(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る蓄電素子について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。また、各図において、寸法等は厳密には一致しない。
【0014】
(実施の形態)
まず、蓄電素子10の構成について、詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10の外観を模式的に示す斜視図である。また、
図2は、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10の外装体100内方に配置されている構成要素を示す斜視図である。具体的には、
図2は、蓄電素子10から外装体100の本体111を分離した状態での構成を示す斜視図である。また、
図3Aは、本発明の実施の形態に係る電極体140の構成を示す斜視図であり、
図3Bは、
図3AのIIIB−IIIB断面における断面図である。
【0016】
なお、
図1及び以降の図では、説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として示しており、Z軸方向を上下方向として説明している箇所があるが、実際の使用態様において、Z軸方向が上下方向になるとは限らない。
【0017】
蓄電素子10は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。例えば、蓄電素子10は、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)または人工衛星等に適用される。なお、蓄電素子10は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。
【0018】
図1に示すように、蓄電素子10は、外装体100と、正極端子200と、負極端子300とを備えている。また、
図2に示すように、外装体100内方には、正極集電体120と、電極体140とが収容(収納)されている。また、
図2では図示されていないが、外装体100内方には、さらに、負極集電体130(
図5参照)が収容されている。
【0019】
なお、上記の構成要素の他、電極体140と外装体100の内壁との間に配置されるスペーサ、外装体100内の圧力が上昇したときに当該圧力を開放するための安全弁、または、電極体140等を包み込む絶縁フィルムなどが配置されていてもよい。また、蓄電素子10の外装体100の内部には電解液(非水電解質)などの液体が封入されているが、当該液体の図示は省略する。なお、外装体100に封入される電解液としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく、様々なものを選択することができる。
【0020】
外装体100は、長円筒状で底を備える本体111と、本体111の開口を閉塞する板状部材である蓋体110とで構成されている。また、外装体100は、電極体140等を内部に収容後、蓋体110と本体111とが溶接等されることにより、内部を密封することができるものとなっている。なお、蓋体110及び本体111の材質は、特に限定されないが、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金など溶接可能な金属であるのが好ましい。
【0021】
正極端子200は、正極集電体120を介して、電極体140の正極に電気的に接続された電極端子であり、負極端子300は、負極集電体130を介して、電極体140の負極に電気的に接続された電極端子である。つまり、正極端子200及び負極端子300は、電極体140に蓄えられている電気を蓄電素子10の外部空間に導出し、また、電極体140に電気を蓄えるために蓄電素子10の内部空間に電気を導入するための金属製の電極端子である。また、正極端子200及び負極端子300は、電極体140の上方に配置された蓋体110に取り付けられている。なお、正極端子200及び負極端子300は、アルミニウムまたはアルミニウム合金などで形成されている。
【0022】
正極集電体120は、電極体140と外装体100との間に配置され、電極体140と正極端子200とを接続する、導電性と剛性とを備えた部材である。具体的には、正極集電体120は、電極体140の扁平部143及び144(後述する)において当該扁平部143及び144の一部のみを覆い、かつ、覆う部分の少なくとも一部が、電極体140の巻回方向(長円の周方向)における扁平部143及び144の端部143a、143b、144a及び144bに配置されている。より具体的には、正極集電体120は、本実施の形態では、端部144aに配置されている。なお、以下では、電極体140の巻回方向を、単に「巻回方向」と記載する場合がある。
【0023】
この正極集電体120は、蓄電素子10の底部(Z軸方向マイナス側の部分)において、電極体140の後述する正極側の端部141に溶接などによって接合されている。なお、正極集電体120は、正極の正極集電箔と同様、アルミニウムまたはアルミニウム合金などで形成されている。正極集電体120の詳細な構成については、後述する。
【0024】
また、負極集電体130(
図5参照)は、電極体140の負極と外装体100との間に配置され、電極体140と負極端子300とを接続する、導電性と剛性とを備えた部材である。この負極集電体130は、蓄電素子10の上部(Z軸方向プラス側の部分)において、電極体140の負極側の端部142に溶接などによって接合されている。なお、負極集電体130は、負極の負極集電箔と同様、銅または銅合金などで形成されている。
【0025】
電極体140は、電気を蓄えることができる発電要素であり、正極と負極とセパレータとを備え、当該正極、負極及びセパレータがX軸方向及びY軸方向に積層されて形成されている。具体的には、電極体140は、正極、負極及びセパレータが巻回されて形成された巻回型の電極体であり、正極集電体120及び負極集電体130と電気的に接続される。
【0026】
正極は、アルミニウムやアルミニウム合金などからなる長尺帯状の金属箔である正極基材層の表面に、正極活物質層が形成された電極板である。なお、正極活物質層に用いられる正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。例えば、正極活物質として、LiMPO
4、LiMSiO
4、LiMBO
3(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の遷移金属元素)等のポリアニオン化合物、チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム等のスピネル化合物、LiMO
2(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の遷移金属元素)等のリチウム遷移金属酸化物等を用いることができる。
【0027】
負極は、銅や銅合金などからなる長尺帯状の金属箔である負極基材層の表面に、負極活物質層が形成された電極板である。なお、負極活物質層に用いられる負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。例えば、負極活物質として、リチウム金属、リチウム合金(リチウム−アルミニウム、リチウム−鉛、リチウム−錫、リチウム−アルミニウム−錫、リチウム−ガリウム、及びウッド合金等のリチウム金属含有合金)の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えば黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温焼成炭素、非晶質カーボン等)、金属酸化物、リチウム金属酸化物(Li
4Ti
5O
12等)、ポリリン酸化合物などが挙げられる。
【0028】
セパレータは、樹脂からなる微多孔性のシートである。なお、蓄電素子10に用いられるセパレータは、特に従来用いられてきたものと異なるところはなく、蓄電素子10の性能を損なうものでなければ適宜公知の材料を使用できる。また、外装体100に封入される電解液(非水電解質)としても、蓄電素子10の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく様々なものを選択することができる。
【0029】
ここで、電極体140は、正極と負極との間にセパレータが挟み込まれるように層状に配置されたものが巻回されて形成されている。具体的には、電極体140は、正極と負極とが、セパレータを介して、巻回軸の方向に互いにずらして巻回されている。そして、正極及び負極は、それぞれのずらされた方向の端縁部に、活物質が塗工されず基材層が露出した(活物質層が形成されていない)部分(活物質層非形成部)を有している。
【0030】
なお、巻回軸とは、正極及び負極等を巻回する際の中心軸となる仮想的な軸であり、本実施の形態では、電極体140の中心を通るZ軸方向に平行な直線である。
【0031】
具体的には、電極体140は、巻回軸方向の一端(Z軸方向マイナス側の端部)に、正極の活物質層非形成部が積層された正極側の端部141を有している。また、同様に、電極体140は、巻回軸方向の他端(Z軸方向プラス側の端部)に、負極の活物質層非形成部が積層された負極側の端部142を有している。
【0032】
また、電極体140は、巻回軸方向と直交する方向(本実施の形態ではY軸方向)に扁平な(つぶれた)形状である。これにより、電極体140は、巻回軸方向から見て、長円形状を有しているため、長円形状の直線部分が平坦な形状となり、長円形状の曲線部分が湾曲した形状となる。このため、
図3Bに示すように、電極体140は、対向する一対の扁平部143及び144と、対向する一対の湾曲部145及び146とを有している。
【0033】
つまり、一対の扁平部143及び144と一対の湾曲部145及び146とは、正極と負極とセパレータとが巻回されることにより形成された部分である。また、一対の扁平部143及び144と一対の湾曲部145及び146とは、正極または負極の活物質が形成されている領域内に配置される部分である。
【0034】
具体的には、一対の扁平部143及び144は、正極または負極の活物質が形成されている領域のうち、電極体140のY軸方向プラス側及びマイナス側に配置された平坦形状を有する部分であり、互いに対向して配置されている。
【0035】
一対の湾曲部145及び146は、正極または負極の活物質が形成されている領域のうち、一対の扁平部143及び144を繋ぐ湾曲形状を有する部分であり、互いに対向して配置されている。つまり、湾曲部145は、一端が扁平部143の一端に接続され、他端が扁平部144の一端に接続された略U字形状の部分であり、電極体140のX軸方向マイナス側に配置されている。また、湾曲部146は、一端が扁平部143の他端に接続され、他端が扁平部144の他端に接続された略U字形状の部分であり、電極体140のX軸方向プラス側に配置されている。
【0036】
言い換えれば、扁平部143は、一端が湾曲部145の一端に接続され、他端が湾曲部146の一端に接続されている。また、扁平部144は、一端が湾曲部145の他端に接続され、他端が湾曲部146の他端に接続されている。
【0037】
このように構成された巻回型の電極体140は、比較的変形しやすい部分と比較的変形しにくい部分とを有する。つまり、電極体140は、偏った耐変形性(変形のしにくさ)を有する。
【0038】
図4は、本実施の形態に係る電極体140における、耐変形性の偏りを説明するための図である。具体的には、同図は、電極体140に対して外方から一様に圧迫力Faがかけられた場合の、
図3AのIIIB−IIIB断面における電極体140の断面図である。
【0039】
巻回型の電極体140は、扁平部143及び144よりも湾曲部145及び146において、積層方向に変形しにくく、また、当該電極体140の巻回軸の方向(Z軸と平行な方向)から見て、長手方向よりも短手方向において変形しにくい。これにより、電極体140は、扁平部143及び144の端部143a、143b、144a及び144bにおいて、変形しにくくなる。
【0040】
特に、電極体140は、端部143a、143b、144a及び144bのうち、扁平部143及び144と湾曲部145及び146との境界において、変形しにくくなる。
【0041】
これにより、同図に示すように、電極体140に外方から一様に圧迫力Faがかけられた場合、当該電極体140は、巻回軸の方向(Z軸方向)から見て、Y軸方向の厚みが、扁平部143及び144の中央部から端部143a、143b、144a及び144bに向かって漸次大きくなり、扁平部143及び144と湾曲部145及び146との境界において最大となる形状となる。
【0042】
ここで、例えば、扁平部143及び144の端部143a、143b、144a及び144bは、扁平部143及び144のうち湾曲部145及び146の影響により厚みが大きい部分として定義することができ、具体的には、湾曲部145側に位置する端部143a及び144aは、電極体140の巻回軸の方向から見て、扁平部143及び144の各々と湾曲部145との境界から、湾曲部145の外形によって形成される円145Rの半径r1の距離以内の領域として定義することができる。また、湾曲部146側に位置する端部143b及び144bについても同様に、湾曲部146の外形によって定まる円によって定義することができる。
【0043】
なお、湾曲部145及び146の各々の外形によって形成される各円の半径は、電極体140を外装体100から取り出した状態で当該各円の半径を測定することにより求めることができる。また、扁平部143及び144の各々と湾曲部145及び146との境界は、湾曲部145及び146の各々の外形によって形成される各円の中心角が実質的に180°となる位置として定義することができる。
【0044】
次に、正極集電体120の構成について詳細に説明しながら、正極集電体120と電極体140との位置関係について述べる。
【0045】
図5は、本発明の実施の形態に係る正極集電体120及び電極体140の形状を示す図であり、(a)は側面図、(b)は(a)のVb−Vb断面における断面図、(c)は底面図である。なお、同図は、蓄電素子10から外装体100の本体111を分離した状態での構成を示す図である。
【0046】
図2及び
図5に示すように、正極集電体120は、本実施の形態では、扁平部144において当該扁平部144の一部のみを覆い、かつ、覆う部分の少なくとも一部は、扁平部144の端部144aに配置されている。また、本実施の形態では、当該覆う部分の少なくとも一部は、電極体140の扁平部144と湾曲部145との境界に配置されている。
【0047】
正極集電体120は、電極体140の巻回軸と平行な方向(Z軸方向)に延びる長尺状の延伸部121を有する。また、さらに、正極集電体120は、巻回軸の方向における扁平部144の一方の端部である正極側の端部141と接続される接続部122を有する。
【0048】
延伸部121は、正極端子200側から電極体140の正極側の端部141に延設され、本実施の形態では、端部144aに配置されている。つまり、延伸部121は、端部144aにおいて当該電極体140の巻回軸と平行な方向(Z軸方向)に配置されている。これにより、正極集電体120と端部144aとの当接領域を大きく確保することができる。
【0049】
接続部122は、延伸部121から、巻回方向における扁平部144の中心側に向かって配置されている。具体的には接続部122は、延伸部121の端部から巻回方向における電極体140の中心側に向かって延びる帯状の形状を有し、延伸部121と反対側の端部が蛇腹状に繰り返し屈曲された形状を有する。
【0050】
接続部122のうち蛇腹状に屈曲された部分(以下、「蛇腹部分」と記載する)は、電極体140の正極側の端部141と接続固定される。具体的には、端部141において、正極の活物質層非形成部は複数層ごと(例えば、20層ごと)に束ねられている。これら各束は、蛇腹部分に形成された凹部に挿入されて、例えば超音波溶接、抵抗溶接またはカシメ等によって当該蛇腹部分に接続固定される。
【0051】
この蛇腹部分は、電極体140の正極側の端部141のうち扁平部144に隣接する領域(湾曲部145及び146に隣接しない領域)に配置されている。つまり、正極集電体120は、正極側の端部141のうち扁平部144に隣接する領域で、電極体140と接続固定される。これにより、正極集電体120と電極体140との接続を比較的平坦な箇所で行うことができるので、例えば超音波溶接、抵抗溶接またはカシメ等による接続作業を容易に行うことができる。
【0052】
ここで、本願発明者らは、鋭意検討の結果、蓄電素子が振動するような環境下において、外装体内部で電極体が振動することで、電極体と外装体との間に配置された正極集電体にかかる物理的な負荷が増大する虞があることを見出した。このような負荷の増大は、当該正極集電体の損傷を引き起こす要因となる可能性がある。特に、この問題は、激しい衝撃及び振動等が印加される例えば人工衛星等に搭載される蓄電素子において、顕著となる。
【0053】
これに対して、本実施の形態では、正極集電体120は、延伸部121が端部144aに配置されている。
【0054】
図6は、本実施の形態に係る蓄電素子10の断面図である。具体的には、
図5の(a)のVb−Vb断面における蓄電素子10の断面図である。
【0055】
同図に示すように、正極集電体120の少なくとも一部(本実施の形態では、延伸部121)は、扁平部144の端部144aにおいて、電極体140と外装体100との間に配置される。
【0056】
上述したように、扁平部143及び144の端部143a、143b、144a及び144bは、電極体140が外装体100内に収容された場合に、扁平部143及び144の他部よりも外装体100によって比較的強く圧迫される。
【0057】
したがって、蓄電素子10が振動するような環境下においても、端部143a、143b、144a及び144bは、他部よりも外装体100に対して強固に固定される。つまり、電極体140は、端部143a、143b、144a及び144bにおいて、外装体100と強固に固定される。
【0058】
すなわち、正極集電体120の延伸部121は、端部144aに配置されていることにより、電極体140と外装体100とによって強固に挟持される。
【0059】
このように、本実施の形態では、外装体100に対して電極体140が強固に固定されている箇所に正極集電体120の延伸部121が配置されている。つまり、延伸部121は、蓄電素子10が振動するような環境下においても、外装体100内部で電極体140が移動しにくい部分に配置されている。
【0060】
これにより、蓄電素子10が振動するような環境下において外装体100内部で電極体140が振動することによる、正極集電体120にかかる物理的な負荷を低減することできる。よって、正極集電体120の損傷を抑制することができる。
【0061】
また、蓄電素子10の充放電の繰り返しによって、電極板の膨張収縮が繰り返される。その結果、電極体140の形状が蓄電素子10の作製時から大きく変形されることとなる。そのように電極体140が変形した場合であっても、扁平部143及び144の端部143a、143b、144a及び144bのいずれかに正極集電体120を備えることによって、効率良く電極体140を圧迫することができる。このため、蓄電素子10の振動等による電極体140の動きを抑制することができる。つまり、上記のように電極体140が電極板の膨張収縮で変形した場合、扁平部143及び144の端部143a、143b、144a及び144bが膨張するように変形するため、そこに正極集電体120を配置することによって、他の箇所に正極集電体120を配置するよりも電極体140をより強く圧迫することができる。
【0062】
以下、本願発明者らが行った、本実施の形態に係る蓄電素子10の評価試験について説明する。
【0063】
この評価試験では、本実施の形態の比較例として、正極集電体が巻回方向における扁平部143及び144の中央部(端部143a、143b、144a及び144bを除く部分)に配置された蓄電素子を用いた。
【0064】
まず、本実施の形態に係る蓄電素子10、及び、比較例に係る蓄電素子の各々を、厚さ5mmのステンレス鋼板を用いて締め付けることにより、これらに対して1.5kgf/cm
2の面圧を印加した。その後、当該面圧を印加した状態で、振動試験を実施した。
【0065】
この評価試験の結果、比較例に係る蓄電素子では、AC(交流)インピーダンスが顕著に増加し、また、正極集電体の破断等の損傷が確認された。これに対し、本実施の形態に係る蓄電素子10では、ACインピーダンスの変動は少なく、また、正極集電体120の破断等の損傷も確認されなかった。
【0066】
このように、評価試験によって、正極集電体120の少なくとも一部が端部144aに配置されていることにより、当該正極集電体120の損傷を抑制できることが確認された。
【0067】
また、上述したように、正極集電体120は、巻回方向における扁平部144の中心側に向かって配置される接続部122において、電極体140の端部141と接続される。この接続の際、例えば、端部141では、電極体140の正極の活物質層非形成部が複数層ごとに束ねられて接続部122と接続されることにより、外周側に位置する正極の活物質層非形成部が内周側に寄せ集められる場合がある。この場合、結果として、巻回方向における扁平部143及び144の中央部が一層つぶれる場合がある。なお、扁平部143及び144の中央部がつぶれる要因は上記に限らず、例えば、上述した電極体140の耐変形性の偏りであってもかまわない。
【0068】
図7は、本実施の形態において、電極体140の巻回方向における扁平部143及び144の中央部が一層つぶれた場合の正極集電体120及び電極体140の形状を示す底面図である。
【0069】
同図に示すように、電極体140は、巻回方向における扁平部143及び144の中央部が内側に変形してつぶれた形状となっている。つまり、電極体140は、扁平部143及び144の中央部が巻回軸側に向かって変形した形状となっている。
【0070】
このとき、正極集電体120のうち巻回方向における扁平部143及び144の中心側に向かって配置された部分(本実施の形態では、接続部122)も、同様に内側に変形する。
【0071】
一方、この影響により、正極集電体120のうち扁平部143及び144の端部143a、143b、144a及び144bに配置された部分(本実施の形態では、延伸部121)は、外側(電極体140の巻回軸側と反対側)に変形して膨らむ。つまり、本実施の形態では、延伸部121は、接続部122よりも外側に浮き上がる。具体的には、
図7に示すように、正極集電体120は、湾曲部145と扁平部144との境界において、扁平部144の中央部よりも厚さD1だけ外側に浮き上がる。
【0072】
このように、電極体140が扁平部143及び144の中央部において一層つぶれた形状の場合、正極集電体120は、電極体140の巻回軸の方向から見て、端部144a配置されるほど外方へ突出する(浮き上がる)ように傾斜する。
【0073】
以上のように、本実施の形態に係る蓄電素子10によれば、正極集電体120は、扁平部143及び144において扁平部143及び144の一部のみ(本実施の形態では、扁平部144の一部のみ)を覆い、かつ、覆う部分の少なくとも一部は、電極体140の巻回方向における扁平部143及び144の端部143a、143b、144a及び144b(本実施の形態では、扁平部144の端部144a)に配置されている。
【0074】
ここで、上述したように、巻回型の電極体140は、端部143a、143b、144a及び144bにおいて変形しにくい。よって、端部143a、143b、144a及び144bは、外装体100の内壁によって特に強く圧迫されるため、蓄電素子10が振動するような環境下においても、外装体100に対して移動しにくくなる。したがって、端部143a、143b、144a及び144b(本実施の形態では、扁平部144の端部144a)に正極集電体120を配置することにより、上記環境下においても、正極集電体120にかかる物理的な負荷を低減することができる。よって、正極集電体120の損傷を抑制することができる。
【0075】
また、本実施の形態に係る蓄電素子10によれば、上述のように配置された正極集電体120を備えることにより、正極集電体120にかかる物理的な負荷を低減することができる。よって、正極集電体120の損傷を抑制できる。
【0076】
また、本実施の形態に係る蓄電素子10によれば、正極集電体120の少なくとも一部(本実施の形態では、延伸部121)は、電極体140の扁平部143及び144と湾曲部145及び146との境界(本実施の形態では、扁平部144と湾曲部145との境界)に配置されている。
【0077】
ここで、上述したように、巻回型の電極体140において、扁平部143及び144と湾曲部145及び146との境界は、特に変形しにくい箇所である。よって、このような電極体140を外装体100の内壁に当接するように当該外装体100内に収容すると、当該境界は、外装体100と強固に固定されることとなる。つまり、当該境界は、外装体100に対して電極体140が特に移動しにくい部分となる。そこで、当該境界に正極集電体120の少なくとも一部(本実施の形態では延伸部121)を配置することにより、正極集電体120の損傷を一層抑制することができる。
【0078】
また、本実施の形態に係る蓄電素子10によれば、正極集電体120は、巻回方向における扁平部143及び144の中心側に向かって配置される部分(本実施の形態では、接続部122)を有することにより、扁平部143及び144の中央部が一層つぶれた場合、端部143a、143b、144a及び144b(本実施の形態では端部144a)に配置された部分が外方へ突出する(浮き上がる)ように傾斜する。よって、電極体140を外装体100の内壁に当接するように収容すると、端部143a、143b、144a及び144bに配置された正極集電体120の部分と外装体100の内壁との間に生じる摩擦力が大きくなる。つまり、正極集電体120が外装体100に対して一層移動しにくくなるため、正極集電体120の損傷を一層抑制することができる。
【0079】
また、本実施の形態によれば、正極集電体120が電極体140の巻回軸と平行な方向に延びる延伸部121を有することにより、正極集電体120と電極体140の内壁とによって、より大きな面積で正極集電体120を挟み込むことができるため、正極集電体120の損傷を一層抑制することができる。
【0080】
特に、本実施の形態では、延伸部121が、端部144aに配置されている。これにより、外装体100に対して電極体140が移動しにくい部分に配置される正極集電体120の面積を大きく確保できるため、正極集電体120の損傷を一層抑制することができる。
【0081】
(変形例1)
次に、本実施の形態の変形例1について説明する。上記実施の形態では、正極集電体120は、電極体140の巻回軸と平行な方向(Z軸方向)に延びる1つの長尺状の延伸部121を有するとした。これに対し、本変形例では、正極集電体は、各々が、電極体140の一対の扁平部144のうち一方の一部のみを覆う複数の延伸部を有している。
【0082】
図8は、本発明の実施の形態の変形例1に係る正極集電体120A及び電極体140の形状を示す側面図である。なお、同図は、蓄電素子から外装体100の本体111を分離した状態での構成を示す側面図である。また、
図9は、
図8のIX−IX断面における断面図である。
【0083】
これらの図に示すように、本変形例において、正極集電体120Aは、巻回方向における扁平部144の一方の端部144aに配置された延伸部121aと、他方の端部144bに配置された延伸部121bとを有する。また、さらに、本変形例において、正極集電体120Aは、延伸部121aと延伸部121bとを繋ぐ繋ぎ部123を有する。
【0084】
延伸部121aは、上記実施の形態における延伸部121に相当するため、説明を省略する。
【0085】
延伸部121bは、延伸部121aと同様に、電極体140の巻回軸と平行な方向に延びる長尺状の形状を有する。ただし、延伸部121bは、延伸部121aと異なり、端部144bに配置されている。具体的には、延伸部121bは、繋ぎ部123の一端から電極体140の正極側の端部141に延設されている。
【0086】
繋ぎ部123は、電極体140の巻回軸の方向における電極体140の端部である負極側の端部142に配置され、延伸部121aと延伸部121bとを繋ぐように配置される。
【0087】
また、延伸部121aと延伸部121bとは、接続部122の平板状に形成された部分(蛇腹部分を除く部分)によっても、互いに繋がれている。
【0088】
これにより、電極体140の巻回軸の方向における端部142を保護することができる。例えば、端部142では、負極の活物質層が形成されていないため、電極体140の中央部よりも厚みが薄いことにより強度が低下する場合がある。よって、当該端部142に繋ぎ部123を配置することにより当該端部142を保護できるので、電極体140の強度が低下しやすい部分における損傷等の不具合を抑制することができる。
【0089】
このように構成された本変形例に係る蓄電素子であっても、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。つまり、上記実施の形態で説明したように、蓄電素子の外装体100の内壁によって特に強く圧迫される端部143a、143b、144a及び144b(本変形例では、扁平部144の端部144a及び144b)に正極集電体120Aを配置することにより、正極集電体120Aの損傷を抑制することができる。
【0090】
また、本変形例では、正極集電体120Aが複数の延伸部(本変形例では2つの延伸部121a及び121b)を有することにより、正極集電体120Aをより強固に固定することができる。また、1つの延伸部121のみを有する上記実施の形態と比較して、例えば蓄電素子が振動するような環境下において、各延伸部121a及び121bにかかる物理的な負荷を低減することができる。よって、正極集電体120Aの損傷をより確実に抑制することができる。
【0091】
また、本変形例では、複数の延伸部(本変形例では2つの延伸部121a、121b)が一対の扁平部143及び144のうち同一の扁平部(本変形例では扁平部144)の一部のみを覆うように配置されている。
【0092】
これにより、複数の延伸部(本変形例では2つの延伸部121a、121b)が互いに異なる扁平部143及び144に配置されている場合と比較して、正極集電体120Aを電極体140と外装体100とでバランス良く挟み込んで固定することができる。よって、正極集電体120Aを安定して固定することができるので、当該正極集電体120Aの損傷をより確実に抑制することができる。
【0093】
(変形例2)
次に、本実施の形態の変形例2について説明する。上記実施の形態の変形例1では、複数の延伸部(変形例1では2つの延伸部121a及び121b)が同一の扁平部(変形例1では扁平部144)に配置されているとした。これに対し、本変形例では、複数の延伸部は、互いに異なる扁平部に配置されている。
【0094】
図10は、本発明の実施の形態の変形例2に係る蓄電素子の外装体100内方に配置されている構成要素を示す斜視図である。具体的には、
図10は、蓄電素子から外装体100の本体111を分離した状態での構成を示す斜視図である。また、
図11は、
図10のXI−XI断面における断面図である。
【0095】
これらの図に示すように、本変形例において、正極集電体120Bは、巻回方向における扁平部144の一方の端部144aに配置された延伸部121cと、当該巻回方向における扁平部143の一方の端部143aに配置された延伸部121dとを有する。
【0096】
延伸部121cは、上記実施の形態の変形例1における延伸部121aに相当するため、説明を省略する。
【0097】
延伸部121dは、延伸部121cと同様に、電極体140の巻回軸と平行な方向(Z軸方向)に延びる長尺状の形状を有する。ただし、延伸部121dは、延伸部121cと異なり、扁平部143の端部143aに配置されている。具体的には、延伸部121dは、正極端子200側から電極体140の正極側の端部141に延設されている。
【0098】
これら延伸部121cと延伸部121dとは、接続部122の蛇腹部分によって、互いに繋がれている。
【0099】
このように構成された本変形例に係る蓄電素子であっても、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。つまり、上記実施の形態で説明したように、蓄電素子の外装体100の内壁によって特に強く圧迫される端部143a、143b、144a及び144b(本変形例では、端部143a、144a)に正極集電体120Bを配置することにより、正極集電体120Bの損傷を抑制することができる。
【0100】
また、本変形例では、上記実施の形態の変形例1と同様に、正極集電体120Bが複数の延伸部121c及び121dを有するため、正極集電体120Bの損傷をより確実に抑制することができる。
【0101】
(変形例3)
次に、本実施の形態の変形例3について説明する。上記実施の形態並びにその変形例1及び2では、延伸部が、端部143a、143b、144a及び144bの少なくとも1つに配置されているとした。これに対し、本変形例では、延伸部は巻回方向における扁平部143、144の中央部に配置され、当該延伸部から端部143a、143b、144a及び144bの少なくとも1つに向かって突出する突出部が配置されている。
【0102】
図12は、本発明の実施の形態の変形例3に係る正極集電体120C及び電極体140の形状を示す側面図である。なお、同図は、蓄電素子から外装体100の本体111を分離した状態での構成を示す側面図である。
【0103】
同図に示すように、本変形例に係る正極集電体120Cは、実施の形態に係る正極集電体120と比較して、延伸部121に代わり、巻回方向において扁平部144の中央部に配置された延伸部121eを有し、さらに、当該延伸部121eから突出する突出部121fを有する点が異なる。なお、延伸部121eは、配置位置を除いて延伸部121と同様の構成を有するため、詳細については省略する。
【0104】
突出部121fは、電極体140の巻回軸と平行な方向(同図におけるZ軸方向)における延伸部121eの中央部において、扁平部144の端部144aに向かって当該延伸部121eから突出して配置されている。つまり、突出部121fは、端部144a(
図3B等参照)に配置されている。
【0105】
このように構成された本変形例に係る蓄電素子は、実施の形態に係る蓄電素子と比較して、正極集電体120Cと端部144aとの当接領域が小さくなることから、実施の形態より多少劣るものの、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。つまり、上記実施の形態で説明したように、蓄電素子の外装体100の内壁によって特に強く圧迫される端部143a、143b、144a及び144b(本変形例では、端部144a)に正極集電体120Cを配置することにより、正極集電体120Cの損傷を抑制することができる。
【0106】
なお、突出部121fは、電極体140の巻回軸と平行な方向における延伸部121eの端部において突出してもかまわない。
【0107】
(変形例4)
次に、本実施の形態の変形例4について説明する。上記実施の形態及びその変形例1〜3では、外装体100は、有底の楕円筒体であるとした。つまり、上方から見て(Z軸方向プラス側から見て)、外装体100は電極体140の外形に沿った形状であった。これに対し、本変形例では、外装体は、有底の矩形状(箱状)である。
【0108】
図13は、本発明の実施の形態の変形例4に係る蓄電素子10Dの外観を模式的に示す斜視図である。
【0109】
同図に示すように、本変形例に係る蓄電素子10Dは、実施の形態に係る蓄電素子10と比較して、有底の長円筒状の外装体100に代わり、有底の矩形状の外装体100Dを備える。
【0110】
外装体100Dは、矩形状で底を備える本体111Dと、本体111Dの開口を閉塞する板状部材である蓋体110Dとで構成されている。なお、外装体100Dは、矩形状に形成されている点を除いて外装体100と同様の構成を有するため、詳細については省略する。
【0111】
このように構成された本変形例に係る蓄電素子10Dであっても、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0112】
(その他の変形例)
以上、本発明の実施の形態及びその変形例に係る蓄電素子について説明したが、本発明は、この実施の形態及びその変形例に限定されるものではない。
【0113】
つまり、今回開示された実施の形態及びその変形例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0114】
例えば、電極体140は、Z軸方向プラス側の端部に正極の活物質層非形成部が積層された正極側の端部141を有し、Z軸方向マイナス側の端部に負極の活物質層非形成部が積層された負極側の端部142を有していてもかまわない。
【0115】
また、上記実施の形態及びその変形例で説明した正極集電体は、特許請求の範囲に記載の「スペーサ」に包含される。しかし、特許請求の範囲に記載の「スペーサ」は、上記のように配置されている部材であればよく、例えば、電極体140と他の導電部材との間の絶縁性を向上させる、または、確保することができる、絶縁部材であってもかまわない。また、当該部材は、負極集電体であってもかまわない。つまり、特許請求の範囲に記載の「スペーサ」は、正極集電体もしくは負極集電体等の集電体、または、絶縁部材等のいわゆるスペーサを包含する。
【0116】
また、電極体140は、巻回型であればよく、巻回軸方向から見て、楕円形状を有してもかまわない。つまり、対向する一対の扁平部は、平坦でなくてもよく、曲面であってもかまわない。言い換えると、巻回軸方向から見て、一対の扁平部の各々は、直線形状でなくてもよく、曲線形状であってもかまわない。
【0117】
また、電極体140の巻回軸は水平方向(XY平面と平行な方向)であってもかまわない。
【0118】
また、正極集電体の形状は、扁平部143及び144において扁平部143及び144の一部のみを覆い、かつ、覆う部分の少なくとも一部は、端部143a、143b、144a及び144bに配置されていれば、どのような形状であってもかまわない。例えば、正極集電体は、電極体140の扁平部143及び144と湾曲部145及び146との境界に配置されていなくてもかまわない。
【0119】
また、正極集電体は、巻回方向における扁平部143及び144の中心側に向かって配置される部分を有さずに、電極体140の巻回軸方向と平行な方向に延びて配置されていてもよい。この構成の場合、正極集電体と外装体100の内壁との間に生じる摩擦力が多少小さくなるものの、上記実施の形態及びその変形例と同様に、正極集電体の損傷を抑制することができる。
【0120】
また、電極体140の巻回軸と平行な方向に延びる長尺状の延伸部を有さずに、例えば、巻回方向に延びる長尺状の部分を有してもよい。
【0121】
また、正極集電体のうち扁平部144の一部のみを覆う部分は一箇所のみに限らず、複数箇所であってもよい。
【0122】
また、正極集電体は、一対の扁平部143及び144のうち、扁平部143の一部のみを覆うように配置されていてもかまわない。
【0123】
また、接続部122は、電極体140の正極側の端部141のうち湾曲部145及び146に隣接する領域(扁平部143及び144に隣接しない領域)で、電極体140と接続固定されていてもかまわない。
【0124】
また、延伸部の個数は1以上のいくつであってもかまわない。ただし、一般的に、蓄電素子のエネルギー密度は、正極集電体及び負極集電体等の集電体の質量が小さいほど高くなる。よって、高エネルギー密度化が要求される場合、延伸部の個数を少なくすることが好ましい。
【0125】
また、正極集電体は、端部143a、143b、144a及び144bに配置される面積が大きいほど、損傷しにくくなる。しかし、一方で、正極集電体の大型化は蓄電素子のエネルギー密度の低下の要因となる。よって、正極集電体は、蓄電素子に要求される用途等に応じて、適宜設計されることが好ましい。
【0126】
また、上記実施の形態及びその変形例を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。また、上記実施の形態及びその変形例の部分的な構成を、適宜組み合わせてなる構成であってもよい。例えば、上述したような実施の形態の変形例1に変形例4の構成を組み合わせてなる構成であってもかまわないし、実施の形態の変形例1に変形例2の構成を組み合わせてなる構成であってもかまわない。