(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
樹脂(A)が、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、およびフッ素系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2記載の気泡含有液状物。
基材層(II)に、請求項1〜3いずれか1項に記載の気泡含有液状物を塗工後、30〜60℃で一次乾燥した後、前記一次乾燥よりも少なくとも10℃以上高温で二次乾燥もしくは硬化し、平均径が100nm〜10μmの気泡を1〜60体積%含む気泡含有層(I)を設けることを特徴とする積層体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の気泡含有液状物について説明する。
本発明の気泡含有液状物は、樹脂(A)、チクソトロピー付与剤(B)、液体(C)および気体(D)を含む。
【0016】
本発明に使用されるチクソトロピー付与剤(B)について説明する。
一般に、気泡形成前の液状物の粘度を低くすると、気泡を微細化することができる。一方で、気泡含有液状物の粘度を高くすると、気泡の浮上や運動を防ぐことができ、気液界面での破泡、及び気泡同士の合体を抑制することができる。即ち、気泡含有液状物の粘度を高くすると、気泡を気泡含有液状物中に安定的に留めておくことができる。
チクソトロピー付与剤(B)を含有することで、気泡形成時と気泡形成後の粘度を調整し気泡径と気泡安定性を制御することができる。
気泡形成前の液状物のTI値は3以上であることが好ましい。TI値が3より小さいと気泡形成後の気泡安定性が低下する。TI値は3以上20以下であることがより好ましく、さらに4以上15以下であることがより好ましい。TI値が大きいと気泡が大きくなったり、後述する基材層(II)への塗工性が低下したりする。
TI値はB型粘度計(温度25℃)で測定した粘度η
1(回転数6rpm)、η
2(回転数60rpm)の比(下記式)から算出する。
TI値=η
1/η
2
【0017】
チクソトロピー付与剤(B)は、気泡形成前の液状物100質量%中に0.1〜20質量%含有されていることが好ましい。含有量が0.1質量%以上であると気泡形成後の気泡含有液状物の粘度を高くでき、気泡体積率が大きくすることができる。20質量%以下であることにより気泡形成前の液状物の粘度を高くしすぎず、微細な気泡を形成できる。
【0018】
本発明に用いられるチクソトロピー付与剤(B)としては、無機系チクソトロピー付与剤、有機系チクソトロピー付与剤等が挙げられる。
無機系チクソトロピー付与剤としては、例えば微粒シリカ、微粒酸化アルミニウム、微粒炭酸カルシウム等が挙げられ、
有機系チクソトロピー付与剤としては、例えばヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、カゼイン、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、ポリエーテルウレタン変性物、ポリウレア変性物、ポリアクリル酸−アクリル酸エステル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸アルミニウム、水添加ヒマシ油、脂肪酸アマイド、長鎖脂肪酸エステル重合体、酸化ポリエチレン、デキストリン脂肪酸エステル、ジベンジリデンソルビトール、有機ベントナイト、植物油系重合油などが挙げられるが、特に限定されず、一種類もしくは二種類以上組み合わせて用いることができる。
チクソトロピー性を発現するためには、チクソトロピー付与剤(B)は液体(C)に溶解・分散しにくいことが好ましい。チクソトロピー付与剤(B)を液体(C)100質量%中に対して50質量%添加・攪拌して静置した後に、チクソトロピー付与剤(B)が分離、沈降、析出するとチクソトロピー付与剤(B)は液体(C)に溶解・分散しにくいということができ、本発明に用いるチクソトロピー付与剤として好ましい。一方、前述の樹脂(A)は、液体(C)100質量%中に対して50質量%添加・攪拌して静置した後に、分離、沈降、析出しない。
【0019】
本発明に用いられる樹脂(A)の説明をする。樹脂(A)の種類は特に制限がなく熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂関係なく用いることができるが、耐侯性、耐傷付性、耐湿熱性の観点から、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂から少なくとも一つ選ばれる樹脂であることが望ましい。
【0020】
アクリル系樹脂について説明する。本発明でいうアクリル系樹脂とは、一般式CH
2=CR
1−CO−OR
2(R
1は水素原子、もしくはメチル基、R
2は水酸基もしくは炭素数1から20の置換基を有する炭化水素基を示す)で表されるアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸4ヒドロキシブチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2ヒドロキシエチル、メタクリル酸4ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等で例示できるアクリル系モノマーが重合した樹脂である。更にはアクリルアミド、メタアクリルアミド、アクリルニトリル、メタアクリルニトリル、N−メチロールアクリルアミド、N−アルキロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、アクロレイン、メタアクロレイン、グリシジルメタクリレートなども反応性モノマーとして例示できる。常法に従いこれらのモノマーを共重合させて所定のアクリル樹脂としたものが本発明で使用できる。
【0021】
ポリエステル系樹脂について説明する。本発明でいうポリエステル系樹脂とは、カルボン酸成分と水酸基成分とを反応(エステル化反応、エステル交換反応)させたポリエステル樹脂の他、水酸基を有するポリエステル樹脂にさらにイソシアネート化合物を反応させてなるポリエステルポリウレタン樹脂、さらにジアミン成分を反応させてなるポリエステルポリウレタンポリウレア樹脂などをも含む意である。
【0022】
ポリエステル系樹脂を構成するカルボン酸成分としては、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、テトレヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テトラクロル無水フタル酸、1、4−シクロヘキサンジカルボン酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸、ε−カプロラクトン、脂肪酸が例示できる。
ポリエステル系樹脂を構成する水酸基成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1、3−ブチレングリコール、1、6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、3−メチルペンタンジオール、1、4−シクロヘキサンジメタノール等のジオール成分の他、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの多官能アルコールが例示できる。
常法に従いこれらのカルボン酸成分と水酸基成分とを重合させて所定のポリエステル樹脂としたものが本発明で使用できる。
【0023】
ポリウレタン系樹脂について説明する。本発明でいうポリウレタン系樹脂とは、水酸基を有するポリエステル樹脂以外の水酸基成分とイソシアネート化合物を反応させてなるものである。
水酸基成分としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加したポリエーテル系ポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエン系ポリオールなどのポリマーポリオールなどが使用できる。
イソシアネート化合物としては、後述するポリイソシアネート化合物と同様のものを例示できる。トリメチレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、メチレンビス(4、1−フェニレン)=ジイソシアネート(MDI)、3−イソシアネートメチル−3、5、5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等のジイソシアネートや、これらジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、これらジイソシアネートの三量体であるイソシアヌレート体、これらジイソシアネートのビューレット結合体、ポリメリックジイソシアネートなどが例示できる。
【0024】
ポリアミド系樹脂について説明する。本発明でいうポリアミド系樹脂とはカルボン酸成分とアミン成分を反応させてなるものである。
カルボン酸成分としては、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、テトレヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テトラクロル無水フタル酸、1、4−シクロヘキサンジカルボン酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸、ε−カプロラクトン、脂肪酸が例示できる。
アミン成分としては、エチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、フェニレンジアミン、キシレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどが例示できる。
【0025】
ポリイミド系樹脂について説明する。本発明でいうポリイミド樹脂とはテトラカルボン酸無水物成分とアミン成分を反応させてなるものである。
テトラカルボン酸無水物成分としては、無水ピロメリット酸4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などが例示できる。
アミン成分としてはエチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、フェニレンジアミン、キシレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどが例示できる。
【0026】
シリコーン系樹脂について説明する。シリコーン系樹脂とはシラン成分によりシロキサン結合を形成した樹脂である。シラン成分としては、例えば、3-オクタノイルチオ-プロピル(モノジメチルアミノエトキシ)ジメトキシシラン、3-オクタノイルチオ-プロピルトリジメチルアミノエトキシシラン、3-オクタノイルチオ-プロピル(ジジエチルアミノエトキシ)モノメトキシシラン、3-オクタノイルチオ-プロピル(ジジメチルアミノエトキシ)モノメトキシシラン、3-オクタノイルチオ-プロピル(モノジエチルアミノエトキシ)ジメトキシシラン、3-オクタノイルチオ-プロピル(ジメチルアミノエトキシ)ジメチルシラン、3-オクタノイルチオ-プロピルトリジエチルアミノエトキシシラン、3-オクタノイルチオ-プロピル(ジメチルアミノエトキシ)メトキシメチルシラン、などが挙げられる。
【0027】
ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂について説明する。本発明でいうオレフィン系樹脂とは、オレフィン成分を重合させてなるものであり、フッ素系樹脂とはポリオレフィン樹脂内にフッ素成分を重合させてなるものである。
オレフィン成分とは、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチルペンテン−1、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、5−エチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、 ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネンなどが例示でき、また、フッ素成分とは、例えば、フッ化ビニル、ジフロオロエチレン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、フルオロプロパンなどが例示でき、公知の方法で製造できる。
【0028】
樹脂(A)に用いられる樹脂は、反応性官能基で修飾されていてもよい。反応性官能基があることで、基材層(II)に塗工後に樹脂同士、また樹脂と基材が架橋反応を起こし、耐侯性、耐水性、耐傷性、耐摩耗性、耐熱性、密着性などが向上することができるため、反応性官能基で修飾されていることが好ましい。
反応性官能基は加熱による架橋反応に利用できる官能基であり、例えば、水酸基、フェノール性水酸基、メトキシメチル基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリン基、オキサジン基、アジリジン基、チオール基、不飽和炭素基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、ブロック化カルボキシル基、シラノール基などが挙げられる。
【0029】
架橋反応としては同一樹脂内で架橋する自己架橋反応、異種樹脂同士での樹脂間架橋反応、熱硬化剤―樹脂間架橋反応が利用できる。気泡含有層(I)の耐侯性、耐水性、耐傷性、耐摩耗性、耐熱性、密着性を向上させるために、気泡含有液状物には後述する熱硬化剤(D)が含まれていることが好ましい。熱硬化剤(D)を用いる場合は、樹脂(A)中の反応性官能基と加熱により架橋反応を起こる熱硬化剤(D)を添加することができる。
熱硬化剤(D)を用いる場合、気泡を含有させる前の液状物100質量%中に、熱硬化剤(D)を30質量%以下含有することが重要であり、3〜30質量%含有することが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。熱硬化剤(D)が30質量%よりも多くなると液状物の粘度が高くなり、微細な気泡を形成できない。
例えば、適切な量の熱硬化剤(D)を用いることにより、気泡の均一性を確保しつつ、気泡含有層(I)の耐熱性を向上でき、気泡の大きさや体積の変化を抑制できる。
【0030】
熱硬化剤(D)としては、加熱による架橋反応に利用できる官能基、例えば、水酸基、フェノール性水酸基、メトキシメチル基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリン基、オキサジン基、アジリジン基、チオール基、不飽和炭素基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、ブロック化カルボキシル基、シラノール基などと反応し化学結合を形成しうる樹脂または低分子化合物である。熱硬化剤の例としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、アジリジン化合物、アミン化合物、シラン化合物、オキサゾリン化合物、酸無水物化合物などがあり、反応基を保護するブロック化タイプの熱硬化剤でもよい。これらの熱硬化剤は必要に応じて1種類または2種類以上を併用して使用することができる。
【0031】
イソシアネート化合物熱硬化剤の例としては、デスモジュールシリーズ(住化バイエルウレタン株式会社製)デュラネートシリーズ(旭化成ケミカルズ株式会社製)などが挙げられる。
【0032】
エポキシ化合物熱硬化剤の例としては、jERシリーズ(三菱化学株式会社製)、HNシリーズ(日立化成工業株式会社製)などが挙げられる。
【0033】
カルボジイミド化合物熱硬化剤の例としては、カルボジライトシリーズ(日清紡ケミカル株式会社製)などが挙げられる。
【0034】
アジリジン化合物熱硬化剤の例としては、ケミタイト(株式会社日本触媒製)などが挙げられる。
【0035】
アミン化合物熱硬化剤の例としては、jerキュアシリーズ(三菱化学株式会社製)などが挙げられる。
【0036】
シラン化合物熱硬化剤の例としては、Z−6000シリーズ(東レ・ダウコーニング株式会社製)、KBM、KBEシリーズ(信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0037】
オキサゾリン化合物熱硬化剤の例としては、エポクロスシリーズ(株式会社日本触媒製)などが挙げられる。
【0038】
酸無水物化合物熱硬化剤の例としては、jerキュアシリーズ(三菱化学株式会社製)などが挙げられる。
【0039】
本発明の気泡含有液状物は、液体(C)を含む。液体(C)は、25℃、1気圧にて液状であり、前記樹脂(A)を溶解ないし分散するものであれば特に制限はなく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテルなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンなどの芳香族類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、水などの使用が可能である。溶剤は2種以上を混合して使用してもよい。
これら液体(C)は、1気圧における沸点が40〜250℃であることが、気泡含有層(I)形成時の乾燥し易さの点で好ましい。
【0040】
本発明の気泡含有液状物は、樹脂(A)、チクソトロピー付与剤(B)、液体(C)および必要に応じて用いられる熱硬化剤(D)を含有する液状物に気体(E)を吹き込むことにより得られ、気泡含有液状物100体積%中に平均径が50nm〜40μmの気泡を1〜40体積%含む。気泡の平均径は100nm〜20μmがより好ましく、さらに100nm〜10μmであることがより好ましい。また、気泡の含有率は5〜40体積%がより好ましい。
平均径が50nm〜40μmであることにより、後述する基材(II)への良好な塗工性を確保しつつ、気泡体積を多くできる。気泡体積が1〜40%以下であることによって気泡同士の合体を抑制しつつ、比誘電率や熱伝導率の低い気泡含有層(I)を形成できる。
【0041】
気泡形成に用いられる気泡(E)は特に制限はないが、安定性の高い酸素、窒素、アルゴン、二酸化炭素からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。安定性の高い気体を用いることで、気泡含有層(I)の耐久性が向上する。また、これらの気体(E)は気泡含有液状物形成後の常温常圧で気体状態であればよく発泡形成時の状態は気体状態でなくてもよい。例えば、臨界温度臨界圧力以上の条件下で気泡を形成する場合は、上記成分が気体状態でなくてもよく、超臨界状態であってもよい。
【0042】
本発明の気泡含有液状物は種々の方法で得ることができる。
例えば、樹脂(A)、チクソトロピー付与剤(B)、液体(C)および必要に応じて熱硬化剤(D)を含有する液状物を流動させながら、後述する微細気泡発生装置を用い前記液状物に気体(E)を直に吹き込んでもよいし(
図2参照)、多孔質膜を通して前記液状物に気体を吹き込んでもよい(
図3参照)。多孔質膜を通すことで気泡がより微細化する。多孔質膜の種類に特に制限はなく、種々の多孔質膜を用いることができる。
【0043】
本発明を用いられる多孔質膜について説明する。多孔質膜としては、例えばポリオレフィン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、フッ素樹脂等の樹脂を延伸法、相分離法等公知の手段により多孔質化した樹脂膜が好ましい。多孔質膜の膜厚や孔径に特に制限はないが、微細気泡を作成するためには孔径は平均で0.01〜20μmであることが好ましい。
【0044】
本発明で用いられる微細気泡発生装置について説明する。
微細気泡発生装置とは、常圧又は常圧以上の環境下で液体中に気体を吹き込み発泡させ、攪拌、せん断、圧力開放など物理的所作を加えることで微細気泡を発生させる装置である。微細気泡発生装置として特に制限はないが、例えば、MBLL11−102V−S(関西オートメ機器株式会社)、BA6S(株式会社アスプ)、UltrafineGALF(IDEC株式会社)、イーバブル(戸上電機製作所)、MBG(株式会社ニクニ)、バヴィタス(株式会社Ligaric)、マイクロバブル洗浄装置(日東精工株式会社)、Foamest(株式会社ナック)、OKE-MB(有限会社OKエンジニアリング)、YJノズル(エンバイロ・ビジョン株式会社)、ファインアクア(株式会社テックコーポレーション)、ナノビーエル(株式会社ビーエルダイナミクス)、OM4−MDG−045(株式会社オーラテック)などが挙げられ、一種類もしくは二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0045】
微細気泡作成時の液体の流量、および気体(E)の吹き込み時の圧力について説明する。液体の流量が大きいと生成する気泡の径は小さくなる。40μm以下の気泡を作成するために、流量は1L/分以上あることが好ましい。また、気体(E)を吹き込む際、吹き込む気体の圧力が高いと気泡体積率が高くなる。気泡を1%以上の気泡体積率にするためには、吹き込む気体(E)の圧力は0.03MPa以上あることが好ましい。
【0046】
これらの微細気泡発生装置を使用するためには、装置の使用温度、言い換えると気泡形成時の温度において、気泡形成の対象である液状物の粘度が0.1〜5000mPa・sであることが好ましく、0.1〜4000mPa・sであることがより好ましい。
【0047】
気泡の平均径の測定は、レーザー回折・散乱法にて気泡含有液状物を測定することができる。
【0048】
気泡含有液状物中の気泡体積率の測定方法について説明する。気泡体積率は、気泡を形成させた気泡含有液状物と気泡を形成していない液状物の密度比から以下の式を用いて求めている。
気泡体積率[体積%]=(1−Da/Dn)×100
ここで、
Da:気泡を形成させた気泡含有液状物の密度[g/cm
3]
Dn:気泡を形成していない液状物の密度[g/cm
3]
【0049】
本発明に用いる気泡含有液状物には、必要に応じて無機顔料、有機顔料、染料、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤を添加されていてもよい。
【0050】
本発明の積層体の製造方法について説明する。
本発明の積層体は、基材層(II)上に気泡含有液状物を塗工し、30〜60℃で一次乾燥した後、前記一次乾燥よりも少なくとも10℃以上高温で乾燥もしくは硬化し、得ることができる。
乾燥温度段数は最低で二段階あればよく溶剤量や溶剤種類によって三段階以上の乾燥温度にしてもよい。三段階以上の温度で乾燥する際は、最後の乾燥温度が初期の乾燥温度より10℃以上高ければよく、三段階で乾燥させる場合は、例えば、一次乾燥:30℃、二次乾燥:35℃、三次乾燥:50℃のように、一次乾燥後に昇温幅が10℃未満の中間温度にて乾燥した後、一次乾燥温度よりも10℃以上高い温度で乾燥しても同様の効果を得ることが出来る。
【0051】
形成される気泡含有層(I)は、平均径が50nm〜40μmの気泡を1〜60体積%含有する。気泡含有層(I)および基材層(II)の膜厚に特に制限がなく、任意の厚みの基材層を用いて任意の膜厚に塗工してよい。気泡径は100nm〜20μmがより好ましく、さらに100nm〜10μmであることがより好ましい。また、気泡体積率は5〜40体積%がより好ましい。
気泡含有層(I)中の気泡は、気泡含有液状物中に含有される気泡は本質的に同じものであるが、気泡含有液状物から液体(C)が除去される過程で、全体の体積が減少するので、気泡体積率が1〜60体積%となる。気泡径が上記範囲にあることにより、外観良好で気泡体積の多くできる。また、気泡が1〜60体積%であると、基材層(II)との密着性の良く、比誘電率や熱伝導率の低い、気泡含有層(I)を得ることができる。
【0052】
基材層(II)に用いる基材は特に制限がなく、公知のものを用いることができる。基材層(II)に用いることのできる基材は例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボード、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミドなどのプラスチックフィルム、ガラス、紙など挙げることができる。また、基材層(II)に用いられるプラスチックフィルムの形成は押出法や延伸法など公知の方法で行うことができる。
【0053】
基材層(II)の表面は表面処理されていてもよい。表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、ブラスト処理、オゾン・紫外線照射処理、プライマー処理、剥離処理などが挙げられる。
【0054】
気泡含有層(I)中の気泡の平均径の測定方法について説明する。
気泡の平均径は走査型電子顕微鏡で観察し、画像から気泡径を直接求める。具体的には、気泡含有層(I)を走査型電子顕微鏡で観察し、気泡ができるだけ1つ1つ独立して見える範囲(視野)を探す。次に、視野における任意の一定の方向に向かう直線を決定し、前記直線上に存在する粒子を横断する最も長い長さを当該粒子の大きさとする。そして、前記直線上に存在する少なくとも200個の粒子の大きさの相加平均値を、気泡の平均径とする。
【0055】
気泡含有層(I)中の気泡の体積率の測定方法について説明する。
気泡の体積率は、気泡を形成させた気泡含有層(I)と気泡を形成していない層(I')の密度比から以下の式を用いて求めている。
気泡体積率[体積%]=(1−Da/Dn)×100
ここで、
Da:気泡を形成させた気泡含有層(I)の密度[g/cm
3]
Dn:気泡を形成していない層(I')の密度[g/cm
3]
である。
【0056】
気泡含有層(I)を基材層(II)上に設ける方法としては、ロールナイフコーター、ダイコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ディッピング、ブレードコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、コンマコーターなどの従来公知のコーティング方式によって、気泡含有液状物をコーティングする方法や、気泡含有液状物から形成されるフィルムを、ドライラミネート、エクストルージョンラミネート、サーマルラミネート法など従来公知のラミネート方法で基材層(II)と貼りあわせる方法などが挙げられる。乾燥温度やラミネート温度は任意に設定することができる。
【0057】
積層体を構成する気泡含有層(I)は複数層存在してもよい。例えば、気泡径の異なる樹脂発泡層(I)を複数層することで屈折率のグラデーションができるため界面での光反射を抑制することができる。
【0058】
本発明の製造方法で得られる積層体は気泡含有層(I)、基材層(II)以外の層が単層または複層積層されていてもよい。例えば、気泡含有層(I)にさらに接着樹脂層が積層されることで積層体を接着性気泡含有シートとして用いることができ、ガラスなど他の基材へ貼り付けて使用することができる。また、例えば、接着樹脂層を基材層(II)と気泡含有層(I)、気泡含有層(I)と気泡含有層(I)の層間に積層することで、基材層(II)と気泡含有層(I)、気泡含有層(I)と気泡含有層(I)の層間接着層として用いることができる。
【0059】
接着樹脂層を構成する樹脂に特に制限はない。接着樹脂層として用いることのできる樹脂として、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。また、接着樹脂層を構成する樹脂は反応性官能基で修飾されていてもよい。反応性官能基があることで、積層後、接着樹脂同士、接着樹脂と基材、または発泡樹脂と接着樹脂が架橋反応を起こし、耐侯性、耐水性、耐傷性、耐摩耗性、耐熱性、密着性などが向上することができる。
反応性官能基は加熱による架橋反応に利用できる官能基であり、例えば、水酸基、フェノール性水酸基、メトキシメチル基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリン基、オキサジン基、アジリジン基、チオール基、不飽和炭素基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、ブロック化カルボキシル基、シラノール基などが挙げられる。
【0060】
接着樹脂層を気泡含有層(I)または基材層(II)に設ける方法としては、ロールナイフコーター、ダイコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ディッピング、ブレードコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、コンマコーターなどの従来公知のコーティング方式によって、接着樹脂をコーティングする方法や、接着樹脂から形成されるフィルムを、ドライラミネート、エクストルージョンラミネート、サーマルラミネート法など従来公知のラミネート方法で気泡含有層(I)または基材層(II)と貼りあわせる方法などが挙げられる。
【0061】
本発明の製造方法で得られる係る積層体の用途は特に限定されないが、例えば、低誘電部材、印刷受容基材、ディスプレイ用保護部材、建築又は車両用透明、断熱材、加飾性多層体、遮音材、吸音材、高光沢加飾内装材及び水密シール材等の用途が挙げられる。
【0062】
積層体を断熱材として用いる場合、気泡含有層(I)の熱伝導率は0.2W/m・K以下であることが好ましい。
熱伝導率の測定はフラッシュアナライザー型熱伝導率計(NETZSCH Japan株式会社製、製品名「LFA 447」)を用いて熱伝導率を測定した。
【0063】
層体を低誘電部材として用いる場合、気泡含有層(I)の周波数1GHzにおける比誘電率は3.0以下であることが好ましい。
誘電率の測定は、株式会社エー・イー・ティー製誘電率測定装置を用い、測定温度23℃で同軸共振器法により測定を行った。
【実施例】
【0064】
(実施例1−1)
樹脂(A)溶液として「アクリディック A−801−P」(DIC株式会社製、アクリルポリオールのトルエン溶液(固形分5%)を199.8部(樹脂99.9部を含む)に、チクソトロピー付与剤(B)溶液として「BYK−410」(ビックケミー・ジャパン株式会社製、変性ウレア樹脂のN―メチルピロリドン溶液、固形分50%)を0.2部(変性ウレア樹脂0.1部を含む)配合した液状物に対し、マイクロ・ナノバブル発生装置 Foamest CT(株式会社ナック製)を用いて、温度25℃、液体流量5L/分、空気圧力0.3MPaに設定し、10分間マイクロ・ナノバブル発生装置内を循環させて発泡させた。循環終了後、10分間静置して巨大気泡を浮上・破泡させて気泡含有液状物を得た。
得られた気泡含有液状物をポリエチレテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムという、東洋紡株式会社製、商品名「東洋紡エステルフィルム E5101」厚さ188μm)にアプリケーターを用いて塗工(膜厚100μm)し、オーブンにて30℃で1分間乾燥した後、100℃でさらに1分乾燥させ、気泡含有層を具備する積層体を得た。
【0065】
気泡形成前の液状物のTI値、気泡含有液状物中の気泡の体積率、気泡の平均径、及び気泡の安定性、気泡含有層の気泡体積率、気泡の平均径、気泡の均一性、熱伝導性及び誘電特性の測定・評価方法は以下のようにして行った。
【0066】
<気泡形成前の液状物のTI値>
温度を25℃に保った気泡形成前の液状物の粘度をB型粘度計を用いて回転数6rpm、60rpmの2水準で測定をした。測定した各回転数の粘度より、以下の式からTI値を計算した。
TI値=η
6/η
60
ここで、
η
6:回転数6rpmでの粘度[mPa・s]
η
60:回転数60rpmでの粘度[mPa・s]
【0067】
<気泡含有液状物中の気泡の体積率>
比重瓶を用いて、気泡形成前の液状物と気泡含有液状物の密度をJIS Z 8804に準じ測定をし、以下の式より発泡樹脂組成物の気泡体積率を算出した。
気泡体積率[体積%]=(1−(Da/Dn))×100
ここで、
Da:気泡含有液状物の密度[g/cm
3]
Dn:気泡形成前の液状物の密度[g/cm
3]
【0068】
<気泡含有液状物中の気泡の平均径>
レーザー回折・散乱式粒度分布計(日機装株式会社製、製品名「MT3300EXII」
)を用いて気泡の平均径の測定を行った。
【0069】
<気泡含有液状物中の気泡の安定性>
気泡形成後、10分間静置により破泡した後の気泡含有液状物(初期)を、24時間静置した後、上記気泡の平均径の測定方法と同様にして平均気泡径の測定を行い、得られた平均気泡径から以下の式により気泡径変化率を計算した。
気泡径変化率=(R
1/R
0)
ここで、
R
1:24時間静置した気泡含有液状物中の気泡の平均径[μm]
R
0:初期の気泡含有液状物中の気泡の平均径[μm]
気泡安定性は得られた気泡径変化率から以下の基準で評価した。
4:気泡径変化率1.1未満
3:気泡径変化率1.1以上1.3未満
2:気泡径変化率1.3以上1.5未満
1:気泡径変化率1.5以上
【0070】
<気泡含有層中の気泡の体積率>
気泡含有層を具備する積層体から、基材層(II)であるPETフィルムを剥がして得た気泡含有層の密度を、比重瓶を用いてJIS Z 8807に準じ測定をした。
別途、気泡形成前の液状物を同様にPETフィルムに塗工、乾燥し、PETフィルムから剥離して得た気泡を含有しない層の密度を、同様に比重瓶を用いて測定した。
測定したそれぞれの密度から以下の式より気泡体積率を算出した。
気泡体積率[体積%]=(1−(Da/Dn))×100
ここで、
Da:気泡含有層の密度[g/cm
3]
Dn:気泡を含有しない層の密度[g/cm
3]
【0071】
<気泡含有層中の気泡の平均径>
気泡含有層を具備する積層体の気泡含有層表面を走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、製品名「JSM−7800F」)で観察し、視野における任意の一定の方向に向かう直線を決定し、前記直線上に存在する気泡を横断する最も長い長さを当該気泡の大きさとした後、前記直線上に存在する200個の気泡の大きさの相加平均値を求め、平均気泡径を算出した。
【0072】
<気泡含有層中の気泡の均一性>
気泡の平均径測定と同様にして抽出した200個の気泡のうち、最大径、最小径との比により気泡の均一性を評価した。
均一性=(最大気泡径)/(最小気泡径)
均一性は得られた均一度から以下の基準で評価した。
4:均一度1.1未満
3:均一度1.1以上1.3未満
2:均一度1.3以上1.5未満
1:均一度1.5以上
【0073】
<気泡含有層の熱伝導率>
気泡含有層を具備する積層体から、基材層(II)であるPETフィルムを剥がして得た気泡含有層について、フラッシュアナライザー型熱伝導率計(NETZSCH Japan株式会社製、製品名「LFA 447」)を用いて熱伝導率を測定し、評価した。
4:熱伝導率が0.1W/m・K未満
3:熱伝導率が0.1W/m・K以上0.15W/m・K未満
2:熱伝導率が0.15W/m・K以上0.2W/m・K未満
1:熱伝導率が0.2W/m・K以上
【0074】
<気泡含有層の比誘電率>
気泡含有層を具備する積層体から、基材層(II)であるPETフィルムを剥がして得た気泡含有層について、誘電率測定装置(株式会社エー・イー・ティー製)を用い、同軸共振器法により測定温度23℃、1GHzで比誘電率を測定し、評価した。
4:比誘電率が2未満
3:比誘電率が2以上2.5未満
2:比誘電率が2.5以上3未満
1:比誘電率が3以上
【0075】
(実施例1−2〜1−18、比較例1−1〜1−3)
実施例1と同様にして、表1に示す組成に従い、液状物、気泡含有液状物及び気泡含有層を具備する積層体を得、同様に評価した。
【0076】
(実施例2−1〜2−8、比較例2−1〜2−4)
表2に示す種類の種々の樹脂(A)に対し、チクソトロピー付与剤(B)を配合した以外は実施例1と同様にして液状物等を得、同様に評価した。
【0077】
(実施例3−2〜3−4、比較例3−1)
表3に示す組成に従い、樹脂(A)溶液として「アクリディック A−801−P」を、チクソトロピー付与剤(B)溶液として「BYK−410」を、熱硬化剤(D)としてデュラネートMHG−80B(旭化成株式会社製、イソシアネート化合物の酢酸ブチル溶液、固形分80%)を配合した以外は実施例1−1と同様にして液状物、気泡含有液状物を得、100℃で1分間乾燥した後、80℃で1日間静置し硬化させた以外は実施例1−1と同様にして気泡含有層を具備する積層体を得た。
気泡含有層を具備する積層体中の気泡含有層の気泡体積率、気泡の平均径、気泡の均一性を実施例1−1と同様にして評価した。さらに、以下に示すように加熱試験後の気泡の膨張性を評価した。
【0078】
<気泡含有層を具備する積層体中の気泡含有層の膨張性>
気泡含有層を具備する積層体を150℃の温度で1時間加熱した後、自然冷却後、前記と同様の方法で気泡の平均径を測定し、加熱前後の平均気泡径を用いて以下の式から気泡膨張率を求めた。
気泡膨張率=R’/R
R’:加熱前の気泡含有層の気泡の平均径[μm]
R:加熱後の気泡含有層の気泡の平均径径[μm]
4:気泡膨張率1.01未満
3:気泡膨張率1.01以上1.05未満
2:気泡膨張率1.05以上1.10未満
1:気泡膨張率1.10以上
【0079】
(実施例4−1〜4−10、比較例4−1〜4−3)
表1に示した実施例1−4と同様の液状物、気泡含有液状物を得、表4に示す一次乾燥温度で1分間乾燥させた後、ただちに二次乾燥温度で1分間乾燥させて気泡含有層を具備する積層体を得た。
気泡含有層中の気泡の平均径、気泡の均一性、熱伝度率、比誘電率については実施例1−1と同様にして行い、以下のようにして乾燥性、平滑性を評価した。
【0080】
<気泡含有層を具備する積層体の乾燥性>
二次乾燥後直ちに気泡含有層を具備する積層体の重さを測定した後、140℃の温度で30分間加熱した。加熱後の気泡含有層を具備する積層体の重さを測定し以下の式にて溶剤残留率を求め、乾燥性を評価した。
溶剤残留率(%)=(1−(M/M
0))×100
ただし、
M:加熱後の気泡含有層を具備する積層体の重さ[g]
M
0:加熱前の気泡含有層を具備する積層体の重さ[g]
4 :溶剤残留率0.5%未満
3 :溶剤残留率0.5%以上1%未満
2 :溶剤残留率1%以上2%未満
1 :溶剤残留率2%以上
【0081】
<気泡含有層の表面平滑性>
気泡含有層の表面平滑性はレーザー顕微鏡(オリンパス株式会社、製品名「LEXT OLS4500」)により算術表面粗さを算出した。算術平均表面粗さの算出は、レーザー顕微鏡で膜表面を測定した粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値として求めることができる。
4:4μm未満
3:4μm以上、7μm未満
2:7μm以上、10μm未満
1:10μm以上
【0082】
なお、表1〜4中に記載の配合量は固形分換算の数値である。また、表中の樹脂(A)、チクソトロピー付与剤、硬化剤は以下の組成物を用いた。
<樹脂(A)>
・A−801−P:DIC株式会社製、アクリルポリオールのトルエン溶液、商品名「アクリディックA−801−P」(固形分5%)
・バイロン−220:東洋紡株式会社、ポリエステル樹脂のトルエン溶液、商品名「バイロン−220」、(固形分30%)
・UR−4410:東洋紡株式会社製、水酸基含有ポリエステルウレタン樹脂のメチルエチルケトン溶液、商品名「バイロンUR−4410」(固形分40%)
・jer1001:三菱化学株式会社製、エポキシ樹脂、商品名「jer1001」メチルエチルケトン溶液(固形分30%)
・V−8002:DIC株式会社製、カルボキシル基含有ポリイミド樹脂のメチルエチルケトン溶液、商品名「ユニディックV−8002」(固形分2%)
・ニューマイド515:ハリマ化成グループ株式会社製、ポリアミドアミン樹脂のメタノール溶液、商品名「ニューマイド515」(固形分10%)
・ES−1023:信越化学工業株式会社製、エポキシ基含有シリコーン樹脂のトルエン溶液、商品名「ES−1023」(固形分10%)
・スーパークロン882:日本製紙株式会社製、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂のトルエン溶液、商品名「スーパークロン882」(固形分20%)
・フルオネートK−700:DIC株式会社製、フッ素樹脂のトルエン溶液、商品名「フルオネートK−700」(固形分10%)
【0083】
<チクソトロピー付与剤(B)>
・BYK−410:ビックケミー・ジャパン株式会社製、変性ウレア樹脂のN−メチルピロリドン溶液、商品名「BYK−410」(固形分50%)
・AEROSIL R202:日本アエロジル株式会社製、シリカ微粒子
・3600N:楠木化成株式会社製、ポリエーテル・エステル系樹脂、商品名「ディスパロン 3600N」
【0084】
<熱硬化剤(D)>
・イソシアネート系硬化剤:デュラネートMHG−80B、旭化成株式会社製(酢酸ブチル溶液、固形分80%)
【0085】
【表1】
【0086】
表1の実施例1−1〜1−18に示されるように、気泡含有液状物はチクソトロピー付与剤(B)が0.1〜20質量%含まれており、平均径0.05〜40μmの気泡が1〜40体積%含有されている。気泡の安定性も優れる。さらにこれらの気泡含有液状物を塗工して得られた気泡含有層を具備する積層体中の気泡含有層は、平均径0.05〜40μmの気泡を1〜60体積%含有し、均一性にも優れる。その結果、0.2W/m・K以下の熱伝導率及び3未満の比誘電率を示す。
一方、比較例1−1に示されるように、チクソトロピー付与剤(B)を含まない液状物は気泡を発生させても粘度が低いので気泡の維持が出来ずに10分程度静置しただけで気泡が消え、気泡体積率が0%になる。その結果、液体(C)を除去した状態において気泡の寄与は期待できず、熱伝導率や比誘電率が高くなってしまう。
また、比較例1−2、比較例1−3に示されるように、気泡含有液状物中に含まれるチクソトロピー付与剤(B)が20質量%より多いと気泡発生時の粘度が高くなるため、気泡の平均径が大きくなってしまう。そして、気泡の平均径が大きいので、気泡含有液状物中の気泡が静置している間に合体・破泡等し、気泡安定性が悪くなる。その結果、気泡含有層中の気泡の均一性も悪くなる。
【0087】
【表2】
【0088】
表2の実施例2−1〜2−8に示されるように、気泡含有液状物中の樹脂(A)がポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂であってもチクソトロピー付与剤(B)が10質量%含まれると、微細な気泡が高い気泡体積率で含有されており、気泡安定性も良い。さらにこれらの気泡含有液状物を塗工して得られた気泡含有層(I)も微細な気泡が高い気泡体積率で含有されており、均一性も良い。
一方、比較例2−1、2−3に示されるようにチクソトロピー付与剤(B)を含有しない場合気泡を発生させても粘度が低いので気泡の維持が出来ずに10分程度静置しただけで、比較例1−1と同様に、気泡が消え、気泡体積率が0%になる。
また、チクソトロピー付与剤(B)が20質量%より多い比較例2−2、2−4は、比較例1−2、1−3と同様に気泡発生時の粘度が高くなるため、気泡の平均径が大きくなり、同様の結果となる。
【0089】
【表3】
【0090】
表3の実施例3−2〜3−4に示されるように、気泡含有液状物に熱硬化剤(D)が30質量%以下の範囲で含有されていると、熱硬化剤(D)と樹脂(A)との架橋により気泡含層の強度が大きくなり、加熱しても気泡が膨張し難くなる。
一方、比較例3−1に示されるように、熱硬化剤(D)が30質量%より多く含有されていると液状物の粘度が高くなるため、気泡の均一性が悪化する。
【0091】
【表4】
【0092】
表4の実施例4−1〜4−10に示されるように、乾燥温度を段階的に上昇させ、一次乾燥温度を30〜60℃かつ二次乾燥温度を一次乾燥温度より10℃以上高温にすることで、気泡含有層(I)に含有される気泡を微細に維持したまま、溶剤を除去することができている。
一方、比較例4−1に示されるように、一次乾燥温度が30℃より低く、二次乾燥温度が一次乾燥温度よりも10℃高くても、40℃より低いと溶剤の乾燥性が悪くなる。その結果、比誘電率が低下しない。
また、比較例4−2に示されるように、一次乾燥温度が60℃より大きいと乾燥中に気泡の膨張が生じ均一性が悪化し、表面の平滑性が損なわれる。
さらに、比較例4−3に示すように、一次乾燥温度が30℃であっても二次乾燥温度が一次乾燥温度より10℃以上高温でない場合溶剤の乾燥性が悪くなり、比較例4−1と同様、比誘電率が低下しない。