【実施例1】
【0018】
図1は本発明による空気調和機1の実施例を示すブロック図である。なお、本発明に直接関係がない冷媒回路やファンモータなどの図示と説明を省略する。
【0019】
空気調和機1は室内機2と通信接続された室外機3で構成され、室外機3は交流電源が接続される入力端21a(第1入力端)、入力端21b(第2入力端)、及び直流電圧が出力される正出力端22a、負出力端22bを備えたセミブリッジレスコンバータ4と、正入力端38aが正出力端22aに、また、負入力端38bが負出力端22bにそれぞれ接続されるインバータ38と、インバータ38で駆動される図示しない圧縮機のモータ39と、室外機3全体を制御すると共にインバータ38へインバータ駆動信号を出力する室外機制御部60を備えている。なお、室内機2はこの室外機制御部60(制御部)と相互に通信するように構成されている。
【0020】
セミブリッジレスコンバータ4は、図示しない交流電源の一端が接続される入力端21aに一端が接続されるリアクタ29(第1リアクタ)と、交流電源の他端が接続される入力端21bに一端が接続されるリアクタ30(第2リアクタ)と、入力端21aと入力端21bの間に接続され交流電源の電圧の位相を検出して位相信号として出力する位相検出部23と、平滑コンデンサ35を備えている。
位相検出部23は入力端21aが正電圧の間は位相信号をハイレベルに、また、負電圧の間は位相信号をローレベルにして出力する。
【0021】
また、セミブリッジレスコンバータ4は、リアクタ29の一端にアノード端子が接続されたダイオード25(第1ダイオード)と、リアクタ29の他端にアノード端子が接続されカソード端子がダイオード25のカソード端子と平滑コンデンサ35の正極端子に接続されたダイオード27(第2ダイオード)と、リアクタ30の一端にアノード端子が接続されたダイオード26(第3ダイオード)と、リアクタ30の他端にアノード端子が接続されカソード端子がダイオード26のカソード端子と平滑コンデンサ35の正極端子に接続されたダイオード28(第4ダイオード)と、リアクタ29の一端にカソード端子が接続されたダイオード33(第5ダイオード)と、リアクタ30の一端にカソード端子が接続されアノード端子がダイオード33のアノード端子と平滑コンデンサ35の負極端子に接続されたダイオード34(第6ダイオード)を備えている。
【0022】
さらに、セミブリッジレスコンバータ4は、リアクタ29の他端と平滑コンデンサ35の負極端子の間に接続されたスイッチング素子31(第1スイッチング素子)と、リアクタ30の他端と平滑コンデンサ35の負極端子の間に接続されたスイッチング素子32(第2スイッチング素子)と、スイッチング素子31とスイッチング素子32にスイッチング信号を出力してアクティブフィルタ動作の制御を実行するコンバータ制御部50を備えている。
【0023】
また、セミブリッジレスコンバータ4は、入力端21bとリアクタ30の一端の間に直列に接続されて検出した入力電流を入力電流信号として出力する入力電流検出部24と、正出力端22aと負出力端22bの間に接続され検出した電圧をDC電圧信号として出力するDC電圧検出部37と、平滑コンデンサ35の負極端子と負出力端22bの間に直列に接続され検出した直流電流をDC電流信号として出力するDC電流検出部36とを備えている。なお、平滑コンデンサ35の正極端子は正出力端22aに接続されている。
【0024】
一方、セミブリッジレスコンバータ4は、DC電流信号と位相信号が入力され、インバータ38で駆動する負荷(モータ39)が予め定めた所定負荷より小さい負荷の時、具体的にはDC電流信号が所定の閾値よりも小さい時にコンバータ制御部50によるスイッチング信号の出力を停止させた後、位相信号に従ってスイッチング素子31をスイッチング信号A’で、また、スイッチング素子32をスイッチング信号B’で、それぞれスイッチングする動作切換手段40を備えている。
【0025】
コンバータ制御部50は位相検出部23から位相信号が、入力電流検出部24から入力電流信号が、DC電圧検出部37からDC電圧信号が、DC電流検出部36からDC電流信号が、それぞれ入力されている。また、コンバータ制御部50は動作切換手段40を介して、スイッチング素子31を間接的にスイッチングするスイッチング信号Aとスイッチング素子32を間接的にスイッチングするスイッチング信号Bをそれぞれ出力している。
【0026】
動作切換手段40は位相信号とDC電流信号とスイッチング信号Aとスイッチング信号Bがそれぞれ入力され、DC電流信号により生成した負荷の大小を示す状態信号をコンバータ制御部50へ、また、スイッチング信号A’とスイッチング信号B’をそれぞれ出力している。
【0027】
なお、動作切換手段40はDC電流信号を常に監視しており、DC電流信号が所定値未満になった時に、つまり負荷が所定値より小さくなった時、それまで各スイッチング素子に出力していたスイッチング信号Aとスイッチング信号Bを停止させ、代わりに各スイッチング素子を所定のタイミングで開閉する信号を出力する。この動作切換手段40の動作は後で詳細に説明する。
【0028】
図2は動作切換手段40の機能を説明する機能ブロック図である。
動作切換手段40は、負荷状態判定手段44と、状態信号生成手段42と、信号切換手段41と、ノット回路43とを備えている。
負荷状態判定手段44は、入力されたDC電流信号によりDC電流が予め定められた状態切換電流閾値(6アンペア)未満となった時、状態信号生成手段42へローレベル(低負荷信号)を出力する。DC電流が予め定められた状態切換電流閾値以上の場合はハイレベル(高負荷信号)を出力する。
【0029】
状態信号生成手段42は位相信号が入力されており、低負荷信号が入力されてから最初の位相信号の変化タイミング(セロクロス点)で状態信号をローレベル(低負荷)にして信号切換手段41へ出力する。なお、状態信号がローレベルになるとコンバータ制御部50はアクティブフィルタの動作を停止させ、スイッチング信号の出力を停止する。また、状態信号生成手段42は負荷状態判定手段44から高負荷信号が入力されてから最初の位相信号の変化タイミング(セロクロス点)で状態信号をハイレベル(高負荷)にして信号切換手段41へ出力する。
【0030】
一方、信号切換手段41は入力されたスイッチング信号Aとスイッチング信号B、もしくは、入力された位相信号がノット回路43で反転された反転位相信号と入力された位相信号のそれぞれの組み合わせのいずれかが選択されてスイッチング信号A’とスイッチング信号B’として出力される。信号切換手段41は、入力された状態信号がハイレベル( 高負荷) の場合に入力されたスイッチング信号Aとスイッチング信号Bが選択され、ローレベル( 低負荷) の場合に反転位相信号と入力された位相信号が選択される。
【0031】
図3は
図1のブロック図においてセミブリッジレスコンバータ4がアクティブフィルタとして動作している時の説明図である。
図3(1)はセミブリッジレスコンバータ4に入力される交流電圧、
図3(2)は位相検出部23から出力される交流電圧の位相信号、
図3(3)は入力電流検出部24で検出される入力電流、
図3(4)は動作切換手段40から出力されるスイッチング信号A’、
図3(5)は動作切換手段40から出力されるスイッチング信号B’、
図3(6)はDC電流検出部36で検出されるDC電流、
図3(7)は動作切換手段40から出力される状態信号、をそれぞれ示している。
【0032】
コンバータ制御部50はスイッチング素子31とスイッチング素子32に対してアクティブフィルタ動作のスイッチング制御を行なうものであり、位相信号がハイレベル、つまり、交流電圧が正の半周期の場合は
図3(4)に示すようにリアクタ29に流れる電流をスイッチング素子31でスイッチングするスイッチング信号A’の基になるスイッチング信号Aを出力する。また、位相信号がローレベル、つまり、交流電圧が負の半周期の場合は
図3(5)に示すようにリアクタ30に流れる電流をスイッチング素子32でスイッチングするスイッチング信号B’の基になるスイッチング信号Bを出力する。
【0033】
また、コンバータ制御部50にはDC電流信号とDC電圧信号が入力されており、所定のDC電圧を維持するようにセミブリッジレスコンバータ4をフィードバック制御する。また、コンバータ制御部50は入力電流を正弦波に近づけるようにスイッチング信号Aとスイッチング信号BのデューティーをPWM方式で制御している。
【0034】
次に
図5のセミブリッジレスコンバータに流れる電流を説明する説明図を用いて各リアクタに流れる電流の経路を説明する。
図5(1)はスイッチング素子を閉としてリアクタを介して交流電源を短絡し、リアクタにエネルギーを蓄える場合を、
図5(2)はスイッチング素子を開としてリアクタに蓄えられたエネルギーを平滑コンデンサ35、及び負荷Rに供給する場合をそれぞれ示している。なお実線は入力端21aが正電圧となる交流電圧の正の半周期に流れる電流を、破線は入力端21aが負電圧となる交流電圧の負の半周期に流れる電流をそれぞれ示している。
【0035】
スイッチング素子31が閉に、スイッチング素子32が開になると、
図5(1)に示すように電流i1は入力端21aからリアクタ29、スイッチング素子31、ダイオード34、入力端21bに順次流れてリアクタ29にエネルギーを蓄積する。そしてスイッチング素子31が開になると、
図5(2)に示すようにリアクタ29に蓄積されていたエネルギーは電流i3となってダイオード27、平滑コンデンサ35、ダイオード34、入力端21bに順次流れる。
【0036】
一方、スイッチング素子32が閉、スイッチング素子31が開になると、
図5(1)に示すように電流i2は入力端21bからリアクタ30、スイッチング素子32、ダイオード33、入力端21aに順次流れてリアクタ30にエネルギーを蓄積する。そしてスイッチング素子32が開になると、
図5(2)に示すようにリアクタ30に蓄積されていたエネルギーは電流i4となってダイオード28、平滑コンデンサ35、ダイオード33、入力端21aに順次流れる。
【0037】
コンバータ制御部50は前述したようにPWM制御したスイッチング信号を生成し、以上の動作を繰り返すと共に、
図3(3)に示すように入力電流波形が正弦波に近づくように制御する。なお、入力電流波形を正弦波に近づけるためコンバータ制御部50は、ゼロクロス点付近のスイッチング信号のオンデューティーを大きく、電流波形の頂点付近ではスイッチング信号のオンデューティーを小さくするように制御する。
【0038】
一方、
図3においては、
図3(6)に示すようにDC電流は10アンペアであり、状態切換電流閾値(6アンペア)以上のため、動作切換手段40は
図3(7)に示すように状態信号をハイレベル(高負荷)で出力している。
【0039】
次に、モータ39の回転数が減少し、モータ39(負荷)で消費するDC電流が減少した場合を説明する。
図4はセミブリッジレスコンバータ4が高負荷時に選択されるアクティブフィルタ動作から、低負荷時に選択される本発明によるパッシブフィルタ動作へ切り換える場合を説明する説明図である。
図4(1)はセミブリッジレスコンバータ4に入力される交流電圧、
図4(2)は位相検出部23から出力される交流電圧の位相信号、
図4(3)は入力電流検出部24で検出される入力電流、
図4(4)は動作切換手段40から出力されるスイッチング信号A’、
図4(5)は動作切換手段40から出力されるスイッチング信号B’、
図4(6)はDC電流検出部36で検出されるDC電流、
図4(7)は動作切換手段40から出力される状態信号、をそれぞれ示している。なお、t10〜t16は時刻である。
【0040】
図4(6)に示すようにDC電流はt10における8アンペアから徐々に低下しているが、t13で状態切換電流閾値(6アンペア)未満になってもコンバータ制御部50はアクティブフィルタ動作を実行している。一方、負荷状態判定手段44はDC電流がt13で状態切換電流閾値未満になったため、ローレベル(低負荷信号)を出力する。これが入力された状態信号生成手段42は次の位相信号の変化点(ここではハイレベルからローレベル)になった時、つまり、t14で状態信号をハイレベル(高負荷)からローレベル(低負荷)にして出力する。この状態信号が入力されたコンバータ制御部50は、アクティブフィルタ動作を停止する。
【0041】
一方、このローレベル(低負荷)の状態信号が入力された信号切換手段41は、状態信号がハイレベル(高負荷)の時に出力していた各スイッチング信号に代替して、位相信号をスイッチング信号B’として、また、位相反転信号をスイッチング信号A’としてそれぞれ出力する。
【0042】
従ってセミブリッジレスコンバータ4はt14からパッシブフィルタ動作に移行することになる。つまり、位相信号がローレベルのt14〜t15の期間では動作切換手段40がスイッチング信号A’をハイレベルにしてスイッチング素子31を閉にし、また、スイッチング信号B’をローレベルにしてスイッチング素子32を開にする。
【0043】
一方、位相信号がハイレベルのt15〜t16の期間では動作切換手段40がスイッチング信号A’をローレベルにしてスイッチング素子31を開にし、また、スイッチング信号B’をハイレベルにしてスイッチング素子32を閉にする。
【0044】
次にこの位相信号がハイレベルとローレベルの時に各リアクタに流れるパッシブフィルタ動作時の電流経路を
図5(3)と
図4(2)とを用いて説明する。なお、
図5(3)の実線は入力端21aが正電圧となる交流電圧の正の半周期に流れる電流i5を、破線は入力端21aが負電圧となる交流電圧の負の半周期に流れる電流i6をそれぞれ示している。
【0045】
図4(2)のt14〜t15の期間は交流電圧の負の半周期であるため、
図5(3)に示すように電流i6は入力端21bからダイオード26、平滑コンデンサ35、スイッチング素子31、リアクタ29、入力端21aを順次流れる。
【0046】
一方、
図4(2)のt15〜t16の期間は交流電圧の正の半周期であるため、電流i5は入力端21aからダイオード25、平滑コンデンサ35、スイッチング素子32、リアクタ30、入力端21bを順次流れる。
【0047】
従って交流電圧の正と負の半周期にリアクタ29又はリアクタ30いずれかに電流が流れる。
このため、
図4(3)のt14以降に示すように、リアクタ29又はリアクタ30のいずれかと平滑コンデンサ35で構成されるローパスフィルタの動作により、各リアクタのいずれにも電流が流れていない場合の電流波形を示す点線に示す電流の立ち上がり/立ち下がりの変化時間よりも、実線で示すリアクタ29又はリアクタ30のいずれかに電流が流れる本願の場合の電流の立ち上がり/立ち下がりの変化時間の方が長くなり、電源高調波電流が低減されると共に力率が改善される。
【0048】
また、ダイオード33又はダイオード34に流れていた帰還電流が、ダイオード33又はダイオード34経由と、スイッチング素子31又はスイッチング素子32経由とに分割されるため、各スイッチング素子をMOS−FETなどのオン抵抗が小さい素子を用いることで、各ダイオードの順方向電圧による電力損失の一部を低減することができる。
【0049】
本実施例では交流電圧が200ボルト、DC電圧が273ボルト、DC電流が1.14アンペア、インダクタンス値が定格で0.5mH(ミリヘンリー)のリアクタを採用している。また、スイッチング信号のスイッチング周波数は30KHz(キロヘルツ)である。この結果、セミブリッジレスコンバータ4の回路を使用してパッシブフィルタ動作させた時、一方のリアクタのみに電流を流す従来方式から両方のリアクタに電流を流す本発明の制御に変更したことにより、シュミレーション結果では力率を0.48から0.50に改善され、また、ダイオード33とダイオード34の順方向電圧による電力損失を2.06ワットから1.40ワットに低減できることを確認した。
【0050】
以上説明したように、負荷(インバータ38)が予め定めた所定負荷より小さい負荷となった時にアクティブフィルタ動作からパッシブフィルタ動作に切り換えて2つのリアクタの内一方に電流が流れるように各スイッチング素子を制御する動作切換手段40を備えたため、リアクタに電流を流さない従来の場合に比べて力率を改善すると共に電源高調波電流を低減することができる。
【0051】
一般的に鉄心(コア)を備えたインダクタ(リアクタ)は直流重畳特性があり、インダクタに流れる電流が小さくなるほどインダクタンス値は大きくなる。また、直流重畳特性はコアのギャップにより変更可能であり、コアのギャップが小さいほど電流の変化によるインダクタンスの値の変化幅が大きくなる特性となっている。
さらに、リアクタに巻かれている巻線の表皮効果によりスイッチング周波数が低くなるほどインダクタンス値は大きくなる特性がある。このため、リアクタのインダクタンス特性を調整することにより、今後はパッシブフィルタとして使用するリアクタと、スイッチング周波数が数キロヘルツ以上のアクティブフィルタで使用するリアクタのインダクタンス値を最適にしてパッシブフィルタ動作時の力率をさらに改善することができる。
【0052】
なお、本実施例ではアクティブフィルタ動作とパッシブフィルタ動作との切り換えとして説明しているが、これに限るものでなく、部分スイッチング方式のフィルタ動作とパッシブフィルタ動作とを切り換えるようにしてもよい。
また、本実施例ではアクティブフィルタ動作とパッシブフィルタ動作で使用するリアクタを兼用しているが、これに限るものでなく、それぞれのフィルタで最適なインダクタンス値となる専用のリアクタ設け、状態信号によりこの専用リアクタを切り換えて使用するようにしてもよい。
【0053】
また、本実施例では、負荷状態判定手段44としてDC電流を監視しているが、これに限るものでなく、入力電流を監視して入力電流が所定電流以下になった時を低負荷と判断してもいいし、圧縮機用のモータ39の回転数を監視して回転数が所定回転数以下になった時を低負荷と判断してもいい。また、インバータ駆動信号であるスイッチング信号のオンデューティーが所定デューティーよりも小さくなった時を低負荷と判断してもいいし、これら以外であっても、負荷の大小を判定できるものならどのような信号を用いても本願と同じ効果を得ることができる。