特許第6459021号(P6459021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6459021
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】蓄電素子、及び蓄電素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20190121BHJP
   H01M 2/36 20060101ALI20190121BHJP
   H01M 2/04 20060101ALI20190121BHJP
   H01M 2/12 20060101ALI20190121BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20190121BHJP
   H01G 11/58 20130101ALI20190121BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20190121BHJP
【FI】
   H01M10/04 W
   H01M2/36 101A
   H01M2/36 102A
   H01M2/04 A
   H01M2/12 101
   H01G11/78
   H01G11/58
   H01G11/84
【請求項の数】14
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-118693(P2014-118693)
(22)【出願日】2014年6月9日
(65)【公開番号】特開2015-232940(P2015-232940A)
(43)【公開日】2015年12月24日
【審査請求日】2017年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】山福 太郎
【審査官】 山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−086604(JP,A)
【文献】 特開2009−218078(JP,A)
【文献】 特開平06−215798(JP,A)
【文献】 特開平10−241741(JP,A)
【文献】 特開2011−054539(JP,A)
【文献】 特開2005−251738(JP,A)
【文献】 特開2013−257951(JP,A)
【文献】 特開2011−150868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/0587
H01M 2/36
H01M 2/04
H01M 2/34
H01M 2/14
H01M 2/12
H01M 6/10
H01M 6/16
H01G 11/58
H01G 11/78
H01G 11/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極とセパレータとが積層された状態で巻回されている電極体と、
前記電極体を収容するケースであって、該ケースに設けられた注液孔が封止されている注液封止部を有するケースと、
前記ケースの内部において、前記注液孔から前記電極体における巻回中心方向の一端に向かう電解液の通過を許容する第一ガイド部と、
前記ケースの内部において、該ケースの内部から前記注液孔に向かう流体の通過を許容すると共に、前記注液孔から前記電極体における前記巻回中心方向の他端に向かう電解液の通過を阻止する又は通過し難くする第二ガイド部と、を備え、
前記第一ガイド部は、前記注液孔から前記電極体における巻回中心方向の一端に向かう流体の通過を許容すると共に、前記ケースの内部から前記注液孔に向かう流体の通過を阻止する逆止弁を有する、蓄電素子。
【請求項2】
電極とセパレータとが積層された状態で巻回されている電極体と、
前記電極体を収容するケースであって、該ケースに設けられた注液孔が封止されている注液封止部を有するケースと、
前記ケースの内部において、前記注液孔から前記電極体における巻回中心方向の一端に向かう電解液の通過を許容する第一ガイド部と、
前記ケースの内部において、該ケースの内部から前記注液孔に向かう流体の通過を許容すると共に、前記注液孔から前記電極体における前記巻回中心方向の他端に向かう電解液の通過を阻止する又は通過し難くする第二ガイド部と、を備え、
前記第二ガイド部は、前記ケースの内部から前記注液孔に向かう流体の通過を許容すると共に、前記注液孔から前記電極体における巻回中心方向の他端に向かう流体の通過を阻止する逆止弁を有する、蓄電素子。
【請求項3】
前記ケースは、該ケースに設けられた排出孔が封止されている排出封止部、及び、該ケースの内部の圧力が所定の圧力まで上昇したときに該ケースの内部のガスを外部に排出可能なガス排出弁、を有し、
前記排出孔は、前記注液孔より前記電極体の前記巻回中心方向における他端に近い位置に設けられ、
前記ガス排出弁は、前記排出孔より前記電極体の前記巻回中心方向における他端に近い位置に設けられる、請求項1又は2に記載の蓄電素子。
【請求項4】
前記排出孔は、前記第二ガイド部を通過した流体を前記ケースの外部に排出できる位置であって、前記注液孔より前記第二ガイド部に近い位置に設けられ、
前記注液孔は、前記排出孔より前記第一ガイド部に近い位置に設けられる、請求項3に記載の蓄電素子。
【請求項5】
前記第二ガイド部は、前記ケースの内部から前記注液孔へ向かう流体の流路と交差するように配置されるメッシュ部材を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の蓄電素子。
【請求項6】
前記第一ガイド部と、前記第二ガイド部とは、一体である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の蓄電素子。
【請求項7】
電極とセパレータとが積層された状態で巻回されている電極体と、前記電極体を収容するケースであって該ケースに設けられた注液孔が封止されている注液封止部を有するケースと、を備えた蓄電素子の製造方法であって、
前記ケースの内部において、前記注液孔から前記電極体における巻回中心方向の一端に向かう電解液の通過を許容する第一ガイド部と、前記ケースの内部において、該ケースの内部から前記注液孔に向かう流体の通過を許容すると共に前記注液孔から前記電極体における前記巻回中心方向の他端に向かう電解液の通過を阻止する又は通過し難くする第二ガイド部と、が設けられたケースの内部に、封止されていない状態の前記注液孔から電解液を注入すること、を備え、
前記第一ガイド部は、前記注液孔から前記電極体における巻回中心方向の一端に向かう流体の通過を許容すると共に、前記ケースの内部から前記注液孔に向かう流体の通過を阻止する逆止弁を有する、蓄電素子の製造方法。
【請求項8】
電極とセパレータとが積層された状態で巻回されている電極体と、前記電極体を収容するケースであって該ケースに設けられた注液孔が封止されている注液封止部を有するケースと、を備えた蓄電素子の製造方法であって、
前記ケースの内部において、前記注液孔から前記電極体における巻回中心方向の一端に向かう電解液の通過を許容する第一ガイド部と、前記ケースの内部において、該ケースの内部から前記注液孔に向かう流体の通過を許容すると共に前記注液孔から前記電極体における前記巻回中心方向の他端に向かう電解液の通過を阻止する又は通過し難くする第二ガイド部と、が設けられたケースの内部に、封止されていない状態の前記注液孔から電解液を注入すること、を備え、
前記第二ガイド部は、前記ケースの内部から前記注液孔に向かう流体の通過を許容すると共に、前記注液孔から前記電極体における巻回中心方向の他端に向かう流体の通過を阻止する逆止弁を有する、蓄電素子の製造方法。
【請求項9】
前記ケースは、該ケースに設けられた排出孔が封止されている排出封止部、及び、該ケースの内部の圧力が所定の圧力まで上昇したときに該ケースの内部のガスを外部に排出可能なガス排出弁、を有し、
前記排出孔は、前記注液孔より前記電極体の前記巻回中心方向における他端に近い位置に設けられ、
前記ガス排出弁は、前記排出孔より前記電極体の前記巻回中心方向における他端に近い位置に設けられ、
前記注入は、前記排出孔が封止されていない状態で行われる、請求項7又は8に記載の蓄電素子の製造方法。
【請求項10】
前記ケースの内部の流体を前記排出孔から外部へ排出して前記ケースの内部を大気圧より低い低圧状態にすること、を備え、
前記注入は、前記低圧状態にすることと共に、又は前記低圧状態にした後に行われる、請求項9に記載の蓄電素子の製造方法。
【請求項11】
前記ケースの内部の流体を前記注液孔から外部へ排出して前記ケースの内部を大気圧より低い低圧状態にすること、を備え、
前記ケースにおける前記注液孔を除く部位は、気密構造であり、
前記注入は、前記低圧状態にした後に行われる、請求項7又は8に記載の蓄電素子の製造方法。
【請求項12】
前記注入では、前記ケースは、前記電極体における巻回中心方向の一端が該巻回中心方向の他端より下方に位置するような姿勢で、前記電解液を注入される、請求項〜11のいずれか一項に記載の蓄電素子の製造方法。
【請求項13】
前記注入では、前記ケースは、該ケースに収容した前記電極体の巻回中心方向が上下方向を向く姿勢で電解液を注入される、請求項12に記載の蓄電素子の製造方法。
【請求項14】
前記第二ガイド部は、前記ケースの内部から前記注液孔へ向かう流体の流路と交差するように配置されるメッシュ部材を有する、請求項7〜13のいずれか一項に記載の蓄電素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極とセパレータとが巻回された電極体を備えた蓄電素子、及び蓄電素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、巻回型の電極群を備えた非水電解質二次電池が知られている(特許文献1参照)。具体的に、前記非水電解質二次電池は、正の極性を有する電極(正極)と負の極性を有する電極(負極)とセパレータとが巻回された電極群と、前記電極群を電解液と共に収容する電池容器と、前記電池容器の開口を塞ぐ蓋であって電解液注液口が設けられた蓋と、前記電解液注液口を封止する封止栓と、を備える。前記電極群では、帯状の電極と帯状のセパレータとが交互に積層された状態で巻回されている。
【0003】
前記非水電解質二次電池の製造工程では、前記電極群が収容された前記電池容器の開口が前記蓋によって塞がれ、前記電解液が前記蓋に設けられた前記電解液注液口から前記電池容器の内部に注入された後、前記電解液注液口が前記封止栓によって封止される。前記電池容器の内部では、注入された前記電解液が前記電極群の内部に染み込む(浸入する)。具体的には、以下の通りである。
【0004】
前記電極群は、上述のように、前記電極及び前記セパレータが積層された状態で巻回されることによって形成されている。このため、前記電池容器の内部に注入された前記電解液は、前記電極群の巻回中心方向の端部から、積層状態で巻回されている前記電極と前記セパレータとの間に染み込む。このとき、前記電解液が前記電極群の巻回中心方向の両端から該電極群の内部にそれぞれ浸入するため、前記電極と前記セパレータとの間等にあった空気等の気体の一部が前記電極と前記セパレータとの間から排出されず(即ち、電極群の両端から染み込んできた電解液によって電極群の中央部に閉じこめられ)、該電極群における巻回中心方向の中央部に取り残される場合があった。
【0005】
この場合、前記電解液が前記電極群の内部に満遍なく染み渡らないため、該電極群の内部における負極保護被膜(SEI)の形成状態が不均一になる。前記負極保護被膜の形成が不十分な部分では、前記非水電解質二次電池において充放電が繰り返されることで、他の部位よりも不可逆反応が進み易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−219027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、電極体の内部への電解液の染み込みが不均一になり難い蓄電素子、及び蓄電素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る蓄電素子は、
電極とセパレータとが積層された状態で巻回されている電極体と、
前記電極体を収容するケースであって、該ケースに設けられた注液孔が封止されている注液封止部を有するケースと、
前記ケースの内部において、前記注液孔から前記電極体における巻回中心方向の一端に向かう電解液の通過を許容する第一ガイド部と、
前記ケースの内部において、該ケースの内部から前記注液孔に向かう流体の通過を許容すると共に、前記注液孔から前記電極体における前記巻回中心方向の他端に向かう電解液の通過を阻止する又は通過し難くする第二ガイド部と、を備え
前記第一ガイド部は、前記注液孔から前記電極体における巻回中心方向の一端に向かう流体の通過を許容すると共に、前記ケースの内部から前記注液孔に向かう流体の通過を阻止する逆止弁を有する。
【0009】
かかる構成によれば、第一及び第二ガイド部によって、注液孔からケースの内部に注入された電解液が電極体の巻回中心方向における一端に向けて案内されると共に該電解液が電極体の巻回中心方向における他端に向かうのを阻止され又は向かい難くなるため、電極体の一端が他端に比べ、注入された電解液に接し易くなる。このため、蓄電素子の製造時(注入時)において、電解液が、電極体の一端から電極体の内部に染み込み(浸入し)易く、これにより、電解液の電極体の内部への染み込みが不均一になるのを防ぐことができる。即ち、ケースの内部に注入された電解液が電極体の一端に向けて案内されると共に電極体の他端へ向かうのを阻止され又は邪魔されるため、該電解液が一端から他端に向けて該電極体に染み込み易く、これにより、電解液の注入前に電極とセパレータとの間にあった気体が、染み込んだ電解液に押し出されるように電極体の他端から排出され、その結果、電解液が電極体の内部に染み渡ったときに前記気体が電極体の内部に取り残され難くなる。よって、電極体の内部への電解液の染み込みが不均一になり難い蓄電素子が得られる。
また、このように、逆止弁を用いることで、第一ガイド部において、注液孔から電極体の一端に向かう電解液の通過を許容する共に、ケースの内部から注液孔に向かう流体の通過を阻止する構成を、容易に実現することができる。
また、本発明に係る蓄電素子は、
電極とセパレータとが積層された状態で巻回されている電極体と、
前記電極体を収容するケースであって、該ケースに設けられた注液孔が封止されている注液封止部を有するケースと、
前記ケースの内部において、前記注液孔から前記電極体における巻回中心方向の一端に向かう電解液の通過を許容する第一ガイド部と、
前記ケースの内部において、該ケースの内部から前記注液孔に向かう流体の通過を許容すると共に、前記注液孔から前記電極体における前記巻回中心方向の他端に向かう電解液の通過を阻止する又は通過し難くする第二ガイド部と、を備え、
前記第二ガイド部は、前記ケースの内部から前記注液孔に向かう流体の通過を許容すると共に、前記注液孔から前記電極体における巻回中心方向の他端に向かう流体の通過を阻止する逆止弁を有する。
かかる構成によれば、第一及び第二ガイド部によって、注液孔からケースの内部に注入された電解液が電極体の巻回中心方向における一端に向けて案内されると共に該電解液が電極体の巻回中心方向における他端に向かうのを阻止され又は向かい難くなるため、電極体の一端が他端に比べ、注入された電解液に接し易くなる。このため、蓄電素子の製造時(注入時)において、電解液が、電極体の一端から電極体の内部に染み込み(浸入し)易く、これにより、電解液の電極体の内部への染み込みが不均一になるのを防ぐことができる。即ち、ケースの内部に注入された電解液が電極体の一端に向けて案内されると共に電極体の他端へ向かうのを阻止され又は邪魔されるため、該電解液が一端から他端に向けて該電極体に染み込み易く、これにより、電解液の注入前に電極とセパレータとの間にあった気体が、染み込んだ電解液に押し出されるように電極体の他端から排出され、その結果、電解液が電極体の内部に染み渡ったときに前記気体が電極体の内部に取り残され難くなる。よって、電極体の内部への電解液の染み込みが不均一になり難い蓄電素子が得られる。
また、このように、逆止弁を用いることで、第二ガイド部において、ケースの内部から注液孔に向かう流体の通過を許容すると共に、注液孔から電極体の他端に向かう電解液の通過を阻止する構成を、容易に実現することができる。
【0010】
また、本発明に係る蓄電装置は、
電極とセパレータとが積層された状態で巻回されている電極体と、
前記電極体を収容するケースであって、該ケースに設けられた注液孔が封止されている注液封止部、該ケースに設けられた排出孔が封止されている排出封止部、及び、該ケースの内部の圧力が所定の圧力まで上昇したときに該ケースの内部のガスを外部に排出可能なガス排出弁、を有するケースと、
前記ケースの内部において、前記注液孔から前記電極体における巻回中心方向の一端に向かう電解液の通過を許容する第一ガイド部と、
前記ケースの内部において、該ケースの内部から前記注液孔に向かう流体の通過を許容すると共に、前記注液孔から前記電極体における前記巻回中心方向の他端に向かう電解液の通過を阻止する又は通過し難くする第二ガイド部と、を備え、
前記排出孔は、前記注液孔より前記電極体の前記巻回中心方向における他端に近い位置
に設けられ、
前記ガス排出弁は、前記排出孔より前記電極体の前記巻回中心方向における他端に近い位置に設けられる。
【0011】
かかる構成によれば、第一及び第二ガイド部によって、注液孔からケースの内部に注入された電解液が電極体の巻回中心方向における一端に向けて案内されると共に該電解液が電極体の巻回中心方向における他端に向かうのを阻止され又は向かい難くなるため、電極体の一端が他端に比べ、注入された電解液に接し易くなる。このため、蓄電素子の製造時(注入時)において、電解液が、電極体の一端から電極体の内部に染み込み(浸入し)易く、これにより、電解液の電極体の内部への染み込みが不均一になるのを防ぐことができる。即ち、ケースの内部に注入された電解液が電極体の一端に向けて案内されると共に電極体の他端へ向かうのを阻止され又は邪魔されるため、該電解液が一端から他端に向けて該電極体に染み込み易く、これにより、電解液の注入前に電極とセパレータとの間にあった気体が、染み込んだ電解液に押し出されるように電極体の他端から排出され、その結果、電解液が電極体の内部に染み渡ったときに前記気体が電極体の内部に取り残され難くなる。よって、電極体の内部への電解液の染み込みが不均一になり難い蓄電素子が得られる。
また、電解液が注液孔からケースの内部に注入されたときに、ケースの内部の流体(空気等)を排出孔から外部に排出できるため、前記注入によってケースの内圧力が上昇して電解液が注入し難くなるのを防ぐことができる。しかも、排出孔が電極体の他端に近い(即ち、電極体の一端から遠い)位置に設けられているため、注入の際に電極体の一端に向けて案内された電解液が排出孔から外部に排出され難く、これにより、電解液をケースの内部に効率よく注入することができる。
【0012】
前記蓄電素子では、
前記排出孔は、前記第二ガイド部を通過した流体を前記ケースの外部に排出できる位置であって、前記注液孔より前記第二ガイド部に近い位置に設けられ、
前記注液孔は、前記排出孔より前記第一ガイド部に近い位置に設けられてもよい。
【0013】
かかる構成によれば、排出孔が注液孔より第二ガイド部に近いため、第二ガイド部を通過したケースの内部の流体(空気等)が、注液孔より、排出孔から排出され易くなる。これにより、注液孔から注入された電解液が第一ガイド部を通過して電極体の一端に供給され、且つ、第二ガイド部を通過したケースの内部の流体(空気等)が排出孔から外部に排出され易くなる。
【0018】
前記蓄電素子では、
前記第二ガイド部は、前記ケースの内部から前記注液孔へ向かう流体の流路と交差するように配置されるメッシュ部材を有してもよい。
【0019】
気体の粘度に比べて液体の粘度が高いため、液体は、気体よりメッシュ部材を通過し難い。このため、上記構成によれば、簡素な構成部材によって、ケースの内部から注液孔等へ向かう空気等の気体を通過させ易く、且つ、注液孔から電極体に向かう電解液を通過させ難くする構成を、実現できる。
【0020】
前記蓄電素子では、
前記第一ガイド部と、前記第二ガイド部とは、一体であってもよい。
【0021】
かかる構成によれば、部品点数を減らすことができ、ケースの内部構造の簡素化を図ることができる。
【0022】
本発明に係る蓄電素子の製造方法は、
電極とセパレータとが積層された状態で巻回されている電極体と、前記電極体を収容するケースであって該ケースに設けられた注液孔が封止されている注液封止部を有するケースと、を備えた蓄電素子の製造方法であって、
前記ケースの内部において、前記注液孔から前記電極体における巻回中心方向の一端に向かう電解液の通過を許容する第一ガイド部と、前記ケースの内部において、該ケースの内部から前記注液孔に向かう流体の通過を許容すると共に前記注液孔から前記電極体における前記巻回中心方向の他端に向かう電解液の通過を阻止する又は通過し難くする第二ガイド部と、が設けられたケースの内部に、封止されていない状態の前記注液孔から電解液を注入すること、を備え
前記第一ガイド部は、前記注液孔から前記電極体における巻回中心方向の一端に向かう流体の通過を許容すると共に、前記ケースの内部から前記注液孔に向かう流体の通過を阻止する逆止弁を有する
【0023】
かかる構成によれば、第一及び第二ガイド部によって、注液孔からケースの内部に注入された電解液が電極体の巻回中心方向における一端に向けて案内されると共に該電解液が電極体の巻回中心方向における他端に向かうのを阻止され又は向かい難くなるため、電極体の一端が他端に比べ、注入された電解液に接し易い。このため、注入時において、電解液が電極体の一端から電極体の内部に染み込み(浸入し)易く、これにより、電解液の電極体の内部への染み込みが不均一になるのを防ぐことができる。即ち、ケースの内部に注入された電解液が電極体の一端に向けて案内されると共に電極体の他端へ向かうのを阻止され又は向かい難くなるため、該電解液が一端から他端に向けて該電極体に染み込み易く、これにより、電解液の注入前に電極とセパレータとの間にあった気体が、染み込んだ電解液に押し出されるように電極体の他端から排出され、その結果、電解液が電極体の内部に染み渡ったときに電極体の内部に取り残され難くなる。よって、蓄電素子において、電極体の内部への電解液の染み込みが不均一になり難くなる。
また、このように、逆止弁を用いることで、第一ガイド部において、注液孔から電極体の一端に向かう電解液の通過を許容する共に、ケースの内部から注液孔に向かう流体の通過を阻止する構成を、容易に実現することができる。
また、本発明に係る蓄電素子の製造方法は、
電極とセパレータとが積層された状態で巻回されている電極体と、前記電極体を収容するケースであって該ケースに設けられた注液孔が封止されている注液封止部を有するケースと、を備えた蓄電素子の製造方法であって、
前記ケースの内部において、前記注液孔から前記電極体における巻回中心方向の一端に向かう電解液の通過を許容する第一ガイド部と、前記ケースの内部において、該ケースの内部から前記注液孔に向かう流体の通過を許容すると共に前記注液孔から前記電極体における前記巻回中心方向の他端に向かう電解液の通過を阻止する又は通過し難くする第二ガイド部と、が設けられたケースの内部に、封止されていない状態の前記注液孔から電解液を注入すること、を備え、
前記第二ガイド部は、前記ケースの内部から前記注液孔に向かう流体の通過を許容すると共に、前記注液孔から前記電極体における巻回中心方向の他端に向かう流体の通過を阻止する逆止弁を有する。
かかる構成によれば、第一及び第二ガイド部によって、注液孔からケースの内部に注入された電解液が電極体の巻回中心方向における一端に向けて案内されると共に該電解液が電極体の巻回中心方向における他端に向かうのを阻止され又は向かい難くなるため、電極体の一端が他端に比べ、注入された電解液に接し易い。このため、注入時において、電解液が電極体の一端から電極体の内部に染み込み(浸入し)易く、これにより、電解液の電極体の内部への染み込みが不均一になるのを防ぐことができる。即ち、ケースの内部に注入された電解液が電極体の一端に向けて案内されると共に電極体の他端へ向かうのを阻止され又は向かい難くなるため、該電解液が一端から他端に向けて該電極体に染み込み易く、これにより、電解液の注入前に電極とセパレータとの間にあった気体が、染み込んだ電解液に押し出されるように電極体の他端から排出され、その結果、電解液が電極体の内部に染み渡ったときに電極体の内部に取り残され難くなる。よって、蓄電素子において、電極体の内部への電解液の染み込みが不均一になり難くなる。
また、このように、逆止弁を用いることで、第二ガイド部において、ケースの内部から注液孔に向かう流体の通過を許容すると共に、注液孔から電極体の他端に向かう電解液の通過を阻止する構成を、容易に実現することができる。
【0024】
前記蓄電素子の製造方法において、
電極とセパレータとが積層された状態で巻回されている電極体と、前記電極体を収容するケースであって該ケースに設けられた注液孔が封止されている注液封止部、該ケースに設けられた排出孔が封止されている排出封止部、及び、該ケースの内部の圧力が所定の圧力まで上昇したときに該ケースの内部のガスを外部に排出可能なガス排出弁、を有するケースと、を備えた蓄電素子の製造方法であって
前記ケースの内部において、前記注液孔から前記電極体における巻回中心方向の一端に向かう電解液の通過を許容する第一ガイド部と、前記ケースの内部において、該ケースの内部から前記注液孔に向かう流体の通過を許容すると共に前記注液孔から前記電極体における前記巻回中心方向の他端に向かう電解液の通過を阻止する又は通過し難くする第二ガイド部と、が設けられたケースの内部に、封止されていない状態の前記注液孔から電解液を注入すること、を備え、
前記排出孔は、前記注液孔より前記電極体の前記巻回中心方向における他端に近い位置に設けられ、
前記ガス排出弁は、前記排出孔より前記電極体の前記巻回中心方向における他端に近い位置に設けられ、
前記注入は、前記排出孔が封止されていない状態で行われてもよい。
【0025】
かかる構成によれば、第一及び第二ガイド部によって、注液孔からケースの内部に注入された電解液が電極体の巻回中心方向における一端に向けて案内されると共に該電解液が電極体の巻回中心方向における他端に向かうのを阻止され又は向かい難くなるため、電極体の一端が他端に比べ、注入された電解液に接し易い。このため、注入時において、電解液が電極体の一端から電極体の内部に染み込み(浸入し)易く、これにより、電解液の電極体の内部への染み込みが不均一になるのを防ぐことができる。即ち、ケースの内部に注入された電解液が電極体の一端に向けて案内されると共に電極体の他端へ向かうのを阻止され又は向かい難くなるため、該電解液が一端から他端に向けて該電極体に染み込み易く、これにより、電解液の注入前に電極とセパレータとの間にあった気体が、染み込んだ電解液に押し出されるように電極体の他端から排出され、その結果、電解液が電極体の内部に染み渡ったときに電極体の内部に取り残され難くなる。よって、蓄電素子において、電極体の内部への電解液の染み込みが不均一になり難くなる。
また、電解液が注液孔からケースの内部に注入されたときに、ケースの内部の流体(空気等)を排出孔から外部に排出できるため、前記注入によってケースの内部圧力が上昇して電解液が注入し難くなるのを防ぐことができる。しかも、排出孔が電極体の他端に近い(即ち、電極体の一端から遠い)位置に設けられているため、注入の際に電極体の一端に向けて案内された電解液が排出孔から外部に出難く、これにより、効率よく電解液をケースの内部に注入することができる。
【0026】
この場合、前記蓄電素子の製造方法は、
前記ケースの内部の流体を前記排出孔から外部へ排出して前記ケースの内部を大気圧より低い低圧状態にすること、を備え、
前記注入は、前記低圧状態にすることと共に、又は前記低圧状態にした後に行われることが好ましい。
【0027】
かかる構成によれば、注入の際に電解液がケースの内部に引き込まれるため、電解液をケースの内部に注入し易くなる。
【0028】
前記蓄電素子の製造方法は、
前記ケースの内部の流体を前記注液孔から外部へ排出して前記ケースの内部を大気圧より低い低圧状態にすること、を備え、
前記ケースにおける前記注液孔を除く部位は、気密構造であり、
前記注入は、前記低圧状態にした後に行われてもよい。
【0029】
かかる構成によれば、気体等の流体を排出させてケースの内部を低圧状態にするための排出孔及び該排出孔を封止する部材を設けなくてもよく、これにより、ケースの構成の簡素化を図ると共に、流体の排出後に排出孔を封止する作業をなくすことができる。
【0030】
前記蓄電素子の製造方法において、
前記注入では、前記ケースは、前記電極体における巻回中心方向の一端が該巻回中心方向の他端より下方に位置するような姿勢で、前記電解液を注入されることが好ましい。
【0031】
かかる構成によれば、電極体の一端が他端より下方に位置するため、第一ガイド部によって案内された電解液が、重力によって、電極体の一端近傍により向かい易く且つ電極体の他端には向かい難くなり、その結果、電解液を電極体の一端から効率よく染み込ませることができる。
【0032】
この場合、
前記注入では、前記ケースは、該ケースに収容した前記電極体の巻回中心方向が上下方向を向く姿勢で電解液を注入されることがより好ましい。
【0033】
かかる構成によれば、ケースの内部において電解液が案内される位置(電極体の一端)が下端となり且つ電極体の一端が下方を向くような姿勢のケースに対して電解液が注入されるため、電極体の一端側の端部全体が電解液に接し易く、これにより、電解液を電極体により効率よく染み込ませることができる。
【0038】
前記蓄電素子の製造方法では、
前記第二ガイド部は、前記ケースの内部から前記注液孔へ向かう流体の流路と交差するように配置されるメッシュ部材を有してもよい。
【0039】
気体の粘度に比べて液体の粘度が高いため、液体は、気体よりメッシュ部材を通過し難い。このため、上記構成によれば、簡素な構成部材によって、ケースの内部から注液孔等へ向かう空気等の気体を通過させ易く、且つ、注液孔から電極体に向かう電解液を通過させ難くする構成を、実現できる。
【発明の効果】
【0040】
以上より、本発明によれば、電極体の内部への電解液の染み込みが不均一になり難い蓄電素子、及び蓄電素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る蓄電素子の斜視図である。
図2図2は、同実施形態に係る蓄電素子の電極体の構成を説明するための図である。
図3図3は、正極、負極、及びセパレータの積層状態を説明するための図である。
図4図4は、図1のIV―IV線位置の断面図である。
図5図5は、第一通過制御部が開いた状態の第一ガイド部の拡大断面図である。
図6図6は、第一通過制御部が閉じた状態の第一ガイド部の拡大断面図である。
図7図7は、第二通過制御部が開いた状態の第二ガイド部の拡大断面図である。
図8図8は、第二通過制御部が閉じた状態の第二ガイド部の拡大断面図である。
図9図9は、同実施形態に係る蓄電素子の製造方法を説明するためのフロー図である。
図10図10は、注入時におけるケースの姿勢、及びケース内での電解液の移動方向を説明するための部分断面図である。
図11図11は、他実施形態に係る蓄電素子におけるガイド部の拡大断面図である。
図12図12は、他実施形態に係る蓄電装置の製造方法を説明するためのフロー図である。
図13図13は、前記一実施形態に係る蓄電素子を含む蓄電装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明に係る蓄電素子の一実施形態について、図1図10を参照しつつ説明する。蓄電素子には、一次電池、二次電池、キャパシタ等がある。本実施形態では、蓄電素子の一例として、充放電可能な二次電池について説明する。尚、本実施形態の各構成部材(各構成要素)の名称は、本実施形態におけるものであり、背景技術における各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
【0043】
本実施形態の蓄電素子は、非水電解質二次電池である。より詳しくは、蓄電素子は、リチウムイオンの移動に伴って生じる電子移動を利用したリチウムイオン二次電池である。この種の蓄電素子は、電気エネルギーを供給する。蓄電素子は、単一又は複数で使用される。具体的に、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧が小さいときには、単一で使用される。一方、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧の少なくとも一方が大きいときには、他の蓄電素子と組み合わされて蓄電装置に用いられる。前記蓄電装置では、該蓄電装置に用いられる蓄電素子が電気エネルギーを供給する。
【0044】
蓄電素子は、図1図4に示すように、電極23,24とセパレータ25とが積層された状態で巻回されている電極体2と、電極体2を収容するケース3と、ケース3の内部に配置される第一ガイド部81及び第二ガイド部82と、ケース3の外側に配置される外部端子4であって電極体2と導通する外部端子4と、を備える。本実施形態の第一ガイド部81と第二ガイド部82とは、一体であり、ガイド部8を構成する。即ち、本実施形態の蓄電素子1は、ガイド部8を備え、ガイド部8は、第一ガイド部81と第二ガイド部82とを有する。また、蓄電素子1は、電極体2、ケース3、ガイド部8、及び外部端子4の他に、電極体2と外部端子4とを導通させる集電体5等を有する。具体的には、以下の通りである。
【0045】
電極は、正の極性を有する帯状の電極(正極)23と、負の極性を有する帯状の電極(負極)24と、を有する。電極体2は、正極23と負極24とが互いに絶縁された状態で巻回されることによって形成される。
【0046】
正極23は、金属箔と、金属箔の上に形成された正極活物質層と、を有する。金属箔は帯状である。本実施形態の金属箔は、例えば、アルミニウム箔である。正極23は、帯形状の短手方向である幅方向の一方の端縁部に、正極活物質層の非被覆部(正極活物質層が形成されていない部位)231を有する。尚、正極23において、正極活物質層が形成されている部位を被覆部232と称する。
【0047】
負極24は、金属箔と、金属箔の上に形成された負極活物質層と、を有する。金属箔は帯状である。本実施形態の金属箔は、例えば、銅箔である。負極24は、帯形状の短手方向である幅方向の他方(正極23の非被覆部231と反対側)の端縁部に、負極活物質層の非被覆部(負極活物質層が形成されていない部位)241を有する。尚、負極24において、負極活物質層が形成されている部位を被覆部242と称する。
【0048】
本実施形態の電極体2では、以上のように構成される正極23と負極24とがセパレータ25によって絶縁された状態で巻回される。セパレータ25は、絶縁性を有する帯状の部材である。セパレータ25は、正極23と負極24との間に配置される。これにより、電極体2において、正極23と負極24とが互いに絶縁される。また、セパレータ25は、ケース3の内部において、電解液を保持する。これにより、蓄電素子1の充放電時において、リチウムイオンが、セパレータ25を挟んで交互に積層される正極23と負極24との間を移動可能となる。
【0049】
セパレータ25は、図3に示すように、被覆部232同士が重なるように幅方向に位置ずれした状態で重ね合わされた正極23と負極24との間に配置される。このとき、正極23の非被覆部231と負極24の非被覆部241とは重なっていない。即ち、正極23の非被覆部231が、正極23と負極24との重なる領域から幅方向に突出し、且つ、負極24の非被覆部241が、正極23と負極24との重なる領域から幅方向(正極23の非被覆部231の突出方向と反対の方向)に突出する。以上のように積層された状態の正極23、負極24、及びセパレータ25が巻回されることによって、電極体2が形成される。尚、図3では、正極23、負極24、及びセパレータ25における互いの相対位置を説明し易いよう、各構成の厚さ等を誇張して記載している。
【0050】
ケース3は、開口を有するケース本体31と、ケース本体31の開口を塞ぐ(閉じる)蓋板32と、を有する。ケース3は、該ケース3に設けられた注液孔325Aが封止されている注液封止部35Aを有する。また、ケース3は、該ケース3に設けられた排出孔325Bが封止されている排出封止部35Bも有する。このケース3は、電極体2及び集電体5等と共に、電解液を内部空間33に収容する。ケース3は、電解液に耐性を有する金属によって形成される。前記電解液は、非水溶液系電解液である。電解液は、有機溶媒に電解質塩を溶解させることによって得られる。
【0051】
ケース3は、直方体形状を有する。即ち、本実施形態の蓄電素子1は、いわゆる角形電池である。ケース3は、ケース本体31の開口周縁部と、蓋板32の周縁部とを重ね合わせた状態で接合することによって形成される。このケース3は、ケース本体31と蓋板32とによって画定される内部空間33を有する。
【0052】
ケース本体31は、板状の閉塞部311と、閉塞部311の周縁に接続される筒状の胴部312とを備える。
【0053】
閉塞部311は、開口が上を向くようにケース本体31が配置されたときに、ケース本体31の下端に位置する(即ち、前記開口が上を向いたときのケース本体31の底壁となる)部位である。閉塞部311は、該閉塞部311の法線方向視において、矩形状である。以下では、図1に示すように、閉塞部311の長辺方向をX軸方向とし、閉塞部311の短辺方向をY軸方向とし、閉塞部311の法線方向をZ軸方向とする。
【0054】
本実施形態の胴部312は、角筒形状を有する。詳しくは、胴部312は、偏平な角筒形状を有する。
【0055】
以上のように、ケース本体31は、開口方向(Z軸方向)における一方の端部が塞がれた角筒形状(即ち、有底角筒形状)を有する。
【0056】
蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐ板状の部材である。具体的には、蓋板32がケース本体31の開口を塞ぐように、蓋板32の周縁部が該ケース本体31の開口周縁部に重ねられる。前記開口周縁部と蓋板32とが重ねられた状態で、蓋板32とケース本体31との境界部が溶接される。これにより、ケース3が構成される。
【0057】
蓋板32は、Z軸方向視において、ケース本体31の開口周縁部に対応した輪郭形状を有する。即ち、蓋板32は、Z軸方向視において、X軸方向に長い矩形状の板材である。
【0058】
蓋板32は、ケース3の内部のガスを外部に排出可能なガス排出弁321を有する。ガス排出弁321は、ケース3の内部圧力が所定の圧力まで上昇したときに、該ケース3の内部から外部にガスを排出する。本実施形態のガス排出弁321は、X軸方向において、蓋板32の中央位置に対して一方の端部(図4では左側の端部)側に偏った位置に設けられる。
【0059】
具体的に、ガス排出弁321は、破断溝が形成された薄肉部を有する。ガス排出弁321は、ケース3の内部圧力(ガス圧)が所定の値よりも大きくなったときに薄肉部が破断溝から裂けることによって、ケース3の内部(内部空間33)と外部(外部空間)とを連通させる。これにより、ガス排出弁321は、ケース3の内部のガスを外部へ排出する。このようにして、ガス排出弁321は、上昇したケース3の内部圧力を下げる。
【0060】
蓋板32には、ケース3の内部と外部とを連通させる一対の貫通孔322が設けられる。貫通孔322は、X軸方向における蓋板32の両端部にそれぞれ設けられる(図4参照)。貫通孔322には、後述する貫通部材7が挿通される。
【0061】
ケース3には、電解液を注入するための注液孔325Aが設けられる。注液孔325Aは、ケース3の内部と外部とを連通する。本実施形態の注液孔325Aは、蓋板32に設けられる。注液孔325Aは、蓋板32をZ軸方向(厚さ方向)に貫通する。注液孔325Aは、X軸方向におけるガス排出弁321と一対の貫通孔322のいずれか一方(図4では右側の貫通孔322)との間、具体的には、ケース3の内部に配置されているガイド部8と対応する位置に設けられる。
【0062】
以上のように構成される注液孔325Aは、注液栓326Aによって密閉され(封止され)、これにより、ケース3の注液封止部35Aを構成する。即ち、注液封止部35Aは、注液孔325Aと注液栓326Aとを有する。本実施形態の注液栓326Aは、溶接によってケース3(本実施形態の例では蓋板32)に固定される。具体的には、注液栓326Aは、注液孔325Aを覆う頭部と、頭部から延びる挿入部とを有する。
【0063】
前記頭部は、注液孔325Aを覆う部位である。前記頭部は、板状の部位であり、蓋板32と重なるようにして注液孔325Aを覆う。本実施形態の頭部は、Z軸方向視において略円形の輪郭を有する。
【0064】
前記挿入部は、前記頭部から注液孔325Aを通ってケース3の内部に向けて延びる。即ち、前記挿入部は、前記頭部から延びる柱状の部位である。前記挿入部は、蓋板32の注液孔325Aよりも僅かに大きい。このため、注液栓326Aが蓋板32に取り付けられるときには、前記挿入部が注液孔325Aに圧入される。
【0065】
また、ケース3には、ケース3の内部の流体(空気、ガス等の気体、及び電解液等の液体)を排出可能な排出孔325Bが設けられる。排出孔325Bは、注液孔325Aと同様の構成である。即ち、排出孔325Bは、ケース3の内部と外部とを連通する。本実施形態の排出孔325Bは、蓋板32に設けられる。排出孔325Bは、蓋板32をZ軸方向に貫通する。本実施形態の排出孔325Bは、X軸方向におけるガス排出弁321と注液孔325Aとの間、具体的には、ケース3の内部に配置されているガイド部8と対応する位置に設けられる。
【0066】
以上のように構成される排出孔325Bは、排出栓326Bによって密閉され(封止され)、これにより、ケース3の排出封止部35Bを構成する。即ち、排出封止部35Bは、排出孔325Bと排出栓326Bとを有する。本実施形態の排出栓326Bは、溶接によってケース3(本実施形態の例では蓋板32)に固定される。この排出栓326Bは、注液栓326Aと同様に構成される。即ち、排出栓326Bは、排出孔325Bを覆う板状の頭部と、該頭部から延びて排出孔325Bに圧入される柱状の挿入部とを有する。
【0067】
注液封止部35Aと排出封止部35Bとは(即ち、注液孔325Aと排出孔325Bとは)、X軸方向に所定の距離をおいて設けられている。この所定の距離とは、具体的には、注液孔325Aからケース3の内部に電解液が注入されつつ排出孔325Bからケース3の内部の流体(空気等)が排出されたときに、ガイド部8において、注液孔325Aから注入された電解液が、そのまま排出孔325Bから出ない(吸い出されない)ような距離である。
【0068】
ガイド部8は、第一ガイド部81及び第二ガイド部82を有し、ケース3の内部において、電解液等の流体を案内する。本実施形態のガイド部8は、X軸方向に延び且つ内部に空間を有する長箱状であり、X軸方向における電極体2と蓋板32との間に配置されている。また、ガイド部8は、Z軸方向において、注液封止部35A及び排出封止部35Bと重なっている。詳しくは、第一ガイド部81が、注液封止部35A(注液孔325A)と重なる位置に配置され、第二ガイド部82が、排出封止部35B(排出孔325B)と重なる位置に配置される。
【0069】
第一ガイド部81は、注液孔325Aから電極体2のX軸方向における一端(図4における右端)201に向かう電解液の通過を許容する。具体的に、第一ガイド部81は、図4図6に示すように、ケース3の内部において、注液孔325Aから電極体2の一端201に向けて延びる筒状(箱状)の第一ガイド本体811と、第一ガイド本体811からの電解液の出入りを制御する第一通過制御部812と、を有する。
【0070】
第一ガイド本体811は、Z軸方向において注液孔325Aと重なる位置から、蓋板32の内面に沿って電極体2の一端201に向けて延びる。第一ガイド本体811は、内部に、注液孔325Aから電極体2の一端201に向う流路を形成可能な空間(流路空間)を有する。
【0071】
第一通過制御部812は、第一ガイド本体811の先端(電極体2の一端201側の端部)に設けられ、第一ガイド本体811の内部(流路空間)を通って注液孔325Aから電極体2の一端201に向かう電解液の通過を許容する(図5参照)。一方、第一通過制御部812は、ケース3の内部(詳しくは、ガイド部8を除くケース3の内部空間であって、電極体2配置される空間(以下、単に「配置空間」と称する。))から注液孔325Aに向かう流体の通過、即ち、配置空間から第一ガイド本体811の内部への流体の通過を阻止する(図6参照)。本実施形態の第一通過制御部812は、例えば、逆止弁である。このように、逆止弁812を用いることで、第一ガイド部81において、注液孔325Aから電極体2の一端201に向かう電解液の通過を許容する共に、配置空間から注液孔325Aに向かう流体の通過を阻止する構成を、容易に実現することができる。
【0072】
第二ガイド部82は、ケース3の内部から注液孔325Aに向かう流体の通過を許容すると共に、注液孔325Aから電極体2のX軸方向における他端202に向かう電解液の通過を阻止又は通過し難くする。具体的に、第二ガイド部82は、図4図7図8に示すように、ケース3の内部において、排出孔325Bから電極体2の他端202に向けて延びる筒状(箱状)の第二ガイド本体821と、第二ガイド本体821からの流体の出入りを制御する第二通過制御部822と、を有する。
【0073】
第二ガイド本体821は、Z軸方向において排出孔325Bと重なる位置から、蓋板32の内面に沿って電極体2の他端202に向けて延びる。第二ガイド本体821は、内部に、配置空間から排出孔325Bに向う流路を形成可能な流路空間を有する。本実施形態の蓄電素子1では、第一ガイド本体811と第二ガイド本体821とが一体である。即ち、第一ガイド本体811と第二ガイド本体821とがX軸方向に連接され、一つの筒状(長箱状)となっている。このため、第一ガイド本体811の流路空間と、第二ガイド本体821の流路空間とは、連通している。
【0074】
第二通過制御部822は、第二ガイド本体821の先端(電極体2の他端202側の端部)に設けられ、ケース3の内部から注液孔325Aに向かう流体の通過、即ち、配置空間から第二ガイド本体821の内部への流体の通過を許容する(図7参照)。一方、第二通過制御部822は、注液孔325A及び排出孔325Bから電極体2の他端202に向かう電解液の通過、即ち、第二ガイド本体821の内部から配置空間への流体の通過を阻止する(図8参照)。本実施形態の第二通過制御部822は、例えば、逆止弁である。このように、逆止弁を用いることで、第二ガイド部82において、配置空間から注液孔325Aに向かう流体の通過を許容すると共に、注液孔325Aから電極体2の他端202に向かう電解液の通過を阻止する構成を、容易に実現することができる。
【0075】
以上のように構成されるガイド部8では、排出封止部35B(排出孔325B)は、注液封止部35A(注液孔325A)より第二ガイド部82に近い位置に配置される。このため、第二ガイド部82において第二通過制御部822から注液孔325Aに向かうケース3の内部(詳しくは、配置空間内)の流体が注液孔325Aよりも排出孔325Bから排出され易くなる。このため、ガイド部8では、注液孔325Aから注入された電解液が第一ガイド部81を通過して電極体2の一端201に供給され、且つ、ケース3の内部(詳しくは、配置空間内)の流体が第二ガイド部82を通過して排出孔325Bから外部に排出され易くなる。
【0076】
外部端子4は、他の蓄電素子の外部端子又は外部機器等と電気的に接続される部位である。外部端子4は、導電性を有する部材によって形成される。例えば、外部端子4は、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料、銅又は銅合金等の銅系金属材料等の溶接性の高い金属材料によって形成される。
【0077】
蓄電素子1は、ケース3を貫通する貫通部材7を備える。貫通部材7は、ケース3の内部に配置される集電体5と、ケース3の外部に配置される外部端子4とを通電させる。貫通部材7は、導電性の金属によって形成され、外部端子4から集電体5まで延びる。本実施形態の貫通部材7は、外部端子4と一体に形成される。蓋板32と、外部端子4及び貫通部材7との間は、密閉されている。即ち、ケース3は、注液孔325A及び排出孔325Bを除いて、気密構造を有する。
【0078】
集電体5は、ケース3の内部に配置され、電極体2と通電可能に直接又は間接に接続される。本実施形態の集電体5は、クリップ部材50を介して電極体2と通電可能に接続される。集電体5は、導電性を有する部材によって形成される。図4に示すように、集電体5は、ケース3の内面に沿って配置される。本実施形態の集電体5は、貫通部材7とクリップ部材50とを通電可能に接続する。集電体5は、蓄電素子1の正極と負極とにそれぞれ配置される。本実施形態の蓄電素子1では、ケース3の内部において、電極体2の一端201と、他端202とにそれぞれ接続される。
【0079】
蓄電素子1は、電極体2とケース3とを絶縁する絶縁部材6等を備える。本実施形態の絶縁部材6は、例えば、絶縁カバーである。絶縁カバー6は、ケース3(詳しくはケース本体31)と電極体2との間に配置される。絶縁カバー6は、絶縁性を有する素材によって形成される。絶縁カバー6は、シート状の部材によって構成される。本実施形態の絶縁カバー6は、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド等の樹脂によって形成される。絶縁カバー6は、所定の形状に裁断された絶縁性を有するシート状の部材を折り曲げることによって袋状に形成される。
【0080】
絶縁カバー6は、シート状の部材を単に折り曲げて袋状に形成せずに、シート状の部材を例えば融着又は溶着して袋状に形成してもよい。また、絶縁カバー6は、初めから袋状に形成されてもよい。絶縁カバー6の代わりに、ケース3の内面に絶縁層が設けられ、これにより、電極体2とケース3とが絶縁されてもよい。
【0081】
本実施形態の蓄電素子1では、袋状の絶縁カバー6に収容された状態の電極体2(詳しくは、電極体2及び集電体5)がケース3の内部に収容される。
【0082】
次に、上述のように構成される蓄電素子1の製造方法を、図9及び図10も参照しつつ説明する。
【0083】
外部端子4、集電体5、電極体2、絶縁カバー6、及びガイド部8等が蓋板32に組み付けられる(ステップS1)。このとき、蓋板32は、注液孔325Aには注液栓326Aが取り付けられておらず、排出孔325Bには排出栓326Bが取り付けられていない状態である。即ち、ケース3の注液封止部35Aにおいて注液孔325Aが封止されていない状態であり、且つ、ケース3の排出封止部35Bにおいて、排出孔325Bが封止されていない状態である。
【0084】
組み付けられた電極体2等がケース本体31に収容され且つ蓋板32がケース本体31の開口を塞ぐように、蓋板32の周縁部がケース本体31の開口周縁部に重ねられる。この状態で、蓋板32とケース本体31との境界部が溶接される(ステップS2)。
【0085】
次に、ケース3が、注液孔325Aが排出孔325Bより下方に位置するような姿勢にされ、電解液が注液孔325Aからケース3の内部に注入される。具体的には、以下の通りである。
【0086】
先ず、ケース3が、図10に示すように、注液孔325Aが排出孔325Bより下方に位置し且つ電極体2の巻回中心方向(X軸方向)が上下方向(重力方向)を向く姿勢(注液姿勢)にされる(ステップS3)。続いて、注液孔325Aからケース3の内部に空気等が流入しない状態で、ケース3の内部が低圧状態になるように排出孔325Bからケース3の内部の流体(空気等)が排出される(ステップS4)。このとき、ガイド部8では、図7に示すように、第二通過制御部(逆止弁)822が開き、配置空間内の流体が第二ガイド部82によって排出孔325Bまで案内される一方、図6に示すように、第一通過制御部(逆止部)812が閉じ、配置空間内の流体が第一ガイド部81に流入するのが阻止される。ここで、ケース3の内部が低圧状態であるとは、ケース3の内部の圧力が大気圧(1気圧)よりも小さい状態をいう。注入の際に電解液がケース3の内部により引き込まれやすいという観点から、ケース3の内部の圧力は、0.1気圧以下が好ましく、0.01気圧以下がさらに好ましい。
【0087】
ケース3の内部が低圧状態になると、電解液が注液孔325Aからケース3の内部に注入される(ステップS5)。このとき、ガイド部8では、第一ガイド部81が、注液孔325Aから注入された電解液を電極体2の一端201に向けて案内すると共に、第二ガイド部82が、注入された電解液が電極体2の他端202に向かうのを阻止する。即ち、ガイド部8では、図5に示すように、第一通過制御部812が開き、第一ガイド部81が、注入された電解液を電極体2の一端201に向けて流出させる一方、図8に示すように、第二通過制御部822が閉じ、注液孔325Aから注入された電解液が電極体2の他端202に向かうのを第二ガイド部82が阻止する(防ぐ)。
【0088】
このように、ケース3の内部が低圧になった状態で電解液が注入されると、ケース3の内部では、注液孔325Aからケース3の内部に注入された電解液が第一ガイド部81によって電極体2の一端201に向けて案内されると共に、該電解液が電極体2の他端202に向かうのを第二ガイド部82によって阻止される。このため、電極体2の一端201が他端202に比べ、注入された電解液に接し易くなる。よって、蓄電素子1の製造時(注入時)において、電解液が、電極体2の一端201(詳しくは、開放端203:図3参照)から電極体2の内部に染み込み、電解液が電極体2の内部を一端201から他端202に向けて染み渡る(図10の矢印α参照)。これにより、電解液の注入前に電極(正極23、負極24)とセパレータ25との間にあった気体が、染み込んだ電解液に押し出されるように電極体2の他端202から排出される。その結果、電解液が電極体2全体に染み渡ったときに、前記気体が電極体2の内部に取り残され難くなる。このとき、電極体2の他端202から排出された気体は、第二ガイド部82を通じて排出孔325Bから排出される。前記開放端203は、電極体2において、積層された電極(正極23及び負極24)とセパレータ25との間に電解液が浸入する入口となる部位である。本実施形態における電極体2の一端201側の開放端203は、図3に示すように、正極23と負極24とが幅方向に位置ずれした状態でセパレータ25を介して積層されている電極体2における、正極23と負極24とが重なっている(積層されている)部分のうちの幅方向の一方の端縁位置となる部位である。詳しくは、一端201側の開放端203は、電極体2において、正極23の被覆部232の一方の端縁(非被覆部231と反対側の端縁)位置となる部位である。一方、電極体2の他端202側の開放端204は、電極体2における、正極23と負極24とが重なっている部分のうちの幅方向の他方の端縁位置(前記一端201側の開放端203と反対側の端縁位置)となる部位である。この電極体2の他端202側の開放端204は、注入時において、電極(正極23及び負極24)とセパレータ25との間にあった気体(空気等)が放出される出口となる部位である。詳しくは、他端202側の開放端204は、電極体2において、正極23の被覆部232の他方の端縁(非被覆部231と隣接する端縁)位置となる部位である。
【0089】
尚、本実施形態では、電解液の注入時(ステップS5)において、排出孔325Bからの流体の排出が停止されるが、排出孔325Bからの流体の排出が続けられてもよい。
【0090】
電解液の注入後、所定の時間が経過して電解液が電極体2に十分染み込んだ後、必要に応じて、不要な電解液(注入された電解液の一部)が、第二ガイド部82を通じて排出孔325Bから排出される(ステップS6)。
【0091】
不要な電解液が排出されると、注液孔325Aが注液栓326Aによって封止されると共に、排出孔325Bが排出栓326Bによって封止され(ステップS7)、蓄電素子1が完成する。
【0092】
以上の蓄電素子1及び蓄電素子1の製造方法によれば、第一ガイド部81及び第二ガイド部82によって、注液孔325Aからケース3の内部に注入された電解液が電極体2の一端201に向けて案内されると共に該電解液が電極体2の他端202に向かうのを阻止される。これにより、電極体2の一端201が、他端202に比べて、注入された電解液に接し易くなる。このため、蓄電素子1の製造時(注入時)において、電解液が、電極体2の一端201から電極体2の内部に染み込み(浸入し)易くなる。その結果、上述のように、電解液の注入前に電極(正極23、負極24)とセパレータ25との間にあった気体が、染み込んだ電解液に押し出されるように電極体2の他端202から排出される。これにより、電解液が電極体2の内部全体に染み渡ったときに前記気体が電極体2の内部に取り残され難くなる。このようにして、電極体2の内部への電解液の染み込みが不均一になり難い蓄電素子1が得られる。
【0093】
本実施形態の蓄電素子1の製造方法では、電解液の注入時に、ケース3は、電極体2のX軸方向(巻回中心方向)が上下を向く姿勢で電解液を注入される。このとき、ケース3の内部において電解液が案内される位置(電極体2の一端201)が下端となり且つ電極体2の一端201が下方を向くような姿勢のケース3に対して電解液が注入されている。このため、電極体2の一端201のZ軸方向全体が電解液に接しやすく、これにより、電解液を電極体2により効率よく染み込ませることができる。
【0094】
本実施形態の蓄電素子1の製造方法では、注液の際に、ケース3の内部が低圧状態であるため、注入の際に電解液がケース3の内部に引き込まれ、これにより、ケース3の内部への電解液の注入が容易になる。
【0095】
尚、本発明の蓄電素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0096】
上記実施形態のガイド部8では、第一ガイド本体811の内部(流路空間)と第二ガイド本体821の内部(流路空間)とが連通しているが、この構成に限定されない。例えば、ガイド部8は、第一ガイド本体811の流路空間と第二ガイド本体821の流路空間とを隔てる隔壁部を備えてもよい。かかる構成によれば、注液孔325Aから注入された電解液が配置空間を通過せずに排出孔325Bから排出されるのを確実に防ぐことができる。
【0097】
上記実施形態のガイド部8では、第一ガイド部81と第二ガイド部82とが一体であるが、別体であってもよい。かかる構成によれば、注液封止部35Aと排出封止部35Bとが近接して配置されなくてもよく、注液封止部35A及び排出封止部35Bの配置の自由度が向上する。
【0098】
第一通過制御部812の具体的構成は、限定されない。上記実施形態の第一通過制御部812は、逆止弁であるが、第一ガイド部81の内部から配置空間へ向かう電解液の通過(流出)を許容する構成であれば、他の構成であってもよい。例えば、図11に示すように、第一通過制御部813は、単なる開口であってもよい。
【0099】
第二通過制御部822の具体的構成は、限定されない。上記実施形態の第二通過制御部822は、逆止弁であるが、配置空間から第二ガイド部82の内部へ向かう流体の通過(流入)を許容すると共に、第二ガイド部82の内部から配置空間への流体の通過(流出)を阻止できる構成であれば、他の構成であってもよい。
【0100】
また、第二通過制御部822は、配置空間から第二ガイド部82の内部に気体が流入し易く、且つ、第二ガイド部82の内部から配置空間に向かう電解液が通過し難い構成であってもよい。例えば具体的には、図11に示すように、第二通過制御部823は、第二ガイド本体821の内部に流入する流体の流路(ケース3の内部から注液孔325Aへ向かう流体の流路)と交差するように配置されるメッシュ部材でもよい。気体の粘度に比べて液体の粘度の方が高いため、液体の方が気体よりメッシュ部材を通過し難い。このため、前記構成によれば、簡素な構成部材によって、配置空間から第二ガイド部82の内部へ向かう空気等の気体を通過させ易く、且つ、第二ガイド部82の内部から配置空間へ向かう(注液孔325Aから電極体2の他端202に向かう)電解液等の液体を通過させ難くする構成を、実現できる。これにより、第二ガイド部82では、注液孔325Aからケース3の内部に注入された電解液が電極体2の一端201に向けて案内されると共に該電解液が電極体2の他端202に向かい難くなる。このため、電極体2の一端201が、他端202に比べて、注入された電解液に接し易くなる。
【0101】
上記実施形態の蓄電素子1の製造方法における注液姿勢は、電極体2のX軸方向(巻回中心方向)が上下方向を向いた姿勢であるが、この注液姿勢に限定されない。注液姿勢は、注液孔325Aが排出孔325Bより下方に位置するような姿勢であればよい。このような注液姿勢とすることで、電極体2の一端201が他端202より下方に位置するため、第一ガイド部81によって案内された電解液が、ケース3の内部において、重力によって電極体2の一端201の近傍により向かい易く且つ電極体2の他端202には向かい難くなる。その結果、電解液を電極体2の一端201から効率よく染み込ませることができる。
【0102】
上記実施形態では、ケース3の内部から流体(空気等)が排出され(上記実施形態のステップS4参照)、ケース3の内部が減圧された後、電解液がケース3の内部に注入される(上記実施形態のステップS5参照)が、図12に示すように、排出孔325Bからのケース3の内部の気体の排気と、注液孔325Aからのケース3の内部への電解液の注入とが同時に行われてもよい(ステップS4−1)。この場合、ステップS1〜S3、S6〜S7は、上記実施形態と同様である。かかる構成によっても、注入時に、ケース3の内部を低圧状態に保つことができる。
【0103】
上記実施形態のケース3には、注液孔325Aと排出孔325Bとが設けられているが、この構成に限定されない。ケース3に排出孔325Bが設けられず、ケース3における注液孔325Aを除く部位が気密構造となっていてもよい。この場合、ケース3の内部を低圧状態にする(上記実施形態のステップS4参照)ことは、注液孔325Aから排気することによって行われる。かかる構成によれば、気体等の流体を排出させてケース3の内部を低圧状態にするための排出孔325B及び該排出孔325Bを封止する部材326B等を設けなくてもよく、これにより、ケース3の構成の簡素化が図られると共に、流体の排出後に排出孔を封止する作業をなくすことができる。
【0104】
上記実施形態の電極体2は、巻芯を備えていない構成であるが、この構成に限定されない。電極体2は、巻芯を備えた構成でもよい。この場合、巻芯の周囲に、正極23、負極24、及びセパレータ25が積層された状態で巻回されることによって電極体2が形成される。
【0105】
また、上記実施形態においては、蓄電素子が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子の種類や大きさ(容量)は任意である。また、上記実施形態において、蓄電素子の一例として、リチウムイオン二次電池について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明は、種々の二次電池、その他、一次電池や、電気二重層キャパシタ等のキャパシタの蓄電素子にも適用可能である。
【0106】
蓄電素子(例えば電池)は、図13に示すような蓄電装置(蓄電素子が電池の場合は電池モジュール)11に用いられてもよい。蓄電装置11は、少なくとも二つの蓄電素子1と、二つの(異なる)蓄電素子1同士を電気的に接続するバスバ部材12と、を有する。この場合、本発明の技術が少なくとも一つの蓄電素子1に適用されていればよい。
【符号の説明】
【0107】
1…蓄電素子、2…電極体、201…一端、202…他端、203…一端側の開放端、204…他端側の開放端、23…正極、231…非被覆部、232…被覆部、24…負極、241…非被覆部、242…被覆部、25…セパレータ、3…ケース、31…ケース本体、311…閉塞部、312…胴部、32…蓋板、321…ガス排出弁、322…貫通孔、325A…注液孔、325B…排出孔、326A…注液栓、326B…排出栓、33…内部空間、35A…注液封止部、35B…排出封止部、4…外部端子、5…集電体、50…クリップ部材、6…絶縁部材(絶縁カバー)、7…貫通部材、8…ガイド部、81…第一ガイド部、811…第一ガイド本体、812,813…第一通過制御部、82…第二ガイド部、821…第二ガイド本体、822,823…第二通過制御部、11…蓄電装置、12…バスバ部材
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
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図10
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図13