特許第6459359号(P6459359)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6459359
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】クローザ装置及び車両用ドアロック装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 79/08 20140101AFI20190121BHJP
   E05B 81/20 20140101ALI20190121BHJP
   E05B 81/36 20140101ALI20190121BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   E05B79/08
   E05B81/20 A
   E05B81/20 B
   E05B81/36
   B60J5/00 H
   B60J5/00 N
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-202007(P2014-202007)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-69986(P2016-69986A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】後藤 悟
(72)【発明者】
【氏名】西本 匡伸
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼須 頌子
(72)【発明者】
【氏名】福田 貴行
(72)【発明者】
【氏名】竹内 鉄長
(72)【発明者】
【氏名】伴 裕史
【審査官】 小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−149471(JP,A)
【文献】 実開昭49−042633(JP,U)
【文献】 特開2007−002589(JP,A)
【文献】 特表2014−510207(JP,A)
【文献】 特開2009−155938(JP,A)
【文献】 特開2008−092754(JP,A)
【文献】 特開2007−174850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中立位置を基準として相反する二方向のクローズ位置とリリース位置との間を回動可能に設けられ、前記中立位置から前記二方向のうち前記クローズ位置側への回動によりラッチ機構をクローズ動作させるとともに前記二方向のうち前記リリース位置側への回動によりラッチ機構をリリース動作させるレバー部材と、
前記レバー部材を回動させるアクチュエータと、
第1端部に回動支点を有するとともに第2端部に前記レバー部材との接続点を有して該レバー部材を相反する前記二方向に付勢可能に構成され、前記クローズ動作及び前記リリース動作において該レバー部材を回動付勢する付勢部材と、
前記付勢部材による付勢方向が反転する前記中立位置に前記レバー部材を保持する中立保持機構と、を備えるクローザ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクローザ装置において、
前記中立保持機構は、前記レバー部材と前記付勢部材との接続点が前記レバー部材の回動中心及び前記付勢部材の回動支点を通る直線上に配置される前記レバー部材の回動位置を前記中立位置として、該中立位置に前記レバー部材を復帰させるべく前記アクチュエータの作動を制御するものであること、を特徴とするクローザ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のクローザ装置において、
前記アクチュエータは、コギングトルクを有するモータを駆動源とするものであって、
前記中立保持機構は、前記コギングトルクに基づき前記付勢方向が反転する回動位置において前記レバー部材の回動を規制するものであること、を特徴とするクローザ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のクローザ装置において、
前記アクチュエータは、前記モータの回転を減速して出力するものであること、
を特徴とするクローザ装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載のクローザ装置を備えた車両用ドアロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローザ装置及び車両用ドアロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、車両用のドアロック装置は、車両ドアの開閉動作に伴い相対移動するストライカに係合するラッチ機構を備えている。そして、このようなドアロック装置には、その係合したストライカを相対移動不能に拘束すべくラッチ機構がハーフラッチ状態からフルラッチ状態に移行するクローズ動作、及びその拘束を解除するリリース動作について、アクチュエータを備えたクローザ装置により行うものがある。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のクローザ装置は、アクチュエータに駆動されることにより回動してラッチ機構をクローズ動作させるレバー部材を備えている。更に、このクローザ装置には、そのレバー部材をクローズ方向に回動付勢する付勢部材が設けられている。そして、その付勢力を利用することにより、アクチュエータの小型化を図りつつ、より速やかにラッチ機構をクローズ動作させることが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−149471号公報
【特許文献2】特開2002−250162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術にみられるような一方向の付勢構造では、例えば、特許文献2に示されるような、レバー部材の回動方向に応じてラッチ機構のクローズ動作とリリース動作とを切り替える構成を採用した場合には、そのレバー部材に付与された付勢力が円滑なリリース動作の妨げとなる可能性がある。このため、このような切替構造の採用による装置の小型化が難しく、これが搭載性の向上を妨げる一因になっていることから、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、簡素な構成にて、より円滑にラッチ機構をクローズ動作及びリリース動作させることのできるクローザ装置及び車両用ドアロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するクローザ装置は、中立位置を基準として相反する二方向のクローズ位置とリリース位置との間を回動可能に設けられ、前記中立位置から前記二方向のうち前記クローズ位置側への回動によりラッチ機構をクローズ動作させるとともに前記二方向のうち前記リリース位置側への回動によりラッチ機構をリリース動作させるレバー部材と、前記レバー部材を回動させるアクチュエータと、第1端部に回動支点を有するとともに第2端部に前記レバー部材との接続点を有して該レバー部材を相反する前記二方向に付勢可能に構成され、前記クローズ動作及び前記リリース動作において該レバー部材を回動付勢する付勢部材と、前記付勢部材による付勢方向が反転する前記中立位置に前記レバー部材を保持する中立保持機構と、を備えることが好ましい。
【0008】
上記構成によれば、一つの付勢部材でレバー部材を相反する二方向に付勢することができる。そして、これにより、レバー部材の回動方向に応じた動作切替構造を採用しつつ、そのクローズ動作時及びリリース動作時の何れにおいても付勢部材の付勢力をアクチュエータの駆動力に加えることができる。また、付勢方向が反転する中立位置においては、そのレバー部材を回動させる付勢力が無効化される。そして、これにより、通常時におけるレバー部材の回動位置を安定的に保持することができる。その結果、簡素な構成にて、より円滑にラッチ機構をクローズ動作及びリリース動作させることができる。
【0009】
上記課題を解決するクローザ装置は、前記中立保持機構は、前記レバー部材と前記付勢部材との接続点が前記レバー部材の回動中心及び前記付勢部材の回動支点を通る直線上に配置される前記レバー部材の回動位置を前記中立位置として、該中立位置に前記レバー部材を復帰させるべく前記アクチュエータの作動を制御するものであることが好ましい。
【0010】
即ち、付勢部材によるレバー部材の付勢方向は、その付勢部材とレバー部材との接続点が両者の回動中心及び回動支点を通る直線上に配置される回動位置において反転する。従って、この回動位置を中立位置として、当該中立位置にレバー部材を復帰させることにより、その通常時におけるレバー部材の回動位置を安定的に保持することができる。
【0011】
上記課題を解決するクローザ装置は、前記アクチュエータは、コギングトルクを有するモータを駆動源とするものであって、前記中立保持機構は、前記コギングトルクに基づき前記付勢方向が反転する回動位置において前記レバー部材の回動を規制するものであることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、簡素な構成にて、通常時におけるレバー部材の回動位置を安定的に保持することができる。
上記課題を解決するクローザ装置は、前記アクチュエータは、前記モータの回転を減速して出力するものであることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、モータのコギングトルクをより有効に利用することができる。そして、これにより、通常時におけるアクティブレバーの回動位置を、より安定的に保持することができる。
【0014】
上記課題を解決する車両用ドアロック装置は、上記何れかのクローザ装置を備えたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡素な構成にて、簡素な構成にて、より円滑にラッチ機構をクローズ動作及びリリース動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ドアロック装置の概略構成を示す斜視図。
図2】ドアロック装置の概略構成を示す斜視図。
図3】ラッチ機構の概略構成及び動作説明図(アンラッチ状態)。
図4】ラッチ機構の概略構成及び動作説明図(ストライカ進入時)。
図5】ラッチ機構の概略構成及び動作説明図(ハーフラッチ状態)。
図6】ラッチ機構の概略構成及び動作説明図(クローズ動作時)。
図7】ラッチ機構の概略構成及び動作説明図(フルラッチ状態)。
図8】ラッチ機構の概略構成及び動作説明図(リリース動作時)。
図9】ラッチ機構の概略構成及び動作説明図(リリース完了状態)。
図10】クローザ装置の概略構成及び動作説明図(通常時:中立位置)。
図11】クローザ装置の概略構成及び動作説明図(クローズ制御時:フルラッチ位置)。
図12】クローザ装置の概略構成及び動作説明図(リリース制御時:リリース位置)。
図13】アクチュエータの制御態様を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、クローザ装置及び車両用ドアロック装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1図3に示すように、車両用のドアロック装置1は、図示しない車両ドアの開閉動作に伴い相対移動するストライカ10に係合するラッチ機構20と、その係合したストライカ10を相対移動不能に拘束すべくラッチ機構20をハーフラッチ状態からフルラッチ状態へと移行させるクローザ装置30と、を備えている。
【0018】
尚、本実施形態のドアロック装置1は、図示しない車両のバックドアに設けられている。そして、車両の後方開口部に設けられたストライカ10を相対移動不能に拘束することにより、そのバックドアを全閉状態に保持することが可能になっている。
【0019】
詳述すると、本実施形態のドアロック装置1は、ストライカ入出部41を有したベースプレート42を備えている。そして、本実施形態のラッチ機構20は、そのストライカ入出部41に進入したストライカ10に係合するラッチ43と、このストライカ10に係合するポール44と、を備えている。
【0020】
具体的には、ベースプレート42は、略平板状に形成された基部42aを有している。尚、本実施形態のベースプレート42は、板材を塑性加工(プレス加工)することにより形成されている。そして、ストライカ入出部41は、その基部42aの一端をスリット状に切り欠くかたちで設けられている。
【0021】
また、このベースプレート42の基部42a上には、そのストライカ入出部41を溝幅方向(図3中、左右方向)に挟む態様で、二本の支持軸45,46が立設されている。本実施形態では、これらの各支持軸45,46は、その基端部がベースプレート42の基部42aを貫通するかたちで回動可能に設けられている。そして、ラッチ43及びポール44は、それぞれ、これらの各支持軸45,46に固定されることにより、当該各支持軸45,46と一体に回動するように構成されている。
【0022】
さらに詳述すると、図3図9に示すように、略平板状に形成されたラッチ43には、その外周面に開口するストライカ係合溝47が形成されている。また、ラッチ43は、その支持軸45に嵌挿された図示しない捩りコイルバネ(ラッチ付勢バネ)によって、各図中、反時計回り方向に回動付勢されている。更に、このラッチ43は、ベースプレート42に設けられたストッパ部(図示略)に当接することにより、上記ストライカ入出部41にストライカ係合溝47の開口端が臨む位置において、そのラッチ付勢バネの付勢力に基づく回動が規制されるようになっている。そして、本実施形態のラッチ機構20は、これにより、そのストライカ入出部41に進入したストライカ10がラッチ43のストライカ係合溝47に係合するように構成されている。
【0023】
一方、ポール44は、その支持軸46に嵌挿された図示しない捩りコイルバネ(ポール付勢バネ)によって、各図中、時計回り方向に回動付勢されている。また、ポール44には、そのポール付勢バネの付勢力に基づく回動によって、ラッチ43の外周面に近接する方向に移動する係合部44aが設けられている。更に、ポール44は、ストライカ係合溝47にストライカ10が係合した状態で、その係合部44aがラッチ43の外周面に係合するように構成されている。そして、本実施形態のラッチ機構20は、これにより、そのラッチ43のストライカ係合溝47にストライカ10が係合する状態を保持することが可能になっている。
【0024】
即ち、図4及び図5に示すように、ストライカ入出部41に進入したストライカ10は、ストライカ係合溝47に係合することにより、そのラッチ43を押圧しつつ、ストライカ入出部41内を奥側(各図中、下側から上側)に向かって相対移動する。そして、これにより、そのラッチ付勢バネの付勢力に抗して、各図中、時計回り方向にラッチ43が回動する。
【0025】
また、このとき、ポール44の係合部44aは、ポール付勢バネの付勢力に基づきラッチ43の外周面に押し当てられた状態で、見かけ上、その当接するラッチ43の外周面上を摺動する。そして、本実施形態のラッチ機構20は、これにより、その外周面に形成されたラッチ43側の係合部43aにポール44側の係合部44aが係合することで、ラッチ43の回動が規制されるようになっている。
【0026】
具体的には、本実施形態では、このラッチ43側の係合部43aは、ストライカ係合溝47の開口端、詳しくは、そのストライカ10が係合することにより押圧される側の側壁面に設定されている。そして、本実施形態のラッチ機構20は、これにより、そのラッチ付勢バネによる付勢方向、つまりはストライカ係合溝47からストライカ10が排出される方向の回動を規制することで、そのラッチ43にストライカ10が係合する状態を保持する構成になっている(ハーフラッチ状態)。
【0027】
また、本実施形態のドアロック装置1は、このようにラッチ機構20がハーフラッチ状態となった場合には、当該ラッチ機構20をクローズ動作させるべく、そのクローザ装置30が作動するように構成されている。
【0028】
即ち、図6及び図7に示すように、本実施形態のラッチ機構20は、クローザ装置30に駆動されることにより、そのハーフラッチ状態に対応する回動位置(ハーフラッチ位置Px)からラッチ付勢バネの付勢力に抗してラッチ43がクローズ方向(各図中、時計回り方向)に回動するように構成されている。また、ポール44は、ラッチ43の周面に形成された第2の係合部43bに係合することにより、そのクローズ方向に回動した位置(フルラッチ位置P1)において、ラッチ付勢バネの付勢力に基づくラッチ43の回動を規制するように構成されている。そして、本実施形態のラッチ機構20は、これにより、そのラッチ43のストライカ係合溝47に係合するストライカ10を相対移動不能に拘束するフルラッチ状態に移行する構成になっている。
【0029】
更に、本実施形態のドアロック装置1は、例えば、図示しない開動作スイッチに対する操作入力等に基づいて、そのラッチ機構20をリリース動作させるべく、クローザ装置30が作動するように構成されている。
【0030】
即ち、図8及び図9に示すように、本実施形態のラッチ機構20は、クローザ装置30に駆動されることにより、そのポール44がポール付勢バネの付勢力に抗して、各図中、反時計回り方向に回動するように構成されている。また、ラッチ43は、これによりポール44との係合による回動規制が解除されることで、そのラッチ付勢バネの付勢力に基づいて、リリース方向(各図中、反時計回り方向)に回動する。そして、本実施形態のラッチ機構20は、これによりストライカ10の拘束を解除し、当該ストライカ10をストライカ係合溝47から排出することで、図3に示されるようなアンロック状態に復帰するように構成されている。
【0031】
(クローザ装置)
次に、本実施形態のドアロック装置1に設けられたクローザ装置30について説明する。
【0032】
図1及び図2に示すように、本実施形態のクローザ装置30は、モータ50を駆動源とするアクチュエータ51を備えている。本実施形態では、このアクチュエータ51のモータ50には、ローター側にマグネットを有するブラシ付きの直流モータが用いられている。また、このアクチュエータ51は、そのモータ50と減速機52とが一体に設けられた所謂ギヤードモータとして構成されている。そして、本実施形態のアクチュエータ51は、側方に設けられたピニオンギヤ53を出力部として、その減速機52により減速したモータ回転を出力する構成となっている。
【0033】
また、本実施形態のドアロック装置1は、このアクチュエータ51をラッチ機構20の傍らに支持するブラケット54を備えている。具体的には、このブラケット54は、板材を塑性加工(プレス加工)することにより形成されている。そして、本実施形態のアクチュエータ51は、このブラケット54に支持されることにより、そのラッチ機構20を構成するラッチ43及びポール44の各支持軸45,46の軸線方向(図1及び図2中、上側)に配置される構成となっている。
【0034】
具体的には、このブラケット54は、略板状の外形を有した支持部54aを備えている。また、このブラケット54は、上記ベースプレート42に固定されることにより、その支持部54aの一面(実装面54s)がラッチ43及びポール44に臨む位置に配置されるようになっている。そして、アクチュエータ51は、この支持部54aに対し、その実装面54sの裏側から固定されようになっている。
【0035】
また、この支持部54aには、当該支持部54aを厚み方向に貫通する挿通孔55が形成されている。更に、本実施形態のアクチュエータ51は、支持部54aに固定されることにより、その出力部を構成するピニオンギヤ53が、この挿通孔55を介して実装面54s側に突出するように構成されている。そして、本実施形態のクローザ装置30は、そのピニオンギヤ53に噛合するセクターギヤ56と、このセクターギヤ56と一体に回動するアクティブレバー61と、を備えている。
【0036】
詳述すると、本実施形態では、これらのセクターギヤ56及びアクティブレバー61は、板材を塑性加工(プレス加工)することにより一体に形成されている。具体的には、セクターギヤ56は、実装面54sに立設された回動軸62に基端側(要側)が軸支された略扇状の外形を有している。また、アクティブレバー61は、その回動軸62を基端として径方向外側、詳しくは、当該回動軸62を共有するセクターギヤ56の反対側に延びている。そして、アクティブレバー61の先端部分には、折曲加工により形成された押圧部61aが設けられている。
【0037】
即ち、レバー部材としてのアクティブレバー61は、セクターギヤ56を介してアクチュエータ51の駆動力が伝達されることにより回動し、その押圧部61aに当接する部材を押圧する。そして、本実施形態のクローザ装置30は、このアクティブレバー61の回動に基づいて、ラッチ機構20をクローズ動作させ、及びリリース動作させる構成になっている。
【0038】
具体的には、図10に示すように、本実施形態のクローザ装置30は、待機状態となる通常時には、このアクティブレバー61を予め設定された中立位置P0に保持する。また、クローザ装置30は、図11及び図12に示すように、この中立位置P0を基準として第1方向及び第2方向にアクティブレバー61を回動させる。そして、その第1方向(図11参照、同図中、反時計回り方向)の回動によりラッチ機構20をクローズ動作させ、第2方向(図12参照、同図中、時計回り方向)の回動によりラッチ機構20をリリース動作させるように構成されている。
【0039】
さらに詳述すると、図2及び図11に示すように、本実施形態のラッチ機構20は、支持軸45に固定されることによりラッチ43と一体に回動するラッチレバー63を備えている。本実施形態では、このラッチレバー63は、ラッチ43と略平行に延びるレバー本体63aと、その先端に立設されたラッチレバーピン63bとを備えている。そして、本実施形態のクローザ装置30は、その第1方向に回動するアクティブレバー61の押圧部61aが、ラッチレバー63のラッチレバーピン63bを押圧することにより、ラッチ43をクローズ方向に回動させる構成になっている。
【0040】
また、図1及び図12に示すように、本実施形態のラッチ機構20は、支持軸46に固定されることによりポール44と一体に回動するリフトレバー64を備えている。本実施形態では、このリフトレバー64は、その先端側が支持軸46の軸線方向に沿って延びるように当該支持軸46に固定される断面略L字状のレバー本体64aと、このレバー本体64aの側方に設けられた当接部64bと、を備えている。尚、このリフトレバー64は、板材を塑性加工(プレス加工)することにより形成されている。更に、本実施形態のクローザ装置30は、その第2方向に回動するアクティブレバー61に連動して回動するオープンレバー66を備えている。そして、このオープンレバー66がリフトレバー64の当接部64bを押圧することにより、ポール44をリリース方向に回動させる構成になっている。
【0041】
具体的には、図10図12に示すように、本実施形態のオープンレバー66は、板材を塑性加工(プレス加工)することにより形成されている。また、このオープンレバー66は、その周縁部を折曲加工することにより形成された当接部66a及び押圧部66bを備えている。そして、このオープンレバー66は、その当接部66aと押圧部66bとの間の部分に回動中心を有している。
【0042】
尚、図1に示すように、本実施形態では、ブラケット54の支持部54aには、その実装面54sを覆うカバープレート68が固定されている。また、このカバープレート68には、アクティブレバー61の回動軸62に平行する回動軸67が設けられている。そして、本実施形態のオープンレバー66は、この回動軸67に軸支されるようになっている。
【0043】
即ち、図12に示すように、本実施形態のオープンレバー66は、第2方向に回動するアクティブレバー61の押圧部61aが、その当接部66aを押圧することにより、同図中、時計回り方向に回動する。そして、その回動により押圧部66bがリフトレバー64の当接部64bを押圧する構成になっている。
【0044】
また、図10図12に示すように、本実施形態のクローザ装置30は、アクティブレバー61を回動付勢する付勢部材としてのコイルバネ70を備えている。
詳述すると、このコイルバネ70は、第1端部70aがアクティブレバー61の径方向外側に設けられた掛止ピン71に掛止されることにより、当該掛止ピン71を回動支点X1として回動可能に設けられている。また、コイルバネ70の第2端部70bは、相対回動可能な状態でアクティブレバー61の押圧部61aに接続されている。更に、このコイルバネ70は、軸線方向に圧縮された状態で、その掛止ピン71とアクティブレバー61との間に介在されている。そして、本実施形態のクローザ装置30は、これにより、そのコイルバネ70によるアクティブレバー61の付勢方向が、当該アクティブレバー61の回動位置に応じて反転するように構成されている。
【0045】
即ち、図11に示すように、本実施形態のコイルバネ70は、そのアクティブレバー61との接続点X2が当該アクティブレバー61の回動中心X0(回動軸62)及びコイルバネ70の回動支点X1を通る直線Nよりも第1方向にある場合には、当該第1方向にアクティブレバー61を付勢する。また、図12に示すように、その接続点X2が両者の回動中心X0及び回動支点X1を通る直線Nよりも第2方向にある場合には、当該第2方向にアクティブレバー61を付勢する。そして、本実施形態のクローザ装置30は、このコイルバネ70の付勢力をアクチュエータ51の駆動力に加えることで、より速やかに、ラッチ機構20をクローズ動作させ、及びリリース動作させることが可能になっている。
【0046】
また、図10に示すように、本実施形態のクローザ装置30は、通常時には、そのコイルバネ70による付勢方向が反転する回動位置、つまりアクティブレバー61とコイルバネ70との接続点X2が両者の回動中心X0及び回動支点X1を通る直線N上に配置される回動位置を中立位置P0として、そのアクティブレバー61の回動位置を保持する。
【0047】
即ち、コイルバネ70による付勢方向が反転する回動位置においては、そのコイルバネ70がアクティブレバー61を付勢(押圧)する力は、当該アクティブレバー61の回動中心X0に向かうものとなっている。つまり、通常時にアクティブレバー61の回動位置を保持する中立位置P0においては、そのアクティブレバー61を回動させるコイルバネ70の付勢力が無効化された状態となっている。更に、本実施形態のクローザ装置30は、アクティブレバー61が中立位置P0にある場合には、そのアクチュエータ51の駆動源であるモータ50のコギングトルクに基づいて、アクティブレバー61の回動が規制されるようになっている。そして、本実施形態では、これにより、通常時におけるアクティブレバー61の回動位置を中立位置P0において安定的に保持することが可能になっている。
【0048】
さらに詳述すると、図1に示すように、本実施形態のクローザ装置30は、アクチュエータ51のモータ50に駆動電力を供給するECU80を備えている。また、このECU80には、複数の位置センサ81が接続されている。尚、本実施形態では、これらの各位置センサ81には、例えば、スイッチ式のセンサ(リミットスイッチ等)が用いられている。更に、このECU80には、例えば、開動作スイッチ(図示略)が操作された場合等、そのラッチ機構20によるストライカ10の拘束を解除すべき旨を示すリリース信号S2が入力されるようになっている。そして、本実施形態のECU80は、これら各位置センサ81の出力信号S1及びリリース信号S2に基づいて、その駆動電力を供給するモータ50の回転、つまりは、アクチュエータ51の作動を制御するように構成されている。
【0049】
具体的には、本実施形態のECU80は、各位置センサ81の出力信号S1に基づいて、アクティブレバー61の回動位置が中立位置P0にあることを検出する。また、ECU80は、ラッチ43の回動位置がハーフラッチ状態に対応するハーフラッチ位置Pxにあること、及びフルラッチ状態に対応するフルラッチ位置P1にあることを検出する。更に、ECU80は、ポール44の回動位置が、そのフルラッチ状態にあるラッチ43との係合が解除されるリリース位置P2にあることを検出する。そして、本実施形態のECU80は、これらのラッチ状態及びレバー位置、並びにリリース信号S2に示される開動作要求に基づいて、ラッチ機構20をクローズ動作及びリリース動作させるべく、アクチュエータ51の作動を制御する構成になっている。
【0050】
さらに詳述すると、図13のフローチャートに示すように、ECU80は、ラッチ43がハーフラッチ位置Pxにあることを検出した場合(ステップ101:YES)には、ラッチ機構20をクローズ動作させるべく、アクティブレバー61が第1方向に回動するように、そのアクチュエータ51の作動を制御する(クローズ制御、ステップ102)。また、ECU80は、このクローズ制御の実行時には、ラッチ43がフルラッチ位置P1に到達したか否かを判定する(ステップ103)。そして、ラッチ43がフルラッチ位置P1にあることを検出した場合(ステップ103:YES)には、アクティブレバー61の回動方向を反転させて中立位置P0に復帰させるべく、そのアクチュエータ51の作動を制御する(復帰制御、ステップ104)。
【0051】
ここで、本実施形態のECU80は、この復帰制御の実行時、その中立位置P0への復帰判定として、コイルバネ70とアクティブレバー61との接続点X2が当該アクティブレバー61の回動中心X0及びコイルバネ70の回動支点X1を通る直線N上に配置される回動位置までアクティブレバー61が到達したか否かを監視する(ステップ105)。そして、アクティブレバー61が中立位置P0に復帰したことを検出した場合(ステップ105:YES)には、そのアクチュエータ51の作動を停止する(ステップ106)。
【0052】
また、ECU80は、リリース信号S2に基づき開動作要求の発生を検知した場合(ステップ107:YES)には、ラッチ機構20をリリース動作させるべく、アクティブレバー61が第2方向に回動するように、そのアクチュエータ51の作動を制御する(リリース制御、ステップ108)。更に、ECU80は、このリリース制御の実行時には、ポール44がリリース位置P2に到達したか否かを監視する(ステップ109)。そして、ポール44がリリース位置P2にあることを検出した場合(ステップ109:YES)には、上記クローズ制御の実行時と同様、ステップ104〜ステップ106の処理を実行することにより、そのアクティブレバー61を中立位置P0に復帰させるべくアクチュエータ51の作動を制御する。
【0053】
以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)クローザ装置30は、回動方向に応じてラッチ機構20をクローズ動作及びリリース動作させるレバー部材としてのアクティブレバー61と、このアクティブレバー61をモータ駆動により回動させるアクチュエータ51と、を備える。また、クローザ装置30は、第1端部70aに回動支点X1を有するとともに第2端部70bにアクティブレバー61との接続点X2を有して当該アクティブレバー61を回動付勢する付勢部材としてのコイルバネ70を備える。そして、クローザ装置30は、待機状態となる通常時には、そのコイルバネ70による付勢方向が反転する回動位置にアクティブレバー61が保持されるように構成される。
【0054】
上記構成によれば、一つのコイルバネ70でアクティブレバー61を第1方向及び第2方向に付勢することができる。そして、これにより、アクティブレバー61の回動方向に応じた動作切替構造を採用しつつ、そのクローズ動作時及びリリース動作時の何れにおいてもコイルバネ70の付勢力をアクチュエータ51の駆動力に加えることができる。また、付勢方向が反転する回動位置においては、そのアクティブレバー61を回動させるコイルバネ70の付勢力が無効化される。そして、これにより、通常時におけるアクティブレバー61の回動位置を安定的に保持することができる。その結果、簡素な構成にて、より円滑にラッチ機構20をクローズ動作及びリリース動作させることができる。
【0055】
(2)クローザ装置30は、アクチュエータ51の作動を制御してアクティブレバー61を第1方向及び第2方向に回動させるECU80を備える。そして、ECU80は、コイルバネ70とアクティブレバー61との接続点X2が当該アクティブレバー61の回動中心X0及びコイルバネ70の回動支点X1を通る直線N上に配置される回動位置を中立位置P0として、第1方向又は第2方向に回動したアクティブレバー61を、その中立位置P0に復帰させる。
【0056】
即ち、コイルバネ70によるアクティブレバー61の付勢方向は、そのコイルバネ70とアクティブレバー61との接続点X2が両者の回動中心X0及び回動支点X1を通る直線Nに配置される回動位置において反転する。従って、この回動位置を中立位置P0として、当該中立位置P0にアクティブレバー61を復帰させることにより、その通常時におけるアクティブレバー61の回動位置を安定的に保持することができる。
【0057】
(3)アクチュエータ51の駆動源を構成するモータ50には、コギングトルクを有するものが用いられる。そして、クローザ装置30は、このコギングトルクに基づいて、コイルバネ70によるアクティブレバー61の付勢方向が反転する回動位置において当該アクティブレバー61の回動が規制されるように構成される。このような構成とすることで、簡素な構成にて、通常時におけるアクティブレバー61の回動位置を安定的に保持することができる。
【0058】
(4)アクチュエータ51は、モータ50と減速機52とが一体に設けられた所謂ギヤードモータとして構成される。このようなアクチュエータ51を採用することで、そのモータ50のコギングトルクをより有効に利用することができる。その結果、より安定的に、アクティブレバー61の回動位置を保持することができる。
【0059】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態は、車両のバックドアに設けられたドアロック装置1に具体化したが、その他のドアに用いられるドアロック装置に適用してもよい。
【0060】
・上記実施形態では、第1方向に回動するレバー部材としてのアクティブレバー61がラッチレバー63を押圧することにより、そのラッチ機構20がクローズ動作する。そして、第2方向に回動するアクティブレバー61に連動して回動するオープンレバー66がリフトレバー64を押圧することにより、そのラッチ機構20がリリース動作することとした。しかし、これに限らず、アクチェータに駆動されることにより二方向に回動するレバー部材を備え、このレバー部材の回動方向に応じてラッチ機構20をクローズ動作及びリリース動作させるものであれば、そのレバー部材の回動により生ずる駆動力の伝達経路については任意に変更してもよい。
【0061】
・また、上記実施形態では、アクティブレバー61は、セクターギヤ56と一体に形成される。そして、そのセクターギヤ56に噛合するピニオンギヤ53を介して、アクチュエータ51の駆動力が伝達されることとした。しかし、これに限らず、レバー部材の形状、及びそのレバー部材に対する駆動力の伝達構造は、任意に変更してもよい。
【0062】
・上記実施形態では、付勢部材を構成するコイルバネ70には、圧縮コイルバネが用いられることとしたが、引張コイルバネを用いる構成としてもよい。このような構成を採用することで、例えば、そのアクティブレバー61の回動軸62をコイルバネ70の回動支点X1とすることができる。そして、これにより、装置の小型化を図ることができる。
【0063】
・また、付勢部材は、例えば、捩りコイルバネ等、その他のバネ部材を用いてもよい。そして、バネ以外の弾性部材を用いる構成についてもまた、これを排除しない。
・上記実施形態では、コイルバネ70とアクティブレバー61との接続点X2が当該アクティブレバー61の回動中心X0及びコイルバネ70の回動支点X1を通る直線N上に配置される回動位置にアクティブレバー61の中立位置P0が設定される。また、ECU80は、第1方向又は第2方向に回動したアクティブレバー61を、この中立位置P0に復帰させるべくアクチュエータ51の作動を制御する。そして、モータ50のコギングトルクに基づき、この中立位置P0でアクティブレバー61の回動が規制されることにより、そのアクチュエータ51及びECU80が中立保持機構として機能することとした。
【0064】
しかし、これに限らず、中立保持機構の構成は、任意に変更してもよい。例えば、アクティブレバー61の回動位置が中立位置P0に保持されるように、ECU80が積極的にアクチュエータ51の作動を制御する構成としてもよい。尚、この場合における中立位置保持制御の態様は、フィードバック制御によるものや、ブラシレスモータに対する通電相を固定した電力供給によるもの等、どのようなものであってもよい。また、例えば、ウォームギヤ等を用いて、アクティブレバー61側からの逆入力を伝達しない、或いは伝達し難い減速機52を用いる構成としてもよい。そして、コイルバネ70によるアクティブレバー61の付勢方向が反転する回動位置において当該アクティブレバー61に係合する係合部を備える等、物理的にアクティブレバー61の回動を規制するものであってもよい。
【0065】
・また、上記実施形態では、アクチュエータ51のモータ50には、ローター側にマグネットが設けられたブラシ付きの直流モータが用いられることとしたが、ステータ側にマグネットが設けられたブラシレスモータを用いる構成であってもよい。そして、コギングトルクの少ない、或いは有しないモータを用いる構成であってもよい。
【0066】
次に、以上の実施形態から把握することのできる技術的思想を記載する。
(イ)中立保持機構は、前記付勢方向が反転する回動位置において前記レバー部材に係合する係合部を備えること、を特徴とするクローザ装置。これより、簡素な構成にて、安定的に、レバー部材の回動位置を保持することができる。
【符号の説明】
【0067】
1…ドアロック装置、10…ストライカ、20…ラッチ機構、30…クローザ装置、41…ストライカ入出部、43…ラッチ(ロック部材)、43a…係合部、43b…第2の係合部、44…ポール(ロック部材)、44a…係合部、45…支持軸、46…支持軸、47…ストライカ係合溝、50…モータ、51…アクチュエータ(中立保持機構)、52…減速機、53…ピニオンギヤ、54…ブラケット、54a…支持部、54s…実装面、55…挿通孔、56…セクターギヤ、61…アクティブレバー(レバー部材)、61a…押圧部、62…回動軸、63…ラッチレバー、63b…ラッチレバーピン、64…リフトレバー、64b…当接部、66…オープンレバー、66a…当接部、66b…押圧部、67…回動軸、68…カバープレート、70…コイルバネ(付勢部材)、70a…第1端部、70b…第2端部、71…掛止ピン、80…ECU(中立保持機構)、81…位置センサ、P0…中立位置、P1…フルラッチ位置、P2…リリース位置、Px…ハーフラッチ位置、X0…回動中心、X1…回動支点、X2…接続点、N…直線、S1…出力信号、S2…リリース信号。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13