特許第6459866号(P6459866)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6459866
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/494 20060101AFI20190121BHJP
   A61F 13/51 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   A61F13/494 110
   A61F13/51
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-173955(P2015-173955)
(22)【出願日】2015年9月3日
(65)【公開番号】特開2017-47013(P2017-47013A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2017年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金田 悠太郎
【審査官】 ▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−188437(JP,A)
【文献】 特開2009−207660(JP,A)
【文献】 特開2001−333931(JP,A)
【文献】 特開2008−161255(JP,A)
【文献】 特開2015−159972(JP,A)
【文献】 特開2010−187919(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0071851(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0120244(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/121528(WO,A1)
【文献】 特表2006−520250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15−13/84
A61L 15/16−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液不透過性のバックシートと、液透過性のトップシートと、前記バックシートと前記トップシートとの間に配される吸収体と、前記吸収体の両側縁部に沿って起立可能な一対の立体ギャザーと、前記バックシートに接着されるカバーシートと、を備える吸収性物品であって、
前記立体ギャザーの幅方向の自由端である側縁部には弾性部材が前記立体ギャザーの長手方向に沿って伸張状態で配置され、
前記立体ギャザーの少なくとも一方の前記長手方向の端縁側には前記立体ギャザーが吸収性物品の前記トップシート側の表面に接着されていない非接着領域が設けられ、
前記立体ギャザーは、前記非接着領域に連続して形成された延出領域を有し、
前記延出領域は、前記長手方向における前記カバーシートの端部から外方に延出しており、
前記延出領域は、前記カバーシートの表面に貼り付け可能な領域を有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記一対の立体ギャザーの前記長手方向における前記延出領域の長さがそれぞれ異なることを特徴とする請求項に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記延出領域は、前記吸収性物品の腹側に設けられており、
前記立体ギャザーのうち起立可能な領域の幅が、背側から腹側にかけて広くなっていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記非接着領域に、シート片が貼着されたことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記非接着領域は、
前記立体ギャザーの長手方向の端縁と交差するように、前記立体ギャザーの起立端近傍の前記長手方向の端縁から一定距離で設けられた切れ込み線と、
前記立体ギャザーの幅方向の前記自由端である側縁と、で挟まれた領域であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関し、より詳細には、立体ギャザーの起立を促すための吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排出された体液(以下、単に「液体」とも言う)を有効に堰き止めて、外部に漏らさないための一対の立体ギャザーが設けられた使い捨ておむつ(以下、単に「おむつ」とも言う)等の吸収性物品が広く知られている。
【0003】
液体を有効に堰き止めるためには、着用状態において立体ギャザーの起立が維持されることが望ましいが、着用する際の着用者の姿勢や動きによって立体ギャザーを倒したり、つぶしたりする場合があった。
【0004】
そこで、展開型のおむつにおいては、おむつを着用するときに立体ギャザーが引張部材によっておむつの幅方向の外側に向けて引っ張られて起立する構成が、特許文献1に開示されている。特許文献1のおむつでは、当該引張部材の一方の端部が立体ギャザーの側壁に接着され、他方の端部がファスニングテープの内側面に接着されている。そして、ファスニングテープをおむつの前身頃の止着領域に止着することで、立体ギャザーが引張部材に引っ張られて起立するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5238106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のおむつでは、立体ギャザーを引っ張る力が、引張部材が接着された部位に対して幅方向にしか作用せず、立体ギャザーを起立させる範囲が当該接着された部位の周辺に限定されていたため、立体ギャザーの起立状態が不充分となって、液体を立体ギャザーによって有効に堰き止めることが出来ないおそれがあった。
【0007】
本発明の目的は、立体ギャザーを所望の範囲において起立させるための吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による吸収性物品は、液不透過性のバックシートと、液透過性のトップシートと、バックシートとトップシートとの間に配される吸収体と、吸収体の両側縁部に沿って起立可能な一対の立体ギャザーと、を備える吸収性物品であって、立体ギャザーの幅方向の自由端である側縁部には弾性部材が立体ギャザーの長手方向に沿って伸張状態で配置され、立体ギャザーの少なくとも一方の長手方向の端部領域が、吸収性物品の表面に接着されていないことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、立体ギャザーを効果的に起立させることが可能となるため、液体の漏れ防止を効果的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態1に係るおむつの一例の外観において、正面側から見た斜視図である。
図2図1に示すおむつを背面側から見た斜視図である。
図3図1に示すおむつの分解斜視図である。
図4】本発明の実施形態1に係る、伸張状態のおむつをトップシート側から見た平面図である。
図5図4におけるV−V線断面図である。
図6図4におけるVI−VI線断面図である。
図7図4におけるVII−VII線断面を斜め上方から見た斜視図である。
図8】立体ギャザーの非接着領域を引っ張る際の立体ギャザーの状態変化について説明するための図であり、(a)は、引っ張る前の立体ギャザーの状態を示し、(b)は、引っ張った後の立体ギャザーの状態を示す。
図9】本発明の実施形態2−1に係る、伸張状態のおむつをトップシート側から見た平面図であり、(a)は、非接着領域の裏側の面の一部に貼着領域が設けられた状態を示し、(b)は、非接着領域の裏側の全面に貼着領域が設けられた状態を示す。
図10】本発明の実施形態2−2に係る、伸張状態のおむつをトップシート側から見た平面図であり、(a)は、立体ギャザー45の背側に延出領域25Dを設けた状態を示し、(b)は、立体ギャザー55の腹側および背側の両側に延出領域25Dを設けた状態を示し、(c)は、立体ギャザー25の腹側および立体ギャザー65の背側に延出領域25Dをそれぞれ設けた状態を示す。
図11】本発明の実施形態2−3に係る、伸張状態のおむつをトップシート側から見た平面図であり、(a)は、着用者から見て右側の立体ギャザー25の腹側に延出領域25Dを設け、左側の立体ギャザー75の腹側に延出領域25Dよりも長い延出領域35Dを設けた状態を示し、(b)は、着用者から見て左側の立体ギャザー25の腹側に延出領域25Dを設け、右側の立体ギャザー75の腹側に延出領域25Dよりも長い延出領域35Dを設けた状態を示す。
図12】本発明の実施形態2−4に係る、伸張状態のおむつをトップシート側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
【0012】
本発明の実施形態に係る吸収性物品では、立体ギャザーの少なくとも一方の長手方向の端部領域に吸収性物品本体と接着されない領域を設け、その領域を様々な方向に引っ張ることによって、立体ギャザーを効果的に起立させ、液体の漏れ防止を効果的に行うことが可能となるものである。
【0013】
先ず、本発明を展開型使い捨ておむつに応用した実施形態1を以下に説明する。
<実施形態1>
図1に本発明の実施形態1に係るおむつの一例の外観において、正面側から見た斜視図を示す。本実施形態におけるおむつ10は、展開型使い捨ておむつであり、前身頃領域10Fと、後身頃領域10Rと、これら前身頃領域10Fおよび後身頃領域10Rをつなぐ股下領域10Cとを有する。また、着用時に前身頃領域10Fと後身頃領域10Rとで着用者のウエストの部分を取り囲むウエスト周り開口部10Wが形成されている。同様に、前身頃領域10Fおよび後身頃領域10Rの下端部と股下領域10Cとで着用者の両脚の太股部分を取り囲む左右一対の脚周り開口部10Lが形成されている。
【0014】
図2は、図1に示す展開型使い捨ておむつを背面側から見た斜視図である。着用時に前身頃領域10Fは、着用者の腹側に位置し、後身頃領域10Rは着用者の背側に位置する。そして、股下領域10Cは、着用者の股下を覆い、左右一対の脚周り開口部10Lに、着用者の脚がそれぞれ通された形となる。したがって、脚周り開口部10Lは、着用者の両脚の付け根から太ももあたりのいずれかに位置することとなる。
【0015】
仮想線Pは、おむつ中央部において腹側から背側に向かって、股下部分を通って延びるものである。具体的には、仮想線Pは、例えば、おむつのウエスト側を上、股下側を下として定義すると、おむつ表面に沿って、かつ上下方向に延びると共に、股下部分を経由して、背側においても上下方向に延びるものである。
【0016】
おむつ10の外側に位置するカバーシート11の後身頃領域10Rの左右両端縁部には、着用時に前身頃領域10Fの左右両端縁部に重ね合わせてこれらをつなぎ、脚周り開口部10Lを形成し得る左右一対のファスニングテープ10Aが接着されている。このファスニングテープ10Aは、前身頃領域10Fのカバーシート11上に接着されたフロントパッチシート10Bに対して繰り返し剥離可能に接合される。また、後身頃領域10Rの上端部に対応する領域には、カバーシート11の幅方向に沿って延在し、着用者に対してウエスト周りに適度な着用感を与えるための弾性シート10Dが設けられている。尚、本実施形態に係るおむつには設けられない部分であるが、図1および図2において、おむつ10のウエスト周り開口部10Wから外側に延出する領域の部分(符号25Cが付され、破線で表された部分)を手で掴んで引っ張り、立体ギャザーの起立具合を調整することも可能である。詳細については、後述する実施形態2−2において説明する。
【0017】
図3は、図1に示す展開型使い捨ておむつの分解斜視図である。図3に示すように、本実施形態におけるおむつ10は、外側から順に、良好な手触りを得るために薄い不織布にて形成されるカバーシート11と、液不透過性を有するバックシート(裏面シート)12と、吸収体13と、液透過性を有するトップシート(表面シート)14と、立体ギャザー15とを重ねた積層構造を有しているものである。図3の吸収体13については、説明の便宜上、部分的に破断した状態を示している。カバーシート11の股下領域10Cの左右両側には、それぞれ脚周り開口部10Lとなる一対の切欠き部11Nが形成されている。バックシート12は、カバーシート11に接着され、先の吸収体13は、このバックシート12とトップシート14との間に配され、この吸収体13を介してトップシート14がバックシート12に接着される。また、バックシート12のうち、後身頃領域10Rの上端部に対応する領域には、弾性シート10Dが接合されている。カバーシート11と立体ギャザー15との間には、脚周りギャザーを形成するための糸ゴム16がそれぞれ伸張状態で接着されている。
【0018】
トップシート14の下に位置する本実施形態の吸収体13は、主にパルプと高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、以下「SAP」とも言う)とからなる吸収性本体17を、ティシュや不織布等で構成されるコアラップなどの被覆部材18によって包んだものである。吸収性本体17を被覆部材18により包むことで形成される継ぎ目は、例えば、図3に示すように、吸収体13の上面であって長手方向に延在するように形成される。本実施形態の吸収体13は、前身頃、股下、後身頃に亘るように、細長い形状をしている。ここで、前身頃部分から後身頃部分を前後(上下)方向とし、それに直交する方向を左右方向とすると、本実施形態の吸収体13は、前後(上下)左右の長さが異なる矩形のものである(図3では、前後(上下)の長さが左右の長さより長くなっている)。なお、本実施形態の吸収体13の形状はこれに限らず、例えば、前後(上下)左右の長さが同程度の略正方形のもの、前後(上下)端の角が丸く落とされているもの、前後(上下)に延びる楕円形のもの、円形のものなど、さまざまな形状を含む。また、吸収体13の股下部分には、両脚の太股部分を取り囲む左右一対の脚周り開口部10Lに合わせて、円弧状をなす一対の切欠き部が形成されても良い。
【0019】
一対の立体ギャザー15は、液不透過性であり、吸収体13の両側縁部に沿って起立可能である。本実施形態では、立体ギャザー15の両側縁部のうち、一方の側縁部は略直線形状を呈し、他方の側縁部には、股下付近に切欠き部15Nが形成されている。立体ギャザー15は、その一方の略直線形状の側縁部に自由端を含むように形成される。立体ギャザー15の幅方向の自由端である側縁部には、引っ張り力を作用する弾性部材である糸ゴム19が立体ギャザー15の長手方向に沿って伸張状態で配置されている。また、立体ギャザー15には、立体ギャザー15の長手方向端縁と交差するように、その長手方向端縁から一定距離で切れ込み線CLが設けられる。本実施形態では、切れ込み線CLは、立体ギャザー15の長手方向端縁と直交するように直線によって形成される。
【0020】
本実施形態では、一対の立体ギャザー15は、カバーシート11の両側縁部から、カバーシート11に接着されるバックシート12の両側縁部に至るまで接着される。この構成により、一対の立体ギャザー15は、バックシート12の両側縁部から起立可能となっている。尚、本実施形態では、立体ギャザー15がバックシート12の両側縁部から起立可能なように接着されているが、これに限られず、例えば、トップシート14の両側縁部から起立可能なように接着されても良い。
【0021】
図4は、本発明の実施形態1に係る、伸張状態のおむつ10をトップシート14側から見た平面図である。図4において、太い破線で表される部分は、吸収体13を示す。また、図4において、斜線で表す部分は、立体ギャザー15に対して、少なくともバックシート12および/またはトップシート14の表面(以下、おむつ10の表面とも言う)が接着している領域を示す。
【0022】
本実施形態では、立体ギャザー15とバックシート12とが接着している領域と接着していない領域との境界線をBLとし、図4において破線で表す。また、本実施形態では、上述した切れ込み線CLは、境界線BLの延長線上に形成され、図4において実線で示される。
【0023】
図4に示すように、立体ギャザー15は、立体ギャザー15とおむつ10の表面とが接着されている領域を含む接着領域15Aと、起立可能な領域である起立領域15Bと、立体ギャザー15とおむつ10の表面とが接着されていない非接着領域15Cとの3つの領域を含んで構成される。よって、本実施形態に係るおむつ10は、立体ギャザー15の少なくとも一方の長手方向の端部領域が、おむつ10の表面に接着されていないものとなっている。
【0024】
本実施形態では、接着領域15Aおよび起立領域15Bは、立体ギャザー15の両側縁のうち糸ゴム19に近い方の略直線形状の側縁と、境界線BLとで挟まれた領域である。また、非接着領域15Cは、この略直線形状の側縁と、切れ込み線CLとで挟まれた領域である。図4に示すように、接着領域15Aと、起立領域15Bと、非接着領域15Cとは連続した構成になっている。
【0025】
図5図7図4における模式的な断面図または斜視図であり、図5にV−V線断面図、図6にVI−VI線断面図、図7にVII−VII線断面を斜め上方から見た斜視図をそれぞれ示す。尚、説明の簡略化のため、図5図7ではカバーシート11の記載を省略し、図6では被覆部材18の継ぎ目の記載を省略している。
【0026】
本実施形態では、接着領域15Aは、図5に示すように、立体ギャザー15とトップシート14とが接着される領域を含んでいることが理解できる。本実施形態では、起立領域15Bは、図6に示すように、起立可能な領域であることがわかる。また、立体ギャザー15の自由端である側縁部には起立を促すための糸ゴム19が配置されていることが見てとれる。本実施形態では、非接着領域15Cは、図7に示すように、おむつ10の表面に接着されていないことがわかる。
【0027】
図8に立体ギャザーの非接着領域を引っ張る際の立体ギャザーの状態変化について説明するための図を示す。具体的には、図8は、着用時において、図4に示す構造体の図4中右下に位置する立体ギャザー15の非接着領域15Cを手で掴んでA方向(例えば、着用者の頭の方)へ引っ張る際の動作説明図であり、図8(a)は、引っ張る前の立体ギャザー15の状態を示し、図8(b)は、引っ張った後の立体ギャザー15の状態を示す。本実施形態では、おむつ10を着用した状態で非接着領域15Cを引っ張る動作を行うことで、立体ギャザーを起立させることを可能とする。
【0028】
すなわち、図8(a)に示すように、立体ギャザー15の非接着領域15Cは、手80で掴むことが可能な掴持領域を提供するので、着用者は当該掴持領域を手80で掴んで、例えば、A方向へ引っ張ることが可能である。すると、図8(b)に示すように、起立領域15Bの糸ゴム19が伸張して、立体ギャザー15の略長手方向であるB方向に立体ギャザー15が伸びる。また、A方向から着用者の腹側に向けて掴持領域を引っ張ると、立体ギャザー15の側縁部は、バックシート12に接着された立体ギャザー15の付け根を回転軸として、着用者の肌側に近付く方向Cに回動するので、立体ギャザー15の起立が促される。
【0029】
なお、図8(a)および図8(b)は、非接着領域15Cの掴持領域を手80で掴んで引っ張る動作の一例であるが、これに限られず、引っ張る方向は様々である。立体ギャザー15の起立が効果的に行われるのであれば、例えば、着用者の肌から離れる方向であって、着用者の前方向や斜めの方向に引っ張っても良いし、また、着用者の肌から離れる方向であって、着用者から見て左右方向に引っ張っても良く、さらにこれらの動作を適宜組み合わせても良い。
【0030】
いずれにしても、非接着領域15Cを様々な方向に引っ張ることによって、引っ張る力が起立領域15Bや糸ゴム19に様々な方向から伝わり、立体ギャザー15の糸ゴム19を伸張していない自然な中立状態に近付けることで、立体ギャザー15が起立した状態に誘導することが可能になる。また、引っ張る力が起立領域15Bや糸ゴム19に様々な方向から伝わるため、立体ギャザーを効果的に起立させることが可能となり、その結果、液体の漏れ防止を効果的に行うことが可能となる。さらに、非接着領域15Cを様々な方向に引っ張ることによって、フィット性を向上させることが可能となる。尚、本実施形態では、手で掴むことが可能な非接着領域15Cの端部と、おむつ10のウエスト周り開口部10Wの縁とが揃うようになっているが、これに限られず、手で掴むことが可能な非接着領域の端部がおむつ10のウエスト周り開口部10Wの縁より内側となっても良い。
【0031】
<実施形態2>
本発明の実施形態1では、手で掴むことが可能な非接着領域全体をおむつ10の内側の範囲内に配置した。これに対し、本発明の実施形態2では、実施形態1とは異ならせ、非接着領域を、立体ギャザーの長手方向において、おむつ10のカバーシート11の端部から外方に延出してはみ出させ、そのはみ出した領域(以下、延出領域とも言う)に設けられた掴持領域を手で掴んで引っ張ることによって立体ギャザーの起立具合を調整する。これにより、実施形態1よりも簡易に立体ギャザーを起立させることが可能となる。立体ギャザーの形状にこのような改良を施した各実施形態を、次の実施形態2−1から2−4においてそれぞれ説明する。
【0032】
図9から図12に示す実施形態2−1から2−4に係る構造体を構成する各要素のうち、同様の機能を有するものについては、実施形態1と同一の符号を付してその説明を省略する。また、実施形態1と同様に、図中、太い破線で表される部分は、吸収体13を示し、斜線で表す部分は立体ギャザーに対して、少なくともおむつ10の表面が接着されている領域を示す。
【0033】
<実施形態2−1>
本発明の実施形態2−1では、延出領域にカバーシート11に貼り付け可能な貼着領域を設ける。
【0034】
図9は、本発明の実施形態2−1に係る、伸張状態のおむつ10をトップシート14側から見た平面図であり、図9(a)は、延出領域25Dの裏側の面の一部に貼着領域110が設けられた状態を示し、図9(b)は、非接着領域15Cおよび延出領域25Dの裏側の全面に貼着領域210が設けられた状態を示す。
【0035】
図9(a)、図9(b)に示すように、立体ギャザー25には、非接着領域15Cに連続して形成される延出領域25Dが設けられる。着用者は、この延出領域25Dに設けられた掴持領域を掴んで立体ギャザーの起立具合を調整することが可能となる。
【0036】
本実施形態では、立体ギャザー25の延出領域25Dには、おむつ10の外側の表面に貼り付け可能な貼着領域が設けられる。図9(a)では、トップシート14側から見て延出領域25Dの裏側の面の一部、具体的には、立体ギャザー25の長手方向における延出領域25Dの端部から一定の範囲に亘って貼着領域110が設けられ、図9(b)では、トップシート14側から見て非接着領域15Cおよび延出領域25Dの裏側の全面に貼着領域210が設けられている。
【0037】
貼着領域110、210は、例えば、ファスニングテープや粘着テープなどで構成される。ファスニングテープの場合、おむつ10の外側の表面には、対応するフロントパッチシートが形成される。粘着テープの場合、裏側の剥離紙を剥がしておむつ10の外側の表面の所望の位置に貼り付けることが可能となる。着用者は、延出領域25Dに設けられた掴持領域を掴んで立体ギャザー25の起立具合を調整した後、立体ギャザー25の貼着領域をおむつ10の外側の表面に貼着させることによって、立体ギャザー25の起立を所望の状態のまま維持することが可能となる。また、余分な延出部分をおむつと一体化させるように貼着可能であるため、余分な延出部分が着用者にとって邪魔にならないようにすることが可能となる。尚、立体ギャザー25の延出領域25Dを切り取ることができるように、非接着領域15Cと延出領域25Dとの境目付近の位置に、ミシン目のような切れ込み線を入れても良い。
【0038】
<実施形態2−2>
本発明の実施形態2−2では、一対の立体ギャザー25のうち延出領域25Dを設ける場所をそれぞれ異ならせ、例えば、着用者の腹側、背側、または両方に延出領域25Dを設けた3つの形態について説明する。
【0039】
図10は、本発明の実施形態2−2に係る、伸張状態のおむつ10をトップシート14側から見た平面図であり、図10(a)は、立体ギャザー45の背側に延出領域25Dを設けた状態を示し、図10(b)は、立体ギャザー55の腹側および背側の両側に延出領域25Dを設けた状態を示し、図10(c)は、立体ギャザー25の腹側および立体ギャザー65の背側に延出領域25Dをそれぞれ設けた状態を示す。
【0040】
本実施形態によれば、着用者は、様々な方向から立体ギャザーの起立具合を調整することが可能となり、効果的に立体ギャザーを起立させることが可能となる。
【0041】
<実施形態2−3>
本発明の実施形態2−3では、着用者が片手でも立体ギャザーの起立具合を調整できるように、立体ギャザーの長手方向において、腹側に設けられる延出領域の長さをそれぞれ異ならせる。
【0042】
図11は、本発明の実施形態2−3に係る、伸張状態のおむつ10をトップシート14側から見た平面図であり、図11(a)は、着用者から見て右側の立体ギャザー25の腹側に延出領域25Dを設け、左側の立体ギャザー75の腹側に延出領域25Dよりも長い延出領域35Dを設けた状態を示し、図11(b)は、着用者から見て左側の立体ギャザー25の腹側に延出領域25Dを設け、右側の立体ギャザー75の腹側に延出領域25Dよりも長い延出領域35Dを設けた状態を示す。
【0043】
本実施形態によれば、片方の手や腕が不自由な着用者にとっても、実施形態2−1と同様の効果を得ることが可能となる。例えば、図11(a)に示すおむつについては、着用者から見て左側に在る延出領域35Dが、右側に在る延出領域25Dより長いため、右手で延出領域35Dを掴みやすく、左手が不自由の着用者にとって使用しやすい構成となっている。また、図11(b)に示すおむつについても同様に、左手で延出領域35Dを掴みやすく、右手が不自由の着用者にとって使用しやすい構成となっている。
【0044】
<実施形態2−4>
本発明の実施形態2−4では、立体ギャザーを起立させ易いように、立体ギャザーのうち起立可能な領域、つまり、起立領域の幅が、背側から腹側にかけて広くなっている。
【0045】
図12は、本発明の実施形態2−4に係る、伸張状態のおむつ10をトップシート14側から見た平面図である。図12に示すように、立体ギャザー85は、立体ギャザー85とおむつ10の表面とが接着されている領域を含む接着領域85Aと、起立可能な領域である起立領域85Bと、立体ギャザー85とおむつ10の表面とが接着されていない非接着領域85Cと、立体ギャザーの長手方向におけるカバーシート11の端部から外方に延出する延出領域85Dとの4つの領域を含んで構成される。よって、本実施形態に係るおむつ10は、実施形態1と同様に、立体ギャザー85の少なくとも一方の長手方向の端部領域が、おむつ10の表面に接着されていないものとなっている。
【0046】
本実施形態では、接着領域85Aおよび起立領域85Bは、立体ギャザー85の両側縁のうち糸ゴム19に近い方の略直線形状の側縁と、境界線BLとで挟まれた領域である。また、非接着領域85Cは、この略直線形状の側縁と、切れ込み線CLとで挟まれた領域である。図12に示すように、接着領域85Aと、起立領域85Bと、非接着領域85C、延出領域85Dとは連続した構成になっている。
【0047】
また、本実施形態では、実施形態2−1と同様に、延出領域85Dには、おむつ10の外側の表面に貼り付け可能な貼着領域が設けられる。図12に示すように、トップシート14側から見て延出領域85Dの裏側の面の一部、具体的には、立体ギャザーの長手方向における延出領域85Cの端部から一定の範囲に亘って貼着領域310が設けられる。
【0048】
さらに、本実施形態では、背側から腹側にかけて立体ギャザーの幅を広げている。具体的には、図12に示すように、非接着領域85Cの長手方向端部の幅W2は、接着領域85Aの長手方向端部の幅W1よりも広くなるように立体ギャザー85が接着されている。こうすることで、非接着領域85Cと起立領域85Bとが繋がっている部分の幅が広くなるため、非接着領域85Cに連続した延出領域85Dを掴んで動かせる範囲が広くなり、実施形態2−1よりも延出領域85Dにおいて引っ張る力が起立領域85Bに様々な方向から伝わり、より立体ギャザー85を起立させやすい構成となっている。
【0049】
<その他>
本発明は、上述した実施形態1および実施形態2の各実施形態や、随所に述べた変形例に限られることなく、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲で、適宜の変更や変形が可能である。
【0050】
例えば、上記各実施形態に係るおむつの構造は、上述したような展開型に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に規定された吸収性物品の構成を含むおむつでありさえすれば、どのような構成であってもよい。例えば、パンツ型の使い捨ておむつや、尿漏れパッドなどであっても本発明を適用可能である。
【0051】
加えて、上記各実施形態では、非接着領域または延出領域を手で掴んで立体ギャザーを起立させるようにしているが、立体ギャザーの起立領域または非接着領域に、手で掴むためのタブとなるシート片を別途貼着して、それを掴んで立体ギャザーを起立させるようにしても良い。すなわち、立体ギャザーの少なくとも一方の長手方向の端部領域に、シート片が貼着されても良い。
【0052】
尚、図4図9(a)、図9(b)、図10(a)、図10(b)、および図12に示す上記各実施形態に係るおむつの展開図は、仮想線Pを軸として対称となっているが、これに限られず、非対称であっても良い。
【0053】
また、実施形態2の各実施形態に係るおむつの立体ギャザーには、貼着領域が設けられているが、貼着領域を設けない態様であってもよい。さらに、実施形態2−4に係るおむつの立体ギャザー85には、延出領域85Dが設けられているが、立体ギャザー85を起立させやすいという効果が実現しうるものなら、延出領域85Dを設けない態様であってもよい。また、実施形態2−2のような延出領域を設ける場所をそれぞれ異ならせる態様や、実施形態2−3のような延出領域の長さをそれぞれ異ならせる態様を、実施形態2−4に係るおむつの立体ギャザーに適用してもよい。
【0054】
上記各実施形態に係る立体ギャザーの形状は、切欠き部を有する形状であるが、これに限られず、例えば、矩形であっても良い。また上記各実施形態では、切れ込み線CLは、直線によって形成されているが、これに限られず、立体ギャザーの長手方向端縁と交差するのであれば、直線、曲線またはこれらの組合せで構成されたものであっても良い。しかしながら、上記各実施形態は、立体ギャザーの起立具合を調整可能という本発明の効果を実現しうるものであれば、切れ込み線を不要とすることを許容するものである。
【符号の説明】
【0055】
10 おむつ
10A ファスニングテープ
10B フロントパッチシート
10F 前身頃領域
10R 後身頃領域
10C 股下領域
10W ウエスト周り開口部
10L 脚周り開口部
11 カバーシート
11N、15N 切欠き部
12 バックシート
13 吸収体
14 トップシート
15、25、35、45、55、65、75、85 立体ギャザー
15A、85A 接着領域
15B、85B 起立領域
15C、85C 非接着領域
16、19 糸ゴム
17 吸収性本体
18 被覆部材
25D、35D、85D 延出領域
110、210、310 貼着領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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図12