(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ゴム組成物を、キャップトレッド、サイドウォール、ベルト、インナーライナー、カーカス及びビードからなる群から選ばれる少なくとも1種に使用する、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
メルカプト基と加水分解性シリル基とを有するシランカップリング剤と、ピリジントリフェニルボラン及び/又はトリフェニルホスフィントリフェニルボランとを混合することによってホウ素含有シランカップリング剤を製造する、ホウ素含有シランカップリング剤の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について以下詳細に説明する。
まず、本発明のホウ素含有シランカップリング剤について以下に説明する。
本発明のホウ素含有シランカップリング剤は、
メルカプト基及び/又は(ポリ)スルフィド基と加水分解性シリル基とを有するシランカップリング剤とホウ素錯体とを用いて得られるホウ素含有シランカップリング剤である。
【0010】
本発明のホウ素含有シランカップリング剤は、メルカプト基及び/又は(ポリ)スルフィド基と加水分解性シリル基とを有するシランカップリング剤と、ホウ素錯体とを用いて得られる。
本発明のホウ素含有シランカップリング剤を製造する際に使用されるホウ素錯体は、空軌道を有するホウ素化合物と非共有電子対を有する配位子とから形成されるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
この場合、ホウ素錯体の少なくとも一部は、ホウ素含有シランカップリング剤を製造する際に、空軌道を有するホウ素化合物と非共有電子対を有する配位子とに解離できると考えられる。そして、解離したホウ素化合物が有する空軌道は、上記加水分解性シリル基が有する酸素原子と相互作用をすると考えられる。つまり、この場合、ホウ素含有シランカップリング剤は、加水分解性シリル基とホウ素化合物との何らかの結合を有すると考えられる。
このような加水分解性シリル基とホウ素化合物との相互作用によって、カーボンブラック及び/又は白色充填剤を含有するゴム組成物の混合工程及び/又は加硫工程において、ホウ素含有シランカップリング剤が有するホウ素原子が、カーボンブラック及び/又は白色充填剤の分散(例えば、シラニゼーション反応)を促進すると考えられる。
【0011】
一方、本発明のホウ素含有シランカップリング剤を製造する際に使用されるシランカップリング剤がメルカプト基を有する場合、ホウ素錯体から解離した、非共有電子対を有する配位子は、メルカプト基を保護すると考えられる。
このため、ゴム組成物の混合工程においては、上述のとおりホウ素原子がカーボンブラック等の分散を促進しながら、その一方で、メルカプト基は配位子によって適度に保護されているため、ゴムの焼けを起こさないと考えられる。よって、本発明において、未加硫ゴムの加工性が大幅に改善されたと推察する。
また、ゴム組成物の加硫工程においては、メルカプト基を保護していた配位子が、メルカプト基から解離すると考えられる。よって、上述のとおりホウ素化合物が、混合工程で終わりきらなかったシラニゼーション等を引き続き促進しながら、その一方で、配位子が解離した後のメルカプト基は、ゴムと加硫反応する為、得られる加硫ゴムの優れた加硫物性が維持できると考えられる。
また、本発明のホウ素含有シランカップリング剤を含有するゴム組成物は、未加硫時の経時変化を起こしにくく、保管中のスコーチ悪化、ビスの上昇を抑えることが可能になり、このような特性も優れた加工性に寄与すると考えられる。
なお上記メカニズムは本発明者の推測でありメカニズムが上記以外であっても本発明の範囲内である。
【0012】
メルカプト基及び/又は(ポリ)スルフィド基と加水分解性シリル基とを有するシランカップリング剤について以下に説明する。以下これをメルカプト基等含有シランカップリング剤ということがある。
ホウ素含有シランカップリング剤の製造に使用される、メルカプト基等含有シランカップリング剤は、メルカプト基及び/又は(ポリ)スルフィド基(これらを以下メルカプト基等ということがある。)と加水分解性シリル基とを有する化合物であれば特に制限されない。本発明において、加水分解性シリル基はこれが加水分解したシラノール基、自己集合したシロキシ基でもよい。
1分子のメルカプト基等含有シランカップリング剤が有するメルカプト基(−SH)は1〜5個が好ましい。
メルカプト基等含有シランカップリング剤が有する(ポリ)スルフィド基(モノスルフィド基又はポリスルフィド基)は、−Sx−で表される(xは1以上である。)。xは2〜10であるのが好ましい。1分子のメルカプト基等含有シランカップリング剤が有する(ポリ)スルフィド基の数は、1〜5個が好ましい。
【0013】
加水分解性シリル基は、例えば、式:−Si(OR
1)
m(R
2)
3-mで表される。式中、R
1は水素原子又は炭化水素基であり、R
2は炭化水素基又はポリエーテル基であり、mは1〜3である。炭化水素基は、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせが挙げられ、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、不飽和結合を有してもよい。炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基;フェニル基のような芳香族炭化水素基;これらの組み合わせが挙げられる。
ポリエーテル基の好適な態様としては、下記式(3)で表されるポリエーテル基が挙げられる。
【0015】
式(3)中、R
7は、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜30の2価の炭化水素基である。炭化水素基としては、例えば、アルキレン基、炭素数2〜30のアルケニレン基、炭素数2〜30のアルキニレン基、炭素数6〜30のアリーレン基、又はこれらの組み合わせが挙げられる。なかでも直鎖状のアルキレン基が好ましい。上記直鎖状のアルキレン基としては、炭素数1〜2の直鎖状のアルキレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
式(3)中、R
8は、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜30の炭化水素基である。炭化水素基としては例えば、アルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアラルキル基が挙げられる。なかでも直鎖状のアルキル基が好ましい。上記直鎖状のアルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数8〜15の直鎖状のアルキル基がより好ましい。炭素数8〜15の直鎖状のアルキル基の具体例としては、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基などが挙げられ、なかでもトリデシル基が好ましい。
式(3)中、zは、2〜10の整数を表し、3〜7であることが好ましい。
式(3)中、*は、結合位置を示す。
【0016】
メルカプト基等と加水分解性シリル基とは有機基を介して結合することができる。
本発明において、有機基としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有することができる、炭化水素基が挙げられる。炭化水素基は、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせが挙げられ、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、不飽和結合を有してもよい。具体的には、例えば、置換基を有してもよい、炭素数1〜20の炭化水素基が挙げられる。置換基は、特に制限されない。
【0017】
メルカプト基等と加水分解性シリル基とが有機基を介して結合する場合において、上記有機基を2価以上とすることができる。
置換基を有してもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基;これらの炭化水素基の水素原子の少なくとも1つが置換基に置換されたものが挙げられる。
【0018】
メルカプト基を有するシランカップリング剤(メルカプト基含有シランカップリング剤)としては、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランのような、式:−Si(OR
1)
m(R
2)
3-mにおいてR
2が炭化水素基である又はmが3であるメルカプト基含有シランカップリング剤;前記R
2がポリエーテル基であるメルカプト基含有シランカップリング剤(このときmは0〜2とすることができる。具体的な化合物としては例えば、下記式で表される化合物:Si363)が挙げられる。
【化2】
【0019】
(ポリ)スルフィド基を有するシランカップリング剤((ポリ)スルフィド基含有シランカップリング剤)としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドのようなポリスルフィド系シランカップリング剤が挙げられる。
なかでも、本発明の効果により優れ、加工性改善に優れるという観点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、式:−Si(OR
1)
m(R
2)
3-mにおいてR
2が炭化水素基である又はmが3であるメルカプト基含有シランカップリング剤、前記R
2がポリエーテル基であるメルカプト基含有シランカップリング剤が好ましい。
メルカプト基等含有シランカップリング剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
ホウ素錯体について以下に説明する。本発明のホウ素含有シランカップリング剤の製造に使用されるホウ素錯体は、ホウ素を有するホウ素化合物と配位子とを有する化合物である。
ホウ素化合物においてホウ素は、例えば、水素原子、有機基と結合することができる。
有機基としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有することができる、炭化水素基が挙げられる。炭化水素基は、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせが挙げられ、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、不飽和結合を有してもよい。具体的には、例えば、置換基を有してもよい、炭素数1〜20の炭化水素基が挙げられる。置換基は、特に制限されない。置換基としては例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基、−SO
2が挙げられる。ホウ素が有機基と結合する場合、有機基を1価とすることができる。
【0021】
ホウ素化合物が有するホウ素は3価であるのが好ましい。つまり、この場合ホウ素化合物が有するホウ素は空軌道を有する。よって、ホウ素錯体を形成するホウ素化合物は空軌道を有するのが好ましい。
ホウ素化合物は、下記式で表される化合物が好ましい。
式:B−R
3
式中、Rは置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、水素原子を表す。Rは同じでも異なってもよい。
【0022】
置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル等のアルキル基;これらのアルキル基の水素原子の少なくとも1つが置換基と置換したもの;ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル等のヒドロキシアルキル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、オクトキシ、2−エチルヘキシルオキシ等のアルコキシ基;ビニル、プロペニル、ブテニル、ヘキセニル等の炭素数2〜30のアルケニル基;これらのアルケニキル基の水素原子の少なくとも1つが置換基と置換したもの;フェニル基、オルトトリル、2,3−キシリル、メシチル、1−ナフチル、2−ナフチル等の炭素数6〜20の芳香族炭化水素基;これらの芳香族炭化水素基の水素原子の少なくとも1つが置換基と置換したものが挙げられる。
炭化水素基中の任意の−CH
2−は、−O−、−CO−、−COO−又は−SiH
2−で置換されていてもよい。
【0023】
なかでも、ホウ素化合物は、置換基を有してもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基及び/又は水素原子を有するのが好ましい。
【0024】
ホウ素錯体を形成する配位子は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。配位子は、非共有電子対を有する。配位子は、非共有電子対を有する原子(例えば、窒素、リン、酸素、硫黄)を有する配位子であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0025】
配位子において非共有電子対を有する原子は、例えば、水素原子、有機基と結合することができる。
非共有電子対を有する原子が結合することができる有機基は、ホウ素化合物が有するホウ素が結合することができる有機基と同様である。複数の有機基は互いに結合して環構造(例えば、複素環)を形成することができる。
【0026】
配位子が窒素原子を有する場合、配位子は含窒素複素環であってもよい。含窒素複素環としては例えば、ピロール、ピリジン、ピリミジン、キノリン等が挙げられる。含窒素複素環は置換基を有してもよい。
【0027】
ホウ素錯体としては例えば、下記式(4)で表されるトリアリールホスフィントリアリールボラン、下記式(5)で表わされるトリアリールホスフィンボラン、下記式(6)で表わされるピリジントリアリールボラン、式(7)で表される化合物等が挙げられる。
【0029】
式(4)〜(7)において、R
1〜R
5は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。R
1〜R
4が表す置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基は上記と同様である。
【0030】
ホウ素錯体は、本発明の効果により優れ、コスト面で優れるという観点から、ピリジントリフェニルボラン及び/又はトリフェニルホスフィントリフェニルボランであるのが好ましい。
【0031】
本発明のホウ素含有シランカップリング剤を製造する際に使用されるメルカプト基等含有シランカップリング剤の量は、本発明の効果により優れ、取り扱いに優れるという観点から、ホウ素錯体100質量部に対して、50〜2,000質量部であるのが好ましく、
100〜1,500質量部であるのがより好ましい。
【0032】
本発明のホウ素含有シランカップリング剤の製造方法としては、例えば、メルカプト基等含有シランカップリング剤とホウ素錯体とを20〜100℃の条件下において混合することによって製造する方法が挙げられる。混合の方法は制限されない。
【0033】
本発明のホウ素含有シランカップリング剤において、加水分解性シリル基の酸素原子とホウ素とが結合することができる。
また、本発明のホウ素含有シランカップリング剤を製造する際に使用される、メルカプト基及び/又は(ポリ)スルフィド基と加水分解性シリル基とを有するシランカップリング剤がメルカプト基を有する場合、ホウ素錯体から解離した配位子がメルカプト基を保護することができると考えられる。
ホウ素と加水分解性シリル基の酸素原子との結合、又は、配位子とメルカプト基との結合(例えば、ピリジンの窒素原子又はホスフィンのリン原子とメルカプト基との結合)は、物理的な結合であってもよく、例えば、イオン結合、配位結合、両者間の相互作用が挙げられる。本発明において、相互作用は微弱なものであってもよい。
【0034】
本発明者は、本発明のホウ素含有シランカップリング剤の製造の際に使用するシランカップリング剤がメルカプト基を有する場合、得られたホウ素含有シランカップリング剤について
1H−NMRによる分析をしたところ、
1H−NMRスペクトルにおいて、ホウ素含有シランカップリング剤が有する硫黄原子に隣接する炭素原子上のプロトンに由来する新しいピークを、2.75ppmに確認した。このホウ素含有シランカップリング剤について赤外分光法(IR)による分析したところ、メルカプト基を有するシランカップリング剤に由来するメルカプト基による2563cm
-1付近の吸収体は消失していた。よって、ホウ素錯体から解離した配位子がメルカプト基と何らかの結合をしていると考えられる。
【0035】
本発明のホウ素含有シランカップリング剤としては、例えば、下記式(1)、式(2)で表される化合物が挙げられる。下記式(1)、式(2)において、酸素原子とホウ素を結ぶ点線は結合を表し、当該結合としては例えば、物理的な結合、イオン結合、配位結合、相互作用が挙げられる。下記式(1)において、メルカプト基と配位子とを結ぶ点線は結合を表し、当該結合としては例えば、物理的な結合、イオン結合、配位結合、相互作用が挙げられる。
【化5】
【0036】
式(1)中、R
1は水素原子又は炭化水素基であり、R
2は炭化水素基又はポリエーテル基であり、mは1〜3であり、nは0〜2であり、m+nは1〜3である。炭化水素基、ポリエーテル基は上記式:−Si(OR
1)
m(R
2)
3-mと同様である。式(1)中、R
1、R
2の炭化水素基は同じでも異なってもよい。
R
3は有機基である。有機基は上記と同様である。R
3はメルカプト基含有シランカップリング剤に由来する。
R
4は水素原子又は有機基である。有機基は上記と同様である。R
4はホウ素錯体に由来する。R
4は同じでも異なってもよい。
Lは配位子である。配位子は上記と同様である。なかでも、配位子は窒素原子、リン原子を有するのが好ましく、ピリジン、トリフェニルホスフィンであるのがより好ましい。
aは0又は1である。
【0038】
式(2)中、R
1は水素原子又は炭化水素基であり、R
2は炭化水素基であり、m、bは0〜3であり、n、cは0〜2であり、m+n、b+cは1〜3である。炭化水素基は上記式:−Si(OR
1)
m(R
2)
3-mと同様である。式(2)中、R
1、R
2の炭化水素基は同じでも異なってもよい。
R
3は有機基である。有機基は上記と同様である。R
3は(ポリ)スルフィド基含有シランカップリング剤に由来する。2つのR
3は同じでも異なってもよい。
R
4は水素原子又は有機基である。有機基は上記と同様である。R
4はホウ素錯体に由来する。R
4は同じでも異なってもよい。
m+bは1以上6以下である。
【0039】
次に本発明のゴム組成物について以下に説明する。
本発明のゴム組成物は、
ジエン系ゴム100質量部に対して、カーボンブラック1〜100質量部及び/又は白色充填材10〜150質量部と、本発明のホウ素含有シランカップリング剤0.1〜30質量部とを含有するゴム組成物である。
【0040】
本発明のゴム組成物に含有されるジエン系ゴムは硫黄架橋が可能なものであれば特に限定されない。その具体例としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br−IIR、Cl−IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。
【0041】
本発明において、ジエン系ゴムとしては、低発熱性に優れる理由から、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体ゴムを用いることが好ましい。
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体ゴムとしては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、スチレン−イソプレン共重合体ゴムなどが挙げられる。なかでも、低発熱性に優れる理由から、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)であることが好ましい。
【0042】
ジエン系ゴムの重量平均分子量は、本発明の効果により優れ、耐磨耗性にも優れるという観点から、200,000〜2,500,000であるのが好ましい。本発明において、ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算により測定するものとする。
ジエン系ゴムはその製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0043】
ジエン系ゴムはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ジエン系ゴムの組み合わせは、低発熱性と耐摩耗性に優れるという観点から、SBRとBRとの組合せが好ましい。SBRとBRとの量比(SBR:BR、質量比)は、50〜95:50〜5とすることができる。
【0044】
本発明のゴム組成物が含有することができるカーボンブラックは特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。カーボンブラックはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明において、含有することができるカーボンブラックの量は、ジエン系ゴム100質量部に対して1〜100質量部である。カーボンブラックの量は、本発明の効果により優れ、耐磨耗性に優れるという観点から、ジエン系ゴム100質量部に対して、3〜90質量部であるのが好ましく、5〜80質量部であるのがより好ましい。
【0045】
本発明のゴム組成物が含有することができる白色充填剤は特に制限されない。例えば、シリカ、炭酸カルシウム、クレー、タルクが挙げられる。白色充填剤はシリカであるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0046】
本発明のゴム組成物に含有されるシリカは特に限定されない。タイヤ等の用途でゴム組成物に配合されている従来公知の任意のシリカを用いることができる。
シリカとしては、例えば、湿式シリカ、乾式シリカ、ヒュームドシリカ、珪藻土などが挙げられる。シリカは、ゴムの補強性の観点から湿式シリカを含むことが好ましい。
【0047】
シリカは、本発明の効果により優れ、低発熱性に優れるという観点から、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)吸着比表面積が100〜300m
2/gであることが好ましく、140〜200m
2/gであることがより好ましい。
ここで、CTAB吸着比表面積は、シリカがシランカップリング剤との吸着に利用できる表面積の代用特性であり、シリカ表面へのCTAB吸着量をJIS K6217−3:2001「第3部:比表面積の求め方−CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
白色充填剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
白色充填剤がシリカである場合、含硫黄化合物が少なくとも含硫黄シランカップリング剤を含むのが、本発明の効果により優れ、高強度かつ低発熱性に優れるという観点から、好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0048】
本発明において、含有することができる白色充填剤の含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、10〜150質量部であり、本発明の効果により優れ、低発熱性に優れるという観点から、20〜120質量部であるのが好ましく、40〜100質量部であるのがより好ましい。
【0049】
本発明のゴム組成物に含有されるホウ素含有シランカップリング剤は、本発明のホウ素含有シランカップリング剤であれば特に制限されない。
ホウ素含有シランカップリング剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
ホウ素含有シランカップリング剤の量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、0.1〜30質量部であり、本発明の効果により優れ、作業性に優れるという観点から、ジエン系ゴム100質量部に対して、0.5〜25質量部であるのが好ましく、1.0〜20質量部であるのがより好ましく、3.0〜20質量部が更に好ましい。
【0051】
本発明のゴム組成物は更に含硫黄化合物を含有することができる。含硫黄化合物は硫黄原子を有する化合物であれば特に制限されない。含硫黄化合物は、例えば、硫黄、含硫黄シランカップリング剤及び含硫黄加硫促進剤からなる群から選ばれる少なくとも1種であるとすることができる。なお本発明において、含硫黄化合物は上記のホウ素含有シランカップリング剤を含まない。
【0052】
含硫黄化合物としての硫黄は特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
含硫黄シランカップリング剤は、硫黄原子を有するシランカップリング剤であれば特に制限されない。例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドのようなポリスルフィド系シランカップリング剤;γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3‐[エトキシビス(3,6,9,12,15‐ペンタオキサオクタコサン‐1‐イルオキシ)シリル]‐1‐プロパンチオールのようなメルカプト系シランカップリング剤;3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシランのようなチオカルボキシレート系シランカップリング剤;3−チオシアネートプロピルトリエトキシシランのようなチオシアネート系シランカップリング剤が挙げられる。
【0053】
含硫黄加硫促進剤は、硫黄原子を有し、ゴム組成物に使用することができる加硫促進剤であれば特に制限されない。ここで、含硫黄加硫促進剤は含硫黄加硫促進助剤を含むものとする。含硫黄加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィドのようなチウラム系化合物;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛のようなジチオカルバミン酸塩;2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィドのようなチアゾール系化合物;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドのようなスルフェンアミド系化合物が挙げられる。
なかでも、本発明の効果により優れ、生産性に優れるという観点から、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドが好ましい。
含硫黄化合物はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0054】
含硫黄化合物の量は、本発明の効果により優れ、高い硬度を維持し、低発熱性に優れるという観点から、ジエン系ゴム100質量部に対して、1〜50質量部であるのが好ましく、1.5〜25質量部であるのがより好ましく、2〜20質量部であるのが更に好ましく、5〜15質量部であるのが特に好ましい。
硫黄の量はジエン系ゴム100質量部に対して0.1〜10質量部であるのが好ましい。
含硫黄加硫促進剤の量はジエン系ゴム100質量部に対して0.1〜10質量部であるのが好ましい。
含硫黄シランカップリング剤の量は、本発明の効果により優れ、高強度かつ低発熱性に優れるという観点から、ジエン系ゴム100質量部に対して、1〜15質量部であるのが好ましい。
【0055】
本発明のゴム組成物には、必要に応じて、その効果や目的を損なわない範囲でさらに添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、ホウ素含有シランカップリング剤及び含硫黄シランカップリング剤以外のシランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、加工助剤、アロマオイル、液状ポリマー、テルペン系樹脂、熱硬化性樹脂、含硫黄化合物以外の、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤など、ゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤が挙げられる。
【0056】
本発明のゴム組成物はその製造について特に限定されない。具体的には、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど)を用いて、混練する方法などが挙げられる。
混練の際の温度は70〜160℃であるのが好ましい。
また、本発明のゴム組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
加硫又は架橋の際の温度は120〜200℃であるのが好ましい。
本発明のゴム組成物は例えば、タイヤ、ベルト、ホースなどに使用することができる。
【0057】
本発明の空気入りタイヤについて以下に説明する。
本発明の空気入りタイヤは、本発明のゴム組成物を用いて製造される空気入りタイヤである。本発明において使用されるゴム組成物は本発明のゴム組成物であれば特に制限されない。
本発明の空気入りタイヤにおいて、ゴム組成物を、キャップトレッド、サイドウォール、ベルト、インナーライナー、カーカス及びビードからなる群から選ばれる少なくとも1種に使用するのが好ましい。
【0058】
本発明の空気入りタイヤについて添付の図面を用いて以下に説明する。本発明の空気入りタイヤは添付の図面に限定されるものではない。
図1は、本発明の空気入りタイヤの実施形態の一例について、そのタイヤ子午線方向の部分断面を模式的に表す断面図である。
図1において、符号1はキャップトレッド、符号2はサイドウォール、符号3はビードである。
【0059】
図1において、左右のビード3間にタイヤ径方向に延在する補強コードをタイヤ周方向に所定の間隔で配列してゴム層に埋設した2層のカーカス4が延設され、その両端部がビード3に埋設したビードコア5の周りにビードフィラー6を挟み込むようにしてタイヤ軸方向内側から外側に折り返されている。カーカス4の内側にはインナーライナー7が配置されている。キャップトレッド1のカーカス4の外周側には、タイヤ周方向に傾斜して延在する補強コードをタイヤ軸方向に所定の間隔で配列してゴム層に埋設した2層のベルト8が配設されている。この2層のベルト8の補強コードは層間でタイヤ周方向に対する傾斜方向を互いに逆向きにして交差している。ベルト8の外周側には、ベルトカバー9が配置されている。このベルトカバー9の外周側に、キャップトレッド1がキャップトレッドゴム層12により形成される。各サイドウォール2のカーカス4の外側にはサイドゴム層13が配置され、各ビード3のカーカス4の折り返し部外側にはリムクッションゴム層14が設けられている。
【0060】
本発明の空気入りタイヤは、本発明のゴム組成物を空気入りタイヤに用いる以外特に制限はなく、例えば従来公知の方法に従って製造することができる。また、タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0061】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
本発明のホウ素含有シランカップリング剤について、後述するホウ素含有シランカップリング剤1は、参考例となる。
本発明のゴム組成物について、実施例1〜4は本発明のゴム組成物に該当する。
本発明の空気入りタイヤについて、実施例1を参考例1と読み替えるものとする。
<ホウ素含有シランカップリング剤1の製造>
100mLの一口ナスフラスコ中にピリジントリフェニルボラン(北興化学工業社製、登録商標ホクコーPK、2g)、ポリスルフィド系シランカップリング剤(Si69、デグッサ社製、8g)を室温で加えた。2時間撹拌したのち、特別な精製操作を必要とせず、ホウ素含有シランカップリング剤(10g)を白濁液として得た。得られたホウ素含有シランカップリング剤をホウ素含有シランカップリング剤1とする。
【0062】
<ホウ素含有シランカップリング剤2の製造>
ポリスルフィド系シランカップリング剤をメルカプト基含有シランカップリング剤(Si363、デグッサ社製)に代えたほかはホウ素含有シランカップリング剤1の製造と同様にしてホウ素含有シランカップリング剤(10g)を白濁液として得た。得られたホウ素含有シランカップリング剤をホウ素含有シランカップリング剤2とする。
ホウ素含有シランカップリング剤2の
1H−NMRスペクトルにおいて、ホウ素含有シランカップリング剤2の硫黄原子に隣接する炭素原子上のプロトンに由来する新しいピークを、2.75ppmに確認した。
1H−NMR分析には溶媒として重クロロホルムを用いた。
また、ホウ素含有シランカップリング剤2について赤外分光法(IR)による分析したところ、メルカプト基による2563cm
-1付近の吸収体は消失していた。
以上の結果から、ホウ素含有シランカップリング剤2が有するメルカプト基とピリジンとが相互作用していると考えられる。
【0063】
<ホウ素含有シランカップリング剤3の製造>
ピリジントリフェニルボランをトリフェニルホスフィントリフェニルボラン(商品名TPP−S、北興化学工業社製)に代え、ポリスルフィド系シランカップリング剤8gをポリスルフィド系シランカップリング剤(Si69、デグッサ社製、4g)及びメルカプト基含有シランカップリング剤(Si363、デグッサ社製、4g)に代えたほかはホウ素含有シランカップリング剤1の製造と同様にしてホウ素含有シランカップリング剤(10g)を白濁液として得た。得られたホウ素含有シランカップリング剤をホウ素含有シランカップリング剤3する。
【0064】
<ホウ素含有シランカップリング剤4の製造>
ポリスルフィド系シランカップリング剤をメルカプト基含有シランカップリング剤(γ−プロピルトリメトキシシラン、商品名KBM−803、信越化学工業社製)に代えたほかはホウ素含有シランカップリング剤1の製造と同様にしてホウ素含有シランカップリング剤(10g)を白濁液として得た。得られたホウ素含有シランカップリング剤をホウ素含有シランカップリング剤4とする。
ホウ素含有シランカップリング剤4の
1H−NMRスペクトルから、ホウ素含有シランカップリング剤4の硫黄原子に隣接する炭素原子上のプロトンに由来する新しいピークを、2.74ppmに確認した。
1H−NMR分析には溶媒は上記と同様である。
また、ホウ素含有シランカップリング剤4について赤外分光法(IR)による分析したところ、メルカプト基による2562cm
-1付近の吸収体は消失していた。
以上の結果から、ホウ素含有シランカップリング剤4が有するメルカプト基とピリジンとが相互作用していると考えられる。
【0065】
<未加硫ゴム組成物の製造>
表1に示す配合(質量部)において、加硫系(加硫促進剤、硫黄)を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間70〜150℃の条件下で混練した後、ミキサー外に放出させて室温冷却した。続いて、該組成物をオープンロールで、加硫系を加えて混練し、未加硫ゴム組成物を得た。
<加硫ゴムの製造>
上述のとおり製造された未加硫ゴム組成物を所定の金型中で160℃で20分間プレス加硫して加硫ゴムを製造した。
【0066】
<評価>
上述のとおり製造された、未加硫ゴム組成物、加硫ゴムについて以下に示す試験法で物性を測定した。結果を表1に示す。結果を比較例1の値を100とする指数で示した。
・ビスの測定
JIS K6300に準拠して、L形ローターを使用し、ムーニー粘度ML
(1+4)100℃を求めた。
指数が小さいほどムーニー粘度が低く良好なことを示す。
【0067】
・スコーチ時間の測定(加工性)
JIS K6300に準拠して、125℃にて粘度が5ポイント上昇する時間(分)を測定した。
指数が大きいほど加工性が良好なことを示す。
【0068】
・バウンドラバー
未加硫のゴム組成物0.5gを金網かごに入れ、室温で300mLのトルエン中に72時間浸漬した後取り出して乾燥し、サンプルの質量を測定して、バウンドラバー量を下記式から算出した。
バウンドラバー量=[(トルエン浸漬、乾燥後のサンプル質量)−(カーボンブラック及び/又はシリカの質量)]/(ゴム成分質量)
なおカーボンブラックとシリカとを併用した場合は、上記式において、カーボンブラック及び/又はシリカの質量は両者の合計量となる。
バウンドラバーの指数が大きいほどバウンドラバー(カーボンブラック及び/又はシリカと反応したゴム)が多く、カーボンブラック及び/又はシリカの凝集を防いでカーボンブラック及び/又はシリカの分散性が向上していることを意味する。
【0069】
・tanδ(0℃)、tanδ(60℃)の測定
岩本製作所(株)製の粘弾性スペクトロメーターを用い、伸張変形歪率10±2%、振動数20Hz、温度0℃又は60℃の条件にて加硫ゴムについてtanδ(0℃)、tanδ(60℃)を測定した。
tanδ(0℃)の指数が大きいほどウェットグリップ性能に優れることを示す。
tanδ(60℃)の指数が小さいほど低発熱性に優れることを示す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1に示す各成分の詳細は以下のとおりである。
・E−SBR:乳化重合SBR Nipol1502、日本ゼオン社製
・BR:日本ゼオン社製Nipol BR 1220
・ホウ素含有シランカップリング剤1〜4:上述のとおり製造したもの
・ポリスルフィド基含有シランカップリング剤:ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド。エボニック・デグサ社製Si69
・メルカプト基含有シランカップリング剤1:エボニック・デグサ社製Si363
・メルカプト基含有シランカップリング剤2:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業社製KBM−803
・ホウ素錯体1:ピリジントリフェニルボラン、北興化学工業社製、登録商標ホクコーPK
・ホウ素錯体2:トリフェニルホスフィントリフェニルボラン、北興化学工業社製、商品名TPP−S
・シリカ:湿式シリカ、日本シリカ社製ニップシールAQ、CTAB吸着比表面積170m
2/g
・カーボンブラック:昭和キャボット社製ショウブラックN339M
・酸化亜鉛:正同化学社製亜鉛華3号
・ステアリン酸:日本油脂社製ステアリン酸
・老化防止剤:老化防止剤(S−13)、住友化学社製アンチゲン6C
・オイル:昭和シェル石油社製エクストラクト4号S
・硫黄:軽井沢精錬所社製油処理硫黄
・含硫黄加硫促進剤(CZ):N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、三新化学社製サンセラーCM−PO
・加硫促進剤(DPG):ジフェニルグアニジン、三新化学社製サンセラーD−G
【0072】
表1に示す結果から明らかなように、ホウ素含有シランカップリング剤を含有せずポリスルフィド基含有シランカップリング剤を含有する比較例1を基準として、メルカプト基等含有シランカップリング剤及びホウ素錯体を他の成分と同時に投入して製造した比較例2(同時投入は比較例4、6、8も同様)は、スコーチ時間については改善が小さく、加工性に劣った。これに対して、実施例1は、比較例1、2より加硫物性に優れ、スコーチ時間が長くなり加工性に優れた。
【0073】
また、ホウ素含有シランカップリング剤を含有しない比較例3、4は比較例1より加工性に劣った。これに対して、実施例2は、比較例1、3、4よりスコーチ時間が長くなり加工性に優れた。また、実施例2は、比較例3、4より加硫物性に優れた。
【0074】
ホウ素含有シランカップリング剤を含有しない比較例5、6は比較例1より加工性に劣った。これに対して、実施例3は、比較例5、6よりスコーチ時間が長くなり加工性に優れた。また、実施例3は、比較例5より加硫物性に優れ、比較例6より低発熱性に優れた。
【0075】
ホウ素含有シランカップリング剤を含有しない比較例7、8は比較例1より加工性に劣った。これに対して、実施例4は、比較例1、7、8よりスコーチ時間が長くなり加工性に優れた。また、実施例4は、比較例7より加硫物性に優れ、比較例6より低発熱性に優れた。