特許第6459268号(P6459268)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6459268
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】生体成分の測定方法および測定用組成物
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/28 20060101AFI20190121BHJP
   C12N 9/08 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   C12Q1/28
   C12N9/08
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-144942(P2014-144942)
(22)【出願日】2014年7月15日
(65)【公開番号】特開2016-19497(P2016-19497A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2017年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西村 研吾
(72)【発明者】
【氏名】木全 伸介
【審査官】 金田 康平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−298997(JP,A)
【文献】 特開平10−070996(JP,A)
【文献】 特開2000−166595(JP,A)
【文献】 米国特許第06251618(US,B1)
【文献】 特開2014−155487(JP,A)
【文献】 臨床病理,1992年,Vol.40, No.8,pp.863-867
【文献】 日本臨床検査自動化学会会誌,2004年,Vol.29, No.3,pp.190-195
【文献】 医学検査,2007年,Vol.56, No.9,pp.1216-1220
【文献】 日本臨床検査自動化学会会誌,2012年,Vol.37, No.4,p.517, #OS063
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q1/00−3/00
C12N9/00−9/99
G01N33/48−33/98
G01N31/00−31/22
G01N21/75−21/83
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
CAplus/WPIDS/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化還元反応を利用した生体成分測定方法において、以下の(1)〜(3)の成分
(1)ペルオキシダーゼ
(2)ペルオキシダーゼの存在下で過酸化水素と反応して呈色する酸化還元発色試薬
(3)2,2,6,6−Tetramethylpiperidine 1−Oxyl Free Radical(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル フリーラジカル)
を共存させ、且つ(3)2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル フリーラジカルの試薬中終濃度が5.0mmol/L以下であることを特徴とする、エタンシラートの影響を低減させる方法。
【請求項2】
(3)2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル フリーラジカルの試薬中終濃度が0.1mmol/L〜5.0mmol/Lである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生体成分測定方法が2試薬系であり、第一試薬に(3)2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル フリーラジカルを含有させて用いることにより共存させる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
クレアチニン測定、尿酸測定、中性脂肪測定、総コレステロール測定、HDL−C測定、又はLDL−C測定のために行われる、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
(3)2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル フリーラジカルと、(4)アスコルビン酸オキシダーゼ、ザルコシンオキシダーゼ、クレアチンアミジノヒドラーゼ、及びカタラーゼからなる群より選択される少なくとも1種の酵素とを更に共存させる、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
以下の(1)〜(3)の成分
(1)ペルオキシダーゼ
(2)ペルオキシダーゼの存在下で過酸化水素と反応して呈色する酸化還元発色試薬
(3)2,2,6,6−Tetramethylpiperidine 1−Oxyl Free Radical(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル フリーラジカル)
を含み、且つ(3)2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル フリーラジカルの試薬中終濃度が5.0mmol/L以下であることを特徴とする、エタンシラートが含まれている可能性がある生体試料を測定するための試薬。
【請求項7】
(3)2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル フリーラジカルの試薬中終濃度が0.1mmol/L〜5.0mmol/Lである、請求項6に記載の試薬。
【請求項8】
生体試料を測定するための試薬が2試薬系であり、第一試薬に(3)2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル フリーラジカルを含有させて用いることにより共存させる、請求項6又は7に記載の試薬。
【請求項9】
クレアチニン測定試薬、尿酸測定試薬、中性脂肪測定試薬、総コレステロール測定試薬、HDL−C測定試薬、又はLDL−C測定試薬である、請求項6〜8のいずれかに記載の試薬。
【請求項10】
(3)2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル フリーラジカルと、(4)アスコルビン酸オキシダーゼ、ザルコシンオキシダーゼ、クレアチンアミジノヒドラーゼ、及びカタラーゼからなる群より選択される少なくとも1種の酵素とを更に共存させる、請求項6〜9のいずれかに記載の試薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臨床診断において、生体成分を酸化還元反応を利用して測定する測定方法およびそれに用いる測定用組成物に関し、さらに詳しくは、生体成分中に共存する妨害物質の影響を回避することのできる上記方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、臨床診断においては、酵素法による生体成分の測定が行われており、特に酸化酵素−ペルオキシダーゼ−酸化還元発色試薬(以下、発色剤とも表記する。)系による方法、すなわち検体中の測定対象物質を酵素反応させて過酸化水素を発生させ、これをペルオキシダーゼの存在下発色剤と反応させて比色定量する方法が広く行われている。この方法では、血清中に共存する妨害物質、例えばアスコルビン酸、ビリルビンなどの生体内還元物質の影響を受けやすい問題点が知られていたが、それぞれの妨害物質に応じて種々の対策が検討され、克服されてきた。
【0003】
一方、妨害物質としてこれまでエタンシラートが見出されている(非特許文献1)。エタンシラートは止血剤として用いられる医薬品で、毛細血管抵抗性の減弱及び透過性の亢進によると考えられる出血傾向、例えば紫斑病などの患者に経口投与されるため、血清などの体液に混入して測定値に影響を与える可能性がある。非特許文献1によれば、エタンシラートがペルオキシダーゼに対し水素供与体として作用し、測定対象の濃度に応じて生成した過酸化水素を発色色素よりも先に消費してしまうため、真の値に対し負の影響を与えることとなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】臨床病理 第40巻 第8号 863−867ページ(1992)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、エタンシラートの影響を回避するために、より簡便、安全かつ効果的な方法を創出することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、反応系への2,2,6,6−Tetramethylpiperidine 1−Oxyl Free Radical(別名TEMPO Free Radical または 2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル フリーラジカル)(CAS番号:2564−83−2)(以下、TEMPOとも記載する。)の添加によりエタンシラートの影響を回避できることを見出した。さらに、TEMPOを測定用組成物に予め添加することにより、試料の前処理を行わずにエタンシラートの影響を受けない測定が出来ることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は以下のような構成からなる。
【0007】
[項1]
酸化還元反応を利用した生体成分測定方法において、以下の(1)〜(3)の成分を共存させることを特徴とする、エタンシラートの影響を低減させる方法。
(1)ペルオキシダーゼ
(2)ペルオキシダーゼの存在下で過酸化水素と反応して呈色する酸化還元発色試薬
(3)2,2,6,6−Tetramethylpiperidine 1−Oxyl Free Radical(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル フリーラジカル)
[項2]
以下の(1)〜(3)の成分を含むことを特徴とする、エタンシラートが含まれている可能性がある生体試料を測定するための試薬
(1)ペルオキシダーゼ
(2)ペルオキシダーゼの存在下で過酸化水素と反応して呈色する酸化還元発色試薬
(3)2,2,6,6−Tetramethylpiperidine 1−Oxyl Free Radical(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル フリーラジカル)
【発明の効果】
【0008】
本発明により、酸化酵素−ペルオキシダーゼ−発色剤系による酵素法での生体成分測定において、試料の前処理を行わずにエタンシラートの影響を受けない測定が可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(生体成分測定方法)
本発明が適用される生体成分測定方法は、酵素法による生体成分測定方法であって、特に酸化酵素−ペルオキシダーゼ−発色剤系による方法、すなわち検体中の測定対象物質を酵素反応させて過酸化水素を発生させ、これをペルオキシダーゼの存在下で発色剤と反応させて比色定量する方法を利用する方法である。
この原理を用いる生体成分測定方法は既に当該技術分野において確立されている。よって、その知見を本発明に適用して、各種試料中の生体成分の量または濃度を測定することができ、その態様は特に制限されない。
例えば、尿酸(UA)、クレアチニン(CRE)、トリグリセライド(TG)、コレステロール(CHO)などの生体成分等を測定するための方法が例示できる。
【0010】
例えば、UAを測定する場合は、UAを基質とするウリカーゼ(酸化酵素)の反応により生成した過酸化水素をペルオキシダーゼ−発色剤系により定量することができる。
他方、CREを測定する場合は、CREを基質とするクレアチニンアミジノヒドロラーゼの反応においては過酸化水素を直接生じないので、クレアチニンアミジノヒドロラーゼの反応で生じたクレアチンを予め試薬に添加したクレアチンアミドヒドロラーゼと反応させてサルコシンを生じさせ、さらに、サルコシンを予め試薬に添加したサルコシンオキシダーゼ(酸化酵素)を用いて過酸化水素を生じさせる、いわゆる共役反応を設計することにより、ペルオキシダーゼ−発色剤系によるCRE濃度の定量が可能になる。
TGを測定する場合は、TGを基質とするリポプロテインリパーゼ、および、共役酵素としてグリセロールキナーゼ、グリセロール3リン酸オキシダーゼ(酸化酵素)を用いて過酸化水素を生じさせることにより、ペルオキシダーゼ−発色剤系によるTG濃度の定量が可能になる。
このように、測定対象を直接酸化して過酸化水素を発生させる反応を触媒する適当な酵素がなくても、過酸化水素を発生することができる酸化酵素の基質に測定対象を変化させうる反応を触媒する酵素(何段階かの酵素反応を繋げてもよい。)と、前記酸化酵素とを組み合わせた共役反応を適宜設計することにより、上記以外の生体成分の濃度又は量を測定することも可能である。
【0011】
上記の方法を実施するための手段としては、汎用の自動分析機(例えば、日立7170形自動分析機)に適用できるよう構成された液状試薬(またはキット)を用いる方法、凍結乾燥などの手段により製造された乾燥製剤と溶解液の組み合わせで構成された試薬(またはキット)を用いる方法、適当な担体に酵素などを担持させた形態のいわゆるドライシステム等と呼ばれるキットやセンサを用いる方法など種々の形態が例示できる。
好ましくは、試薬を2つに分包した液状試薬(以下、2試薬系の液状試薬とも記載する。)を用いて自動分析機で分析する方法である。この方法では、試料にまず1種類目の試薬(以下、第一試薬またはR1とも記載する。)を添加して一定時間反応させ、次いで2種類目の試薬(以下、第一試薬またはR1とも記載する。)をさらに添加して反応させ、この間の吸光度の変化を測定することにより目的成分を定量することが出来る。
【0012】
本発明は、酸化還元反応を利用した生体成分測定方法において、エタンシラートの影響を低減させる方法である。本発明の方法は、エタンシラートが含まれている可能性がある生体試料を測定する場合に、試料の前処理を行わずにエタンシラートの影響を低減させることを可能にする。エタンシラートが含まれている可能性がある試料としては、例えば、エタンシラート投与患者の体液(たとえば、血清・血しょうなど血液に由来する試料)があるが、それに限定されない。
【0013】
(生体成分測定試薬)
本発明のエタンシラートが含まれている可能性がある生体試料を測定するための試薬は、以下の(1)〜(3)の成分を含むものであれば特に限定されるものではない。上記のとおり種々の形態をとることができ、その試薬組成などの構成は当業者であれば本明細書の説明に基づいて適宜設定することができる。
(1)ペルオキシダーゼ
(2)ペルオキシダーゼの存在下で過酸化水素と反応して呈色する酸化還元発色試薬
(3)2,2,6,6−Tetramethylpiperidine 1−Oxyl Free Radical(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル フリーラジカル)
【0014】
(ペルオキシダーゼ)
本発明に用いるペルオキシダーゼとしては、過酸化水素と酸化還元系発色試薬との反応を触媒する酵素であれば、いかなる種類の酵素を用いてもよく、例えば植物由来、細菌由来、担子菌由来のペルオキシダーゼが挙げられる。これらの中でも、純度、入手の容易性、価格等の理由から、西洋ワサビ、イネ、大豆由来のペルオキシダーゼが好ましく、西洋ワサビ由来のペルオキシダーゼがより好ましい。市販品としては、PEO−131(東洋紡製)、PEO−301(東洋紡製)、PEO−302(東洋紡製)等が好適に用いられる。その使用量や添加の形態などについては特に限定されない。
【0015】
ペルオキシダーゼ活性は、以下の方法で定義する。
蒸留水14mL、5%(W/V)ピロガロール水溶液2mL、0.147M 過酸化水素水1mL及び100mMリン酸緩衝液(pH6.0)2mLを順次混合した後、20℃にて5分間予備温調し、サンプル溶液1mLを加え、酵素反応を開始する。20秒間反応を行った後、2N硫酸水溶液1mLを加えることにより反応を停止し、生成したプルプロガリンをエーテル15mLにて5回抽出する。抽出液を合わせた後、全量100mLとし、波長420nmにおける吸光度を測定する(ΔODtest)。一方、盲検は蒸留水14mL、5%ピロガロール水溶液2mL、0.147M 過酸化水素水1mL及び100mMリン酸緩衝液(pH6.0)2mLを順次混合した後、2N 硫酸水溶液1mLを加えて混和し、次いでサンプル溶液1mLを加えて調製する。この液につき、上記と同様にエーテル抽出を行って吸光度を測定する(ΔODblank)。ΔODtest及びΔODblankの吸光度の差より生成するプルプロガリン量を算出し、ペルオキシダーゼ活性を算出する。上記条件で20秒間に1.0mgのプルプロガリンを生成する酵素量を1プルプロガリン単位(U)とする。計算式は、以下に示す通りである。

U/mL
={ΔOD(ODtest−ODblank)×希釈倍率}/{0.117×1(mL))
=ΔOD×8.547×希釈倍率

U/mg={U/mL}×1/C

0.117 : 1mg% プルプロガリンエーテル溶液の420nmにおける吸光度
C : 溶解時の酵素濃度(c mg/mL)
(1プロプルガリン単位は13.5国際単位(o−dianisidineを基質とし、25℃の反応条件下)に相当する。)

なお、上記測定において、サンプル溶液は、予め氷冷した0.1Mリン酸緩衝液pH6.0で溶解し、同緩衝液で3.0〜6.0プルプロガリン単位(U)/mLになるよう希釈して測定に供することが好ましい。
【0016】
(酸化還元発色試薬)
本発明に用いる酸化還元系発色試薬としては、過酸化水素と反応して呈色するものであれば、いかなる種類の色素を用いてもよく、例えば水素供与体とカップラー、ロイコ体、テトラゾリウム塩等が挙げられる。その使用量や添加の形態などについては特に限定されない。これらはいずれも、市販品などを入手することができる。
【0017】
水素供与体とカップラーを用いた代表例は、水素供与体とカップラーとをペルオキシダーゼの存在下に過酸化水素によって酸化縮合させて色素を形成させるトリンダー(Trinder)法である。
トリンダー法などに用いる水素供与体としては、フェノール、フェノール誘導体、アニリン誘導体、ナフトール、ナフトール誘導体、ナフチルアミン、ナフチルアミン誘導体等が知られている。
たとえば、N−エチル−N−スルホプロピル−3−メトキシアニリン、N−エチル−N−スルホプロピルアニリン、N−エチル−N−スルホプロピル−3,5−ジメトキシアニリン、N−スルホプロピル−3,5−ジメトキシアニリン、N−エチル−N−スルホプロピル−3,5−ジメチルアニリン、N−エチル−N−スルホプロピル−3−メチルアニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メトキシアニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)アニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン、N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメチルアニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メトキシアニリン、N−スルホプロピルアニリン、N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−2,5−ジメチルアニリン、N−エチル−N−(3−メチルフェニル)−N’−サクシニルエチレンジアミン、N−エチル−N−(3−メチルフェニル)−N’−アセチルエチレンジアミン等が挙げられる。また、これら水素供与体はカップラーと組合せて用いることができる。
また、カップラーとしては4−アミノアンチピリン(4AA)、アミノアンチピリン誘導体、バニリンジアミンスルホン酸、メチルベンズチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)、スルホン化メチルベンズチアゾリノンヒドラゾン(SMBTH)等が知られている。
【0018】
ロイコ体としては、トリフェニルメタン誘導体、フェノチアジン誘導体、ジフェニルアミン誘導体等が挙げられる。具体的には、4,4’−ベンジリデンビス(N,N−ジメチルアニリン)、4,4’−ビス[N−エチル−N−(3−スルホプロピルアミノ)−2,6−ジメチルフェニル]メタン、1−(エチルアミノチオカルボニル)−2−(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−4,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)イミダゾール、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミン、N−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミン塩(DA64)、10−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン塩(DA67)等が挙げられる。
【0019】
テトラゾリウム塩としては、2,3,5−トリフェニルテトラゾリウム塩、2,5−ジフェニル−3−(1−ナフチル)−2H−テトラゾリウム塩、3,3’−[3,3’−ジメトキシ−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジイル]−ビス[2−(4−ニトロフェニル)−5−フェニル−2H−テトラゾリウム]塩、3,3’−[3,3’−ジメトキシ−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジイル]−ビス(2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウム)塩、2−(4−ヨードフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム塩、3,3’−(1,1’−ビフェニル−4,4’−ジイル)−ビス(2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウム)塩、3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウム塩等が挙げられる。
【0020】
(TEMPO)
本発明に用いるTEMPOは例えば東京化成工業製のものを入手可能である。
【0021】
TEMPOの含有量は特に限定されないが、好ましい下限は0.1mmol/L、さらに好ましい下限は0.5mmol/L、である。一方、好ましい上限は10mmol/L、さらに好ましい上限は5.0mmol/L、である。
【0022】
本発明には、緩衝液成分を含有させることが好ましい。緩衝液としては、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、GOOD緩衝液などが挙げられる。その使用量や設定pH、添加の形態などについては特に限定されない。これらはいずれも、市販品などを入手することができる。
GOOD緩衝液としては、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、N−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CHES)、2−〔4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル〕エタンスルホン酸(HEPES)、2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)、ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノメタンスルホン酸(TES)、N−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸(CAPS)、N−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−3−アミノプロパンスルホン酸(CAPSO)、3−〔N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ〕−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、3−〔4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル〕プロパンスルホン酸(EPPS)、2−ヒドロキシ−3−〔4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル〕プロパンスルホン酸(HEPPSO)、3−モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)、2−ヒドロキシ−3−モルホリノプロパンスルホン酸(MOPSO)、ピペラジン−1,4−ビス(2−ヒドロキシ−3−プロパンスルホン酸)(POPSO)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(TAPSO)、N−(2−アセトアミド)イミノニ酢酸(ADA)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(Bicine)、N−〔トリス(ヒドロキシメチル)メチル〕グリシン(Tricine)、などが例示される。
【0023】
本発明において、アスコルビン酸オキシダーゼ、防腐剤、塩類、酵素安定化剤、色原体安定化剤などを反応に影響を及ぼさない範囲で添加してもよい。その使用量や添加の形態などについては特に限定されない。これらはいずれも、市販品などを入手することができる。
防腐剤としては、アジ化物、キレート剤、抗生物質、抗菌剤などが挙げられる。
キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸およびその塩等が挙げられる。
抗生物質としては、ゲンタマイシン、カナマイシン、クロラムフェニコール等が挙げられる。
抗菌剤としては、メチルイソチアゾリノン、イミダゾリジニルウレア等が挙げられる。
塩類としては塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アルミニウム等が挙げられる。
酵素安定化剤としては、シュークロース、トレハロース、シクロデキストリン、グルコン酸塩、アミノ酸類等が挙げられる。
色原体安定化剤としては、エチレンジアミン四酢酸およびその塩等のキレート剤、シクロデキストリン等が挙げられる。
【0024】
(酵素の安定化方法)
また、当初は予測できなかったことであるが、後述の実施例に記載したとおり、本発明の生体成分測定方法に用いるTEMPOには、酵素の安定化効果があることがわかった。すなわち、本発明は、酵素の安定化方法としての一局面も有している。
【0025】
ここで、安定化対象となる酵素は特に限定されない。たとえば上述の生体成分測定方法の説明において示した、UA、CRE、TG、CHOなどの測定に用いられる各酵素、ペルオキシダーゼなどが挙げられる。
【0026】
ところで、これらの方法では、血清などの試料中に共存する妨害物質、例えばアスコルビン酸、ビリルビンなどの生体内還元物質の影響を受けやすい問題点が知られていたが、それぞれの妨害物質に応じて、いわゆる消去系など種々の対策が検討され、克服されてきた。例えば、アスコルビン酸に対しては、試料にアスコルビン酸オキシダーゼを作用させることにより消去できる。また、ビリルビンに対しては、試料にビリルビンオキシダーゼを作用させることにより消去できる。このような方法を採用した試薬には、アスコルビン酸オキシダーゼおよび/またはビリルビンオキシダーゼが含まれる。これらの酵素もまた、安定化の対象となりうる。
さらに、数段階の共役反応を設計した場合は、反応中間体が試料に含まれることにより正誤差を発生するので、これらについても消去系が検討されている。代表的な方法は、測定対象物質に直接作用する酵素以外の酵素を試料に作用させて過酸化水素を生じさせ、反応中間体をカタラーゼで消去した後、測定対象物質に直接作用する酵素を反応系に追加して過酸化水素を発生させ、これをペルオキシダーゼの存在下で発色剤と反応させると同時に、カタラーゼの作用を事実上停止させて比色定量する方法である。たとえばCRE測定の場合は、クレアチニンアミジノヒドロラーゼ以外の酵素(クレアチンアミドヒドロラーゼおよびサルコシンオキシダーゼ)を試料に作用させて、反応中間体(クレアチンなど)に起因して発生した過酸化水素をカタラーゼで消去した後、クレアチニンアミジノヒドロラーゼを反応系に追加して、測定対象であるCREに起因して発生した過酸化水素をペルオキシダーゼの存在下で発色剤と反応させて比色定量する(このとき、同時に、カタラーゼの作用を実質的に停止させる。)。このような方法を採用した試薬には、カタラーゼが含まれる。この酵素もまた、安定化の対象となりうる。
【0027】
具体的には、アスコルビン酸オキシダーゼ、ザルコシンオキシダーゼ、クレアチンアミジノヒドロラーゼ、カタラーゼが例示できる。中でもアスコルビン酸オキシダーゼ、カタラーゼが好ましい。
【0028】
2試薬系の場合、酵素の安定化の観点からは、TEMPOはどちらの試薬に添加してもかまわない。エタンシラートの影響回避効果を得たいのであれば、第一試薬に添加することが好ましい。
【実施例】
【0029】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
下記のクレアチニン測定試薬の第一試薬に、TEMPOを試薬中終濃度で0.1mmol/L〜10mmol/Lになるように調製して測定試薬とした。
試料として、液状ネスコールN(アルフレサファーマ社)に試料中終濃度が20μg/mLとなるようにエタンシラートを加え、エタンシラートを加えていない液状ネスコールNを対照として影響度を確認した。
比較例として、TEMPOを添加していないクレアチニン測定試薬で同様の検討を行なった。
【0030】
(試薬の調製)
下記組成からなるクレアチニン測定試薬をそれぞれ調製した。
第一試薬
PIPES−NaOH 50mM pH7.4
アスコルビン酸オキシダーゼ(東洋紡社製ASO−311) 3U/mL
ザルコシンオキシダーゼ(東洋紡社製SAO−351) 10U/mL
クレアチンアミジノヒドロラーゼ(東洋紡社製CRH−229) 40U/mL
カタラーゼ(東洋紡社製CAO−509) 130U/mL
N−エチル−N−(3−スルホプロピル)−3−メトキシアニリン 0.14g/L
第二試薬
PIPES−NaOH 50mM pH7.4
クレアチニンアミドヒドロラーゼ(東洋紡社製CNH−311) 400U/mL
ペルオキシダーゼ(東洋紡社製PEO−302) 10U/mL
4−アミノアンチピリン 0.6g/L
【0031】
(測定法)
日立7180形自動分析機を用いた。試料2.7μLに第一試薬 120μL添加し37℃にて5分間インキュベーションし第一反応とした。その後第二試薬を40μL添加し5分間インキュベーションし第二反応とした。第一反応および第二反応の吸光度を液量補正した各吸光度の差をとる2ポイントエンド法で546nmにおける吸光度を測定した。
クレアチニン濃度未知試料のクレアチニン濃度の算出は、精製水および5mg/dLクレアチニン水溶液の測定吸光度より算出して求めた。
【0032】
【表1】
【0033】
結果を表1に示す。すべての実施例(TEMPOの添加量が0.1mmol/L以上10mmol/L以下)で比較例よりエタンシラートの影響が低減した。
【0034】
(実施例2)
実施例1に記載のクレアチニン測定試薬の第一試薬に、TEMPOを試薬中終濃度で0.3mmol/Lとなるように調製して測定試薬とし、調製直後、35℃・7日間保存後および35℃・14日間保存後の試薬について下記測定条件で測定した。
試料としては精製水およびクレアチニン5mg/dL水溶液を測定し、試薬ブランク(精製水測定吸光度)および感度(クレアチニン5mg/dL水溶液測定吸光度より精製水測定吸光度を差し引いた吸光度)を求めた。
また、実施例1と同様に試料として、液状ネスコールN(アルフレサファーマ社)に試料中終濃度が20μg/mLとなるようにエタンシラートを加え、エタンシラートを加えていない液状ネスコールNを対照として影響度を確認した。
比較例として、TEMPOを添加していないクレアチニン測定試薬で同様の検討を行なった。
【0035】
(測定法)
日立7180形自動分析機を用いた。試料2.7μLに第一試薬 120μL添加し37℃にて5分間インキュベーションし第一反応とした。その後第二試薬を40μL添加し5分間インキュベーションし第二反応とした。第一反応および第二反応の吸光度を液量補正した各吸光度の差をとる2ポイントエンド法で546nmにおける吸光度を測定した。
クレアチニン濃度未知試料のクレアチニン濃度の算出は、精製水および5mg/dLクレアチニン水溶液の測定吸光度より算出して求めた。
【0036】
【表2】
【0037】
結果を表2に示す。TEMPOを添加した場合、エタンシラートの影響については、35℃、7日間および14日間保存後も影響を回避できる結果であった。
実施例のブランク値および感度は、35℃、7日間および14日間保存後も良好であった。
【0038】
(実施例3)
実施例2に用いた各試薬について、第一試薬中の各酵素の安定性について確認した。各酵素は下記測定法にて測定した。
調製直後試薬の測定値を100%として35℃・7日間、14日間保存後の試薬中の成分活性または残量を確認した。
【0039】
【表3】
【0040】
結果を表3に示す。TEMPOを添加した実施例の方が、無添加の比較例に比べ各酵素とも35℃保存試薬中の酵素活性が高い結果となった。特にアスコルビン酸オキシダーゼ、カタラーゼについてはTEMPO添加により保存安定性が著しく向上する結果であった。
【0041】
(酵素活性測定法)
アスコルビン酸オキシダーゼ(ASO)
下記条件下で1分間に1マイクロモルのアスコルビン酸を酸化する酵素量を1単位(U)とする。
試薬
(A)1.0mMアスコルビン酸溶液〔10mMのL−アスコルビン酸溶液を1.0mM EDTAを含む0.2M KHPO溶液で10倍希釈する〕(用時調製)
10mMのL−アスコルビン酸溶液は176mgのL−アスコルビン酸(試薬特級,MW=176.13)を精秤し1.0mM EDTAを含む1.0mM HCl溶液100mLに溶解して調製する。
(B)10mM NaHPO溶液
(C)0.2N HCl溶液
被検酵素溶液:酵素を含む標品を予め氷冷した蒸留水で溶解(60U/mL以上)し、分析直前に0.05%BSAを含む10mM NaHPO溶液(氷冷)で0.15〜0.25U/mLに希釈する。
手順
(1)試験管に下記反応混液を調製し、30℃で約5分間予備加温する。
0.5mL 基質溶液(A)
0.5mL NaHPO溶液(B)
(反応混液のpHは5.6)
(2)被検酵素溶液0.1mLを加え、反応を開始する。
(3)30℃で正確に5分間反応させた後、HCl溶液(C)3.0mLを加えて反応を停止させる。この液につき245nmにおける吸光度を測定する(ODtest)。
(4)盲検は反応混液(1)を30℃で5分間放置後、HCl溶液(C)3.0mLを加えて混和し,次いで酵素溶液0.1mLを加えて調製する。以下同様に吸光度を測定する(ODblank)。
計算式
U/mL=(ΔOD(ODblank−ODtest)×4.1(mL)×希釈倍率)/(10.0×1.0×5(分)×0.1(mL))=ΔOD×0.82×希釈倍率
10.0:アスコルビン酸の上記測定条件下(pH1.0)でのミリモル分子吸光係数(F/micromole)
1.0:光路長(cm)
【0042】
ザルコシンオキシダーゼ(SAO)
下記条件下で1分間に1マイクロモルのHを生成する酵素量を1単位(U)とする。
試薬
(A)0.2Mサルコシン溶液〔1.78gのサルコシン(MW=89.09)を80mLの0.125%Triton X−100を含む0.125M Tris−HCl緩衝液(pH8.0)に溶解後、1.0NのNaOHあるいはHClでpHを8.0に調整(25℃)し,蒸留水で100mLとする〕
(B)0.1%4−AA水溶液(100mgの4−アミノアンチピリンを100mLの蒸留水に溶解する)
(C)0.1%フェノール水溶液(100mgのフェノールを100mLの蒸留水に溶解する)
(D)ペルオキシダーゼ水溶液〔25mgのペルオキシダーゼ(POD)(110プルプロガリン単位/mg)を蒸留水100mLに溶解する〕
(E)0.25%SDS水溶液〔1.25gのsodium dodecylsulfate(SDS)を500mLの蒸留水に溶解する〕
被検酵素溶液:酵素を含む標品を予め氷冷した2.0mM EDTAを含む20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)で溶解し、分析直前に同緩衝液で0.07−0.17U/mLに希釈する。
手順
(1)下記反応混液を調製する(褐色瓶にて氷冷保存)。
50mL サルコシン溶液(A)
10mL 4−AA水溶液(B)
20mL フェノール水溶液(C)
20mL ペルオキシダーゼ水溶液(D)
(2)反応混液1.0mLを試験管に採り,37℃で約5分間予備加温する。
(3)被検酵素溶液0.05mLを加え,反応を開始する。
(4)37℃で正確に10分間反応させた後,SDS水溶液(E)2.0mLを加えて反応を停止させる。この液につき500nmにおける吸光度を測定する(ODtest)。
(5)盲検は酵素溶液の代わりに酵素希釈液(2.0mM EDTAを含む20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0))を用い、上記同様に操作を行って吸光度を測定する(ODblank)。
計算式
U/mL=(ΔOD(ODtest−ODblank)×3.05(mL)×希釈倍率)/(13.3×(1/2)×1.0×10(分)×0.05(mL))=ΔOD×0.917×希釈倍率
13.3:Quinoneimine色素の上記測定条件下でのミリモル分子吸光係数(F/micromole)
1/2:酵素反応で生成したHの1分子から形成するQuinoneimine色素は1/2分子である事による係数
1.0:光路長(cm)
【0043】
クレアチンアミジノヒドロラーゼ(CRH)
下記条件下で1分間に1マイクロモルの黄色色素を生成する酵素量を1単位(U)とする。
試薬
(A)0.1Mクレアチン溶液〔1.49gのクレアチン(ナカライテスク製)を50mMリン酸緩衝液pH7.5に溶解し、100mLとする〕
(B)DAB溶液(2.0gのp−ジメチルアミノベンズアルデヒドを100Pのジメチルスルホキシドに溶解させた後、濃塩酸15mLを加える)
被検酵素溶液:酵素を含む標品を予め氷冷した50mMリン酸緩衝液(pH7.5)で溶解し、分析直前に同緩衝液で2.0〜3.0U/mLに希釈する。
手順
(1)試験管に基質溶液(A)1.0mLを採り、37℃で約5分間予備加温する。
(2)被検酵素溶液0.1mLを加え、反応を開始する。
(3)37℃で正確に10分間反応させた後、DAB溶液(B)2.0mLを加えて反応を停止させる。
(4)25℃で20分間放置後、435nmにおける吸光度を測定する(ODtest)。
(5)盲検は基質溶液(A)1.0mLを37℃で10分間放置後、DAB溶液(B)2.0mLを加えて混和し、次いで酵素溶液0.1mLを加えて調製する。以下同様に25℃で20分間放置後吸光度を測定する(ODblank)。
計算式
U/mL=(ΔOD(ODtest−ODblank)×3.1(mL)×希釈倍率)/(0.321×1.0×10(分)×0.1(mL))=ΔOD×9.65×希釈倍率
0.321:黄色色素のミリモル分子吸光係数(F/micromole)
1.0:光路長(cm)
【0044】
カタラーゼ(CAO)
下記条件下で1分間に1マイクロモルのHを加水分解する酵素量を1単位(U)とする。
試薬
(A)10mMリン酸緩衝液 pH7.0(25℃における)
(B)H溶液 16mM(0.182mlの30%(W/V)を100mLの(A)で溶解する。))
(C)チタン試薬 1.0gのTiOと10gのKSOとを150mLの濃硫酸とともに、マントルヒーター上で180−220℃で2−3時間混ぜる。混合液を冷却して、溶液部分を水で1.5Lに希釈する。
(D)酵素希釈液 (A)を用いる。
手順
(1)試験管に基質溶液(B)0.25mLを採り、25℃で約5分間予備加温する。
(2)被検酵素溶液0.25mLを加えて混ぜる。
(3)25℃で正確に5分間反応させた後、チタン試薬(C)2.5mLを加えて反応を停止させる。
(4)410nmにおける吸光度を測定する(ODtest)。
(5)盲検は基質溶液(B)0.25mLを25℃で5分間放置後、チタン試薬(C)2.5mLを加えて混和し、次いで酵素溶液0.25mLを加えて調製する。(ODblank)。
計算式
U/mL=(ΔOD(ODtest−ODblank)×3.0(mL)×希釈倍率)/(F×1.0×5(分)×0.25(mL))=ΔOD×2.4×(1/F)×希釈倍率
F:1.0mMのHの存在により生じるTitaniu color productの吸光係数(普通は約7.0であるが、既知濃度のHの濃度を用いて、各々のロットにおいて決める。)
1.0:光路長(cm)
【0045】
(実施例4)
下記の尿酸測定試薬(UA)、中性脂肪測定試薬(TG)、総コレステロール測定試薬(TC)、HDL−C測定試薬(HDL)、LDL−C測定試薬(LDL)の各々の第一試薬に、TEMPOを試薬中終濃度で0.3mmol/Lになるように調製して測定試薬とした。
試料として、液状ネスコールN(アルフレサファーマ社)に試料中終濃度が200μg/mLとなるようにエタンシラートを加え、エタンシラートを加えていない液状ネスコールNを対照として影響度を確認した。
比較例として、TEMPOを添加していない各測定試薬で同様の検討を行なった。
【0046】
(試薬の調製)
尿酸測定試薬(UA)
第一試薬
PIPES−NaOH 50mM pH7.0
ペルオキシダーゼ(東洋紡社製PEO−301) 2U/mL
第二試薬
PIPES−NaOH 50mM pH7.0
N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メチルアニリン(同仁化学社製) 0.4g/L
ウリカーゼ(東洋紡社製UAO−211) 0.8U/mL
中性脂肪測定試薬(TG)
第一試薬
PIPES−NaOH 100mM pH6.6
MgCl 1mmol/L
アデノシン3リン酸2Na塩 1mmol/L
4−アミノアンチピリン 0.4mmol/L
フラビンアデニンジヌクレオチド2Na塩 8μmol/L
グリセロールキナーゼ(東洋紡社製GYK−311) 3U/mL
カタラーゼ(東洋紡社製) 200U/mL
グリセロリン酸オキシダーゼ(東洋紡社製G3O−321) 3U/mL
ASO(東洋紡績製ASO−311) 1U/mL
第二試薬
PIPES−NaOH 50mM pH7.4
クレアチニンアミドヒドロラーゼ(東洋紡社製CNH−311) 400U/mL
ペルオキシダーゼ(東洋紡社製PEO−302) 10/mL
4−アミノアンチピリン 0.6g/L

総コレステロール測定試薬(TC)
第一試薬
PIPES−NaOH 50mM pH7.0
アスコルビン酸オキシダーゼ(東洋紡社製ASO−311) 3U/mL
コレステロールエステラーゼ(東洋紡社製COE−311) 2U/mL
コール酸ナトリウム 5g/L
N−エチル−N−(3−スルホプロピル)−3−メトキシアニリン 0.14g/L
第二試薬
PIPES−NaOH 50mM pH7.0
コレステロールオキシダーゼ(東洋紡社製COO−321) 2U/mL
ペルオキシダーゼ(東洋紡社製PEO−302) 10/mL
4−アミノアンチピリン 0.6g/L

HDL−C測定試薬(HDL)
第一試薬
PIPES−NaOH 50mM pH6.5
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 0.2mmol/L
塩化マグネシウム 5mmol/L
塩化カルシウム 0.1mmol/L
N,N−ビス(3−D−グルコンアミドプロピル)デオキシコラミド(同仁化学社製) 0.1%
ジギトニン(同仁化学社製) 0.01%
コレステロールエステラーゼ(東洋紡社製COE−301) 2U/mL
コレステロールオキシダーゼ(東洋紡社製COO−321) 3U/mL
カタラーゼ(東洋紡社製CAO−509) 100U/mL
N−エチル−N−スルホプロピル−3−メトキシアニリン(同仁化学社製) 0.1g/L
第二試薬
MOPS−NaOH 100mM pH7.5
エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム塩 0.2mmol/L
塩化カルシウム 0.1mmol/L
エマルゲン120(花王社製) 0.3%
化学修飾コレステロールエステラーゼ(東洋紡社製COE−313) 1U/mL
ペルオキシダーゼ(東洋紡社製PEO−301) 8U/mL
4−アミノアンチピリン 0.4g/L

LDL−C測定試薬(LDL)
第一試薬
PIPES−NaOH 50mM pH7.5
エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム塩 0.2mmol/L
塩化マグネシウム 10mmol/L
塩化カルシウム 0.1mmol/L
N,N−ビス(3−D−グルコンアミドプロピル)デオキシコラミド(同仁化学社製) 0.2%
化学修飾コレステロールエステラーゼ(東洋紡社製COE−313) 0.5U/mL
未修飾コレステロールオキシダーゼ(東洋紡社製COO−321) 3U/mL
カタラーゼ(東洋紡社製CAO−509) 100U/mL
4−アミノアンチピリン 0.1g/L
第二試薬
PIPES−NaOH 50mM pH7.5
エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム塩 0.2mmol/L
塩化マグネシウム 10mmol/L
塩化カルシウム 0.1mmol/L
ポリオキシプロピレン(2)ポリオキシエチレンデシルエーテル(エマレックスDAPE0207:日本エマルジョン社製) 0.3%
ペルオキシダーゼ(東洋紡社製PEO−301) 8U/mL
N−エチル−N−スルホプロピル−3−メトキシアニリン(同仁化学社製) 0.4g/L
【0047】
(測定法)
日立7180形自動分析機を用いた。試料に第一試薬を添加し37℃にて5分間インキュベーションし第一反応とした。その後第二試薬を添加し5分間インキュベーションし第二反応とした。第一反応および第二反応の吸光度を液量補正した各吸光度の差をとる2ポイントエンド法で所定の波長における吸光度を測定した。
各々以下のサンプル(S)、試薬量(R1、R2)、測定波長を用いた。(S/R1、R2/測定波長)
UA 2.7μL /120μL、60μL/ 600nm
TC 1.5μL /120μL、60μL/ 600nm
TG 1.5μL /120μL、60μL/ 600nm
HDL 1.6μL /150μL、50μL/ 600nm
LDL 1.6μL /150μL、50μL/ 600nm
濃度の算出は、精製水および各項目の標準液の測定吸光度より算出して求めた。
各項目の標準液濃度は以下を用いた。
UA 6.9mg/dL
TC 221mg/dL
TG 124mg/dL
HDL 89mg/dL
LDL 91mg/dL
【0048】
【表4】
【0049】
結果 表4に示す。比較例と比較し、いずれの試薬もTEMPOを添加した実施例では、エタンシラートの影響を低減できる結果であった。
【0050】
(実施例5)
実施例3と同様の実験を、TEMPOの濃度を0.1〜1mmol/Lの範囲で表5に記載のように変え、調製直後試薬の測定値を100%として35℃・14日間保存後の試薬中の成分活性または残量を確認した。
【0051】
【表5】
【0052】
結果を表5に示す。すべての実施例(TEMPOの添加量が0.1mmol/L以上1mmol/L以下)で、TEMPO無添加の比較例に比べ各酵素とも35℃保存試薬中の酵素活性が高い結果となった。特にアスコルビン酸オキシダーゼ、カタラーゼについてはTEMPO添加により保存安定性が著しく向上する結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
生体成分を酸化還元反応を利用して測定する測定方法、および、該方法に用いる試薬や組成物に適用できる。