特許第6459023号(P6459023)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6459023
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】蓄電素子及び蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/133 20100101AFI20190121BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20190121BHJP
   H01M 4/70 20060101ALI20190121BHJP
   H01G 11/24 20130101ALI20190121BHJP
   H01G 11/32 20130101ALI20190121BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20190121BHJP
【FI】
   H01M4/133
   H01M4/587
   H01M4/70 A
   H01G11/24
   H01G11/32
   H01G11/06
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-122574(P2014-122574)
(22)【出願日】2014年6月13日
(65)【公開番号】特開2015-26607(P2015-26607A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2017年4月25日
(31)【優先権主張番号】特願2013-127744(P2013-127744)
(32)【優先日】2013年6月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】中井 健太
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 明彦
(72)【発明者】
【氏名】加古 智典
(72)【発明者】
【氏名】森 澄男
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−022433(JP,A)
【文献】 特開2012−033475(JP,A)
【文献】 特開2011−124180(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/069197(WO,A1)
【文献】 特開2005−285651(JP,A)
【文献】 特開2006−185830(JP,A)
【文献】 特開2010−153224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
H01G 11/06
H01G 11/24
H01G 11/32
H01M 4/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有する負極基材と、前記負極基材の前記表面に形成され且つ負極活物質を有する負極合剤層とを含む負極と、
正極基材と、前記正極基材に形成され且つ正極活物質を有する正極合剤層とを含む正極と、
前記正極及び前記負極の間に配置されたセパレーターとを備え、
前記負極活物質は、ハードカーボンを含み、
前記負極活物質の体積基準粒度分布の10%累積径D10が1.3μm以上であり、前記負極活物質の体積基準粒度分布の90%の累積径D90が8.9μm以下であり、
前記負極基材の前記表面において、中心線粗さRaが0.205μm以上0.781μm以下であり、十点平均高さRzに対する中心線粗さRaが0.072以上0.100以下である、蓄電素子。
【請求項2】
前記中心線粗さRaが、0.291μm以上0.594μm以下である、請求項1に記載の蓄電素子。
【請求項3】
前記中心線粗さRaが、0.323μm以上0.514μm以下である、請求項1に記載の蓄電素子。
【請求項4】
前記十点平均高さRzに対する前記中心線粗さRa(Ra/Rz)が、0.081以上0.089以下である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蓄電素子。
【請求項5】
前記十点平均高さRzに対する前記中心線粗さRa(Ra/Rz)が、0.083以上0.086以下である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蓄電素子。
【請求項6】
前記負極活物質の体積基準粒度分布の10%累積径D10が、1.3μm以上であり、前記負極活物質の体積基準粒度分布の90%の累積径D90が、4.5μm以下である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の蓄電素子。
【請求項7】
前記負極活物質の体積基準粒度分布の10%累積径D10が1.6μm以上であり、前記負極活物質の体積基準粒度分布の90%の累積径D90が3.6μm以下である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の蓄電素子。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の蓄電素子を含む、蓄電モジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子、及び、該蓄電素子を含む蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車、自動二輪車等の車両、携帯端末、ノート型パソコン等の各種機器などの動力源として、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池等の電池、電気二重層キャパシタ等のキャパシタといった放充電可能な蓄電素子が採用されている。このような蓄電素子に用いられる電極は、例えば、特開2011−258407号公報(特許文献1)、特開2010−135342号公報(特許文献2)などに開示されている。
【0003】
特許文献1には、銅箔からなる負極集電体表面に、リチウムを吸蔵及び放出可能な負極活物質を含有する負極活物質層を有するリチウムイオン二次電池用負極が開示され、負極集電体表面は凹凸を有し、負極集電体の凹凸を有する面の最大高さRyが0.5μm〜5.0μmであり、負極集電体の凹凸を有する面の局部山頂の平均間隔Sが負極活物質の平均粒子径の50〜500%であることが開示されている。
【0004】
特許文献2には、10点平均粗さRz値が1.8μm以上10.0μm以下である活物質層形成領域、及び10点平均粗さRz値が1.7μm以下である平滑領域を含む集電体と、この集電体の活物質形成領域に設けられた活物質層とを備え、平滑領域に電極リードが接続されている電極が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−258407号公報
【特許文献2】特開2010−135342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1及び2に開示の電極を備えた電池を高温で使用すると、入力が大幅に低下することを本発明者は見出した。
【0007】
本発明は、高温で使用したときに入力の低下を抑制できる蓄電素子、及び、該蓄電素子を含む蓄電モジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が鋭意研究した結果、蓄電素子を高温で使用したときの入力の低下は、負極活物質の粒子径と、負極基材における活物質が形成されている表面の凹凸の大きさに起因していることを見出した。そこで、蓄電素子を高温で使用したときに入力の低下を抑制するために本発明者が鋭意研究した結果、負極活物質の体積基準粒度分布の10%累積径D10及び90%累積径D90と、負極基材の表面の中心線粗さRaと、負極基材の表面における十点平均高さRzに対する中心線粗さRaとを規定することにより、入力の低下を制御できることを見出して、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明の蓄電素子は、表面を有する負極基材と、前記負極基材の前記表面に形成され且つ負極活物質を有する負極合剤層とを含む負極と、
正極基材と、前記正極基材に形成され且つ正極活物質を有する正極合剤層とを含む正極と、
前記正極及び前記負極の間に配置されたセパレーターとを備え、
前記負極活物質の体積基準粒度分布の10%累積径D10が1.3μm以上であり、前記負極活物質の体積基準粒度分布の90%の累積径D90が8.9μm以下であり、
前記負極基材の前記表面において、中心線粗さRaが0.205μm以上0.781μm以下であり、十点平均高さRzに対する中心線粗さRaが0.072以上0.100以下である。
【0010】
本発明者が鋭意研究した結果、負極活物質の体積基準粒度分布の10%累積径D10及び90%累積径D90と、負極基材の表面の中心線粗さRaと、負極基材の表面における十点平均高さRzに対する中心線粗さRaとをパラメータとして上記範囲内に規定することによって、本発明の蓄電素子を高温で使用したときに入力の低下を抑制できることを見出した。したがって、本発明は、高温で使用したときに、入力の低下を抑制できる蓄電素子を提供することができる。
【0011】
本発明の蓄電素子の一態様としては、上記の中心線粗さRaが、0.291μm以上0.594μm以下である態様が採用される。
本発明の蓄電素子の他の態様としては、上記の中心線粗さRaが、0.323μm以上0.514μm以下である態様が採用される。
本発明の蓄電素子の他の態様としては、十点平均高さRzに対する中心線粗さRa(Ra/Rz)が、0.081以上0.089以下である態様が採用される。
本発明の蓄電素子の他の態様としては、十点平均高さRzに対する中心線粗さRa(Ra/Rz)が、0.083以上0.086以下である態様が採用される。
本発明の蓄電素子の他の態様としては、負極活物質の体積基準粒度分布の10%累積径D10が、1.3μm以上であり、負極活物質の体積基準粒度分布の90%の累積径D90が、4.5μm以下である態様が採用される。
本発明の蓄電素子の他の態様としては、負極活物質の体積基準粒度分布の10%累積径D10が1.6μm以上であり、負極活物質の体積基準粒度分布の90%の累積径D90が3.6μm以下である態様が採用される。
【0012】
本発明の蓄電素子の他の態様としては、負極活物質が、ハードカーボンを含む態様が採用される。ハードカーボンは、使用時における膨張及び収縮が相対的に小さい活物質であるので、高温で使用したときに、入力の低下をより抑制できる。
【0013】
本発明の蓄電モジュールは、上記の蓄電素子を含む。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明は、高温で使用したときに、入力の低下を抑制できる蓄電素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態における蓄電素子の負極を概略的に示す拡大模式図である。
図2】本発明の実施の形態における蓄電素子の一例である非水電解質二次電池を概略的に示す斜視図である。
図3】本発明の実施の形態における非水電解質二次電池のケースの内部を概略的に示す斜視図である。
図4】本発明の実施の形態における非水電解質二次電池を構成する電極体を概略的に示す模式図である。
図5】本発明の実施の形態における電極体を構成する正極を概略的に示す拡大模式図である。
図6】本発明の実施の形態における電極体を構成するセパレーターを概略的に示す拡大模式図である。
図7】同実施の形態に係る蓄電素子を含む蓄電モジュールの斜視図である。
図8】参考の形態における蓄電システム及びこれを車両に搭載した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付しその説明は繰り返さない。
【0017】
(実施の形態)
図1図6を参照して、本発明の実施の形態である蓄電素子の一例である非水電解質二次電池1を説明する。具体的には、非水電解質二次電池1は、リチウムイオンの移動に伴って生じる電子移動を利用したリチウムイオン二次電池である。非水電解質二次電池1は、車載用であることが好ましく、ハイブリッド自動車用であることがより好ましい。
この種の蓄電素子は、電気エネルギーを供給する。蓄電素子は、単一又は複数で使用される。具体的に、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧が小さいときには、単一で使用される。一方、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧の少なくとも一方が大きいときには、他の蓄電素子と組み合わされて蓄電モジュール101に用いられる。蓄電モジュール101では、該蓄電モジュール101に用いられる蓄電素子1が電気エネルギーを供給する。
【0018】
非水電解質二次電池1は、負極11と、正極13と、負極11及び正極13の間に配置されたセパレーター12とを備える。まず、負極11について詳しく説明する。
【0019】
図1に示すように、負極11は、負極集電箔11Aと、負極集電箔11Aに形成された負極合剤層11Bとを有する。負極集電箔11Aは、表面11A1と、この表面11A1と反対側の裏面11A2とを有する。
【0020】
負極集電箔11Aの表面11A1及び裏面11A2の少なくとも一方において、中心線粗さRaが0.205μm以上0.781μm以下であり、0.291μm以上0.594μm以下であることが好ましく、0.323μm以上0.514μm以下であることがより好ましい。
【0021】
負極集電箔11Aの表面11A1及び裏面11A2の少なくとも一方において、十点平均高さRzに対する中心線粗さRa(Ra/Rz)が0.072以上0.100以下であり、0.081以上0.089以下であることが好ましく、0.083以上0.086以下であることがより好ましい。
【0022】
ここで、負極集電箔11Aの表面11A1及び裏面11A2の中心線粗さRa及び十点平均高さRzはJIS B 0601−1994に準拠して測定される値である。十点平均高さRzに対する中心線粗さRa(Ra/Rz)は、中心線粗さRa(単位:μm)を十点平均高さRz(単位:μm)で除した値である。
【0023】
負極集電箔11Aの表面11A1及び裏面11A2の中心線粗さRa、十点平均高さRz、及び十点平均高さRzに対する中心線粗さRa(Ra/Rz)を調整するためには、負極集電箔11Aの表面11A1及び裏面11A2を粗面化することが必要である。負極集電箔11Aの表面11A1及び裏面11A2を粗面化する方法としては、特に限定されず、例えば、負極集電箔11Aの表面11A1及び裏面11A2を研磨紙でこする方法、サンドブラスト等のブラスト加工を用いる方法、粗面化されたプレスロールでプレスする方法、負極集電箔11Aの表面11A1及び裏面11A2上に負極合剤層11Bを形成させた後に粗面化されたプレスロールでプレスすることで粗面化させる方法、酸による化学エッチングやイオン衝突による物理エッチングをすることで粗面化させる方法などが挙げられる。これらの方法では、1種を単独で採用または2種以上を併用することができる。
【0024】
なお、本実施の形態では、負極基材として、負極集電箔を例に挙げて説明しているが、本発明において負極基材は箔状に限定されない。
【0025】
負極合剤層11Bは、負極活物質と、バインダとを有する。なお、負極合剤層11Bは、導電助剤をさらに有していてもよい。
【0026】
負極活物質の体積基準粒度分布の10%累積径D10は、1.3μm以上であり、負極活物質の体積基準粒度分布の90%の累積径D90は、8.9μm以下である。負極活物質のD10は、1.3μm以上であり、負極活物質のD90は、4.5μm以下であることが好ましい。負極活物質のD10は、1.6μm以上であり、負極活物質のD90は、3.6μm以下であることがより好ましい。
【0027】
ここで、上記D10は、レーザー回折散乱法で測定される粒子の体積分布上で10%の体積に該当する粒子径を示し、上記D90は、レーザー回折散乱法で測定される粒子の体積分布上で90%の体積に該当する粒子径を示す。
【0028】
D10及びD90を調整するためには、必要に応じて活物質の分級を行う必要がある。活物質を分級する方法は、特に限定されるものではなく、活物質を分級する方法では、例えば、篩を用いてもよいし、風力分級機などを用いてもよい。
【0029】
負極活物質は、炭素材料としてのハードカーボンを含み、ハードカーボンからなることが好ましい。
負極活物質に含まれる物質としては、例えば、炭素材料、その他リチウムと合金化可能な元素、合金、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物等が挙げられる。炭素材料の例としては、ハードカーボンの他、ソフトカーボン、グラファイト等が挙げられる。リチウムと合金可能な元素の例としては、例えば、Al、Si、Zn、Ge、Cd、Sn、及びPb等を挙げることができる。これらは単独で含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。また、合金の例としては、Ni−Si合金、及びTi−Si合金等の遷移金属元素を含む合金等が挙げられる。金属酸化物の例としては、SnB0.40.63.1などのアモルファススズ酸化物、SnSiO3などのスズ珪素酸化物、SiOなどの酸化珪素、Li4+xTi512などのスピネル構造のチタン酸リチウム等が挙げられる。金属硫化物の例としては、TiS2などの硫化リチウム、MoS2などの硫化モリブデン、FeS、FeS2、LixFeS2などの硫化鉄が挙げられる。これらの中でも、負極活物質に含まれる物質としては、特にハードカーボン、中でもD50粒子径が8μmより小さいハードカーボンが好ましい。
【0030】
バインダは、特に限定されないが、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリカーボネートなどを挙げることができる。特に電気化学的な安定性の点からは、バインダは、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、及びポリエチレンオキサイドの少なくとも1種であることが好ましく、PVDF、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、及びスチレン−ブタジエンゴムの少なくとも1種であることがより好ましい。
【0031】
なお、本実施の形態では、負極集電箔11Aの表面11A1及び裏面11A2のそれぞれに、負極合剤層11Bが形成されているが、本発明はこの構造に特に限定されない。例えば、負極集電箔11Aの表面11A1のみに、負極合剤層11Bが形成されていてもよい。ただし、負極合剤層11Bが形成される面において、中心線粗さRaが0.205μm以上0.781μm以下であり、十点平均高さRzに対する中心線粗さRaが0.072以上0.100以下である。
【0032】
続いて、本実施の形態における非水電解質二次電池用負極の製造方法について説明する。
【0033】
まず、体積基準粒度分布の10%累積径D10が1.3μm以上であり、体積基準粒度分布の90%の累積径D90が8.9μm以下である負極活物質が準備される。この工程は、例えば体積粒度分布の最少粒子径Dminが1μm以下であり、最大粒子径Dmaxが10μm以上の活物質を目開き10μmの篩に複数回かけることで実施される。
【0034】
また、中心線粗さRaが0.205以上0.781以下であり、十点平均高さRzに対する中心線粗さRaが0.072以上0.100以下である表面11A1(本実施の形態では表面11A1及び裏面11A2)を有する負極基材としての負極集電箔11Aが準備される。
【0035】
この工程では、例えば、以下のようにして、上記の中心線粗さRa及び十点平均高さRzを有する表面11A1が形成される。例えば、負極集電箔11Aの表面がエッチングされる。また、例えば、負極集電箔11Aの表面が、粗面化されたロールを用いてプレスされる。また、例えば、負極集電箔11Aの表面に負極合材層11Bを形成させた後に、粗面化されたロールを用いたプレス処理が施される。この場合、負極活物質としてハードカーボンが用いられる際には、プレス線圧は、例えば19〜157kgf/mmであり、負極活物質としてハードカーボン以外が用いられる場合には、プレス線圧は、例えば11〜221kgf/mmである。
【0036】
次に、負極活物質と、バインダとが混合され、この混合物が溶剤に加えられて混練りされて、負極合剤が調製される。この負極合剤が負極集電箔11Aの少なくとも表面11A1(本実施の形態では表面11A1及び裏面11A2)に塗布され、乾燥後、圧縮成形される。これにより、負極集電箔11Aの表面11A1上に負極合剤層11Bが形成された負極11が製造される。なお、圧縮成形後、真空乾燥を行う。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態における非水電解質二次電池用負極11は、表面11A1を有する負極基材としての負極集電箔11Aと、負極集電箔11Aの表面11A1に形成され、かつ負極活物質を有する負極合剤層11Bとを備え、負極活物質の体積基準粒度分布の10%累積径D10が1.3μm以上であり、負極活物質の体積基準粒度分布の90%の累積径D90が8.9μm以下であり、負極集電箔11Aの表面11A1において、中心線粗さRaが0.205以上0.781以下であり、十点平均高さRzに対する中心線粗さRaが0.072以上0.100以下である。
【0038】
本実施の形態における非水電解質二次電池用負極11によれば、負極活物質のD10及びD90を上記範囲内にすることによって、比較的小さい粒子径の活物質を用いることができるので、高い入力特性が得られる。
負極集電箔11Aの表面11A1における中心線粗さRaを上記範囲内にすることによって、表面11A1の凹部を負極活物質の粒子径に適した大きさに規定することができる。負極集電箔11Aの表面11A1における十点平均高さRzに対する中心線粗さRa(Ra/Rz)を上記範囲内にすることによって、表面11A1の凹部を負極活物質の粒子径に適した様々な大きさに形成できるので、負極活物質の一部もしくは全体を様々の大きさの凹部に入り込ませることができる。これにより、活物質と負極集電箔11Aとの密着性(保持力)を高めることができる。
したがって、本実施の形態における非水電解質二次電池用負極11を用いた非水電解質二次電池を高温で使用しても、密着性(保持力)を向上することにより、入力の低下を抑制することができる。
【0039】
このように、本実施の形態における非水電解質二次電池用負極11は、高温で使用したときに、入力の低下を抑制できるので、車載用に好適に用いられ、ハイブリッド自動車用または電気自動車用により好適に用いられる。
【0040】
続いて、本発明の実施の形態である蓄電素子の一例である非水電解質二次電池1について、さらに詳しく説明する。
【0041】
図2及び図3に示すように、本実施の形態の非水電解質二次電池1は、ケース2と、このケース2に収容された電解液3と、ケース2に取り付けられた外部絶縁部材5と、このケース2に収容された電極体10と、この電極体10と電気的に接続された外部端子21とを備えている。
【0042】
図2に示すように、ケース2は、電極体10を収容するケース本体2aと、ケース本体2aを覆う蓋板2bとを有する。ケース本体2a及び蓋板2bは、例えばステンレス鋼板で形成され、互いに溶接されている。
【0043】
蓋板2bの外面には、開口を有する外部絶縁部材5が配置され、蓋板2bの開口部と外部絶縁部材5の開口部とが連なっている。外部絶縁部材5は例えば凹部を有し、この凹部内に外部端子21が配置されている。
【0044】
ケース2内にて、外部端子21は、電極体10に接続された集電部と接続されている。なお、集電部の形状は特に限定されないが、例えば板状である。外部端子21は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料で形成されている。
【0045】
外部絶縁部材5及び外部端子21は、正極用と負極用とが設けられている。正極用の外部絶縁部材5及び外部端子21は、蓋板2bの長手方向における一端側に配置され、負極用の外部絶縁部材5及び外部端子21は、蓋板2bの長手方向における他端側に配置されている。
【0046】
ケース本体2aの内部には、電解液3が収容され、電解液3は、電極体10に含浸されている。電解液3は、有機溶媒に電解質塩が溶解されて調製されている。
有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等のエステル系溶媒や、γ−ブチロラクトン(γ−BL)等のエステル系溶媒にジエトキシエタン(DEE)等のエーテル系溶媒等を配合してなる有機溶媒等が挙げられる。また、電解質塩としては、過塩素酸リチウム(LiClO)、ホウフッ化リチウム(LiBF)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)などのリチウム塩等が挙げられる。
【0047】
図3に示すように、ケース本体2aの内部には、電極体10が収容されている。ケース2内には、1つの電極体が収容されていてもよく、複数の電極体が収容されていてもよい(図示せず)。後者の場合には、複数の電極体10は、電気的に並列に接続されている。
【0048】
図4に示すように、電極体10は、負極11と、セパレーター12と、正極13とを含んでいる。電極体10は、負極11上にセパレーター12が配置され、このセパレーター12上に正極13が配置され、この正極13上にセパレーター12が配置された状態で巻回され、筒状に形成されている。即ち、電極体10において、負極11の外周側にセパレーター12が形成され、このセパレーター12の外周側に正極13が形成され、この正極13の外周側にセパレーター12が形成されている。本実施の形態では、電極体10において、負極11及び正極13の間に絶縁性のセパレーターが配置されているので、負極11と正極13とは電気的に接続されていない。
【0049】
図5に示すように、電極体10を構成する正極13は、正極集電箔13Aと、正極集電箔13Aに形成された正極合剤層13Bとを有する。本実施の形態では、正極集電箔13Aの表面及び裏面のそれぞれに、正極合剤層13Bが形成されているが、本発明は、この構造に特に限定されない。例えば、正極集電箔13Aの表面または裏面の一方に、正極合剤層13Bが形成されていてもよい。ただし、正極合剤層13Bには、負極合剤層11Bが対面している。
【0050】
なお、本実施の形態では、正極基材として、正極集電箔を例に挙げて説明しているが、本発明における正極基材は、箔状に限定されない。
【0051】
正極合剤層13Bは、正極活物質と、導電助剤と、バインダとを有する。正極合剤層13Bに含まれるバインダは、特に限定されず、負極合剤層11Bに含まれるバインダと同様のものを用いることができる。
【0052】
正極活物質は、特に限定されないが、リチウム複合酸化物が好ましい。中でも、LiNiM1M2NbZr(但し、式中、a、b、c、d、x、y、zは、0≦a≦1.2、0≦b≦1、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0≦x≦0.1、0≦y≦0.1、0≦z≦0.1、b+c+d=1を満たす。M1及びM2は、Mn、Ti、Cr、Fe、Co、Cu、Zn、Al、Ge、Sn、及びMgからなる群から選択される少なくとも1種の元素である)で表される範囲のものがより好ましい。
【0053】
導電助剤は、特に限定されないが、例えば、アセチレンブラックなどを用いることができる。
【0054】
セパレーター12は、負極11及び正極13の間に配置され、負極11と正極13との電気的な接続を遮断しつつ、電解液3の通過を許容するものである。セパレーター12の材料は、特に限定されないが、例えばポリエチレン等のポリオレフィン樹脂から形成された多孔質膜等が用いられる。このような多孔質膜には、可塑剤、酸化防止剤、難燃剤等の添加剤が含有されていてもよい。
【0055】
セパレーター12は、1層であってもよいが、図6に示すように、基材12Aと、この基材12Aの一方面上に形成された無機層12Bとを含んでいてもよい。この場合、基材12Aとしては、特に限定されず、樹脂多孔膜全般を用いることができ、例えば、ポリマー、天然繊維、炭化水素繊維、ガラス繊維またはセラミック繊維の織物、または不織繊維を用いることができる。無機層12Bは、無機塗工層とも言われ、無機粒子、バインダなどを含む。
【0056】
ここで、本実施の形態では、蓄電素子として非水電解質二次電池を例に挙げて説明したが、本発明は非水電解質二次電池に限定されず、例えばキャパシタなどにも適用可能である。本発明が非水電解質二次電池として用いられる場合には、蓄電素子は、リチウムイオン二次電池として好適に用いられる。本発明がキャパシタとして用いられる場合には、蓄電素子は、リチウムイオンキャパシタやウルトラキャパシタとして好適に用いられる。
【0057】
続いて、本実施の形態における非水電解質二次電池1の製造方法について説明する。
まず、電極体10について説明する。
【0058】
実施の形態における非水電解質二次電池用負極の製造方法にしたがって、負極11が準備される。
【0059】
正極13は以下のようにして準備される。正極活物質と、導電助剤と、バインダとが混合され、この混合物が溶剤に加えられて混練りされて、正極合剤が調製される。この正極合剤が正極集電箔13Aの少なくとも一方面に塗布され、乾燥後、圧縮成形される。これにより、正極集電箔13A上に正極合剤層13Bが形成された正極13が作製される。圧縮成形後、真空乾燥を行う。
【0060】
また、セパレーター12が準備される。この工程は、特に限定されないが、この工程では、例えば、基材12Aが作製されると共に、基材12A上にコート剤が塗布されることにより無機層12Bが作製される。
【0061】
次に、負極11と正極13とがセパレーター12を介して巻回される。このとき、セパレーター12の無機層12Bが正極13と対向することが好ましい。これにより、電極体10が作製される。その後、負極11及び正極13の各々に、集電部が取り付けられる。
【0062】
次に、電極体10がケース2のケース本体2aの内部に配置される。電極体10が複数の場合には、例えば、各電極体10の集電部を電気的に並列に接続してケース本体2aの内部に配置される。次いで、集電部は、蓋板2bの外部絶縁部材5内の外部端子21にそれぞれ溶着され、蓋板2bは、ケース本体2aに取り付けられる。
【0063】
次に、電解液が注液される。電解液は、特に限定されないが、例えば、プロピレンカーボネート(PC):ジメチルカーボネート(DMC):エチルメチルカーボネート(EMC)=3:4:3(体積比)の混合溶媒に、LiPF6を添加することによって調製される。ただし、公知の添加剤がさらに添加されてもよい。以上の工程により、図1図6に示す本実施の形態における非水電解質二次電池1が製造される。
【0064】
以上説明したように、本実施の形態における蓄電素子の一例である非水電解質二次電池1は、上述した非水電解質二次電池用負極11と、正極基材としての正極集電箔13Aと、この正極集電箔13Aに形成され且つ正極活物質を有する正極合剤層13Bとを含む正極13と、負極11及び正極13の間に配置されたセパレーターとを備えている。
【0065】
本発明の非水電解質二次電池1によれば、負極活物質のD10及びD90と、負極基材としての負極集電箔11Aの表面11A1の中心線粗さRaと、負極集電箔11Aの表面11A1における十点平均高さRzに対する中心線粗さRaとがパラメータとして制御された負極11を備えているので、高温で使用したときに、入力の低下を抑制できる。
【0066】
蓄電素子(例えば電池)は、図7に示すような蓄電モジュール(蓄電素子が電池の場合は電池モジュール)101に用いられてもよい。蓄電モジュール101は、少なくとも二つの蓄電素子1と、二つの(異なる)蓄電素子1同士を電気的に接続するバスバ部材50と、を有する。この場合、本発明の技術が少なくとも一つの蓄電素子1に適用されていればよい。
【0067】
(参考の形態)
図8に示すように、参考の形態における車載用蓄電システム100は、実施の形態の蓄電素子としての非水電解質二次電池1と、この非水電解質二次電池1の充放電の制御を行う制御部102とを備えている。具体的には、車載用蓄電システム100は、複数の非水電解質二次電池1を複数有する蓄電モジュール101と、非水電解質二次電池の充放電をハイレートで行い、その充放電の制御を行う制御部102とを備えている。
【0068】
この車載用蓄電システム100を車両110に搭載した場合には、図8に示すように、制御部102と、エンジンやモーター、駆動系、電装系等を制御する車両制御装置111とが、車載LAN、CANなどの車載用通信網112で接続される。制御部102と車両制御装置111とが通信を行い、その通信から得られる情報をもとに蓄電システム100が制御される。これにより、蓄電システム100を備えた車両を実現できる。
【0069】
以上説明したように、参考の形態の車載用蓄電システムは、実施の形態の蓄電素子としての非水電解質二次電池1と、この非水電解質二次電池1の充放電の制御を行う制御部102とを備えている。
【0070】
参考の形態の車載用蓄電システム100によれば、高温で使用したときに入力の低下を抑制できる蓄電素子を備えている。したがって、車載用蓄電システム100は、高温で使用したときに入力の低下を抑制できる。
【実施例】
【0071】
本実施例では、負極活物質のD10が1.3μm以上で、D90が8.9μm以下であり、負極基材の表面において、中心線粗さRaが0.205以上0.781以下であり、十点平均高さRzに対する中心線粗さRaが0.072以上0.100以下であることによる効果について調べた。
【0072】
まず、実施例及び比較例中の各種値の測定方法を以下に記載する。尚、電極(例えば負極)における各種値が測定される部位は、特に限定されないが、例えば、負極における測定部位は、正極と対向した部分であることが望ましい。測定は、例えば、負極の中央部付近を切り出した測定サンプルに対して行うことが望ましい。また、測定は、例えば、複数箇所から切り出したサンプルに対して行うことが好ましい。測定サンプル数は、統計的に信頼性を有するサンプル数(少なくとも10)であることが望ましい。
【0073】
(負極の活物質の粒子径)
負極活物質の粒子径において、レーザー回折散乱法で測定される粒子の体積分布を測定し、特定の粒子径以下の粒子量が(積算分布)10%に該当する粒子径を累積径D10とし、特定の粒子径以下の粒子量が(積算分布)90%に該当する粒子径を累積径D90とした。
【0074】
(負極基材の表面の中心線粗さRa)
負極を超音波洗浄することで、負極から負極合剤層を取り除いた。この負極基材の表面(負極合剤層が形成されていた面)の中心線粗さRaを、JIS B 0601−1994に準拠してレーザー顕微鏡にて測定した。
【0075】
(負極基材の表面の十点平均高さRzに対する中心線粗さRa(Ra/Rz))
中心線粗さRaの測定と同様にして得られる負極基材の表面(負極合剤層が形成されていた面)の十点平均高さRzを、JIS B 0601−1994に準拠してレーザー顕微鏡にて測定した。得られた十点平均高さRzと中心線粗さRaとから、Ra/Rzを算出した。
【0076】
(負極活物質A1〜A6)
体積基準粒度分布の10%累積径D10、及び、体積基準粒度分布の90%累積径D90が、下記の表1に示すものである負極活物質を準備した。負極活物質は、ハードカーボンであった。
【0077】
【表1】
【0078】
(実施例1〜24及び比較例1〜40)
実施例1〜24及び比較例1〜40のリチウムイオン二次電池は、上記負極活物質A1〜A6のいずれかを用いて、以下のようにして製造した。
【0079】
<負極1〜12>
表1に記載の負極活物質A1と、バインダとしてのPVDFとを、93:7の比率で混合し、この混合物に、溶剤としてのN−メチルピロリドン(NMP)を加えて、負極合剤を調製した。この負極合剤を、厚みが8μmであるCu箔の負極基材上に塗布した後、粗面化されたロールを有するロールプレス機でプレスを行うことにより負極合材層の圧縮成形及び負極集電箔の粗面化を行い、真空乾燥することで水分を除去して電極とした。
中心線粗さRaが0.342μm、十点平均高さRzが4.5μmのロールを用いてプレス線圧を19、35、40、50、86、117、129kgf/mmとした電極を、順に、負極1、負極4、負極5、負極6、負極9、負極11、負極12とした。
中心線粗さRaが0.245μm、十点平均高さRzが3.9μmのロールを用いてプレス線圧を42、48、87kgf/mmとした電極を、順に、負極2、負極3、負極10とした。また中心線粗さRaが0.301μm、十点平均高さRzが3.2μmのロールを用いてプレス線圧を71、81kgf/mmとした電極を、順に、負極7、負極8とした。
【0080】
<負極13〜24>
表1に記載の負極活物質A2と、バインダとしてのPVDFとを93:7の比率で混合し、この混合物に、溶剤としてのN−メチルピロリドン(NMP)を加えて、負極合剤を調製した。この負極合剤を、厚みが8μmであるCu箔の負極基材上に塗布した後、粗面化されたロールを有するロールプレス機でプレスを行うことにより負極合材層の圧縮成形及び負極集電箔の粗面化を行い、真空乾燥することで水分を除去して電極とした。
中心線粗さRaが0.187μm、十点平均高さRzが2.7μmのロールを用いてプレス線圧を46、61、66、76、112、143、156kgf/mmとした電極を、順に、負極13、負極16、負極17、負極18、負極21、負極23、負極24とした。
中心線粗さRaが0.143μm、十点平均高さRzが2.3μmのロールを用いてプレス線圧を61、66、106kgf/mmとした電極を、順に、負極14、負極15、負極22とした。
また、中心線粗さRaが0.157μm、十点平均高さRzが1.9μmのロールを用いてプレス線圧を94、105kgf/mmとした電極を、順に、負極19、負極20とした。
【0081】
<負極25〜36>
表1に記載の負極活物質A3と、バインダとしてのPVDFとを93:7の比率で混合し、この混合物に、溶剤としてのN−メチルピロリドン(NMP)を加えて、負極合剤を調製した。この負極合剤を、厚みが8μmであるCu箔の負極基材上に塗布した後、粗面化されたロールを有するロールプレス機でプレスを行うことにより負極合材層の圧縮成形及び負極集電箔の粗面化を行い、真空乾燥することで水分を除去して電極とした。
中心線粗さRaが0.221μm、十点平均高さRzが2.7μmのロールを用いてプレス線圧を46、61、66、76、112、143、156kgf/mmとした電極を、順に、負極25、負極28、負極29、負極30、負極33、負極35、負極36とした。
中心線粗さRaが0.150μm、十点平均高さRzが2.2μmのロールを用いてプレス線圧を61、66、106kgf/mmとした電極を、順に、負極26、負極27、負極34とした。
また、中心線粗さRaが0.184μm、十点平均高さRzが1.9μmのロールを用いてプレス線圧を94、104kgf/mmとした電極を、順に、負極31、負極32とした。
【0082】
<負極37、39、43、48>
表1に記載の負極活物質A4と、バインダとしてのPVDFとを93:7の比率で混合し、この混合物に、溶剤としてのN−メチルピロリドン(NMP)を加えて、負極合剤を調製した。この負極合剤を、厚みが8μmであるCu箔の負極基材上に塗布した後、粗面化されたロールを有するロールプレス機でプレスを行うことにより負極合材層の圧縮成形及び負極集電箔の粗面化を行い、真空乾燥することで水分を除去して電極とした。
中心線粗さRaが0.214μm、十点平均高さRzが2.7μmのロールを用いてプレス線圧を47、157kgf/mmとした電極を、順に負極37、負極48とした。
中心線粗さRaが0.136μm、十点平均高さRzが2.2μmのロールを用いてプレス線圧を67kgf/mmとした電極を、負極39とした。
また、中心線粗さRaが0.175μm、十点平均高さRzが1.8μmのロールを用いてプレス線圧を95kgf/mmとした電極を、負極43とした。
【0083】
<負極49〜60>
表1に記載の負極活物質A5と、バインダとしてのPVDFとを93:7の比率で混合し、この混合物に、溶剤としてのN−メチルピロリドン(NMP)を加えて、負極合剤を調製した。この負極合剤を、厚みが8μmであるCu箔の負極基材上に塗布した後、粗面化されたロールを有するロールプレス機でプレスを行うことにより負極合材層の圧縮成形及び負極集電箔の粗面化を行い、真空乾燥することで水分を除去して電極とした。
中心線粗さRaが0.334μm、十点平均高さRzが3.7μmのロールを用いてプレス線圧を26、41、46、56、92、123、136kgf/mmとした電極を、順に、負極49、負極52、負極53、負極54、負極57、負極59、負極60とした。
中心線粗さRaが0.231μm、十点平均高さRzが3.2μmのロールを用いてプレス線圧を48、52、92kgf/mmとした電極を、順に、負極50、負極51、負極58とした。
また、中心線粗さRaが0.277μm、十点平均高さRzが2.6μmのロールを用いてプレス線圧を77、87kgf/mmとした電極を、順に負極55、負極56とした。
【0084】
<負極61〜72>
表1に記載の負極活物質A6と、バインダとしてのPVDFとを93:7の比率で混合し、この混合物に、溶剤としてのN−メチルピロリドン(NMP)を加えて、負極合剤を調製した。この負極合剤を、厚みが8μmであるCu箔の負極基材上に塗布した後、粗面化されたロールを有するロールプレス機でプレスを行うことにより負極合材層の圧縮成形及び負極集電箔の粗面化を行い、真空乾燥することで水分を除去して電極とした。
中心線粗さRaが0.304μm、十点平均高さRzが3.7μmのロールを用いてプレス線圧を32、46、51、61、97、128、141kgf/mmとした電極を、順に負極61、負極64、負極65、負極66、負極69、負極71、負極72とした。
中心線粗さRaが0.201μm,十点平均高さRzが3.2μmのロールを用いてプレス線圧を51、55、95kgf/mmとした電極を、順に負極62、負極63、負極70とした。
また、中心線粗さRaが0.258μm,十点平均高さRzが2.6μmのロールを用いてプレス線圧を81、91kgf/mmとした電極を、順に、負極67、負極68とした。
【0085】
負極1〜37、39、43、48〜72についてプレス後の電極の合剤層をNMP中で超音波洗浄することで除去し、アセトンで洗浄した負極基材表面の中心線粗さRaと十点平均高さRzに対する中心線粗さRa(Ra/Rz)とをレーザー顕微鏡にて測定した結果を表2または表3に示す。
【0086】
<正極>
正極活物質としてのLiNi1/3Co1/3Mn1/3と、導電助剤としてのアセチレンブラックと、バインダとしてのPVDFとを91:4.5:4.5の比率で混合し、この混合物に、溶剤としてのNMPを加えて、正極合剤を調製した。この正極合剤を、正極集電箔13Aとしての13μmの厚みを有するAl箔の両面に塗布し、ロールプレスで圧縮成形した後、真空乾燥して水分を除去して電極とした。
【0087】
<セパレーター>
セパレーターとして幅9.35cm、厚み21μmのポリオレフィン製微多孔膜を準備した。
【0088】
<電極体>
次に、負極11と正極13とを、セパレーター12を介して、長円筒状に巻回した。これにより、電極体10を作製した。
【0089】
<組立>
次に、電極体10の正極及び負極の各々に、集電部を取り付けた。その後、電極体10をケース2のケース本体2aの内部に配置した。次いで、集電部を、蓋板2bの外部端子21にそれぞれ溶着し、蓋板2bをケース本体2aに取り付けた。
【0090】
次に、電解液を注液した。電解液は、プロピレンカーボネート(PC):ジメチルカーボネート(DMC):エチルメチルカーボネート(EMC)=3:4:3(体積比)の混合溶媒に、LiPF6を1.2mol/Lとなるように溶解させて調製した。以上の工程により、実施例1〜24及び比較例1〜40のリチウムイオン二次電池を製造した。
【0091】
(評価方法)
実施例1〜24及び比較例1〜40のリチウムイオン二次電池について、以下のように入力及び保持率を評価した。
【0092】
(入力)
各リチウムイオン二次電池について、25℃の恒温槽中で5Aの充電電流、4.2Vの定電流定電圧充電を3時間行い、10分の休止後、5Aの放電電流にて2.4Vまで定電流放電を行うことで、電池の放電容量を測定した。容量確認試験後の電池について、前述の容量確認試験で得られた放電容量の60%を充電することで電池のSOC(State Of Charge)を60%に調整後、−10℃にて4時間保持し、その後4.3Vの定電圧充電を1秒間行い、1秒目の電流値から初期低温入力を算出した。比較例1の初期の入力を100としたときの、実施例1〜24及び比較例2〜40の初期の入力の値を下記の表2または表3に記載する。
次に、各リチウムイオン二次電池について、25℃の恒温槽中で5Aの放電電流にて2.4Vまで定電流放電を行った後、上記放電容量の80%を充電することで電池のSOCを80%に調整し、65℃で90日放置した。放置後の各リチウムイオン二次電池について、上記と同様に入力を測定した。比較例1の放置前の入力(初期入力)を100としたときの、実施例1〜24及び比較例1〜40の90日後の入力の値を下記の表2または表3に記載する。
【0093】
(保持率)
各リチウムイオン二次電池について、入力保持率=初期入力/放置後の入力×100の式から算出した。その結果を下記の表2または表3に記載する。
【0094】
(評価結果)
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
表2及び表3に示すように、高温で90日放置後の入力について、実施例1〜24のリチウムイオン二次電池は、比較例1〜40に比べて高かった。このことから、負極活物質のD10が1.3μm以上で、D90が8.9μm以下であり、負極基材の表面において、中心線粗さRaが0.205以上0.781以下であり、十点平均高さRzに対する中心線粗さRaが0.072以上0.100以下であることにより、高温放置試験における入力の低下を抑制できることがわかった。
【0097】
また、実施例1〜24のリチウムイオン二次電池の保持率は高く、活物質と負極集電箔11Aとの密着性を高めることができたと考えられる。このことから、高温放置試験における入力低下の抑制の一因に、保持率が含まれると考えられる。
【0098】
以上より、本実施例によれば、負極活物質のD10が1.3μm以上で、D90が8.9μm以下であり、負極基材の表面において、中心線粗さRaが0.205以上0.781以下であり、十点平均高さRzに対する中心線粗さRaが0.072以上0.100以下であることにより、高温で使用したときに入力の低下を抑制できることが確認できた。
【0099】
以上のように本発明の実施の形態及び実施例について説明を行なったが、各実施の形態及び実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。上記の実施例では、積層された正極及び負極が巻回されることによって形成された電極体(巻回型電極体)を備える蓄電素子について説明したが、複数の正極と複数の負極とが1つずつ交互に積層されて形成された電極体(ラミネート型電極体)を備えた蓄電素子であっても、本発明によって課題が解決されることは、言うまでもない。また、今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態及び実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0100】
1 非水電解質二次電池、2 ケース、2a ケース本体、2b 蓋板、3 電解液、5 外部絶縁部材、10 電極体、11 負極、11A 負極集電箔(負極基材)、11A1 表面、11A2 裏面、11B 負極合剤層、12 セパレーター、12A 基材、12B 無機層、13 正極、13A 正極集電箔(正極基材)、13B 正極合剤層、21 外部端子、50 バスバ部材、100 蓄電システム、101 蓄電モジュール、102 制御部、110 車両、111 車両制御装置、112 通信網。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8