射材の速度を徐々に増大させることができる。
【0147】
また、本実施形態では、コントロールケージ92の開口92Xからの投射材の排出方向が、羽根車100の回転方向前方側に傾く方向となっている。
このため、コントロールケージ92の開口92Xから先に排出された投射材がブレード104の表面106に接触するタイミングを、遅らせることができ、ブレード104の表面106の後傾部110で投射材をより効果的に集中させることができる。
【0148】
また、本実施形態では、ブレード104の裏面108に傾斜部116が設けられている。開口92Xから排出された投射材がブレード104の裏面108の基端部に当たって反射した場合、傾斜部116によって投射材の反射方向が偏向され、ブレード104同士の間への反射量を抑えることができる。このため、ブレード104同士の間における投射材の流動の乱れを抑えることができる。
【0149】
本実施形態のショットブラスト装置では、
図8に示されるように、ショットタンク66のショット供給口66Aはセパレータ56の入口56Aと隣り合って設定されており、ショットタンク66の上方側にセパレータ56を配置していないので、装置全体の高さを抑えることができる。また、
図9に示されるように、バケットエレベータ54は、共通のモータ54M及び単一の無端ベルト54Cが用いられているので、部品点数を減らせると共に、装置を小型化することができる。
【0150】
また、本実施形態のショットブラスト装置では、
図7(B)に示されるように、無端ベルト54Cに対してその下部のみに近接して第一列搬送部55Aと第二列搬送部55B(
図7(A)参照)とを仕切る仕切部が設けられている。このため、セパレータ56で粉塵が分離除去される前の混合物(投射材及び粉塵)と、セパレータ56で粉塵が分離除去された後の投射材と、が混ざってしまうのを防止することができる。なお、第一列搬送部55Aと第二列搬送部55B(
図7(A))との仕切り部をバケットエレベータ54の全高部に設けると、バケットエレベータ54の構造が複雑になるが、本実施形態の場合にはそのようなこともない。また、バケットエレベータ54の中間部では、第一バケット54X及び第二バケット54Yの各々の中に投射材が入っているため、仕切り部は不要であるといえる。
【0151】
以上のように、本実施形態のショットブラスト装置10によれば、投射量を削減することができる。
【0152】
なお、上記第1の実施形態の変形例として、
図10及び
図11に示される投射機20に代えて、
図24及び
図25に示される投射機21を使用してもよい。
図24は、変形例に係る投射機21の側面視の縦断面図であり、
図25は、投射機21の分解側面図である。
【0153】
これらの図に示されるように、投射機21は、駆動モータの回転軸がハブ82に直接固定されていない点で、第1の実施形態の構成とは異なる。他の構成は、第1の実施形態と同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0154】
ケース本体72の図中右側の側部72Bには、軸受ユニット74等の先端部が挿通される貫通孔が形成されており、ケース本体72の図中右側の内側中央部には、軸受ユニット74の先端部74Aが配置されている。軸受ユニット74の先端部74Aは、ケース本体72の図中右側の側部72Bに取り付けられている。軸受ユニット74は、ベアリング74Bを備え、回転軸77Xを回転自在に支持している。
【0155】
回転軸77Xの基端側には、第二プーリ79が固定されている。この第二プーリ79と図示しない第一プーリとには、ベルト81が巻回されている。第一プーリは、図示しない駆動モータの回転軸に固定されている。これにより、駆動モータの回転力が回転軸77Xに伝達されるようになっている。
【0156】
回転軸77Xの先端部77Aの外周側には、フランジ付円筒体のハブ82の円筒部82Aが配置されている。ハブ82には、センタープレート90がボルトで固定されている。ハブ82は、回転軸77Xの先端部77Aとキーで固定されている。
【0157】
このような変形例のショットブラスト装置においても、投射量を削減することができる。また、このような変形例の場合、装置全体のサイズは大きくなるが、消費電力を抑える点では有利になる。
【0158】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係るショット処理装置としてのショットピーニング装置130について、
図26に沿って説明する。
図26は、本実施形態に係るショットピーニング装置130の平面視の概略的な構成図である。
【0159】
なお、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。また、本実施形態のショットピーニング処理のワークWとしては、例えば、ギヤ等の製品があげられる。ショットピーニング処理によりワークWの表面粗さが低減されて疲労強度の向上が図られる。
【0160】
図26に示されるように、ショットピーニング装置130は、キャビネット132を備えている。キャビネット132内の側部には、第1の実施形態のショットブラスト装置と同様の遠心式の投射機20が設置されている。本実施形態では、羽根車100の回転中心Cは上下方向に延びている。
【0161】
キャビネット132の内部には、投射機20による表面加工が可能な加工位置でワークWを支持する支持機構としての製品載置部134が設けられている。製品載置部134は、大テーブル138を備えており、大テーブル138上には大テーブル138の同心円上の位置に複数の小テーブル142が周方向に等間隔で配置されている。
大テーブル138は、上下方向の回転軸136を中心に回転(公転)可能とされており、遠心式の投射機20により投射材が投射される投射範囲を含む位置に配置されている。
また、小テーブル142は、大テーブル138よりも小径であり、大テーブル138の回転軸136と平行な回転軸140を備えて回転(自転)可能とされ、ワークWが載せられる。
【0162】
また、投射機20からの投射範囲に対応する大テーブル138上の位置には、ワークWを押さえるための機構が設けられている。この機構は、小テーブル142上のワークWを上方側から押さえてワークWと共に回転可能な押さえ部を備えている。
【0163】
本実施形態の構成によっても、投射材の無駄な投射を抑制し、投射量の削減をすることができる。
【0164】
[他の実施形態]
次に、上記実施形態で使用された投射機とは異なる、他の投射機について、
図27及び
図28を用いて説明する。なお、この投射機は、コントロールケージの開口の形状が異なる点を除き、第1の実施形態のショットブラスト装置で使用された投射機20(
図10及び
図11)と同じ構成となっている。
【0165】
図27(A)〜
図27(E)に示されるコントロールケージ150、152、154、156、158は、円筒状に形成されて内部に投射材が供給されている。これらコントロールケージ150、152、154、156、158を備えた遠心式の投射機は、ショット処理装置に設置されて投射材を投射する投射機とされている。
なお、
図27(A)〜
図27(D)に示されるコントロールケージ150、152、154、156を備えた投射機は、本発明の実施形態に係る投射機であり、
図27(E)に示されるコントロールケージ158を備えた投射機は、本発明に含まれない参考例に係る投射機である。
【0166】
図27(A)〜
図27(D)に示されるコントロールケージ150、152、154、156を備えた投射機では、羽根車の回転軸方向視で、投射機による投射材の投出位置を頂点とし、加工位置に配置したワークWの投射機に対向する面の両端とを結んだ時の頂点の角度(頂角)の角度が50°〜80°となるように、ワークWの寸法、位置等が設定される。
【0167】
図27(A)に示されるコントロールケージ150の外周壁150Aには、投射材の排出部としての第一貫通部160及び第二貫通部162が貫通形成されている。
第一貫通部160及び第二貫通部162は、いずれもコントロールケージ150の開口を構成している。第一貫通部160は、コントロールケージ150の円筒軸心CLに平行でかつ互いに対向する平行な二辺160A、160Bの間に設定されている。
また、第二貫通部162は、第一貫通部160に対し、コントロールケージ150の外周壁150Aの周方向および円筒軸心CLの方向にオフセットしている、第二の平行な二辺162A、162Bの間に設定されている。
第一貫通部160と第二貫通部162とは、コントロールケージ150の円筒軸心CLの方向に離間し、コントロールケージ150の円筒軸心CLの方向に見て各々の略半分がオーバーラップしている。
【0168】
また、
図27(B)に示されるコントロールケージ152の外周壁152Aには、投射材の排出部として開口164が貫通形成されている。
開口164は、第一貫通部166及び第二貫通部168を備えている。第一貫通部166は、コントロールケージの円筒軸心CLに直交する方向に平行でかつ互いに対向する第一の平行な二辺166A、166Bの間に設定されている。
また、第二貫通部168は、第一貫通部166に対して、コントロールケージ152の外周壁152Aの周方向およびコントロールケージ152の円筒軸心CLの方向にオフセットしている、平行で且つ互いに対向する第二の二辺168A、168Bの間に設定されている。
第一貫通部166と第二貫通部168とは、連通していると共に、コントロールケージ152の円筒軸心CLの方向に見て各々の略半分がオーバーラップしている。
【0169】
また、
図27(C)に示されるコントロールケージ154の外周壁154Aには、投射材の排出部として開口170が貫通形成されている。
開口170は、第一貫通部172及び第二貫通部174を備えている。第一貫通部172は、コントロールケージの円筒軸心CLに平行で且つ互いに対向する第一の平行二辺172A、172Bの間に設定されている。
また、第二貫通部174は、第一貫通部172に対して、コントロールケージ154の外周壁154Aの周方向およびコントロールケージ154の円筒軸心CLの方向にオフセットしている、平行で且つ互いに対向する第二の二辺174A、174Bの間に設定されている。
【0170】
第一貫通部172と第二貫通部174とは、第三貫通部176によって連通されている。第三貫通部176は、第一貫通部172の辺172Aの端末と第二貫通部174の辺174Aの端末とを直線状に連結すると共に、第一貫通部172の辺172Bの端末と第二貫通部174の辺174Bの端末とを直線状に連結している。
【0171】
第一貫通部172と第二貫通部174とは、コントロールケージ154の円筒軸心CLの方向に見て各々の略半分がオーバーラップしている。
【0172】
また、
図27(D)に示されるコントロールケージ156の外周壁156Aには投射材の排出部として開口178が貫通形成されている。
開口178は、第一貫通部180及び第二貫通部182を備えている。第一貫通部180は、コントロールケージの円筒軸心CLに平行でかつ互いに対向する第一の平行二辺180A、180Bの間に設定されている。
また、第二貫通部182は、第一貫通部180に対して、コントロールケージ156の外周壁156Aの周方向およびコントロールケージ156の円筒軸心CLの方向にオフセットしている、平行でかつ互いに対向する第二の平行二辺182A、182Bの間に設定されている。
第一貫通部180と第二貫通部182とは、コントロールケージ156の円筒軸心CLに直交する方向に見て(
図27(D)の方向視で)円筒軸心CLの方向に若干離れており、コントロールケージ156の円筒軸心CLの方向に見て各々の略半分がオーバーラップしている。
【0173】
また、第一貫通部180と第二貫通部182とは、第三貫通部184によって連通されている。第三貫通部184は、第一貫通部180の辺180Aの端末と第二貫通部182の辺182Aの端末とを階段状に連結すると共に第一貫通部180の辺180Bの端末と第二貫通部182の辺182Bの端末とを階段状に連結している。
【0174】
図27(A)〜
図27(D)に示されるコントロールケージ150、152、154、156を備えた投射機では、第一貫通部160、166、172、180及び第二貫通部162、168、174、182からそれぞれ排出される投射材が、コントロールケージ150、152、154、156の周方向においてずれた位置から排出される。このため、これらの投射機からの投射分布は、第一貫通部160、166、172、180から排出された投射材の投射分布と、第二貫通部162、168、174、182から排出された投射材の投射分布と、を合成した分布を含んだものとなる。
【0175】
そして、第一貫通部160、166、172、180と第二貫通部162、168、174、182とは、コントロールケージ150、152、154、156の円筒軸心CLの方向において、略半分がオーバーラップしているので、第一貫通部160、166、172、180及び第二貫通部162、168、174、182からそれぞれ排出された投射材の各投射分布も、各々の分布幅の略半分の範囲で重なる。このため、全体の投射分布としては、投射量が多い範囲(投射の集中化が図られた範囲)が広げられる。
【0176】
図28(A)には、コントロールケージ150、152(
図27(A)、(B))を備えた投射機による投射分布(図中の上段)及び投射範囲(図中の下段)が概略的に示されている。
また、
図28(B)には、コントロールケージ154、156(
図27(C)、(D))を備えた投射機による投射分布(図中の上段)及び投射範囲(図中の下段)が概略的に示されている。これらの図からも、投射量が多い範囲が広げられていることが判る。
【0177】
また、
図27(A)〜
図27(D)に示されるコントロールケージ150、152、154、156を備えた投射機は、上記のような構成によって、投射材を50°〜80°の広い角度でワークに投射できる。
【0178】
図18の投射分布のグラフを参照しながら具体的に説明する。
図18において、二点鎖線で示される線図は、
図27(B)に示されるコントロールケージ152を備えた投射機の場合(以下、「本実施形態の場合」という。)を示す。
図18に示されるように、本実施形態の場合(二点鎖線)は、対比例の場合(点線参照)に比べると、0°での投射割合が低いものの、本実施形態の場合の0°での投射割合は、対比例の場合の−25°、+25°での投射割合よりも高い値を示す。また、−25°よりもグラフの左側、及び+25°よりもグラフの右側に着目すると、−25°〜−40°の範囲及び+25°〜+40°の範囲では、本実施形態の場合のほうが対比例の場合よりも投射割合が高い。
【0179】
ここで、ワークのトータルの処理時間は、最も投射割合の低い部分で所望の研掃がなされるまでの時間となる点、及び上記の分析を考慮すると、羽根車の回転軸方向視で、投射機による投射材の投出位置と、加工位置に配置されたワークの投射機の側に向く面の両端位置と、を結んだ角度が50°〜80°となる場合、本実施形態の場合(実線)は、対比例の場合(点線)に比べて、表面加工に有効な投射の割合を高くすることができることが判る。
【0180】
投射材を含む圧縮空気をノズルから噴射するエア式の噴射装置を用いて広範囲のショット処理をしようとする場合には、ノズルの本数を増やすことになったり、噴射装置とワークとの相対移動量が多くなったりする。このため、消費電力が非常に嵩むことになる。これに対して、本実施形態の場合には遠心式の投射機を用いているので、消費電力を抑えることができる。
【0181】
次に、
図27(E)に示されるコントロールケージ158を備えた投射機(本発明に含まれない参考例)について説明する。
【0182】
図27(E)に示されるコントロールケージ158の外周壁158Aには投射材の排出部として開口186が貫通形成されている。
開口186は、コントロールケージ158の円筒軸心CLに直交する方向に延びる互いに一部が対向する平行な二辺186A、186Bを備えた平行四辺形の貫通部とされている。
図28(C)には、コントロールケージ158(
図27(E))を備えた投射機の投射分布(図中上段)及び投射範囲(図中下段)が概略的に示されている。
【0183】
上記の各実施形態の変形例として、
図13に示されるブレード104に代えて、
図29に示されるブレード190を使用してもよい。なお、
図29においては、
図13のブレード104と実質的に同様の構成部については、同一符号を付す。
【0184】
また、上記実施形態では、
図14に示される後傾部110は、羽根車100の回転中心Cからの径方向に対して回転方向後方側に40°傾斜しており、後傾部の傾斜角度は、30°〜50°が好ましいが、後傾部の傾斜角度は、例えば、25°や55°等のような他の角度とすることも可能である。
【0185】
また、ブレードの表面における先端部側に形成される非後傾部は、後傾部より回転方向後方側への傾斜角が小さなものであれば、どのようなものでもよい。本明細書では、「後傾部より回転方向後方側への傾斜角が小さな」とは、その傾斜角が、後傾部の回転方向後方側への傾斜角より小さい場合の他、径方向に延びる構成、および回転方向前方側に傾斜している構成も包含するので、非後傾部は、羽根車の回転中心からの径方向に対して延びるもの、あるいは径方向に対して回転方向前方側に傾斜するものであってもよい。また、非後傾部を設けない構成でも良い。
【0186】
また、後傾部の径方向長さと非後傾部の径方向長さとが等しく設定されてもよい。
さらに、後傾部と非後傾部とが湾曲部を介さずに直接、連結された構成でもよい。
さらにまた、傾斜部が形成されない構成でもよい。
【0187】
また、搬入出ゾーンと加工ゾーンとの間に中間ゾーンを設定できるような場合等には内蓋を設けない構成でもよい。
また、搬入出ゾーンと加工ゾーンとの間に中間ゾーンを設定できる場合には、投射機は、中間ゾーンの側方側においてキャビネットの側壁部に設置されてもよい。
また、投射機20の羽根車の回転方向を、上記実施形態と逆に設定してもよい。
【0188】
また、上記第1の実施形態では、
図5に示される押さえ部48は、キャップ23を介してワークWを押さえているが、押さえ部48が直接ワークを押さえるような形態も採り得る。また、例えば、ワークの高さが低くかつ単品の場合等には、押さえ部48を設けないでワーク受け部24の側にワークを保持する機構を設けてもよい。
【0189】
また、第一列搬送部と第二列搬送部とを備えた搬送機構では、第一列搬送部と第二列搬送部のそれぞれに対応したスクリューコンベヤを設けてもよい。
また、第一列搬送部を構成する無端ベルトと第二列搬送部を構成する無端ベルトとを別々に設け、それぞれの無端ベルトを別個の駆動用モータで駆動する構成でもよい。
【0190】
また、
図7(B)に示される仕切部57を設けない構成でもよい。
【0191】
なお、上記実施形態及び上述の複数の変形例を適宜、組み合わされてもよい。
【0192】
以上、本発明を実施形態に沿って説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載の範囲内で種々の変更、変形が可能である。