【文献】
BONDERMAN,Diana et al.,Riociguat for patients with pulmonaryhypertension caused by systolic left ventricular dysfunction:Aphase IIb double-blind,randomized,placebo-controlled,dose-ranging hemodynamic study,Circulation,2013年,Vol.128,No.5,pp.502-511,p.506,left column,Table 4
【文献】
新医薬品の「使用上の注意」の解説, バイエル薬品株式会社,2014年 4月,p.18,URL,http://www.adempas.jp/static/pdf/doctor/careful.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吸収促進剤が、炭素数10〜22の脂肪族アルコール類、炭素数10〜22の脂肪酸類、炭素数10〜22のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、脂肪酸アルカノールアミド類、エステル類から選ばれる少なくとも1種である、請求項4に記載の経皮吸収型製剤。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において経皮吸収型製剤とは、非経口製剤であって、有効成分が皮膚を通して吸収され血流に送達されるものをいう。本発明の経皮吸収型製剤は、支持体と薬物含有層とを有する貼付剤であり、例えばテープ剤、パップ剤、プラスター剤などが挙げられる。
【0015】
本発明の経皮吸収型製剤は、薬物含有層に粘着剤を含有するマトリックス型貼付製剤でもよく、薬物含有層の皮膚貼付側に、薬剤の経皮吸収を調節するための放出制御膜および皮膚へ貼付するための粘着層をさらに有するリザーバー型貼付製剤であってもよい。このような構造により、リオシグアトを効率的に経皮吸収させることが可能となる。
【0016】
製剤設計および製造の容易さの観点からは、マトリックス型貼付製剤であることが好ましい。以下、マトリックス型貼付製剤を例に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
【0017】
本明細書において、「を含有する」または「を含む」は、「から本質的になる」または「のみからなる」の意味も包含する。
【0018】
<薬物含有層>
1.有効成分
本発明の経皮吸収型製剤において、薬物含有層は、有効成分としてリオシグアトを含有する。リオシグアトは、sGCを刺激し、cGMPの産生を促進することによって肺動脈を拡張させると考えられている。本発明の経皮吸収型製剤によって治療または予防され得る疾患としては、慢性血栓閉塞性肺高血圧症(CTEPH)および肺動脈性肺高血圧症(PAH)などの肺高血圧症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書において、「慢性血栓閉塞性肺高血圧症(CTEPH)」は肺高血圧症(PH)の臨床分類の1つであり、器質化した血栓により肺動脈が閉塞し、肺血流分布ならびに肺循環動態の異常が6か月以上にわたって固定している病態である。
「肺動脈性肺高血圧症(PAH)」は肺高血圧症(PH)の臨床分類の1つであり、肺小動脈の狭窄によって肺血管抵抗が増加し、肺動脈の血圧が上昇する病態である。
【0020】
慢性血栓閉塞性肺高血圧症(CTEPH)または肺動脈性肺高血圧症(PAH)の予防または治療とは、ヒトなどの対象において、慢性血栓閉塞性肺高血圧症(CTEPH)または肺動脈性肺高血圧症(PAH)の発症の遅延もしくは抑制、発症後の病的状態の治療、発症後の再発の遅延もしくは抑制をいう。
【0021】
本発明においてリオシグアトは、フリー体であってもよく、また薬学的に許容される塩であってもよい。薬学的に許容される塩としては、例えば、無機酸塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩など;および有機酸塩、例えば、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、桂皮酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、グルタル酸塩、カンファー酸塩、アジピン酸塩、ソルビン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、リノール酸塩、リノレン酸塩、リンゴ酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩(メシレート)、フタル酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、イソステアリン酸塩、コハク酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、パモ酸塩、p−トルエンスルホン酸塩(トシレート)、ベンゼンスルホン酸塩(ベシレート)などが挙げられ、これらに限定されない。リオシグアトまたはその薬学的に許容される塩は、共結晶や溶媒和物(例えば水和物、好ましくは半水和物)を形成していてもよく、またいずれかを単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。本発明では、既に経口投与における有用性が確立されているリオシグアトのフリー体を用いることが好ましい。
【0022】
本発明の経皮吸収型製剤におけるリオシグアトの含有量は、対象疾患(例えば、CTEPHまたはPAH)の予防または治療に対する有効量である。ここで有効量とは、本発明の経皮吸収型製剤を生体の皮膚に適用した場合に、対象疾患(例えば、CTEPHまたはPAH)の予防または治療に有効なリオシグアトの血中濃度を達成しうる量である。そのような含有量は、経口投与の薬物動態に関する情報に基づいて適宜調整することができ、投与対象、疾患、症状などにより異なりうる。例えば、薬物含有層に対して(即ち、薬物含有層の全質量を基準として;以下同じ)0.5〜40質量%が好ましく、0.5〜30質量%がより好ましく、1〜25質量%がさらに好ましい。
【0023】
対象疾患(例えば、CTEPHまたはPAH)の予防または治療に有効なリオシグアトの血中濃度は、リオシグアトの経口薬の場合と同程度とすることができる。
【0024】
本発明の経皮吸収型製剤において、リオシグアトの皮膚透過速度を調整することによって、対象疾患(例えば、CTEPHまたはPAH)の予防または治療に有効な血中濃度を達成することができる。皮膚透過速度の調整は、薬物含有層中のリオシグアトの含有量を調整すること、後述の吸収促進剤を薬物含有層に添加することなどの、任意の手段によって行うことができる。なお、本発明においてリオシグアトの皮膚透過速度とは、後述の実施例に記載するインビトロ皮膚透過性試験により測定される値を意味する。
【0025】
リオシグアトの皮膚透過速度は、通常0.1〜30μg/cm
2/時間であり、好ましくは0.2〜30μg/cm
2/時間であり、より好ましくは0.4〜30μg/cm
2/時間であり、特に好ましくは0.8〜30μg/cm
2/時間である。皮膚透過速度が0.1μg/cm
2/時間以上であれば、十分な血中濃度を得ることができる。皮膚透過速度が30μg/cm
2/時間以下であれば、血中濃度が高くなりすぎず、安全性の観点から好ましい。
【0026】
2.酸
本発明の経皮吸収型製剤においては、リオシグアトの皮膚透過速度を向上させるために、薬物含有層中にヒドロキシ酸またはリン酸から選ばれる少なくとも1種の酸が含有される。ヒドロキシ酸としては、グリコール酸、乳酸、クエン酸、イソクエン酸、酒石酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、タルトロン酸、グリセリン酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、γ−ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、シトラマル酸、イソクエン酸、ロイシン酸、メバロン酸、パントイン酸、リノシール酸、リノネライジン酸、セレブロン酸、キナ酸、シキミ酸、グルコン酸、サリチル酸、マンデル酸などが挙げられる。ヒドロキシ酸またはリン酸から選ばれる少なくとも1種の酸としては、なかでも、炭素数2〜8のヒドロキシ酸またはリン酸が好ましく、グリコール酸、乳酸、クエン酸、サリチル酸、マンデル酸、またはリン酸がより好ましく、乳酸がさらに好ましい。ヒドロキシ酸またはリン酸から選ばれる酸の含有量は、リオシグアトの十分な皮膚透過速度を達成可能であれば特に限定はされないが、リオシグアト100質量部に対し、120〜400質量部が好ましく、140〜400質量部がより好ましく、170〜300質量部がさらに好ましい。薬物含有層に対するヒドロキシ酸またはリン酸から選ばれる酸の含有量は、0.6〜60質量%が好ましく、0.7〜50質量%がより好ましく、1.7〜50質量%がさらに好ましい。ヒドロキシ酸またはリン酸から選ばれる酸を含有することにより、リオシグアトの溶解性が高まり、リオシグアトの皮膚透過性が向上する。特に、ヒドロキシ酸またはリン酸から選ばれる酸の含有量を上記範囲内とすることにより、上記範囲外である場合と比較して皮膚透過性の向上効果がより顕著になる。
【0027】
3.吸収促進剤
薬物含有層は、リオシグアトの皮膚透過性向上のため、吸収促進剤をさらに含有してもよい。吸収促進剤は、経皮投与において皮膚透過促進作用が認められているいずれの化合物であってもよく、例えば、酢酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ソルビン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの脂肪酸、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸ヘキサデシル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オレイル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、中鎖脂肪酸トリグリセリド、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、モノオレイン酸グリセリル、モノカプリル酸プロピレングリコール、モノカプリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノパルミチン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコール、モノベヘン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、トリアセチン、乳酸エチル、クエン酸トリエチルなどのエステル類;モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル類;モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート80)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類;モノオレイン酸ポリエチレングリコール;モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノパルミチン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコールなどのポリオキシエチレン脂肪酸エステル類;シュウ酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、安息香酸、ニコチン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、サッカリンなどの有機酸またはそれらの塩;デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、セチルアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、ベンジルアルコールなどの脂肪族または芳香族アルコール類もしくはそれらのエーテル類;炭素数3〜8の多価アルコール類(例えば、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、ジプロピレングリコール、オクタンジオール等);ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどのフェノールエーテル類;ヒマシ油または硬化ヒマシ油;オレオイルサルコシン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリル硫酸ナトリウムなどのイオン性界面活性剤;炭素数10〜22のポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル等);ジメチルラウリルアミンオキサイドなどの非イオン性界面活性剤;ラウリン酸ジエタノールアミド、パルミチン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノイソプロパノールアミドなどの脂肪酸アルカノールアミド類;ジメチルスルホキサイド、デシルメチルスルホキサイドなどのアルキルメチルスルホキサイド類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのピロリドン類;1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、1−ゲラニルアザシクロヘプタン−2−オンなどのアザシクロアルカン類;メントール、カンフル、リモネンなどのテルペン類などが挙げられる。なかでも、エステル類、炭素数10〜22の脂肪族アルコール類、炭素数10〜22の脂肪酸類、炭素数10〜22のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、脂肪酸アルカノールアミド類が好ましい。吸収促進剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
吸収促進剤の含有量は、薬物含有層に対して0.1〜30質量%が好ましく、0.1〜25質量%がより好ましく、0.2〜25質量%がさらに好ましい。
【0029】
4.粘着剤
薬物含有層は粘着剤を含有してもよい。薬物含有層に含有される粘着剤としては、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂およびシリコーン系樹脂等を含むものが挙げられる。
【0030】
粘着剤としては、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂およびシリコーン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を主成分として含有するものが好ましく、さらにアクリル系樹脂およびゴム系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を主成分として含有するものがより好ましい。ここで、「主成分」とは、粘着剤の全質量に対し、通常70質量%以上、さらに80質量%以上、よりさらに90質量%以上、特に100質量%を意味する。
【0031】
アクリル系樹脂としては、例えば、モノマー単位として、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどに代表される(メタ)アクリル酸エステルを少なくとも1種含有する重合体または共重合体が挙げられる。具体的には、例えば、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体溶液、アクリル酸2−エチルエキシル・N−ビニル−2−ピロリドン・ジメタクリル酸−1,6−ヘキサングリコール共重合体、アクリル酸エステル・酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル・アクリル酸2−ヒドロキシエチル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体溶液、アクリル酸メチル・アクリル酸2−エチルヘキシル共重合樹脂エマルジョン、アクリル樹脂アルカノールアミン液などが挙げられる。また、DURO−TAK(登録商標)アクリル粘着剤シリーズ(DURO TAK 87-900A、DURO TAK 87-9301、DURO TAK 87-4098、DURO TAK 387-2510、DURO TAK 87-2510、DURO TAK 387-2287、DURO TAK 87-2287、DURO TAK 87-4287、DURO TAK 387-2516、DURO TAK 87-2516、DURO TAK 87-2074、DURO TAK 387-235A、DURO TAK 387-2353、DURO TAK 87-2353、DURO TAK 87-2852、DURO TAK 387-2051、DURO TAK 87-2051、DURO TAK 387-2052、DURO TAK 87-2052、DURO TAK 387-2054、DURO TAK 87-2054、DURO TAK 87-2194、DURO TAK 87-2196:ヘンケル社製)、GELVAシリーズ(GELVA GMS 3083、GELVA GMS 3253、GELVA GMS 788、GELVA GMS 9073:ヘンケル社製)、MAS−683、MAS−811、MASCOS10、MAS11D1(コスメディ製薬社製)などの市販のアクリル系樹脂を使用してもよい。
【0032】
ゴム系樹脂としては、例えば、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンゴム、ポリイソブチレン(PIB)、ポリブテン、ブチルゴム、天然ゴム、生ゴム、アラビアゴム、アラビアゴム末、イソプレンゴムなどが挙げられるが、好ましくはSISである。またQuintac(登録商標)シリーズ(Quintac3570Cなど:日本ゼオン社製)、クレイトンDポリマーシリーズ(クレイトンポリマージャパン社製)、JSR SIS/TRシリーズ(JSRライフサイエンス社製)などの市販のゴム系樹脂を使用してもよい。
【0033】
シリコーン系樹脂としては、例えば、オルガノポリシロキサン骨格を有するポリマーおよびその誘導体が挙げられ、具体的には、例えば、ジメチルポリシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ジフェニルシロキサンなどが挙げられる。また、BIO−PSAシリーズ(ダウコーニング社製)などの市販のシリコーン系樹脂を使用してもよい。
【0034】
本発明の経皮吸収型製剤の薬物含有層に含有される粘着剤として、上述のアクリル系樹脂、ゴム系樹脂、およびシリコーン系樹脂のうちの1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。より好ましくは、アクリル系またはゴム系樹脂である。
【0035】
薬物含有層中に含有される粘着剤の量は、薬物含有層の形成、リオシグアトの十分な皮膚透過性などを考慮して調整される。粘着剤の含有量は、薬物含有層に対して通常10〜98.9質量%、好ましくは15〜98.8質量%である。粘着剤がゴム系樹脂の場合は、粘着剤の含有量は、薬物含有層に対して5〜98.9質量%が好ましく、10〜98.8質量%がより好ましく、15〜97.3質量%がさらに好ましい。粘着剤がアクリル系樹脂の場合は、粘着剤の含有量は、薬物含有層に対して15〜98.9質量%が好ましく、18〜98.8質量%がより好ましく、20〜97.3質量%がさらに好ましい。粘着剤がシリコーン系樹脂の場合は、薬物含有層に対して15〜98.9質量%が好ましく、18〜98.8質量%がより好ましく、20〜97.3質量%がさらに好ましい。
【0036】
5.粘着付与剤
薬物含有層は、粘着力向上のために粘着付与剤をさらに含有してもよい。粘着付与剤としては、例えば、ロジン、ロジンのグリセリンエステル、水添ロジン、水添ロジンのグリセリンエステルなどのロジン誘導体、脂環族飽和炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、テルペン樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、マレイン酸レジン、カルナウバロウ、カルメロースナトリウム、キサンタンガム、キトサン、グリセリン、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、軽質無水ケイ酸、酢酸ベンジル、タルク、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。また粘着付与剤として、アルコンシリーズ(荒川化学社製)、パインクリスタルシリーズ(荒川化学社製)、クリアロンシリーズ(ヤスハラケミカル社製)、YSレジンシリーズ(ヤスハラケミカル社製)などの市販されているものを適宜使用してもよい。特に粘着剤として前記ゴム系樹脂を用いる場合には、水添ロジンのグリセリンエステル、脂環族飽和炭化水素樹脂、テルペン樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂を粘着付与剤として使用することが好ましい。粘着付与剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
粘着付与剤の含有量は、貼付剤としての十分な粘着力を考慮して、粘着剤としてゴム系樹脂を用いる場合は、薬物含有層に対して5〜70質量%が好ましく、5〜60質量%がより好ましく、10〜50質量%がさらに好ましい。粘着剤としてアクリル系樹脂を用いる場合は、薬物含有層に対して0〜40質量%が好ましく、0〜30質量%がより好ましく、0〜20質量%がさらに好ましい。粘着剤としてシリコーン樹脂を用いる場合は、薬物含有層に対して0〜30質量%が好ましく、0〜20質量%がより好ましく、0〜10質量%がさらに好ましい。
【0038】
6.可塑剤
薬物含有層は、可塑剤をさらに含有してもよい。可塑剤としては、石油系オイル(例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、流動パラフィンなど)、スクワラン、スクワレン、植物系オイル(例えば、オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油、ラッカセイ油など)、シリコーンオイル、二塩基酸エステル(例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなど)、液状ゴム(例えば、ポリブテン、液状イソプレンゴムなど)、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、サリチル酸グリコール、クロタミトンなどが挙げられる。また可塑剤として、モレスコホワイトシリーズ(モレスコ社製)、ハイコールシリーズ(カネダ社製)などの市販されているものを適宜使用してもよい。特に粘着剤として前記ゴム系樹脂を用いる場合には、流動パラフィンを可塑剤として使用することが好ましい。可塑剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
可塑剤の含有量は、リオシグアトの十分な透過性および経皮吸収型製剤としての十分な凝集力の維持を考慮して調整される。粘着剤としてゴム系樹脂を用いる場合は、薬物含有層に対して0〜70質量%が好ましく、0〜60質量%がより好ましく、0〜40質量%がさらに好ましい。粘着剤としてアクリル系樹脂を用いる場合は、薬物含有層に対して0〜50質量%が好ましく、0〜40質量%がより好ましく、0〜30質量%がさらに好ましい。粘着剤としてシリコーン系樹脂を用いる場合は、薬物含有層に対して合計で0〜40質量%が好ましく、0〜30質量%がより好ましく、0〜20質量%がさらに好ましい。
【0040】
7.無水ケイ酸
薬物含有層は、無水ケイ酸をさらに含有してもよい。無水ケイ酸としては、微粒子の表面を何も処理していないもの(親水性)、表面を親油化処理したものなどが挙げられる。無水ケイ酸の一次粒子径は、特に限定されないが、5〜100nmのものが好ましく、7〜50nmがより好ましい。無水ケイ酸の比表面積(BET法)は、特に限定されないが、20〜400m
2/gのものが好ましく、50〜350m
2/gのものがより好ましい。
【0041】
無水ケイ酸の含有量は、リオシグアトの十分な透過性、経皮吸収型製剤としての十分な凝集力の維持や粘着力を考慮して、薬物含有層に対して0.1〜10質量%が好ましく、0.2〜8質量%がより好ましい。
【0042】
8.その他の任意成分
薬物含有層は、必要に応じて、pH調節剤、架橋剤、抗酸化剤、着色剤、紫外線吸収剤、充填剤、または、防腐剤などの公知の添加剤をさらに含有してもよい。
【0043】
pH調節剤は、リオシグアトの溶解性、安定性、および皮膚透過性の向上、皮膚に対する安全性の向上などの目的で、薬物含有層のpHを調節するために使用することができる。pH調節剤は、医薬品の分野において通常pH調整に用いられる酸もしくは塩基またはそれらの塩であればいずれの化合物であってもよく、例えば、塩酸、硫酸、コハク酸、酢酸、メタンスルホン酸、エデト酸、アンモニア水、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、メグルミン、トロメタモール、グリシン、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0044】
架橋剤としては、例えばアミノ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、有機系架橋剤、金属または金属化合物等の無機系架橋剤が挙げられる。なかでも、イソシアネート化合物またはブロックイソシアネート化合物が好ましい。
【0045】
抗酸化剤としては、例えばトコフェロール及びこれらのエステル誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、ノルジヒドログアヤレチン酸、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソールなどが挙げられる。
【0046】
着色剤としては、例えばインジゴカルミン、黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、カーボンブラック、カラメル、感光素201号、クマザサエキス、黒酸化鉄、ケッケツ、酸化亜鉛、酸化チタン、三二酸化鉄、アマランス、水酸化ナトリウム、タルク、銅クロロフィリンナトリウム、ハダカムギ緑葉エキス末、d−ボルネオール、ミリスチン酸オクチルドデシル、メチレンブルー、リン酸マンガンアンモニウム、ローズ油などが挙げられる。
【0047】
紫外線吸収剤としては、例えばアミノ酸系化合物、ベンゾフェノン系化合物、桂皮酸誘導体、シアノアクリレート誘導体、p−アミノ安息香酸誘導体、アントラニル酸誘導体、サリチル酸誘導体、クマリン誘導体、イミダゾリン誘導体、ピリミジン誘導体、ジオキサン誘導体などが挙げられる。
【0048】
充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、ケイ酸塩(例えば、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、ケイ酸マグネシウムナトリウム等)、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜鉛酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタンなどが挙げられる。
【0049】
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルなどが挙げられる。
【0050】
その他の任意成分の合計の含有量は、薬物含有層に対して0〜10質量%が好ましく、0〜5質量%がより好ましい。
【0051】
本発明の経皮吸収型製剤における薬物含有層の面積は、リオシグアトの含有量および/または皮膚透過速度などに応じて適宜調整することができる。典型的には、2〜140cm
2、好ましくは2〜100cm
2、さらに好ましくは4〜50cm
2の範囲である。またその形状は、特に限定されず、正方形、長方形、円形、楕円形などであってよい。
【0052】
本発明の経皮吸収型製剤における薬物含有層の厚さは、粘着剤の種類、リオシグアトの含有量および/または皮膚透過速度などに応じて適宜調整することができ、特に限定されない。典型的には、20〜300μm、好ましくは30〜200μm、さらに好ましくは30μm〜150μmの範囲である。
【0053】
本発明の経皮吸収型製剤における薬物含有層の1つの態様として、リオシグアトおよびヒドロキシ酸またはリン酸から選ばれる酸を含有するものが挙げられる(前記[1]を参照)。
薬物含有層に対し、リオシグアトの含有量が0.5〜40質量%、ヒドロキシ酸またはリン酸から選ばれる酸の含有量が0.6〜60質量%であることが好ましい。
【0054】
本発明の経皮吸収型製剤における薬物含有層のより好ましい様態として、リオシグアト、ヒドロキシ酸またはリン酸から選ばれる酸および粘着剤を含有することが好ましい。粘着剤としては、アクリル系樹脂を主成分として含有するものが好ましい。アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルを少なくとも1種含有する重合体または共重合体が好ましい。
粘着剤としては、ゴム系樹脂を主成分として含有するものも好ましい。ゴム系樹脂としてはSISが特に好ましい。
薬物含有層に対し、リオシグアトの含有量が0.5〜40質量%、ヒドロキシ酸またはリン酸から選ばれる酸の含有量が0.6〜50質量%、粘着剤の含有量が10〜98.9質量%であることが好ましい。
【0055】
本発明の経皮吸収型製剤における薬物含有層のさらに好ましい様態として、リオシグアト、ヒドロキシ酸またはリン酸から選ばれる酸、粘着剤および吸収促進剤を含有することが好ましい。粘着剤としては、アクリル系樹脂を主成分として含有するものが好ましい。アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルを少なくとも1種含有する重合体または共重合体が好ましい。
粘着剤としては、ゴム系樹脂を主成分として含有するものも好ましい。ゴム系樹脂としてはSISが特に好ましい。
吸収促進剤としては、炭素数10〜22の脂肪族アルコール類、炭素数10〜22の脂肪酸類、炭素数10〜22のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、脂肪酸アルカノールアミド類、エステル類からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
薬物含有層に対し、リオシグアトの含有量が0.5〜40質量%、ヒドロキシ酸またはリン酸から選ばれる酸の含有量が0.6〜50質量%、粘着剤の含有量が10〜98.8質量%、吸収促進剤の含有量が0.1〜30質量%であることが好ましい。
【0056】
<支持体>
本発明の経皮吸収型製剤における支持体には、薬物不透過性で伸縮性または非伸縮性の支持体を使用することができる。このような支持体としては、医薬品の分野において通常用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートなど)、ナイロン、ポリウレタンなどの合成樹脂フィルムもしくはシートまたはこれらの積層体、多孔質体、発泡体、フィルムにアルミニウムを蒸着させたものが挙げられる。また、粘着層との良好な投錨性を得るため、支持体として、紙、織布、不織布、またはこれらとフィルムの積層体を用いることもできる。
【0057】
<剥離ライナー>
本発明の経皮吸収型製剤は、剥離ライナーをさらに有してもよい。この場合、剥離ライナーは、支持体上に積層された薬物含有層の、支持体に接する面と反対側の面上に積層され、経皮吸収型製剤を皮膚に適用するまで薬物含有層を保護することができる。剥離ライナーは、少なくとも薬物含有層中のリオシグアトについて不透過性であれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレートなどの高分子材料で作られたフィルム、フィルムにアルミニウムを蒸着させたもの、紙の上にシリコーンオイルなどを塗付したものなどが挙げられる。
【0058】
<経皮吸収型製剤の製造>
本発明の経皮吸収型製剤は、公知の方法に従って製造することができる。リオシグアト、ヒドロキシ酸またはリン酸から選ばれる酸、ならびに必要に応じその他の成分を含む混合物を調製し、この混合物を剥離ライナー上に塗布または展延して薬物含有層を形成し、この薬物含有層に支持体を貼り合わせることにより、製造することができる。
【0059】
具体的には、上記リオシグアト、ヒドロキシ酸またはリン酸から選ばれる酸、ならびに必要に応じその他の成分を、前記含有量となるように有機溶媒に加え、混合撹拌して塗布液を調製する。
【0060】
有機溶媒としては、酢酸エチル、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、トルエン、シクロヘキサン、クロロホルム、塩化メチレン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトン、それらの混合溶媒などを用いることができる。塗布液中の有機溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、塗布液全体に対して30〜90質量%、好ましくは40〜80質量%である。
【0061】
次に、この塗布液を剥離ライナー上に塗布または展延し、当該塗布液中の溶媒を蒸発させて薬物含有層を形成した後、支持体を貼り合わせることによって経皮吸収型製剤を得ることができる。または、塗布液を支持体上に塗布または展延し、当該塗布液中の溶媒を蒸発させて薬物含有層を形成した後、剥離ライナーを貼り合わせることによって経皮吸収型製剤を得ることもできる。製造容易かどうかの観点からは、塗布液を剥離ライナー上に塗布または展延し、当該塗布液中の溶媒を蒸発させて薬物含有層を形成した後、支持体を貼り合わせる方法が好ましい。塗布液の塗布または展延は、ナイフコーター、コンマコーター、リバースコーター、ダイコーターを用いて行うことができる。製造フローの一例を
図1に示すが、これに限定されない。
【0062】
また本発明の経皮吸収型製剤は、上記リオシグアト、ヒドロキシ酸またはリン酸から選ばれる酸、ならびに必要に応じその他の成分を、加熱溶融させ、この溶融物を剥離ライナー上に塗布または展延し、薬物含有層を形成した後、支持体を貼り合わせることによって経皮吸収型製剤を製造することもできる。溶融物を支持体上に塗布または展延し、薬物含有層を形成した後、剥離ライナーを貼り合わせることによって経皮吸収型製剤を製造してもよい。
【0063】
<投与方法>
本発明の経皮吸収型製剤による対象疾患(例えば、CTEPHまたはPAH)の予防または治療は、本発明の経皮吸収型製剤を対象の皮膚に直接貼付して、リオシグアトを経皮投与することによって行うことができる。本発明における対象は、ヒトなどの哺乳動物であり、好ましくはヒトである。
【0064】
本発明の経皮吸収型製剤によりリオシグアトを経皮投与する場合、対象疾患(例えば、CTEPHまたはPAH)の予防または治療に有効な血中濃度を達成するように、薬物含有層中のリオシグアトの含有量および/または皮膚透過速度、ならびに薬物含有層の面積および/または薬物含有層の厚さ等を適宜調整した上で、本発明の経皮吸収型製剤を皮膚に貼付する。
【0065】
本発明の経皮吸収型製剤は、貼付可能であれば身体のいずれの部位の皮膚に適用してもよく、例えば、上腕部、腹部、胸部、頸部、腰背部、臀部または脚部などに貼付できる。
【0066】
本発明の経皮吸収型製剤の対象への経皮投与は、必要に応じて、リオシグアト以外の医薬成分を含有する医薬組成物の投与と組み合わせてもよい。この場合、投与形態は、同時投与であっても、時間差をおいての投与であってもよく、当該医薬組成物は、静脈内、腹腔内、皮下および筋肉内、経口、局所または経粘膜を含む種々の経路により投与できる。またリオシグアト以外の医薬成分を含有する医薬組成物は、当該医薬成分について通常用いられる投与経路によって対象に投与される。リオシグアト以外の医薬成分としては、リオシグアト以外のCTEPH治療薬、PAH治療薬、抗血栓剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0067】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また各実施例において、%は、特に断りがない限りは全て質量%である。
【0068】
(リオシグアト含有経皮吸収型製剤の製造)
実施例1
・ゴム系樹脂組成物(1)の調製
固形分が下記の配合比率となるように、Quintac3570C(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、日本ゼオン社製)、パインクリスタルKE−311(超淡色ロジン誘導体、荒川化学工業社製)、ハイコールM−352(流動パラフィン、カネダ社製)をトルエンに溶解し、ゴム系樹脂組成物(1)を得た。
成分名 配合比率
Quintac3570C(日本ゼオン社製) 34%
パインクリスタルKE−311(荒川化学工業社製) 34%
ハイコールM−352(カネダ社製) 17%
【0069】
・経皮吸収型製剤の製造
塗布乾燥後の固形分が下記の配合比率となるように、有効成分としてリオシグアト、ヒドロキシ酸として乳酸(武蔵野化学研究所社製)、粘着剤としてゴム系樹脂組成物(1)を、適量のトルエン中で混合撹拌した後、塗布液を得た。
成分名 配合比率
リオシグアト 5%
乳酸(武蔵野化学研究所社製) 10%
ゴム系樹脂組成物(1) 85%
【0070】
塗布液を剥離フィルム(75μm片面シリコン処理PETフィルム、フィルムバイナ75E−0010 BD:藤森工業社製)上に、溶媒留去後の厚さが約50μmになるように塗布し、乾燥させた後、支持体(25μmのPETフィルム、ルミラーT−60:東レ社製)を貼り合わせ、経皮吸収型製剤を製造した。
【0071】
実施例2
塗布乾燥後の固形分が下記の配合比率となるように、有効成分としてリオシグアト、ヒドロキシ酸として乳酸(武蔵野化学研究所社製)、吸収促進剤としてラウリン酸ジエタノールアミド(和光純薬社製)、粘着剤としてゴム系樹脂組成物(1)を、適量のトルエン中で混合撹拌した後、塗布液を得た以外は、実施例1と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
成分名 配合比率
リオシグアト 5%
乳酸(武蔵野化学研究所社製) 10%
ラウリン酸ジエタノールアミド(和光純薬社製) 5%
ゴム系樹脂組成物(1) 80%
【0072】
実施例3〜4
ヒドロシキ酸またはリン酸を表1に示す化合物に変更した対外は、実施例2と同様にして、実施例3〜4の経皮吸収型製剤を製造した。
【0073】
実施例5
・ゴム系樹脂組成物(2)の調製
固形分が下記の配合比率となるように、Quintac3570C(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、日本ゼオン社製)、パインクリスタルKE−311(超淡色ロジン誘導体、荒川化学工業社製)をトルエンに溶解し、ゴム系樹脂組成物(2)を得た。
成分名 配合比率
Quintac3570C(日本ゼオン社製) 20%
パインクリスタルKE−311(荒川化学工業社製) 40%
【0074】
・経皮吸収型製剤の製造
塗布乾燥後の固形分が下記の配合比率となるように、有効成分としてリオシグアト、ヒドロキシ酸として乳酸(武蔵野化学研究所社製)、吸収促進剤としてラウリン酸ジエタノールアミド(和光純薬社製)およびオレイルアルコール(クローダ社製)、無水ケイ酸としてAerosil200(日本アエロジル社製)、粘着剤としてゴム系樹脂組成物(2)を、適量のトルエン中で混合撹拌した後、塗布液を得た以外は、実施例1と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
成分名 配合比率
リオシグアト 10%
乳酸(武蔵野化学研究所社製) 12.5%
ラウリン酸ジエタノールアミド(和光純薬社製) 5%
オレイルアルコール(クローダ社製) 10%
Aerosil200(日本アエロジル社製) 2.5%
ゴム系樹脂組成物(2) 60%
【0075】
実施例6〜9
乳酸およびゴム系樹脂組成物の配合比率を表1に示す配合比率に変更した対外は、実施例5と同様にして、実施例6〜9の経皮吸収型製剤を製造した。
【0076】
実施例10〜23
吸収促進剤を表1、表2および表3に示す化合物に変更した以外は、実施例8と同様にして、実施例10〜23の経皮吸収型製剤を製造した。
【0077】
実施例24
塗布乾燥後の固形分が下記の配合比率となるように、有効成分としてリオシグアト、ヒドロキシ酸として乳酸(武蔵野化学研究所社製)、吸収促進剤としてラウリン酸ジエタノールアミド(和光純薬社製)およびオレイルアルコール(クローダ社製)、無水ケイ酸としてAerosil200(日本アエロジル社製)、粘着剤としてゴム系樹脂組成物(2)を、適量のトルエン中で混合撹拌した後、塗布液を得た以外は、実施例1と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
成分名 配合比率
リオシグアト 15%
乳酸(武蔵野化学研究所社製) 30%
ラウリン酸ジエタノールアミド(和光純薬社製) 5%
オレイルアルコール(クローダ社製) 10%
アエロジル200(日本アエロジル社製) 2.5%
ゴム系樹脂組成物(2) 37.5%
【0078】
実施例25
塗布乾燥後の固形分が下記の配合比率となるように、有効成分としてリオシグアト、ヒドロキシ酸として乳酸(武蔵野化学研究所社製)、吸収促進剤としてラウリン酸ジエタノールアミド(和光純薬社製)およびオレイルアルコール(クローダ社製)、無水ケイ酸としてAerosil200(日本アエロジル社製)、粘着剤としてDURO TAK87−4098(無官能アクリル系樹脂、ヘンケル社製)を、適量のトルエン中で混合撹拌した後、塗布液を得た以外は、実施例1と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
成分名 配合比率
リオシグアト 10%
乳酸(武蔵野化学研究所社製) 20%
ラウリン酸ジエタノールアミド(和光純薬社製) 5%
オレイルアルコール(クローダ社製) 10%
Aerosil200(日本アエロジル社製) 2.5%
DURO TAK87−4098(ヘンケル社製) 52.5%
【0079】
実施例26〜28
ヒドロシキ酸を表3に示す化合物に変更した以外は、実施例25と同様にして、実施例26〜28の経皮吸収型製剤を製造した。
【0080】
実施例29
塗布乾燥後の固形分が下記の配合比率となるように、有効成分としてリオシグアト、ヒドロキシ酸として乳酸(武蔵野化学研究所社製)、吸収促進剤としてラウリン酸ジエタノールアミド(和光純薬社製)およびオレイルアルコール(クローダ社製)、無水ケイ酸としてAerosil200(日本アエロジル社製)、粘着剤としてDURO TAK87−4098(無官能アクリル系樹脂、ヘンケル社製)を、適量のトルエン中で混合撹拌した後、塗布液を得た以外は、実施例1と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
成分名 配合比率
リオシグアト 15%
乳酸(武蔵野化学研究所社製) 30%
ラウリン酸ジエタノールアミド(和光純薬社製) 5%
オレイルアルコール(クローダ社製) 10%
Aerosil200(日本アエロジル社製) 2.5%
DURO TAK87−4098(ヘンケル社製) 37.5%
【0081】
実施例30
リオシグアト、乳酸および粘着剤の配合比率を表3に示す配合比率に変更した以外は、実施例29と同様にして、実施例30の経皮吸収型製剤を製造した。
【0082】
実施例31
実施例25において、オレイルアルコールをオレイン酸に代えた以外は、実施例25と同様にして、実施例31の経皮吸収型製剤を製造した。
【0083】
実施例32
実施例25において、DURO TAK87−4098をDURO TAK387−2516(ヒドロキシ基含有アクリル系樹脂、ヘンケル社製)に代えた以外は、実施例25と同様にして、実施例32の経皮吸収型製剤を製造した。
【0084】
実施例33
実施例32において、オレイルアルコールをオレイン酸に代えた以外は、実施例25と同様にして、実施例33の経皮吸収型製剤を製造した。
【0085】
実施例34
塗布乾燥後の固形分が下記の配合比率となるように、有効成分としてリオシグアト、ヒドロキシ酸として乳酸(武蔵野化学研究所社製)、吸収促進剤としてラウリン酸ジエタノールアミド(和光純薬社製)およびオレイルアルコール(クローダ社製)、無水ケイ酸としてAerosil200(日本アエロジル社製)、粘着剤としてDURO TAK387−2287(ヒドロキシ基含有アクリル系樹脂、ヘンケル社製)を、適量のトルエン中で混合撹拌した後、さらに架橋剤としてポリイソシアネート(コロネートHL、東ソー社製)を適量の酢酸エチルで希釈してから加え、混合撹拌した後、塗布液を得た。
成分名 配合比率
リオシグアト 10%
乳酸(武蔵野化学研究所社製) 20%
ラウリン酸ジエタノールアミド(和光純薬社製) 5%
オレイルアルコール(クローダ社製) 10%
Aerosil200(日本アエロジル社製) 2.5%
DURO TAK387−2287(ヘンケル社製) 52.4%
コロネートHL(東ソー社製) 0.1%
【0086】
塗布液を剥離フィルム(75μm片面シリコン処理PETフィルム、フィルムバイナ75E−0010 BD:藤森工業社製)上に、溶媒留去後の厚さが約50μmになるように塗布し、乾燥させた後、支持体(25μmのPETフィルム、ルミラーT−60:東レ社製)を貼り合わせ、さらに、60℃で48時間熱処理し、実施例34の経皮吸収型製剤を製造した。
【0087】
実施例35
実施例34において、オレイルアルコールをオレイン酸に代えた以外は、実施例34と同様にして、実施例35の経皮吸収型製剤を製造した。
【0088】
実施例36
実施例31において、オレイン酸、Aerosil200および粘着剤の配合比率を表4に示す配合比率に変更した以外は、実施例31と同様にして、実施例36の塗布液を得た。
【0089】
塗布液を剥離フィルム(75μm片面シリコン処理PETフィルム、フィルムバイナ75E−0010 BD:藤森工業社製)上に、溶媒留去後の塗布量が約8mg/cm
2になるように塗布し、乾燥させた後、支持体(PETフィルム/PET不織布のラミネートフィルム、EH−1212:日本バイリーン社製)の不織布側と貼り合わせ、実施例36の経皮吸収型製剤を製造した。
【0090】
実施例37
実施例36において、乳酸およびオレイン酸の配合比率を表4に示す配合比率に変更した以外は、実施例36と同様にして、実施例37の経皮吸収型製剤を製造した。
【0091】
比較例1
実施例1において、ゴム系樹脂組成物(1)の配合比率を85%に代えて95%とし、乳酸を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
【0092】
比較例2〜3
実施例2において、乳酸の代わりに表4に示す酸を使用した以外は、実施例2と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
試験例1 インビトロ(in vitro)皮膚透過性試験(ヘアレスマウス)
7週齢の雄性Hos:HR−1系ヘアレスマウス摘出皮膚(ラボスキン、星野実験動物飼育所社製)の角層側に各実施例および比較例の経皮吸収型製剤を貼付した後、32℃の温水を外周部に循環させた縦型拡散セル(商品名:パームセル縦型TP−6:ビードレックス社製)に、皮膚基底膜がレシーバー側となるように装着した。レシーバーセルに、40%ポリエチレングリコール400水溶液を満たし、経時的にレシーバー液をサンプリングし、HPLC法によりレシーバー液中のリオシグアト量を測定した。測定結果より試験開始後24時間でのリオシグアトの累積透過量を算出し、皮膚透過速度を算出した(n=3の平均値)。得られた結果を表1〜表4に示す。
【0098】
<HPLC測定条件>
装置:ACQUITY UPLC H−Classシステム(Waters社製)
カラム:ACQUITY UPLC BEH C18 1.7μm、2.1×50mm(Waters社製)
カラム温度:40℃
流速: 0.5mL/min
検出波長:235nm
移動相:0.1%トリフルオロ酢酸水溶液/アセトニトリル混液
【0099】
参考例1
実施例8において、リオシグアトを使用しなかった以外は、実施例8と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
【0100】
参考例2
実施例36において、リオシグアトを使用しなかった以外は、実施36と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
【0101】
試験例2 モルモット皮膚一次刺激性試験
6週齢のHartley雄性モルモットを用いた。投与前日にモルモットの左右側胴部を約3×7cmの大きさに刈毛・剃毛する。刈毛翌日、実施例8、実施例36、参考例1および参考例2の経皮吸収型製剤(15mmφ)を背部に貼付し、粘着剤付フォームパッドM(3Mヘルスケア社製)で固定し、エチレンフィルムテープ(キープポアA、ニチバン社製)を胴体に巻いた後、シルキーテック(ALCARE、5号)で固定する。投与24時間後、各貼付剤を除去し、アセトンで湿らせた脱脂綿で貼付部位を清拭した。投与より24、48および72時間後に皮膚反応を観察し、表4に示すDraizeの基準(1959年)を参考に皮膚刺激性指数(Primary irritation index:P.I.I.)を算出し、皮膚刺激性を評価した。被験物質ごとに、投与24、48および72時間後における固体別評点を算出し、観察回数(3回)で除して個体別P.I.I.(Individual P.I.I.)を算出した。Individual P.I.I.値を合計し、その平均値を経皮吸収型製剤のP.I.I.とした。
【0102】
【表5】
【0103】
結果を表6に示す。なお、刺激性の評価は、P.I.I.が0の場合「無刺激物」、0より大きく2未満の場合「軽度刺激物」、2以上5未満の場合「中等度刺激物」、5以上のときは「強度刺激物」とした。評価に際して統計処理は実施しなかった。
【0104】
【表6】
【0105】
表6から明らかなように、実施例8および実施例36の経皮吸収型製剤の皮膚刺激性は軽度であった。
【0106】
試験例3 インビトロ(in vitro)皮膚透過性試験(ヒト皮膚)
ダーマトームにより、約400μmに処理したヒト皮膚(コーカシアン、KAC社より入手)の角層側に実施例25および実施例30で製造した経皮吸収型製剤を貼付した後、32℃の温水を外周部に循環させた縦型拡散セル(商品名:パームセル縦型TP−6:ビードレックス社製)に、皮膚基底膜がレシーバー側となるように装着した。レシーバーセルに、40%ポリエチレングリコール400水溶液を満たし、経時的にレシーバー液をサンプリングし、HPLC法によりレシーバー液中のリオシグアト量を測定した。測定結果より試験開始後24時間でのリオシグアトの累積透過量を算出し、皮膚透過速度を算出した(n=3の平均値)。得られた結果を
図2に示す。
【0107】
図2から明らかなように、本発明の経皮吸収型製剤は、ヒト皮膚においても高い皮膚透過性を示した。
【0108】
試験例4 インビボ(in vivo)皮膚透過性試験
7週齢の雄性SD系ラット(チャールズリバー社製、n=6)の背部皮膚を電気バリカンで剪毛した。実施例36で製造した経皮吸収型製剤(10cm
2)を背部に貼付し、メンバン(白十字社製)、Tagaderm Roll(スリーエムヘルスケア社製)、不織布粘着包帯(シルキーテック、ALCARE社製)を巻いて24時間閉塞貼付し、24時間後に製剤を除去した。貼付後、0.5、1、3、6、12、20および24時間に、イソフルラン吸入麻酔下で鎖骨下静脈より採血(約0.35mL)し、血液をポリプロピレン製容器に移した。得られた血液から遠心分離機(4℃、1000g)により血漿を分離した。Oasisを用いて得られた血漿について固相抽出を行い、LC/MS/MSを用いて各時間におけるリオシグアトの血漿中濃度(ng/mL)を測定し、6検体の平均値を算出した。リオシグアトの定量はLC/MS法により行った。この結果を
図3に示す。
<LC/MS/MS測定条件>
装置:ACQUITY UPLC H−Classシステム(Waters社製)
カラム:ACQUITY UPLC BEH C18 1.7μm,2.1×50mm(Waters社製)
検出器:Xevo G2−S Q−Tof(Waters社製)
検出条件:Resolution・Positive,m/z=423.17
流速:約0.4mL/min
移動相:0.1%ギ酸水溶液と0.1%ギ酸−アセトニトリル溶液の混合液
【0109】
図3から明らかなように、本発明の経皮吸収型製剤をラットに貼付した場合、リオシグアトは持続的に経皮吸収され、貼付している24時間の間、一定以上の血漿中濃度が維持されることが確認された。